(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6964785
(24)【登録日】2021年10月21日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】原子炉を制御し保護するためのシステムにおける動作機構
(51)【国際特許分類】
G21C 7/12 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
G21C7/12 200
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-538979(P2020-538979)
(86)(22)【出願日】2018年12月24日
(65)【公表番号】特表2021-512281(P2021-512281A)
(43)【公表日】2021年5月13日
(86)【国際出願番号】RU2018000855
(87)【国際公開番号】WO2019139503
(87)【国際公開日】20190718
【審査請求日】2020年9月10日
(31)【優先権主張番号】2018101359
(32)【優先日】2018年1月15日
(33)【優先権主張国】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】516219347
【氏名又は名称】ステート・アトミック・エナジー・コーポレーション・ロスアトム・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ロシアン・フェデレーション
【氏名又は名称原語表記】STATE ATOMIC ENERGY CORPORATION ‘ROSATOM’ ON BEHALF OF THE RUSSIAN FEDERATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】クドリャフツェフ ミハイル ユリエビッチ
【審査官】
大門 清
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−232494(JP,A)
【文献】
特開平10−026685(JP,A)
【文献】
特開平11−094976(JP,A)
【文献】
特開昭53−079195(JP,A)
【文献】
特開平8−248168(JP,A)
【文献】
米国特許第05069860(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第0026142(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 7/12
G21C 7/14
G21C 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉を制御し保護するためのシステムにおける動作機構であって、
電機子を有するリニアステップモータと、
前記電機子と同軸に配置され、前記電機子とともに垂直移動および垂直軸を中心とした回転が可能であるように前記電機子に堅固に連結され、作動部材への差し込み連結が可能であるように構成されたロッドと、
前記ロッドが自然発生的に回転することを防止するロック機構と
を備え、
前記差し込み連結は、L字型であり、
前記ロック機構は、
前記電機子の内側に位置し、フランジおよび長尺の貫通孔を有する案内部材と、
作動ストローク中の前記貫通孔における垂直移動のために、前記電機子に堅固に連結され、かつ、前記貫通孔内に位置するクロス部材と、
前記フランジの内表面が載置される固定リングと、
垂直ピンと
を含み、
前記フランジの外縁には、複数の貫通切欠きが等間隔で設けられ、
前記固定リングの円周上には、複数の穴が等間隔で設けられ、
前記垂直ピンは、前記フランジの前記貫通切欠きの一つを通って、前記固定リングの前記穴の一つに挿入される
ことを特徴とする動作機構。
【請求項2】
前記フランジの前記貫通切欠きと前記固定リングの前記穴とは、互いに2°以下の角度ピッチの差で設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の動作機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力技術分野に関し、原子炉を制御し保護するためのシステムにおける動作機構に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
本発明の本質的特徴に総じて最も類似する技術は、原子炉を制御し保護するためのシステムにおける動作機構である(非特許文献1)。この動作機構は、電機子(アンカー)を有するリニアステップモータと、電機子と同軸に配置され、電機子とともに垂直移動および垂直軸を中心とした回転が可能であるように電機子に堅固に連結され、作動部材への差し込み連結が可能であるように構成されたロッドと、自然発生するロッドの回転を防止するロック機構とを備える。
【0003】
原子炉を制御し保護するためのシステムにおける公知の動作機構によれば、ロック機構は、ロッドの下端に設けられたバネ式ストッパで構成される。ロッドを共通の垂直軸を中心に回転させることによってロッドと作動部材の連結および分離が可能であるように、差し込み連結は、U字型になっている。なお、作動部材は、回転しないよう構成されている。
【0004】
ロッドと作動部材の連結は、ロッドの3段階のストロークで行われる(ロッドを、差し込み連結のコーナーのストッパまで降下させ、差し込み連結の次のコーナーまで完全に回転させ、差し込み連結の終端でストッパまで上昇させる)。バネ式ストッパは、ロッドと作動部材が連結した状態では、差し込み連結の終端からロッドが外れないようにすることによって、作動部材への差し込み連結が解除される向きにロッドが回転することを防止する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】I.Ya.Yemelyanov、V.V.Voskoboinikov、B.A.Maslenok、Fundamentals of the construction of actuating mechanisms for the control of nuclear reactors、ロシア連邦、M.:Energoatomizdat、1987年、p.41、
図3.15b
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原子炉を制御し保護するためのシステムにおける公知の動作機構の欠点は、ロッドの下端領域が硬放射線や高温にさらされてバネ式ストッパが故障すると、ロッドと作動部材の差し込み連結が自然発生的に解除されるおそれがあることである。
【0007】
本発明の目的は、ロッドと作動部材を連結する操作が簡略化され、硬放射線や高温にさらされた条件下でのロッドと作動部材の連結の信頼性が向上した、原子炉を制御し保護するためのシステムにおける動作機構を提供することである。
【0008】
本発明の技術的効果は、差し込み連結が自然発生的に解除されることを防止しつつ、少ない作動ストローク数で連結および分離が可能であることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の技術的効果は、原子炉を制御し保護するためのシステムにおける動作機構において、電機子を有するリニアステップモータと、前記電機子と同軸に配置され、前記電機子とともに垂直移動および垂直軸を中心とした回転が可能であるように前記電機子に堅固に連結され、作動部材への差し込み連結が可能であるように構成されたロッドと、前記ロッドが自然発生的に回転することを防止するロック機構とを備える動作機構により、達成される。
【0010】
前記差し込み連結は、L字型である。前記ロック機構は、前記電機子の内側に位置し、フランジおよび長尺方向に長い貫通孔を有する案内部材と、作動ストローク中の前記貫通孔における垂直移動のために前記電機子に堅固に連結され、かつ、前記貫通孔内に位置するクロス部材と、前記フランジの内表面が載置される固定リングと、垂直ピンとを含む。前記フランジの外縁には、複数の貫通切欠きが等間隔で設けられる。前記固定リングの円周上には、複数の穴が等間隔で設けられる。前記垂直ピンは、前記フランジの前記貫通切欠きの一つを通って、前記固定リングの前記穴の一つに挿入される。
【0011】
さらに、前記フランジの前記貫通切欠きと前記固定リングの前記穴とは、互いに2°以下の角度ピッチの差で設けられる。
【0012】
ロッドが自然発生的に回転することを防止するロック機構は、構成要素を使用する。当該構成要素は、放射線にさらされない低温領域においてロッドの上方に配置される。これによりロック機構の初期動作特性を保持できるので、ロッドと作動部材の連結の信頼性を向上させることができる。さらに、上述したロック機構の実施形態により、双方向の(two−way)差し込み連結、すなわち本発明のL字型の差し込み連結を用いることができる。
【0013】
原子炉を制御し保護するためのシステムの請求項に係る動作機構では、ロッドの回転を停止することによって、連結が解除される向きにロッドが回転することを防止する。よって、公知の動作機構(プロトタイプ)において用いられる第3のクラッチストロークおよびバネ式ストッパは、請求項に係る動作機構では用いられない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
請求項に記載の発明の本質は、図面によって例示される。
【
図1】原子炉を制御し保護するためのシステムにおける動作機構を示す全体断面図である。
【
図2】ロッドが自然発生的に回転することを防止するロック機構に含まれる案内部材のフランジを示す上面
図Aである。
【
図3】クロス部材を備える電機子を示す、
図1のb−b線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
原子炉を制御し保護するためのシステムにおける動作機構は、垂直管状の電機子(アンカー)2を有するリニアステップモータ1と、電機子2と同軸に設けられ、電機子2とともに垂直移動および共通の垂直軸を中心とした回転が可能であるように電機子2に堅固に連結されたロッド3と、ロッド3が自然発生的に回転することを防止するロック機構とを備える。ロッド3の下端は、L字型の差し込み連結によって作動部材4に連結される。
【0016】
ロッドが自然発生的に回転することを防止するロック機構は、案内部材5と、クロス部材6と、固定リング7と、垂直ピン8とを含む。案内部材5は、その上端にフランジを有する。案内部材5の自由下側部分は、電機子2の内側に位置する。案内部材5のフランジは、その内表面が固定リング7上に載置された状態で、固定リング7の内周に対して中心に位置する。
【0017】
案内部材5の自由下側部分には、案内部材5の長尺方向に長尺の貫通孔がある。貫通孔にはクロス部材6が挿通されている。クロス部材6は、作動ストローク中の貫通孔に沿った垂直移動のために電機子2に堅固に固定される。案内部材5のフランジの外縁の円周上には、縦方向に貫通した複数の切欠きが等間隔で設けられる。固定リング7の円周上には、垂直方向に複数の穴が等間隔で設けられる。垂直ピン8は、案内部材5のフランジに設けられた貫通切欠きの一つを通って、固定リング7に設けられた穴の一つに挿入される。案内部材5のフランジの貫通切欠きと固定リング7の穴とは、互いに2°以下の角度ピッチの差で設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
原子炉を制御し保護するためのシステムにおける動作機構は、以下のように動作する。
【0019】
リニアステップモータ1は、電機子2およびロッド3を垂直移動させる。ロッド3は、電機子2に堅固に連結され、L字型の差し込み連結により垂直方向に作動部材4に連結されている。作動部材4の垂直移動により、原子炉内の核反応が増減する。
【0020】
ロッド3を作動部材4に連結するには、以下の動作を行う。まず、電機子2から垂直ピン8を引き抜く。次に、ロッド3が作動部材4内の差し込み連結のコーナーに当接するまで、ロッド3を電機子2および案内部材5とともに回転させて、ロッド3を作動部材4内の差し込み連結の終端に当接させて停止させる。最後に、垂直ピン8を案内部材5のフランジの貫通切欠きに通して固定リング7の穴に挿入する。
【0021】
ロッド3を作動部材4から分離するには、以下の動作を行う。まず、固定リング7の有底穴から垂直ピン8を引き抜く。次に、ロッド3が作動部材4内の差し込み連結のコーナーに当接するまで、ロッド3を電機子2および案内部材5とともに回転させて、ロッド3を電機子2とともに持ち上げて作動部材4内の差し込み連結から分離する。最後に、垂直ピン8を案内部材5のフランジの切欠きに通して固定リング7の穴に挿入する。