特許第6964868号(P6964868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6964868
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】毛髪用処理剤および毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/40 20060101AFI20211028BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20211028BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20211028BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20211028BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   A61K8/40
   A61Q5/12
   A61K8/34
   A61K8/86
   A61K8/39
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-141818(P2017-141818)
(22)【出願日】2017年7月21日
(65)【公開番号】特開2019-19110(P2019-19110A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】志村 幸一郎
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/161215(WO,A1)
【文献】 特開2015−140326(JP,A)
【文献】 特開2012−062250(JP,A)
【文献】 特開平10−231230(JP,A)
【文献】 特開2002−114642(JP,A)
【文献】 特開2007−015954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン界面活性剤を含む酸化染毛剤による染毛後に使用する毛髪用処理剤であって、
毛髪用処理剤100質量%中に、高級アルコールおよび二鎖型カチオン界面活性剤を合計で1〜14質量%含み、
高級アルコールと二鎖型カチオン界面活性剤との割合(質量比)が1:2〜1:4.5である、毛髪用処理剤。
【請求項2】
前記二鎖型カチオン界面活性剤が、以下の一般式(1)で表される二鎖型カチオン界面活性剤である、請求項1に記載の毛髪用処理剤。
【化1】
(一般式(1)において、Rはそれぞれ独立に、炭素数10〜18の鎖状炭化水素基であり、X-は無機陰イオン、または有機陰イオンである。)
【請求項3】
毛髪用処理剤100質量%中に、ポリエチレングリコールを0.01質量%以上含む、請求項1または2に記載の毛髪用処理剤。
【請求項4】
アニオン界面活性剤を含む酸化染毛剤により、毛髪を染毛する工程(1)、
工程(1)を経た毛髪に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の毛髪用処理剤を与える工程(2)
および
前記毛髪用処理剤が与えられた毛髪をシャンプーで水洗する工程(3)
を含む毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用処理剤および毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、白髪を隠す目的の白髪染め、髪を明るく染め上げ色みを楽しむおしゃれ染めなど酸化染料を用いた酸化染毛剤が広く利用されている。しかし、酸化染毛剤を用いて染毛処理を行うと、毛髪が損傷し、毛髪の手触りの悪化や、褪色によって色調が変化してしまうという問題があった。また、酸化染毛剤としてはアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤を単独または併用で使用したものがある。このうち、アニオン界面活性剤を含む酸化染毛剤を使用して染毛処理を行う場合、仕上がりの発色・質感の面では良好ではあるが、シャンプーの水洗時、毛髪にきしみ感を感じる問題があった。
【0003】
そこで、pH緩衝剤、両性ポリマーおよびカチオン界面活性剤を含む染毛用後処理剤が開発された(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、前記pH緩衝剤が、有機酸および/または有機酸塩、並びにアルカリ剤からなることが提案されていた。特許文献1に開示された染毛用後処理剤を使用すると、毛髪の収斂や染料の分解による変色が生じることなく、染毛による毛髪の損傷を修復しつつ、染毛後の毛髪の色持ちや感触を良好にすることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−114642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、アニオン界面活性剤を用いた酸化染毛剤による染毛後、シャンプーの水洗を行った場合に毛髪に生じるきしみ感を軽減し、染毛後の毛髪が染まり具合(染色の具合)、色持ち(褪色のしにくさ)、艶および仕上がりの指通りに優れる毛髪用処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する毛髪用処理剤により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば、以下の[1]〜[4]である。
【0007】
[1] アニオン界面活性剤を含む酸化染毛剤による染毛後に使用する毛髪用処理剤であって、
毛髪用処理剤100質量%中に、高級アルコールおよび二鎖型カチオン界面活性剤を合計で1〜14質量%含み、
高級アルコールと二鎖型カチオン界面活性剤との割合(質量比)が1:2〜1:4.5である、毛髪用処理剤。
【0008】
[2] 前記二鎖型カチオン界面活性剤が、以下の一般式(1)二鎖型カチオン界面活性剤である、[1]に記載の毛髪用処理剤。
【0009】
【化1】
【0010】
(一般式(1)において、Rはそれぞれ独立に、炭素数10〜18の鎖状炭化水素基であり、X-は無機陰イオン、または有機陰イオンである。)
【0011】
[3] 毛髪用処理剤100質量%中に、ポリエチレングリコールを0.01質量%以上含む、[1]または[2]に記載の毛髪用処理剤。
【0012】
[4] アニオン界面活性剤を含む酸化染毛剤により、毛髪を染毛する工程(1)、
工程(1)を経た毛髪に、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の毛髪用処理剤を与える工程(2)
および
前記毛髪用処理剤が与えられた毛髪をシャンプーで水洗する工程(3)
を含む毛髪処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の毛髪用処理剤は、アニオン界面活性剤を含む酸化染毛剤による染毛後、シャンプーの水洗を行った場合に毛髪に生じるきしみ感を軽減し、染毛後の毛髪は、染まり具合(染色の具合)、色持ち(褪色のしにくさ)、艶および仕上がりの指通りに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔毛髪用処理剤〕
本発明の毛髪用処理剤は、アニオン界面活性剤を含む酸化染毛剤による染毛後に使用する処理剤をいう。本発明の毛髪用処理剤が使用されるタイミングは、通常は染毛後であって、かつ、シャンプー水洗前である。
【0015】
本発明の毛髪用処理剤は、後述する高級アルコールおよび二鎖型カチオン界面活性剤を特定の量および割合で含む。
特許文献1には、染毛による毛髪の損傷を修復しつつ、染毛後の毛髪の色持ちや感触を良好にするため、特定のpH緩衝剤、両性ポリマーおよびカチオン界面活性剤を含む染毛用後処理剤を使用することについて記載されている。しかしながら、前記染毛用後処理剤は、染毛を行った毛髪をシャンプーで水洗した後に、毛髪に使用されるものであり、シャンプーで水洗する前の毛髪に対して使用されるものではなかった。このため、特許文献1では、シャンプー水洗前に使用して、毛髪の染色状態を良好にする毛髪用処理剤については何ら検討されていなかった。
【0016】
本発明の毛髪用処理剤に含まれる高級アルコールおよび二鎖型カチオン界面活性剤の合計濃度は、通常1〜14質量%、好ましくは2〜14質量%、より好ましくは4〜10質量%である(毛髪用処理剤全体を100質量%とする)。
【0017】
本発明の毛髪用処理剤に含まれる高級アルコールと二鎖型カチオン界面活性剤との割合(質量比)(高級アルコール:二鎖型カチオン界面活性剤)は、通常1:2〜1:4.5、好ましくは1:2.5〜1:3.5、より好ましくは1:2.5〜1:3である。
【0018】
本発明の毛髪用処理剤に含まれる高級アルコールと二鎖型カチオン界面活性剤の濃度および質量比が前記範囲内であると、シャンプーの水洗を行った場合に毛髪に生じるきしみ感を軽減し、毛髪は、染まり具合(染色の具合)、色持ち(褪色のしにくさ)、艶および仕上がりの指通りに優れる。
【0019】
<酸化染毛剤>
本発明の毛髪用処理剤は、アニオン界面活性剤を含む酸化染毛剤による染毛後に使用される。前記酸化染毛剤は、通常、アルカリ剤およびアニオン界面活性剤を含む第1剤ならびに酸化剤を含む第2剤からなる。
【0020】
前記第1剤には、通常、レゾルシン、硫酸トルエン−2,5−ジアミン、メタアミノフェノール、塩酸2,4−ジアミノフェノキシエタノール等の酸化染料、セトステアリルアルコール等の油剤、プロピレングリコール等の溶剤、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のノニオン界面活性剤、L−アスコルビン酸等の酸化防止剤および無水亜硫酸ナトリウム、アンモニア水等のアルカリ剤が含有される。
【0021】
前記第2剤には、通常、セトステアリルアルコール等の油剤、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のノニオン界面活性剤、エデト酸四ナトリウム等のキレート剤および過酸化水素等の酸化剤が含有される。
【0022】
前記酸化染毛剤が、カチオン界面活性剤を含む場合、第1剤および第2剤を混合した際、アニオン界面活性剤に含まれるアニオンサイトとカチオン界面活性剤に含まれるカチオンサイトとの当量比(アニオン/カチオン)が1より大きいことが好ましい。
【0023】
<高級アルコール>
本発明の毛髪用処理剤が含有する高級アルコール(以下「成分A」ともいう。)としては、1分子中の炭素数が12〜24のものが好ましく、1分子中の炭素数が12〜22のものがより好ましい。高級アルコールとしては、例えば、セタノールおよびベヘニルアルコール等が挙げられる。成分Aは1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0024】
<二鎖型カチオン界面活性剤>
本発明の毛髪用処理剤は、二鎖型カチオン界面活性剤(以下「成分B」ともいう。)を含む。
【0025】
前記成分Bとしては、以下の一般式(1)で表される二鎖型カチオン界面活性剤が好ましい。
【0026】
【化2】
【0027】
一般式(1)において、Rはそれぞれ独立に、炭素数10〜18の鎖状炭化水素基であり、X-は無機陰イオン、または有機陰イオンである。
前記鎖状炭化水素基としては、分岐を有する鎖状炭化水素基でもよく、分岐を有さない鎖状炭化水素基、すなわち、直鎖状炭化水素基であってもよい。前記鎖状炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基が本発明の効果を好適に発現するため好ましい。
【0028】
炭化水素基としては、アルキル基であることが好ましい。すなわち、本発明の鎖状炭化水素基は、鎖状アルキル基であることが好ましく、直鎖状アルキル基であることがより好ましい。
【0029】
-としては、ハロゲン化物イオン、メトサルフェートイオン、エトサルフェートイオン、メトフォスフェートイオン、エトフォスフェートイオン、メトカーボナートイオンが好ましい。X-としては、ハロゲン化物イオンが好ましく、ハロゲン化物イオンとしては、Cl-、Br-が挙げられ、Cl-が特に好ましい。
【0030】
本発明の毛髪用処理剤が含有する成分Bとしては、例えば、ジココジモニウムクロリド、ジセチルジモニウムクロリドおよびジステアリルジモニウムクロリド等が挙げられ、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0031】
染毛後の毛髪にシャンプーを行うと、毛髪が水分を吸うことで膨らみ、毛髪内部に浸透した色が流れ出してしまうため、染毛後の毛髪は色落ちを起こしていた。しかし、成分Bを含む毛髪用処理剤を染毛後の毛髪に使用し、シャンプーを行うと、毛髪の染まり具合(染色の具合)、色持ち(褪色のしにくさ)が優れていた。この理由として、成分Bが、従来の毛髪用処理剤に含まれる一鎖型カチオン界面活性剤よりも分子量が大きいため、効率的に毛髪の表面をコーティングすることにより、シャンプーによる色落ちをブロック(抑制)するためであると、本発明者らは推定した。
【0032】
<ポリエチレングリコール>
本発明の毛髪用処理剤は、ポリエチレングリコール(以下「成分C」ともいう。)を含んでもよい。成分Cとしては、高重合ポリエチレングリコールが好ましい。
【0033】
成分Cは、下記要件(i)および(ii)の少なくとも一方を満たすことが好ましい。
(i)ポリエチレングリコールの濃度が2質量%である水溶液の25℃における、水溶液粘度が35〜18000mPa・sである。
(ii)ポリエチレングリコールの濃度が0.5質量%である水溶液の25℃における、水溶液粘度が30〜250mPa・sである、
前記(i)や(ii)を満たす成分Cは、分子量が充分に大きく、高重合ポリエチレングリコールとして使用することが可能である。
【0034】
成分Cは、市販品、例えば製品名「アルコックスE−30」、「アルコックスE−75」および「アルコックスE−160」(いずれも明成化学工業株式会社製)として容易に入手可能である。
【0035】
本発明の毛髪用処理剤が成分Cを含む場合には、成分Cの濃度は、毛髪用処理剤全体を100質量%とすると、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上である。また、本発明の毛髪用処理剤が成分Cを含む場合の濃度は、毛髪用処理剤全体を100質量%とすると、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である。
また、成分AおよびBと共に成分Cを含むことにより、シャンプーの水洗を行った場合に染毛後の毛髪に生じるきしみ感を軽減し、良好な毛髪の染まり具合(染色の具合)、色持ち(褪色のしにくさ)、艶および仕上がりの指通りに加え、塗布時の操作性に優れる。
【0036】
本発明の毛髪用処理剤には、高級アルコールおよび二鎖型カチオン界面活性剤以外の成分として、必要に応じて一般に用いられている成分を配合することができる。例えば、炭化水素、脂肪酸、ロウ類、油脂類、溶剤、香料、液化石油ガス、ジメチルエーテル、窒素、炭酸ガス等の噴射剤などを挙げることができる。また、本発明の毛髪用処理剤は、水溶液、エマルション、クリーム、ゲル、エアゾール、フォームなどの剤型とすることができる。本発明の毛髪用処理剤は、各剤型の常法に基づき調製することができる。
【0037】
〔毛髪処理方法〕
本発明の毛髪処理方法は、アニオン界面活性剤を含む酸化染毛剤により、毛髪を染毛する工程(1)、
工程(1)を経た毛髪に、毛髪用処理剤を与える工程(2)および
前記毛髪用処理剤が与えられた毛髪をシャンプーで水洗する工程(3)を含む。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例、比較例で使用した第1剤および第2剤からなる酸化染毛剤の成分および配合割合は、表1〜2に示す通りである。表1〜2に記載された成分の単位は質量%であり、第1剤または第2剤の全量を100質量%として表す。
【0039】
表1〜2に記載の配合割合で、第1剤および第2剤の各成分を秤量して、質量基準で1:1の比率で混合することにより、アニオン性酸化染毛剤およびカチオン性酸化染毛剤を調製した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
[実施例1〜17、比較例1〜11]
実施例、比較例で調製した毛髪用処理剤の成分および配合割合は、表3−1、3−2および4に示す通りである。表に記載された成分の単位は質量%であり、毛髪用処理剤全量を100質量%として表す。
【0043】
表3−1、3−2および4に記載の配合割合で、各成分を秤量して、混合することにより毛髪用処理剤を調製した。
調製した毛髪用処理剤を用いて、以下の試験を行い、評価を行った。
【0044】
なお、表3−1、3−2および4に記載の各成分は以下の市販品を用いた。
<高級アルコール(成分A)>
セタノール:セタノールSH(高級アルコール工業株式会社製)
<二鎖型カチオン界面活性剤(成分B)>
ジステアリルジモニウムクロリド(成分B−1):アーカード2HP-75(ライオン株式会社製)
ジセチルジモニウムクロリド(成分B−2):VARISOFT 432 PPG(エボニックジャパン株式会社製)
ジココジモニウムクロリド(平均分子量447.5)(成分B−3):アーカード2C−75(ライオン株式会社製)
<一鎖型カチオン界面活性剤(成分X)>
ベヘントリモニウムクロリド(成分X−1):カチナール DC−80(東邦化学株式会社製)
ステアルトリモニウムクロリド(成分X−2):カチナール STC‐70ET(東邦化学株式会社製)
ラウリルトリモニウムクロリド(成分X−3):カチナール LTC‐35A(東邦化学株式会社製)
<カチオン界面活性剤以外の界面活性剤(成分Y)>
ポリオキシエチレンセチルエーテル(成分Y−1):エマレックス120(日本エマルジョン株式会社製)(ノニオン界面活性剤)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(成分Y−2):アルスコープ NS−230(東邦化学株式会社製)(アニオン界面活性剤)
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(成分Y−3):レボン2000(三洋化成工業株式会社製)液中にヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが30質量%含まれる溶液(両性界面活性剤)
<ポリエチレングリコール(成分C)>
ポリエチレングリコール(成分C−1):アルコックスE−160(25℃、水溶液濃度0.5質量%の時の水溶液粘度が150〜170mPa・s)(明成化学工業株式会社製)
ポリエチレングリコール(成分C−2):アルコックスE−75(25℃、水溶液濃度0.5質量%の時の水溶液粘度が40〜70mPa・s)(明成化学工業株式会社製)
ポリエチレングリコール(成分C−3):アルコックスE−30(25℃、水溶液濃度2質量%の時の水溶液粘度が40〜100mPa・s)(明成化学工業株式会社製)
【0045】
<評価>
調製したアニオン性およびカチオン性の酸化染毛剤を使用してヘアカラー処理を施した毛束に対し、専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ以下の(1)〜(6)の各項目に記載した評価基準に従って官能評価を行った。
【0046】
評価項目の分離に関しては、毛髪用処理剤が剤型化できるものに関しては○、できないものに関しては×とした。
塗布時の操作性に関しては、本発明の毛髪用処理剤の評価項目として必須項目ではない。したがって、以下の(1)〜(6)の各項目の評価基準を満たした実施例で製造した毛髪用処理剤は、塗布時の操作性に関する評価が劣っていても、本発明の毛髪用処理剤として問題なく使用することができる。
【0047】
なお、(4)流し時の滑らかさ以外の項目については、ヘアカラー処理を施した毛束がドライの状態で評価を行った。
各項目につき10名の評価点の平均を算出し、以下のとおり評価した。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点未満である。
【0048】
比較例11の毛髪用処理剤の評価は、カチオン性の酸化染毛剤によるヘアカラー処理を施した毛束を使用して行い、実施例1〜17および比較例1〜10の毛髪用処理剤の評価は、アニオン性の酸化染毛剤によるヘアカラー処理を施した毛束を使用して行った。
【0049】
<評価項目および評価基準>
(1)染まり具合(染色の具合)に関する評価
ヤギ毛束(10cm、1g)(LB−W、ビューラックス株式会社製)に調製した酸化染毛剤を3g塗布し、室温で30分放置後、40℃のお湯で水洗し、各実施例および比較例で製造した毛髪用処理剤1gを毛束に塗布した。次に、毛髪用処理剤を40℃のお湯で水洗後、シェルパデザインサプリD−2シャンプー(株式会社アリミノ製)1gを用いてシャンプーした後、40℃のお湯で水洗し、シェルパデザインサプリD−2トリートメント(株式会社アリミノ製)1gを塗布した。その後、毛束を水洗しドライヤーで乾燥させた。
【0050】
毛髪用処理剤を使用した場合と、使用しなかった場合の毛束の色の染まり具合を目視で比較し評価した。
4点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、色が明らかに濃く染まっている。
3点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、色が濃く染まっている。
2点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、色の濃淡の差がなく染まっている。
1点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、色が薄く染まっている。
【0051】
(2)色持ち(褪色のしにくさ)に関する評価
ヤギ毛束(10cm、1g)(LB−W、ビューラックス株式会社製)2本に調製した酸化染毛剤をそれぞれ3g塗布し、室温で30分放置後、40℃のお湯で水洗し、各実施例および比較例で製造した毛髪用処理剤をそれぞれ1g毛束に塗布した。次に、毛髪用処理剤を40℃のお湯で水洗後、シェルパデザインサプリD−2シャンプー(株式会社アリミノ製)1gを用いてシャンプーした後、40℃のお湯で水洗した(シャンプー処理)。毛束にシェルパデザインサプリD−2トリートメント(株式会社アリミノ製)1gを塗布した(トリートメント処理)。その後、毛束を水洗しドライヤーで乾燥させる(乾燥処理)。毛髪用処理剤を塗布した2本のヤギ毛束のうち1本は、シャンプー→トリートメント→乾燥を行う一連の処理(シャンプー・トリートメント・乾燥処理)を10回繰り返した。もう1本の一連の処理を行わなかったヤギ毛束と、シャンプー・トリートメント・乾燥処理を繰り返し行った毛束を比較して、毛束の色持ちを目視で確認した(上述の操作を操作Aとする)。
【0052】
毛髪用処理剤を使用しなかった以外は、操作Aと同様の手順を行った(操作Bとする)。
操作Aを行った毛束の色持ち具合と操作Bを行った毛束の色持ち具合を比較することで、毛髪用処理剤の色持ちの効果を評価した。
4点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、明らかに色持ちが良い。
3点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、色持ちが良い。
2点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、色落ちの程度に差がない。
1点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、色落ちしている。
【0053】
(3)艶に関する評価
人毛黒髪毛束(30cm、10g)(BS−B3A、ビューラックス株式会社製)に調製した酸化染毛剤を30g塗布し、室温で30分放置後、40℃のお湯で水洗し、各実施例および比較例で製造した毛髪用処理剤5gを毛束に塗布した。毛髪用処理剤を40℃のお湯で水洗後、シェルパデザインサプリD−2シャンプー(株式会社アリミノ製)3gを用いてシャンプーした後、40℃のお湯で水洗し、シェルパデザインサプリD−2トリートメント(株式会社アリミノ製)3gを塗布した。その後、毛束を水洗しドライヤーで乾燥させた。
【0054】
毛髪用処理剤を使用した場合と、使用しなかった場合の艶を目視で比較して評価した。
4点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、格段に艶がでている
3点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、より艶がある。
2点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、艶に差はない。
1点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、艶がでていない。
【0055】
(4)流し時の滑らかさ(きしみ感のなさ)に関する評価
人毛黒髪毛束(30cm、10g)(BS−B3A、ビューラックス株式会社製)に調製した酸化染毛剤を30g塗布し、室温で30分放置後、40℃のお湯で水洗し、各実施例および比較例で製造した毛髪用処理剤5gを毛束に塗布した。毛髪用処理剤を40℃のお湯で水洗後、シェルパデザインサプリD−2シャンプー(株式会社アリミノ製)3gを用いてシャンプーした後、毛束を40℃のお湯で水洗し、その時の指通りを確認した。
【0056】
毛髪用処理剤を使用した場合と、使用しなかった場合との指通りを手触りで比較して評価した。
4点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、きしみ感を感じず、柔らかく、明らかに指通りが滑らかであった。
3点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、よりきしみ感が少なく、指通りが滑らかであった。
2点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合と、同程度の滑らかさであった。
1点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、きしみ感があり、滑らかさに欠け、指通りが悪かった。
【0057】
(5)仕上がりの指通りに関する評価
人毛黒髪毛束(30cm、10g)(BS−B3A、ビューラックス株式会社製)に調製した酸化染毛剤を30g塗布し、室温で30分放置後、40℃のお湯で水洗し、各実施例および比較例で製造した毛髪用処理剤5gを毛束に塗布した。毛髪用処理剤を40℃のお湯で水洗後、シェルパデザインサプリD−2シャンプー(株式会社アリミノ製)3gを用いてシャンプーした後、40℃のお湯で水洗し、シェルパデザインサプリD−2トリートメント(株式会社アリミノ製)3gを塗布した。その後、毛束を水洗しドライヤーで乾燥させた。
【0058】
毛髪用処理剤を使用した場合と、使用しなかった場合と仕上がりの指通りを手触りで比較して評価した。
4点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、格段に滑らかで、柔らかく、指通りがよい。
3点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、ひっかかりが少なく、指通りが良い。
2点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、指通りに差はない。
1点 毛髪用処理剤を使用しなかった場合に比べて、指通りが悪い。
【0059】
(6)塗布時の操作性に関する評価
毛髪の長さが50cmの人頭に調製した酸化染毛剤を160g塗布し、室温で30分放置後、40℃のお湯で水洗し、各実施例および比較例で製造した毛髪用処理剤15gを塗布した。
【0060】
毛髪用処理剤を人頭に塗布した時の操作性を評価した。
4点 非常に滑らかな延びがあり、毛髪用処理剤が塗布しやすい。
3点 毛髪と馴染みやすく、毛髪用処理剤が塗布しやすい。
2点 毛髪用処理剤が問題なく塗布できる。
1点 毛髪用処理剤が硬すぎて毛髪に馴染みづらい、もしくは垂れ落ちやすく充分に塗布できない。
【0061】
【表3-1】
【0062】
【表3-2】
【0063】
【表4】
【0064】
実施例1〜17で製造した毛髪用処理剤はいずれも、比較例と比べて染まり具合、色持ち、艶、流し時の滑らかさ、および仕上がりの指通りが良好な結果となった。また、実施例1〜17で製造した毛髪用処理剤はいずれも、均一に混合することが可能であり、剤型化することができた。
【0065】
実施例13〜17で製造した毛髪用処理剤はいずれも、成分Cを含む。該実施例では毛髪用処理剤を人頭に塗布した時の操作性が良好であった。
比較例1で製造した毛髪用処理剤は、成分Aと成分Bとの割合が1:2より低いため、成分同士が分離して均一に混合することが不可能となり、剤型化することができなかった。よって、比較例1で製造した毛髪用処理剤については官能評価を行っていない。
【0066】
比較例2で製造した毛髪用処理剤は、成分Aと成分Bとの割合が1:4.5より高いため、シャンプーの水洗後の毛髪は、艶、流し時の滑らかさ、および仕上がりの指通りが劣る結果となった。
【0067】
比較例3で製造した毛髪用処理剤は成分Aおよび成分Bの合計量が1質量%より少ないため、シャンプーの水洗後の毛髪は、染まり具合、色持ち、艶および仕上がりの指通りが劣る結果となった。
【0068】
比較例4で製造した毛髪用処理剤は、成分Aおよび成分Bの合計量が14質量%より多いため、シャンプーの水洗後の毛髪は、仕上がりの指通りが劣る結果となった。
比較例5〜7で製造した毛髪用処理剤は、二鎖型カチオン界面活性剤である成分B−1、B−2またはB−3に代えて、それぞれ一鎖型カチオン界面活性剤である成分X−1、X−2またはX−3を使用した。比較例5〜7ではシャンプーの水洗後の毛髪は、色持ち、および艶が劣る結果となった。
【0069】
比較例8〜10で製造した毛髪用処理剤は、二鎖型カチオン界面活性剤である成分B−1、B−2またはB−3に代えて、それぞれノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤である成分Y−1、Y−2またはY−3を使用した。比較例8〜10では、シャンプーの水洗後の毛髪は、染まり具合、色持ち、艶、流し時の滑らかさ、および仕上がりの指通りが劣る結果となった。
【0070】
比較例11では、アニオン界面活性剤に代えて、カチオン界面活性剤を含む酸化染毛剤で染毛した毛髪に対して、実施例17で製造した毛髪用処理剤を使用して評価を行った。比較例11は、シャンプーの水洗後の毛髪は、染まり具合、色持ち、艶、流し時の滑らかさ、および仕上がりの指通りが劣る結果となった。