特許第6965134号(P6965134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965134
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】センタリング保持装置
(51)【国際特許分類】
   B25H 1/10 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
   B25H1/10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-234872(P2017-234872)
(22)【出願日】2017年12月7日
(65)【公開番号】特開2019-98492(P2019-98492A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 喜代司
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 実公平05−009293(JP,Y2)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0152285(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形底を有する容器を保持しつつセンタリングするセンタリング保持装置において、
前記容器の底部を所定位置で支えるベース支持部と、
前記容器の外側面を取り囲むように前記ベース支持部に複数配置された誘導保持部と、
複数配置された前記誘導保持部を、前記容器の中心側に向かって付勢させつつ、前記容器の中心基準で同心状に開閉させる同心開閉機構とを備え、
前記誘導保持部は、前記容器を前記所定位置に誘導する誘導部と、当該容器の外側面を押し付け合うことで当該容器を保持する当接部とを有し、
前記誘導部は、前記当接部と連続した面又は稜部を有し、前記ベース支持部から離れるにつれて前記容器の外側面よりも外側に拡がるように傾斜したテーパ形状をしており、
前記同心開閉機構は、
前記誘導保持部を前記容器の前記外側面の内側ないし外側に揺動させる揺動アーム部と、
前記誘導保持部が前記容器の中心基準で同心状に揺動するように、前記揺動アーム部の揺動角度を規制する連結アーム部と、
前記揺動アーム部に取り付けられた弾性体の復元力または圧力付与手段の付勢力により、前記誘導保持部を前記容器の中心側に向かって付勢させる付勢部とを備えた
ことを特徴とする、センタリング保持装置。
【請求項2】
前記誘導保持部は、前記容器の外側面を取り囲むように等間隔で3ヶ所に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のセンタリング保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形底を有する容器を保持しつつセンタリングする、センタリング保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円形底と側面とで構成された容器(いわゆる、円筒容器)の底面や側面の内側(いわゆる、内面)に付着した異物の検査を行う装置が種々提案されている(例えば、特許文献1,2等)。そして、これら円筒容器を検査するために、人手やローラコンベア等により円筒容器を所定位置へ運び、保持(セット)される。そして、所定の検査が済めば円筒容器の保持が解除(リリース)され、人手やローラコンベア等により運び出される。
【0003】
一方、円板状のワークを、その中心がターンテーブルの回転中心に一致するように、芯出しするためのセンタリング装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−288067号公報
【特許文献2】特開平7−240037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
円筒容器内に付着した異物の個数や付着位置を正確に検出するには、円筒容器を所定の姿勢で保持するだけではなく、中心基準でセンタリングする必要がある。
【0006】
さらに、円筒容器の運搬を人手で行う場合、円筒容器のセット/リリースに際して、予め保持機構を保持状態/保持解除状態に切り替える必要があり、作業者にとっては不便であった。また、円筒容器は中が空洞であるが故に、セット時の衝撃で大小問わず異音が発生したり反響したりするため作業者のストレス要因となっていた。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、円筒容器のセット/リリースに際して、予め保持機構を保持状態/保持解除状態に切り替える必要が無く、セット時の衝撃で異音が発生等することを防ぎ、所望の精度でセンタリング保持できる装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明に係る一態様は、
円形底を有する容器を保持しつつセンタリングするセンタリング保持装置において、
容器の底部を所定位置で支えるベース支持部と、
容器の外側面を取り囲むようにベース支持部に複数配置された誘導保持部と、
複数配置された誘導保持部を、容器の中心側に向かって付勢させつつ、容器の中心基準で同心状に開閉させる同心開閉機構とを備え、
誘導保持部は、容器を所定位置に誘導する誘導部と、当該容器の外側面を押し付け合うことで当該容器を保持する当接部とを有し、
誘導部は、当接部と連続した面又は稜部を有し、ベース支持部から離れるにつれて容器の外側面よりも外側に拡がるように傾斜したテーパ形状をしており、
同心開閉機構は、
誘導保持部を容器の外側面の内側ないし外側に揺動させる揺動アーム部と、
誘導保持部が容器の中心基準で同心状に揺動するように、揺動アーム部の揺動角度を規制する連結アーム部と、
揺動アーム部に取り付けられた弾性体の復元力または圧力付与手段の付勢力により、誘導保持部を容器の中心側に向かって付勢させる付勢部とを備えた
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記のセンタリング保持装置によれば、円筒容器のセット/リリースに際して、予め保持機構を保持状態/保持解除状態に切り替える必要が無く、セット時の衝撃で異音が発生等することを防ぎ、所望の精度でセンタリング保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図である。
図2】本発明を具現化する形態の一例の容器を保持していない状態を示す平面図である。
図3】本発明を具現化する形態の一例の容器を保持している状態を示す平面図である。
図4】本発明を具現化する形態の要部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図を用いながら説明する。
【0012】
なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、XY平面を水平面、Z方向を鉛直方向とする。特に、Z方向は矢印の方向を上、その逆方向を下と表現する。
【0013】
図1は、本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図である。図1には、本発明に係るセンタリング保持装置1の斜視図が示されている。
【0014】
センタリング保持装置1は、円形底を有する容器Wを保持しつつセンタリングするものであり、ベース支持部2、誘導保持部3、同心開閉機構部4等を備えている。
【0015】
ベース支持部2は、容器Wの底部Wbを所定位置で支えるものである。具体的には、ベース支持部2は、容器Wの底部と接する上面が水平に配置されている。
【0016】
誘導保持部3は、容器Wの底部Wbをベース支持部2に誘導しつつ、容器Wの外側面Wsを保持するものである。具体的には、誘導保持部3は、容器Wの外側面を取り囲むように等間隔で3ヶ所に配置されている。また、誘導保持部3は、誘導部30a〜cと、当接部31a〜cとを有している。
【0017】
誘導部30a〜cは、容器Wを前記所定位置に誘導するものである。当接部31a〜cは、容器Wの外側面Wsを押し付け合うことで容器Wを保持するものである。さらに、誘導部30a〜cは、当接部31a〜cと連続した面又は稜部を有し、ベース支持部2から離れるにつれて容器Wの外側面Wsよりも外側に拡がるように傾斜したテーパ形状をしている。
【0018】
この様な構成をしているため、容器Wが載置される際(つまり、上方から下方に向かって移動する際)、容器Wの底部Wbが水平方向に位置ずれしていたとしても、誘導保持部3の誘導部30a〜cにより底部Wbがセンタリングされながらベース支持部2の上面に近づき、所定位置へと誘導される。そして、容器Wの底部Wbがベース支持部2に支持された状態(着底とも言う)になれば、容器Wの外側面Wsを当接部31a〜cで押し付け合うことで容器Wを保持することができる。
【0019】
同心開閉機構部4は、複数配置された誘導保持部3を、容器Wの中心側に向かって付勢させつつ、容器Wの中心Wc基準で同心状に開閉させるものである。
【0020】
具体的には、同心開閉機構部4は、揺動アーム部41a〜c、連結アーム部42a〜c、付勢部43a〜c、支柱44a〜c、連結ピン45a〜c、長孔部46a〜c、スライドピン47a〜c、ストッパ部48a〜c等を備えている。
【0021】
揺動アーム部41a〜cは、誘導保持部3を容器Wの外Wsの内側ないし外側に揺動させるものである。具体的には、揺動アーム部41a〜cは、所定の長さを有する板状の部材で構成されており、中央部に誘導保持部3が取り付けられている。
【0022】
連結アーム部42a〜cは、揺動アーム部41a〜cが独立して揺動しないように互いを規制し合い、揺動アーム部41a〜cに取り付けられた誘導保持部3を容器Wの中心Wc基準で同心状に開閉させるものである。
【0023】
付勢部43a〜cは、揺動アーム部42a〜cに取り付けられた弾性体の復元力により、誘導保持部3を容器Wの中心Wc側に向かって付勢させるものである。具体的には、付勢部43a〜cは、揺動アーム部42a〜cに取り付けられた側とは反対側の端部が、ベース支持部2に取り付けられている。ここで言う弾性体としては、コイルバネや板バネ等が例示できる。また、弾性体の復元力としては、コイルバネや板バネ等が引っ張り伸ばされて(又は、押し縮められて)弾性変形している状態から元に戻ろうとする力を意味する。そして、この弾性体の復元力が、当接部31a〜cで容器Wの外側面Wsを保持する際の保持力として作用する。
【0024】
支柱44a〜cは、揺動アーム部42a〜cをベース支持部2の上面と平行に支えつつ、揺動アーム部42a〜cが回転(つまり、揺動)する際の中心となるものである。具体的には、支柱a〜cは、例えば円柱状部材からなり、下端部がベース支持部2に取り付けられている。一方、支柱a〜cの上端部には、ベアリングや軸受等を介して、揺動アーム部42a〜cが取り付けられている。
【0025】
連結ピン45a〜cは、揺動アーム部41a〜cが揺動する力を連結アーム部42a〜cに伝える(又は、連結アーム部42a〜cの往復動作する力を揺動アーム部41a〜cに伝える)ものである。具体的には、連結ピン45a〜cは、揺動アーム部41a〜cと連結アーム部42a〜cとを回転可能に連結するものでありる。より具体的には、揺動アーム部41a〜cの端部と連結アーム部42a〜cの端部の一方又は双方に設けられた孔部にすきま嵌めされた、フランジ付きボルト・ナットやリベット等が例示できる。
【0026】
長孔部46a〜cとスライドピン47a〜cは、揺動アーム部41a〜cが揺動する力を連結アーム部42a〜cに伝える(又は、連結アーム部42a〜cの往復動作する力を揺動アーム部41a〜cに伝える)ものである。具体的には、長孔部46a〜cは、揺動アーム部41a〜cに設けられており、スライドピン47a〜cは、連結アーム部42a〜cの端部に取り付けられている。より具体的には、スライドピン47a〜cは、長孔部46a〜cにすきま嵌めされてスライド可能な、フランジ付きボルト・ナットやリベット等が例示できる。
【0027】
ストッパ部48a〜cは、揺動アーム部41a〜cの揺動を規制するものである。具体的には、ストッパ部48a〜cは、例えば円柱状部材からなり、下端部がベース支持部2に取り付けられている。そして、ストッパ部48a〜cの側面は、揺動アーム部41a〜cの側面と当接する高さに設定されている。より具体的には、揺動アーム部41a〜cに付勢力が作用しても、誘導部30a〜cの面又は稜部が容器Wの外側面Wsよりも外側に配置されるよう、ストッパ部48a〜cが配置されている。
【0028】
図2は、本発明を具現化する形態の一例の容器を保持していない状態を示す平面図である。図2には、容器Wを載置する前の状態であるため、同心開閉機構4が閉状態にある様子が示されている。
【0029】
図3は、本発明を具現化する形態の一例の容器を保持している状態を示す平面図である。図3には、容器Wが載置された状態であるため、同心開閉機構4が開状態にあり、当接部31a〜cで容器Wの外側面Wsを中心Wc側に向かって押し付け合っている様子が示されている。
【0030】
この様な構成をしているため、容器Wが載置される際(つまり、上方から下方に向かって移動する際)、容器Wの底部Wbが水平方向に位置ずれしていたとしても、同心開閉機構部4が誘導保持部3の誘導部30a〜c及び当接部31a〜cを容器Wの中心Wc基準で同心状に開閉させるので、底部Wbがセンタリングされながらベース支持部2の上面に近づき、所定位置へと誘導される。そして、容器Wの底部Wbがベース支持部2に支持された状態(着底とも言う)になれば、容器Wの外側面Wsを当接部31a〜cで押し付け合うことで容器Wを保持することができる。
【0031】
一方、容器Wを所定位置から取り出す際(つまり、下方から上方に向かって移動する際)、作業者が容器Wを傾けたり水平方向にずらしたりすれば、同心円状に誘導保持部3が外側に移動する(つまり、同心開閉機構部4が開く)ため、当接部31a〜cで押し付け合っていた容器Wを保持する力が解除される。
【0032】
本発明に係るセンタリング保持装置1は、この様な構成をしているため、容器Wのセット/リリースに際して、予め保持機構を保持状態/保持解除状態に切り替える必要が無く、セット時の衝撃で異音が発生等することを防ぎ、所望の精度でセンタリング保持できる。
[変形例]
なお上述では、付勢部43a〜cとして、コイルバネや板バネ等の弾性体を例示し、弾性変形からの復元力により誘導保持部3を容器Wの中心Wc側に向かって付勢させる構成を例示した。
【0033】
しかし、付勢部43a〜cは、この様な構成に限らず、他の構成であっても良い。例えば、揺動アーム部41a〜cに取り付けられた圧力付与手段の付勢力により、誘導保持部3を容器Wの中心Wc側に向かって付勢させるものである。具体的には、圧力付与手段としては、エアシリンダや油圧シリンダ、電動アクチュエータ等が例示でき、これらのピストンやロッド等による押付力が付勢力として作用する。
【0034】
[変形例]
なお上述では、本発明に係るセンタリング保持装置1として、誘導保持部3が、容器Wの外側面を取り囲むように等間隔で3ヶ所に配置された構成を例示した。誘導保持部3が、容器Wの外側面Wsの周囲に対して等間隔で3ヶ所に配置されていれば、当接部31a〜cが容器Wの外側面を中心側に向かって押し合う力がそれぞれ均等になるため、センタリングしやすくなるので好ましい。
【0035】
しかし、本発明を具現化する上で、センタリング保持装置に係る誘導保持部は、この様な構成・配置に限定されず、下述の様な構成・配置であっても良い。
【0036】
図4(a)〜(d)は、本発明を具現化する形態の要部の変形例を示す平面図であり、図4(a)〜(d)には、容器Wに対する誘導保持部3の構成・配置の変形例が示されている。
【0037】
図4(a)(b)には、容器Wの中心Wcに対して、誘導保持部3がそれぞれ異なる角度θ1,θ2,θ3で配置されている構成が例示されている。
【0038】
また誘導保持部3は、図4(c)に例示するように、4ヶ所であっても良いし、それ以上であってもよい。
【0039】
また誘導保持部3は、図4(d)に例示するように、容器Wの中心Wcを挟んで対向する位置に、2ヶ所配置し、それぞれの誘導部および当接部が、容器Wの外側面の曲率に添うように湾曲した形状であっても良い。
【0040】
なお、図4(a)〜(d)には、容器Wに対する誘導保持部3の構成・配置について例示したが、同心開閉機構4を構成する揺動アーム部や連結アーム部等は、個数や配置、長さ、角度等を適宜設定しておく。
【符号の説明】
【0041】
1 センタリング保持装置
2 ベース支持部
3 誘導保持部
4 同心開閉機構
30a〜c 誘導部
31a〜c 当接部
41a〜c 揺動アーム部
42a〜c 連結アーム部
43a〜c 付勢部
44a〜c 支柱(揺動中心)
45a〜c 連結回転部(リンク用)
46a〜c 長孔部(リンク/逃げ用)
47a〜c ピン(長孔をスライドする)
48a〜c ストッパ部
W 円筒容器
Wb 底部
Ws 外側面
Wc 中心
図1
図2
図3
図4