(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る空調管理システムの全体的な構成図である。
図2は、
図1の空調システムの各通信機器間での通信データの取得に関する概略構成図である。
図3は、
図2の室外機におけるシリアル通信での通信データの取得に関する概略構成図である。
図1〜
図3を参照して、本実施の形態1の空調管理システム100の構成を説明する。なお、
図2では、室内機40とリモートコントローラ45とを1台ずつ示している。
【0011】
図1に示すように、空調管理システム100は、空調システム10と、記憶処理装置60と、端末装置70と、により構成されている。空調システム10は、複数の通信機器として、1台又は複数台の室外機20と、1台又は複数台の室内機40と、1台又は複数台のリモートコントローラ45と、システムコントローラ50と、を有している。
図1では、空調システム10が、1台の室外機20と、4台の室内機40と、4台のリモートコントローラ45と、を有する場合を例示している。以降では、
図1の構成を前提として説明する。
【0012】
現地据付のリモートコントローラ45は、部屋の壁面などに配置され、室内機40の遠隔操作を行う機能を備えている。システムコントローラ50は、空調システム10を統括的に管理する。記憶処理装置60は、例えば、クラウドコンピューティングに基づくクラウドサーバであり、ストレージとしての機能を有している。もっとも、記憶処理装置60は、Webサーバ等の物理サーバであってもよい。
【0013】
端末装置70は、空調システム10の設計者又はサービスマン等が在席している代理店等に設置されたPC(Personal Computer)である。端末装置70としては、デスクトップPC、ノートPC、及びスマートフォン等の通信端末が想定される。室外機20と記憶処理装置60と端末装置70とは、インターネットなどのネットワーク500を介して接続され、互いに通信が可能となっている。すなわち、記憶処理装置60は、ネットワーク500を介してアクセス可能となっている。
【0014】
室外機20は、例えば屋外に設置され、
図2に示すように、制御ユニット11と、圧縮機駆動ユニット12と、ファン駆動ユニット13と、を有している。また、室外機20は、圧縮機31と、室外熱交換器32と、膨張弁33と、電磁弁34と、ファン35と、を有している。さらに、室外機20には、吸入圧力センサ37と吐出圧力センサ38とが設けられている。
【0015】
圧縮機31は、インバータ回路12bによって駆動される圧縮機モータ31aを有し、冷媒を吸入して圧縮する。室外熱交換器32は、例えばフィンアンドチューブ型熱交換器からなり、冷媒回路を流れる冷媒と外気との間で熱交換させる。膨張弁33は、例えば電子膨張弁からなり、冷媒を減圧して膨張させる。電磁弁34は、冷媒を通過させ又は遮断する。ファン35は、ファン駆動回路13bによって駆動されるファンモータ35aと、ファンモータ35aを動力源として回転し、室外熱交換器32に風を送る羽根車35bと、を有している。
【0016】
圧縮機駆動ユニット12は、圧縮機31の駆動用のインバータ回路12bなどがインバータ基板12aに実装されたものである。ファン駆動ユニット13は、ファン35の駆動用のファン駆動回路13bなどがファン基板13aに実装されたものである。
【0017】
吸入圧力センサ37は、圧縮機31の吸入側に設けられ、圧縮機31に吸入される冷媒の圧力である計測する。吐出圧力センサ38は、圧縮機31の吐出側に設けられ、圧縮機31から吐出される冷媒の圧力を計測する。もっとも、室外機20には、例えばサーミスタからなり、冷媒の温度を計測する冷媒温度センサを有していてもよい。
【0018】
制御ユニット11は、例えば室外機20の制御箱内に収容され、プロセッサ及びメモリなどが実装されたメイン基板11aを有している。より具体的に、制御ユニット11は、空調制御装置21と、中継装置22と、伝送装置23aと、伝送装置23bと、波形処理装置24aと、波形処理装置24bと、データ取得処理装置25と、記憶装置26と、を有しており、これらはメイン基板11aに実装されている。詳細については後述する。
【0019】
室内機40は、例えば屋内に設置され、割り当てられた空調対象空間の空気環境を調整する。ここで、複数の室内機40は、1台ずつ別々の部屋等に配置されてもよく、2台以上の室内機40が同じ部屋等に配置されてもよい。各室内機40は、内部のアクチュエータを制御する室内制御装置41を有している。室内制御装置41は、室外機20、リモートコントローラ45、及びシステムコントローラ50からの通信データを読み取り、読み取った通信データを室内機40の制御に使用する。
【0020】
また、各室内機40には、例えばサーミスタからなり、空調対象空間の温度を測定する室内温度センサ42が設けられている。室内温度センサ42は、例えば、室内機40の吸込口に設けられる。室内制御装置41は、室内温度センサ42による測定温度の情報を室外機20などの通信機器へ出力する機能を有している。そして、室内機40は、例えばフィンアンドチューブ型熱交換器からなる室内熱交換器(図示せず)を有している。
【0021】
つまり、本実施の形態1の空調システム10は、室外機20の圧縮機31、室外熱交換器32、膨張弁33、及び電磁弁34と、各室内機40の室内熱交換器とが冷媒配管によって接続され、冷媒が循環する冷媒回路を有している。もっとも、各室内機40には、例えば電子膨張弁からなる減圧装置などが設けられてもよい。また、空調システム10は、冷房運転と暖房運転との双方を実現可能なものであってよく、この場合、室外機20には、冷媒の流路を切り替える四方弁などが設けられる。
【0022】
以降では、室外機20と室内機40との間の通信路、及び室外機20とリモートコントローラ45との間の通信路のことを「室内外系」という。また、室外機20とシステムコントローラ50とを配線する通信路、及び室外機20同士を配線する通信路のことを「集中系」という。なお、
図2では、空調制御装置21のアドレスとして「051」を例示し、室内機40のアドレスとして「001」を例示し、リモートコントローラ45のアドレスとして「101」を例示し、システムコントローラ50のアドレスとして「000」を例示している。
【0023】
空調制御装置21は、マイコンなどの演算装置と、こうした演算装置と協働して冷媒制御などの空調機能を実現させるソフトウェアとにより構成することができる。空調制御装置21は、室外機20を制御するものである。すなわち、空調制御装置21は、室内制御装置41と連携して、室外機20の各種アクチュエータを制御する。本実施の形態1において、空調制御装置21は、圧縮機31、膨張弁33、電磁弁34、及びファン35の動作を制御する。
【0024】
中継装置22は、例えばマイクロプロセッサにより構成され、各通信機器間の通信において、集中系及び室内外系の通信データの中継を行う。つまり、中継装置22は外部からの通信データを空調制御装置21に中継するものである。ここで、マイコン及びプロセッサなどの演算装置は、クロック周期の1周期あたりに処理できるタスクに限りがある。そのため、中継装置22は、外部から送信された通信データのうち、空調制御装置21向けの通信データ以外を読み捨て、冷媒制御などを担う空調制御装置21が必要のない情報を取得しないように作用する。すなわち、中継装置22は、ブリッジとして機能し、通信データの送信先アドレスが空調制御装置21のアドレス以外の場合、その通信データは受け取らずに読み捨てる仕様となっている。
【0025】
伝送装置23a及び伝送装置23bは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのプロセッサで構成され、各通信機器間の信号処理を実行する。伝送装置23a及び伝送装置23bが行う信号処理には、外部に送信する通信データを生成する処理、及び受信した通信データを中継装置22に転送する処理などがある。伝送装置23aは、室内外系における中継装置22と波形処理装置24aとの間に接続され、室内外系に流れる通信データの信号処理を行う。伝送装置23bは、集中系における中継装置22と波形処理装置24bとの間に接続され、集中系に流れる通信データの信号処理を行う。
【0026】
波形処理装置24a及び波形処理装置24bは、例えばIC(Integrated Circuit)により構成される。波形処理装置24aは、伝送装置23aが出力する通信データに波形処理等を施す。波形処理装置24bは、伝送装置23bが出力する通信データに波形処理等を施す。
【0027】
データ取得処理装置25は、マイコンなどの演算装置と、こうした演算装置と協働して下記の各機能を実現させるソフトウェアとにより構成することができる。データ取得処理装置25は、各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを外部に設けられた記憶処理装置60に保存させる。すなわち、データ取得処理装置25は、取得した通信データを経時的に記憶処理装置60へ蓄積させる。
【0028】
本実施の形態1のデータ取得処理装置25は、室外機20と他の通信機器との間の通信線に接続され、各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを取得する。つまり、データ取得処理装置25は、室内外系及び集中系に接続されており、空調システム10を構成する各通信機器間の通信線上に流れる全ての通信データを取得する。データ取得処理装置25が取得する通信データは、空調システム10の動作確認等を行う際に利用される。
【0029】
図3にも示すように、データ取得処理装置25は、例えばメイン基板11aとファン基板13aとの間、又はメイン基板11aとインバータ基板12aとの間といった、基板間のシリアル通信における全ての通信データを取得する。データ取得処理装置25は、空調制御装置21から自アドレスの情報を取得せず、自アドレスを認識しないようになっている。したがって、データ取得処理装置25は、空調システム10におけるアドレス設定に関わらず、全ての通信データを読み捨てずに取得することができる。
【0030】
より具体的に、データ取得処理装置25から延びる室内外系配線Laは、波形処理装置24aよりも外側、すなわち室内外系における波形処理装置24aの室内機40側に接続されている。データ取得処理装置25から延びる集中系配線Lbは、波形処理装置24bよりも外側、すなわち集中系における波形処理装置24bのシステムコントローラ50側に接続されている。このように、データ取得処理装置25は、波形処理装置24a及び波形処理装置24bよりも外側に配置されているため、室内外系及び集中系に流れる全ての通信データを取得することができる。なお、室外機20から送信される通信データのフレームは、伝送装置23a及び波形処理装置24aと、伝送装置23b及び波形処理装置24bとで作成される。そのため、これらよりも内側にデータ取得処理装置25を接続した場合、データ取得処理装置25は、室外機から送信される通信データを正しく取得することができない。
【0031】
データ取得処理装置25は、取得した通信データを記憶装置26に一時記憶させる。つまり、記憶装置26は、データ取得処理装置25によって取得された通信データを記憶するメモリである。データ取得処理装置25は、記憶装置26に一時記憶させた通信データを用いて、各通信機器の構成部材に異常が発生しているか否か、つまり各通信機器の構成部材が想定通りの動きをしているか否かを判定する。本実施の形態1のデータ取得処理装置25は、取得した通信データから、各通信機器の構成部材の故障、又は故障の前兆を検知することができる。
【0032】
例えば、データ取得処理装置25には、吸入圧力センサ37、吐出圧力センサ38、及び室内温度センサ42などのセンサが有効な範囲の値を示しているか否かを判定する機能を持たせることができる。この場合、データ取得処理装置25には、センサごとの有効な範囲の情報が予め設定される。データ取得処理装置25は、あるセンサの計測値が有効な範囲から外れていれば、当該センサに異常が発生していると判定する。データ取得処理装置25は、有効な範囲の上限値又は下限値と計測値との差分に応じて、センサの異常の程度を決定するようにしてもよい。このようにすれば、センサの故障を精度よく検知することも可能となる。
【0033】
また、データ取得処理装置25には、電磁弁34が要求通りに開閉しているか否か、膨張弁33が要求通りの開度で開いているか否かなどを判定する機能を持たせることができる。他に、データ取得処理装置25には、各通信機器間の通信において、要求に対する応答が正しい値になっているか否かを判定する機能を持たせることができる。例えば、ファン35からの騒音を抑えるナイトモードの設定指令がシステムコントローラ50等から届いている場合、データ取得処理装置25は、当該設定指令に応じて、ファンモータ35aの回転周波数が通常よりも低くなっているか否かを判定する。ここで、各通信機器の構成部材についての異常判定の項目は、上記3つの例に限らず、種々の項目を採用することができる。
【0034】
データ取得処理装置25は、上記の異常判定の結果、想定通りの動きをしていない構成部材が存在した場合、空調システム10に異常が発生していることを示す異常データを外部へ送信する。本実施の形態1において、データ取得処理装置25は、リモートコントローラ45、システムコントローラ50、及び端末装置70のうちの少なくとも1つに異常データを送信する。データ取得処理装置25は、異常判定の項目によって異常が発生している構成部材が決まるため、異常が発生している構成部材の情報である特定情報を異常データに含めて送信してもよい。
【0035】
データ取得処理装置25がリモートコントローラ45に異常データを送信すると、リモートコントローラ45は、空調システム10に異常が発生している旨の情報を報知する。これにより、リモートコントローラ45が配置された部屋などに存在するユーザに、空調システム10の異常の発生を認識させることができ、サービスマン等への連絡などの対処を促進することができる。ここで、リモートコントローラ45による報知の手法としては、文字又は画像の表示の他、音声での報知などが想定される。リモートコントローラ45は、異常データに特定情報が含まれる場合、異常が発生している構成部材の情報を文字又は音声などで報知してもよい。
【0036】
データ取得処理装置25がシステムコントローラ50に異常データを送信すると、システムコントローラ50は、空調システム10に異常が発生している旨の情報を報知する。これにより、システムコントローラ50によって空調システム10を管理している管理者等に、空調システム10に異常が発生していることを認識させることができ、サービスマン等への連絡といった処置を促すことができる。システムコントローラ50による報知の手法は、リモートコントローラ45と同様であり、システムコントローラ50は、異常データに特定情報が含まれる場合、異常が発生している構成部材の情報を文字又は音声などで報知してもよい。
【0037】
データ取得処理装置25がネットワーク500を通じて異常データを端末装置70へ送信すれば、空調システム10の異常をサービスマン等へ迅速に知らせることができる。そのため、処置を早めて故障などを回避し、他の構成部材への影響を最小限に抑えることができる。端末装置70による報知の手法は、リモートコントローラ45と同様であり、端末装置70は、異常データに特定情報が含まれる場合、異常が発生している構成部材の情報を文字又は音声などで報知してもよい。
【0038】
また、データ取得処理装置25は、取得した全ての通信データを、室外機20の外部に設けられた記憶処理装置60の保存領域に保存する。より具体的に、データ取得処理装置25は、上記の異常判定を行った後、判定に用いた通信データを、ネットワーク500経由で記憶処理装置60に保存させる。したがって、データ取得処理装置25による報知により、空調システム10に異常が発生していることを知ったサービスマン等は、現地に赴くことなく、記憶処理装置60に保存された通信データをネットワーク500経由で確認し、適切な措置をとることができる。その際、記憶処理装置60には、正常時の通信データも記憶されていることから、サービスマン等は、各構成部材の経時的な状態変化を知ることができるため、異常の傾向を把握し、より適切な措置を選択することができる。
【0039】
さらに、データ取得処理装置25は、端末装置70からのデータ送信要求に応じた情報を取得し、取得した情報を端末装置70へ返送する機能を有している。すなわち、サービスマン等は、記憶処理装置60から取得した通信データ以外に確認したいデータがあれば、端末装置70を操作することにより、ネットワーク500を通じて、データ取得処理装置25にデータの送信を要求することができる。データ取得処理装置25は、端末装置70からのデータ送信要求に応じて、通信データ又はセンシングデータなどを取得し、取得したデータを記憶装置26に記憶させた後、当該データを端末装置70へ送信する。ここで、データ取得処理装置25は、端末装置70からの要求に応じて取得したデータを記憶処理装置60に記憶させ、記憶処理装置60に記憶させたことを示す信号を端末装置70へ送信してもよい。
【0040】
もっとも、端末装置70からのデータ送信要求は、記憶処理装置60経由でデータ取得処理装置25に送信されてもよい。すなわち、記憶処理装置60が、端末装置70とデータ取得処理装置25との間のデータ通信を仲介し、記憶処理装置60からデータ取得処理装置25へコマンドが送信されるようにしてもよい。ところで、データ取得処理装置25は、センシングデータを取得する場合、空調制御装置21、各室内機40、各リモートコントローラ45、及びシステムコントローラ50などに、室内外系及び集中系の通信線を通じてデータを要求する信号を送信する。
【0041】
ここで、制御ユニット11は、波形処理装置24aの機能と波形処理装置24bの機能とを併せもつ1台の波形処理装置を有していてもよい。すなわち、制御ユニット11は、室外機20を制御する空調制御装置21と、外部からの通信データを空調制御装置21に中継する中継装置22と、中継装置22が中継する通信データに波形処理を施す1台又は2台の波形処理装置と、を有している。そして、データ取得処理装置25から延びる配線は、室外機20の内部であって、波形処理装置よりも外側の通信線、つまり波形処理装置から中継装置22とは反対側に延びる通信線に接続されている。
【0042】
図4は、
図1の空調管理システムの動作の概要を例示したフローチャートである。
図4を参照して、本実施の形態1の制御ユニット11による空調システム10の異常判定の方法について説明する。
【0043】
データ取得処理装置25は、各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを取得する(ステップS101)。そして、データ取得処理装置25は、取得した通信データを記憶装置26に一時記憶させる(ステップS102)。次いで、データ取得処理装置25は、記憶装置26に一時記憶させた通信データを用いて、空調システム10に異常が発生しているか否か、つまり各通信機器の構成部材に異常が発生しているか否かを判定する(ステップS103)。
【0044】
データ取得処理装置25は、空調システム10に異常が発生していると判定した場合(ステップS103/Yes)、空調システム10に異常が発生していることを示す異常データを外部へ送信する(ステップS104)。そして、データ取得処理装置25は、判定に用いた通信データを、ネットワーク500を介して記憶処理装置60に保存する(ステップS105)。また、データ取得処理装置25は、空調システム10に異常が発生していないと判定した場合も(ステップS103/No)、判定に用いた通信データを、正常時の通信データとして記憶処理装置60に保存する(ステップS105)。
【0045】
そして、データ取得処理装置25は、ステップS101〜S105の一連の処理を始めてからの経過時間が待ち時間となるまで待機し(ステップS106)、経過時間が待ち時間に到達したとき、ステップS101の処理へ移行する。すなわち、データ取得処理装置25は、ステップS101〜S106の一連の処理を待ち時間ごとに実行する。待ち時間は、予め設定され、適宜変更することができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態1の空調システム10は、各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを記憶処理装置60に保存させる。よって、外付けの計測器及び計測アプリが不要となるため、空調システム10の動作確認等を行う際の手間を削減し、各通信機器の状態調査の迅速性を高めることができる。すなわち、サービスマン等は、現地に据付けられた空調システム10の動作確認等を行う際、記憶処理装置60から、各通信機器の状態調査用として、各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを取得することができる。
【0047】
また、データ取得処理装置25は、室外機20と他の通信機器との間の通信線に接続され、各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを取得するようになっている。したがって、空調制御装置21等の内部構成を変更することなく、通信データの取得を高精度且つ迅速に行うことができる。
【0048】
さらに、データ取得処理装置25は、取得した全ての通信データをもとに、各通信機器の構成部材が故障していないか、或いは故障する前兆の動きがないかを判定する。そして、データ取得処理装置25は、判定の結果、故障している、或いは故障の前兆がみられる構成部材が存在する場合、リモートコントローラ45等に異常データを送信する。これにより、データ取得処理装置25は、例えば、リモートコントローラ45等の表示画面に、特定の構成部材に異常が発生している旨を表示させる。このように、空調管理システム100によれば、空調システム10の異常の発生をサービスマン等へ迅速に伝えることができる。そのため、データ取得処理装置25が故障の前兆を検知した場合、サービスマン等は、例えば部品交換などの処置を、空調システム10が異常停止する前に実施することができる。すなわち、空調システム10及び空調管理システム100によれば、異常の発生に対する迅速な対応が可能となる。
【0049】
加えて、データ取得処理装置25は、外部の端末装置70からのデータ送信要求に対して、当該データ送信要求に応じたデータを取得し、取得したデータを端末装置70へ返送する機能を有している。したがって、サービスマン等は、記憶処理装置60に記憶されている通信データ以外に確認したいデータがある場合、ネットワーク500経由で、任意のデータを入手することができる。よって、サービスマン等は、現地に赴くことなく、追加で確認したいデータを確認することができるため、異常の発生に対し、さらに迅速に対応することができる。
【0050】
<変形例1−1>
本実施の形態1のデータ取得処理装置25は、室内外系及び集中系の通信線(以下「伝送線」ともいう。)に流れる通信データを取得することができるが、再送情報などの伝送線には流れない情報は取得することができない。一方、中継装置22は、再送情報などの伝送線には流れない情報を保有している。以降では、再送情報などの伝送線には流れない情報のことを「非伝送情報」ともいう。そして、こうした非伝送情報は、データ取得処理装置125による異常判定、又はサービスマン等によるデータ解析に有意な場合がある。
【0051】
そこで、本変形例1−1の中継装置22は、データ取得処理装置25が取得できない非伝送情報を記憶装置26に記憶させる機能を有している。このようにすれば、異常判定の際に、データ取得処理装置125は、記憶装置26から非伝送情報を取得して用いることができる。そのため、異常判定の手法を増やし、異常判定の精度を高めることができる。また、データ取得処理装置125は、端末装置70からのデータ送信要求に応じて非伝送情報を記憶装置26から取得し、取得した非伝送情報を端末装置70へ返送することもできる。よって、サービスマン等によるデータ解析の精度向上を図ることができる。
【0052】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2に係る空調システムの各通信機器間での通信データの取得に関する概略構成図である。
図6は、
図5の室外機におけるシリアル通信での通信データの取得に関する概略構成図である。
【0053】
本実施の形態2における空調管理システムの全体的な構成は、実施の形態1の
図1の例と同様である。
図5及び
図6に示す通り、本実施の形態2の制御ユニット110は、メイン基板110aとは別に、データストレージ基板110bを有している点に特徴がある。実施の形態1と同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
【0054】
図5に示すように、制御ユニット110において、空調制御装置21と、中継装置22と、伝送装置23aと、伝送装置23bと、波形処理装置24aと、波形処理装置24bとは、メイン基板110aに実装されている。また、制御ユニット110において、データ取得処理装置25と、記憶装置26とは、データストレージ基板110bに実装されている。
【0055】
本実施の形態2においても、データ取得処理装置25は、空調システム10を構成する各通信機器間の通信線上に流れる全ての通信データを取得し、取得した通信データを記憶装置26及び記憶処理装置60に記憶させる。また、データ取得処理装置25は、取得した通信データを用いて異常判定を実行する。すなわち、制御ユニット110は、実施の形態1の制御ユニット11と同様に動作する。
【0056】
以上のように、本実施の形態2の空調システム10によっても、各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを記憶処理装置60に保存させることができる。したがって、外付けの計測器及び計測アプリが不要となるため、空調システム10の動作確認等を行う際の手間を削減し、各通信機器の状態調査の迅速性を高めることができる。
【0057】
また、本実施の形態2の制御ユニット110は、空調制御装置21が実装されるメイン基板110aと、データ取得処理装置25が実装されるデータストレージ基板110bと、を有している。すなわち、本実施の形態2の空調システム10の場合、ユーザのニーズに応じて、データストレージ基板110bを設けるか否か、つまり各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを取得するか否かを選択することができる。そして、メイン基板110aの構造を変更する場合でも、データストレージ基板110bは、構造を変更することなく、室外機20の制御箱内に実装することができる。したがって、種々の機能を備えた空調制御装置21に対応づけて、データストレージ基板110bに実装されたデータ取得処理装置25を用いることができる。他の効果等については、実施の形態1と同様である。なお、本実施の形態1の制御ユニット110にも、変形例1−1の構成を適用することができる。
【0058】
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3に係る空調システムの各通信機器間での通信データの取得に関する概略構成図である。本実施の形態3における空調管理システムの全体的な構成は、実施の形態1の
図1の例と同様である。実施の形態1及び2と同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
【0059】
本実施の形態3の制御ユニット210は、空調システム10を構成する各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを取得し、取得した通信データを記憶装置26に記憶させる機能を備えた中継装置122を有している。中継装置122の他の機能は、実施の形態1及び2の中継装置22と同様である。すなわち、中継装置122は、外部からの通信データを空調制御装置21に中継する。より具体的に、中継装置122は、通信データの送信先アドレスが空調制御装置21のアドレスでなければ、その通信データは読み捨て、空調制御装置21には中継しないようになっている。
【0060】
ここで、本実施の形態3の中継装置122は、通信コマンドをリアルタイムで中継する機能と、記憶装置26にデータを記憶させる機能と、の双方を有している。そのため、中継装置122は、実施の形態1及び2の中継装置22よりもハイスペックなマイクロプロセッサなどで構成される。
【0061】
データ取得処理装置125は、各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを記憶装置26から取得するようになっている。すなわち、データ取得処理装置125は、中継装置122が記憶させた通信データを記憶装置26から取得し、取得した通信データを用いて、実施の形態1及び2と同様に異常判定を実行する。データ取得処理装置125の他の機能は、実施の形態1及び2のデータ取得処理装置25と同様である。
【0062】
ここで、本実施の形態3の制御ユニット210による空調システム10の異常判定の方法について、実施の形態1及び2と異なる点を、
図4を参照して説明する。制御ユニット210は、中継装置122により、各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを取得し(ステップS101)、取得した通信データを記憶装置26に一時記憶させる(ステップS102)。ステップS103〜S106の処理は、実施の形態1及び2のデータ取得処理装置25と同様にデータ取得処理装置125が実行する。
【0063】
以上のように、本実施の形態3の空調システム10によっても、各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを記憶処理装置60に保存させることができる。よって、外付けの計測器及び計測アプリが不要となるため、空調システム10の動作確認等を行う際の手間を削減し、各通信機器の状態調査の迅速性を高めることができる。
【0064】
また、本実施の形態3では、中継装置122が、空調制御装置21には中継しない通信データを含む全ての通信データを記憶装置26に記憶させる。データ取得処理装置125は、中継装置122が記憶装置26に記憶させた通信データを用いて異常判定を実施する。そして、データ取得処理装置125は、異常判定の後、判定に用いた通信データを記憶処理装置60に保存させる。よって、データ取得処理装置125のタスクを減らすことができるため、各通信機器間における通信の容量拡大及び高速化に対する順応性を向上させることができる。他の効果等については、実施の形態1及び2と同様である。
【0065】
ところで、中継装置122は、変形例1−1の中継装置22と同様、非伝送情報を記憶装置26に記憶させてもよい。そして、中継装置122は、異常判定の際に非伝送情報を用いてもよい。また、中継装置122は、端末装置70からのデータ送信要求に応じて非伝送情報を記憶装置26から取得し、取得した非伝送情報を端末装置70へ返送してもよい。このようにすれば、異常判定の手法を増やし、異常判定の精度を高めると共に、サービスマン等によるデータ解析の精度向上を図ることができる。
【0066】
<変形例3−1>
本実施の形態3では、中継装置122が、空調システム10を構成する各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを取得し、取得した通信データを記憶装置26に記憶させる場合を例示したが、これに限定されない。制御ユニット210は、データ取得処理装置125と中継装置122とで、データ収集処理を分業してもよい。
【0067】
すなわち、本変形例3−1において、データ取得処理装置125は、実施の形態1及び2のデータ取得処理装置25と同様、各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを取得し、取得した通信データを記憶装置26に記憶させる。そして、中継装置122は、非伝送情報だけを記憶装置26に記憶させる。このように、本変形例3−1の制御ユニット210は、データ取得処理装置125と中継装置122とでデータ収集処理を分業することにより、種々の情報を効率よく収集することができる。
【0068】
実施の形態4.
図8は、本発明の実施の形態4に係る空調システムの各通信機器間での通信データの取得に関する概略構成図である。本実施の形態4における空調管理システムの全体的な構成は、実施の形態1の
図1の例と同様である。実施の形態1〜3と同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
【0069】
本実施の形態4の制御ユニット310は、実施の形態3における中継装置122の機能とデータ取得処理装置125の機能とを併せもつ中継装置222を有している。すなわち、中継装置222は、外部からの通信データを空調制御装置21に中継すると共に、各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを取得する機能を有している。また、中継装置222は、取得した通信データを記憶処理装置60に保存させる機能を有している。
【0070】
さらに、中継装置222は、取得した通信データを用いて各通信機器の構成部材に異常が発生しているか否かを判定し、異常が発生している場合に異常データを外部へ送信する機能を有している。加えて、中継装置222は、外部の端末装置70からのデータ送信要求に応じた情報を取得し、取得した情報を端末装置70へ返送する機能を有している。つまり、本実施の形態4の制御ユニット310は、中継装置222により、
図4のステップS103〜S106の処理を実行する。
【0071】
ここで、本実施の形態4の中継装置222は、中継装置122が有する各機能に加え、取得した通信データを記憶処理装置60に保存させる機能も有している。そのため、中継装置222は、実施の形態3の中継装置122よりも更にハイスペックなマイクロプロセッサなどで構成される。
【0072】
以上のように、本実施の形態4の空調システム10によっても、各通信機器間でやり取りされる全ての通信データを記憶処理装置60に保存させることができる。よって、外付けの計測器及び計測アプリが不要となるため、空調システム10の動作確認等を行う際の手間を削減し、各通信機器の状態調査の迅速性を高めることができる。また、本実施の形態4の制御ユニット310は、データ取得処理装置25又は125を設ける必要がないため、メイン基板11aの形状及び配置の自由度が増え、制御ユニット310の小型化を図ることができる。他の効果等については、実施の形態1〜3と同様である。
【0073】
上述した各実施の形態は、制御ユニット、空調システム、及び空調管理システムにおける好適な具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、
図1では、空調システム10が4台の室内機40と4台のリモートコントローラ45とを有する場合を例示したが、これに限定されない。空調システム10は、1台〜3台又は5台以上の室内機40及びリモートコントローラ45を有していてもよい。また、
図1では、1台の室内機40に1台のリモートコントローラ45が対応づけられた例を示したが、これに限らず、複数台の室内機40に1台のリモートコントローラ45が対応づけられてもよい。さらに、
図1等では、空調システム10が1台の室外機20を有する場合を例示したが、これに限らず、空調システム10は、2台以上の室外機20を有していてもよい。加えて、空調システム10は、室外機20を含む複数の通信機器が相互に接続されたものであればよく、室内機40、リモートコントローラ45、及びシステムコントローラ50のうちの何れか1つ又は2つを含まなくてもよい。
【0074】
また、上記各実施の形態では、記憶処理装置60が室外機20の外部に設けられた場合を例示したが、これに限らず、記憶処理装置60は、制御ユニット11、110、210の外部であって、室外機20の内部に設けられてもよい。さらに、制御ユニット11、110、210と同様の構成が、室内機40に設けられてもよい。すなわち、例えば、データ取得処理装置25及び記憶装置26は、室内機40のメイン基板もしくは室内機40に設けられたデータストレージ基板に実装されてもよい。
【0075】
加えて、実施の形態3の制御ユニット210にも、実施の形態2の構成を適用することができる。すなわち、制御ユニット210は、メイン基板11aにデータ取得処理装置125及び記憶装置26を実装せず、メイン基板とは別に設けたデータストレージ基板にデータ取得処理装置125及び記憶装置26を実装してもよい。空調管理システム100には、端末装置70を含めなくてもよい。