(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワーク上で加工位置を移動させながら溶融した加工材料を前記加工位置で積層することで付加加工を行うとともに、前記付加加工を繰り返して造形物を形成する積層造形装置であって、
前記加工材料を溶融する加工光を前記加工位置に結像する加工光学系と、
前記ワーク上の前記加工位置とは異なる計測位置に計測用の照明光を照射する計測用照明と、
前記照明光が前記計測位置で反射した反射光を受光する受光素子を備える受光光学系と、
前記受光素子上における前記反射光の受光位置に基づいて、前記ワーク上に形成された造形物の高さを演算する演算部と、
を備え、
前記受光光学系は、
前記計測位置で反射して前記受光素子に入射する反射光の結像位置では光を透過させ、前記加工位置から入射される光の結像位置では光を遮光する遮光マスクを備えることを特徴とする積層造形装置。
前記造形物に前記加工材料を付着させる高さの範囲に対して、前記計測位置で反射された前記反射光が受光される前記受光素子上の範囲と、前記付加加工を行う際に前記加工材料が溶融する範囲の像が、前記遮光マスクがない場合に結像される前記受光素子上の範囲とが重ならないように、前記計測位置が設定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の積層造形装置。
前記遮光マスクは、前記高さの範囲に対して、前記計測位置で反射された前記反射光が前記受光素子に入射する光路の範囲を除いて遮光することを特徴とする請求項5に記載の積層造形装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態にかかる積層造形装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる積層造形装置100の構成を示す斜視図である。なお、以降の実施の形態も含めて、積層造形装置100は、金属を加工材料として使用する金属積層装置であるものとするが、樹脂等の他の加工材料を使用するものであっても良い。また、積層造形装置100によって形成される造形物は、積層物と呼ばれることもある。本実施の形態の積層造形装置100は、加工用レーザ1と、加工ヘッド2と、固定具5と、駆動ステージ6と、ライン照明8と、演算部9と、制御部10とを備える。
【0012】
加工用レーザ1は、ワーク3上に造形物4を形成する造形加工に用いられる加工光を発する光源である。加工用レーザ1は、半導体レーザを用いたファイバレーザ、またはCO
2レーザが用いられる。例えば、加工用レーザ1が照射する加工光の波長は、1070nmである。一般的に、加工光は加工位置に点状に集光されるので、以降では加工位置を加工点と呼ぶ。積層造形装置100は、ワーク3上の加工位置を移動させながら、すなわち、走査しながら、走査の度に加工位置で加工材料7を溶融して積層することで造形物4を形成する。
【0013】
ワーク3は、駆動ステージ6に載せられ、固定具5で駆動ステージ6の上に固定される。ワーク3は、造形物4が形成される際の土台となるものである。ここでは、ワーク3としてベースプレートを想定するが、3次元形状を有する物体であれば良い。駆動ステージ6が駆動されることで、加工ヘッド2に対するワーク3の位置が変化し、ワーク3上の加工点が走査される。加工点が走査されるとは、定められた経路に沿って、すなわち定められた軌跡を描くように加工点が移動することを意味する。積層造形装置100は、ワーク3上で加工位置である加工点を移動させながら、溶融した加工材料7を加工点で積層することで付加加工を行う。言い換えると、積層造形装置100は、ワーク3上を移動する加工点で、溶融した加工材料7を積層することで付加加工を行う。より具体的には、積層造形装置100は、駆動ステージ6を駆動することで、ワーク3上で加工位置の候補点を移動させる。移動経路上の候補点の少なくとも1点が、加工材料7が積層される加工点となる。積層造形装置100は、加工点において、付加加工を行うために供給される加工材料7を加工光で溶融する。積層造形装置100は、加工点の走査を繰り返すことで、溶融した加工材料7が凝固して生成されたビードを積層して、ワーク3上に造形物4を形成する。駆動ステージ6は、XYZの3軸の走査が可能であり、XY面内、YZ面内での回転も行うことができる5軸ステージが使用されることが多い。例えば、X軸は横軸であり、Y軸は縦軸であり、Z軸は高さ軸である。ここでは、駆動ステージ6を5軸で走査するものとするが、加工ヘッド2を走査しても良い。
【0014】
ライン照明8は、形成済みの造形物4の高さを計測するために、ワーク3上の計測位置に計測用のライン状の照明光であるラインビーム40を照射する。計測位置は、加工点とは異なる位置となる。ライン照明8は計測用照明とも呼ばれる。ラインビーム40は計測位置で反射する。計測位置で反射した光を受光できるように受光光学系は配置される。また、受光光学系は、ラインビーム40の光軸に対して斜め方向の光軸を持つように配置される。加工時に発生する熱輻射光のピーク波長が赤外であるため、ライン照明8の光源には、熱輻射光のピーク波長から離れた、波長550nm付近の緑色レーザ、または波長420nm付近の青色レーザを用いることが望ましい。なお、造形物4の高さを計測するために用いられる照明光は、ラインビーム40である必要はなく、点状に集光された照明光であるスポットビームであっても良い。スポットビームを用いれば、ワーク3上の照明された点の高さを計測できる。一方、ラインビーム40を用いれば、ワーク3上の照明された範囲の高さ分布を計測できる。本実施の形態では、造形物4の高さを計測するためにラインビーム40が用いられるものとする。
【0015】
演算部9は、ラインビーム40の反射光の受光光学系における受光位置に基づいて、三角測量の原理によって、ラインビーム40が照射された位置における造形物4の高さを演算する。造形物4の高さは、造形物4の上面のZ方向の位置となる。また、制御部10は、演算部9で演算された高さを用いて、付加加工における加工条件を制御する。より具体的には、制御部10は、演算部9で演算された造形物4の高さを用いて、加工用レーザ1の駆動条件、および駆動ステージ6の駆動条件、加工材料7となる金属ワイヤを供給するワイヤ供給部の駆動条件などの加工条件を最適化する。ワイヤ供給部の駆動条件には、金属ワイヤを供給する高さが含まれる。ライン照明8、受光光学系、および演算部9は、高さ計測装置を構成する。
【0016】
実施の形態にかかる演算部9および制御部10は、各処理を行う電子回路である処理回路により実現される。
【0017】
本処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリ及びメモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央演算装置)を備える制御回路であってもよい。ここでメモリとは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスクなどが該当する。本処理回路がCPUを備える制御回路である場合、この制御回路は例えば、
図2に示す構成の制御回路200となる。
【0018】
図2に示すように、制御回路200は、CPUであるプロセッサ200aと、メモリ200bとを備える。
図2に示す制御回路200により実現される場合、プロセッサ200aがメモリ200bに記憶された、各処理に対応するプログラムを読みだして実行することにより実現される。また、メモリ200bは、プロセッサ200aが実施する各処理における一時メモリとしても使用される。
【0019】
図3は、
図1のIII−III線における積層造形装置100のXZ平面の断面を示す図である。加工ヘッド2は、投光レンズ11と、ビームスプリッタ12と、対物レンズ13と、集光レンズ14と、遮光マスク15と、第二の結像光学系16と、受光部17とを備える。加工ヘッド2は、加工用レーザ1から照射される加工光をワーク3上の加工位置に結像する加工光学系20と、ワーク3上に形成された造形物4の高さ計測を行う受光光学系30とを備える。対物レンズ13および集光レンズ14を備える第一の結像光学系、遮光マスク15、第二の結像光学系16、および受光部17は、受光光学系30を構成する。受光光学系30は、計測光学系とも呼ばれる。加工用レーザ1から出射した加工光は、投光レンズ11を透過し、ビームスプリッタ12でワーク3の方向に反射され、対物レンズ13を用いてワーク3上の加工点に集光される。投光レンズ11、ビームスプリッタ12、および対物レンズ13は、加工ヘッド2に備えられる加工光学系20を構成する。例えば、投光レンズ11の焦点距離は200mmである。例えば、対物レンズ13の焦点距離は460mmである。ビームスプリッタ12の表面には、加工用レーザ1から照射される加工光の波長の反射率を高くし、加工光の波長より短い波長の光を透過するようなコーティングが行われる。積層造形装置100は、駆動ステージ6を駆動することでワーク3を−X方向に走査しながら、金属ワイヤまたは金属粉末を加工材料7として加工点に供給する。この結果、加工点が走査されるのに従って、加工点において加工光によって加工材料7が溶融された後に凝固して+X方向にビードが延びていくように形成される。形成されたビードが造形物4の一部となる。
【0020】
加工点が走査されるたびに、土台となるワーク3または造形済みの造形物4の一部の上に新たにビードが積層されることで、新たな造形物4の一部が形成される。この動作を繰り返すことで、加工材料7が積層されて最終生成物である造形物4が形成される。本実施の形態では、加工材料7として金属ワイヤが用いられるものとして説明を進める。高さ計測用のライン照明8は、加工ヘッド2の側面に取り付けられ、ワーク3または形成済みの造形物4上の計測位置に向けてラインビーム40を照射する。本実施の形態においては、計測位置は、加工点の走査方向における、加工点の後方に位置するものとする。ワーク3が−X方向に走査される場合、加工点はワーク3上を+X方向に走査されるので、加工点の後方は−X方向となり、ビードは、+X方向にビードが延びていくように形成される。計測位置は、加工点と異なる位置であれば、加工点の後方に限定されず、例えば、加工点の前方であっても良い。計測位置は、加工材料7の供給方向などを考慮して決定される。例えば、計測位置は、加工点を基準として加工材料7の供給方向と反対側とすれば、加工材料7に遮られることなく計測位置を照明するのが容易となる。また、計測位置は、加工点の移動に対応して移動するものとしてもよい。ここで、以降の実施の形態も含めて、ビードは線状に延びるように形成されるものとして説明するが、点状に形成したビードを繋げて一つのビードとするなど、その他のビード形成方法でも良い。
【0021】
ラインビーム40は、ビードが造形される方向、つまり駆動ステージ6が移動する方向に対して直角であり、駆動ステージ6の上面に対して平行な方向、例えば、Y方向に広がったビームを形成するようシリンドリカルレンズなどを用いて形成される。ここでビームの広がりとは、ラインビーム40が形成する二等辺三角形の底辺の部分を示す。ラインビーム40は、形成済みの造形物4にライン状に照射される。計測位置に照射されたラインビーム40は計測位置で反射され、対物レンズ13に入射し、ビームスプリッタ12を透過して、集光レンズ14により第一の結像位置に集光される。対物レンズ13と集光レンズ14とを合わせて第一の結像光学系と呼ぶ。
【0022】
集光レンズ14の結像面である第一の結像位置には遮光マスク15が設置されている。遮光マスク15は、ガラスなどの透過材料をベースとしており、加工点からの光の結像位置には、光を遮光する遮光材が蒸着などにより形成される。遮光マスク15は、例えば、ガラスなどの透過材料上に酸化クロムなどの遮光材料を蒸着することで製作できる。遮光マスク15は、加工点からの光の結像位置は遮光し、計測位置からの反射光の結像位置は遮光しない機能を有していれば、その他の構成でも良い。遮光マスク15を透過した光は第二の結像光学系16を用いて受光部17に結像される。第二の結像光学系16は、例えば、レンズ2枚を用いて第一の結像光学系と同様に構成されるが、レンズ1枚、または3枚以上のレンズでも良く、受光部17に結像できる機能を有していれば良い。受光部17は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの受光素子を搭載したエリアカメラなどが用いられるが、二次元に画素が配列された受光素子を備える構成であれば良い。なお、ビームスプリッタ12から受光部17までの光学系内に、ラインビーム40の照射波長のみを透過するバンドパスフィルタを入れておくことが望ましい。バンドパスフィルタを備えることで、加工光、熱輻射光、または外乱光などのうち、不必要な波長の光を除去することができる。以上のように、受光光学系30は、加工点で発せられて受光素子に入射する光は遮光し、計測位置で反射して受光素子に入射する反射光は遮光しない遮光マスク15を備える。換言すれば、受光光学系30は、計測位置で反射して受光素子に入射する反射光の結像位置では光を透過させ、加工位置から入射される光の結像位置では光を遮光する遮光マスク15を備える。
【0023】
積層造形装置100は、加工点に加工材料7として金属ワイヤを供給し、加工点に加工光を照射することで、形成済みの造形物4の上に新たな層を積層して新たな造形物4とする付加加工を行う。
図4は、実施の形態1にかかる造形物4に対する金属ワイヤの供給口の高さを示す図である。ここで、金属ワイヤの供給口の高さとは、ワーク3の上面を基準とした金属ワイヤの供給口の高さを示す。以降では、金属ワイヤの供給口の高さは、単に供給口の高さと呼ばれることもある。なお、供給口からの金属ワイヤの出射量を既知の値に設定しておけば、供給口の高さから金属ワイヤの先端部の高さも算出することができる。供給口からの金属ワイヤの出射量は、供給口から金属ワイヤの先端部までの長さを表す。供給口の高さを制御することによって、金属ワイヤの先端部の高さを制御することができる。ここでは、供給口からの金属ワイヤの出射量は一定となるように制御され、供給口の高さと金属ワイヤの先端部の高さとは1対1に対応するものとする。また、供給口の適切な高さの範囲は、造形済みの造形物4の高さに依存する。
図4に示す通り、形成済みの造形物4に対して金属ワイヤを適切な高さで供給できなければ、加工結果に不具合が発生する。例えば、
図4(a)に示すように形成済みの造形物4に応じた供給口の適切な高さ範囲をha±αとする。
図4(a)では、供給口の高さは、ha±αの範囲の中央である。つまり、
図4(a)では、供給口の高さが、haである。
図4(a)においてha+αを上限値51として示す。
図4(a)においてha−αを下限値50として示す。
図4(a)では、供給口の高さはhaであり、ha±αの範囲内であるため、加工結果に不具合は発生しない。しかし、
図4(b)では、供給口の高さhbは、hb>ha+αであり、ha±αの範囲外である。この場合、金属ワイヤが溶解する位置が造形物4から離れているため、加工光が照射されて溶けた金属ワイヤが形成済みの造形物4に十分付着せず、溶滴が発生し、加工後の造形物4に凹凸が発生する。また、
図4(c)では、供給口の高さhcは、hc<ha−αであり、ha±αの範囲外である。この場合、金属ワイヤが形成済みの造形物4の方向に押し付けられすぎ、加工光が照射されても金属ワイヤが全て溶けきらず、溶け残りの金属ワイヤが発生する。この結果、加工後の造形物4に溶け残った金属ワイヤが含まれてしまう。このように、形成済みの造形物4に応じた供給口の高さを加工中に適切な値に維持し続けることが高精度な加工には不可欠である。ワーク3に対して造形物4を加工し始める1層目の場合、ワーク3の高さが平坦であれば、供給口の高さを一定に維持して加工すればよい。
【0024】
しかし、2層目以降は、前回(前層)までに形成済みの造形物上に加工を行う必要がある。ここで、前回までに形成済みの造形物4の高さが設計値通りの高さになっていない場合、または位置によって造形物4の高さが一定になっていない場合が考えられる。この場合には、前回の積層時の供給口の高さから、設計上の1層分の高さだけ供給口を上昇させても、実際には、前回の積層時までの造形物の高さが設計値と異なる部分では、供給口の高さが今回積層する部分に対応する供給口の適切な範囲内ではない可能性がある。また、位置によって造形物4の高さが一定になっていない場合も考えられる。もし、2層目では適切な高さ範囲(ha±α)、言い換えると許容誤差範囲に入っていたとしても、複数回加工を行い、n層目(n≧2)を加工する場合には積層誤差がn回加算されるため、許容誤差範囲(ha±α)に入らない可能性がある。ここで、加工後の造形物4の高さを計測し、次回の加工時にこの高さ情報を利用して、制御を行う必要がある。
【0025】
ここで、計測された形成済みの造形物4の高さを用いて、形成済みの造形物4に対して金属ワイヤを適切な高さに維持する方法について説明する。造形物4の加工後に、加工とは別に再び同一経路を計測のために走査し、形成済みの造形物4の高さを計測することも可能である。しかし、この場合には、1層の付加加工に対して、加工経路を2度走査する必要があるため、時間がかかる。ここで、加工中に形成済みの造形物4の高さを計測することで、1層の付加加工に対する加工経路の走査回数を一度にしつつ、付加加工と形成済みの造形物4の高さの計測の両方を行うことができる。
図5は、実施の形態1にかかる加工中の加工点のXZ断面を示す図である。付加加工時に加工点に加工光が照射され、ワーク3上で金属ワイヤが溶けた状態となっている領域をメルトプールと呼ぶ。例えば、−X方向にワーク3を載せた駆動ステージ6を走査すれば、X方向に直線状の造形物4を付加することができる。加工点のメルトプール近傍は高温となっているが、駆動ステージ6を移動させていくと、メルトプールは自然冷却され、金属のビードとして一定の形状に凝固する。このビードが積層されて造形物4が形成される。
【0026】
ここで、メルトプール端を加工点の中心、つまり加工用レーザ光の光軸から距離Wだけ離れた位置とする。メルトプールでは加工材料が溶融しており、形成済みの造形物の高さを正確に計測することが困難である。したがって、高さの計測を行うためのラインビーム40の照射位置は加工点の中心から距離W以上離れた位置とすることが望ましい。例えば、高さの計測を行うためのラインビーム40の照射位置は加工点の中心から距離L離れた位置とすることが望ましい。すなわち、高さが計測される計測位置は、加工時に加工材料7が溶解している範囲から外れた位置とすることが望ましい。ラインビーム40の照射位置は加工点から遠い方がビードも十分凝固しており計測しやすいが、ラインビーム40の照射角度を一定にする場合、設置位置を加工ヘッド2から離す必要があり、装置が大きくなる。また、ラインビーム40の設置位置を加工ヘッド2近傍にする場合には照射角度が垂直になるため、高さ変化に対するラインビーム40の照射位置の変位が少ないため、高さ分解能が低下する。また、撮像系を加工ヘッド2と同軸に設置する場合には、視野を大きくする必要があるため、解像度が低下する。撮像系を加工ヘッド2と別で設ける場合には装置が大型化する。以上のように、計測位置は、様々な事項を考慮して決定することになる。特に、計測位置は、計測が必要となる高さ範囲を考慮して決定する必要がある。計測が必要となる高さ範囲は、積層造形装置100の仕様に応じて決定される。
【0027】
ラインビーム40などの高さ計測用の照明光が計測位置で反射された反射光の受光素子上における受光位置は、計測位置の高さによって変化する。ここで、計測が必要となる高さ範囲に対して、計測位置で反射された反射光が受光される受光素子上の範囲と、加工時に加工材料7が溶解している範囲の像とが、遮光マスク15がない場合に結像される受光素子上の範囲と重ならないように、計測位置を設定する必要がある。このように構成することで、計測位置からの反射光と加工位置で発生する外乱光とを、光学的に分離することが可能となる。遮光マスク15は、加工点から放射される熱輻射光は受光素子上で受光されないように遮光し、計測位置で反射された反射光は遮光せずに透過する。例えば、遮光マスク15は、加工点から放射される熱輻射光が受光素子に入射する光路の範囲だけを遮光するように構成される。また、例えば、遮光マスク15は、計測が必要となる高さ範囲に対して、計測位置で反射される反射光が受光素子に入射する光路の範囲を除いて遮光するように構成される。
【0028】
図6は、実施の形態1にかかるワイヤ高さ制御の手順を示すフローチャートである。ここで、ワイヤ高さとは、ワーク3の上面を基準とした、加工光が照射される加工材料7の先端部の高さである。なお、ワイヤ高さは、加工材料7が溶融していない状態での加工材料7の先端部の高さである。まず、積層造形装置100は、一層目の付加加工を開始する(ステップS1)。また、積層造形装置100は、加工後の造形物4の高さの計測を開始し(ステップS2)、計測位置に対する造形物4の高さを保存することで一層目の付加加工が終了する(ステップS3)。ここで、計測できる造形物4の高さの間隔は、受光部17で受光素子として用いるイメージセンサのフレームレートと加工軸の走査速度(加工点の走査速度)とで決定される。例えば、フレームレートF[fps]、駆動ステージ6の移動速度v[mm/s]とすると、造形物4の高さの加工点の走査方向の計測間隔Λ[mm]は、Λ=v/Fとなる。また、駆動ステージ6の移動範囲をP×Q[mm]とすると、一層目の加工時で最大P/Λ×Q/Λの高さ計測結果を測定することができる。この後、積層造形装置100は、ワイヤの高さを変更し(ステップS4)、n層目の付加加工を開始する(ステップS5)。積層造形装置100は、n層目の加工後の造形物4の高さの計測を開始し(ステップS6)、計測位置に対する造形物4の高さを保存することでn層目の付加加工が終了する(ステップS7)。積層造形装置100が、全ての層の付加加工が終了した場合(ステップS8,Yes)、処理は終了する。積層造形装置100が、全ての層の付加加工が終了していない場合(ステップS8,No)、処理はステップS4に戻る。
【0029】
図7は、実施の形態1にかかる積層造形装置100が第二層目を加工する場合のワイヤ高さを示す図である。二層目を加工する場合には、例えば、
図7に示すように、一層目で形成された造形物4の高さを計測した結果、領域Iは設計通り高さT1で造形でき、領域IIは設計より高いT2となり、領域IIIは設計より低いT3であったとする。ここで、全ての領域の高さ計測結果の平均値Tave=T1を用いてワイヤ高さを調整する場合、ワイヤを+Z方向にTave離して二層目の加工を始める。ここで、二層目加工時のワイヤ高さ調整には、一層分の設計積載量、計測した高さ計測結果の最大値、または中央値などを用いても良い。そして、各加工位置に二層目を積層する場合には、一層目の各領域での計測高さT1〜T3と二層目での目標積層高さ(2×T1)との差分に応じて、制御部10は加工条件を変更する。
【0030】
もし、領域Iのように、計測したワイヤ高さT1=一層目での目標造形高さの場合は、標準の加工条件(加工レーザ出力、ワイヤ供給量、駆動ステージ6の走査速度など)で加工を行う。一方、領域IIのように、計測したワイヤ高さT2>一層目での目標造形高さの場合には二層目後に全ての領域の造形物4の高さが均一になるよう、加工条件を変更して二層目の積層量を少なくする。例えば、加工レーザ出力を小さくしたり、ワイヤの供給量を少なくしたりする。また、計測したワイヤ高さT3<一層目での目標造形高さの場合、二層目後に全ての領域の造形物4の高さが均一になるよう、加工条件を変更して二層目の積層量を多くする。例えば、加工レーザ出力を大きくしたり、ワイヤの供給量を多くしたりする。そして、二層目積層時も積層後の造形物4の高さを計測する。なお、計測された二層目の高さが、一層目の高さを基準とする相対的な高さである場合、一層目の計測結果に加算して総積層量を算出することができる。また、各層を積層する度に加工ヘッド2の高さを調整する場合には、調整された加工ヘッド2の高さを考慮して、造形物4の高さが求められる。このように、n−1回目の積層時に計測したビード高さの結果を用いて、n回目の積層時にワイヤ高さを一定量上昇させ、各加工位置での高さ変化に対しては加工条件を制御することで、各層加工終了後に全ての加工位置の積層量が均一になるよう制御を行う。こうすることで常に造形物4に対するワイヤ高さをha±αに維持することができるため、加工不具合を発生させずに加工を継続することができる。
【0031】
次に、加工後のビード高さを計測するための、光切断方式を用いた高さ計測動作について説明する。
図8は、実施の形態1にかかるライン照明8が投影された造形物4の拡大したXZ断面を示す図である。
図8において、ワーク3上に対する造形物4の高さをΔZとし、ラインビーム40の照射角度をθとすると、ワーク3上と造形物4上のラインビーム40の照射位置の差異ΔXは、ΔX=ΔZ/tanθで表される。
図9は、実施の形態1にかかる造形物4にラインビーム40を照射した際の受光素子上に結像されたラインビーム40の画像を示す図である。ライン照明8が照射するラインビーム40は、環境光より十分強いため、受光素子で取得される画像にはラインビーム40のみが写る。造形物4とワーク3との高さの違いにより、ラインビーム40の照射位置はΔX’ずれて投影される。ここで、第一の結像光学系の倍率M1、第二の結像光学系16の倍率M2を用いると、ΔX’=M1×M2×ΔXとなる。イメージセンサの1画素の大きさをWとすると、1画素当たりの高さ変位量ΔZ’は、ΔZ’=W×tanθ/(M1×M2)と表される。例えば、W=5.5μm、M1=1/2、M2=1、θ=72degとすると、ΔZ’=30μmとなる。このようにイメージセンサ画像のラインビーム40の投影位置から、三角測量の原理により、センサから対象物までの高さを算出することができる。
【0032】
また、ワーク3の上面と造形物4の上面とのラインビーム40の照射位置の差異から造形物4の高さを算出することができる。もし、造形物4の高さがワーク3上面に対して高くなり、ワーク3上面からのラインビーム40の反射光が受光できなくなったとしても、視野内の造形物4上面から反射したラインビーム40の照射位置を用いて、センサからの距離を算出することができる。ラインビーム40の照射位置は、一般にラインビーム40の投影パターンのX方向重心位置から計算される。各Y方向画素に対して、X方向の出力を算出し、ラインビーム40の断面強度分布から重心位置を算出する。ここで、ラインビーム40の照射位置の算出方法は重心位置に限らず、光量のピーク位置など適切に選択される。ラインビーム40の照射幅は、照射位置の算出に対して十分な大きさである必要がある。例えば、重心計算の場合には、狭すぎると重心計算ができず、太すぎるとビームの強度パターン変化の影響で誤差が生じやすい。このため、5〜10pixel程度が望ましい。また、ラインビーム40のラインの長さ(ラインビーム40の照射幅)は造形物4の幅に対して十分長ければ良い。このように画像のY方向の各画素に対してX方向の輝度重心位置を算出し、この結果を高さに換算することで、造形物4の幅方向における造形物4の高さの断面分布を計測することができる。造形物4の高さを計測するために用いられる照明光として、スポットビームを用いる場合には、造形物4の高さの断面分布を計測することはできないが、スポットの大きさを適切に選択することで、誤差の少ない測定が可能となる。
【0033】
ここまでは、加工していない状態でラインビーム40から造形物4の高さを算出する方法について説明したが、加工中に計測する場合には、加工点が高輝度な発光点となり、加工点から出た熱輻射光により、発生する撮像系内での迷光により、計測誤差が発生する。
図10は、実施の形態1にかかる加工中の受光素子であるイメージセンサの結像結果の概略を示す図である。遮光マスク15がない状態で加工中にラインビーム40をイメージセンサに結像すると、加工点から発光した熱輻射光もイメージセンサ上に結像される。上述の通り、ラインビーム40の照射位置をメルトプールから離しているため、加工点から出た熱輻射光とラインビーム40の反射光とを分離することが可能である。しかし、遮光マスク15を用いない結像系では、加工点から発生した熱輻射光が撮像系の筐体内で反射して迷光となることが考えられる。熱輻射光の輝度が信号光であるラインビーム40の輝度に対して十分小さければ問題は無いが、レーザ加工により発生する加工点の熱輻射光の輝度は非常に大きい。このため、筐体内で発生する迷光が無視できないと考えられる。また、イメージセンサに結像された熱輻射光も、イメージセンサ表面保護用の透明樹脂内で多重反射したり、イメージセンサの受光部17の金属部などで反射したりすることで、迷光を発生させることが考えられる。
【0034】
このように、高輝度な加工点による熱輻射光が原因で発生する撮像系内の迷光が、信号光であるラインビーム40とともに受光素子に入射した場合には、ノイズとなり輝度重心位置の算出結果に誤差が生じる。ここで、できるだけ迷光の発生を抑えるためにも、遮光マスク15を用いて撮像系内で熱輻射光を遮光し、熱輻射光が受光素子に到達しないようにする。
図3で示したとおり、遮光マスク15は第一の結像光学系の焦点位置に設置される。第一の結像光学系の焦点位置には、ワーク3側の像が倍率M1で結像される。このため、メルトプールの大きさをφ2Wとすると、加工点から発生した熱輻射光を遮光するためには、遮光部の大きさをφ2W×M1以上にすれば良い。しかし、遮光部の大きさが大きすぎるとラインビーム40も遮光されてしまうため、φ2(L−ΔL)×M1以下にする必要がある。
図11は、実施の形態1にかかるイメージセンサから出力される画像を示す図である。
図11に示すように、イメージセンサから出力される画像は、加工点からの光が遮光され、ラインビーム40の反射光とともに入射していた迷光も除去することができる。遮光マスク15の設置位置は第一の結像光学系の焦点位置としたが、厳密に焦点位置に合わせる必要は無く、遮光位置からずれた場合には、このずれの量に応じて遮光部の大きさを大きく設計しておけば、同様の効果が得られる。
図12は、実施の形態1にかかる遮光マスク15の構成例を示す図である。
図13は、実施の形態1にかかる遮光マスク15の構成例を示す別の図である。遮光マスク15の構成としては、例えば、円形の筐体を用いる場合、
図12に示すように加工部のみを遮光する構成を示したが、ラインビーム40だけを透過する
図13に示すような構成でも良く、加工点の結像位置が遮光されていれば良い。
【0035】
ここで、本発明における高さ計測装置では、ラインビーム40のみを透過する遮光マスク15を用いるため、加工用と高さ計測用とを併用しない集光レンズ14および第二の結像光学系16は、ラインビーム40のみを受光部17に結像できる光学系であった方が良い。
図14は、
図1のIII−III線における積層造形装置100のXZ平面の断面を示す別の図である。例えば、
図14に示すように、対物レンズ13の中心軸に対して直角な方向に、対物レンズ13の中心軸と、集光レンズ14の中心軸または第二の結像光学系16の中心軸とを軸ずれさせておく。ここで、対物レンズ13は、加工位置に加工光を集光するレンズである。また、集光レンズ14および第二の結像光学系16は、計測用の照明光の反射光のうち、対物レンズ13を透過した反射光を受光部17に結像する第三の結像光学系を構成する。
【0036】
したがって、
図14における構成では、対物レンズ13を透過した反射光を受光部17に結像する第三の結像光学系の中心軸の位置は、加工位置に加工光を集光する対物レンズ13の中心軸の位置とは異なっている。このような構成とすることで、計測用の照明光であるラインビーム40の反射光をできるだけレンズの収差の影響を受けずに受光素子に結像できるようになり、高さ計測精度を向上できる。上記のように中心軸の位置をずらした構成とする代わりに、対物レンズ13を透過した反射光を受光部17に結像する第三の結像光学系の中心軸が、加工位置に加工光を集光する対物レンズ13の中心軸に対して傾いた構成とすることでも同様の効果が得られる。また、集光レンズ14のレンズ面の形状を変更しても良い。また、受光部17の視野は、高さ計測範囲内でラインビーム40が移動する範囲より広ければよく、ラインビーム40の移動範囲だけを拡大するような第二の結像光学系16を用いることでラインビーム40の解像度を上げることができ、高さ計測精度を向上することができる。
【0037】
ここでは、−X方向にワーク3を走査して、ワイヤの供給される方向、つまり+X方向にビードが延びるように形成する場合の高さ計測方法を述べた。この場合、加工直後の造形物4の高さが計測されるので、次回加工時にこの結果を使用すれば良い。一方、ワイヤを設置する方向と逆側の+X方向にワーク3を走査して、ワイヤを設置する方向と反対方向、つまり−X方向にビードが延びるように形成することもできる。この場合、前回加工した造形物4の高さが今回の加工の直前に計測されるので、計測直後に加工条件を制御すればよい。ただし、前回加工時の積層物の平均積層高さを、今回の走査を開始する前のワイヤ高さ調整時に知ることができないため、設計値などを用いてワイヤ高さの調整を行い、設計値からの積層量の差異を計測して、この結果を加工時の制御に反映する。
【0038】
このように、ライン照明8を用いた光切断方式の高さ計測系を積層造形装置100に組込み、加工中に造形物4の高さを計測する場合において、高さ計測の撮像系内で一度、加工点の像を結像し、この結像位置を遮光するような遮光部を有する遮光マスク15を結像面に設置し、第二の結像光学系16を用いて、遮光マスク15を透過したライン照明8のみを結像することで、高輝度な加工点から発生する熱輻射光の筐体内、または受光部17で発生する迷光を抑制し、高精度に造形物4の高さを計測することが可能となる。よって、積層造形装置100は、形成済みの造形物4の高さの計測の精度の劣化を抑制することができる。
【0039】
実施の形態2.
本実施の形態2にかかる積層造形装置は、実施の形態1における積層造形装置と構成は同様であるが、高さ計測光学系の構成が異なる。本発明の実施の形態2にかかる積層造形装置は、高さ計測光学系内の遮光板を第一の結像光学系の焦点位置ではなく、受光素子であるイメージセンサの直前に設けた構成である。したがって、第二の結像光学系16を省略することができ、装置全体の小型化が可能となるという利点がある。
【0040】
図15は、実施の形態2にかかる積層造形装置のXZ断面を示す図である。加工用レーザ1、加工光学系20、およびライン照明8の構成は実施の形態1と同様である。本実施の形態では、ビームスプリッタ12を透過した造形物4からの反射光を集光レンズ14で受光部17の受光素子に直接結像する。また、受光素子の直前に、つまり受光素子と第一の結像光学系との間に遮光マスク15を設置することで、加工点からの熱輻射光を遮光し、ラインビーム40の反射光のみをイメージセンサに結像する。遮光マスク15は、例えば、イメージセンサ上に接着などの方法で取り付ける。遮光マスク15上の遮光部の大きさは、設置されるイメージセンサの画素からの距離によって設定する必要がある。遮光したいメルトプールの領域をφMとすると、第一の結像光学系によって結像されたイメージセンサ上での大きさはφM’=φM×M1となる。
図16は、実施の形態2にかかる遮光マスク15の厚みと遮光部の領域との関係を示す図である。
図16のように、イメージセンサの光線の入射角R、遮光部のイメージセンサ画素表面からの距離Dとすると、遮光部の領域φSの大きさは、φS=φM’+2×Dtan(R)とすれば良い。ただし、遮光マスク15の厚み、つまり距離Dが大きくなるとこの分、遮光部の領域φSを大きくする必要があり、イメージセンサに結像されるラインビーム40の反射光線も遮光してしまう可能性がある。このため、遮光マスク15の厚みは極力薄くすることが望ましい。
【0041】
このように、実施の形態2の積層造形装置では、高さ計測部の結像光学系を一つにしても、加工点を遮光して、加工中にも高い高さ計測精度で造形物4の高さを計測することができるため、装置全体の小型化が可能となるメリットがある。
【0042】
実施の形態3.
本実施の形態3の積層造形装置は、実施の形態1、または実施の形態2におけるものと構成は同様であるが、高さ計測に用いるラインビーム40の形状が異なる。本発明の実施の形態3による積層造形装置は、ラインビーム40の照射形状が直線ではなく、加工点を中心とした円形形状である。このようにラインビーム40の照射形状を円形とすることで、加工形状が直線ではなく、加工点の走査方向が加工中に変化する場合にも、造形物4に対して直角に横切る方向つまり、造形物4の幅方向にライン照明8を照射することができるため、駆動ステージ6の回転機構を無くすことができ、装置を小型化できる。例えば、駆動ステージ6をXY平面内で回転させれば、X軸、Y軸に対して斜め方向に走査する場合でも、計測位置が加工点の前方または後方となるようにすることができる。しかし、ラインビーム40の照射形状を円形とすることで、駆動ステージ6を回転させなくても、計測位置の少なくとも一部が、加工点の前方または後方となるようにすることができる。
【0043】
図17は、実施の形態3にかかる造形物4の形成方向を変更した加工を行う場合のXY断面を示す1つ目の例の図である。
図17に記載される駆動ステージ6は、XY平面内で回転する回転ステージである。なお、
図17以降において、点線で囲われた範囲は、積層造形装置100が造形物4を形成する予定の範囲を示す。
図17のように、駆動ステージ6を用いて造形物4の形成方向を変更した加工を行う場合には、駆動ステージ6上のXY平面における回転ステージを用いてワーク3をβ度回転させ造形を行うことができるので、加工方向は常に一定である。この場合、直線状のラインビーム40を用いても、常に造形物4の加工方向に対して垂直にラインビーム40を照射することができる。
図18は、実施の形態3にかかる造形物4の形成方向を変更した加工を行う場合のXY断面を示す2つ目の例の図である。
図18に記載される駆動ステージ6は回転ステージではなく、XY平面内で回転しない。
図18のように、回転ステージがない場合に造形物4の形成方向を変更した加工を行う場合には、X軸方向の動作速度とY軸方向の動作速度とを適切な比率に制御することで、加工方向を変更することができるが、XY平面に対して斜め方向に加工する必要がある。しかし、直線状のラインビーム40を用いると、斜め方向に加工する場合に、造形物4が延びるように積層される方向に対して垂直な断面を計測することができなくなる。
図19は、実施の形態3にかかる造形物4の形成方向を変更した加工を行う場合のXY断面を示す3つ目の例の図である。
図19に記載される駆動ステージ6は回転ステージではなく、XY平面内で回転しない。
図19では、円形のラインビーム40を用いる。この場合、斜め方向に造形物4の加工を行っても、ラインビーム40が加工点を中心とした円形状で照射されるため、加工方向に寄らず、常に加工点から一定の距離の造形物4の高さを計測することができる。ワイヤを+X方向から装填する場合、一般には、+Y方向〜−X方向〜−Y方向の180度の範囲で加工されることが多い。このため、ここでは、円形のラインビーム40について説明したが、厳密に円形である必要はなく、楕円形状であっても良く、半円など、一部途切れていても問題はない。ラインビーム40は、付加加工中にとりうるラインビームのラインの範囲の角度が90度以上であれば、加工点がどの方向に走査される場合であっても、ラインビーム40を用いて形成済みの造形物4の高さ測定が可能である。例えば、円弧状のラインビームの場合、中心角が90度以上であればよい。もし、−X方向から+Y方向までの90度の円弧状のラインビームを用いるとすると、+X方向、−Y方向にビードが延びるように形成される場合には、加工直後を計測することとなり、−X方向、+Y方向にビードが延びるように形成される場合には、加工直前を計測することとなる。また、曲線状のラインビームであれば、接線方向のラインの範囲の角度が90度以上であればよい。また、加工方向が互いに垂直な2方向だけであれば、正方形などの四角形状でも良い。
【0044】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。