(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、この種の冷蔵庫は、省エネルギー化の観点から、断熱箱体を構成する外箱と内箱との間および断熱箱体の前面開口部を開閉する扉の内板と外板との間などに、従来の硬質ウレタンフォームに替えて真空断熱材を設け、断熱性能を向上させる構成となっている。一般に冷蔵庫は、断熱箱体の外箱および扉の外板が鋼板製、内箱および扉の内板が樹脂製の部材で構成される。
【0003】
また、温度帯の異なる複数の部屋を有する冷蔵庫においては、各部屋の温度を保つべく、これら部屋間を断熱仕切りで区切る必要がある。ここで、高い断熱性を得るためには、断熱仕切りとして、従来の硬質ウレタンフォームの断熱性能に対し、例えば6倍以上の断熱性能を有している真空断熱材を用いることが重要となる。
【0004】
かかる真空断熱材は、例えば、ガスバリア性を持つ2枚の外皮材を向かい合わせた状態で外周接着し、外皮材の内部に形成される空間にグラスウールまたはグラスファイバー繊維などの芯材を真空引きしながら封入して形成される。外皮材は、ナイロンフィルム等の基材に、アルミニウム箔などを密着させたものである。外皮材同士の外周を接着したヒレ部は、真空断熱材と同一平面状に折り返し、テープまたは接着剤で固定される。
【0005】
さらに、冷蔵庫においては、省スペース化または内容積の大容量化の観点から、断熱箱体の外箱と内箱との間に形成される空間、つまり断熱箱体の壁厚の低減も求められている。例えば、特許文献1には、外箱と内箱との間に設ける真空断熱材を、直接、外箱と内箱とに貼り付けることで、断熱箱体の壁厚を薄くして、内容積の拡大化を図る冷蔵庫が記載されている。
【0006】
しかしながら、従来の断熱箱体は、硬質ウレタンフォームが主に断熱機能を担い、真空断熱材は硬質ウレタンフォームの断熱機能を補助するという技術思想によって製作されていた。ここで、従来の断熱箱体は、硬質ウレタンフォームを内箱と外箱との間の空間に所定の密度で充填することによって箱体強度を確保していた。ところが、ウレタンの厚さを低減して壁面の厚さを低減させようとした場合には、ウレタンの厚みが薄くなり、ウレタンの密度が増加して断熱性能が低下するため、断熱性能を満足しつつ必要な箱体強度を確保することが困難であった。
【0007】
すなわち、従来の真空断熱材を備えた冷蔵庫では、壁面および断熱箱体の断熱性能と、断熱箱体および壁面の強度とを硬質ウレタンフォームによって確保していた。よって、断熱箱体の壁厚を低減しようとして硬質ウレタンフォームの厚さを低減させると、断熱箱体の断熱性能不足あるいは強度不足が生じ、壁厚の低減を図ることが困難であった。
【0008】
そのため、真空断熱材を備えた断熱箱体の強度対策として、真空断熱材を樹脂製の被覆部品からなる枠体によって囲繞する手法が用いられていた。この場合、真空断熱材の周囲を複数の被覆部品で覆い、それら被覆部品からなる枠体によって真空断熱材を挟み込むことで枠体の内部に真空断熱材を固定する構造となっている。このとき、枠体を構成する被覆部品は、例えばプラスチック材料を真空成形または圧空成形などの手法を用いることで目的の形状に成形される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、明細書全文に示す構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。すなわち、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能である。また、そのような変更を伴う冷蔵庫も本発明の技術思想に含まれる。さらに、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。また、以下の説明において、図における上方を「上側」とし、下方を「下側」として説明する。さらに、理解を容易にするために、方向を表す用語(たとえば「右」、「左」、「前」および「後」など)などを適宜用いるが、説明のためのものであって、これらの用語は本願に係る発明を限定するものではない。また、冷蔵庫を正面側から見て上下となる方向を高さ方向とし、左右となる方向を幅方向とする。そして、図面では各構成部材の大きさの関係が実際とは異なる場合がある。
【0016】
実施の形態1.
<冷蔵庫1の構成>
図1および
図2を参照しながら、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫1を示す斜視図である。
図2は、
図1の冷蔵庫1における内部を右側面から見て示す断面図である。
図1および
図2に示すように、冷蔵庫1は鉄板などの金属からなり外観を構成する外箱2と、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンプラスチック)などの合成樹脂からなり、外箱2の内部に配置され、貯蔵庫を形成する内箱9とで本体が構成されている。外箱2と内箱9との間には、空間部としての内部空間が形成される。冷蔵庫1の天面、背面および底面等における外箱2と内箱9との内部空間には、第一の真空断熱材40、41および42等がそれぞれ配置されており、周囲の隙間には発泡断熱材である硬質ウレタン発泡断熱材11が充填されている。
【0017】
冷蔵庫1は、内箱9の中に設けられ、当該内箱9内を温度帯の異なる貯蔵室ごとに区画する第一断熱仕切部29と、第二断熱仕切部30と、第三断熱仕切部31と、第四断熱仕切部32とを備えている。冷蔵庫1は、これら第一断熱仕切部29と、第二断熱仕切部30と、第三断熱仕切部31と、第四断熱仕切部32とにより、内箱9内の空間を複数の貯蔵室である冷蔵室10と、製氷室および切替室12と、野菜室13と、冷凍室14とに区画されている。また、冷蔵庫1は、これら貯蔵室に対応して内箱9の前面開口を開閉する複数の扉3、4、5、6、7および8を備えている。
【0018】
冷蔵庫1において、最上部には冷蔵室10が形成され、上から順に製氷室および切替室12と、野菜室13と、最下部を冷凍室14とする貯蔵室が形成されている。具体的には、冷蔵室10は、第一断熱仕切部29の上部に区分けされ、冷蔵温度(+5℃程度)に維持されている。製氷室および切替室12は、第一断熱仕切部29の下部と第二断熱仕切部30の上部と第四断熱仕切部32の前部とで形成される空間に区分けされ、製氷室では凍結温度(−20℃程度)、切替室12では過冷却温度(−7〜0℃)に維持されている。
【0019】
野菜室13は、第二断熱仕切部30の下部と第三断熱仕切部31の上部と第四断熱仕切部32の前部とで形成される空間に区分けされ、冷蔵温度(+5℃程度)に維持されている。冷凍室14は、第三断熱仕切部31の下部に区分けされ、凍結温度(−20℃程度)に維持されている。
【0020】
各貯蔵室(冷蔵室10、製氷室および切替室12、野菜室13並びに冷凍室14)は、前面側が開口しており、開口部分を扉3、4、5、6、7および8が開閉可能に覆っている。冷蔵室扉3および4は、観音開き式の左右二枚で構成され、冷蔵室10を覆う扉である。なお、冷蔵室10を開閉する扉の構成は片開き式の一枚の扉でもよい。製氷室扉5および切替室扉6は、それぞれ製氷室および切替室12を覆う引き出し式の扉である。野菜室扉7は野菜室13を覆う引き出し式の扉である。また、冷凍室扉8は、冷凍室14を覆う引き出し式の扉である。ここで、引き出し式の扉は、貯蔵物を収容する収容ケースとともに引き出される。これら冷蔵室扉3および4と、野菜室扉7と、冷凍室扉8との内部には、第一の真空断熱材46、47および48がそれぞれ配置されており、周囲の隙間には硬質ウレタン発泡断熱材11が充填されている。
【0021】
本実施の形態1の冷蔵庫1は、貯蔵室内を冷却するための冷媒回路(冷凍サイクル)を有している。冷媒回路は、圧縮機20と、冷却器21と、凝縮器(図示せず)と、キャピラリチューブ(図示せず)等とを配管接続して構成される。内箱9は、
図2に示すように、冷凍室14の背面側に、階段状に立ち上がる立体形状をなす機械室15が形成されている。機械室15の内部には、圧縮機20と凝縮器(図示せず)とが配置されている。また、野菜室13の背面側には、第四断熱仕切部32によって区切られ、冷蔵室10、製氷室および切替室12、野菜室13並びに冷凍室14の各貯蔵室を所定の温度帯に冷却する冷却器21が配置されている。圧縮機20は、冷媒を吸入し、圧縮して高温、高圧の状態にして吐出する。凝縮器は、冷媒を放熱させて凝縮液化させる。また、膨張装置となるキャピラリチューブ(毛細管)は、通過する冷媒を減圧して膨張させる。冷却器21は、冷媒と空気とを熱交換させ、冷媒を蒸発ガス化させる。冷却器21が冷却した空気は、送風機(図示せず)により、各貯蔵室に送られる。各貯蔵室に送られる冷気量(空気の量)は、冷却器21と各貯蔵室との間の風路に設けた電動式の開閉ダンパ(図示せず)で制御される。
【0022】
なお、冷凍サイクルを循環する冷媒としては、イソブタン(R600a)を用いることが好ましい。他の冷媒を用いることも可能であるが、イソブタンは、廃棄した場合にオゾン層を破壊しない、および、温暖化係数が低いなどの利点がある。
【0023】
冷蔵庫1の内箱9の底面および天面に配置された第一の真空断熱材40および42は、L字状に形成されている。冷蔵庫1は、天井背面に運転制御のための自己発熱部品である電子制御基板(図示せず)が配置されている。そのため、内箱9と電子制御基板との間に、断熱効果がウレタンよりも高い第一の真空断熱材40を配置することが好ましい。また、冷蔵庫1は、天井に放熱パイプ(図示せず)が配置されているため、放熱パイプと内箱9との間にも第一の真空断熱材40を配置することが好ましい。そこで、冷蔵庫1の天面に配置された第一の真空断熱材40は、板状の第一の真空断熱材40をL字状に曲げた形状とされ、スチレンゴム系ホットメルトを塗布して外箱2に接着され、冷蔵庫1の天井と電子制御基板とを同時に被覆している。つまり、第一の真空断熱材40は、L字状とすることにより、製造コストを削減することができる。なお、L字状の第一の真空断熱材40は、屈曲部分を折り曲げた形状に限定されず、例えば湾曲させた形状として実施することもできる。
【0024】
また、冷蔵庫1は、機械室15に配置された圧縮機20と凝縮器とが運転時に自己発熱する。そのため、冷蔵庫1の床から熱の侵入を防ぐ必要があり、電子制御基板の場合と同様の理由により、内箱9と機械室15との間に、第一の真空断熱材42を配置することが好ましい。そこで、冷蔵庫1の床面に配置された第一の真空断熱材42は、冷蔵庫1の床面と機械室15とを被覆するように、板状の第一の真空断熱材42をL字に曲げた形状とされ、スチレンゴム系ホットメルトを塗布して内箱9に接着されている。なお、L字状の第一の真空断熱材42は、屈曲部分を折り曲げた形状に限定されず、例えば湾曲させた形状として実施することもできる。また、冷蔵庫1の背面に配置された第一の真空断熱材41は、背面金属部品22にスチレンゴム系ホットメルトを塗布して接着されている。なお、第一の真空断熱材40、41および42の接着手段としてはスチレンゴム系ホットメルトに限定されず、両面テープなどを用いてもよい。
【0025】
<第二断熱仕切部30の構成>
ここで、本実施の形態1における冷蔵庫1の場合、野菜室13を区画する第二断熱仕切部30は、第二の真空断熱材49を備えている。なお、本実施の形態1における冷蔵庫1では、第二断熱仕切部30に限らず、第三断熱仕切部31および第四断熱仕切部32においても、第二断熱仕切部30と同様の構成によって第二の真空断熱材50および51を備えていてもよい。以下では、第二断熱仕切部30を代表として、
図3〜
図6を参照しながら本実施の形態1における冷蔵庫1の断熱仕切構造について説明する。また、以下では、便宜上、第二断熱仕切部30を単に断熱仕切部30と称する。
【0026】
図3は、
図1の冷蔵庫1における断熱仕切部30を示す斜視図である。
図4は、
図3の断熱仕切部30を分解して示す斜視図である。
図5は、
図3の断熱仕切部30におけるZ−Z断面を示す断面図である。
図6は、
図5の断熱仕切部30における要部を示す拡大図である。なお、
図6に示す断熱仕切部30の要部は、
図5において円Aで囲まれた部分である。
【0027】
図3および
図4に示すように、断熱仕切部30は、内箱9内を区画する面に沿って配置される第二の真空断熱材49と、第二の真空断熱材49を被覆する被覆部と、を備えている。この被覆部は、第二の真空断熱材49の一面側を被覆する第一の被覆部62と、第一の被覆部62と合体し、第二の真空断熱材49の他面側を被覆する第二の被覆部63と、を含んで構成されている。第一の被覆部62および第二の被覆部63は、一面が開口する箱型形状に形成されている。第一の被覆部62の外周側部には、第一の被覆部62と第二の被覆部63とを固定するための爪62aが設けられている。第一の被覆部62の被覆面とは反対側の外面には、製氷室と切替室12(
図2参照)とを区切る仕切部(図示せず)を固定するための仕切固定部62bが設けられている。また、第一の被覆部62の扉5、6側外周には、断熱仕切部30を内箱9にネジで固定するための取付部62cが設けられている。
【0028】
具体的には、
図4に示すように、第一および第二の被覆部62および63における第二の真空断熱材49と対向する被覆面には、第二の真空断熱材49と当接する凸部65が形成されている。また、第一および第二の被覆部62および63における第二の真空断熱材49と対向する被覆面には、第二の真空断熱材49側とは反対側に向かって窪んだ凹部66が形成されている。本実施の形態1の場合、凸部65は三角形状をなし、被覆面に複数配置されている。なお、凸部65の形状は、多角形状であれば三角形に限ることはない。このとき、凸部65はエンボス状に形成されている。また、凹部66は被覆面に交差して配置されている。これにより、第一および第二の被覆部62および63における被覆面とは反対側の外面には、凸部65に対応した窪みが形成される。すなわち、第一の被覆部62の製氷室底面および切替室12底面に当たる外面部分と、第二の被覆部63の野菜室13天面に当たる外面部分とには、凸部65に対応した窪みが形成される。この場合、第一および第二の被覆部62および63における前述の外面には、凸部65に対応した窪みからなる、X字状の凹凸が形成されている。
【0029】
また、第二の被覆部63の被覆面には、凸部65および凹部66に加えて、第二の真空断熱材49と対向する平坦部63bが形成されている。そして、平坦部63bには、第二の被覆部63と第二の真空断熱材49とを接合する接着部材64が設けられる。さらに、第二の真空断熱材49の外周側面には、ソフトテープ60および61が設けられ、第二の真空断熱材49を嵌め込む第一の被覆部62の内側面と接合される。
【0030】
なお、凸部65、凹部66および平坦部63bは、第一または第二の被覆部62および63の少なくとも一方における第二の真空断熱材と対向する被覆面に形成されていればよい。とりわけ、凸部65および凹部66は、第一および第二の被覆部62および63における双方の被覆面に設けることで、第一および第二の被覆部62および63それぞれの剛性を向上させることができる。よって、これらが合体してなる被覆部全体としての剛性も格段と向上させることができる。なお、接着部材64は扱い易さの観点から一般的には両面テープを使用することが好ましいが、スチレンゴム系ホットメルトを塗布する設備がある場合はそれらを使用してもよい。
【0031】
第二の被覆部63の外周側部には、第一の被覆部62と合体する際に当該第一の被覆部62の爪62aと結合させるための穴63aが設けられている。なお、第二の被覆部63の外周側部に爪62aを設けてもよく、第一の被覆部62の外周側部に爪62aと結合させるための穴63aを設けてもよい。また、
図4に示す穴63aが貫通穴で形成される場合について述べたが、窪みなどでもよい。第二の被覆部63の両側面には、内箱9に断熱仕切部30を固定するための爪63dが設けられている。第二の被覆部63の扉5および6側外周には内箱9に断熱仕切部30をネジで固定するための取付部63cが設けられている。なお、
図3および
図4に示す第一および第二の被覆部62および63の凹凸形状はX字状で形成されているが、凹凸形状は例えば格子状などで形成されても良い。例えば、凹凸形状は、凸部65を四角形で形成し、これを前述の被覆面に等間隔で複数配置することで、凹部66が直交する状態で配置された格子状に形成される。
【0032】
図5に示すように、第一の被覆部62の上面および外周は、X字状の凹凸形状および仕切固定部62bなどによって外側面に対して凸形状を有している。このため、第一の被覆部62の内側面は、第二の真空断熱材49の表面に対して一定のクリアランスを確保している。また、第一の被覆部62の内側面における他の部分は、第二の真空断熱材49の表面と接する凹形状を有している。同様に、第二の被覆部63の下面および外周は、X字状の凹凸形状および平坦部63bなどによって外側面に対して凸形状を有している。このため、第二の被覆部63の内側面は、第二の真空断熱材49の表面に対して一定のクリアランスを確保している。また、第二の被覆部63の内側面における他の部分は、第二の真空断熱材49の表面と接する凹形状を有している。なお、
図5では、X字状部分を凸形状で形成し、その周りを三角形の凹形状で形成しているが、X字状部分を凹形状で形成し、その周りを三角形の凸形状で形成してもよい。
【0033】
さらに、
図6に示すように、第二の被覆部63の被覆面とは反対側の外面には、当該外面のX字状の凹凸形状を含む全面に亘って、リブ63eが設けられている。
【0034】
なお、本実施の形態1の冷蔵庫1では、野菜室13と製氷室および切替室12との間を断熱仕切部30によって区画する場合について説明しているが、これは一例である。本発明に係る断熱仕切部30の設置箇所としては、内箱9内の全ての部屋間における第二の真空断熱材を含む断熱仕切部分において適用できる。
【0035】
また、断熱仕切部30の被覆部の構造として、本実施の形態1では、第一の被覆部62内に第二の真空断熱材49を嵌め込み、この第一の被覆部62に対して第二の被覆部63を蓋として合体させる構造を示しているが、これは一例である。断熱仕切部30の被覆部の構造としては、第二の被覆部63内に第二の真空断熱材49を嵌め込み、この第二の被覆部63に対して第一の被覆部62を蓋として合体させる構造としても良い。
【0036】
すなわち、本実施の形態1の冷蔵庫1における断熱仕切部30の構造は、少なくとも第二の真空断熱材49の周囲六面全面を、対向する面に凹凸形状を有する2つ以上の被覆部品で覆う構造となっていれば良い。
【0037】
断熱仕切部30を構成する第一および第二の被覆部62および63は、例えばPP(ポリプロピレン)、ABSなどの硬質プラスチックからなり、肉厚1.5mm程度で形成される。これら第一および第二の被覆部62および63の材料としては、製造時にかかる温度が70℃程度であれば、安価なPPまたはABSなどの材料を採用できる。また、ポリウレタンフォームの発泡による発熱などで、製造時にかかる温度が100℃を超える場合には、耐熱ABS、PC(ポリカーボネート)またはPA(ポリアミド)などの材料を採用できる。第一および第二の被覆部62および63は樹脂成形品のため、意匠面の観点から樹脂注入ゲートは目に付かない内側面に設けるのが望ましい。
【0038】
<第二断熱仕切部30の組み立て手順>
ここで、本実施の形態1における断熱仕切部30の組み立て手順について説明する。まず、第二の真空断熱材49の外周側面にソフトテープ60および61を接着させ、第二の被覆部63の平坦部63bに対向する第二の真空断熱材49の下側面に接着部材64を接着させる。次に、第一の被覆部62の内側に第二の真空断熱材49を挿入する。続いて、第一の被覆部62の開口側から第二の被覆部63を蓋として被せ、第二の被覆部63の外周側部に設けた穴63aと、第一の被覆部62の外周側部に設けた爪62aと、を結合する。そして、第二の真空断熱材49と、平坦部63bとを、接着部材64を介して接合し固定させる。なお、ここで記載した手順はあくまで一例であり、接着部材64を平坦部63bに接着させてから第二の真空断熱材49下面に接合させるなどのようにしてもよい。
【0039】
<実施の形態1における効果>
以上、説明したように、本実施の形態1の冷蔵庫1では、断熱仕切部30を構成する第一および第二の被覆部62および63に凹凸形状を設けることで、第一および第二の被覆部62および63自体の面剛性が向上する。したがって、本実施の形態1の冷蔵庫1によれば、第一および第二の被覆部62および63の変形を抑制することができる。このため、第二の真空断熱材49を第一の被覆部62に嵌め込む際、または第二の被覆部63と第一の被覆部62とを合体する際の作業性の悪化を防止できる。さらに、断熱仕切部30の変形を防止できるので、第二の真空断熱材49と断熱仕切部30の凸部65との間に浮きが発生するのを回避できる。よって、断熱仕切部30が凸部65または平坦部63b等で第二の真空断熱材49を確実に支えて挟み込むことができる。
【0040】
また、凹部66は、第一および第二の被覆部62および63の被覆面に交差して配置されていることが好ましい。これにより、第一および第二の被覆部62および63それぞれの剛性を向上させることができる。
【0041】
さらに、凸部65は、三角形または四角形などの多角形状をなし、第一および第二の被覆部62および63の被覆面に複数配置されることが好ましい。これにより、隣接する凸部65および凸部65間に形成される凹部66が、第一および第二の被覆部62および63の被覆面に交差して配置されることとなる。よって、第一および第二の被覆部62および63それぞれの剛性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施の形態1の冷蔵庫1では、断熱仕切部30を構成する第一および第二の被覆部62および63にX字状の凹凸形状を設けることで、第二の真空断熱材49の表面から一定のクリアランスを確保する凹部66を設けることが可能となる。この場合、第一および第二の被覆部62および63の内側面における凹部66の表面に樹脂注入ゲートを設けることで、発泡スチロールなどの副部材を用いることなく、第二の真空断熱材49の表面と樹脂注入ゲートの突起との接触を防止する構造とすることができる。なお、樹脂注入ゲートの突起が発生した時に、第二の真空断熱材49の表面が樹脂注入ゲートの突起と接触しないように、凸部65に対し凹部66を第二の真空断熱材49側とは反対側に3mm程度窪ませるのが望ましい。よって、第二の真空断熱材49の表面が樹脂注入ゲートの突起との接触により傷つき、第二の真空断熱材49の外皮材が破けて不良品になることを未然に防止可能な効果を有する。
【0043】
また、第一および第二の被覆部62および63の凹凸形状の肉厚を1.5mm程度にし、第二の真空断熱材49に面する内側だけでなく、外側にもエンボス状に凹凸形状を設けるようにした。この場合、第一および第二の被覆部62および63の外側を平坦形状にしたときに比べて、第一および第二の被覆部62および63の外側の凹形状の空間分、各部屋の内容積を確保することができる。
【0044】
さらに、第二の真空断熱材49の外周側面にソフトテープ60および61を貼り付けることで、第二の真空断熱材49を第一の被覆部62に嵌め込む際、または第一および第二の被覆部62および63を合体する際に、不具合が生じるのを防止できる。すなわち、第二の真空断熱材49の外周付近の外皮材が、第一および第二の被覆部62および63の内側側面付近に設けられたリブに接触し、破けて不良品になるのを未然に防止できる。
【0045】
また、第二の真空断熱材49の側面と、第一の被覆部62の内側側面との間には、組み立てを容易にすべく予め一定のクリアランスを設けることが好ましい。これら第二の真空断熱材49の側面と、第一の被覆部62の内側側面との間に、ソフトテープ60および61を設けることで、クリアランス分の隙間を埋め、第二の真空断熱材49のズレまたは動きを防止できる。よって、第二の真空断熱材49の外皮材が傷つくリスクを抑制できる。
【0046】
第二の被覆部63の内側下面には、接着部材64を貼り付けるための平坦部63bを設けることにより、第二の真空断熱材49と第二の被覆部63とが接着部材64を介して確実に固定される。このため、断熱仕切部30を内箱9に組み付ける際に、当該断熱仕切部30内で、第二の真空断熱材49のズレまたは動きが生じるのを防止し、第二の真空断熱材49の外皮材が傷つくリスクを抑制できる。なお、第二の被覆部63の凸部65が第二の真空断熱材49の表面から浮かないように、平坦部63bは接着部材64の厚み分、凸部65に比べて、凹部66からの高さを低くするのが好ましい。
【0047】
第一および第二の被覆部62および63を組み付ける合体方法として、第一の被覆部62の外周に設けた爪62aと、第二の被覆部63の外周に設けた穴63aとを用いるようにした。これにより、ネジまたはテープなどの副部材を用いることなく、2つの部品を容易に合体させることができ、作業性の向上を図ることができる。また、万が一、第二の真空断熱材49に不具合が生じた場合でも、爪62aと穴63aとの結合を解除することで、第一の被覆部62と、第二の被覆部63とを合体状態から容易に分解できる。
【0048】
さらに、第二の被覆部63の両側面に爪63dを設けることで、ネジなどの副部材を用いることなく内箱9に断熱仕切部30を固定することが可能となり、内箱9に断熱仕切部30を取り付ける際の作業性の向上を図ることができる。また、万が一、断熱仕切部30に不具合が生じた場合でも、内箱9から断熱仕切部30を容易に取り外すことができる。
【0049】
さらに、第二の被覆部63の外面の凹凸形状を含む全面に亘り、リブ63eを設けるようにしたことで、第二の被覆部63の外面の表面積を増やすことができる。よって、第二の被覆部63の外面に付着する水を蒸発させ易くすることができ、野菜室13の天面にあたる第二の被覆部63の外面に対する露の付着を防止できる。
【0050】
実施の形態2.
次に、
図7および
図8を参照しながら、本発明の実施の形態2に係る冷蔵庫1について説明する。
図7は、本発明の実施の形態2に係る冷蔵庫1を示す斜視図である。
図8は、
図7の冷蔵庫1における内部を右側面から見て示す断面図である。
【0051】
ここで、前述した実施の形態1の冷蔵庫1では、貯蔵室としての部屋を上から冷蔵室10、製氷室および切替室12、野菜室13並びに冷凍室14の配置として構成した。そして、野菜室13と製氷室および切替室12との間、野菜室13と冷凍室14との間、野菜室13と冷却器21との間に、それぞれ第二の真空断熱材49、50および51を組み込んだ構造の冷蔵庫1について説明した。
【0052】
これに対し、本実施の形態2では、実施の形態1の冷蔵庫1に比べて、省エネルギー化および熱効率の観点から見た効率の向上を図るべく、野菜室13と冷凍室14とを入れ替えた部屋配置の冷蔵庫1について説明する。なお、本実施の形態2の冷蔵庫1において、実施の形態1の冷蔵庫1と共通の部分については同一の符号とし、詳細な説明は割愛する。
【0053】
図7および
図8に示すように、本実施の形態2における冷蔵庫1は、内箱9の中に設けられ、当該内箱9内を温度帯の異なる貯蔵室ごとに区画する第一断熱仕切部29と、第二断熱仕切部33と、第三断熱仕切部31と、第四断熱仕切部32とを備えている。冷蔵庫1は、これら第一断熱仕切部29と、第二断熱仕切部33と、第三断熱仕切部31と、第四断熱仕切部32とにより、内箱9内の空間を複数の貯蔵室である冷蔵室10と、製氷室および切替室12と、野菜室13と、冷凍室14とに区画されている。また、冷蔵庫1は、これら貯蔵室に対応して内箱9の前面開口を開閉する複数の扉3、4、5、6、7および8を備えている。
【0054】
冷蔵庫1において、最上部には冷蔵室10が形成され、上から順に製氷室および切替室12と、冷凍室14と、最下部を野菜室13とする貯蔵室が形成されている。具体的には、冷蔵室10は、第一断熱仕切部29の上部に区分けされ、冷蔵温度(+5℃程度)に維持されている。製氷室および切替室12は、第一断熱仕切部29の下部と第二断熱仕切部33の上部と第四断熱仕切部32の前部とで形成される空間に区分けされ、製氷室では凍結温度(−20℃程度)、切替室12では過冷却温度(−7〜0℃)に維持されている。
【0055】
冷凍室14は、第二断熱仕切部33の下部と第三断熱仕切部31の上部と第四断熱仕切部32の前部とで形成される空間に区分けされ、凍結温度(−20℃程度)に維持されている。野菜室13は、第三断熱仕切部31の下部に区分けされ、冷蔵温度(+5℃程度)に維持されている。
【0056】
<第二断熱仕切部33の構成>
ここで、本実施の形態2における冷蔵庫1の場合、冷凍室14を区画する第二断熱仕切部33は、第二の真空断熱材49を備えている。なお、本実施の形態2における冷蔵庫1では、第二断熱仕切部33に限らず、第三断熱仕切部31および第四断熱仕切部32においても、第二断熱仕切部33と同様の構成によって第二の真空断熱材50および51を備えていてもよい。以下では、第二断熱仕切部33を代表として、
図9〜
図11を参照しながら本実施の形態2における冷蔵庫1の断熱仕切構造について説明する。また、以下では、便宜上、第二断熱仕切部33を単に断熱仕切部33と称する。
【0057】
図9は、
図7の冷蔵庫1における断熱仕切部33を示す斜視図である。
図10は、
図9の断熱仕切部33を分解して示す斜視図である。
図11は、
図9の断熱仕切部33におけるY−Y断面を示す断面図である。
【0058】
図3〜
図5との対応部分に同一符号を付した
図9〜
図11に示すように、断熱仕切部33は、内箱9内を区画する面に沿って配置される第二の真空断熱材49と、第二の真空断熱材49を被覆する被覆部と、を備えている。つまり、この被覆部は、前述した実施の形態1の被覆部と同様に、第二の真空断熱材49の一面側を被覆する第一の被覆部62と、第一の被覆部62と合体し、第二の真空断熱材49の他面側を被覆する第二の被覆部63と、を含んで構成されている。よって、断熱仕切部33は、断熱仕切部30が野菜室13を区画していたのに換えて冷凍室14を区画する点、および、第二の被覆部63の外面にリブ63eが設けられていない点を除き、断熱仕切部30と同様に構成されている。
【0059】
<第二断熱仕切部33の組み立て手順>
ここで、本実施の形態2における断熱仕切部33の組み立て手順について説明する。まず、第二の真空断熱材49の外周側面にソフトテープ60および61を、第二の被覆部63の平坦部63bに対向する第二の真空断熱材49の下側面に接着部材64を、接着させる。次に、第一の被覆部62の内側に第二の真空断熱材49を挿入する。続いて、第一の被覆部62の開口側から第二の被覆部63を蓋として被せ、第二の被覆部63の外周側部に設けた穴63aと、第一の被覆部62の外周側部に設けた爪62aと、を結合する。そして、第二の真空断熱材49と、平坦部63bとを、接着部材64を介して接合し固定させる。なお、ここで記載した手順はあくまで一例であり、接着部材64を平坦部63bに接着させてから第二の真空断熱材49の下面に接合させるなどのようにしてもよい。
【0060】
<実施の形態2における効果>
以上、説明したように、本実施の形態2に係る冷蔵庫1では、断熱仕切部33を構成する第一および第二の被覆部62および63に凹凸形状を設けることで、第一および第二の被覆部62および63自体の面剛性が向上する。したがって、本実施の形態2に係る冷蔵庫1によれば、第一および第二の被覆部62および63の変形を抑制することができる。このため、第二の真空断熱材49を第一の被覆部62に嵌め込む際、または第二の被覆部63と第一の被覆部62とを合体する際の作業性の悪化を防止できる。さらに、断熱仕切部33の変形を防止できるので、第二の真空断熱材49と断熱仕切部33の凸部65との間に浮きが発生するのを回避できる。よって、断熱仕切部33が凸部65または平坦部63b等で第二の真空断熱材49を確実に支えて挟み込むことができる。
【0061】
また、本実施の形態2に係る冷蔵庫1では、最上部に冷蔵室10が形成され、上から順に製氷室および切替室12と、冷凍室14と、最下部を野菜室13とする貯蔵室が形成されている。すなわち、本実施の形態2に係る冷蔵庫1では、製氷室および切替室12と、冷凍室14との間に野菜室13を介在することなく、最下部を野菜室13とし、製氷室および切替室12と、冷凍室14とを上下に隣接して配置した。これにより、実施の形態1の冷蔵庫1に比べて、省エネルギー化および熱効率の観点から見た効率の向上を図ることができる。
【0062】
また、本実施の形態2の冷蔵庫1では、断熱仕切部33を構成する第一および第二の被覆部62および63にX字状の凹凸形状を設けることで、第二の真空断熱材49の表面から一定のクリアランスを確保する凹部66を設けることが可能となる。この場合、第一および第二の被覆部62および63内側面における凹部66の表面に樹脂注入ゲートを設けることで、発泡スチロールなどの副部材を用いることなく、第二の真空断熱材49の表面と樹脂注入ゲートの突起との接触を防止する構造とすることができる。なお、樹脂注入ゲートの突起が発生した時に、第二の真空断熱材49の表面が樹脂注入ゲートの突起と接触しないように、凸部65に対し凹部66を第二の真空断熱材49側とは反対側に3mm程度窪ませるのが望ましい。よって、第二の真空断熱材49の表面が樹脂注入ゲートの突起との接触により傷つき、第二の真空断熱材49の外皮材が破けて不良品になることを未然に防止可能な効果を有する。
【0063】
また、第一および第二の被覆部62および63の凹凸形状の肉厚を1.5mm程度にし、第二の真空断熱材49に面する内側だけでなく、外側にもエンボス状に凹凸形状を設けるようにした。この場合、第一および第二の被覆部62および63の外側を平坦形状にしたときに比べて、第一および第二の被覆部62および63の外側の凹形状の空間分、各部屋の内容積を確保することができる。
【0064】
さらに、第二の真空断熱材49の外周側面にソフトテープ60および61を貼り付けることで、第二の真空断熱材49を第一の被覆部62に嵌め込む際、または第一および第二の被覆部62および63を合体する際に、不具合が生じるのを防止できる。すなわち、第二の真空断熱材49の外周付近の外皮材が、第一および第二の被覆部62および63の内側側面付近に設けられたリブに接触し、破けて不良品になるのを未然に防止できる。
【0065】
また、第二の真空断熱材49の側面と、第一の被覆部62の内側側面との間には、組み立てを容易にすべく予め一定のクリアランスを設けることが好ましい。これら第二の真空断熱材49の側面と、第一の被覆部62の内側側面との間に、ソフトテープ60、61を設けることで、クリアランス分の隙間を埋め、第二の真空断熱材49のズレまたは動きを防止できる。よって、第二の真空断熱材49の外皮材が傷つくリスクを抑制できる。
【0066】
第二の被覆部63の内側下面には、接着部材64を貼り付けるための平坦部63bを設けることにより、第二の真空断熱材49と第二の被覆部63とが接着部材64を介して確実に固定される。このため、断熱仕切部33を内箱9に組み付ける際に、当該断熱仕切部33内で、第二の真空断熱材49のズレまたは動きが生じるのを防止し、第二の真空断熱材49の外皮材が傷つくリスクを抑制できる。なお、第二の被覆部63の凸部65が第二の真空断熱材49の表面から浮かないように、平坦部63bは接着部材64の厚み分、凸部65に比べて、凹部66からの高さを低くするのが好ましい。
【0067】
第一および第二の被覆部62および63を組み付ける合体方法として、第一の被覆部62の外周に設けた爪62aと、第二の被覆部63の外周に設けた穴63aとを用いるようにした。これにより、ネジまたはテープなどの副部材を用いることなく、2つの部品を容易に合体させることができ、作業性の向上を図ることができる。また、万が一、第二の真空断熱材49に不具合が生じた場合でも、爪62aと穴63aとの結合を解除することで、第一の被覆部62と、第二の被覆部63とを合体状態から容易に分解できる。
【0068】
さらに、第二の被覆部63の両側面に爪63dを設けることで、ネジなどの副部材を用いることなく内箱9に断熱仕切部33を固定することが可能となり、内箱9に断熱仕切部33を取り付ける際の作業性の向上を図ることができる。また、万が一、断熱仕切部33に不具合が生じた場合でも、内箱9から断熱仕切部33を容易に取り外すことができる。
【0069】
なお、本発明は前述した実施の形態1および2の記載に限定されることはない。例えば、冷蔵庫1における冷蔵室10、製氷室および切替室12、野菜室13並びに冷凍室14の配置順序または構成も前述した実施の形態1および2に限定するものではなく、種々のバリエーションで実施するものとする。