(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6964915
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】液体循環式発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 13/06 20060101AFI20211028BHJP
F03B 17/06 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
F03B13/06
F03B17/06
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2021-95134(P2021-95134)
(22)【出願日】2021年6月7日
【審査請求日】2021年6月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521247560
【氏名又は名称】平岡 大作
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】平岡 大作
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−250139(JP,A)
【文献】
特開2000−257544(JP,A)
【文献】
特開平11−223174(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3186838(JP,U)
【文献】
特開昭57−065878(JP,A)
【文献】
特開2004−308638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/00−13/26
F03B 17/00−17/06
F04F 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に連設され所定の液体を貯留する複数の貯留槽、及び該複数の貯留槽を接続する複数の流路を含んで構成される液体回路を前記液体が循環する液体循環式発電装置であって、
前記複数の貯留槽のうち上方に位置する貯留槽である上方貯留槽と、
前記複数の貯留槽のうち下方に位置する貯留槽である下方貯留槽と、
前記複数の流路のうち、前記液体が前記下方貯留槽から前記上方貯留槽に向かって流れる流路である吸入路と、
前記複数の流路のうち、前記液体が前記上方貯留槽から前記下方貯留槽に向かって流れる流路である排出路と、
前記排出路に設置され、該排出路における前記液体の流れを利用して発電する発電ユニットと、
前記上方貯留槽内の空気を前記下方貯留槽に移送する電動ポンプと、
を備え、
前記発電ユニットによって発電された電力で前記電動ポンプが駆動され、前記上方貯留槽内に負圧が発生するとともに、該上方貯留槽から前記下方貯留槽に移送された空気によって該下方貯留槽内の前記液体が加圧され、前記液体が前記吸入路を流通し、
前記排出路は、互いに並列に設けられ、かつ、前記発電ユニットをそれぞれ有する複数の排出路を含み、
前記複数の排出路と前記上方貯留槽との接続部に設けられた第1仕切弁と、
前記複数の排出路において前記発電ユニットをそれぞれバイパスするバイパス流路と、
前記複数の排出路における前記バイパス流路にそれぞれ設けられた第2仕切弁と、
を更に備えている、液体循環式発電装置。
【請求項2】
前記上方貯留槽は、
前記吸入路と接続された第1貯留槽と、前記排出路と接続された第2貯留槽と、を含んで構成され、前記第2貯留槽よりも容積が小さな前記第1貯留槽に一旦貯留された前記液体が、前記第2貯留槽に供給され、
前記下方貯留槽は、
前記排出路と接続された第3貯留槽と、前記吸入路と接続された第4貯留槽と、を含んで構成され、
前記電動ポンプによって、前記第1貯留槽内の空気が前記第4貯留槽に移送される、
請求項1に記載の液体循環式発電装置。
【請求項3】
前記発電ユニットは、前記液体の流れが作用する羽根車と、該羽根車の回転を支持する回転軸と、該回転軸の一方の端部に接続された発電機と、を含んで構成され、
前記発電ユニットの前記回転軸の他方の端部に接続された送風機であって、該回転軸の回転を受けて、吸入口から吸入した空気を吐出口から吐出する送風機を更に備え、
前記送風機は、前記吸入口が前記上方貯留槽に接続され、前記吐出口が前記下方貯留槽に接続される、
請求項1又は請求項2に記載の液体循環式発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体回路を液体が循環する液体循環式発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発電方法として、火力発電や原子力発電、水力発電等が知られている。ここで、化石燃料を燃焼させる火力発電は、温室効果ガスの発生による地球温暖化が懸念されている。また、原子力発電は、化石燃料を燃焼させないものの、核燃料による環境汚染が懸念されている。一方、水力発電は、再生可能エネルギである水力を利用した発電方法であって、温室効果ガスを排出しないため、低炭素社会を実現し得る発電方法として知られている。
【0003】
そして、水力発電においては、ダムを必要とする大規模水力発電とは異なる中小水力の発電装置が近年注目されている。例えば、特許文献1には、上下方向に連設された複数の貯水タンク間で真空ポンプを用いて下方から上方へ水を吸引し、吸引された水を最上段の供給タンクから最下段の受水タンクに放出することで生じる運動エネルギにより発電する、発電システムが開示されている。このような発電システムによれば、ダム等の貯水域に河川から流入する水や降雨による水を貯める必要がないため、環境に左右されることなく発電を行うことができる。
【0004】
また、特許文献2にも同様に、水を循環利用できるマイクロ水力発電システムが開示されている。この発電システムでは、貯水槽の水を該貯水槽から下降する導水管に流すことで発電が行われ、該導水管に接続された復水管によって水が貯水槽に戻される。ここで、復水管には、該復水管内の水を貯水槽内に排出するポンプが設けられていて、該ポンプが復水管内の水を排出することによって生じる吸引力により、復水管及び導水管内に一様な吸引流を発生させ、水を循環させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−78354号公報
【特許文献1】特許第6016007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から知られている、ダム等の貯水域を利用しない中小水力の発電装置では、ポンプを用いた吸引によって水を下方から上方へ移動させるため、揚水に費やすエネルギが大きくなり易い。例えば、特許文献1に記載の技術によれば、貯水タンク内を真空状態にするための真空ポンプが稼働されることで水の吸引が行われるため、水を吸引できる程度に真空ポンプを稼働させようとすると、その消費エネルギが大きくなってしまう虞がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載の技術によれば、復水管内の水をポンプが排出することによってあたかも生じる空隙に吸引される力により、復水管及び導水管内の水が、サイフォンの原理によって平衡状態に復帰するまで減圧状態で一様な吸引流となって管内を循環するため、比較的小さいエネルギで循環水流を形成することができるとされているものの、あくまで吸引により水を移動させるものである。そして、このような吸引により水を移動させる構成では、下方から上方への水の移動が緩慢になる場合がある。
【0008】
本開示の目的は、簡易な構造ながら効率良く液体を循環させることができ、高いエネルギ効率で発電することが可能な液体循環式発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の液体循環式発電装置は、上下方向に連設され所定の液体を貯留する複数の貯留槽、及び該複数の貯留槽を接続する複数の流路を含んで構成される液体回路を前記液体が循環する液体循環式発電装置である。そして、この液体循環式発電装置は、前記複数の貯留槽のうち上方に位置する貯留槽である上方貯留槽と、前記複数の貯留槽のうち下方に位置する貯留槽である下方貯留槽と、前記複数の流路のうち、前記液体が前記下方貯留槽から前記上方貯留槽に向かって流れる流路である吸入路と、前記複数の流路のうち、前記液体が前記上方貯留槽から前記下方貯留槽に向かって流れる流路である排出路と、前記排出路に設置され、該排出路における前記液体の流れを利用して発電する発電ユニットと、前記上方貯留槽内の空気を前記下方貯留槽に移送する電動ポンプと、を備え、前記発電ユニットによって発電された電力で前記電動ポンプが駆動され、前記上方貯留槽内に負圧が発生するとともに、該上方貯留槽から前記下方貯留槽に移送された空気によって該下方貯留槽内の前記液体が加圧され、前記液体が前記吸入路を流通する。
【0010】
上記の液体循環式発電装置では、重力によって、上方貯留槽から下方貯留槽に向かって所定の液体が排出路を流れることになる。そうすると、排出路に設置された発電ユニットによって発電が行われる。ここで、上記の液体とは例えば水であって、発電ユニットは、例えば、羽根車を有する水車と、該水車の軸に接続された発電機と、を含んで構成される。そして、上方貯留槽から下方貯留槽に流入した液体は、電動ポンプによる作用で、吸入路を介して上方貯留槽に汲み上げられる。このとき、電動ポンプは、発電ユニットによって発電された電力で駆動され、発電ユニットが発電した残りの電力が外部に供給されることになる。つまり、電動ポンプを駆動するための別途の電源が不要となり、構造が簡素化されるとともに装置全体として高いエネルギ効率を実現することができる。なお、ダム等の貯水域が不要であるため低コストであることは勿論であるし、化石燃料を燃焼させないために温室効果ガスを発生させることがなく、また、液体を循環させるため環境汚染を生じさせないことは勿論である。
【0011】
そして、このような液体循環式発電装置では、電動ポンプによって、上方貯留槽内の空気が下方貯留槽に移送されることで、効率良く液体を循環させることができる。詳しくは、電動ポンプが上方貯留槽内の空気を移送することで、該上方貯留槽内に負圧が発生し、該負圧によって吸入路の液体が上方貯留槽に吸引される。更に、電動ポンプが下方貯留槽内に空気を移送することで、該下方貯留槽内の液体が加圧され、その圧力によって吸入路の液体が下方貯留槽から押し上げられる。このように、電動ポンプが上方貯留槽内の空気を下方貯留槽に移送することで、簡易な構造ながら効率良く液体を循環させることができる。そして、これによっても、発電装置としてのエネルギ効率を高めることができる。なお、吸入路全体(吸入路の入口、出口を含む)が液密状態になるように構成されてもよい。これによれば、サイフォンの原理が働き、更に電動ポンプの消費電力を削減することができる。
【0012】
ここで、本開示の液体循環式発電装置では、上記の構成において、前記上方貯留槽は、前記吸入路と接続された第1貯留槽と、前記排出路と接続された第2貯留槽と、を含んで構成され、前記第2貯留槽よりも容積が小さな前記第1貯留槽に一旦貯留された前記液体が、前記第2貯留槽に供給されてもよい。また、前記下方貯留槽は、前記排出路と接続された第3貯留槽と、前記吸入路と接続された第4貯留槽と、を含んで構成されてもよい。そして、前記電動ポンプによって、前記第1貯留槽内の空気が前記第4貯留槽に移送されてもよい。これによれば、第1貯留槽内に好適に負圧を発生させることができるとともに、第4貯留槽内の液体を好適に加圧することができる。なお、第1貯留槽と第2貯留槽との接続部には、流量調整機構が設けられてもよい。更に、以上に述べた液体循環式発電装置において、前記発電ユニットは、前記液体の流れが作用する羽根車と、該羽根車の回転を支持する回転軸と、該回転軸の一方の端部に接続された発電機と、を含んで構成され得る。このような液体循環式発電装置では、前記発電ユニットの前記回転軸の他方の端部に接続された送風機であって、該回転軸の回転を受けて、吸入口から吸入した空気を吐出口から吐出する送風機を更に備えてもよい。そして、前記送風機は、前記吸入口が前記上方貯留槽に接続され、前記吐出口が前記下方貯留槽に接続されてもよい。そうすると、この送風機によっても、上方貯留槽内の空気が下方貯留槽に移送されることになり、より効率良く液体を循環させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、簡易な構造ながら効率良く液体を循環させることができ、高いエネルギ効率で発電することが可能な液体循環式発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態における液体循環式発電装置の概略構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態における水ライン毎の発電の管理を模式的に説明するための図である。
【
図3】発電ユニットが有する水車の構造を例示する図である。
【
図4】第2実施形態における送風機による空気の移送を模式的に説明するための図である。
【
図5】第2実施形態における送風機を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0016】
<第1実施形態>
第1実施形態における液体循環式発電装置の概要について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態における液体循環式発電装置の概略構成を示す図である。本実施形態に係る液体循環式発電装置1は、液体回路を液体が循環する液体循環式発電装置である。ここで、本実施形態では、上記の液体として水を例にして説明する。つまり、本実施形態は、水を循環させることで発電を行う、中小水力の発電装置である。そして、液体循環式発電装置1は、上下方向に連設され水を貯留する貯留槽10と、上下方向の貯留槽10を接続する複数の流路を含んで構成される水回路20と、水回路20における水の流れを利用して発電する発電ユニット30と、貯留槽10内の空気を移送する電動ポンプ40と、を備える。
【0017】
貯留槽10は、上方に位置する上方貯留槽11と、下方に位置する下方貯留槽12と、を含んで構成される。そして、水回路20は、水が下方貯留槽12から上方貯留槽11に向かって流れる流路である吸入路21と、水が上方貯留槽11から下方貯留槽12に向かって流れる流路である排出路22と、を含んで構成される。この場合、発電ユニット30は、排出路22に設置され、該排出路22における水の流れを利用して発電する。また、電動ポンプ40は、上方貯留槽11内の空気を下方貯留槽12に移送する。
【0018】
このような液体循環式発電装置1では、重力によって、上方貯留槽11から下方貯留槽12に向かって水が排出路22を流れることになる。そうすると、排出路22に設置された発電ユニット30によって発電が行われる。そして、上方貯留槽11から下方貯留槽12に流入した水は、後述する電動ポンプ40による作用で、吸入路21を介して上方貯留槽11に汲み上げられる。このとき、電動ポンプ40は、発電ユニット30によって発電された電力で駆動され、発電ユニット30が発電した残りの電力が外部に供給されることになる。つまり、電動ポンプ40を駆動するための別途の電源が不要となり、構造が簡素化されるとともに装置全体として高いエネルギ効率を実現することができる。
【0019】
ここで、本実施形態では、
図1に示すように、上方貯留槽11が、吸入路21と接続された第1貯留槽111と、排出路22と接続された第2貯留槽112と、を含んで構成され、下方貯留槽12が、排出路22と接続された第3貯留槽123と、吸入路21と接続された第4貯留槽124と、を含んで構成される。また、水回路20は、吸入路と排出路とが組になった複数の水ラインを有していて、本実施形態では、
図1及び図2に示す3つの水ライン(吸入路21aと排出路22aとの組、吸入路21bと排出路22bとの組、および吸入路21cと排出路22cとの組)によって構成されている。このような構成によれば、水ライン毎に発電を管理することができる。これについて、
図2に基づいて以下に詳しく説明する。
【0020】
図2は、本実施形態における水ライン毎の発電の管理を模式的に説明するための図である。本実施形態では、吸入路21、排出路22、発電ユニット30、および電動ポンプ40によって、1組の水ラインが構成される。そして、この1組の水ライン内における電動ポンプ40は、該水ライン内の発電ユニット30によって発電された電力で駆動される。このように構成された水ラインによれば、ラインを増設することで液体循環式発電装置1の発電量を増やすことができる。また、複数の水ラインのうちの1つの水ラインを取り外しても、他の水ラインによって発電することができるため、発電を継続しながら部品の交換、修理を行うことができる。例えば、
図2に示す例では、吸入路21cと排出路22cとを含んだ水ラインがメンテナンスされている最中であるが、吸入路21aと排出路22aとを含んだ水ライン、および吸入路21bと排出路22bとを含んだ水ラインによって発電を継続することができる。なお、
3つの水ラインにおける上方貯留槽11と排出路22との接続部には仕切弁
60がそれぞれ設けられており、メンテナンス中の水ラインではこの仕切弁
60が閉じられることで、上方貯留槽11からの水の漏出が抑制される。以上に述べた構成によれば、液体循環式発電装置1をメンテナンスし易くなる。
【0021】
また、発電ユニット30単体で交換や増設がされてもよい。ここで、
図3は、
3つの水ラインの排出路22のそれぞれに設けられる発電ユニット30の構造を例示する図である。発電ユニット30が有する水車は、水の流れが作用する羽根車31と、該羽根車31の回転を支持する回転軸32と、を含んで構成される。ここで、羽根車31は、密封型ベアリング33によって回転軸32に支持される。このような水車では、上流側の排出路22からの水がスクロール34に流入し、スクロール34内の水の流れが羽根車31に作用し、下流側の排出路22に水が流出する。そして、回転軸32に発電機が接続されることで、水の流れを利用して発電することが可能となる。更に、
3つの水ラインの排出路22のそれぞれに、水車と並列してバイパス流路
61を設置することができる。このバイパス流路
61は、例えば、スクロール34をバイパスして上流側の排出路22と下流側の排出路22とを繋ぐ流路である。そうすると、発電ユニット30単体で交換することが可能となる。詳しくは、所定の発電ユニット30をメンテナンスするときには、該発電ユニット30の水車と並列して設けられたバイパス流路
61を開くことで、その発電ユニット30を取り外してメンテナンスすることができる。これによっても、発電を継続しながら部品の交換、修理を行うことができる。なお、上記のバイパス流路
61は、通常は仕切弁
63などによって閉じられている。
【0022】
そして、
図1に戻って、本開示では、発電ユニット30によって発電された電力で電動ポンプ40が駆動されると、上方貯留槽11内に負圧が発生するとともに、該上方貯留槽11から下方貯留槽12に移送された空気によって該下方貯留槽12内の水が加圧され、水が吸入路21を流通することになる。これによれば、液体循環式発電装置1において、効率良く水を循環させることが可能となる。
【0023】
本実施形態では、上述したように、上方貯留槽11が、吸入路21と接続された第1貯留槽111と、排出路22と接続された第2貯留槽112と、を含んで構成され、下方貯留槽12が、排出路22と接続された第3貯留槽123と、吸入路21と接続された第4貯留槽124と、を含んで構成される。そうすると、電動ポンプ40によって、第1貯留槽111内の空気が第4貯留槽124に移送されることになる。これによれば、第1貯留槽111内に好適に負圧を発生させることができる。詳しくは、
図1によれば、上方貯留槽11では、第2貯留槽112よりも容積が小さな第1貯留槽111に一旦貯留された水が、第2貯留槽112に供給される。ここで、上方貯留槽11において、第1貯留槽111の容積は十分に小さい。そのため、第1貯留槽111内の空気が移送されると該第1貯留槽111内に負圧が発生し易くなる。そして、第1貯留槽111内に負圧が発生すると、該負圧によって吸入路21の水が第1貯留槽111に吸引されることになる。
【0024】
なお、第1貯留槽111と第2貯留槽112との接続部には、流量調整機構113が設けられてもよい。そうすると、流量調整機構113を用いて、第1貯留槽111から第2貯留槽112に供給される水の流量を調整できるとともに、第1貯留槽111内の水位を調整することができる。これによれば、第1貯留槽111内に発生する負圧も調整することができる。また、吸入路21全体(吸入路21の入口、出口を含む)が液密状態になるように調整し易くなる。そして、入口と出口とを含んだ吸入路21全体を液密状態にすることができれば、サイフォンの原理が働き、電動ポンプ40の消費電力を削減することができる。
【0025】
更に、本実施形態の液体循環式発電装置1によれば、電動ポンプ40が第4貯留槽124内に空気を移送することで、該第4貯留槽124内の水が加圧され、その圧力によって吸入路21の水が第4貯留槽124から押し上げられることになる。つまり、本開示によれば、電動ポンプ40が上方貯留槽11内の空気を下方貯留槽12に移送することで、吸入路21の水に対して、上方貯留槽11内の負圧による吸引と、下方貯留槽12からの加圧による押し上げと、を作用させることができ、以て、液体循環式発電装置1において、効率良く水を循環させることが可能となる。これによれば、簡易な構造ながら効率良く水を循環させることができるとともに、発電装置としてのエネルギ効率を高めることができる。
【0026】
なお、上記の
図2に示したように、水ライン毎に複数の発電ユニット30を設けることができる。そうすると、複数の発電ユニット30によって、電動ポンプ40の消費電力を上回る電力を発電することができる。
【0027】
また、本開示によれば、上方貯留槽11と下方貯留槽12とが上下方向に連設されるため、仮に、地震等によって液体循環式発電装置1が倒壊し得る事態が生じると、上方貯留槽11から大質量の水が落下してしまう虞がある。そこで、このような事態にそなえるために、緊急ドレン管が設けられてもよい。このような緊急ドレン管は、排出路22をバイパスする流路であって、且つ、上方貯留槽11の水を下方貯留槽12に可及的速やかに移すことができるように構成される。
【0028】
以上に述べた液体循環式発電装置1によれば、簡易な構造ながら効率良く液体を循環させることができ、高いエネルギ効率で発電することが可能となる。
【0029】
<第2実施形態>
上述した第1実施形態では、電動ポンプ40が上方貯留槽11内の空気を下方貯留槽12に移送することで、吸入路21の水に対して、上方貯留槽11内の負圧による吸引と、下方貯留槽12からの加圧による押し上げと、を作用させることができる。本実施形態では、第1実施形態の説明で述べた液体循環式発電装置1の構成に加えて、上方貯留槽11内の空気を下方貯留槽12に移送する送風機が更に設けられる。これについて、
図4および
図5に基づいて説明する。
【0030】
図4は、本実施形態における送風機による空気の移送を模式的に説明するための図である。そして、
図5は、本実施形態における送風機を説明するための図である。
図5に示すように、送風機50は、発電ユニット30の回転軸32において、発電機
62が接続された一方の端部とは異なる他方の端部に接続されている。そして、回転軸32の回転を受けて、吸入口51aから吸入した空気を吐出口52aから吐出する。ここで、吸入口51aは空気吸入路51に接続され、吐出口52aは空気吐出路52に接続されている。
【0031】
そして、
図4に示すように、空気吸入路51は第1貯留槽111に接続され、空気吐出路52は第4貯留槽124に接続されている。なお、
図4では、説明のため、1組の水ラインのみを図示している。このような構成によれば、送風機50によっても、第1貯留槽111内の空気を第4貯留槽124に移送することができ、より効率良く水を循環させることが可能となる。
【0032】
以上に述べた液体循環式発電装置1によっても、簡易な構造ながら効率良く液体を循環させることができ、高いエネルギ効率で発電することが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態では、送風機50から吐出された空気を用いてタービン発電が行われてもよい。
【0034】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。上記の実施形態では、水を循環させることで発電を行う、中小水力の発電装置を例にして説明したが、本開示の液体循環式発電装置では、液体が循環する際の該液体の流れを利用して発電できるものであればその液体の種類は問わない。そして、この液体は、水やオイル等のニュートン流体であってもよいし、液体に所定の固体が混合された非ニュートン流体であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1・・・・・液体循環式発電装置
11・・・・上方貯留槽
12・・・・下方貯留槽
21・・・・吸入路
22・・・・排出路
30・・・・発電ユニット
40・・・・電動ポンプ
【要約】
【課題】簡易な構造ながら効率良く液体を循環させることができ、高いエネルギ効率で発電することが可能な液体循環式発電装置を提供する。
【解決手段】本開示の液体循環式発電装置は、上方貯留槽と、下方貯留槽と、液体が下方貯留槽から上方貯留槽に向かって流れる吸入路と、液体が上方貯留槽から下方貯留槽に向かって流れる排出路と、排出路における液体の流れを利用して発電する発電ユニットと、上方貯留槽内の空気を下方貯留槽に移送する電動ポンプと、を備え、発電ユニットによって発電された電力で電動ポンプが駆動され、上方貯留槽内に負圧が発生するとともに、該上方貯留槽から下方貯留槽に移送された空気によって該下方貯留槽内の液体が加圧され、液体が吸入路を流通する。
【選択図】
図1