(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予め規定されたサンプリング周期で測定された複数の測定値が記録されている波形データに基づき、当該波形データの信号波形に放電波形成分が含まれているか否かを特定するための放電有無特定用データを生成する処理部を備えたデータ処理装置であって、
前記処理部は、前記放電波形成分が含まれているか否かの特定の基準となる測定値範囲の測定値範囲データと、当該測定値範囲との対比によって前記放電波形成分が含まれているか否かを特定可能な比較値データとを前記波形データに基づいて生成し、生成した当該測定値範囲データおよび当該比較値データを含めて前記放電有無特定用データを生成する処理において、
前記波形データの前記各測定値のなかから連続するNサンプリング内(Nは、予め規定された2以上の自然数)の変化量が予め規定された量以上の第1の値を抽出して第1のデータを生成する第1の処理と、
前記波形データの前記各測定値を、対象の当該測定値を含んで連続するMサンプリング分(Mは、予め規定された2以上の自然数)の当該測定値を平均化した第2の値にそれぞれ置き換えて第2のデータを生成する第2の処理と、
前記第2のデータの前記各第2の値のなかから前記連続するNサンプリング内の変化量が前記予め規定された量以上の第3の値を抽出して第3のデータを生成する第3の処理と、
前記第3のデータの前記各第3の値を絶対値化した第4の値を演算して第4のデータを生成する第4の処理と、
前記波形データの前記各測定値を、対象の当該測定値を含んで連続するLサンプリング分(Lは、予め規定された2以上の自然数)の当該測定値を平均化した値に置き換えると共に置換え後の当該測定値を微分した第5の値を演算して第5のデータを生成する第5の処理と、
前記第5のデータの前記各第5の値を微分した第6の値を演算して第6のデータを生成する第6の処理と、
前記第6のデータの前記各第6の値の絶対値を正規化した第7の値を演算して第7のデータを生成する第7の処理と、
前記第1のデータの前記各第1の値を絶対値化した第8の値を演算して第8のデータを生成する第8の処理と、
2次元グラフの縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方に前記第4のデータの前記各第4の値を対応させると共に当該2次元グラフの縦軸および横軸の他方に当該各第4の値のサンプリングタイミングに対応する前記第7のデータの前記各第7の値を対応させて当該第4の値および当該第7の値の第1の対応点を当該2次元グラフ上にそれぞれプロットする第9の処理と、
前記2次元グラフの前記縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方に前記第8のデータの前記各第8の値を対応させると共に当該2次元グラフの前記縦軸および横軸の他方に当該各第8の値のサンプリングタイミングに対応する前記第7のデータの前記各第7の値を対応させて当該第8の値および当該第7の値の第2の対応点を当該2次元グラフ上にそれぞれプロットしたときに前記放電波形成分の前記測定値に対応する当該第2の対応点がプロットされない第1の判定領域、および当該放電波形成分の当該測定値に対応する当該第2の対応点がプロットされる第2の判定領域の少なくとも一方の領域を、当該2次元グラフ上の前記各第1の対応点の配置に基づいて予め規定された領域規定手順に従って当該2次元グラフ上に前記測定値範囲として規定する第10の処理とを実行し、
前記第10の処理によって規定した前記少なくとも一方の領域を特定可能な領域データを前記測定値範囲データとし、かつ、前記第7のデータおよび前記第8のデータを前記比較値データとして前記放電有無特定用データを生成するデータ処理装置。
前記処理部は、前記第9の処理に先立ち、前記第5のデータの前記各第5の値の絶対値を最大値が1となるように正規化した第9の値を演算して第9のデータを生成すると共に、当該第9のデータの当該各第9の値に係数Ka(Kaは、予め規定された1以下の正数)を乗じた値と、当該各第9の値のサンプリングタイミングに対応する前記第7のデータの前記各第7の値とのいずれか大きい一方を新たな第7の値として新たな前記第7のデータを生成する第11の処理を実行する請求項1記載のデータ処理装置。
前記処理部は、前記第9の処理に先立ち、前記第7のデータの前記各第7の値を、対象の当該第7の値に対してJaサンプリング前(Jaは、予め規定された任意の自然数)の当該第7の値から当該対象の第7の値までの(Ja+1)個の当該第7の値、および当該対象の第7の値から当該対象の第7の値に対してJbサンプリング後(Jbは、予め規定された任意の自然数)の当該第7の値までの(Jb+1)個の当該第7の値の少なくとも一方を含む予め規定されたJc個(Jcは、予め規定された2以上の自然数)の当該第7の値のうちの最大値にそれぞれ置き換えて新たな前記第7のデータを生成する第12の処理を実行する請求項1記載のデータ処理装置。
前記処理部は、前記第9の処理に先立ち、前記第7のデータの前記各第7の値のうち、Iサンプリング前(Iは、予め規定された任意の自然数)の当該第7の値よりも小さい当該第7の値を、当該Iサンプリング前の第7の値よりも小さい当該第7の値と、当該Iサンプリング前の第7の値に係数Kb(Kbは、予め規定された1以下の正数)を乗じた第10の値とのいずれか大きい一方に置き換えて新たな前記第7のデータを生成する第13の処理を実行する請求項1記載のデータ処理装置。
前記処理部は、前記第9の処理に先立ち、前記第7のデータの前記各第7の値のうちの最大値に対応する前記測定値よりも後にサンプリングされた前記測定値に対応する当該第7の値を、対象の当該第7の値に対してHaサンプリング前(Haは、予め規定された任意の自然数)の当該第7の値が、当該対象の当該第7の値を含んで連続するHbサンプリング分(Hbは、予め規定された2以上の自然数)の当該第7の値を平均化した値に係数Kc(Kcは、予め規定された任意の正数)を乗じた第11の値以下のときに、当該対象の第7の値と、前記Haサンプリング前の第7の値に予め規定された係数Kd(Kdは、Kcよりも大きい予め規定された任意の正数)を乗じた第12の値とのいずれか小さい一方に置き換えて新たな前記第7のデータを生成する第14の処理を実行する請求項1から4のいずれかに記載のデータ処理装置。
前記処理部は、前記第14の処理において、前記Haサンプリング前の第7の値が、前記Hbサンプリング分の第7の値を平均化した値に係数Ke(Keは、予め規定された任意の正数)を乗じた第13の値よりも小さいときに、当該対象の第7の値を当該第13の値に置き換える請求項5記載のデータ処理装置。
前記処理部は、前記第9の処理に先立ち、前記第7のデータの前記各第7の値のうちの最大値に対応する前記測定値よりも前にサンプリングされた前記測定値に対応する当該第7の値を、対象の当該第7の値と、当該対象の第7の値に対してHcサンプリング前(Hcは、予め規定された任意の自然数)の当該第7の値に係数Kf(Keは、予め規定された任意の正数)を乗じた第14の値とのいずれか大きい一方に置き換えて新たな前記第7のデータを生成する第15の処理を実行する請求項1から6のいずれかに記載のデータ処理装置。
前記処理部は、前記第15の処理において、前記対象の第7の値および前記第14の値の双方が、当該対象の第7の値を含んで連続するHdサンプリング分(Hdは、予め規定された2以上の自然数)の当該第7の値を平均化した値に係数Kg(Kgは、予め規定された任意の正数)を乗じた第15の値よりも小さいときに、当該対象の第7の値を当該第15の値に置き換える請求項7記載のデータ処理装置。
前記処理部は、前記第10の処理において、前記2次元グラフの原点を通過する前記各第1の対応点の回帰直線を特定し、特定した当該回帰直線における当該2次元グラフの前記縦軸および横軸の他方の値が1のときの当該2次元グラフの前記縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方の値を第16の値として特定し、かつ、当該2次元グラフの原点、当該予め規定された一方の値が当該第16の値で当該他方の値が1の第1の点、および当該予め規定された一方の値が0で当該他方の値が1の第2の点の3点を頂点とする三角形領域を特定すると共に、特定した当該三角形領域に基づいて前記少なくとも一方の領域を規定する請求項1から8のいずれかに記載のデータ処理装置。
前記処理部は、前記2次元グラフの前記縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方に前記第1のデータの前記各第1の値を対応させると共に当該2次元グラフの前記縦軸および横軸の他方に当該各第1の値のサンプリングタイミングに対応する前記第7のデータの前記各第7の値を対応させて当該第1の値および当該第7の値の第3の対応点を当該2次元グラフ上にそれぞれプロットすると共に、前記縦軸および横軸の他方の値が「0.5」以下の予め規定された第17の値以下である前記第3の対応点を抽出し、抽出した前記各第3の対応点における前記縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方の値の標準偏差nσ(nは、予め規定された任意の自然数)を演算すると共に、前記原点、前記第1の点、前記予め規定された一方の値が前記標準偏差nσと前記第16の値との和で前記他方の値が1の第3の点、および当該予め規定された一方の値が当該標準偏差nσで当該他方の値が0の第4の点の4点を頂点とする第1の矩形領域を特定し、特定した当該第1の矩形領域および前記三角形領域に基づいて前記少なくとも一方の領域を規定する請求項9記載のデータ処理装置。
前記処理部は、前記第10の処理において、すべての前記第1の対応点が含まれる最小の方形領域を特定すると共に、特定した当該方形領域に基づいて前記少なくとも一方の領域を規定する請求項1から8のいずれかに記載のデータ処理装置。
前記処理部は、前記放電有無特定用データに基づき、前記第2の対応点と前記少なくとも一方の領域との位置関係を特定して前記波形データの信号波形に前記放電波形成分が含まれているか否かを判定する判定処理を実行し、当該判定処理の判定結果を特定可能な判定結果データを生成する請求項1から11のいずれかに記載のデータ処理装置。
前記処理部は、前記第1の判定領域を前記少なくとも一方の領域とするときには前記第2の対応点の総数に占める当該第1の判定領域に含まれない当該第2の対応点の割合を特定すると共に、前記第2の判定領域を当該少なくとも一方の領域とするときには当該第2の対応点の総数に占める当該第2の判定領域に含まれる当該第2の対応点の割合を特定し、特定した割合が予め規定された割合以上のときに、予め規定された報知処理を実行する請求項12記載のデータ処理装置。
前記処理部は、前記2次元グラフを前記縦軸および横軸の他方の方向でGa個(Gaは、予め規定された2以上の自然数)に分割したGa個の第2の矩形領域を特定し、前記第1の判定領域を当該少なくとも一方の領域とするときには当該第1の判定領域以外の領域に当該第2の対応点が含まれている当該第2の矩形領域の数を特定すると共に、前記第2の判定領域を前記少なくとも一方の領域とするときには当該第2の判定領域に当該第2の対応点が含まれている前記第2の矩形領域の数を特定し、特定した数が予め規定された数以上のときに、予め規定された報知処理を実行する請求項12記載のデータ処理装置。
前記処理部は、前記第2の対応点をプロットした前記2次元グラフと前記少なくとも一方の領域を示す領域表示とを前記判定処理の判定結果と共に表示部に表示させる請求項12から14のいずれかに記載のデータ処理装置。
予め規定されたサンプリング周期で測定された複数の測定値が記録されている波形データに基づき、当該波形データの信号波形に放電波形成分が含まれているか否かを特定するための放電有無特定用データを生成する処理をデータ処理装置の処理部に実行させるデータ処理用プログラムであって、
前記放電波形成分が含まれているか否かの特定の基準となる測定値範囲の測定値範囲データと、当該測定値範囲との対比によって前記放電波形成分が含まれているか否かを特定可能な比較値データとを前記波形データに基づいて生成し、生成した当該測定値範囲データおよび当該比較値データを含めて前記放電有無特定用データを生成する処理において、
前記波形データの前記各測定値のなかから連続するNサンプリング内(Nは、予め規定された2以上の自然数)の変化量が予め規定された量以上の第1の値を抽出して第1のデータを生成する第1の処理と、
前記波形データの前記各測定値を、対象の当該測定値を含んで連続するMサンプリング分(Mは、予め規定された2以上の自然数)の当該測定値を平均化した第2の値にそれぞれ置き換えて第2のデータを生成する第2の処理と、
前記第2のデータの前記各第2の値のなかから前記連続するNサンプリング内の変化量が前記予め規定された量以上の第3の値を抽出して第3のデータを生成する第3の処理と、
前記第3のデータの前記各第3の値を絶対値化した第4の値を演算して第4のデータを生成する第4の処理と、
前記波形データの前記各測定値を、対象の当該測定値を含んで連続するLサンプリング分(Lは、予め規定された2以上の自然数)の当該測定値を平均化した値に置き換えると共に置換え後の当該測定値を微分した第5の値を演算して第5のデータを生成する第5の処理と、
前記第5のデータの前記各第5の値を微分した第6の値を演算して第6のデータを生成する第6の処理と、
前記第6のデータの前記各第6の値の絶対値を正規化した第7の値を演算して第7のデータを生成する第7の処理と、
前記第1のデータの前記各第1の値を絶対値化した第8の値を演算して第8のデータを生成する第8の処理と、
2次元グラフの縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方に前記第4のデータの前記各第4の値を対応させると共に当該2次元グラフの縦軸および横軸の他方に当該各第4の値のサンプリングタイミングに対応する前記第7のデータの前記各第7の値を対応させて当該第4の値および当該第7の値の第1の対応点を当該2次元グラフ上にそれぞれプロットする第9の処理と、
前記2次元グラフの前記縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方に前記第8のデータの前記各第8の値を対応させると共に当該2次元グラフの前記縦軸および横軸の他方に当該各第8の値のサンプリングタイミングに対応する前記第7のデータの前記各第7の値を対応させて当該第8の値および当該第7の値の第2の対応点を当該2次元グラフ上にそれぞれプロットしたときに前記放電波形成分の前記測定値に対応する当該第2の対応点がプロットされない第1の判定領域、および当該放電波形成分の当該測定値に対応する当該第2の対応点がプロットされる第2の判定領域の少なくとも一方の領域を、当該2次元グラフ上の前記各第1の対応点の配置に基づいて予め規定された領域規定手順に従って当該2次元グラフ上に前記測定値範囲として規定する第10の処理とを前記処理部に実行させると共に、
前記第10の処理によって規定した前記少なくとも一方の領域を特定可能な領域データを前記測定値範囲データとし、かつ、前記第7のデータおよび前記第8のデータを前記比較値データとして前記放電有無特定用データを生成させる処理を前記処理部に実行させるデータ処理用プログラム。
前記放電有無特定用データに基づき、前記第2の対応点が前記少なくとも一方の領域に含まれているか否かを判別して前記波形データの信号波形に前記放電波形成分が含まれているか否かを判定する判定処理、および当該判定処理の判定結果を特定可能な判定結果データを生成する処理を前記処理部に実行させる請求項17記載のデータ処理用プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の特許文献に開示の試験装置および試験方法には、以下のような問題点が存在する。具体的には、上記特許文献に開示の試験装置および試験方法では、測定結果の変動幅の大きさに基づいて被測定コイルに「レアーショート不良」が生じているか否かを判定する構成が採用されている。
【0005】
この場合、この種の装置・方法による前述のような試験(測定)に際しては、測定対象や測定装置の温度、および測定装置に対して供給される電力の状態などの測定環境の変化に起因して測定結果にばらつきが生じることがある。このため、1つの測定対象に対する測定処理を複数回に亘って行ったときに、各測定処理毎の測定環境が相違する状態となって各測定処理毎の測定結果にばらつきが生じることがある。この結果、上記の特許文献に開示の試験装置および試験方法では、実際には「レアーショート不良」が生じていないにもかかわらず、測定環境の変化に起因して測定結果の変動幅が規定値を超えて、「レアーショート不良」が生じていると誤判定されるおそれがある。
【0006】
この場合、複数回の測定処理における測定結果の変動幅に基づく判定に代えて、「コイル巻数不良」の試験方法のように測定結果と基準値との差に基づいて「レアーショート不良」が生じているか否かを判定した場合においても、基準値を取得するための測定処理時と、良否判定対象の測定対象についての測定処理時とで測定環境が相違した場合には、測定結果が相違し、「レアーショート不良」の有無を誤判定するおそれがある。
【0007】
また、この種の装置・方法による前述のような試験(測定)においては、たとえ同種の測定対象(同じ型式の被測定コイル等)であっても、各個体毎に測定結果が僅かに相違するため、これらのばらつきを考慮した基準値を得るためには、複数個の良品の測定対象について複数回の測定処理を実行して最適値を特定する必要がある。この場合、複数個の良品の測定対象の個体差に起因する測定結果のばらつきの大きさが、1つの個体(いずれかの測定対象)に不良が生じているか否かによって生じる測定結果の相違量と同程度、或いはそれ以上となることもある。このため、正確な良否判定が可能な基準値の取得自体が困難となる。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、基準値を取得する処理を別途行うことなく測定対象の良否を正確に判定可能なデータを提供し得るデータ処理装置およびデータ処理用プログラム、並びにそのようなデータ処理装置を備えて構成された測定システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、請求項1記載のデータ処理装置は、予め規定されたサンプリング周期で測定された複数の測定値が記録されている波形データに基づき、当該波形データの信号波形に放電波形成分が含まれているか否かを特定するための放電有無特定用データを生成する処理部を備えたデータ処理装置であって、前記処理部は、前記放電波形成分が含まれているか否かの特定の基準となる測定値範囲の測定値範囲データと、当該測定値範囲との対比によって前記放電波形成分が含まれているか否かを特定可能な比較値データとを前記波形データに基づいて生成し、生成した当該測定値範囲データおよび当該比較値データを含めて前記放電有無特定用データを生成する
処理において、前記波形データの前記各測定値のなかから連続するNサンプリング内(Nは、予め規定された2以上の自然数)の変化量が予め規定された量以上の第1の値を抽出して第1のデータを生成する第1の処理と、前記波形データの前記各測定値を、対象の当該測定値を含んで連続するMサンプリング分(Mは、予め規定された2以上の自然数)の当該測定値を平均化した第2の値にそれぞれ置き換えて第2のデータを生成する第2の処理と、前記第2のデータの前記各第2の値のなかから前記連続するNサンプリング内の変化量が前記予め規定された量以上の第3の値を抽出して第3のデータを生成する第3の処理と、前記第3のデータの前記各第3の値を絶対値化した第4の値を演算して第4のデータを生成する第4の処理と、前記波形データの前記各測定値を、対象の当該測定値を含んで連続するLサンプリング分(Lは、予め規定された2以上の自然数)の当該測定値を平均化した値に置き換えると共に置換え後の当該測定値を微分した第5の値を演算して第5のデータを生成する第5の処理と、前記第5のデータの前記各第5の値を微分した第6の値を演算して第6のデータを生成する第6の処理と、前記第6のデータの前記各第6の値の絶対値を正規化した第7の値を演算して第7のデータを生成する第7の処理と、前記第1のデータの前記各第1の値を絶対値化した第8の値を演算して第8のデータを生成する第8の処理と、2次元グラフの縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方に前記第4のデータの前記各第4の値を対応させると共に当該2次元グラフの縦軸および横軸の他方に当該各第4の値のサンプリングタイミングに対応する前記第7のデータの前記各第7の値を対応させて当該第4の値および当該第7の値の第1の対応点を当該2次元グラフ上にそれぞれプロットする第9の処理と、前記2次元グラフの前記縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方に前記第8のデータの前記各第8の値を対応させると共に当該2次元グラフの前記縦軸および横軸の他方に当該各第8の値のサンプリングタイミングに対応する前記第7のデータの前記各第7の値を対応させて当該第8の値および当該第7の値の第2の対応点を当該2次元グラフ上にそれぞれプロットしたときに前記放電波形成分の前記測定値に対応する当該第2の対応点がプロットされない第1の判定領域、および当該放電波形成分の当該測定値に対応する当該第2の対応点がプロットされる第2の判定領域の少なくとも一方の領域を、当該2次元グラフ上の前記各第1の対応点の配置に基づいて予め規定された領域規定手順に従って当該2次元グラフ上に前記測定値範囲として規定する第10の処理とを実行し、前記第10の処理によって規定した前記少なくとも一方の領域を特定可能な領域データを前記測定値範囲データとし、かつ、前記第7のデータおよび前記第8のデータを前記比較値データとして前記放電有無特定用データを生成する。
【0011】
また、請求項
2記載のデータ処理装置は、請求項
1記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記第9の処理に先立ち、前記第5のデータの前記各第5の値の絶対値を最大値が1となるように正規化した第9の値を演算して第9のデータを生成すると共に、当該第9のデータの当該各第9の値に係数Ka(Kaは、予め規定された1以下の正数)を乗じた値と、当該各第9の値のサンプリングタイミングに対応する前記第7のデータの前記各第7の値とのいずれか大きい一方を新たな第7の値として新たな前記第7のデータを生成する第11の処理を実行する。
【0012】
また、請求項
3記載のデータ処理装置は、請求項
1記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記第9の処理に先立ち、前記第7のデータの前記各第7の値を、対象の当該第7の値に対してJaサンプリング前(Jaは、予め規定された任意の自然数)の当該第7の値から当該対象の第7の値までの(Ja+1)個の当該第7の値、および当該対象の第7の値から当該対象の第7の値に対してJbサンプリング後(Jbは、予め規定された任意の自然数)の当該第7の値までの(Jb+1)個の当該第7の値の少なくとも一方を含む予め規定されたJc個(Jcは、予め規定された2以上の自然数)の当該第7の値のうちの最大値にそれぞれ置き換えて新たな前記第7のデータを生成する第12の処理を実行する。
【0013】
また、請求項
4記載のデータ処理装置は、請求項
1記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記第9の処理に先立ち、前記第7のデータの前記各第7の値のうち、Iサンプリング前(Iは、予め規定された任意の自然数)の当該第7の値よりも小さい当該第7の値を、当該Iサンプリング前の第7の値よりも小さい当該第7の値と、当該Iサンプリング前の第7の値に係数Kb(Kbは、予め規定された1以下の正数)を乗じた第10の値とのいずれか大きい一方に置き換えて新たな前記第7のデータを生成する第13の処理を実行する。
【0014】
さらに、請求項
5記載のデータ処理装置は、請求項
1から
4のいずれかに記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記第9の処理に先立ち、前記第7のデータの前記各第7の値のうちの最大値に対応する前記測定値よりも後にサンプリングされた前記測定値に対応する当該第7の値を、対象の当該第7の値に対してHaサンプリング前(Haは、予め規定された任意の自然数)の当該第7の値が、当該対象の当該第7の値を含んで連続するHbサンプリング分(Hbは、予め規定された2以上の自然数)の当該第7の値を平均化した値に係数Kc(Kcは、予め規定された任意の正数)を乗じた第11の値以下のときに、当該対象の第7の値と、前記Haサンプリング前の第7の値に予め規定された係数Kd(Kdは、Kcよりも大きい予め規定された任意の正数)を乗じた第12の値とのいずれか小さい一方に置き換えて新たな前記第7のデータを生成する第14の処理を実行する。
【0015】
また、請求項
6記載のデータ処理装置は、請求項
5記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記第14の処理において、前記Haサンプリング前の第7の値が、前記Hbサンプリング分の第7の値を平均化した値に係数Ke(Keは、予め規定された任意の正数)を乗じた第13の値よりも小さいときに、当該対象の第7の値を当該第13の値に置き換える。
【0016】
さらに、請求項
7記載のデータ処理装置は、請求項
1から
6のいずれかに記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記第9の処理に先立ち、前記第7のデータの前記各第7の値のうちの最大値に対応する前記測定値よりも前にサンプリングされた前記測定値に対応する当該第7の値を、対象の当該第7の値と、当該対象の第7の値に対してHcサンプリング前(Hcは、予め規定された任意の自然数)の当該第7の値に係数Kf(Keは、予め規定された任意の正数)を乗じた第14の値とのいずれか大きい一方に置き換えて新たな前記第7のデータを生成する第15の処理を実行する。
【0017】
また、請求項
8記載のデータ処理装置は、請求項
7記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記第15の処理において、前記対象の第7の値および前記第14の値の双方が、当該対象の第7の値を含んで連続するHdサンプリング分(Hdは、予め規定された2以上の自然数)の当該第7の値を平均化した値に係数Kg(Kgは、予め規定された任意の正数)を乗じた第15の値よりも小さいときに、当該対象の第7の値を当該第15の値に置き換える。
【0018】
さらに、請求項
9記載のデータ処理装置は、請求項
1から
8のいずれかに記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記第10の処理において、前記2次元グラフの原点を通過する前記各第1の対応点の回帰直線を特定し、特定した当該回帰直線における当該2次元グラフの前記縦軸および横軸の他方の値が1のときの当該2次元グラフの前記縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方の値を第16の値として特定し、かつ、当該2次元グラフの原点、当該予め規定された一方の値が当該第16の値で当該他方の値が1の第1の点、および当該予め規定された一方の値が0で当該他方の値が1の第2の点の3点を頂点とする三角形領域を特定すると共に、特定した当該三角形領域に基づいて前記少なくとも一方の領域を規定する。
【0019】
また、請求項
10記載のデータ処理装置は、請求項
9記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記2次元グラフの前記縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方に前記第1のデータの前記各第1の値を対応させると共に当該2次元グラフの前記縦軸および横軸の他方に当該各第1の値のサンプリングタイミングに対応する前記第7のデータの前記各第7の値を対応させて当該第1の値および当該第7の値の第3の対応点を当該2次元グラフ上にそれぞれプロットすると共に、前記縦軸および横軸の他方の値が「0.5」以下の予め規定された第17の値以下である前記第3の対応点を抽出し、抽出した前記各第3の対応点における前記縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方の値の標準偏差nσ(nは、予め規定された任意の自然数)を演算すると共に、前記原点、前記第1の点、前記予め規定された一方の値が前記標準偏差nσと前記第16の値との和で前記他方の値が1の第3の点、および当該予め規定された一方の値が当該標準偏差nσで当該他方の値が0の第4の点の4点を頂点とする第1の矩形領域を特定し、特定した当該第1の矩形領域および前記三角形領域に基づいて前記少なくとも一方の領域を規定する。
【0020】
さらに、請求項
11記載のデータ処理装置は、請求項
1から
8のいずれかに記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記第10の処理において、すべての前記第1の対応点が含まれる最小の方形領域を特定すると共に、特定した当該方形領域に基づいて前記少なくとも一方の領域を規定する。
【0021】
さらに、請求項
12記載のデータ処理装置は、請求項
1から
11のいずれかに記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記放電有無特定用データに基づき、前記第2の対応点と前記少なくとも一方の領域との位置関係を特定して前記波形データの信号波形に前記放電波形成分が含まれているか否かを判定する判定処理を実行し、当該判定処理の判定結果を特定可能な判定結果データを生成する。
【0022】
また、請求項
13記載のデータ処理装置は、請求項
12記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記第1の判定領域を前記少なくとも一方の領域とするときには前記第2の対応点の総数に占める当該第1の判定領域に含まれない当該第2の対応点の割合を特定すると共に、前記第2の判定領域を当該少なくとも一方の領域とするときには当該第2の対応点の総数に占める当該第2の判定領域に含まれる当該第2の対応点の割合を特定し、特定した割合が予め規定された割合以上のときに、予め規定された報知処理を実行する。
【0023】
また、請求項
14記載のデータ処理装置は、請求項
12記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記2次元グラフを前記縦軸および横軸の他方の方向でGa個(Gaは、予め規定された2以上の自然数)に分割したGa個の第2の矩形領域を特定し、前記第1の判定領域を当該少なくとも一方の領域とするときには当該第1の判定領域以外の領域に当該第2の対応点が含まれている当該第2の矩形領域の数を特定すると共に、前記第2の判定領域を前記少なくとも一方の領域とするときには当該第2の判定領域に当該第2の対応点が含まれている前記第2の矩形領域の数を特定し、特定した数が予め規定された数以上のときに、予め規定された報知処理を実行する。
【0024】
さらに、請求項
15記載のデータ処理装置は、請求項
12から
14のいずれかに記載のデータ処理装置において、前記処理部は、前記第2の対応点をプロットした前記2次元グラフと前記少なくとも一方の領域を示す領域表示とを前記判定処理の判定結果と共に表示部に表示させる。
【0025】
また、請求項
16記載の測定システムは、請求項1から
15のいずれかに記載のデータ処理装置と、測定対象についての前記予め規定されたサンプリング周期での測定を実行して前記波形データを出力する測定装置とを備えて構成されている。
【0026】
また、請求項
17記載のデータ処理用プログラムは、予め規定されたサンプリング周期で測定された複数の測定値が記録されている波形データに基づき、当該波形データの信号波形に放電波形成分が含まれているか否かを特定するための放電有無特定用データを生成する処理をデータ処理装置の処理部に実行させるデータ処理用プログラムであって、前記放電波形成分が含まれているか否かの特定の基準となる測定値範囲の測定値範囲データと、当該測定値範囲との対比によって前記放電波形成分が含まれているか否かを特定可能な比較値データとを前記波形データに基づいて生成し、生成した当該測定値範囲データおよび当該比較値データを含めて前記放電有無特定用データを生成する処理
において、前記波形データの前記各測定値のなかから連続するNサンプリング内(Nは、予め規定された2以上の自然数)の変化量が予め規定された量以上の第1の値を抽出して第1のデータを生成する第1の処理と、前記波形データの前記各測定値を、対象の当該測定値を含んで連続するMサンプリング分(Mは、予め規定された2以上の自然数)の当該測定値を平均化した第2の値にそれぞれ置き換えて第2のデータを生成する第2の処理と、前記第2のデータの前記各第2の値のなかから前記連続するNサンプリング内の変化量が前記予め規定された量以上の第3の値を抽出して第3のデータを生成する第3の処理と、前記第3のデータの前記各第3の値を絶対値化した第4の値を演算して第4のデータを生成する第4の処理と、前記波形データの前記各測定値を、対象の当該測定値を含んで連続するLサンプリング分(Lは、予め規定された2以上の自然数)の当該測定値を平均化した値に置き換えると共に置換え後の当該測定値を微分した第5の値を演算して第5のデータを生成する第5の処理と、前記第5のデータの前記各第5の値を微分した第6の値を演算して第6のデータを生成する第6の処理と、前記第6のデータの前記各第6の値の絶対値を正規化した第7の値を演算して第7のデータを生成する第7の処理と、前記第1のデータの前記各第1の値を絶対値化した第8の値を演算して第8のデータを生成する第8の処理と、2次元グラフの縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方に前記第4のデータの前記各第4の値を対応させると共に当該2次元グラフの縦軸および横軸の他方に当該各第4の値のサンプリングタイミングに対応する前記第7のデータの前記各第7の値を対応させて当該第4の値および当該第7の値の第1の対応点を当該2次元グラフ上にそれぞれプロットする第9の処理と、前記2次元グラフの前記縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方に前記第8のデータの前記各第8の値を対応させると共に当該2次元グラフの前記縦軸および横軸の他方に当該各第8の値のサンプリングタイミングに対応する前記第7のデータの前記各第7の値を対応させて当該第8の値および当該第7の値の第2の対応点を当該2次元グラフ上にそれぞれプロットしたときに前記放電波形成分の前記測定値に対応する当該第2の対応点がプロットされない第1の判定領域、および当該放電波形成分の当該測定値に対応する当該第2の対応点がプロットされる第2の判定領域の少なくとも一方の領域を、当該2次元グラフ上の前記各第1の対応点の配置に基づいて予め規定された領域規定手順に従って当該2次元グラフ上に前記測定値範囲として規定する第10の処理とを前記処理部に実行させると共に、前記第10の処理によって規定した前記少なくとも一方の領域を特定可能な領域データを前記測定値範囲データとし、かつ、前記第7のデータおよび前記第8のデータを前記比較値データとして前記放電有無特定用データを生成させる処理を前記処理部に実行させる。
【0028】
さらに、請求項
18記載のデータ処理用プログラムは、請求項
17記載のデータ処理用プログラムにおいて、前記放電有無特定用データに基づき、前記第2の対応点が前記少なくとも一方の領域に含まれているか否かを判別して前記波形データの信号波形に前記放電波形成分が含まれているか否かを判定する判定処理、および当該判定処理の判定結果を特定可能な判定結果データを生成する処理を前記処理部に実行させる。
【発明の効果】
【0029】
請求項1記載のデータ処理装置では、処理部が、放電波形成分が含まれているか否かを特定する基準となる測定値範囲の測定値範囲データと、測定値範囲データとの対比によって放電波形成分が含まれているか否かを特定可能な比較値データとを波形データに基づいて生成し、生成した測定値範囲データおよび比較値データを含めて放電有無特定用データを生成する。具体的には
、処理部が、波形データを使用して第1の処理から第10の処理までの各処理を順次実行し、第10の処理によって規定した測定値範囲としての第1の判定領域および第2の判定領域の少なくとも一方の領域を特定可能な領域データを測定値範囲データとし、かつ第7の処理によって生成した第7のデータ、および第8の処理によって生成した第8のデータを比較値データとして放電有無特定用データを生成する。また、請求項
17記載のデータ処理用プログラムは、上記の各処理をデータ処理装置の処理部に実行させる。
【0030】
したがって、請求項
1記載のデータ処理装置、および請求項
17記載のデータ処理用プログラムによれば、測定対象について取得した1つの波形データに基づいて、放電波形成分が存在するか否かを判定するための領域データ(測定値範囲データ)と、領域データの判定領域(第1の判定領域および/または第2の判定領域:測定値範囲)との対比によって放電波形成分が存在するか否かを判定可能な第7のデータおよび第8のデータ(比較値データ)とを生成することができる。このため、複数回の測定処理が不要となり、複数の測定対象についての個体差の影響や、測定処理毎の測定環境の相違に起因する測定値のばらつきの影響を受けることがなくなるため、放電現象が発生しているか否かの判定精度を十分に向上させることができるだけでなく、判定用の基準値(閾値)を生成する処理を別個に行う必要もなくなることから、利用者の負担を十分に軽減することができる。
【0031】
請求項
2記載のデータ処理装置では、処理部が、第9の処理に先立ち、第5のデータの各第5の値の絶対値を最大値が1となるように正規化した第9の値を演算して第9のデータを生成すると共に、第9のデータの各第9の値に係数Kaを乗じた値と、各第9の値のサンプリングタイミングに対応する第7のデータの各第7の値とのいずれか大きい一方を新たな第7の値として新たな第7のデータを生成する第11の処理を実行する。
【0032】
また、請求項
3記載のデータ処理装置では、処理部が、第9の処理に先立ち、第7のデータの各第7の値を、対象の第7の値に対してJaサンプリング前の第7の値から対象の第7の値までの(Ja+1)個の第7の値、および対象の第7の値から対象の第7の値に対してJbサンプリング後の第7の値までの(Jb+1)個の第7の値の少なくとも一方を含む予め規定されたJc個の第7の値のうちの最大値にそれぞれ置き換えて新たな第7のデータを生成する第12の処理を実行する。
【0033】
また、請求項
4記載のデータ処理装置では、処理部が、第9の処理に先立ち、第7のデータの各第7の値のうち、Iサンプリング前の第7の値よりも小さい第7の値を、Iサンプリング前の第7の値よりも小さい第7の値と、Iサンプリング前の第7の値に係数Kbを乗じた第10の値とのいずれか大きい一方に置き換えて新たな第7のデータを生成する第13の処理を実行する。
【0034】
したがって、請求項
2〜
4記載のデータ処理装置、およびそのような処理を実行させるデータ処理用プログラムによれば、第7の値が「0」に近い値となる特異点の数を十分に減少させることができ、これにより、放電波形成分の有無を一層高精度に判定し得る第1の判定領域および/または第2の判定領域を規定することができると共に、放電有無特定用データに基づいて放電波形成分の有無を判定する際に、新たな第7のデータに基づいて2次元グラフ上に第2の対応点をプロットすることで放電波形成分の有無を一層高精度に判定することが可能となる。
【0035】
請求項
5記載のデータ処理装置では、処理部が、第9の処理に先立ち、第7のデータの各第7の値のうちの最大値に対応する測定値よりも後にサンプリングされた測定値に対応する第7の値を、対象の第7の値に対してHaサンプリング前の第7の値が、対象の第7の値を含んで連続するHbサンプリング分の第7の値を平均化した値に係数Kcを乗じた第11の値以下のときに、対象の第7の値と、Haサンプリング前の第7の値に予め規定された係数Kdを乗じた第12の値とのいずれか小さい一方に置き換えて新たな第7のデータを生成する第14の処理を実行する。
【0036】
したがって、請求項
5記載のデータ処理装置、およびそのような処理を実行させるデータ処理用プログラムによれば、測定値の変化率が徐々に小さくなる波形データを対象とするときに、変化率の減少の度合いとは不釣り合いに第7の値が急激に大きな値に変化するような変化状態を、変化率の減少の度合いに応じた適当な変化状態とすることができ、これにより、放電波形成分の有無を一層高精度に判定し得る第1の判定領域および/または第2の判定領域を規定することができると共に、放電有無特定用データに基づいて放電波形成分の有無を判定する際に、新たな第7のデータに基づいて2次元グラフ上に第2の対応点をプロットすることで放電波形成分の有無を一層高精度に判定することが可能となる。
【0037】
請求項
6記載のデータ処理装置では、処理部が、第14の処理において、Haサンプリング前の第7の値が、Hbサンプリング分の第7の値を平均化した値に係数Keを乗じた第13の値よりも小さいときに、対象の第7の値を第13の値に置き換える。したがって、請求項
6記載のデータ処理装置、およびそのような処理を実行させるデータ処理用プログラムによれば、第7の値の変化状態を一層好適な状態とすることができる。
【0038】
請求項
7記載のデータ処理装置では、処理部が、第9の処理に先立ち、第7のデータの各第7の値のうちの最大値に対応する測定値よりも前にサンプリングされた測定値に対応する第7の値を、対象の第7の値と、対象の第7の値に対してHcサンプリング前の第7の値に係数Kfを乗じた第14の値とのいずれか大きい一方に置き換えて新たな第7のデータを生成する第15の処理を実行する。
【0039】
したがって、請求項
7記載のデータ処理装置、およびそのような処理を実行させるデータ処理用プログラムによれば、測定値の変化率が徐々に大きくなる波形データを対象とするときに、第7の値が「0」に近い値となる特異点の数を十分に減少させることができ、これにより、放電波形成分の有無を一層高精度に判定し得る第1の判定領域および/または第2の判定領域を規定することができると共に、放電有無特定用データに基づいて放電波形成分の有無を判定する際に、新たな第7のデータに基づいて2次元グラフ上に第2の対応点をプロットすることで放電波形成分の有無を一層高精度に判定することが可能となる。
【0040】
請求項
8記載のデータ処理装置では、処理部が、第15の処理において、対象の第7の値および第14の値の双方が、対象の第7の値を含んで連続するHdサンプリング分の第7の値を平均化した値に係数Kgを乗じた第15の値よりも小さいときに、対象の第7の値を第15の値に置き換える。したがって、請求項
8記載のデータ処理装置、およびそのような処理を実行させるデータ処理用プログラムによれば、第7の値が「0」に近い値となる特異点の数をさらに減少させることができる。
【0041】
請求項
9記載のデータ処理装置では、処理部が、第10の処理において、2次元グラフの原点を通過する各第1の対応点の回帰直線を特定し、特定した回帰直線における2次元グラフの縦軸および横軸の他方の値が1のときの2次元グラフの縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方の値を第16の値として特定し、かつ、2次元グラフの原点、予め規定された一方の値が第16の値で他方の値が1の第1の点、および予め規定された一方の値が0で他方の値が1の第2の点の3点を頂点とする三角形領域を特定すると共に、特定した三角形領域に基づいて少なくとも一方の領域を規定する。
【0042】
したがって、請求項
9記載のデータ処理装置、およびそのような処理を実行させるデータ処理用プログラムによれば、放電波形成分の値に対応する第2の対応点がプロットされる可能性が極めて低い三角形領域を確実かつ容易に特定することができ、この三角形領域に基づいて、第1の判定領域および/または第2の判定領域を容易に特定して領域データを生成することができる。
【0043】
請求項
10記載のデータ処理装置では、処理部が、2次元グラフの縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方に第1のデータの各第1の値を対応させると共に2次元グラフの縦軸および横軸の他方に各第1の値のサンプリングタイミングに対応する第7のデータの各第7の値を対応させて第1の値および第7の値の第3の対応点を2次元グラフ上にそれぞれプロットすると共に、縦軸および横軸の他方の値が「0.5」以下の予め規定された第17の値以下である第3の対応点を抽出し、抽出した各第3の対応点における縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方の値の標準偏差nσを演算すると共に、原点、第1の点、予め規定された一方の値が標準偏差nσと第16の値との和で他方の値が1の第3の点、および予め規定された一方の値が標準偏差nσで他方の値が0の第4の点の4点を頂点とする第1の矩形領域を特定し、特定した第1の矩形領域および三角形領域に基づいて少なくとも一方の領域を規定する。
【0044】
したがって、請求項
10記載のデータ処理装置、およびそのような処理を実行させるデータ処理用プログラムによれば、特定した第1の矩形領域および三角形領域に基づいて第1の判定領域および/または第2の判定領域を容易に特定することができ、波形データの信号波形に放電波形成分が含まれているか否かを高精度に判定可能な第1の判定領域および/または第2の判定領域の領域データを容易に生成することができる。
【0045】
請求項
11記載のデータ処理装置では、処理部が、第10の処理において、すべての第1の対応点が含まれる最小の方形領域を特定すると共に、特定した方形領域に基づいて少なくとも一方の領域を規定する。したがって、請求項
11記載のデータ処理装置、およびそのような処理を実行させるデータ処理用プログラムによれば、非常に単純な処理によって第1の判定領域および/または第2の判定領域の領域データを生成することができる。
【0046】
請求項
12記載のデータ処理装置では、処理部が、放電有無特定用データに基づき、第2の対応点と少なくとも一方の領域との位置関係を特定して波形データの信号波形に放電波形成分が含まれているか否かを判定する判定処理を実行し、判定処理の判定結果を特定可能な判定結果データを生成する。また、請求項
18記載のデータ処理用プログラムは、上記の処理をデータ処理装置の処理部に実行させる。
【0047】
したがって、請求項
12記載のデータ処理装置、および請求項
18記載のデータ処理用プログラムによれば、複数回の測定処理が不要となり、複数の測定対象についての個体差の影響や、測定処理毎の測定環境の相違に起因する測定値のばらつきの影響を受けることがなくなるため、放電現象が発生しているか否かの判定精度を十分に向上させることができる。また、基準値(閾値)との比較による判定とは異なり、測定環境の変化の影響による誤判定を回避して判定精度を十分に高めることができる。
【0048】
請求項
13記載のデータ処理装置では、処理部が、第1の判定領域を少なくとも一方の領域とするときには第2の対応点の総数に占める第1の判定領域に含まれない第2の対応点の割合を特定すると共に、第2の判定領域を少なくとも一方の領域とするときには第2の対応点の総数に占める第2の判定領域に含まれる第2の対応点の割合を特定し、特定した割合が予め規定された割合以上のときに、予め規定された報知処理を実行する。
【0049】
また、請求項
14記載のデータ処理装置では、処理部が、2次元グラフを縦軸および横軸の他方の方向でGa個に分割したGa個の第2の矩形領域を特定し、第1の判定領域を少なくとも一方の領域とするときには第1の判定領域以外の領域に第2の対応点が含まれている第2の矩形領域の数を特定すると共に、第2の判定領域を少なくとも一方の領域とするときには第2の判定領域に第2の対応点が含まれている第2の矩形領域の数を特定し、特定した数が予め規定された数以上のときに、予め規定された報知処理を実行する。
【0050】
したがって、請求項
13,
14記載のデータ処理装置、およびそのような処理を実行させるデータ処理用プログラムによれば、波形データの信号波形に放電波形成分が含まれているか否かの判定結果を確実かつ容易に認識させることができる。
【0051】
請求項
15記載のデータ処理装置では、処理部が、第2の対応点をプロットした2次元グラフと少なくとも一方の領域を示す領域表示とを判定処理の判定結果と共に表示部に表示させる。したがって、請求項
15記載のデータ処理装置、およびそのような処理を実行させるデータ処理用プログラムによれば、波形データの信号波形に放電波形成分が含まれているか否かの判定結果を一層確実かつ一層容易に認識させることができる。
【0052】
請求項
16記載の測定システムでは、請求項
1から
15のいずれかに記載のデータ処理装置と、測定対象についての予め規定されたサンプリング周期での測定を実行して波形データを出力する測定装置とを備えて構成されている。したがって、請求項
16記載の測定システムによれば、波形データの取得(生成)から放電有無特定用データの生成(または、放電有無特定用データおよび判定結果データの生成)までの一連の処理を1つのシステムで実行することができる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、データ処理装置、測定システムおよびデータ処理用プログラムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0055】
最初に、測定システム1の構成について説明する。
図1に示す測定システム1は、「測定装置」および「データ処理装置」を有する「測定システム」と、後述する「放電有無特定用データ」に基づいて検査対象(測定対象)Xの良否を検査する「検査装置」とを備えて構成された「インパルス試験システム」であって、測定装置2およびデータ処理装置3を備えて構成されている。この場合、検査対象Xは、「測定対象」の一例であって、本例では、一例として巻線部品(コイル)を検査対象Xとして各種の処理を実行する例について説明する。
【0056】
測定装置2は、「測定装置」に相当し、一例として、データ処理装置3の制御に従い、検査対象Xを対象とする各種の測定処理を実行可能に構成されている。具体的には、測定装置2は、測定信号発生部11、A/D変換部12、処理部13および記憶部14などを備えている。測定信号発生部11は、処理部13の制御に従って検査対象Xの両端間に測定信号としてのインパルス電圧を印加する。A/D変換部12は、一例として、処理部13の制御に従い、指定された周期(「予め規定されたサンプリング周期:測定周期)で測定対象を流れる電流の電流値をA/D変換(サンプリング:測定)して測定値Ds(サンプリング値:「測定値」の一例)を処理部13に順次出力する。なお、電流値のサンプリングに代えて、指定された周期で測定対象の両端間の電圧値をA/D変換(サンプリング:測定)して測定値Dsを出力する構成を採用することもできる。
【0057】
処理部13は、測定装置2を総括的に制御する。具体的には、処理部13は、測定信号発生部11を制御して測定対象にインパルス電圧を印加させると共に、A/D変換部12を制御して任意の周期で電流値のA/D変換処理(サンプリング処理)を実行させる。また、処理部13は、A/D変換部12から出力される測定値Dsを記憶部14に記憶させ、かつ測定値Dsに基づいて波形データD0(「波形データ」の一例)を生成して記憶部14に記憶させると共に、生成した波形データD0をデータ処理装置3に出力する。記憶部14は、処理部13の動作プログラムや、上記の測定値Ds(波形データD0)などを記憶する。なお、実際の測定装置2には、測定装置2の動作条件を指示するための各種の操作スイッチや、測定条件の設定画面および測定値の表示画面などを表示する表示部を備えて構成されているが、これらについての図示および説明を省略する。
【0058】
一方、データ処理装置3は、「データ処理装置」に相当し、後述するように測定装置2から取得した波形データD0に基づき、検査対象Xについての検査を行うための検査用データDc(「波形データの信号波形に放電波形成分が含まれているか否かを特定するための放電有無特定用データ」の一例)を生成する。また、データ処理装置3は、「検査装置」に相当し、生成した検査用データDcに基づき、検査対象Xの良否を検査する。この場合、本例の測定システム1では、一例として、「データ処理用プログラム」に相当するデータ処理用プログラムDpが既存のパーソナルコンピュータにインストールされてデータ処理装置3が構成されている。
【0059】
具体的には、このデータ処理装置3は、操作部21、表示部22、処理部23および記憶部24を備えている。操作部21は、キーボード、およびマウスやタッチパネルなどのポインティングデバイスを備え(図示せず)、これらに対する操作に応じた操作信号を処理部23に出力する。表示部22は、「表示部」の一例であって、処理部23の制御に従い、測定結果や検査結果(良否判定の結果)などを示す各種の表示画面を表示する。
【0060】
処理部23は、「処理部」の一例であって、データ処理装置3を総括的に制御する。具体的には、処理部23は、後述するようにデータ処理用プログラムDpに従い、測定装置2を制御して検査対象Xを対象とする測定処理を実行させると共に、測定装置2から出力される波形データD0に基づいて検査用データDcを生成するデータ生成処理を実行する。また、処理部23は、データ処理用プログラムDpに従い、検査用データDcに基づいて検査対象Xの良否を検査する検査処理(良否の判定処理)を実行して検査結果データDrを生成する。
【0061】
記憶部24は、データ処理用プログラムDp(処理部23の動作プログラムのデータ)、測定システム1から出力される波形データD0、および処理部23によって生成される各種のデータを記憶する。
【0062】
次に、測定システム1による検査対象Xの検査方法について、添付図面を参照して説明する。なお、データ処理装置3にデータ処理用プログラムDpをインストールする作業や、測定装置2とデータ処理装置3とを接続する作業については既に完了しているものとする。
【0063】
検査対象Xの検査に際しては、まず、検査対象Xについての測定装置2による測定処理を実行する。具体的には、検査対象Xを測定装置2に接続すると共に、データ処理装置3の操作部21を操作して測定処理の開始を指示する。これに応じて、処理部23は、データ処理用プログラムDpに従って測定装置2を制御して検査対象Xについての測定処理を開始させる。
【0064】
この際に、測定装置2では、処理部13が、まず、A/D変換部12を制御してデータ処理装置3(処理部23)から指示されたサンプリング周期での電流値のサンプリング(測定)を開始させる。これにより、A/D変換部12から検査対象Xについての測定値Ds(検査対象Xを流れる電流の電流値)が順次出力されて記憶部14に記憶される。また、処理部13は、測定信号発生部11を制御して検査対象Xにインパルス電圧を印加させる。この際には、検査対象Xを流れる電流についての測定値Ds(電流値)が、
図2に示す波形W0(「波形データの信号波形」の一例)のように変化する。
【0065】
次いで、処理部13は、一例として、検査対象Xに対するインパルス電圧の印加を開始させる直前の時点から、処理部23によって指示された時間が経過した時点において、この時間内にA/D変換部12から出力された複数の測定値Ds,Ds・・を記録して波形データD0を生成し、生成した波形データD0を記憶部14に記憶させる。また、処理部13は、生成した波形データD0をデータ処理装置3に出力する。また、データ処理装置3では、処理部23が、測定装置2から出力された波形データD0を検査対象Xに関連付けて記憶部24に記憶させる。これにより、検査対象Xについての測定処理が完了する。
【0066】
一方、データ処理装置3では、波形データD0の取得が完了したときに、処理部23が、データ処理用プログラムDpに従い、検査対象Xが良品か不良品かを検査するための検査用データDcを生成する「データ生成処理」を開始する。
【0067】
この「データ生成処理」において、処理部23は、まず、波形データD0の各測定値Dsのなかから連続するNサンプリング内の変化量が予め規定された量以上の測定値(「第1の値」の一例)を抽出して波形データD1(「第1のデータ」の一例)を生成する「第1の処理」を実行する。具体的には、処理部23は、一例として、ハイパスフィルタや1次元のラプラシアンフィルタ等を用いたフィルタリング処理により、波形データD0の各測定値Dsのなかから連続するN=2サンプリング内の変化量が規定量を超える測定値Dsを抽出して波形データD1を生成する。これにより、
図3に示す波形W1のように、波形データD0の生成時(測定処理時)に検査対象Xに生じた放電現象の成分や、大きなノイズ等の成分に対応する急峻な変化の波形成分の測定値が波形データD1として取得され、「第1の処理」が完了する。
【0068】
また、処理部23は、波形データD0の各測定値Dsを、対象の測定値Dsを含んで連続するMサンプリング分の測定値Dsを平均化した値(「第2の値」の一例)にそれぞれ置き換えて波形データD2(「第2のデータ」の一例)を生成する「第2の処理」を実行する。具体的には、処理部23は、一例として、波形データD0の各測定値Dsのうちのnサンプリング目の測定値Dsを測定値Dsnとし、かつ上記の「M」の値を「3」に規定したときに、測定値Dsnの1サンプリング前の測定値Ds(n−1)と、測定値Dsnの1サンプリング後の測定値Ds(n+1)と、測定値Dsnとの合計値を「M=3」で除した値(連続する3サンプリング分の測定値Dsの値の平均値)を「第2の値」として演算して波形データD2を生成する。
【0069】
これにより、
図4に破線で示す波形W2のように、波形データD0において、上記の「第1の処理」において抽出した「放電現象の成分や、大きなノイズ等の成分に対応する急峻な変化の波形成分」の影響が十分に軽減された測定値の波形データD2が生成され、「第2の処理」が完了する。なお、同図では、「第2の処理」についての理解を容易とするために、
図2に示す波形W0における時間軸方向の一部を拡大し、その波形W0の測定値Dsに基づいて演算される値の波形W2を波形W0に重ねて図示している。また、「第2の処理」については、上記の例にようにM=3値の3点平均値を求める処理に限定されず、M=3以外の複数値の平均値を求める処理や、ハミング窓等を用いた平均化処理を「第2の処理」として実行してもよい。
【0070】
続いて、処理部23は、波形データD2の各測定値のなかから連続するNサンプリング内の変化量が予め規定された量以上の測定値(「第3の値」の一例)を抽出して波形データD3(「第3のデータ」の一例)を生成する「第3の処理」を実行する。具体的には、処理部23は、前述した「第1の処理」において使用したフィルタと同じフィルタを用いたフィルタリング処理により、波形データD2の各測定値のなかから連続するN=2サンプリング内の変化量が規定量を超える測定値を抽出して波形データD3を生成する。これにより、
図5に示す波形W3のように、上記の「第2の処理」において「急峻な変化の波形成分」の影響が十分に軽減された波形データD2について、「第1の処理」において使用したフィルタと同じフィルタを用いてフィルタリングされた波形データD3が生成され、「第3の処理」が完了する。
【0071】
次いで、処理部23は、波形データD3の各測定値を絶対値化した値(「第4の値」の一例)を演算して波形データD4(「第4のデータ」の一例)を生成する「第4の処理」を実行する。これにより、
図6に示す波形W4のような波形の波形データD4が生成され、「第4の処理」が完了する。
【0072】
続いて、処理部23は、波形データD0の各測定値Dsを、対象の測定値Dsを含んで連続するLサンプリング分の測定値Dsを平均化した値に置き換えると共に、置換え後の測定値を微分した値(「第5の値」の一例)を演算して波形データD5(「第5のデータ」の一例)を生成する「第5の処理」を実行する。具体的には、処理部23は、一例として、まず、対象の測定値Dsを対象の測定値Dsの5サンプリング前の測定値Dsから、対象の測定値Dsの5サンプリング後の測定値DsまでのL=5+5+1=11サンプリング分の測定値Dsの平均値に置き換えて波形データD0fを生成する。これにより、
図7に示す波形W0fのように、各サンプリング毎のばらつきの度合いが小さい測定値の波形データD0fが生成される。
【0073】
なお、同図では、「第5の処理」についての理解を容易とするために、
図2に示す波形W0における時間軸方向の一部を拡大し、その波形W0の測定値Dsに基づいて演算される平均値の波形W0fを波形W0に重ねて図示している。また、波形データD0fの生成に際しては、上記の11サンプリング分の平均値に置き換える処理に代えて、11サンプリング以外の複数サンプリング分の平均値に置き換える処理や、ハミング窓等を用いた平均化処理を実行してもよい。
【0074】
次いで処理部23は、波形データD0fの各測定値を微分した値(一階微分値:第5の値)を演算して波形データD5を生成する。これにより、
図8に示す波形W5のような波形データD5が生成され、「第5の処理」が完了する。なお、この「第5の処理」については、波形データD0fの値を微分する上記の処理に代えて、波形データD0fの値を最小二乗法などで「変化率を示す値」に置き換える処理を実行することもできる。
【0075】
続いて、処理部23は、波形データD5の各値(第5の値)を微分した値(二階微分値:第6の値)を演算して波形データD6(「第6のデータ」の一例)を生成する。これにより、
図9に示す波形W6のような波形データD6が生成され、「第6の処理」が完了する。なお、この「第6の処理」についても、波形データD5の値を微分する上記の処理に代えて、波形データD5の値を最小二乗法などで「変化率を示す値」に置き換える処理を実行することもできる。
【0076】
次いで、処理部23は、波形データD6の各値の絶対値を正規化した値(「第7の値」の一例)を演算して波形データD7(「第7のデータ」の一例)を生成する「第7の処理」を実行する。これにより、
図10に示す波形W7のような波形データD7が生成され、「第7の処理」が完了する。
【0077】
続いて、処理部23は、波形データD1の各測定値を絶対値化した値(「第8の値」の一例)を演算して波形データD8(「第8のデータ」の一例)を生成する「第8の処理」を実行する。これにより、
図11に示す波形W8のような波形データD8が生成され、「第8の処理」が完了する。
【0078】
次いで、処理部23は、後述する「第9の処理」の開始に先立ち、以下に説明する「第11の処理」から「第13の処理」までの各処理のうちのいずれか、または任意の複数を実行して、処理前の波形データD7の各値に存在する下記のような特異点の数を減少させる。具体的には、前述した「第7の処理」によって生成された波形データD7では、
図10に示すように、対応する波形データD6の各値の変化率が2値連続して同程度のとき(波形W6の傾きが2サンプリング分連続して同じとき)に、その値(第7の値)が「0」に近い値(非常に小さな値)となる特異点が発生する。この特異点(「0」に近い値)は、後の良否判定において正確な判定を阻害するため、予め規定された条件に従って各値を処理することで、特異点を減少させた新たな波形データD7を生成するのが好ましい。
【0079】
この場合、特異点を減少させる処理の1つとしては、以下に説明する「第11の処理」を実行する。まず、波形データD5の各値(第5の値)の絶対値を、最大値が「1」となるように正規化した値(「第9の値」の一例)を演算して波形データD9(「第9のデータ」の一例)を生成する。これにより、
図12に示す波形W9のような波形データD9が生成される。次いで、処理部23は、波形データD9の各の値(第9の値)に係数Ka(一例として、Ka=0.1)を乗じた値(
図13に示す波形W9aの値)と、波形データD9の値(第9の値)のサンプリングタイミングに対応する波形データD7の値(第7の値:
図13に示す波形W7の値)とのいずれか大きい一方を、新たな値(新たな第7の値)として新たな波形データD7を生成する。この際には、
図13に太線で示す波形W7aのような波形データD7(新たな波形データD7)が生成され、「第11の処理」が完了する。
【0080】
なお、「第11の処理」において使用する「係数Ka」については、「1」以下で「0.1」以外の任意の正数とすることができる。また、上記の「第11の処理」に代えて、波形データD9の各の値(第9の値)に係数Kaを乗じない値(すなわち、第9の値:
図14に示す波形W9の値)と、波形データD9の値(第9の値)のサンプリングタイミングに対応する波形データD7の値(第7の値:
図14に示す波形W7の値)とのいずれか大きい一方を、新たな値(新たな第7の値)として新たな波形データD7を生成する処理を実行することもできる。この際には、同図に太線で示す波形W7bのような新たな波形データD7が生成される。
【0081】
また、特異点を減少させる処理の他の1つとしては、以下に説明する「第12の処理」を実行する。この「第12の処理」では、波形データD7の各値(第7の値)を、対象の値に対してJaサンプリング前の値から対象の値までの(Ja+1)個の値と、対象の値から対象の値に対してJbサンプリング後の値までの(Jb+1)個の値の少なくとも一方を含む予め規定されたJc個の第7の値のうちの最大値にそれぞれ置き換えて新たな波形データD7を生成する。
【0082】
具体的には、一例として、波形データD7の各値(第7の値)を、対象の値に対してJa=2サンプリング前の値から対象の値までの(Ja+1)個の値と、対象の値から対象の値に対してJb=2サンプリング後の値までの(Jb+1)個の値の双方を含む予め規定されたJa+Jb+1=Jc=5個の値のうちの最大値にそれぞれ置き換えて新たな波形データD7を生成する。この際には、
図15に示す波形W7cのような新たな波形データD7が生成される。なお、「Ja」および「Jb」については「2」以外の任意の自然数に規定することができ、「Jc」についても「5」以外の任意の自然数とすることができる。
【0083】
さらに、特異点を減少させる処理のさらに他の1つとしては、以下に説明する「第13の処理」を実行する。この「第13の処理」では、波形データD7の各値(第7の値)のうち、Iサンプリング前の値よりも小さい値を、その値(第7の値)と、Iサンプリング前の値に係数Kb(一例として、Kb=0.9)を乗じた値(「第10の値」の一例)とのいずれか大きい一方に置き換えて新たな前波形データD7を生成する。この際には、
図16に示す波形W7dのような新たな波形データD7が生成される。なお、「第13の処理」において使用する「係数Kb」については、「1」以下で「0.9」以外の任意の正数とすることができる。
【0084】
また、本例のような減衰振動波形の波形データD0に基づいて検査用データDcを生成する場合、後述する「第9の処理」の開始に先立ち、以下に説明する「第14の処理」を実行するのが好ましい。この場合、波形データD0のような減衰振動波形に基づいて生成した波形データD7では、その値(第7の値)が最大値となった時点以降において波形の変化量が時間の経過とともに小さくなる。このため、最大値以降の各値(第7の値)に関し、その変化量が極めて大きくなった場合は、正常な過渡現象ではなく、測定処理時に放電波形成分を含む測定値Dsが測定されたと判定できるように波形データD7の値を処理することで、判定精度を高めることが可能となる。したがって、波形データD7の値のうちの最大値以降の値に関し、以下のように処理する。
【0085】
具体的には、「第14の処理」においては、波形データD7の各値(第7の値)のうちの最大値に対応する測定値Dsよりも後にサンプリングされた測定値Dsに対応する値(第7の値)を対象として、対象の値(第7の値)に対してHaサンプリング前(一例として、1サンプリング前)の値(第7の値)が、対象の値を含んで連続するHbサンプリング分(一例として、Ha=1サンプリング前の値を含むHb=101サンプリング分)の値(第7の値)を平均化した値に係数Kc(一例として、Kc=1.0)を乗じた値(第11の値)以下のとき(すなわち、Hbサンプリング分の値の平均値に係数Kcを乗じた値が、対象の値のHaサンプリング前の値よりも大きいとき:対象の値を含むHbサンプリング分の値が急激に大きくなったとき)に、対象の値と、Haサンプリング前の値に予め規定された係数Kd(一例として、1.4)を乗じた値(第12の値)とのいずれか小さい一方に置き換えて新たな波形データD7を生成する。
【0086】
この際に、上記のHaサンプリング前の値(第7の値)が、上記のHbサンプリング分の値(第7の値)を平均化した値に係数Ke(一例として、Ke=0.1)を乗じた値(「第13の値」の一例)よりも小さいときに、対象の値(第7の値)を、平均化した値に係数Keを乗じた値(第13の値)に置き換えることにより、特異点の数を減少させることができる。このような「第14の処理」を実行することにより、波形データD7の値のうちの最大値以降の値(すなわち、変化量が徐々に小さくなるべき各値)について、
図17に実線で示す波形W7eの値のように急激に値が大きくなっていた場合には、その増加量が制限されて同図に破線で示す波形W7fに置き換えられて、新たな波形データD7が生成される。
【0087】
なお、「第14の処理」において使用する「係数Kc」については、「1」以外の任意の正数とすることができ、「係数Kd」については、「係数Kc」よりも大きい「1.4」以外の任意の正数とすることができ、「係数Ke」については、「0.1」以外の任意の正数とすることができる。また、「Haサンプリング前の値」についても「2サンプリング以上の複数サンプリング前の値」とすることができ、「Hbサンプリング分を平均化した値」についても「100サンプリング分以下の複数サンプリング分を平均化した値」や「102サンプリング分以上の複数サンプリング分を平均化した値」とすることができる。
【0088】
さらに、本例のような減衰振動波形の波形データD0に基づいて検査用データDcを生成する場合、後述する「第9の処理」の開始に先立ち、以下に説明する「第15の処理」も実行するのが好ましい。この場合、波形データD0のような振動波形であって検査対象Xに対する電圧の印加前からの測定値Dsを含む複数の測定値Dsに基づいて生成した波形データD7では、その値(第7の値)が最大値となる時点以前において波形の変化量が時間の経過とともに徐々に大きくなる傾向がある。このため、最大値以前の各値(第7の値)に関し、その変化量が変化率の増加の度合いとは不釣り合いに局所的に極めて小さいときには、ノイズ等の影響によってそのような極く小さな変化率の変化が生じたものとみなし、そのような変化の影響を十分に小さくするように波形データD7の値を処理することで、判定精度を高めることが可能となる。したがって、波形データD7の値のうちの最大値以前の値に関し、以下のように処理する。
【0089】
具体的には、「第15の処理」においては、波形データD7の各値(第7の値)のうちの最大値に対応する測定値Dsよりも前にサンプリングされた測定値Dsに対応する値(第7の値)を対象として、対象の値と、対象の第7の値に対してHcサンプリング前(一例として、Hc=1サンプリング前)の値(第7の値)に係数Kf(一例として、Ke=0.9)を乗じた値(「第14の値」の一例)とのいずれか大きい一方に置き換えて新たな波形データD7を生成する。
【0090】
この際に、対象の値(第7の値)、およびHcサンプリング前の値(第7の値)に係数Kfを乗じた値(第14の値)の双方が、対象の値を含んで連続するHdサンプリング分(一例として、Hd=101サンプリング分)の値(第7の値)を平均化した値に係数Kg(一例として、Kg=1)を乗じた値(「第15の値」の一例)よりも小さいときに、対象の値を、Hdサンプリング分の値を平均化した値に係数Kgを乗じた値(第15の値)に置き換えることもできる。このような「第15の処理」を実行することにより、波形データD7の値のうちの最大値以前の値について、値の増加量が過剰に小さいときに、その増加量が本来的な増加量に対応して補強された値に置き換えられ、新たな波形データD7が生成される。
【0091】
なお、「第15の処理」において使用する「係数Kg」については、「1」以外の任意の正数とすることができる。また、「Hcサンプリング前の値」についても「2サンプリング前以上の複数サンプリング前の値」とすることができ、「Hdサンプリング分を平均化した値」についても「100サンプリング分以下の複数サンプリング分を平均化した値」や「102サンプリング分以上の複数サンプリング分を平均化した値」とすることができる。
【0092】
一方、処理部23は、上記の「第11の処理」から「第13の処理」や、「第14の処理」および「第15の処理」のうちの予め規定された処理を完了したときに、「第9の処理」を開始する。なお、「第11の処理」から「第15の処理」までの各処理を実行しないよう規定されているときには、前述した「第8の処理」を完了した時点において「第9の処理」を開始する。
【0093】
具体的には、この「第9の処理」では、処理部23は、
図18に示すように、一例として、2次元グラフの縦軸に波形データD4の値(第4の値)を対応させると共に(「縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方」を「縦軸」とした例)、2次元グラフの横軸に波形データD4の各値のサンプリングタイミングに対応する波形データD7の各値(第7の値)を対応させて(「縦軸および横軸の他方」を「横軸」とした例)、波形データD4の値、および波形データD7の値の対応点(「第1の対応点」の一例)を2次元グラフ上にそれぞれプロットする。なお、同図では、両値の対応点(第1の対応点)を「◆」で表している。
【0094】
この際には、前述した「第4の処理」において生成された波形データD4の値、すなわち、波形データD0の測定値Dsのうちの「放電成分と判定されるべき変化量と同程度に短時間で大きく変化した値」が平均化されて絶対値化された値(第4の値)と、「第7の処理」において生成された波形データD7の値、または、波形データD7の値に対して各種の処理を施した新たな波形データD7の値、すなわち、波形データD0の測定値Dsのうちの「放電成分と判定されるべき変化量と同程度に短時間で大きく変化した値」が平均化されて絶対値化された値の二階微分値が絶対値化された値(第7の値)との対応点が「第1の対応点」として2次元グラフ上にそれぞれプロットされる。
【0095】
つまり、2次元グラフ上の各「第1の対応点」は、仮に波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれていたとしても、その放電波形成分の影響を排除された値(第4の値および第7の値)に基づく「対応点」がプロットされるべき領域内にプロットされることとなる。したがって、処理部23は、上記の「第9の処理」においてプロットした各「第1の対応点」の2次元グラフ上の配置に基づき、予め規定された「領域規定手順」に従って2次元グラフ上に「判定領域」を規定する(「第10の処理」の実行)。
【0096】
なお、この「第10の処理」の具体的な手順については、後に詳細に説明するが、本例の測定システム1(データ処理装置3)では、波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれているときに、その放電波形成分に対応する値の後述する「第2の対応点」がプロットされない判定領域Aa(「測定値範囲」としての「第1の判定領域」の一例)と、波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれているときに、その放電波形成分に対応する値の後述する「第2の対応点」がプロットされる判定領域Ab(「測定値範囲」としての「第2の判定領域」の一例)との少なくとも一方を規定する処理を「第10の処理」として実行する。
【0097】
続いて、処理部23は、「第10の処理」によって規定した判定領域Aaおよび/または判定領域Abを特定可能な領域データDa(「測定値範囲データ」としての「領域データ」の一例)を生成すると共に、生成した領域データDaおよび波形データD7,D8(「比較値データ」の一例)を検査対象Xに関連付けて記録して検査用データDc(「放電有無特定用データ」の一例)を生成して記憶部14に記憶させる。以上により、「データ生成処理」が完了する。
【0098】
次いで、処理部23は、生成した検査用データDcに基づき、検査対象Xについて測定した波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれているか否かの「判定処理(すなわち、検査対象Xが良品であるか不良品であるかの検査処理)」を実行する。
【0099】
具体的には、処理部23は、まず、検査用データDcに記録されている領域データDaに基づき、2次元グラフ上に判定領域Aaおよび/または判定領域Abを規定する。また、処理部23は、検査用データDcに記録されている波形データD7,D8に基づき、2次元グラフ上に「第2の対応点」をそれぞれプロットする。この際に、本例の測定システム1(データ処理装置3)では、一例として、2次元グラフの縦軸に波形データD8の各値(第8の値)を対応させると共に(「縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方」を「縦軸」とした例)、2次元グラフの横軸に波形データD8の値のサンプリングタイミングに対応する波形データD7の各値(第7の値)を対応させて(「縦軸および横軸の他方」を「横軸」とした例)、波形データD8の値および波形データD7の値の対応点(第2の対応点)を2次元グラフ上にそれぞれプロットする。
【0100】
また、本例の測定システム1(データ処理装置3)では、
図19,20に示すように、上記の2次元グラフと、2次元グラフ上に規定した判定領域Aaおよび/または判定領域Abとを表示部22に表示させると共に、新たな「第2の対応点」をプロットする都度、その「第2の対応点」を示す記号または図柄を2次元グラフ上に表示させる。なお、両図の例では、「第2の対応点」を示す記号の一例である「■」を2次元グラフ上に表示させた(プロットした)例を図示している。
【0101】
この場合、波形データD8は、前述した「第1の処理」において波形データD0の各測定値Dsのなかから連続するNサンプリング内の変化量が予め規定された量以上の測定値(第1の値:放電波形成分を構成する値と同様にNサンプリング内に急峻に変化した値)を「第8の処理」において絶対値化した値で構成されている。
【0102】
このため、この波形データD8の元となった波形データD0の各測定値DsがNサンプリング内に急峻に変化しなかったとき、すなわち、波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれていないときには、
図19に示すように、すべての「第2の対応点」が判定領域Aa内(判定領域Ab外)にプロットされることとなる。これに対して、波形データD8の元となった波形データD0の各測定値DsがNサンプリング内に急峻に変化したとき、すなわち、波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれていたときには、
図20に示すように、幾つかの「第2の対応点」(放電波形成分の測定値Dsに対応する波形データD7,8の対応点)が判定領域Aa外(判定領域Ab内)にプロットされることとなる。
【0103】
したがって、処理部23は、すべての「第2の対応点」のプロットを完了したときに、まず、上記の「第2の対応点」と判定領域Aa、および/または判定領域Abとの位置関係を特定する。この際に、すべての「第2の対応点」が判定領域Aa内にプロットされているとき(すべての「第2の対応点」が判定領域Ab外にプロットされているとき)に、処理部23は、波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれていないと判定する。また、幾つかの「第2の対応点」が判定領域Aa外にプロットされているとき(幾つかの「第2の対応点」が判定領域Ab内にプロットされているとき)に、処理部23は、波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれていると判定する。
【0104】
また、処理部23は、操作部21の操作による使用者からの指示に従い、上記の
図19,20に示す2次元グラフに代えて(または、両図に示す2次元グラフと共に)
図21に示す2次元グラフを表示部22に表示させる。この2次元グラフは、波形データD0の波形W0、波形データD1の波形W1、および前述した判定領域Aaと判定領域Abと境界に対応する波形Waとが重ねて表示されている。したがって、同図に示すように、波形データD1の波形W1の一部が波形Waよりも上方に描画されているときには、その部位に対応する波形W0の一部が放電波形成分であり、波形データD1の波形W1において波形Waよりも下方に描画されている部位については、その部位に対応する波形W0の部位が放電波形成分ではないと直感的に認識させることが可能となる。
【0105】
この後、処理部23は、上記の放電波形成分の有無の判定処理とは別個に行う他の検査項目に関する判定処理の結果と共に、放電波形成分の有無の判定処理の判定結果を検査対象Xに関連付けて記録して検査結果データDrを生成する。また、すべての検査項目において不良なしと判定したときには、検査対象Xが良品であるとの事項を検査結果データDrに記録すると共に、いずれかの検査項目において不良ありと判定したときには、検査対象Xが不良品であるとの事項を検査結果データDrに記録する。以上により、検査対象Xについての一連の検査処理が完了する。
【0106】
次に、検査対象Xについての上記の一連の処理のうちの「第10の処理(2次元グラフ上に判定領域Aa,Abを規定する処理)」について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0107】
上記の「第10の処理」において判定領域Aa(または、判定領域Ab)を規定するときに、処理部23は、まず、
図22,23に示すように「第9の処理」においてプロットした「第1の対応点」の位置(両図における各「◇」の位置)を特定すると共に、2次元グラフの原点P0を通過する「各第1の対応点の回帰直線」を特定する。この際には、一例として、両図に示す二点鎖線Lが「回帰直線」として特定される。次いで、処理部23は、特定した回帰直線(二点鎖線L)における2次元グラフの横軸(「縦軸および横軸の他方」の一例)の値が「1」のときの2次元グラフの縦軸(縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方」の一例)の値(本例では、約0.08:「第16の値」の一例)を特定する。
【0108】
続いて、2次元グラフの原点P0、縦軸の値が「第16の値」で横軸の値が「1」の点P1(「第1の点」の一例)、および縦軸の値が「0」で横軸の値が「1」の点2(「第2の点」の一例)の3点を頂点とする三角形領域A1を特定すると共に、特定した三角形領域A1に基づいて判定領域Aaおよび/または、判定領域Abを規定する。
【0109】
具体的には、処理部23は、
図24に示すように、2次元グラフの縦軸(「縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方」の一例)に波形データD1の値(第1の値)を対応させると共に、2次元グラフの横軸(「縦軸および横軸の他方」の一例)に波形データD1の各値のサンプリングタイミングに対応する波形データD7の値(第7の値)を対応させて波形データD1の値、および波形データD7の値の対応点(「第3の対応点」の一例)を2次元グラフ上にそれぞれプロットする。なお、同図では、両値の対応点(第3の対応点)を「■」で表している。
【0110】
この場合、波形データD0のような減衰振動波形(過渡現象の波形)の値に基づく「第3の対応点」は、変化率が小さい値が多くなるため、同図の2次元グラフの例では、横軸方向の原点側の部位に数多くの「第3の対応点」がプロットされることとなる。また、横軸方向の原点側の部位にプロットされた各「第3の対応点」は、対応する「第1の値」の自体が小さいことから、その分布が2次元グラフ上において縦軸方向に大きく分離せずに密集した状態となる。
【0111】
したがって、処理部23は、一例として、横軸の値が「0.1(「縦軸および横軸の他方の値が「0.5」以下の予め規定された第17の値」の一例)」以下である「第3の対応点」、すなわち、各「第3の対応点」のうちの大半を占める通常の測定値Dsに対応する「第3の対応点」(放電波形成分や大きなノイズ成分が存在する場合に、そのような特異な測定値Dsを除く測定値Dsに対応する「第3の対応点」)を抽出する。なお、上記の「第17の値」については、「0.5」以下の「0.1」以外の任意の正数とすることができる。
【0112】
次いで、処理部23は、抽出した各「第3の対応点」における縦軸の値の標準偏差nσを演算する。この場合、「n」については、測定値Dsの数(サンプリング数)に応じて任意の自然数を予め規定しておく。具体的には、一例として、波形データD0における測定値Dsの数が「10,000」であって、この波形データD0の波形W0に放電波形成分が存在しないときに、標準偏差nσ=3σの範囲内に含まれる測定値Dsは、「10,000×約99.73%≒9,973値」で「10,000−9,973=27値」が標準偏差nσの範囲外となる可能性があり、標準偏差nσ=4σの範囲内に含まれる測定値Dsは、「10,000×約99.994%≒9,999.4値」で「10,000−9,999.4=0.6値」が標準偏差nσの範囲外となる可能性がある。
【0113】
また、標準偏差nσ=5σの範囲内に含まれる測定値Dsは、「10,000×約99.9999%≒9,999.99値」で「10,000−9,999.99=0.01値」が標準偏差nσの範囲外となる可能性があり、標準偏差nσ=6σの範囲内に含まれる測定値Dsは、「10,000×約99.999999%≒9,999.9999値」で「10,000−9,999.999999=0.000001値」が標準偏差nσの範囲外となる可能性がある。したがって、この「第10の処理」においては、標準偏差nσ(n≧3)、好ましくは、標準偏差5σ、または標準偏差6σを演算することで、放電波形成分が存在するとの誤判定が生じさせる可能性が十分に低い判定領域Aa(または、判定領域Ab)を規定することが可能となる。
【0114】
続いて、処理部23は、
図22,23に示すように、前述した原点P0、および点P1と、縦軸の値が標準偏差nσと「第16の値(本例では、約0.08)」との和で横軸の値が「1」の点P3(「第3の点」の一例)と、縦軸の値が標準偏差nσで横軸の値が「0」の点P4(「第4の点」の一例)との4点を頂点とする矩形領域A2(「第1の矩形領域」の一例)を特定する。また、処理部23は、処理部23は、判定領域Aaを規定するときには、上記の三角形領域A1と矩形領域A2とを足し合わせた領域を判定領域Aaとし、判定領域Abを規定するときには、2次元グラフにおいて上記の三角形領域A1および矩形領域A2を除く領域を判定領域Abとし、これらの判定領域Aaおよび/または判定領域Abを特定可能なデータを領域データDaとして検査用データDcに記録する。以上により、判定領域Aaおよび/または判定領域Abを規定する「第10の処理」が完了する。
【0115】
この場合、
図22に示すように、波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれていないときには、検査用データDcに記録されている波形データD8の値および波形データD7の値の「第2の対応点(同図に示す「■」の点)」を2次元グラフ上にそれぞれプロットしたときに、すべての「第2の対応点」が判定領域Aa内(判定領域Ab外)にプロットされる。これに対して、
図23に示すように、波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれていたときには、検査用データDcに記録されている波形データD8の値および波形データD7の値の「第2の対応点(同図に示す「■」の点)」を2次元グラフ上にそれぞれプロットしたときに、幾つかの「第2の対応点」(放電波形成分の測定値Dsに対応する「第2の対応点」)が判定領域Aa外(判定領域Ab内)にプロットされる。したがって、上記のような手順で判定領域Aa、および/または判定領域Abを規定することにより、そのような領域データDaと、波形データD7,D8とに基づき、波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれているか否かを好適に判定できる。
【0116】
一方、「第1の判定領域および第2の判定領域の少なくとも一方の領域」を規定する「第10の処理」は、上記の手順に限定されず、以下のように「少なくとも一方の領域」を簡易に規定することもできる。具体的には、処理部23は、「第10の処理」として、まず、
図25に示すように「第9の処理」においてプロットした「第1の対応点」の位置(同図における各「◇」の位置)を特定すると共に、特定したすべての「第1の対応点」が含まれる最小の方形領域A3(「最小の方形領域」の一例)を特定する。次いで、一例として、上記の判定領域Aa,Abの規定に際して特定した手順と同様の手順に従って標準偏差nσを演算する。
【0117】
続いて、方形領域A3を2次元グラフの縦軸方向に標準偏差nσだけ拡大し、拡大後の方形領域を「測定値範囲」としての「第1の判定領域」の他の一例である判定領域Acとし、かつ2次元グラフにおける判定領域Acを除く領域を「測定値範囲」としての「第2の判定領域」の他の一例である判定領域Adとして規定すると共に、これらの判定領域Acおよび/または判定領域Adを特定可能なデータを領域データDaとして検査用データDcに記録する。以上により、判定領域Acおよび/または判定領域Adを規定する「第10の処理」が完了する。
【0118】
次に、前述の検査対象Xについての前述した一連の処理のうちの「判定処理」(波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれているか否かの判定)について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0119】
検査用データDcにおける領域データDaおよび波形データD7,D8に基づいて波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれているか否かを判定する場合、「第10の処理」において判定領域Aaや判定領域Acを過剰に狭く規定したとき(判定領域Abや判定領域Adを過剰に広く規定したとき)に、放電波形成分ではないノイズ成分等が放電波形成分であると誤判定されるおそれがある。したがって、本例の測定システム1(データ処理装置3)では、「判定処理」において放電波形成分の有無を判定したときに、以下のような「報知処理」を行うことで、判定領域Aa〜Adが好適に規定されているか否かを利用者に把握させる構成が採用されている。
【0120】
具体的には、一例として、処理部23は、まず、判定領域Aaや判定領域Ac(第1の判定領域)を「少なくとも一方の領域」とするときには、「第2の対応点」の総数に占める判定領域Aaや判定領域Acに含まれない「第2の対応点」の割合を特定すると共に、判定領域Abや判定領域Ad(第2の判定領域)を「少なくとも一方の領域」とするときには、「第2の対応点」の総数に占める判定領域Abや判定領域Adに含まれる「第2の対応点」の割合を特定する。つまり、各「第2の対応点」に占める「放電波形成分に対応すると判定される第2の対応点」の割合を特定する。
【0121】
次いで、特定した割合が「予め規定された割合(一例として、10%)」以上のときに、「放電波形成分と判定されるポイント数が10%を超えました」とのメッセージを表示部22に表示させる(「予め規定された報知処理」の一例)。したがって、このメッセージを見た利用者は、波形データD0の測定時にそれほど多くの放電現象が発生している筈がないと判断したときには、判定領域Aa,Acを狭く規定し過ぎた(判定領域Ab,Adを広く規定し過ぎた)と判断し、判定領域Aa,Ac、および/または判定領域Ab,Adの広さを手動で調整したり、上記の一連の手順における各係数を変更して新たな判定領域Aa,Ac、および/または判定領域Ab,Adを規定させたりする。なお、上記の「予め規定された割合」は、「0%」よりも大きく「100%」よりも小さい範囲内で「10%」以外の任意の割合に規定することができる。
【0122】
また、「報知処理」としては、上記の処理に代えて、以下のような処理を行うこともできる。具体的には、一例として、処理部23は、「判定処理」において、
図26に示すように、まず、2次元グラフを横軸(「縦軸および横軸の他方」の一例)の方向で10個(「Ga=10個」の例)に分割したGa=10個の矩形領域A10〜A19(「第2の矩形領域」の一例)を特定する。次いで、処理部23は、判定領域Aaを「少なくとも一方の領域」とするときには判定領域Aa以外の領域に「第2の対応点」が含まれている矩形領域A10〜A19の数を特定すると共に、判定領域Abを「少なくとも一方の領域」とするときには判定領域Abに「第2の対応点」が含まれている矩形領域A10〜A19の数を特定する。つまり、矩形領域A10〜A19のうちの「放電波形成分に対応すると判定される第2の対応点」が存在する領域の数を特定する。この際に、同図に示す例では、該当する領域が矩形領域A10の1つであると特定される。
【0123】
続いて、処理部23は、特定した領域の数が「予め規定された数(一例として、Ga=10/2=5)」以上のときに、「放電波形成分と判定されるポイントが位置する領域が50%を超えました」とのメッセージを表示部22に表示させる(「予め規定された報知処理」の他の一例)。なお、同図に示す例では、特定された領域の数が1つだけのため、上記のようなメッセージが表示されることなく、前述したような判定結果が表示部22に表示されるが、上記のようなメッセージが表示された場合、そのメッセージを見た利用者は、波形データD0の測定時にそれほど多くの放電現象が発生している筈がないと判断したときには、判定領域Aaを狭く規定し過ぎた(判定領域Abを広く規定し過ぎた)と判断し、判定領域Aa、および/または判定領域Abの広さを手動で調整したり、上記の一連の手順における各係数を変更して新たな判定領域Aa、および/または判定領域Abを規定させたりする。なお、上記の「Ga個」は、10個以外で2以上の任意の自然数に規定することができる。また、「予め規定された数」についても、5個以外でGa個以下の任意の自然数に規定することができる。
【0124】
このように、このデータ処理装置3では、放電波形成分が含まれているか否かを特定する基準となる「測定値範囲」の「測定値範囲データ」と、「測定値範囲データ」との対比によって放電波形成分が含まれているか否かを特定可能な「比較値データ」とを波形データD0に基づいて生成し、生成した「測定値範囲データ」および「比較値データ」を含めて検査用データDcを生成する。具体的には、処理部23が、波形データD0を使用して「第1の処理」から「第10の処理」までの各処理を順次実行し、「第10の処理」によって規定した「測定値範囲としての少なくとも一方の領域(本例では、「第1の判定領域」としての判定領域Aa(または、判定領域Ac)、および「第2の判定領域」としての判定領域Ab(または、判定領域Ad)の双方)」を特定可能な領域データDa(測定値範囲データ)と、「第7の処理」によって生成した波形データD7、および「第8の処理」によって生成した波形データD8(比較値データ)とを含めて検査用データDcを生成する。また、このデータ処理用プログラムDpは、上記の各処理をデータ処理装置3の処理部23に実行させる。
【0125】
したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、検査対象Xについて取得した1つの波形データD0に基づいて、放電波形成分が存在するか否かを判定するための領域データDaと、領域データDaの判定領域(判定領域Aa〜Ad)との対比によって放電波形成分が存在するか否かを判定可能な波形データD7,D8とを生成することができる。このため、複数回の測定処理が不要となり、複数の「測定対象」についての個体差の影響や、測定処理毎の測定環境の相違に起因する測定値Dsのばらつきの影響を受けることがなくなるため、放電現象が発生しているか否かの判定精度を十分に向上させることができるだけでなく、判定用の基準値(閾値)を生成する処理を別個に行う必要もなくなることから、利用者の負担を十分に軽減することができる。
【0126】
また、このデータ処理装置3では、処理部23が、「第9の処理」に先立ち、波形データD5の各「第5の値」の絶対値を最大値が「1」となるように正規化した「第9の値」を演算して波形データD9を生成すると共に、各「第9の値」に係数Kaを乗じた値と、各「第9の値」のサンプリングタイミングに対応する波形データD7の各「第7の値」とのいずれか大きい一方を新たな「第7の値」として新たな波形データD7を生成する「第11の処理」を実行する。
【0127】
また、このデータ処理装置3では、処理部23が、「第9の処理」に先立ち、波形データD7の各「第7の値」を、対象の「第7の値」に対してJaサンプリング前の「第7の値」から対象の「第7の値」までの(Ja+1)個の「第7の値」、および対象の「第7の値」から対象の「第7の値」に対してJbサンプリング後の「第7の値」までの(Jb+1)個の「第7の値」の少なくとも一方を含む予め規定されたJc個の「第7の値」のうちの最大値にそれぞれ置き換えて新たな波形データD7を生成する「第12の処理」を実行する。
【0128】
また、このデータ処理装置3では、処理部23が、「第9の処理」に先立ち、波形データD7の各「第7の値」のうち、Iサンプリング前の「第7の値」よりも小さい「第7の値」を、Iサンプリング前の「第7の値」よりも小さい「第7の値」と、Iサンプリング前の「第7の値」に係数Kbを乗じた「第10の値」とのいずれか大きい一方に置き換えて新たな波形データD7を生成する「第13の処理」を実行する。
【0129】
したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、「第7の値」が「0」に近い値となる特異点の数を十分に減少させることができ、これにより、放電波形成分の有無を一層高精度に判定し得る判定領域Aaおよび/または判定領域Abを規定することができると共に、検査用データDcに基づいて放電波形成分の有無を判定する際に、新たな波形データD7に基づいて2次元グラフ上に「第2の対応点」をプロットすることで放電波形成分の有無を一層高精度に判定することが可能となる。
【0130】
また、このデータ処理装置3では、処理部23が、「第9の処理」に先立ち、波形データD7の各「第7の値」のうちの最大値に対応する測定値Dsよりも後にサンプリングされた測定値Dsに対応する「第7の値」を、対象の「第7の値」に対してHaサンプリング前の「第7の値」が、対象の「第7の値」を含んで連続するHbサンプリング分の「第7の値」を平均化した値に係数Kcを乗じた「第11の値」以下のときに、対象の「第7の値」と、Haサンプリング前の「第7の値」に予め規定された係数Kdを乗じた「第12の値」とのいずれか小さい一方に置き換えて新たな波形データD7を生成する「第14の処理」を実行する。
【0131】
したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、測定値の変化率が徐々に小さくなる波形データD0を対象とするときに、変化率の減少の度合いとは不釣り合いに「第7の値」が急激に大きな値に変化するような変化状態を、変化率の減少の度合いに応じた適当な変化状態とすることができ、これにより、放電波形成分の有無を一層高精度に判定し得る判定領域Aaおよび/または判定領域Abを規定することができると共に、検査用データDcに基づいて放電波形成分の有無を判定する際に、新たな波形データD7に基づいて2次元グラフ上に「第2の対応点」をプロットすることで放電波形成分の有無を一層高精度に判定することが可能となる。
【0132】
さらに、このデータ処理装置3では、処理部23が、「第14の処理」において、Haサンプリング前の「第7の値」が、Hbサンプリング分の「第7の値」を平均化した値に係数Keを乗じた「第13の値」よりも小さいときに、対象の「第7の値」を「第13の値」に置き換える。したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、「第7の値」の変化状態を一層好適な状態とすることができる。
【0133】
また、このデータ処理装置3では、処理部23が、「第9の処理」に先立ち、波形データD7の各「第7の値」のうちの最大値に対応する測定値Dsよりも前にサンプリングされた測定値Dsに対応する「第7の値」を、対象の「第7の値」と、対象の「第7の値」に対してHcサンプリング前の「第7の値」に係数Kfを乗じた「第14の値」とのいずれか大きい一方に置き換えて新たな波形データD7を生成する「第15の処理」を実行する。
【0134】
したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、測定値の変化率が徐々に大きくなる波形データD0を対象とするときに、「第7の値」が「0」に近い値となる特異点の数を十分に減少させることができ、これにより、放電波形成分の有無を一層高精度に判定し得る判定領域Aaおよび/または判定領域Abを規定することができると共に、検査用データDcに基づいて放電波形成分の有無を判定する際に、新たな波形データD7に基づいて2次元グラフ上に「第2の対応点」をプロットすることで放電波形成分の有無を一層高精度に判定することが可能となる。
【0135】
さらに、このデータ処理装置3では、処理部23が、「第15の処理」において、対象の「第7の値」および「第14の値」の双方が、対象の「第7の値」を含んで連続するHdサンプリング分の「第7の値」を平均化した値に係数Kgを乗じた「第15の値」よりも小さいときに、対象の「第7の値」を「第15の値」に置き換える。したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、「第7の値」が「0」に近い値となる特異点の数をさらに減少させることができる。
【0136】
また、このデータ処理装置3では、処理部23が、「第10の処理」において、2次元グラフの原点P0を通過する各「第1の対応点」の回帰直線(
図22,23における二点鎖線L)を特定し、特定した回帰直線における2次元グラフの横軸の値が「1」のときの縦軸の値を「第16の値」として特定し、かつ、2次元グラフの原点P0、縦軸の値が「第16の値」で横軸の値が「1」の点P1、および縦軸の値が「0」で横軸の値が「1」の点P2の3点を頂点とする三角形領域A1を特定すると共に、特定した三角形領域A1に基づいて「少なくとも一方の領域」を規定する。
【0137】
したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、放電波形成分の値に対応する「第2の対応点」がプロットされる可能性が極めて低い三角形領域A1を確実かつ容易に特定することができ、この三角形領域A1に基づいて、判定領域Aaおよび/または判定領域Abを容易に特定して領域データDaを生成することができる。
【0138】
さらに、このデータ処理装置3では、処理部23が、2次元グラフの縦軸に波形データD1の各「第1の値」を対応させると共に2次元グラフの横軸に各「第1の値」のサンプリングタイミングに対応する波形データD7の各「第7の値」を対応させて「第1の値」および「第7の値」の「第3の対応点」を2次元グラフ上にそれぞれプロットすると共に、横軸の値が「0.5」以下の予め規定された「第17の値」以下である「第3の対応点」を抽出し、抽出した各「第3の対応点」における縦軸の値の標準偏差nσを演算すると共に、原点P0、点P1、縦軸の値が標準偏差nσと「第16の値」との和で横軸の値が「1」の点P3、および縦軸の値が標準偏差nσで横軸の値が「0」の点P4の4点を頂点とする矩形領域A2を特定し、特定した矩形領域A2および三角形領域A1に基づいて「少なくとも一方の領域」を規定する。
【0139】
したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、特定した矩形領域A2および三角形領域A1に基づいて判定領域Aaおよび/または判定領域Abを容易に特定することができ、波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれているか否かを高精度に判定可能な判定領域Aaおよび/または判定領域Abの領域データDaを容易に生成することができる。
【0140】
また、このデータ処理装置3では、処理部23が、「第10の処理」において、すべての「第1の対応点」が含まれる最小の方形領域A3を特定すると共に、特定した方形領域A3に基づいて「少なくとも一方の領域」を規定する。したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、非常に単純な処理によって判定領域Acおよび/または判定領域Adの領域データDaを生成することができる。
【0141】
さらに、このデータ処理装置3では、処理部23が、検査用データDcに基づき、「第2の対応点」と「少なくとも一方の領域」との位置関係を特定して波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれているか否かを判定する「判定処理」を実行し、「判定処理」の判定結果を特定可能な検査結果データDrを生成する。また、このデータ処理用プログラムDpは、上記の処理をデータ処理装置3の処理部23に実行させる。
【0142】
したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、複数回の測定処理が不要となり、、複数の「測定対象」についての個体差の影響や、測定処理毎の測定環境の相違に起因する測定値Dsのばらつきの影響を受けることがなくなるため、放電現象が発生しているか否かの判定精度を十分に向上させることができる。また、基準値(閾値)との比較による判定とは異なり、測定環境の変化の影響による誤判定を回避して判定精度を十分に高めることができる。
【0143】
また、このデータ処理装置3では、処理部23が、判定領域Aa(または、判定領域Ac)を「少なくとも一方の領域」とするときには「第2の対応点」の総数に占める判定領域Aa(または、判定領域Ac)に含まれない「第2の対応点」の割合を特定すると共に、判定領域Ab(または、判定領域Ad)を「少なくとも一方の領域」とするときには「第2の対応点」の総数に占める判定領域Ab(または、判定領域Ad)に含まれる「第2の対応点」の割合を特定し、特定した割合が予め規定された割合以上のときに、予め規定された「報知処理」を実行する。
【0144】
また、このデータ処理装置3では、処理部23が、2次元グラフを横軸の方向でGa個に分割したGa個の矩形領域A10〜A19を特定し、判定領域Aa(または、判定領域Ac)を「少なくとも一方の領域」とするときには判定領域Aa(または、判定領域Ac)以外の領域に「第2の対応点」が含まれている矩形領域A10〜A19の数を特定すると共に、判定領域Ab(または、判定領域Ad)を「少なくとも一方の領域」とするときには判定領域Ab(または、判定領域Ad)に「第2の対応点」が含まれている矩形領域A10〜A19の数を特定し、特定した数が予め規定された数以上のときに、予め規定された「報知処理」を実行する。
【0145】
したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれているか否かの判定結果を確実かつ容易に認識させることができる。
【0146】
また、このデータ処理装置3では、処理部23が、「第2の対応点」をプロットした2次元グラフと「少なくとも一方の領域」を示す「領域表示」とを「判定処理」の判定結果と共に表示部22に表示させる。したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、波形データD0の波形W0に放電波形成分が含まれているか否かの判定結果を一層確実かつ一層容易に認識させることができる。
【0147】
また、この測定システム1では、上記のデータ処理装置3と、測定対象(検査対象X)についての予め規定されたサンプリング周期での測定を実行して波形データD0を出力する測定装置2とを備えて構成されている。したがって、この測定システム1によれば、波形データD0の取得(生成)から検査用データDcの生成(または、検査用データDcおよび検査結果データDrの生成)までの一連の処理を1つのシステムで実行することができる。
【0148】
なお、「データ処理装置」および「測定システム」の構成や、「データ処理用プログラム」による処理の手順は、上記のデータ処理装置3の構成、およびデータ処理装置3を備えて構成された測定システム1の構成の例や、データ処理用プログラムDpの記述の内容の例に限定されない。例えば、「第1の対応点」から「第3の対応点」のプロット時に、「縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方」を「縦軸」とし、かつ「縦軸および横軸の他方」を「横軸」とした例について説明したが、「縦軸および横軸のいずれか予め規定された一方」を「横軸」とし、「縦軸および横軸の他方」を「縦軸」としてプロットしてもよい。
【0149】
また、検査用データDcの生成処理、および検査用データDcに基づく「放電波形成分が存在するか否かの判定処理」の双方をデータ処理装置3において実行する構成を例に挙げて説明したが、検査用データDcを生成するデータ処理装置3とは別個の「データ処理装置」において検査用データDcに基づく「判定処理」を実行する構成を採用することもできる。さらに、「判定処理」の判定結果をデータ処理装置3の構成要素である表示部22に表示させる構成を例に挙げて説明したが、外部装置としての表示装置(表示部)に判定結果を表示させる構成を採用することもできる。
【0150】
また、測定装置2と、測定装置2とは別体のデータ処理装置3とを備えて測定システム1を構成した例について説明したが、「測定装置」および「データ処理装置」を一体化した装置を「測定システム」として構成することもできる。加えて、「測定対象」としての巻線部品についてのデータを処理して検査する例について説明したが、「データ処理装置」によるデータ処理の対象や、「測定システム」による検査の対象はこれに限定されず、コンデンサや抵抗体などの各種の電子部品や、回路基板上の任意の検査ポイント間についての「波形データ」に基づいてデータ処理や検査処理を実行することができる。