(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のインスツルメンツパネル内(特にフロントガラスに近い位置)に配置される、衛星用、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)用のアンテナ装置ではパッチアンテナの使用が一般的であり、通常、地板なる金属板が必要となる。また、上記GNSS衛星用アンテナと同時にTEL(電話)用アンテナを搭載することが要求されるが、従来までは垂直偏波が求められていた。
【0003】
しかし、MIMO(Multiple Input Multiple output)技術を使用したLTE(Long Term Evolution)において、水平偏波を水平面内に発生させることが求められることがある。その際、地板上にエレメントを形成した場合、地板と平行の面に水平偏波は発生しづらい問題があった。
【0004】
この問題について、以下に説明する。
図22は、自動車のインスツルメンツパネル内に配置されてGNSS信号を受信する、GNSS用パッチアンテナの基本構成例である。パッチアンテナ10は、誘電体12の主面上に放射電極13を形成し、主面の反対側に地導体としての地板20を設けたものであり、誘電体12と地板20との間に受信信号を増幅するLNA(Low Noise Amplifier)基板15が配置されている。誘電体12の主面の反対面はGND(グラウンド)電極であり、地板20に電気的に接続されている。地板20は、アンテナ特性上、誘電体12の床面積よりもかなり大きな面積が要求される。GNSS用パッチアンテナの場合、地板20は水平配置であり、放射電極13が上向き、つまり仰角90°方向を向いている。
【0005】
図23は
図22のGNSS用パッチアンテナに対してTEL用送受信アンテナであるTEL用アンテナ・エレメント16を付加した従来の複合アンテナ装置であり、
図22と同様の部材には同じ符号を付した。
図23におけるTEL用アンテナ・エレメント16は、LNA基板15上から地板20に対し鉛直方向に立ち上がり、その後平行に伸長するものである。この場合、TEL用アンテナ・エレメント16の地板20に垂直に鉛直方向に伸長する部分が主に電磁波を発生させる部位となり、偏波は地板20に対して垂直方向となる。TEL用アンテナ・エレメント16の地板20と水平方向の伸長した部分は、地板20近傍であることから、地板20には逆相の電流が発生し、地板20と平行な偏波(水平偏波)となる電磁波は発生しない。
図23と実質同様の構造が下記特許文献1に開示されているが、同じ理由で電話用アンテナが発生する電磁波は垂直偏波が強勢となる。
【0006】
図24は
図22のGNSS用パッチアンテナに対してTEL用送受信アンテナである平板状のTEL用アンテナ・エレメント17を地板20上に平行に付加した例であり、
図22と同様の部材には同じ符号を付した。
図23で説明したように、TEL用アンテナ・エレメント17と地板20が平行に近接しているため、
図23に記載したのと同じ理由で地板20に平行な偏波(水平偏波)の電磁波は発生しない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
実施の形態1
図1A及び
図1Bは本発明に係るアンテナ装置の実施の形態1を示す。これらの図において、アンテナ装置1は、車両としての自動車のインスツルメンツパネル内に配置されてGNSS信号を受信するGNSS用パッチアンテナ10と、地導体としての地板20と、共振型のアンテナエレメントの一例となるTEL用アンテナ・エレメント30とを備える。以下の説明では、GNSS用パッチアンテナを「パッチアンテナ」、TEL用アンテナ・エレメントを「アンテナ・エレメント」と称する。また、パッチアンテナ10、地板20、アンテナ・エレメント30を含む部分を「アンテナ装置本体部分」あるいは「主要部」と呼ぶ場合がある。
地板20の一部(本例では一部の端面)は、内側に切り欠かれている。以下、切り欠かれた部分を便宜上「切欠」と呼ぶ。図示の例では、地板20の一辺の端面の左右両縁部21を所定幅で残して切欠22が形成されている。アンテナ・エレメント30は、例えばL型形状の平板エレメントであってLNA基板15及び地板20と実質的に平行な面内で地板20と重ならない位置、換言すれば、切欠22の位置に設けられている。このとき、アンテナ・エレメント30の給電側(給電端)は地板20と一部重なってもよいが、アンテナ・エレメント30の主要部は地板20と重ならない。
アンテナ・エレメント30の給電端となる一端(L型形状の短辺の端部)は、LNA基板15の給電用導体パターン(図示省略)に接続される。アンテナ・エレメント30の他端(L型形状の長辺の端部)は開放端となっている。また、アンテナ・エレメント30は切欠22からはみ出さない配置である。なお、パッチアンテナ10の構成は
図22と同様であり、説明は省略する。
【0022】
実施の形態1の構成の場合、アンテナ・エレメント30と重なる部分には切欠22が形成されているため、アンテナ・エレメント30に給電したときに地板20に発生する逆相の電流の影響を無くすことが可能となり、アンテナ・エレメント30及び地板20と平行な面に電界の変動が発生し、アンテナ・エレメント30を大地に対して水平に配置とした場合に水平偏波が発生する。また、切欠22の3辺の内周縁部22a、22b、22c全長にわたって高周波電流が定在波として形成され易くなり、左右両縁部21を残さないで直線的に切り欠いた場合に比べ、所望の周波数帯域において良好なアンテナ送受信特性を得ることが可能となる。
【0023】
図2はアンテナ装置1の水平面の利得を測定した結果例であり、水平偏波の平均利得(dBi)の周波数特性を、垂直偏波の場合と対比して示すグラフである。
図2から垂直偏波の平均利得は微小であるのに対して、水平偏波の平均利得は充分大きいことがわかる。
【0024】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0025】
(1)アンテナ・エレメント30が、地板20と実質的に平行な面内で地板20と重ならない位置、つまり地板20に形成された切欠22の位置に設けられる。そのため、アンテナ・エレメント30に給電したときの地板20に発生する逆相の電流の影響を無くすことが可能となる。この結果、アンテナ・エレメント30と平行な偏波の電磁波(つまり、アンテナ・エレメント30が大地に対して水平に配置した場合には水平偏波の電磁波)をアンテナ・エレメント30の配置面と平行な方向(つまり、水平方向)に放射可能であり、水平偏波の電磁波の送受信を良好に行うことができる。
【0026】
(2)地板20には、その左右両縁部21を所定幅で残して切欠22が形成されており、切欠22の内周縁部22a、22b、22cの全長が左右両縁部21を残さないで直線的に切り欠いた場合に比べ長くなっている。このため、より低い周波数帯にわたって高周波電流が定在波として形成され易くなり、所望の周波数帯域(例えば699〜960MHz、1710〜2690MHz)において良好なアンテナ送受信特性を得ることが可能となる。
【0027】
(3)地板20の左右両縁部21を所定幅で残して切欠22を形成したことにより、切欠22を形成したことによる地板20の面積の減少の影響を抑制することが可能である。また、地板20上にパッチアンテナ10が搭載されている場合でも、必要な地板面積を確保でき、パッチアンテナ10の特性低下を回避できる。
【0028】
(4)アンテナ・エレメント30は切欠22からはみ出さない配置であり、アンテナ・エレメント30を設置することに起因してアンテナ装置1の設置面積が増大することは無い。
【0029】
実施の形態2
図3は本発明に係るアンテナ装置の実施の形態2を示す。この図において、アンテナ装置2は、パッチアンテナ10とアンテナ・エレメント30とを備えるが、地板20の形状が異なっている。すなわち、地板20の一部の端面に、片側縁部23を所定幅で残して切欠24が形成されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0030】
この場合も、アンテナ・エレメント30が、地板20と実質的に平行な面内で地板20と重ならない位置、つまり地板20に形成された切欠24の位置に存在するから、アンテナ・エレメント30に給電したときの地板20に発生する逆相の電流の影響を無くすことが可能となり、アンテナ装置2を大地に対して水平に配置した場合、水平偏波の電磁波の送受信を良好に行うことができる。
また、切欠24の内周縁部の全長が片側縁部23を残さないで直線的に切り欠いた場合に比べ長くなっているので、所望の周波数帯域において良好なアンテナ送受信特性を得ることが可能となる。また、アンテナ・エレメント30は切欠24からはみ出さないから、アンテナ・エレメント30を設置することに起因してアンテナ装置2の設置面積が増大することが無い。
【0031】
実施の形態3
図4は本発明に係るアンテナ装置の実施の形態3を示す。この図において、アンテナ装置3は、パッチアンテナ10とアンテナ・エレメント30とを備えるが、地板20の形状が異なっている。すなわち、地板20の一端面が、一方の縁から他方の縁に至るまで直線的に切り欠かれた結果、あたかも上記の切欠22が存在しないかの如く見える。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0032】
この場合も、アンテナ・エレメント30が、地板20と実質的に平行な面内で地板20と重ならない位置に配置されるから、アンテナ・エレメント30に給電したときの地板20に発生する逆相の電流の影響を無くすことが可能となり、アンテナ装置3を大地に対して水平に配置した場合に、水平偏波の電磁波の送受信を良好に行うことができる。
【0033】
実施の形態4
図5は本発明に係るアンテナ装置の実施の形態4を示す。この図において、アンテナ装置4は、パッチアンテナ10とアンテナ・エレメント40とを備える。アンテナ・エレメント40は地板20と一体に形成されている。つまり、アンテナ・エレメント40は複数の端部を有しており、そのうちの一端は地板20(導電面)に電気的に接続され、アンテナ・エレメント40の他端が給電端41となる。なお、
図5に示したアンテナ・エレメント40の形状、特に端部の配置や形状は例示であり、使用する周波数の共振長に応じて変更が可能である。また、アンテナ・エレメント40は、地板20と一体に形成する代わりに別部品の導体板で構成し、一端をはんだ付け等で接続した構造でもよい。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0034】
この実施の形態では、アンテナ・エレメント40が、地板20と実質的に平行な面内で地板20と重ならない位置に配置されるから、アンテナ・エレメント40に給電したときの地板20に発生する逆相の電流の影響を無くすことが可能となり、アンテナ装置4を大地に対して水平に配置した場合に、水平偏波の電磁波の送受信を良好に行うことができる。
【0035】
実施の形態5
図6から
図10で本発明に係るアンテナ装置の実施の形態5を説明する。これらの図に示すように、アンテナ装置5は、パッチアンテナ10とアンテナ・エレメント30(
図9〜
図10)が設けられた基板50と、基板50が固定された地導体としての地板20と、基板50及び地板20を含むアンテナ装置本体部分を車両に設けられたアンテナ取付機構(図示省略)へ離脱自在に装着可能な収容するホルダ60とを備えている。基板50は地板20に対してネジ67で複数箇所で固定されている。また、ホルダ60は地板20の左右両縁部21を保持する。
【0036】
この場合、
図9から
図10に示すように、アンテナ・エレメント30は、基板50の底面(パッチアンテナ10の誘電体12の載置面の反対面)に導体パターンとして形成されている。アンテナ・エレメント30は、基板50及び地板20と平行な面内で地板20に形成された切欠22と重なる位置に配置されている。なお、基板50上面には誘電体12の配置領域を含むように導電面の一例となるGND導体パターン52が形成されているが、アンテナ・エレメント30は、GND導体パターン52が無い上面の方形領域53の裏側の領域に形成される。
アンテナ・エレメント30は、例えば、F型形状であり、長エレメント部30a及び短エレメント部30bを有する。長エレメント部30aは、切欠22の開口に臨む縁に近い(図示の場合、縁に沿った)配置であり、短エレメント部30bは長エレメント部30aよりも内側に配置されている。アンテナ・エレメント30の給電端となる一端は、基板50の給電用導体パターン51と導通し、基板50の底面に固定されたコネクタ55の端子に電気的に接続される。パッチアンテナ10の受信信号もコネクタ55の他の端子に導出されている。この結果、パッチアンテナ10及びアンテナ・エレメント30は、コネクタ55を介して車内の電子機器に電気的に接続される。なお、その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0037】
図6及び
図7に示すように、ホルダ60は、底面部61と、底面部61の縁から立ち上がった方形枠の一辺が無い形状(コ字形)の枠状部62とを有し、枠状部62の開口に向かって左右内面に形成された凸部63と底面部61間の溝部64に地板20の両縁部21が挿入、保持される。ここで、
図6において、枠状部62の開口の幅方向を横方向、これに直交する方向を縦方向と定義したとき、地導体20の横方向幅及び縦方向長さは、地導体20が対面するホルダの底面部61の横方向幅及び縦方向長さと略同じ大きさに設定されている。つまり、ホルダ60は、パッチアンテナ10及びアンテナ・エレメント30を搭載した基板50と、基板50が固定された地板20とを含むアンテナ装置本体部分を収容可能な形状、寸法に設定されている。ホルダ60はインスツルメンツパネル内に固定される。
【0038】
実施の形態5の構成によれば、前述の実施の形態1の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
【0039】
(1)パッチアンテナ10を搭載した基板50にアンテナ・エレメント30を導体パターンで形成しており、量産性に優れ、コスト面で有利である。
【0040】
(2)地板20の左右両縁部21を残して切欠22を形成したことで、左右両縁部21をホルダ60の保持に利用でき、充分な地板20の側面長さ(縦方向長さ)を確保できるため、保持が確実となる。
【0041】
(3)アンテナ・エレメント30が、長エレメント部30a及び短エレメント部30bを有するF型形状である場合、2つの周波数帯での共振が可能で、広帯域化が可能となる。また、波長の長い周波数帯で共振する長エレメント部30aの方を切欠22の開口に臨む縁に近い(図示の場合、縁に沿った)配置とすることで、地板20が近接することによる影響をいっそう少なくすることができる。
【0042】
(4)基板50はネジ67で地板20に固定されるが、このとき、基板50側のGND導体パターン52が地板20に電気的に接続される。とくに、アンテナ・エレメント30の給電点に近い位置でGND導体パターン52と地板20との電気的接続をネジ67で行うことで、GND導体パターン52と地板20間の電気的接続経路が長くなることを回避してアンテナ特性を向上させることが可能である。
【0043】
以上、本発明は、広い面積の地板20が必要な場合において、地板20に対して実質的に平行なアンテナ・エレメント30,40と平行な偏波の電磁波を発生させるのに有効であるが、実施の形態1〜5の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0044】
実施の形態1から実施の形態3では、アンテナ・エレメント30がL型形状である場合を例示したが、水平偏波が発生可能であれば、L型形状に限定されず、実施の形態5のF型形状等としてもよい。
【0045】
パッチアンテナ10はGNSS用に限らず、GPSなどの他の衛星用(例えば衛星放送受信等)に設置されていてもよい。
【0046】
実施の形態6
図11から
図14で本発明に係るアンテナ装置の実施の形態6を説明する。
図11は本実施の形態におけるアンテナ装置本体部分の外観斜視図である。本実施の形態のアンテナ装置6は、地板20及び基板50の形状・構造と、アンテナ・エレメント42が実施の形態5のものと少し異なる。その他は実施の形態5と同じである。すなわち、本実施の形態におけるアンテナ装置6では、地板20の左右両縁部21が実施の形態5のものよりも短く、その分だけ凹状の切欠22の面積が小さくなっている。左右両縁部21には、図示しないアンテナカバーへの取付孔28が設けられている。アンテナカバーが取り付けられたアンテナ装置本体部分は、ホルダ60に挿入、保持される。アンテナ装置本体部分がホルダ60に保持されたアンテナ装置6は、インスツルメンツパネル内に固定される。
【0047】
また、地板20の面と実質的に平行に固定される基板50は、例えば矩形とその両端が略台形となる一体形状であり、一方の略台形の領域54を除く部分に導電面であるGND導体パターン52が形成されている。GND導体パターン52は地板20と電気的に接続される。GND導体パターン52の所定部位、例えば略中央部の面上には、誘電体12を介してパッチアンテナ10が設けられている。
基板50の両端間の長さは、地板20の同方向の長さとほぼ同じである。また、基板50の略台形状の領域54の先端部は、地板20の左右両端部21の先端部同士を結ぶ線上にある。
【0048】
基板50の一部である略台形の領域54は切欠22から露出する電波透過性の非導電面を形成しており、アンテナ・エレメント42は、この非導電面に形成される導体パターンである。そのため、アンテナ・エレメント42は、地板20と実質的に平行の面内で地板20と重ならない位置に設けられ、地板20と平行の偏波を送信し又は受信する。このようなアンテナ・エレメント42の構造例を
図12に示す。
【0049】
図12は
図11のアンテナ装置本体部分を下方(車両のアンテナ取付機構側)から見た平面図である。アンテナ・エレメント42は、板状の導体パターンであるハイバンド部421とミアンダ状の導体パターンであるローバンド部422とを含む。
ローバンド部422は、その先端が開放端であり、その基端がハイバンド部421のうち給電端420に対して遠く離れた部分から延びる。ローバンド部422は、また、LTEのローバンド(699MHz〜960MHz)の信号の送受信を可能にするサイズになるように、基板50の外周に沿って、途中からエレメントが折れ曲がる部分(以下、「ターン」)の向きとエレメント長とを変えながら形成されている。
ハイバンド部421は、LTEのハイバンド(1710MHz〜2690MHz)の信号の送受信を可能にするサイズに設計されている。上述した給電用導体パターン51には、ハイバンド部421の基端でもある給電端420が電気的に接続される(導通する)。
なお、ハイバンド部421は、ローバンド部422に比べて共振する周波数帯が高いので、相対的に地板20の影響を受けにくい。このため、ハイバンド部421は、ローバンド部422よりも地板20に近い位置に形成されている。
【0050】
図13はVSWR特性図であり、縦軸はVSWR、横軸は周波数(MHz)である。
図13中、破線は地板20をアンテナ装置6の地板20と同様にした
図24のアンテナ装置のVSWR特性例を示し、実線は本実施の形態のアンテナ装置6のVSWR特性例を示す。
図13に示されるように、本実施の形態のアンテナ装置6(実線)の方が
図24のアンテナ装置(破線)よりもLTEのハイバンド及びローバンドの全周波数帯にわたってVSWRが低くなることがわかる。
【0051】
また、パッチアンテナ10の周囲に、より面積の大きいGND導体パターン52が形成されていることから、パッチアンテナ10のインピーダンス整合がとりやすくなり、VSWR特性も安定するほか、アンテナ・エレメント42との距離がより長くなるので、アンテナ・エレメント42との相互干渉も抑制される。
【0052】
実施の形態7
図14及び
図15で本発明に係るアンテナ装置の実施の形態7を説明する。
図14は
図11のアンテナ装置本体部分を下方(地板20が設置される方向)から見た平面図であり、便宜上、地板20が省略されている。本実施の形態のアンテナ装置7は、アンテナ・エレメント43が基板50のうち略台形の領域54(切欠22から露出する非導電面)に形成される点及びその形状が
図12に示したものと異なる点以外は、実施の形態6と同じである。
【0053】
アンテナ・エレメント43は、先端が開放端となる板状の導体パターンであるハイバンド部431と、同じく先端が開放端となるミアンダ状の導体パターンであるローバンド部432とを含む。それぞれの給電端430は共有されている。すなわち、GND導体パターン58と非導通の給電用導体パターン51には、ハイバンド部431の基端(給電端430)とローバンド部432の基端と一体の導体パターン(給電端430)とが電気的に接続される(導通する)。GND導体パターン58は、略台形の領域54の近くに形成されており、GND導体パターン52とは別の導体パターンである。
ハイバンド部431は、ローバンド部432に比べて共振する周波数帯が高いので、相対的に地板20の影響を受けにくい。このため、ハイバンド部431は、ローバンド部432よりも地板20に近い位置に形成されている。
なお、
図14の例では、ハイバンド部431の基端から先端までの長さ(
図14中、左右方向の長さ)は、ローバンド部432の基端から先端までの長さ(
図14中、左右方向の長さ)よりも短いが、LTEのハイバンドにおいて共振するサイズであればよいので、常に
図14に示されるパターンにしなければならないものではない。
【0054】
図15はVSWR特性図であり、縦軸はVSWR、横軸は周波数(MHz)である。
図15中、破線は実施の形態6のアンテナ装置6のVSWR特性例を示し、実線は本実施の形態のアンテナ装置7のVSWR特性例を示す。
図15に示すように、アンテナ装置7の方が実施の形態6のアンテナ装置6に比べてLTEのローバンドにおいてVSWRが低くなり、かつ、ハイバンドにおいてVSWRの変動が小さくなることがわかる。
【0055】
実施の形態8
図16から
図19で本発明に係るアンテナ装置の実施の形態8を説明する。
図16は、
図11のアンテナ装置本体部分を下方(地板20が設置される方向)から見た平面図であり、便宜上、地板20が省略されている。本実施の形態のアンテナ装置8は、アンテナ・エレメント44のハイバンド部441とローバンド部442のいずれもミアンダ形状のエレメントを含む点が実施の形態7と異なる。なお、ハイバンド部441とローバンド部442のそれぞれの給電端440は共有されている。
【0056】
ローバンド部442は、基端のエレメントが、先端に向かう他のエレメントよりも相対的に面積の大きい板状であり、かつ、基端から先端に延びるエレメントがミアンダ状となる。この場合、ミアンダの最初のターンが給電端440及びGND導体パターン58から遠く離れた部分より始まる。また、先端に至る途中のエレメントのうち、ターンの部分の近くにハイバンド部441が存在しない区間では、ターンがハイバンド部441のターンと平行となる部分よりも下方(
図16の下方向)に長く延びる。そのため、ローバンド部442の基端から先端に向かう長さ(
図16の左右方向)を短くすることができる。
また、ローバンド部442の先端及び先端付近のターンの部分はハイバンド部441のエレメントの幅(
図16の上下方向の幅)を超えない。つまり、ミアンダ状のエレメントの各ターンの部分や先端とGND導体パターン58との距離がハイバンド部441よりも常に長くなる。そのため、LTEのローバンドにおいてVSWRが実用レベルまで低い周波数の範囲の狭帯域化を抑制することができる。
【0057】
図17にVSWR特性図を示す。縦軸はVSWR、横軸は周波数(MHz)である。
図17中、破線は実施の形態7のアンテナ装置7のVSWR特性例であり、実線は本実施の形態のアンテナ装置8のVSWR特性例である。
図17に示されるように、実施の形態8の場合、LTEのローバンドにおけるVSWRが全体的にアンテナ装置7の場合よりも低くなり、LTEのハイバンドにおいてもVSWRが急激に変化する現象が緩和されることがわかる。
【0058】
ハイバンド部441及びローバンド部442のミアンダ形状の導体パターンは、本実施の形態において説明した例に限定されず、LTEの周波数帯で共振する限りにおいて任意に変形が可能である。例えば
図18に示すアンテナ装置8’の導体パターンであってもよい。
図18に示す例では、ハイバンド部451の基端から先端までの長さが
図16に示したものよりも短く、かつ、その先端が基端の高さ(
図18の上下方向)よりも低く形成されている。また、ローバンド部452は、その基端の面積が
図16に示す例よりも大きく、その分、ミアンダのターン数が
図16に示す例より少なくなっている。ローバンド部452は、基端から先端に延びるエレメントの最初のターンが給電端450及びGND導体パターン51に最も近い部分より始まる。なお、ハイバンド部451とローバンド部452のそれぞれの給電端450は共有されている。
この場合のVSWR特性を
図19に示す。
図19中、破線は
図16に示したアンテナ・エレメント44を有するアンテナ装置8のVSWR特性例であり、実線は
図18に示したアンテナ・エレメント45を有するアンテナ装置8’のVSWR特性例である。
図19に示されるように、アンテナ装置8’の場合、LTEのローバンドのうち900MHzを超える周波数帯域でのVSWRがより低く、広帯域化が図れることがわかる。
【0059】
なお、
図16及び
図18の例では、ローバンド部442,452の先端付近のターンの位置がハイバンド部441,451の幅(図中の上下方向)を超えないが、その位置がハイバンド部441,451の幅を超えてGND導体パターン58に近づくと、LTEのローバンドのうちLTEのローバンドにおいてVSWRを良好に維持できる範囲が急激に狭くなることが判明している。
【0060】
実施の形態9
図20A,
図20Bで本発明に係るアンテナ装置の実施の形態9を説明する。
図20Aは、
図11のアンテナ装置本体部分を下方(地板20が設置される方向)から見た平面図であり、
図20Bは
図11のアンテナ装置本体部分を上方(
図20Aの裏側)から見た平面図である。本実施の形態のアンテナ装置9は、アンテナ・エレメント46の形状とその形成位置が実施の形態8と異なる。
【0061】
本実施の形態のアンテナ装置9は、アンテナ・エレメント46が、基板50における略台形の領域54の表面の非導電面に形成され、当該領域54の裏面に形成された給電用導体パターン51とスルーホールで電気的に接続される(導通する)。ハイバンド部461は、GND導体パターン52の外縁の形状に沿い、かつ、外縁から一定の距離をおいて形成される。すなわち、GND導体パターン52の外縁がアンテナ・エレメント46の方向に突出する区間ではハイバンド部461の基端から延びるエレメントが直線状であり、GND導体パターン52の外縁がアンテナ・エレメント46から遠ざかった区間でミアンダ状となり、先端は基端と同じ高さ(
図20Bの上下方向)となる。そのため、
図14,
図16,
図18に示したハイバンド部431,441,451に比べて、GND導体パターン52、58及び地板20の影響を受けにくくなり、LTEのハイバンドでのVSWRが低くなる。また、VSWRの変動が緩和されるほか、水平偏波の平均利得の向上が図れる効果がある。
【0062】
一方、ローバンド部462は、基端の部分が、先端に向かう他のエレメントよりも相対的に面積の大きい板状である。また、先端に至る途中のエレメントのうち、ミアンダのターンの部分の近くにハイバンド部461が存在しない区間では、ターンがハイバンド部461のものと平行になる区間よりもターン長(
図20Bの下方向に向かう長さ)が長くなる。そのため、ローバンド部462の基端から延びる長さ(
図20Bの左右方向)を短くすることができる。また、ローバンド部462のどのターンの部分も、ハイバンド部461のうちGND導体パターン52から最も離れたエレメントよりもGND導体パターン52に向けて延びることがない。そのため、GND導体パターン52,58及び地板20の影響を受けにくくなり、LTEのローバンドでのVSWRが低くなる。また、VSWRの変動が緩和されるほか、水平偏波の平均利得の向上が図れる効果がある。
なお、ハイバンド部461とローバンド部462のそれぞれの給電端460は共有されている。
【0063】
基板50の非導電面は電波透過性なので、アンテナ・エレメント46が形成されている基板50の表面(パッチアンテナ10が設けられている面)において電波の送信又は受信が可能となる。そして、LTEのローバンド及びハイバンドにおける平均利得が高まる。
【0064】
実施の形態のアンテナ装置9の地板20、アンテナ・エレメント46、基板50、GND導体パターン52,58が大地に対して平行となるように配置し、動作のシミュレーションを行ったときの平均利得特性図を
図21A及び
図21Bに示す。この場合、アンテナ・エレメント46で送信又は受信する電波は水平偏波となる。
図21AはLTEのローバンドにおける水平面の水平偏波の平均利得特性例、
図21BはLTEのハイバンドにおける水平面の水平偏波の平均利得特性例である。これらの図において、縦軸は水平偏波の平均利得(dBi)、横軸は周波数(MHz)である。また、破線は基板50の裏面、すなわち
図20Aに示される領域54にアンテナ・エレメント46を形成したときの平均利得特性例を示し、実線は本実施の形態のアンテナ装置9における平均利得特性例を示す。
本実施の形態のように、アンテナ・エレメント46を基板50の表面に形成した方が、ほとんどの周波数帯においても平均利得が高くなっていることがわかる。
また、ローバンドでは810MHz前後、ハイバンドでは1760MHz前後で、表面及び裏面とも、他の周波数帯よりも平均利得が高くなっている。