特許第6965100号(P6965100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965100
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】建物ユニットの外壁取付部の防水構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/66 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
   E04B1/66 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-206326(P2017-206326)
(22)【出願日】2017年10月25日
(65)【公開番号】特開2019-78087(P2019-78087A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】中村 稔
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−275775(JP,A)
【文献】 特開2017−180010(JP,A)
【文献】 特開2007−154445(JP,A)
【文献】 特開平09−118863(JP,A)
【文献】 特開2017−008581(JP,A)
【文献】 特開2006−097392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00−1/36
E04B 1/62−1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物ユニットの躯体フレームの屋外側に配置されると共に前記躯体フレームの外側面から前記屋外側へ向けて突出されたブラケットと、
前記建物ユニットの前記躯体フレームの前記屋外側に取り付けられる外壁と、
前記外壁に設けられ、前記建物ユニットに前記外壁が取り付けられる際に前記ブラケットが挿入される開口部と、
伸長可能な基材を用いて形成され、粘着層が設けられた前記基材の外周部が前記外壁の屋内側の面に接着され、前記開口部を覆って屋外から前記外壁の前記屋内側への水の浸入を防止する防水テープと、
を備え
前記防水テープは、前記開口部に挿入された前記ブラケットが当接する前記外周部の内側部分である中央部に、当該当接する部分と略同一形状を有する伸縮抑制フィルムが配置されることで構成されている建物ユニットの外壁取付部の防水構造。
【請求項2】
前記伸縮抑制フィルムには、熱可塑性樹脂が用いられる請求項1に記載の建物ユニットの外壁取付部の防水構造。
【請求項3】
前記防水テープの基材には、伸長可能なブチルテープが用いられる請求項1又は請求項2に記載の建物ユニットの外壁取付部の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物ユニットの外壁取付部の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、軽量気泡コンクリート製の外壁面材で覆われたユニット建物の外壁から突出するバルコニー、庇等の突出部を建物に取り付けるための取付部の防火構造が開示されている。この構造によれば、突出部は、取付強度を確保するために、取付部を介して建物の骨組みに直接取り付けられる。このため、外壁には、取付部を建物の屋外側に開放するための開口部が形成されると共に、取付部には、防火性を備えた外壁とは別個に防火構造が設けられている。
【0003】
具体的には、外壁面材と異なる材質の防火面材が、取付部に応じた形状の下地フレームを介して建物に取り付けられると共に、防火面材の屋外側の面が、複数枚のカバー面材で覆われることにより、取付部の防火構造が構成されている。これにより、防火性を確保したうえで、外壁面材の製造効率が損なわれず、かつ取付部の製造が容易に行えるため、建物ユニットの生産性を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−199707
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された取付部の防水構造は、カバー面材と防火面材との間にカバー面材の端縁に沿って防水テープが介装されると共に、取付部の外形に応じて組み付けられた下地フレームの端縁に沿って防水テープが接着されている。このように、防水テープを用いて防水処理を行うためには、防水テープをカバー面材及び下地フレームの端縁に沿って貼り付ける必要があるため作業が煩雑となる。そこで、コーキング処理により、開口部から屋外側へ向けて露出されたブラケットの外周部を防水処理することも考えられるが、コーキング処理には目地幅及び目地深さの管理が必要となるため、枠材を設けて、開口部の位置及び寸法の精度を厳密に管理する必要がある。さらに、前処理として、コーキングの剥離防止のための開口部周辺のプライマ処理及びコーキング処理を施さない部分の養生作業が必要となると共に、後処理として、コーキング処理後の乾燥に時間を要する。このため、コーキング処理による防水処理は、作業工数及びコストが増加する。このように、簡易な方法により防水処理を行うことができ、しかも作業工数の低減を図るためには、建物ユニットの外壁取付部の防水構造に改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、簡易な方法により確実に防水処理を行うことができ、しかも作業工数及びコストを低減することができる建物ユニットの外壁取付部の防水構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造は、建物ユニットの躯体フレームの屋外側に配置されると共に前記躯体フレームの外側面から前記屋外側へ向けて突出されたブラケットと、前記建物ユニットの前記躯体フレームの前記屋外側に取り付けられる外壁と、前記外壁に設けられ、前記建物ユニットに前記外壁が取り付けられる際に前記ブラケットが挿入される開口部と、伸長可能な基材を用いて形成され、粘着層が設けられた前記基材の外周部が前記外壁の屋内側の面に接着され、前記開口部を覆って屋外から前記外壁の前記屋内側への水の浸入を防止する防水テープと、を備えている。
【0008】
第1の態様に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造では、屋外から外壁の屋内側への水の浸入を防止するために防水テープが開口部を覆っている。防水テープは、伸長可能な基材を用いて形成され、粘着層が設けられた外周部が外壁の屋内側の面に接着されるため、外壁とブラケットとの間に隙間を作らない。これにより、外壁とブラケットとの隙間に沿った防水テープの接着が不要となり、建物ユニットの外壁取付部の防水処理を簡易に行うことができる。
【0009】
また、第1の態様によれば、防水テープは開口部を覆うように外壁の屋内側の面に接着されればよいため、建物ユニットへの外壁の取付け前に、開口部への枠材の配設並びに開口部の位置及び寸法の精度の管理が不要になると共にプライマ処理及び養生作業が不要になる。これに加えて、外壁を取り付けた後に、開口部周辺へのコーキング材の充填とその乾燥時間のように次の作業工程を実行するまでの待ち時間が発生しない。このように、簡易な方法により防水処理を行うことができ、しかも建物ユニットに外壁を取り付ける作業工数及びコストを低減することができる。
【0010】
さらに、第1の態様によれば、外壁の屋内側の面に接着された防水テープは、外壁の開口部に挿入されたブラケットによって屋外側へ向けて押し出される。この際、伸長可能な基材を用いて形成された防水テープは、ブラケットの形状に合わせて開口部から屋外側へ向けて伸長されるため、防水テープには過度に応力は発生しない。このため、防水テープは亀裂を生じることなく伸長されると共に防水テープの外周部と外壁との間に脆弱な部分を作らない。これにより、防水テープは、外壁に対する防水処理を確実にすることができる。
【0011】
第2の態様に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造は、第1の態様において、前記防水テープは、前記開口部に挿入された前記ブラケットが当接する前記外周部の内側部分である中央部に、当該当接する部分と略同一形状を有する伸縮抑制フィルムが配置されることで構成されている。
【0012】
第2の態様に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造によれば、開口部に挿入されたブラケットが当接する防水テープの外周部の内側部分である中央部には、当該当接する部分と略同一形状の伸縮抑制フィルムが配置されている。このため、ブラケットが開口部に挿入されて、防水テープが伸長されても、伸縮抑制フィルムが配置された中央部は伸長されない。このため、開口部が防水テープに覆われていることにより屋外側から直視することができないブラケットの位置を屋外側から確認することができる。これにより、外壁を建物ユニットに取り付ける際の位置合わせを容易にすることができる。
【0013】
第3の態様に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造は、第2の態様において、前記伸縮抑制フィルムには、熱可塑性樹脂が用いられる。
【0014】
第3の態様に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造によれば、伸縮抑制フィルムに熱可塑性樹脂が用いられているため、伸長可能な防水テープの基材と比較して引張に対する剛性を高くすることができる。このため、ブラケットが開口部に挿入された場合に、防水テープの中央部以外の部分は伸張されても、中央部は伸長されない。これにより、外壁を建物ユニットに取り付ける際の位置合わせを容易かつ確実にすることができる。
【0015】
第4の態様に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造は、第1の態様から第3の態様の何れか1つの態様において、前記防水テープには、基材に伸長可能なブチルテープが用いられる。
【0016】
第4の態様に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造によれば、防水テープの基材には、伸長可能なブチルテープが用いられているため、外壁に対する粘着力と耐候性能を十分に確保することができる。これにより、外壁に対する粘着力と屋外で使用された場合の耐久性を十分に確保したうえで防水テープの外壁に対する防水性能を安定して確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、第1の態様に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造は、簡易な方法により確実に防水処理を行うことができ、しかも作業工数及びコストを低減することができるという優れた効果を有する。
【0018】
第2の態様に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造は、外壁とブラケットの当接部との位置合わせを容易にすることができるという優れた効果を有する。
【0019】
第3の態様に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造は、外壁を建物ユニットに取り付ける際の位置合わせを容易かつ確実にすることができるという優れた効果を有する。
【0020】
第4の態様に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造は、外壁に対する粘着力と耐候性能を十分に確保したうえで防水テープの外壁に対する防水性能を安定して確保できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造を適用したユニット建物の一例であり、(A)はキープランを示す概略平面図であり、(B)は骨格を示す概略斜視図である。
図2図1のA線矢視部分での防水構造を、袖壁を取り除いた状態で屋外側から見た側面図である。
図3図2に示される3−3線に沿って外壁取付部の防水構造を建物水平方向に切断した状態を示す平面図である。
図4図3に示される4−4線に沿って外壁取付部の防水構造を建物上下方向に切断した状態を示す縦断面図である。
図5】本実施形態に係る防水テープを取り付けた外壁の建物の躯体フレームへの設置方法を示す外観斜視図である。
図6】本実施形態に係る建物ユニットの変形例のキープランを示す平面図である。
図7】本実施形態に係る建物ユニットの変形例の骨格を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1図5を用いて、本発明に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造の一実施形態について説明する。
【0023】
最初に、ユニット建物10及びこれを構成する建物ユニット12について概説する。
【0024】
図1(A)、(B)には、本実施形態に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造を適用したユニット建物10の概略図が示されている。これらの図に示されるように、ユニット建物10は、図示しない基礎上に複数個の建物ユニット12を据付けることにより構成された一階部分14と、一階部分14の建物ユニット12上に建物ユニット12を据付けることにより構成された二階部分16と、二階部分16の桁側の一つの建物ユニット12の上端部から張り出された庇18と、によって構成されている。
【0025】
上述したユニット建物10を構成する建物ユニット12は、直方体形状に組まれたラーメン構造の躯体フレーム20と、この躯体フレーム20の屋外側の側面に配設された外壁パネル22(図5参照)と、外壁パネル22の屋内側に配設された図示しない内壁パネルと、を含んで構成されている。
【0026】
躯体フレーム20は、四隅に立設された4本の柱24と、4本の柱24の上端部に接合されて天井面を構成する天井フレーム26と、4本の柱24の下端部に接合されて床面を構成する図示しない床フレームと、を含んで構成されている。柱24は、中空方形の断面形状とされた鋼管柱が用いられている。天井フレーム26は、長短二種類の天井大梁28、30と、桁側の天井大梁28間に所定の間隔で架け渡された複数の天井小梁(図示省略)とによって構成されている。床フレームも天井フレーム26と同様に構成されている。なお、図5では、柱24の上端部に天井大梁28の長手方向の端部と天井大梁30の長手方向の端部が隣合う二側面に接合されているが、実際には柱24の上端部は柱24から分離されて天井仕口とされている。床フレーム側も天井フレーム26側と同様に構成されている。
【0027】
一方、外壁パネル22は、出隅部に配置された柱24の廻りに配設された外壁としての第1外壁パネル(コーナーパネル)32と、この第1外壁パネル32に隣接して配設された第2外壁パネル(外周パネル)34と、を含んで構成されている。第1外壁パネル32は、平面視でL字状に形成された第1外壁材36と、この第1外壁材36の左右の両端部の裏面にそれぞれ配設された金属製かつL字状の第1外壁フレーム38と、を備えている。第1外壁フレーム38の立設面にはボルト挿通孔が形成されている。第2外壁パネル34は、平面視で直線状に形成された第2外壁材40と、この第2外壁材40の左右の両端部の裏面にそれぞれ配設された金属製かつコ字状の第2外壁フレーム42と、を備えている。第2外壁フレーム42には、第1外壁フレーム38のボルト挿通孔と同軸上にウエルドナット44が予め溶着されている。第2外壁パネル34は、第2外壁フレーム42を天井大梁28(又は天井大梁30)及び桁側の床大梁(又は妻側の床大梁)に取付けることにより、躯体フレーム20の側面に配設されている。一方、第1外壁パネル32は、第1外壁フレーム38を第2外壁フレーム42のウェブ面に当接させて、取付ボルト46をウエルドナット44に螺合させることにより、第2外壁パネル34に固定されている。
【0028】
上述したユニット建物10の二階部分16の建物ユニット12の上端部には、ロジアの一種である庇18が設けられている。以下、庇18と第1外壁パネル32との接続部(図1(A)、(B)のA線矢視部)の防水構造について詳細に説明する。
【0029】
図3図5に示されるように、柱24の上端部の屋外側の側面には、平面視でコ字状に形成されたブラケット50が溶接により固定されている。ブラケット50は、柱24の上端部の屋外側の側面に対して平行に配置された矩形平板状の頂部50Aと、頂部50Aの幅方向両端部から柱24側へ屈曲された左右一対の脚部50Bと、によって構成されている。頂部50Aの幅方向中間部には上下一対のボルト挿通孔52が形成されている。また、頂部50Aの裏面には、各ボルト挿通孔52と同軸上に上下一対のウエルドナット54が予め溶着されている。
【0030】
上述したように柱24の廻りには、平面視でL字状に形成された第1外壁パネル32が配設されている。第1外壁パネル32の第1外壁材36においてブラケット50と対向する位置には、ブラケット50よりも一回り大きい矩形状に形成された開口部56が形成されている。この開口部56内へ上述したブラケット50の頂部50A及び一対の脚部50Bの基端部以外の部分が挿入されている。なお、ブラケット50が開口部56内へ挿入された状態で、頂部50Aの端面が第1外壁材36の意匠面と略面一になるようにブラケット50の高さが決められている。
【0031】
上述したブラケット50の頂部50Aに、庇18が備える梁部材(広義には、「ロジア(天井)大梁」として把握される要素である。)60の基端部が締結固定されている。具体的には、梁部材60には溝形鋼が用いられており、その長手方向の一端部(開放部分)には、当該開放部分を塞ぐように矩形平板状のベースプレート62が溶接により取り付けられている。なお、ベースプレート62の長手方向寸法は、梁部材60の梁成よりも長く設定されている。このベースプレート62にも、上下一対のウエルドナット54と同軸上に図示しないボルト挿通孔が形成されている。そして、梁部材60側から取付ボルト64がベースプレート62のボルト挿通孔及びブラケット50の頂部50Aのボルト挿通孔52内へ挿入されてウエルドナット54に螺合されることにより、庇18の梁部材60の基端部がブラケット50の頂部50Aに締結固定されている。
【0032】
上述した庇18の梁部材60の基端部(ベースプレート62)とブラケット50の頂部50Aとの間には、防水テープ70が介在されている。防水テープ70は、開口部56よりも大きな矩形状に裁断されたブチルテープ72と、このブチルテープ72の中央部に配設された矩形状の伸縮抑制フィルム74と、によって構成されている。
【0033】
ブチルテープ72は止水性、伸縮性及び耐候性を有しており、防水テープ70の基材を構成している。また、ブチルテープ72は、屋外側の面70Aと屋内側の面70Bとを有しており、このうち屋外側の面には粘着層が設けられている。なお、本実施形態では、防水テープ70の基材としてブチルテープ72を用いたが、これに限らず、止水性、伸縮性、対候性及び(片面に)粘着性を有するシート材であれば適用可能である。
【0034】
一方、伸縮抑制フィルム74は、伸縮性を有さないか殆ど有さないフィルムによって構成されている。伸縮抑制フィルム74としては、例えばポリプロピレン樹脂やポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることが可能である。なお、本実施形態では、伸縮抑制フィルム74としてポリプロピレン樹脂やポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いたが、これに限らず、ブチルテープ72の中央部の伸縮抑制効果が得られるフィルム材であれば適用可能である。伸縮抑制フィルム74は、ブラケット50の頂部50Aと略同一の大きさを有している。
【0035】
上述したようにブチルテープ72の屋外側の面には粘着層が設けられており、その中央部に伸縮抑制フィルム74が貼り付けられている。これにより、中央部70Xに伸縮抑制フィルム74が配置されかつ外周部70Yに粘着層が設けられた防水テープ70が構成されている。なお、防水テープ70の中央部70Xには、前述したウエルドナット54と同軸上に上下一対のボルト挿通孔76が形成されている。
【0036】
上記構成の防水テープ70は、その外周部70Yが第1外壁パネル32の開口部56の周縁部に接着されている。これにより、開口部56は、防水テープ70によって塞がれている。庇18の梁部材60の基端部がブラケット50の頂部50Aに締結固定された状態では、ブラケット50が開口部56内へ挿入された際にブチルテープ72の外周部70Yが伸長されて、この外周部伸長状態でブラケット50の頂部50Aと梁部材60のベースプレート62との間に伸縮抑制フィルム74が介在(挟持)されて取付ボルト64がウエルドナット54に締結固定されている。
【0037】
(本実施形態の作用及び効果)
【0038】
次に、従来技術と対比しつつ本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0039】
従来技術のようにコーキング処理により防水処理を行う場合は、コーキング処理の前段取りとして、開口部56の木口へのプライマー処理(コーキングの剥離防止処理)及び養生作業が必要となるため、施工に手間がかかる。
【0040】
これに対し、本実施形態では、防水テープ70は、開口部56を覆うように第1外壁材36の屋内側の面に接着すればよいため、開口部56の木口へのプライマー処理及び養生作業が不要になる。しかも、防水テープ70はその片面に粘着層を有しているため、伸縮抑制フィルム74が配置された中央部70Xを除いた外周部70Yで第1外壁材36に接着することが可能である。このため、第1外壁材36に防水テープ70の貼り付け位置の位置出しをすることなく第1外壁材36に防水テープ70をワンタッチで貼り付けることができる。これにより、簡易に防水処理を行うことができる。
【0041】
また、コーキング処理の場合は、躯体フレーム20に第1外壁パネル32を取り付ける事前準備として、目地幅及び目地深さの管理が必要となるため、開口部56の位置及び寸法の精度並びに第1外壁パネル32の組付精度を厳密に管理する必要がある。さらに、コーキング処理をする前に、開口部56のプライマ処理(コーキングの剥離防止処理)及び養生作業が必要となる。
【0042】
これに対し、本実施形態によれば、第1外壁パネル32に設けられる開口部56は、ブラケット50を挿入することができればよいため、開口部56の位置及び寸法並びに第1外壁パネル32の組付精度に高い精度は要求されない。また、開口部56を介して第1外壁パネル32を躯体フレーム20に取り付ける際に、コーキング処理を行う場合のような施工管理は不要となる。さらに、躯体フレーム20に第1外壁材36を取り付ける前の開口部56周辺のプライマ処理及び養生作業が不要となる。
【0043】
さらに、コーキング処理の場合は、開口部56に第1外壁パネル32を取り付けた直後の処理として、開口部56周辺へのコーキング材の充填が必要になると共にコーキング材の乾燥に時間がかかるため、次の作業工程実施までのリードタイムが必要になる。
【0044】
これに対し、本実施形態では、防水テープ70が接着された開口部56にブラケット50を挿入するだけの構成であるため、第1外壁材36の取付け後に、開口部56の周辺へのコーキング材の充填等の作業が不要になる。さらに、コーキング材の乾燥時間のような次の作業工程までのリードタイムも発生しない。これにより、防水テープ70の貼り付けに係る作業工数だけでなく、躯体フレーム20に第1外壁材36を取り付ける前後の作業工数及びコストを低減することができる。
【0045】
また、本実施形態によると、第1外壁材36の開口部56を覆っている防水テープ70は、第1外壁材36の開口部56に挿入されたブラケット50によって屋外側へ押し出される。この際、ブチルテープ72の伸縮性により防水テープ70の外周部70Yが開口部56から屋外側へ向けて伸長されるため、防水テープ70には過度に応力が発生しない。このため、防水テープ70は亀裂を生じることなく伸長されると共に防水テープ70の外周部70Yと第1外壁材36との間に脆弱な部分が生じない。これにより、防水テープ70は、第1外壁材36とブラケット50との間を確実に防水することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、防水テープ70の中央部70Xには、ブラケット50の頂部50Aがブチルテープ72に当接する部分に当該当接する部分と略同一形状の伸縮抑制フィルム74が配置されている。このため、ブラケット50の頂部50Aと防水テープ70との位置合わせを容易に行うことができる。これにより、第1外壁パネル32の躯体フレーム20への取付けを容易にすることができる。
【0047】
また、伸縮抑制フィルム74が配置された中央部70Xは、開口部56にブラケット50が挿入されても伸長されないため、防水テープ70に形成されたボルト挿通孔76は、ブラケット50の開口部56への挿入後も、ボルト挿通孔76と対向した状態が保持されている。このため、屋外側から直接視認することができないブラケット50のボルト挿通孔52の位置を確実に把握することができる。これにより、庇18の梁部材60のブラケット50への取付けを容易に行うことができる。
【0048】
これに加えて、庇18の梁部材60とブラケット50とを締結している取付ボルト64は、ボルト挿通孔76を介してウエルドナット54に螺入されるため、防水テープ70によって、取付ボルト64とボルト挿通孔52の間の防水性能が向上する。
【0049】
以上を総括すると、本実施形態に係る建物ユニットの外壁取付部の防水構造によれば、簡易な方法により確実に防水処理を行うことができ、しかも作業工数及びコストを低減することができる。
【0050】
さらに、本実施形態によれば、防水テープ70の中央部70Xを形成する伸縮抑制フィルム74には、熱可塑性樹脂が用いられているため、防水テープ70の基材であるブチルテープ72と比較して引張に対する剛性を高くすることができる。このため、ブラケット50が開口部56に挿入された場合に、中央部70X以外の部分は伸長されても、中央部70Xは伸長されない。これにより、第1外壁パネル32の躯体フレーム20への取り付けを容易かつ確実にすることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、防水テープ70の基材として用いられている伸長可能なブチルテープ72は、粘着力と耐候性能を十分に有している。このため、第1外壁材36に対する粘着力と屋外で使用された場合の耐久性を十分に確保したうえで防水テープ70の第1外壁材36に対する防水性能を安定して確保することができる。
【0052】
なお、上述した本実施形態は、ユニット建物10の二階部分16の第1外壁パネル32及び第2外壁パネル34に、庇18を取り付ける場合の防水構造として説明したが、これに限らず、一階部分14の第1外壁パネル32及び第2外壁パネル34に本発明を適用してもよいし、セットバック部を利用したロジア部80(図6のB線矢視部参照)及びバルコニー部90(図7のC線矢視部参照)等をユニット建物の外壁部に取り付ける場合の防水構造に本発明を適用してもよい。
【0053】
また、上述した本実施形態は、ブラケット50は、躯体フレーム20の柱24に配置されると共に第1外壁パネル32の第1外壁材36に設けられた開口部56に挿入されるものとして説明したが、これに限らず、天井大梁28、30又は床大梁に配置されると共に第2外壁パネルの外壁材に設けられた開口部にブラケットを挿入するようにしてもよい。
【0054】
さらに、上述した本実施形態では、ブチルテープ72の中央部に伸縮抑制フィルム74を貼り付けることで防水テープ70を構成したが、これに限らず、伸縮抑制フィルム74は省略してもよい。この場合、防水テープの中央部がブラケットに押された際に伸長するため、予めボルト挿通孔を形成してもブラケットのボルト挿通孔とはずれてしまう。このため、この態様によると、施工性が多少下がるものの、ブチルテープは存在するため、防水性能は確保される。
【符号の説明】
【0055】
12 建物ユニット
20 躯体フレーム
32 第1外壁パネル(外壁)
50 ブラケット
56 開口部
70 防水テープ
70X 中央部
70Y 外周部
72 ブチルテープ
74 伸縮抑制フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7