(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1,2に記載のマイコンガスメータにおいては、例えば正常範囲外となる調整圧力値が、例えば30日間で15日以上検出された場合に、圧力調整器の劣化であると判断している。しかし、圧力調整器の可動部等に対して粘度の高い油分が付着したり錆等が発生したりして圧力調整器の動きが鈍くなるような劣化初期においては、上記のような調整圧力値や閉塞圧力値は正常範囲内の値を示すことがある。このため、特許文献1,2に記載のマイコンガスメータにおける圧力調整器の劣化判断手法は劣化初期の判定ができず、劣化判断まで時間が掛かってしまうものである。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、劣化判断までの期間の短縮化を図ることが可能な圧力調整器の劣化判断装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る圧力調整器の劣化判断装置は、圧力調整器の劣化を判断する圧力調整器の劣化判断装置であって、前記圧力調整器の下流側に接続される流路と、前記流路におけるガス圧力を検出する圧力検出手段と、
圧力調整器の劣化を判断する劣化判断手段と、
を備え、前記劣化判断手段は、ガス流量が変化してから第1所定時間後に前記圧力検出手段により検出された調整圧力値に基づいて圧力調整器の劣化を判断する第1機能と、所定流量以下のガス器具が第2所定時間以上使用され、その後、ガスの使用が停止されたときに前記圧力検出手段により検出された閉塞圧力値に基づいて圧力調整器の劣化を判断する第2機能と、前記圧力検出手段により検出された圧力の変化の傾き、及び圧力の変化の傾きが所定値以下となるまでの時間の少なくとも一方の測定値に基づいて、圧力調整器の劣化を判断する第3機能と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る圧力調整器の劣化判断装置によれば、圧力の変化の傾き及び圧力の変化の傾きが所定値以下となるまでの時間の少なくとも一方の測定値に基づいて、圧力調整器の劣化を判断する。ここで、本件発明者は、劣化初期の圧力調整器について以下の現象を見出した。すなわち、劣化初期の圧力調整器において、最終的な圧力値は正常範囲を示す傾向にあるものの、粘度の高い油分の付着や錆等によって圧力調整器の動きが鈍くなっていることを見出した。このため、圧力の変化の傾きや傾きが所定値以下となるまでの時間に基づき、最終的な圧力値に落ち着くまでの圧力調整器の挙動を観察することで、粘度の高い油分の付着や錆等によって動きが鈍くなる初期状態の劣化を判断でき、劣化判断までの期間の短縮化を図ることが可能な圧力調整器の劣化判断装置を提供することができる。
【0009】
また、本発明に係る圧力調整器の劣化判断装置において、前記流路を流れる燃料ガスの流量を検出する流量検出手段をさらに備え、前記劣化判断手段は、
前記第3機能において、前記流量検出手段からの信号に基づいて燃料ガスの流量変化が検出された場合、当該流量変化が検出される前よりも、前記圧力検出手段による計測間隔を短くすることが好ましい。
【0010】
この圧力調整器の劣化判断装置によれば、燃料ガスの流量変化が検出された場合、流量変化が検出される前よりも、圧力検出手段による計測間隔を短くする。このため、流量変化が検出されて圧力変化が発生するときに圧力検出手段の計測間隔を短くすることとなり、圧力変化の傾き等をより正確に計測できるだけでなく、圧力変化の発生前において計測間隔を通常間隔にして省電力化に寄与することができる。
【0011】
また、本発明に係る圧力調整器の劣化判断装置において、前記劣化判断手段は、
前記第3機能において、前記流量検出手段により検出された燃料ガスの流量がゼロを超える状態から所定%以上の流量の増加、及び、燃料ガスの流量がゼロを超える範囲内での所定%以上の流量の減少の少なくとも一方があった場合における前記測定値に基づいて、圧力調整器の劣化を判断することが好ましい。
【0012】
この圧力調整器の劣化判断装置によれば、本件発明者は、燃料ガスの流量がゼロからゼロを超える値になるとき、及び燃料ガスの流量がゼロを超える値からゼロになるときについては、圧力変化が落ち着くまでの時間が比較的長くなることを見出した。このため、流量がゼロを超える状態から所定%以上の流量の上昇、及び、燃料ガスの流量がゼロを超える範囲内での所定%以上の流量の減少の少なくとも一方があった場合の測定値に基づいて、圧力調整器の劣化を判断することで、比較的短時間の監視による劣化判断を可能とすることができる。
【0013】
本発明に係る圧力調整器の劣化判断方法は、圧力調整器の劣化を判断する圧力調整器の劣化判断方法であって、前記圧力調整器の下流側に接続される流路におけるガス圧力を検出する圧力検出工程と、
圧力調整器の劣化を判断する劣化判断工程と、
を備え、前記劣化判断工程は、ガス流量が変化してから第1所定時間後に検出された調整圧力値に基づいて圧力調整器の劣化を判断する第1工程と、所定流量以下のガス器具が第2所定時間以上使用され、その後、ガスの使用が停止されたときに検出された閉塞圧力値に基づいて圧力調整器の劣化を判断する第2工程と、検出された圧力の変化の傾き、及び圧力の変化の傾きが所定値以下となるまでの時間の少なくとも一方の測定値に基づいて、圧力調整器の劣化を判断する第3工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る圧力調整器の劣化判断方法によれば、圧力の変化の傾き及び圧力の変化の傾きが所定値以下となるまでの時間の少なくとも一方の測定値に基づいて、圧力調整器の劣化を判断する。ここで、本件発明者は、劣化初期の圧力調整器について以下の現象を見出した。すなわち、劣化初期の圧力調整器において、最終的な圧力値は正常範囲を示す傾向にあるものの、粘度の高い油分の付着や錆等によって圧力調整器の動きが鈍くなっていることを見出した。このため、圧力の変化の傾きや傾きが所定値以下となるまでの時間に基づき、最終的な圧力値に落ち着くまでの圧力調整器の挙動を観察することで、粘度の高い油分の付着や錆等によって動きが鈍くなる初期状態の劣化を判断でき、劣化判断までの期間の短縮化を図ることが可能な圧力調整器の劣化判断方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、劣化判断までの期間の短縮化を図ることが可能な圧力調整器の劣化判断装置及び方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る劣化判断装置を含むガス供給システムの正面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るガス供給システム1は、一次調整器(圧力調整器)10と、二次調整器(圧力調整器)20と、接続配管30と、劣化判断装置40とから構成されている。
【0019】
一次調整器10は、いわゆる切替機能付きの元調整器であって、切替レバー11を正面に備えている。切替レバー11は、左右に接続されるLPガスボンベ(図示せず)のうち、どちらから燃料ガスを導入するかを選択するための操作部である。
図1に示す例において切替レバー11は、右側に接続されるLPガスボンベからの燃料ガスを導入するように選択されている。また、一次調整器10は、内部にダイヤフラム等を備えており、ダイヤフラムの動作に応じて内部の弁体を開閉動作させることによって一次減圧を行う構成となっている。一次減圧された燃料ガスは、二次調整器20に供給される。
【0020】
二次調整器20は、一次減圧された燃料ガスを更に減圧する二次減圧を行うものである。二次調整器20についても一次調整器10と同様に、内部にダイヤフラム等を備えており、ダイヤフラムの動作に応じて内部の弁体を開閉動作させることによって二次減圧を行う。二次減圧された燃料ガスは、下流側に供給される。
【0021】
接続配管30は、二次調整器20と劣化判断装置40との間に介在する配管である。二次調整器20と劣化判断装置40とは、それぞれの接続部21,41を介して接続配管30に接続されている。
【0022】
劣化判断装置40は、劣化判断ユニット42と、演算表示部(圧力検出手段、劣化判断手段)43とから構成されている。
図2は、
図1に示した劣化判断ユニット42の詳細を示す断面図である。
図2に示すように、劣化判断ユニット42は、メイン流路44と、弁機構45と、バイパス流路(流路)46と、圧力センサ(圧力検出手段)47と、多層ユニット48と、流量センサ(流量検出手段)49とを備えて構成されている。
【0023】
メイン流路44は、一次及び二次調整器10,20により減圧された燃料ガスを下流の需要者側に導く流路である。弁機構45は、メイン流路44上に設けられて燃料ガスの流量が設定流量未満であるときに弁閉状態となり、設定流量以上となるときに弁開状態となるものである。
【0024】
また、メイン流路44には弁機構45の上流側の第1小孔44aと下流側の第2小孔44bとが形成されており、これら小孔44a,44bを接続するようにバイパス流路46が設けられている。バイパス流路46は、メイン流路44に沿って延在する流路である。本実施形態においてメイン流路44は直線状となっていることから、バイパス流路46についても直線状に延びた形状となっている。特に、メイン流路44を形成する壁部44cの一部は、バイパス流路46を形成する壁部と兼用されるようになっており、バイパス流路46がメイン流路44と壁部44cを隔てて一体化された構成となっている。
【0025】
このようなバイパス流路46には、圧力センサ47と、多層ユニット48と、流量センサ49が設けられる。圧力センサ47は、バイパス流路46におけるガス圧力に応じた信号を出力するものであり、ガス圧力に応じた信号を演算表示部43に出力する。多層ユニット48は、内部に複数の分流坂を有した四角筒状の部材である。流量センサ49は、例えば超音波式流量検知ユニットによって構成され、多層ユニット48内に超音波信号を送信して受信するための2つの超音波送受信器と、2つの超音波送受信器にて送受信された超音波信号の伝搬時間から流量を計測するための計測基板とを備えている。
【0026】
ここで、劣化判断ユニット42よりも下流側において小さな配管亀裂等が発生した場合、微少な漏洩が発生する。微少漏洩時の流量は弁機構45の設定流量よりも小さいことから、燃料ガスはバイパス流路46を通じて流れることとなる。流量センサ49は、このような微少流量を検知可能となっている。
【0027】
なお、
図2からも明らかなように、バイパス流路46は、特許文献1,2において設けられていた子調整器に相当するものが設けられないようになっている。このため、バイパス流路46は、上流部46aの燃料ガスを略同圧状態のまま下流部46bまで流す構造となっている。ここで、略同圧状態とは、多層ユニット48を通過する際の圧力損失については許容する概念であり、従来の子調整器のような積極的な減圧がないことを示す概念である。
【0028】
図3は、
図2に示した弁機構45の詳細を示す拡大図であり、(a)は弁閉状態を示し、(b)は弁開状態を示している。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、弁機構45は、弁体45aと、コイルスプリング45bと、連結竿45cと、受圧板45dとを備えている。
【0029】
弁体45aは、メイン流路44の延在方向に移動可能な部材であって、メイン流路44に設けられた弁座44dに対して押し付けられることにより弁閉状態となり、弁座44dから離間することにより弁開状態となるものである。コイルスプリング45bは、弁体45aの下流側に設けられ、弁体45aを弁座44dに押し付けるための付勢力(上流側への力)を発生させるものである。
【0030】
連結竿45cは、コイルスプリング45bに挿通される棒状部材であって、一端が弁体45aに接続され、他端が受圧板45dに接続されている。受圧板45dは、弁体45aの下流側において連結竿45cを介して弁体45aに連結された板部材である。この受圧板45dは、
図3(b)に示すように、弁体45aの弁開状態において流れてくる燃料ガスの一部を受け止めるようになっている。この受圧板45dによる燃料ガスの受け止めによって、弁体45aが弁開状態となって弁体45aの上流側と下流側との差圧が小さくなったときに、すぐに弁体45aが弁閉状態に移行してしまうことを防止するようにしている。
【0031】
再度、
図1を参照する。
図1に示す演算表示部43は、劣化判断ユニット42の外壁部分(バイパス流路46に相当する部位の外壁部分)に取り付けられ、圧力センサ47からの信号を入力する。圧力センサ47からの信号を入力した演算表示部43は、この信号に基づいてバイパス流路46内のガス圧力を検出する。よって、圧力センサ47及び演算表示部43は、圧力検出手段として機能する。また、演算表示部43は、流量センサ49の計測基板によって算出された流量の信号を受信すると、この信号に基づいて微少漏洩が発生しているかを判断する機能も有している。
【0032】
さらに、本実施形態において演算表示部43は、一次及び二次調整器10,20の劣化を判断する3つの機能を有している。1つ目は調整圧力に基づく劣化判断機能であり、2つ目は閉塞圧力に基づく劣化判断機能であり、3つ目は圧力の変化の傾きΔP及び傾きΔPの腹圧(傾きΔが所定値以下となる場合であって、圧力の変化が小さくなり圧力が落ち着いた状態)までの時間trに基づく劣化判断機能である。以下、各劣化判断機能を説明する。
【0033】
1つ目の劣化判断機能を説明する。1つ目の劣化判断において演算表示部43は、まず、流量センサ49により検出されるガス流量が変化してから所定時間(例えば5分)後における圧力センサ47の信号から調整圧力値を検出する。次に、演算表示部43は、この調整圧力値が所定範囲(例えば2.3〜3.3kPa)外であるか判断する。所定範囲外である場合、演算表示部43はカウンタをインクリメントする。なお、1日に2回以上、所定範囲外の調整圧力値が得られても、1回とカウントする。次いで、演算表示部43は、カウンタのカウント数が所定日数(例えば30日)で特定値(例えば15)以上となったかを判断する。そして、演算表示部43は、所定日数で特定値以上となったと判断した場合に、一次及び二次調整器10,20の少なくとも一方が劣化していると判断し、警告表示を行う。
【0034】
また、2つ目の劣化判断機能において演算表示部43は、所定流量以下のガス器具を所定時間(例えば5分)以上使用した後に、ガスの使用を停止したときにおける圧力センサ47の信号から閉塞圧力値を検出する。次に、演算表示部43は、この閉塞圧力値が所定圧力(例えば3.5kPa)以上であるかを判断する。所定圧力以上である場合、演算表示部43はカウンタをインクリメントする。そして、演算表示部43は、カウンタのカウント数が特定値(例えば15)以上となった場合に、一次及び二次調整器10,20の少なくとも一方が劣化していると判断し、警告表示を行う。
【0035】
1つ目及び2つ目の劣化判断機能は、単に圧力値から劣化を判断している。ここで、劣化初期の圧力調整器は、粘度の高い油分の付着や錆等によって動きが鈍くなっているが、最終的な圧力値は正常な値を示す傾向にある。このため、1つ目及び2つ目の劣化判断機能では、初期劣化を判断できず、劣化判断が遅れてしまう。そこで、本実施形態では3つ目の劣化判断機能を搭載している。
【0036】
3つ目の劣化判断機能は、圧力の変化の傾きΔP及び傾きΔPの腹圧に基づく劣化判断機能である。まず、劣化初期の圧力調整器は、粘度の高い油分の付着や錆等によって圧力調整器の動き(ダイヤフラム及びダイヤフラムに連動して動く可動部の動き)が鈍くなっている。このため、劣化初期の圧力調整器は、最終的な圧力値が正常な値を示す傾向にあるものの、動きが鈍くなっていることから、最終的な圧力値に落ち着くまでの圧力調整器の挙動が正常時と比べて変化する(遅れる)傾向にある。よって、最終的な圧力値に落ち着くまでの挙動を示す測定値(すなわち圧力の変化の傾きΔPや傾きΔPが腹圧するまでの時間tr)に基づいて、粘度の高い油分の付着や錆等によって動きが鈍くなる初期状態の劣化を判断することが可能となる。演算表示部43は、圧力の変化の傾きΔPや傾きΔPが腹圧するまでの時間trと正常範囲とを比較し、正常範囲外であるときに初期劣化を判断し、警告表示を行うこととなる。
【0037】
図4は、本実施形態に係る劣化判断の動作を示すタイミングチャートであって、(a)は圧力低下時を示し、(b)は圧力上昇時を示している。
【0038】
まず、
図4(a)に示すように、時刻0において圧力P1となっているとする。また、時刻T11,T12に示すように圧力センサ47は、例えば15分間隔、又は50回/1日の頻度での計測間隔で圧力の通常計測を行っている。また、流量センサ49は、2秒に1回の計測間隔で流量計測を行っており、圧力の計測間隔よりも短くなっている。
【0039】
このような状態から例えば時刻T13において需要者側により燃料ガスの使用が開始され、又は使用中の燃料ガスの使用量が増加したとする。これにより、バイパス流路46内のガス圧力は低下し始める。さらに、時刻T14において演算表示部43は、流量センサ49からの流量信号に基づいて流量の変化があったと判断する。より詳細には、演算表示部43は、流量無しの状態から流量有りの状態に変化した場合、又は、流量が所定%(例えば5%)以上増加した場合に、流量の変化があったと判断する。
【0040】
演算表示部43は、流量の変化があったと判断した後に(時刻T14の後に)、圧力センサ47による計測の間隔を短くして高速計測を行う。このとき演算表示部43は、例えば圧力の計測間隔を流量の計測間隔よりも短い0.5秒に1回とする。
【0041】
その後、演算表示部43は、圧力変化の傾きΔPを順次算出していき、傾きΔPが腹圧するまで、高速計測を継続する。ここで、傾きΔPが腹圧とは、傾きΔPが所定値以下となることをいい、圧力変化が小さくなって圧力が落ち着いた状態をいう。本実施形態においては圧力P2で腹圧状態となっている。
【0042】
傾きΔPが腹圧すると、演算表示部43は、例えば順次算出した傾きΔPの平均値や中央値や最頻値などの代表値を算出すると共に、傾きΔPが腹圧するまでの時間trを算出する。なお、
図4(a)に示す例において、傾きΔPが腹圧するまでの時間trは、流量の変化があったと判断された時刻T14から、傾きΔPが所定値以下となった時刻T15までの時間をいう。
【0043】
そして、演算表示部43は、算出した傾きΔPの代表値と、傾きΔPが腹圧するまでの時間trとが正常範囲内であるかを判断する。次いで、演算表示部43は、正常範囲内でないと判断した回数や頻度に基づいて、一次及び二次調整器10,20の少なくとも一方が劣化していると判断し、警告表示を行う。
【0044】
また、
図4(b)に示す場合も同様である。
図4(b)に示すように、時刻0において圧力P3となっており、時刻T21,T22に示すように圧力センサ47は圧力の通常計測を行っている。流量センサ49は、2秒に1回の計測間隔で流量計測を行っている。
【0045】
このような状態から例えば時刻T23において需要者側により燃料ガスの使用が停止され、又は使用中の燃料ガスの使用量が流量ゼロを超える範囲内で減少したとする。これにより、バイパス流路46内のガス圧力は上昇し始める。そして、時刻T24において演算表示部43は、流量センサ49からの流量信号に基づいて流量の変化があったと判断する。より詳細には、演算表示部43は、流量有りの状態から流量無しの状態に変化した場合、又は、流量がゼロを超える範囲において所定%(例えば5%)以上減少した場合に、流量の変化があったと判断する。
【0046】
演算表示部43は、流量の変化があったと判断した後に(時刻T24の後に)、圧力センサ47の高速計測を行い、圧力変化の傾きΔPの平均値や中央値や最頻値などの代表値を算出すると共に、傾きΔPが腹圧するまでの時間trを算出する。なお、
図4(b)に示す例においては圧力P4において腹圧状態となっている。また、傾きΔPが腹圧するまでの時間trは、
図4(a)に示したものと同様に、流量の変化があったと判断された時刻T24から、傾きΔPが所定値以下となった時刻T25までの時間をいう。
【0047】
そして、演算表示部43は、算出した傾きΔPの代表値と、傾きΔPが腹圧するまでの時間trとが正常範囲内であるかを判断し、正常範囲内でないと判断した回数や頻度に基づいて、一次及び二次調整器10,20の少なくとも一方の劣化を判断して、警告表示を行う。
【0048】
ここで、本件発明者は、
図4(a)及び
図4(b)に示す腹圧までの時間trについて以下を見出した。すなわち、流量がゼロを超える範囲において流量が所定%(5%)以上増減した場合には、流量有りから無し及び流量無しから有りへの変化があった場合よりも、腹圧までの時間trが短くなる傾向にあることを見出した。よって、流量がゼロを超える範囲において流量が所定%(5%)以上増減した場合に、圧力の変化の傾きΔPや腹圧までの時間trを計測し、これに基づいて劣化判断することで、比較的短時間の監視による劣化判断を可能とすることができるといえる。
【0049】
次に、本実施形態に係る一次及び二次調整器10,20の劣化判断方法を説明する。
図5は、本実施形態に係る劣化判断方法を示すフローチャートである。
【0050】
図5に示すように、まず演算表示部43は、流量センサ49からの流量信号に基づいてバイパス流路46を流れる燃料ガスの流量を計測する(S1)。次いで、演算表示部43は、バイパス流路46を流れる燃料ガスの流量に変化があったかを判断する(S2)。ここでの変化とは、流量有りから無し又は流量無しから有りへの変化、及び、流量がゼロを超える範囲での所定%以上の増減をいう。なお、本実施形態においてバイパス流路46には、設定流量未満の流量の燃料ガスが流れることから、上記の流量の変化は、設定流量未満における流量の変化である。
【0051】
燃料ガスの流量に変化がなかったと判断した場合(S2:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、燃料ガスの流量に変化があったと判断した場合(S2:YES)、演算表示部43は、バイパス流路46内のガス圧力の高速計測を行う(S3)。次いで、演算表示部43は、傾きΔPの腹圧を検出すると圧力の変化の傾きΔPの代表値や傾きΔPの腹圧までの時間trを算出すると共に(S4)、高速計測を終了して通常計測に移行する(S5)。
【0052】
次に、演算表示部43は、一次及び二次調整器10,20の初回の計測であるかを判断する(S6)。ここで、初回の計測とは、ガス供給システム1が初めて使用されたときの計測や、一次及び二次調整器10,20の少なくとも一方が取り換えられてから初めて燃料ガスが使用されたときの計測である。
【0053】
初回の計測であると判断した場合(S6:YES)、演算表示部43は、ステップS4の算出結果に基づいて正常範囲を設定し、これをメモリに記憶させる(S7)。そして、処理はステップS1に移行する。この際、演算表示部43は、例えばステップS4にて算出された圧力の変化の傾きΔPの代表値や傾きΔPの腹圧までの時間trに、マージンを加味して正常範囲を設定し記憶させる。
【0054】
なお、ステップS6の処理は、初回であるかを判断するものであるが、これに限らず、初回から所定回数までについて「YES」と判断されるようにしてもよいし、ステップS7の処理は、初回から所定回数分の傾きΔP及び腹圧までの時間trに基づいて、正常範囲を設定するようにしてもよい。
【0055】
また、ステップS6において初回を判断するためには、例えばガス供給システム1の初めての使用前に、又は一次及び二次調整器10,20の少なくとも一方が取り換えられたときに、その旨の情報を演算表示部43に記憶させておく必要がある。このような情報については、例えば、演算表示部43を操作したり、専用機等によって有線又は無線によって演算表示部43に送信したりすることで、演算表示部43に記憶させることができる。
【0056】
加えて、正常範囲の情報については、予め演算表示部43に記憶されていてもよい。これにより、ステップS6,S7の処理を省略できるからである。
【0057】
ところで、ステップS6において初回の計測でないと判断した場合(S6:NO)、演算表示部43は、ステップS4にて算出された圧力の変化の傾きΔPの代表値や傾きΔPの腹圧までの時間trが正常範囲内であるかを判断する(S8)。正常範囲であると判断した場合(S8:YES)、処理はステップS1に移行する。
【0058】
一方、正常範囲でないと判断した場合(S8:NO)、演算表示部43は、劣化カウンタのカウント数Nの数値をインクリメントする(S9)。次いで、演算表示部43は劣化カウンタのカウント数Nが設定数以上となっているかを判断する(S10)。
【0059】
カウント数Nが設定数以上となっていないと判断した場合(S10:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、カウント数Nが設定数以上となっていると判断した場合(S10:YES)、演算表示部43は劣化警報を出力する(S11)。その後、
図5に示す処理は終了する。
【0060】
このようにして、本実施形態に係る劣化判断装置40及び劣化判断方法によれば、圧力の変化の傾きΔP及び圧力の変化の傾きΔPが所定値以下となるまでの時間trの少なくとも一方の測定値に基づいて、一次及び二次調整器10,20の劣化を判断する。ここで、本件発明者は、劣化初期の圧力調整器について以下の現象を見出した。すなわち、劣化初期の圧力調整器において、最終的な圧力値は正常範囲を示す傾向にあるものの、粘度の高い油分の付着や錆等によって圧力調整器の動きが鈍くなっていることを見出した。このため、圧力の変化の傾きや傾きが所定値以下となるまでの時間に基づき、最終的な圧力値に落ち着くまでの圧力調整器の挙動を観察することで、粘度の高い油分の付着や錆等によって動きが鈍くなる初期状態の劣化を判断でき、劣化判断までの期間の短縮化を図ることが可能な圧力調整器の劣化判断装置40及び方法を提供することができる。
【0061】
また、燃料ガスの流量変化が検出された場合、流量変化が検出される前よりも、圧力の計測間隔を短くする。このため、流量変化が検出されて圧力変化が発生するときに圧力の計測間隔を短くすることとなり、圧力変化の傾きΔP等をより正確に計測できるだけでなく、圧力変化の発生前において計測間隔を通常間隔にして省電力化に寄与することができる。
【0062】
また、本件発明者は、燃料ガスの流量がゼロからゼロを超える値になるとき、及び燃料ガスの流量がゼロを超える値からゼロになるときについては、圧力変化が落ち着くまでの時間が比較的長くなることを見出した。このため、流量がゼロを超える状態から所定%以上の流量の上昇、及び、燃料ガスの流量がゼロを超える範囲内での所定%以上の流量の減少の少なくとも一方があった場合の測定値に基づいて、一次及び二次調整器10,20の劣化を判断することで、比較的短時間の監視による劣化判断を可能とすることができる。
【0063】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0064】
例えば本実施形態に係る劣化判断装置40は、バイパス流路46内の燃料ガスの流量や圧力に基づいて、上流側の一次及び二次調整器10,20の劣化を判断しているが、これに限らず、メイン流路44内の燃料ガスの流量や圧力に基づいて劣化を判断するようにしてもよい。さらには、メイン流路44とバイパス流路46とのように分岐した流路を備えることなく、一次及び二次調整器10,20の下流側に設けられる1本の流路における燃料ガスの流量や圧力に基づいて劣化判断するようにしてもよい。さらには、劣化判断装置40の機能を搭載したマイコンガスメータなどにより、劣化判断するようにしてもよい。
【0065】
また、本実施形態に係る劣化判断装置40は、一次及び二次調整器10,20を備えるガス供給システム1に適用されているが、これに限らず、1つの圧力調整器のみを備えるガス供給システムに適用されてもよい。
【0066】
また、本実施形態に係る劣化判断装置40は、圧力の変化の傾きΔPの代表値及び傾きΔPが腹圧までの時間trとの双方に基づいて劣化判断しているが、これに限らず、いずれか一方のみによって劣化判断するようにしてもよい。また、劣化判断装置40及び方法は、圧力の変化の傾きΔPの代表値に限らず、算出した複数の傾きΔPのいずれか1つに基づいて劣化判断してもよいし、腹圧するまでの時間trにおける全体的な傾きΔPに基づいて劣化判断してもよい。
【0067】
さらに、
図4に示す例において傾きΔPの腹圧までの時間trは、時刻T14から時刻T15、又は時刻T24から時刻T25であるが、これに限らない。例えば、時間trは、流量の変化があったと判断された時刻T14,T24の1つ前の流量計測時点(すなわち時刻T14,T24−2秒)から、時刻T15,T25までの時間など、趣旨に反しない範囲において適宜変更可能である。
【0068】
本実施形態に係る劣化判断装置40は、圧力の上昇時及び低下時の双方の流量変化時における傾きΔP等に基づいて劣化判断しているが、これに限らず、圧力の上昇時又は低下時のいずれか一方のみの変化時における傾きΔP等に基づいて劣化判断してもよい。さらに、係る劣化判断装置40及び方法は、流量の所定%以上の増減時における傾きΔP等に基づいて劣化判断してもよいし、流量有りと無しとの変化時における傾きΔP等に基づいて劣化判断してもよい。
【0069】
さらに、本実施形態において劣化判断装置40は、流量式の微少漏洩の判断を行っているが、これに限らず、圧力式の微少漏洩の判断を行うようにしてもよい。
【0070】
また、本実施形態に係る劣化判断装置40は、接続配管30を介して二次調整器20と接続されており、二次調整器20と別体に構成されているが、特にこれに限らず、二次調整器20と同一筐体に収納されて一体とされてもよい。
【0071】
さらに、上記実施形態において劣化判断装置40は、メイン流路44の壁部44cがバイパス流路46の壁部と兼用されているが、これに限らず、メイン流路44とバイパス流路46とは壁部44cが兼用されることなく外壁同士が接触するようになっていてもよい。さらに、両者は近接状態で離間していてもよい。具体的に近接状態とは、両者の距離が、メイン流路44とバイパス流路46との外壁間の左右距離を加算したもの以下であったり、メイン流路44とバイパス流路46とのいずれか一方の外壁間の左右距離以下であったりする場合をいう。
【0072】
さらに、本実施形態に係る劣化判断装置40は、超音波式の流量センサ49を備えているが、これに限らず、フローセンサなどの他のタイプの流量センサが設けられていてもよい。また、本実施形態に係る劣化判断装置40は、下流側の微少漏洩の判断機能や、調整圧力に基づく劣化判断機能、及び閉塞圧力に基づく劣化判断機能を備えているが、これらのうち一部又は全部を備えないものであってもよい。