(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記筐体の前記加圧室と前記気体供給部との間に配置され、前記気体供給部から前記加圧室へ供給される前記気体の成分、前記気体の物性値及び前記気体の流量のうち少なくとも一つを検知する検知器と、を有する
請求項8に記載の気体輸送装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態に係る気体輸送装置、その製造方法、及び気体輸送装置について図面を参照しながら説明する。なお、
図1を含む以下の図面では、各構成部材の相対的な寸法の関係及び形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。また、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」及び「後」等)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上、そのように記載しているだけであって、装置あるいは部品の配置及び向きを限定するものではない。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る気体輸送装置の構成を示す概略図である。気体輸送装置100は、対象空間の特定の領域に気体を輸送するものである。図中、気体輸送装置100の奥行方向は矢印Y方向で表され、気体輸送装置100の高さ方向は矢印Z方向で表される。
【0011】
図1に示されるように、気体輸送装置100は、筐体14と、振動装置10と、振動装置10の駆動回路20と、気体供給部50と、制御部31と、筐体14内に設けられた弾性膜13とを有している。
【0012】
気体供給部50は、筐体14に接続されており、輸送の対象となる気体を筐体14に供給するものである。筐体14は、前壁141と、前壁141の外周端から後方へ延びる周壁部142と、周壁部142の下部に形成され、周壁部142を気体供給部50と接続する筒状の接続壁143と、を有している。前壁141には開口部15が形成されている。
図1及び後述する
図2に示される例では、開口部15は前壁141の略中央に形成されているが、開口部15は前壁141の任意の位置に形成することができる。筐体14には、前壁141と、後述する弾性膜13と、周壁部142において弾性膜13の外周部と前壁141の外周部とを接続する前方部分と、により囲まれる加圧室16が形成されている。また気体供給部50は、加圧室16へ供給される気体の加湿を行う加湿部51を備えている。
【0013】
駆動回路20は、信号を発生させる信号発生器22と、信号発生器22により発生した信号を増幅させる電力増幅器23とを有する。信号発生器22と電力増幅器23とは、信号線24により接続されている。また電力増幅器23は、信号線24により振動装置10と接続されている。振動装置10は、弾性膜13と対向するように筐体14の後端部に設置された振動部12と、電力増幅器23から信号を受信して振動部12を振動させる振動発生器11とを有している。
【0014】
筐体14内に設けられた弾性膜13と、筐体14に設置された振動装置10の振動部12との間には、密閉した振動伝達室17が形成されている。弾性膜13と振動部12とは直接接触しておらず、弾性膜13と振動部12とは離間して配置されている。すなわち、振動伝達室17は、弾性膜13と、弾性膜13と対向する振動部12と、筐体14の周壁において弾性膜13の外周部と振動部12の外周部とを接続する後方部分と、により形成されている。つまり、筐体14において、弾性膜13の前方には開口部15により対象空間の雰囲気に開放された加圧室16が形成され、弾性膜13の後方には密閉された振動伝達室17が形成されている。振動伝達室17の内部圧力は、装置周囲の環境圧(気圧)よりも高い圧力とされていることが望ましい。筐体14において、上述した接続壁143は、周壁部142における弾性膜13よりも前方部分の下部につながっており、気体供給部50と加圧室16とを連通する構成とされる。
【0015】
制御部31は、信号発生器22、電力増幅器23及び気体供給部50のそれぞれと、制御線32により接続されている。制御部31は、信号発生器22の信号及び電力増幅器23の電力増幅量を制御することにより、振動部12の振動を制御する。具体的には、制御部31は、信号発生器22で発生する信号の波形、大きさ及び周波数等を制御する。また制御部31は、気体供給部50から加圧室16に供給される気体の供給量を制御することにより、対象空間へ輸送する気体の量を制御する。
【0016】
制御部31は、メモリ等の記憶機能を有する装置、CPU等の計算機能を有する装置、又はマイクロコンピューター等の記憶機能と計算機能の双方を有する装置を用いることができる。制御部31には、各機器の動作を予め決めたプログラムを記憶しておくこともできる。また制御部31には、各種パラメータを変えて予め行った測定の評価結果に基づく関係式又はデータテーブル等が記憶されている。ここでパラメータとは、例えば、輸送する気体の物性、周囲環境、開口部15の大きさ、各機器の設定、気体を輸送する領域、気体の輸送量等である。また各機器の設定とは、例えば、信号発生器22で発生する信号、電力増幅器23の増幅量、及び気体供給部50の気体供給量等である。
【0017】
なお、制御部31には、例えばキーボード等のヒューマンインターフェース機器が接続され、ヒューマンインターフェース機器を介して制御部31にプログラム及び設定値等の入力及び変更がされる構成としてもよい。
【0018】
図1を参照して気体輸送装置100が行う一連の動作について説明する。まず、信号発生器22により発生した信号が電力増幅器23に送られる。電力増幅器23で増幅された信号は、振動装置10の振動発生器11に送られ、振動発生器11により発生した振動で振動部12が変位する。振動装置10の振動部12の振動は、密閉された振動伝達室17を介して弾性膜13に伝わる。弾性膜13は、外周部13a(後述する
図2参照)が筐体14に支持されつつ伸縮して変位する。弾性膜13の中央部を含む部分が加圧室16側に変位することにより、加圧室16が加圧され、気体供給部50から供給された加圧室16内の気体が開口部15から渦輪となって放出され、気体が輸送される。このとき、信号発生器22の信号及び電力増幅器23の電力増幅量が制御部31により制御され、振動部12の振動による変位量が制御される。また制御部31により、気体供給部50から加圧室16に供給される気体の供給量が制御される。
【0019】
次に、気体輸送装置100の構成について、詳しく説明する。信号発生器22では、任意の波形の信号を生成することができる。信号波形は、矩形状のパルス波であることが望ましい。また、信号波形の周波数は、気体輸送装置100に組み込まれた状態における振動発生器11の共振周波数、あるいは、気体輸送装置100に組み込まれていない状態、すなわち、振動発生器11単体の共振周波数に設定されることが望ましい。あるいは、気体輸送装置100に組み込まれた状態における振動発生器11のインピーダンスの極大値又は極小値の周波数の成分が多く含まれるように設定されることが望ましい。あるいは、気体輸送装置100に組み込まれていない状態である振動発生器11単体のインピーダンスの極大値又は極小値における共振周波数の成分が多く含まれるように設定されることが望ましい。
【0020】
振動装置10は、電気信号の電気エネルギーを機械エネルギーである振動に変換する電気機械変換器が用いられる。電気機械変換器の代表例として、音響機器のスピーカが挙げられる。スピーカは、コイルに流れる電流と磁石の作用を用い、電気信号を機械振動に変換する。一般にスピーカは、例えばコーン型又はホーン型の振動板と、振動板が接着されたコイル部と、バネを介してコイル部を支持する支持部と、支持部に設置された磁石等とにより構成される。コイルに電流が流れると磁界が生じ、生じた磁界と磁石の磁場とによりコイルに力が作用してコイルが振動し、コイルに接着された振動板が振動する。振動装置にスピーカを用いる場合、コイルが振動発生器11であり、振動板が振動部12を構成する。一般に、スピーカの振動板には、金属、高分子素材、セラミックス、又は紙といった多種多様な材質が用いられる。振動装置10として、スピーカの代わりに、電気機械変換器の一つである圧電素子を用いることもできる。一般に圧電素子は、圧電セラミックと、圧電セラミックに設けられた電極と、圧電セラミックと接着された金属板とを有し、圧電セラミックに電圧を印加することで、金属板を振動させる構成とされる。
【0021】
電力増幅器23は、信号発生器22から出力された信号を増幅する。増幅量は任意であるが、振動発生器11の許容入力電力以下となるように調整されることが望ましい。
【0022】
弾性膜13は、弛み無く筐体14に接続され、厚みが1mm以下の伸縮性と弾力性とがある薄膜であることが望ましい。弾性膜13の材質としては、例えば、フィルム状の高分子化合物の薄膜等が挙げられる。
【0023】
図2は、実施の形態1に係る気体輸送装置の渦輪の発生原理を示す説明図である。図中、気体輸送装置100の幅方向は矢印X方向で表される。振動伝達室17は密閉構造となっている。振動伝達室17を密閉するために、振動部12と筐体14の任意の面との境界部分、及び、弾性膜13と筐体14の周壁部142との境界部分はそれぞれ、境界部分の全周にわたって、例えば樹脂製の接着剤等で密着し、固定されている。すなわち、弾性膜13の外周部13aを、接着剤等で筐体14の内面と接続することにより、密閉された振動伝達室17を有する気体輸送装置100を製造することができる。なお、接着剤が用いられる場合について説明したが、弾性膜13の外周部13aと筐体14の内面とを密着させ、加圧室16と振動伝達室17との間の気体の出入りを阻止する構成であれば接着剤に限定されない。
【0024】
これにより、例えば加湿部51を用いる等して水分を含む気体を輸送する場合、振動部12に水分を含む気体が接触しないので、振動部12の表面における結露等による水分の付着が抑制される。したがって、振動部12の振動が妨げられず、振動部12の振動効率が低下することなく、安定して加圧室16に圧力変動が与えられ、安定した気体の輸送が可能となる。また、このような弾性膜13を筐体14に設けることで振動部12に水滴が付着することを防止できるので、振動部12に特殊な防水加工を施す場合と比べて、機器の高価格化を抑制することもできる。
【0025】
振動部12の振動は、振動部12の面全体の振動が振動伝達室17の圧力変動に変換される。つまり、振動部12の面全体の振動が、弾性膜13の中心部に集約される。筐体14の周壁部142の内面に外周部13aにおいて固定されて弛みなく設けられた弾性膜13の中心部に、振動部12の振動により圧力が集中してかかることで、弾性膜13は中心部を振動変位のピークとして容易に伸縮する。よって、弾性膜13の中心部における振動変位すなわち振動により往復する距離は、振動部12の振動面の任意の点における振動変位よりも大きくなる。そのため、上述した振動伝達室17及び弾性膜13を有することで、開口部15から所望の気体を放出させる加圧室16の内部の圧力変動を発生させるために必要な振動発生器11への信号のエネルギーが削減でき、省エネルギー効果が得られる。
【0026】
気体供給部50は、搬送する気体を筐体14の加圧室16に供給する。例えば、水分を含む気体を輸送する場合は、気体供給部50に超音波式又は加熱式等の加湿装置を用いる。また、乾燥した気体を輸送する場合は、気体供給部50にコンプレッサー式又はデシカント式等の除湿装置を用いる。また、酸素などの特定気体を輸送する場合は、気体供給部50にその特定気体を発生させる装置を用いる。
【0027】
筐体14は加圧室16を構成し、任意の材質を用いることができる。筐体14の材質は、輸送する気体に対して、耐性を有する材質であることが望ましく、搬送気体に電荷を保持、あるいは、消失させる機能を有する材質など、加圧室16側の表面を薄膜等によりコーティングしたものを用いることもできる。また、筐体14に、振動装置10の振動部12、及び弾性膜13等により生じる騒音を軽減する材質を用いることもできる。
【0028】
開口部15は、加圧室16の気体を渦輪として放出するため、筐体14に開けられた、任意の形状、任意の大きさの穴である。開口部15の形状によらず、放出された渦輪は、時間経過とともに円形状になるため、開口部15の形状は、後述する
図2に示されるように円形であることが望ましい。開口部15の大きさは、弾性膜13の振動変位、すなわち、加圧室16の圧力変動量と、気体の輸送距離と、輸送する気体の粘性等とにより決定される。
【0029】
図2は、実施の形態1に係る気体輸送装置の渦輪の発生原理を示説明図である。
図2を参照して、渦輪の生成と気体輸送の原理について説明する。簡略化のため、開口部15は直径Dで面積Sの円形状を有し、弾性膜13は面積Aの四角形状を有するものとし、弾性膜13は面内一様に変位すると仮定する。
【0030】
図2において、振動装置10の振動発生器11に電気信号が入力されると、振動部12に力F0が印加されて変位する。振動伝達室17は密閉されているので、振動部12が弾性膜13側へ変位すると振動伝達室17の容積が小さくなることにより振動伝達室17が加圧され、弾性膜13が力Fを受けて前方へ変位し、加圧室16の容積が小さくなることにより加圧室16が加圧される。そして、開口部15から加圧室16の内部の気体が放出される。
【0031】
加圧室16の圧力が変化する時間ΔTは、1秒以内の短い時間で行われる。
図2に示されるように、奥行方向(矢印Y方向)における弾性膜13の変位量をΔYとすると、加圧室16における体積変化量ΔVは、ΔV=AΔYとなる。また、開口部15から気体59が放出される速度をL/ΔTとすると、底面積がS、かつ底面からの高さがLの円柱状の気体59の塊が開口部15から放出され、その体積はSLとなる。開口部15から放出された円柱状の気体の塊は、受ける力により形状が変化し、開口部15から放出された後、円環状(ドーナツ状、あるいは、トーラス状ともいう)となって並進運動する。以降の説明において、このように並進運動する円環状の気体の塊を、渦輪と称する場合がある。ここで、渦輪の生成状況は、搬送する気体の粘性等の物性、及び周囲の温度といった環境等の要因によって変化するので、予め実験等により渦輪の生成状況を確認し、渦輪が生成されるように、開口部15の直径D、力F、及び力F0等の値を決定しておく。
【0032】
開口部15から放出された渦輪の運動状態は、開口部15の直径Dが小さく、かつ、弾性膜13に加わる力Fが大きく、かつ、ΔTが小さいほど、渦輪の進行速度が大きくなる。空間に放出された渦輪は、空気抵抗等を受けて減速し、やがて静止し、渦輪を構成する気体は周囲の空間に拡散して、渦輪が消滅する。渦輪は、内部において回転する流体を閉じ込めたまま放出された方向へ移動するので、内側と外側とで速度が均一な気体の塊と比べて、移動中に気体が周囲へ拡散しにくく、遠方まで到達することができる。
【0033】
以上より、予め、開口部15の直径D及び振動部12に加わる力F0等のパラメータを設定することで、特定の領域に特定の気体を輸送することが可能となる。開口部15の直径D、振動伝達室17を介して弾性膜13を振動させるために必要な振動部12に加わる力F0、信号発生器22で発生する信号の波形、電力及び周波数、電力増幅器23の増幅量、並びに気体供給部50の気体の供給量等は、予め決定しておく。これらの値は、対象空間に輸送対象の気体の輸送を実験等により行って、実験結果に基づいて予め設定しておくことが望ましい。
【0034】
以上のように、実施の形態1の気体輸送装置100は、気体の放出口(開口部15)を有し、内部に、放出口とつながる加圧室16が形成された筐体14と、振動装置10と、弾性膜13と、を備える。振動装置10は、振動する振動部12と振動部12を振動させる振動発生器11とを有し、加圧室16を介して振動部12が筐体14の任意の位置に設置されている。弾性膜13は、加圧室16と振動部12との間に配置され、筐体14の内面に接続された外周部13aを有する。そして、筐体14の内部において振動部12と弾性膜13との間には、筐体14における振動部12と弾性膜13の外周部13aとの間の壁部と、振動部12と、弾性膜13とにより囲まれ、密閉された振動伝達室17が形成されている。
【0035】
これにより、加圧室16の加湿空気の結露による水滴が振動装置10の振動部12に付着せず、振動効率の低下が抑制でき、良好な渦輪による安定した気体の輸送が行える。また、水滴による振動装置10の振動部12の劣化を防止できる。よって、振動装置10に防水加工を施す必要がなく、一般的なスピーカ等を振動装置10として使用でき、気体輸送装置100の低価格化が可能である。更に、振動装置10の振動部12全面の振動が振動伝達室17を介して弾性膜13の中央部に集約されるので、振動装置10の振動部12よりも増大した振幅を有する弾性膜13を介して加圧室16の気体が加圧されることにより、省エネルギー効果が得られる。
【0036】
実際に、発明者等が、上記のように設計した気体輸送装置を製作し、超音波加湿器で生成された加湿空気を特定の気体として、加湿空気の飛距離を目視確認したところ、渦輪が1メートル以上並進運動し、特定領域に水分を輸送し、加湿できることを確認した。また発明者は、密閉された振動伝達室17により加湿空気を振動部12に接触させない構成とした気体輸送装置100において、振動部12の振動効率が低下せず、低エネルギーで安定した気体の輸送ができること、及び振動部12の劣化が抑制できること確認した。
【0037】
また実施の形態1の気体輸送装置100は、振動発生器11と信号線24を介して接続され、振動発生器11を駆動する駆動回路20と、駆動回路20を制御する制御部31と、を備える。駆動回路20は、信号を発生させる信号発生器22と、信号発生器22により発生した信号を増幅させる電力増幅器23と、を含むものである。振動発生器11は、駆動回路20から入力される信号の電気エネルギーを機械エネルギーに変換するものである。
【0038】
これにより、振動部12の振動を制御することにより、放出される気体が渦輪を形成するように加圧室16の気体にかかる圧力を調整することができる。また、振動装置10として、一般的な圧電素子及びスピーカといった電気機械変換器を用いることができ、気体輸送装置100の低価格化が可能である。
【0039】
信号発生器22では、正弦状又は矩形状等の任意の波形を連続して発生させることで、繰り返し、振動部12を振動させ、伝達室を介して繰り返し、弾性膜13を振動させ、ほぼ連続して気体を対象空間に輸送することができる。また、信号発生器22では、正弦状又は矩形状等の任意の波形を断続的あるいは間欠的して発生させると、意図した時間間隔で振動部12を振動させ、伝達室を介して弾性膜13を振動させ、断続的あるいは間欠的に気体を対象空間に輸送することができる。このとき、波形のONとOFFの長さ(いわゆる、デューティー比)を制御することで、気体の輸送量を調整することができる。
【0040】
気体輸送装置100において、気体供給部50から加圧室16への気体の供給量が、弾性膜13の振動による加圧室16の圧力変動により開口部15から気体を放出する能力を超えると、開口部15から気体が渦輪を形成せずに外部に流出する。また、波形がOFFである時に、気体供給部50から気体が加圧室16に供給され続けると、開口部15から気体が渦輪を形成せずに外部に流出する。渦輪を形成せずに開口部15から流出した気体は、渦輪よりも拡散しやすく、到達距離が短くなる。開口部15から気体が渦輪を形成せずに外部に流出する状況は、信号発生器22と電力増幅器23と気体供給部50とが互いに連動するように制御部31によってこれらの機器の動作を制御することにより、防ぐことができる。
【0041】
また、制御部31は記憶機能を有しているので、予め、気体を輸送する領域、輸送する気体の量、温度等の周辺環境、及び輸送する気体等についてそれぞれ複数の状態における最適な機器構成を決めて関係式等で記憶しておくことで、変更に対応することができる。例えば、気体を輸送する領域を変更する、又は輸送する気体の量を変更する場合に、輸送する気体の物性若しくは周囲環境の変化に応じて、予め記憶された関係式を用いて各機器の設定を随時変更し、気体を輸送する領域及び気体の輸送量等を変更することもできる。具体的には、信号発生器22で発生する信号、電力増幅器23の増幅量、及び気体供給部50の気体供給量が随時変更される。更に、開口部15の大きさを変更し、気体を輸送する範囲又は輸送する気体の量を変更することもできる。
【0042】
図3は、実施の形態1に係る気体輸送装置を用いた気体輸送方法を示す説明図である。
図3を参照して、気体輸送装置100を用いて気体を輸送する気体輸送方法について説明する。気体輸送方法は、供給する気体を加湿する加湿工程と、輸送の対象となる気体を供給する気体供給工程とを有する。また気体輸送方法は、信号を処理する信号処理工程と、振動を発生させる振動工程と、振動を伝達する振動伝達工程と、加圧工程と、気体を放出する放出工程とを有する。
【0043】
加湿工程において、加湿部51により、加圧室16へ供給される気体に加湿が行われる(ステップST101)。気体供給工程において、気体供給部50により、予め決められた量の気体が加圧室16へ供給される(ステップST102)。
【0044】
信号処理工程において、駆動回路20により、振動発生器11を駆動するための信号の処理が行われる(ステップST103)。具体的には、まず、信号発生器22により信号を発生する信号発生工程が行われ、次に、電力増幅器23により信号を増幅させる信号増幅工程が行われる。信号処理工程で処理された信号は、振動発生器11に入力される。
【0045】
振動工程において、振動発生器11が駆動され、振動部12が振動する(ステップST104)。具体的には、振動発生器11により、駆動回路20から入力された信号の電力が機械エネルギーに変換されて振動を発生し、発生した振動により振動部12を振動させる。
【0046】
振動伝達工程において、振動部12の振動により、密閉された振動伝達室17を介して弾性膜13を伸縮させ、振動を、放出口(開口部15)とつながる加圧室16に伝達する(ステップST105)。加圧工程において、弾性膜13の伸縮により、加圧室16内の加湿気体を加圧する(ステップST106)。放出工程において、弾性膜13によって加圧された加湿気体が、筐体14の放出口から外部に放出する(ステップST107)。
【0047】
なお、本実施の形態では、気体輸送装置100が水分又は酸素を含む気体等を搬送する場合について説明したが、気体輸送装置100は、香り成分(匂い成分)を含む気体、あるいは粉体等を含む気体等、あらゆる気体を輸送することができる。
【0048】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2に係る気体輸送装置の構成を示す概略図である。実施の形態2の気体輸送装置200は、筐体14において振動伝達室17を形成する部分に設置された弁201と、弁201と制御部31とを接続する制御線32と、を備える点で実施の形態1の気体輸送装置と異なる。以下、実施の形態2において、実施の形態1に示した構成と異なる構成について説明し、実施の形態1に示した構成と同一の機器については同一の符号を付し、同一の機器の説明は省略する。
【0049】
筐体14の周壁部142において振動伝達室17を形成する部分、すなわち、周壁部142において弾性膜13と振動部12との間に位置する部分には、振動伝達室17と筐体14の外部とを連通する穴14aが形成されている。
【0050】
弁201は、筐体14に形成された穴14aに嵌め込まれており、開状態において、振動伝達室17の内部の圧力を調整し、閉状態において、振動伝達室17の内部を一定の圧力に保持するものである。制御部31は、振動伝達室17の内部圧力が予め決められた圧力となるように弁201の開閉を制御する。この場合において、例えば、振動伝達室17の圧力を検知する第1圧力センサと装置周囲の圧力を検知する第2圧力センサとを設け、制御部31は、第1圧力センサの値が第2圧力センサの値より大きくなるように弁の開度を制御する構成とできる。このような構成により、振動伝達室17の内部は、効率的に振動が伝達される圧力に調整され保持されている。なお、筐体14に設置された弁201に更に、弁201を介して振動伝達室17に空気を送り、弁201を介して振動伝達室17から空気を抜く機能を有する、エアーコンプレッサ等の圧力調節器を接続することもできる。この場合、弁201及び圧力調節器の動作を制御部31により制御することで、振動伝達室17の内部の圧力を調整する構成とされる。
【0051】
実施の形態2の気体輸送装置200が行う動作について説明する。気体輸送装置200において、気体を搬送する動作、すなわち、気体供給部50、信号発生器22、電力増幅器23及び振動発生器11の動作は、実施の形態1の場合と同じであるため、ここでは説明を省略する。実施の形態2の気体輸送装置200では、制御部31により弁201の開閉が制御され、振動伝達室17の内部圧力が調整される。このとき、振動伝達室17の内部圧力は、装置周囲の環境圧(気圧)よりも高くなるように調整されることが望ましい。
【0052】
装置周囲の環境圧等を含む情報は、例えば、上述したヒューマンインターフェース機器を介して利用者により制御部31に手動で入力される。なお、周囲環境の情報は、センサ等により取得して制御部31に自動で入力される構成とすることもできる。ヒューマンインターフェース機器又はセンサ等から入力された情報は、制御部31に記憶される。
【0053】
制御部31は、記憶されている情報に基づいて、弁201の開閉を調整し、振動伝達室17の内部圧力を調整する。このような、弁201により内部圧力を調整する動作は、気体供給部50等により気体を搬送する動作を開始する前に実行され、気体を搬送する動作が行われている間、振動伝達室17の内部圧力は調整後の圧力に保持される。また制御部31は、気体を搬送する動作が行われている間において装置周囲の環境圧が変化した場合に、随時、弁201を動作させて振動伝達室17の内部圧力を自動で調整する構成としてもよい。気体を搬送する動作の終了後、制御部31は弁201を開状態とし、振動伝達室17の内部圧力が環境圧と同じ圧力になるように調整することが望ましい。これにより、弾性膜13に張力が過剰に印加されるのを回避でき、弾性膜13の劣化を防ぐことができる。
【0054】
制御部31における弁201のプログラムは、予め記憶させておくことが望ましい。実施の形態2の気体輸送装置200を用いて気体を輸送する気体輸送方法は、実施の形態1の場合とほぼ同じであるが、弁201の開閉により振動伝達室17の内部の圧力を調整する圧力調整工程を更に有する。
【0055】
以上のように、実施の形態2の気体輸送装置200においても、実施の形態1の場合と同様に、加圧室16と振動部12との間に弾性膜13が設けられ、振動部12と弾性膜13との間には密閉された振動伝達室17が形成されている。よって、実施の形態2においても、実施の形態1の場合と同様に、加圧室16に存する加湿空気の水滴が振動装置10の振動部12に付着せず、振動効率の低下が抑制でき、安定した気体の輸送ができる。
【0056】
また実施の形態2の気体輸送装置200は、弁201を備えており、弁201は、筐体14における、振動部12と弾性膜13の外周部13aとの間の壁部に設けられ、閉状態において振動伝達室17の内部の圧力を一定に保持する。これにより、弁201を開いて振動伝達室17の内部の圧力を調整し、弁201を閉じて調整後の圧力を維持することができるので、圧力の変更により、振動伝達の制御の自由度が増す。よって、より安定した気体の輸送が可能となる。
【0057】
また、振動伝達室17は、筐体14の周囲の気圧よりも高い圧力に保持されている。これにより、筐体14内において加圧室16と密閉された振動伝達室17との間に配置された弾性膜13を、振動部12の振動により加圧室16側へ変位し易い構成とでき、加圧室16内の気体を効率的に加圧できる。
【0058】
実施の形態3.
図5は、実施の形態3における気体輸送装置の構成を示す概略図である。実施の形態3の気体輸送装置300は、筐体14の開口部15の大きさを変化させる開口調整器301と、開口調整器301と制御部31とを接続する制御線32と、を備える点で実施の形態1の気体輸送装置と異なる。以下、実施の形態3において、実施の形態1に示した構成と異なる構成について説明し、実施の形態1に示した構成と同一の機器については同一の符号を付し、同一の機器の説明は省略する。
【0059】
開口調整器301は、筐体14において開口部15の縁部に設けられ、開口部15の大きさを変更するものである。開口調整器301は、例えば、複数の板状の部材から成るアイリス絞りにより構成される。制御部31は、筐体14の開口部15の大きさが予め決められた大きさとなるように開口調整器301の動作を制御する。このような構成により、円環形状が崩れにくい安定した渦輪を生成でき、また、気体の輸送距離を制御することができる。
【0060】
実施の形態3の気体輸送装置300が行う動作について説明する。気体輸送装置300において、気体供給部50、信号発生器22、電力増幅器23及び振動発生器11の動作は、実施の形態1の場合と同じであるため、ここでは説明を省略する。実施の形態3の気体輸送装置300では、制御部31により開口調整器301の動作が制御されることで、開口部15の大きさが調整される。具体的には、制御部31は、振動発生器11の入力信号の電力に応じて、開口調整器301を制御し、開口部15の大きさを調整する。これにより、弾性膜13の振動振幅に適した開口部15の大きさに変更して安定した渦輪を生成でき、また、気体の輸送距離が調整できる。
【0061】
制御部31は、振動発生器11の入力信号の電力及び装置の周囲環境に応じて、開口調整器301を制御し、開口部15の大きさを調整する構成とされてもよい。周囲環境の情報には、例えば温度又は湿度等の情報が含まれ、周囲環境の情報は、例えば、上述したヒューマンインターフェース機器を介して利用者により制御部31に手動で入力される。なお、気体輸送装置300は、温度及び湿度といった周囲環境の情報を取得するセンサ等を備える構成とされ、周囲環境の情報は、センサ等により取得して制御部31に自動で入力される構成とすることもできる。ヒューマンインターフェース機器又はセンサ等から入力された情報は、制御部31に記憶される。
【0062】
制御部31は、振動発生器11の入力信号の電力、及び記憶されている周囲環境の情報に応じて、開口調整器301を制御し、開口部15の大きさを調整する。このような、開口調整器301により開口部15の大きさを調整する動作は、例えば、気体輸送装置300が動作を開始する際において、振動発生器11へ信号が最初に入力されたときに実行される。また制御部31は、気体を搬送する動作が行われている間において周囲環境が変化した場合に、随時、開口調整器301を動作させて開口部15の大きさを自動で調整する構成としてもよい。この場合、周囲環境が変化しても、円環形状が崩れにくい安定した渦輪を発生させるとともに、気体の輸送距離を自動で調整することができる。制御部31における開口調整器301のプログラムは、予め記憶させておくことが望ましい。
【0063】
実施の形態3の気体輸送装置300を用いて気体を輸送する気体輸送方法は、実施の形態1の場合とほぼ同じだが、開口調整器301により、筐体14の放出口(開口部15)における開口面積を調整する開口調整工程を更に有する。
【0064】
以上のように、実施の形態3の気体輸送装置300においても、実施の形態1の場合と同様に、加圧室16と振動部12との間に弾性膜13が設けられ、振動部12と弾性膜13との間には密閉された振動伝達室17が形成されている。よって、実施の形態3においても、実施の形態1の場合と同様に、加圧室16に存する加湿空気の水滴が振動装置の振動部に付着せず、振動効率の低下が抑制でき、安定した気体の輸送ができる。
【0065】
また実施の形態3の気体輸送装置300は、筐体14の放出口(開口部15)に設けられ、開口面積を調整する開口調整器301を有する。これにより、安定した気体の輸送と、気体の輸送距離の変更を行うことができる。
【0066】
なお、これまで、実施の形態1の気体輸送装置100に開口調整器301を設ける場合について説明したが、実施の形態2の気体輸送装置300に、上述した開口調整器301を設け、開口部15の大きさを調整する構成としてもよい。
【0067】
実施の形態4.
図6は、実施の形態4における気体輸送装置の構成を示す概略図である。実施の形態4の気体輸送装置400は、気体供給部50と筐体14の加圧室16との間に設けられた検知器401と、検知器401と制御部31とを接続する制御線32と、を備える点で実施の形態1の気体輸送装置と異なる。以下、実施の形態4において、実施の形態1に示した構成と異なる構成について説明し、実施の形態1に示した構成と同一の機器については同一の符号を付し、同一の機器の説明は省略する。
【0068】
図6に示されるように、検知器401は、気体供給部50と筐体14の加圧室16とを連通させる筐体14の接続壁143に設けられ、気体供給部50から加圧室16へ供給される気体の成分、物性値又は流量等を検知するものである。ここで、物性値とは、例えば、気体の温度、湿度、又は導電率等を指す。検知器401は複数の物性値を検知するものでもよい。また検知器401は、気体の成分、物性値及び流量のうち二以上を検知するものでもよい。検知器401は、検知した気体の成分、物性値又は流量といった検知値Kを、制御線32を介して制御部31に送信する。制御部31は、検知器401により検知された検知値Kに基づいて気体供給部50による加圧室16への気体の供給を調整する。
【0069】
実施の形態4の気体輸送装置400が行う動作について説明する。実施の形態4において気体輸送装置400の各機器が行う動作は、実施の形態1の場合とほぼ同じである。ただし、実施の形態4の気体輸送装置400では、気体供給部50から筐体14の加圧室16へ供給される気体における気体の成分、物性及び流量等が調整される。
【0070】
具体的には、気体供給部50から加圧室16へ供給される気体の成分、物性値又は流量の検知値Kが、繰り返し、検知器401により検知され、制御部31へ送信される。検知器401により検知される検知値K1が、予め設定された設定値Ks1となるように、気体供給部50から加圧室16へ供給される気体が調整される。具体的には、気体供給部50から加圧室16へ供給される気体の量あるいは特定成分の量等が調整される。設定値Ks1は、気体の搬送が意図される対象空間の領域において、所望の気体の量、所望の特定成分の量、あるいは所望の気体の状態(例えば、温度、湿度又は導電率)となるように決定され、制御部31に記憶されている。
【0071】
このような構成により、意図した対象空間の領域に過不足なく気体あるいは気体の特定成分(例えば、水分又は酸素)等を輸送できる。また制御部31は、加圧室16への気体の供給が調整される際、意図する対象空間の領域へ気体が最も効率よく輸送されるように、検知された検知値K1に応じて気体供給部50と、信号発生器22と、電力増幅器23等とを制御する構成とされてもよい。
【0072】
また、検知器401を設置することで、気体輸送装置400において気体供給部50を別の新たな気体供給部に変更する場合でも、同一の検知器401を使用することができ、気体輸送装置400の構成を簡素化できる。このように気体供給部50が変更された場合、検知器401は、新たな気体供給部から供給される気体の成分、物性値、又は流量等を検知する。制御部31は、新たな気体供給部から供給される気体について、検知された検知値K2が、その気体について予め設定されている設定値Ks2となるように、気体供給部50等を制御することができる。また制御部31は、検知された検知値K2に基づいて演算を行い、演算結果に基づいて気体輸送装置400の各機器の動作を制御するように構成されてもよい。
【0073】
制御部31において、検知値K1、K2、設定値Ks1、Ks2を用いた判断プログラムは、予め記憶させておくことが望ましい。
【0074】
以上のように、実施の形態4の気体輸送装置400においても、実施の形態1の場合と同様に、加圧室16と振動部12との間に弾性膜13が設けられ、振動部12と弾性膜13との間には密閉された振動伝達室17が形成されている。よって、実施の形態4においても、実施の形態1の場合と同様に、加圧室16に存する加湿空気の水滴が振動装置の振動部に付着せず、振動効率の低下が抑制でき、安定した気体の輸送ができる。
【0075】
また実施の形態4の気体輸送装置400は、検知器401を備え、検知器401は、筐体14の加圧室16と気体供給部50との間に配置され、気体供給部50から加圧室16へ供給される気体の成分、気体の物性値及び気体の流量のうち少なくとも一つを検知する。これにより、検知器401により検知された気体に関する情報に基づいて、輸送する気体に応じた制御を行うことができる。
【0076】
また、筐体14は、加圧室16と気体供給部50とを接続する筒状の接続壁143を有し、上記の検知器401は、接続壁143に配置されている。これにより、気体供給部50を別の気体供給部に取り替えた場合でも、筐体14の接続壁143に配置された同一の検知器401を用いることができ、構成を簡素化できる。
【0077】
なお、これまで、実施の形態1の気体輸送装置100に検知器401を設ける場合について説明したが、実施の形態2の気体輸送装置200又は実施の形態3の気体輸送装置300に検知器401を設け、検知値に基づいて気体の供給量を調整する構成としてもよい。
【0078】
実施の形態5.
図7は、実施の形態5における気体輸送装置の構成を示す概略図である。実施の形態5の気体輸送装置500は、筐体14に設けられた2つの状態検知器(第1の状態検知器501及び第2の状態検知器502)と、2つの状態検知器それぞれを制御部31と接続する制御線32を備える点で実施の形態2の気体輸送装置200と異なる。以下、実施の形態5において、実施の形態2に示した構成と異なる構成について説明し、実施の形態2に示した構成と同一の機器については同一の符号を付し、同一の機器の説明は省略する。
【0079】
筐体14の周壁部142において振動伝達室17を形成する部分、すなわち、周壁142部において弾性膜13と振動部12との間に位置する部分には、振動伝達室17と筐体14の外部とを連通する第1の設置孔14bが形成されている。第1の設置孔14bは、弁201が嵌め込まれる穴14aとは別に設けられている。また筐体14の周壁部142において加圧室16を形成する部分、すなわち、周壁部142において弾性膜13と前壁141との間に位置する部分には、加圧室16と筐体14の外部とを連通する第2の設置孔14cが形成されている。
【0080】
第1の状態検知器501は、筐体14に形成された第1の設置孔14bに嵌め込まれ、振動伝達室17の圧力、温度及び湿度のうち少なくとも一つを検知する。第1の状態検知器501は、例えば、圧力センサ及び温湿度センサ等で構成される。第2の状態検知器502は、筐体14に形成された第2の設置孔14cに嵌め込まれ、加圧室16の圧力、温度及び湿度のうち少なくとも一つを検知する。第2の状態検知器502は、例えば、圧力センサ及び温湿度センサ等で構成される。なお、気体輸送装置500において、第2の状態検知器502を省略し、第1の状態検知器501のみを備える構成としてもよい。
【0081】
ここでは、圧力が検知されるものとして説明する。つまり、第1の状態検知器501及び第2の状態検知器502により、筐体14内における弾性膜13の両側の位置の圧力が検知される。第2の状態検知器502が嵌め込まれる第2の設置孔14cは、筐体14の周壁部142において加圧室16を形成する部分のうち、開口部15からできるだけ遠く、且つ弾性膜13の動きを阻害しない程度に弾性膜13から離れた部位に形成されることが望ましい。
【0082】
実施の形態5の気体輸送装置500が行う動作について説明する。実施の形態5において気体輸送装置500の各機器が行う動作は、実施の形態2の場合とほぼ同じである。ただし、実施の形態5の気体輸送装置500では、第1の状態検知器501により検知された検知値P1及び第2の状態検知器502により検知された検知値P2に基づいて各機器の制御がされる。
【0083】
第1の状態検知器501により連続的に振動伝達室17の圧力が検知され、検知された検知値P1は、制御線32を介して制御部31に送信される。第2の状態検知器502により連続的に加圧室16の圧力が検知され、検知された検知値P2は、制御線32を介して制御部31に送信される。制御部31は、検知値P1と検知値P2とを比較し、意図する対象空間の領域へ気体が最も効率よく輸送されるように、信号発生器22と、電力増幅器23と、気体供給部50と、弁201等とを制御する。
【0084】
制御部31における検知値P1、P2を用いた判断プログラム、及び弁201のプログラムは、予め記憶させておくことが望ましい。また気体輸送装置500において気体を搬送する動作が行われているとき、環境圧が変化した場合に、随時、弁201の開閉を制御して振動伝達室17の内部圧力を自動で調整するように制御部31を構成することもできる。
【0085】
以上のように、実施の形態5の気体輸送装置500においても、実施の形態1の場合と同様に、加圧室16と振動部12との間に弾性膜13が設けられ、振動部12と弾性膜13との間には密閉された振動伝達室17が形成されている。よって、実施の形態5においても、実施の形態1の場合と同様に、加圧室16に存する加湿空気の水滴が振動装置の振動部に付着せず、振動効率の低下が抑制でき、安定した気体の輸送ができる。
【0086】
また実施の形態5の気体輸送装置500は、振動伝達室17の圧力、温度及び湿度のうち少なくとも一つを検知する第1の状態検知器501を備える。これにより、第1の状態検知器501で検知された検知値P1に応じて各機器を制御でき、制御の自由度が増す。例えば、第1の状態検知器501が振動伝達室17の圧力を検知する場合、検知された圧力に応じて各機器を制御し、加圧室16の圧力の変動量、加圧室16へ供給する気体の量、あるいは、振動伝達室17の圧力等を変更することができる。結果、より安定した気体の輸送が可能となる。
【0087】
また気体輸送装置500は、加圧室16の圧力、温度及び湿度のうち少なくとも一つを検知する第2の状態検知器502を備える。これにより、第2の状態検知器502で検知された検知値P2に応じて各機器を制御でき、制御の自由度が増す。結果、より安定した気体の輸送が可能となる。
【0088】
実施の形態6.
図8は、実施の形態6における気体輸送装置の構成を示す概略図である。実施の形態6の気体輸送装置600は、実施の形態5に示された気体輸送装置500に、実施の形態3に示された開口調整器301、及び開口調整器301と制御部31とを接続する制御線32が追加された構成とされている。以下、実施の形態6において、実施の形態5に示した構成と異なる構成について説明し、実施の形態5に示した構成と同一の機器については同一の符号を付し、同一の機器の説明は省略する。
【0089】
開口調整器301は、筐体14において開口部15の縁部に設けられ、開口部15の大きさを変更するものである。開口調整器301は、例えば、複数の板状の部材から成るアイリス絞りにより構成される。
【0090】
実施の形態6の気体輸送装置600が行う動作について説明する。実施の形態6において、信号発生器22と、電力増幅器23と、気体供給部50と、弁201との動作は実施の形態5の場合とほぼ同じである。また実施の形態6において、開口調整器301の動作は実施の形態3の場合とほぼ同じである。制御部31は、筐体14の開口部15の大きさが予め決められた大きさとなるように開口調整器301の動作を制御する。
【0091】
ただし、実施の形態6の気体輸送装置600では、制御部31は、第1の状態検知器501により検知した検知値P1及び第2の状態検知器502により検知した検知値P2に基づいて開口調整器301により開口部15の大きさを調整するように構成されている。このような構成により、開口部15から放出される渦輪を安定化することができる。
【0092】
また制御部31は、意図する対象空間の領域へ気体が最も効率よく輸送されるように、検知された検知値P1及び検知値P2に応じて、信号発生器22と、電力増幅器23と、気体供給部50と、弁201と、開口調整器301等とを制御する構成とされてもよい。
【0093】
制御部31における検知値P1、P2を用いた判断プログラム及び弁201のプログラムは、予め記憶させておくことが望ましい。また気体輸送装置500において気体を搬送する動作が行われているとき、環境圧が変化した場合に、随時、弁201の開閉を制御して振動伝達室17の内部圧力を自動で調整するように制御部31を構成することもできる。
【0094】
また、本実施の形態の気体輸送装置600において、実施の形態4の検知器401を設け、気体供給部50から加圧室16へ供給される気体の成分、物性値又は流量等に応じて気体の供給を調整する制御を組み合わせて行う構成としてもよい。この場合、制御部31における検知値P1、検知値P2、検知値K1、K2、設定値Ks1、Ks2等を用いた判断プログラムは、予め記憶させておくことが望ましい。
【0095】
以上のように、実施の形態6の気体輸送装置600においても、実施の形態1の場合と同様に、加圧室16と振動部12との間に弾性膜13が設けられ、振動部12と弾性膜13との間には密閉された振動伝達室17が形成されている。よって、実施の形態6においても、実施の形態1の場合と同様に、加圧室16に存する加湿空気の水滴が振動装置の振動部に付着せず、振動効率の低下が抑制でき、安定した気体の輸送ができる。
【0096】
実施の形態7.
図9は、実施の形態7における気体輸送装置の構成を示す概略図である。実施の形態7の気体輸送装置700は、実施の形態6に示された気体輸送装置600に、入力部701、及び入力部701と制御部31とを接続する制御線32が追加された構成とされている。以下、実施の形態7において、実施の形態6に示した構成と異なる構成について説明し、実施の形態6に示した構成と同一の機器については同一の符号を付し、同一の機器の説明は省略する。
【0097】
入力部701は、制御部31に、プログラム及び設定値等の入力及びこれらの変更を行うためのものであり、例えば、利用者により操作されるキーボード等のヒューマンインターフェース機器で構成される。このような構成により、気体輸送装置700の各機器を手動で制御可能となり、各個人の好みに合わせた気体の輸送を行うこともできる。
【0098】
実施の形態7の気体輸送装置700が行う動作について説明する。実施の形態7において気体輸送装置700の各機器が行う動作は、実施の形態6の場合とほぼ同じである。ただし、実施の形態7の気体輸送装置700において、制御部31は、入力部701から入力された入力値Iに応じて、信号発生器22と、電力増幅器23と、気体供給部50と、弁201と、開口調整器301等を制御する。
【0099】
制御部31における検知値P1、検知値P2、入力値Iを用いた判断プログラム及び弁201のプログラムは、予め記憶させておくことが望ましい。また気体輸送装置500において気体を搬送する動作が行われているとき、環境圧が変化した場合に、随時、弁201の開閉を制御して振動伝達室17の内部圧力を自動で調整するように制御部31を構成することもできる。また、実施の形態4で示した検知器401を設置することもでき、この場合、制御部31における検知値P1、検知値P2、検知値K1、K2、設定値Ks1、Ks2を用いた判断プログラムは、予め記憶させておくことが望ましい。
【0100】
なお、入力部701は、利用者が手動で入力するものに限らず、各種センサからの情報が直接入力される構成とすることもできる。例えば、水分を含む気体を室内の特定の領域に輸送する場合、室内に設置した湿度センサの情報が入力部701に入力される構成とすることで、室内における特定の領域の湿度を自動で制御するシステムを構築することができる。また、室内における各個人の快適性をセンシングする検知器の情報が入力部701に入力される構成とすることで、局所空間の空気質を制御することができ、各個人に対応した空調制御が可能となる。
【0101】
以上のように、実施の形態7の気体輸送装置700においても、実施の形態1の場合と同様に、加圧室16と振動部12との間に弾性膜13が設けられ、振動部12と弾性膜13との間には密閉された振動伝達室17が形成されている。よって、実施の形態7においても、実施の形態1の場合と同様に、加圧室16に存する加湿空気の水滴が振動装置の振動部に付着せず、振動効率の低下が抑制でき、安定した気体の輸送ができる。
【0102】
また実施の形態7の気体輸送装置700は、制御部31に情報を入力する入力部701を備える。これにより、入力部701を介して、気体輸送装置700の周囲環境又は個人の好み等に合わせて制御の変更を行うことができ、快適性を向上させることができる。
気体輸送装置は、気体の輸送を行う気体輸送装置において、気体の放出口を有し、内部に、放出口とつながる加圧室が形成された筐体と、振動する振動部と振動部を振動させる振動発生器とを有し、加圧室を介して振動部が筐体の任意の位置に設置された振動装置と、加圧室と振動部との間に配置され、筐体の内面に接続された外周部を有する弾性膜と、を備え、筐体の内部において振動部と弾性膜との間には、筐体における振動部と弾性膜の外周部との間の壁部と、振動部と、弾性膜とにより囲まれ、密閉された振動伝達室が形成されている。