(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本実施形態に係る膜ろ過装置の一例を示す模式断面図である。
図1に示す膜ろ過装置1は、凝集槽10と、浸漬槽12と、供給手段の一例としての供給装置14と、浸漬型膜モジュール16と、処理水槽18と、ポンプ20a,20bと、原水配管22と、凝集剤添加配管24と、ろ過処理水配管26と、汚泥排出管28と、逆洗配管30と、を備える。凝集槽10には、撹拌装置31が設置されることが好ましい。
【0015】
図1に示す浸漬型膜モジュール16は、浸漬型ろ過膜32及び集水配管34を備えている。浸漬型ろ過膜32は、浸漬槽12内に設置されている。浸漬型ろ過膜32は単一でも複数でもよい。集水配管34は、浸漬型ろ過膜32の上端に設置されている。
図1に示す浸漬型ろ過膜32は、例えば、その内部に膜を透過した処理水が流入する集水空間が形成されており、浸漬型ろ過膜32の上端に設置された集水配管34と連通している。
【0016】
図1に示す供給装置14は、凝集処理水配管36と、分配管38とを備えている。供給装置14は、凝集処理水配管36に設置されるポンプ(不図示)を備えることが好ましい。分配管38は、浸漬槽12内に設置され、浸漬型ろ過膜32より下方に配置されている。分配管38には、複数の吐出口40が設けられており、複数の吐出口40は所定の間隔を空けて配置されている。吐出口40は、分配管38のどの位置に設けられていてもよいが、
図1においては、分配管38の下側に設けられ、後述する凝集処理水が水平方向より下方に吐出されるように構成されている。なお、
図1に示す供給装置14の構成は一例であって、変形例については後述する。
【0017】
凝集槽10の原水入口には原水配管22が接続され、凝集槽10の薬品入口には凝集剤添加配管24が接続されている。また、凝集槽10の出口と分配管38とは凝集処理水配管36により接続されている。また、集水配管34と処理水槽18の処理水入口とはろ過処理水配管26により接続されている。浸漬槽12の下部出口には汚泥排出管28が接続されている。ろ過処理水配管26と処理水槽18の処理水出口とは逆洗配管30により接続されている。ろ過処理水配管26にはポンプ20aが設置され、逆洗配管30にはポンプ20bが設置されている。
【0018】
本実施形態に係る膜ろ過装置1の動作の一例について説明する。
【0019】
懸濁物質等を含む原水(被処理水)が、原水配管22から凝集槽10内に供給される。また、凝集剤が、凝集剤添加配管24から凝集槽10内に供給される。凝集槽10内では、撹拌装置31により被処理水と凝集剤とが撹拌され、凝集剤の凝集作用により、被処理水中の懸濁物質がフロック化される。ここで、凝集剤は、塩基度が60%%以上70%以下のポリ塩化アルミニウム溶液を使用することが好ましい。塩基度が60%以上70%以下のポリ塩化アルミニウム溶液を使用することで、例えば、被処理水のpHが6〜8.5程度であれば、被処理水のpHを調整しなくても懸濁物質を十分に凝集させることができ、pH調整に必要な薬品使用量を削減することが可能である。また、被処理水中の懸濁物質と共に有機物もフロック中に取り込まれるので、後述する膜ろ過処理により、有機物濃度の低い清浄なろ過水を得ることができる。
【0020】
凝集処理後、フロック化した懸濁物質(以下、フロック)を含む被処理水と凝集剤とを含む凝集処理水は、凝集処理水配管36を経由して分配管38に供給される。分配管38を通る凝集処理水は吐出口40から吐出される(
図1では、水平方向より下方に吐出される)。すなわち、凝集処理水は浸漬型ろ過膜32より下方から浸漬槽12内に供給される。そして、吐出口40から吐出された凝集処理水は、分配管38より上方に位置する浸漬型ろ過膜32に向かって上向流で流れる。ここで、ろ過処理水配管26に設置されたポンプ20aによって、浸漬型ろ過膜32には吸引圧力(負圧)が付与されており、浸漬型ろ過膜32に向かって上向流で流れる凝集処理水が、浸漬型ろ過膜32によりろ過される(ろ過工程)。浸漬型ろ過膜32を透過したろ過水(処理水)は、膜内の内部空間(二次側(処理水側))、集水配管34、ろ過処理水配管26を通り、処理水槽18に供給される。
【0021】
このように、供給装置14により浸漬型ろ過膜32より下方から浸漬槽12内に凝集処理水を供給し、凝集処理水を浸漬型ろ過膜32に向かって上向流で流した場合、凝集処理水中のフロックの一部(例えば、粒径の大きいフロック)は、浸漬型ろ過膜32に達する前に沈降する、或いは分配管38と浸漬型ろ過膜32との間に浮遊するため、浸漬型ろ過膜32より上方から浸漬槽12内に凝集処理水を供給し、凝集処理水を浸漬型ろ過膜32に向かって下向流で流した場合と比較して、浸漬型ろ過膜32に接触するフロックの量を低減することができる。その結果、浸漬型ろ過膜32より上方から浸漬槽12内に凝集処理水を供給し、凝集処理水を浸漬型ろ過膜32に向かって下向流で流した場合と比較して、フロックによる浸漬型ろ過膜32の閉塞が抑えられ、ろ過フラックスの低下が抑制される。
【0022】
また、本実施形態では、浸漬型ろ過膜32に向かって流れる上向流の流速を調整することで、沈降するフロックと上向流とのバランスから、分配管38(凝集処理水の供給点)と浸漬型ろ過膜32下端との間に、ブランケットゾーンと呼ばれるフロック群を形成することが可能である。そして、
図1に示すように、ブランケットゾーン42を形成することで、上向流で流れる凝集処理水中のフロックの一部は、ブランケットゾーン42に捕捉されるため、浸漬型ろ過膜32に接触するフロック量をより低減し、ろ過フラックスの低下をより抑制することが可能となる。浸漬型ろ過膜32に向かって流れる上向流の流速の調整は、例えば、供給装置14により供給する凝集処理水の流量を調整することにより行われる。
【0023】
また、本実施形態では、浸漬槽12の底部に堆積したフロックを汚泥排出管28から排出することが好ましい。フロックの排出タイミングは、ろ過工程中(ポンプ20a稼働中)やろ過工程を停止した後(ポンプ20a停止中)等、特に制限されるものではない。なお、フロック中に有価物が含まれている場合には、フロックは汚泥排出管28から不図示の回収槽に供給(回収)されることが好ましい。
【0024】
また、本実施形態では、定期的に逆洗を実施することが好ましい。具体的には、ポンプ20aを停止した後、ポンプ20bを稼働させ、処理水槽18内の処理水を逆洗配管30、ろ過処理水配管26、集水配管34を通して浸漬型ろ過膜32の内部空間(二次側)に供給し、浸漬型ろ過膜32の一次側に透過させる。逆洗を行うタイミングは、特に制限されるものではなく、例えば、予め定めた一定の時間間隔で実施しても良いし、予め定めた一定のろ過水量の間隔で実施しても良い。
【0025】
図2は、本実施形態に係る膜ろ過装置の他の一例を示す模式断面図である。
図2に示す膜ろ過装置2において、
図1に示す膜ろ過装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する(その他の図も同様である)。
図2に示す膜ろ過装置2は、浸漬槽12内を、第1室44と第2室46とに仕切る仕切り板48を備えている。仕切り板48は、例えば、
図2に示すように、浸漬槽12の底部から略鉛直方向に延びて、その上端が、分配管38(凝集処理水の供給点)より上方で浸漬型ろ過膜32の下端より下方に位置している。
【0026】
図2に示す膜ろ過装置2では、第1室44側に分配管38が配置され、第2室46側に汚泥排出管28が接続されている。
【0027】
分配管38を通る凝集処理水は、吐出口40から吐出され、第1室44内に供給される。すなわち、凝集処理水は浸漬型ろ過膜32より下方から浸漬槽12内に供給される。そして、吐出口40から吐出された凝集処理水は、分配管38より上方に位置する浸漬型ろ過膜32に向かって、第1室44内を上向流で流れ、浸漬型ろ過膜32によりろ過される。また、凝集処理水中のフロックの一部は、第1室44内から仕切り板48を越えて第2室46に流れ込み、第2室46内に貯留される。第2室46内に流れ込んだフロックは、仕切り板48により、第1室44内の上向流の影響を受け難いため、第1室44内のフロックより沈降し易く、濃縮され易い。したがって、第2室46内で濃縮されたフロック(汚泥)を汚泥排出管28から系外へ排出することが可能となるため、フロックの処分費を削減することが可能となる。また、第1室44内に浮遊するフロックの少なくとも一部が仕切り板48を越えて第2室46に流れ込み、第2室46内に貯留されるため、第1室44内に浮遊するフロック濃度(或いはブランケットゾーン42におけるフロック濃度)を比較的一定に保持することができ、安定した膜ろ過を行うことが可能となる。
【0028】
仕切り板48の上端位置は、浸漬槽12の液面より下方であれば特に制限されるものではなく、例えば、浸漬型ろ過膜32の下端近傍等でも良いが、
図2に示すように、分配管38(凝集処理水の供給点)より上方で浸漬型ろ過膜32の下端より下方に位置することが好ましい。第1室内のフロックの多くは、分配管38と浸漬型ろ過膜32との間に浮遊しているため、仕切り板48の上端位置を分配管38(凝集処理水の供給点)より上方で浸漬型ろ過膜32の下端より下方にすることで、第1室44内のフロックを第2室46内に効率的に流れ込ませることが可能となる。
【0029】
図3は、本実施形態に係る膜ろ過装置の他の一例を示す模式断面図である。
図3に示す膜ろ過装置3では、仕切り板48にスリット50が形成されている。スリット50は、第1室44と第2室46との間の連通路である。したがって、第1室44内の凝集処理水中のフロックの一部が、スリット50を通って第2室46に流れ込み、第2室46内に貯留される。仕切り板48に形成されるスリット50の幅、長さ、形状等は、第1室44から第2室46へのフロックの流れ込みを阻害しない範囲で適宜設定されればよい。仕切り板48に形成されるスリット50の位置は、第1室44内のフロックを第2室46内に効率的に流れ込ませる点等から、例えば、分配管38(凝集処理水の供給点)より上方で浸漬型ろ過膜32の下端より下方に位置することが好ましい。なお、スリット50が形成された仕切り板48の上端位置は、特に制限されるものではなく、浸漬槽12の液面より下方であってもよいし、浸漬槽12の液面より上方であってもよい。
【0030】
以下、本実施形態に係る膜ろ過装置の各構成について詳述する。
【0031】
凝集槽10は、被処理水と凝集剤とを急速撹拌条件下で混合する急速撹拌槽と、急速撹拌槽で混合した被処理水と凝集剤とを含む凝集処理水を緩速撹拌条件下で混合する緩速撹拌槽とから構成されることが好ましい。
【0032】
急速撹拌槽では、被処理水と凝集剤とが、例えばG値=100〜300/sの急速撹拌条件下で混合され、被処理水中の懸濁物質が凝集して微細なフロックを形成する。緩速撹拌槽では、急速撹拌槽から流入した微細なフロックを有する被処理水と凝集剤とを含む凝集処理水が、例えばGT値=23000〜210000の緩速撹拌条件下で混合され、微細なフロックを粗大化させる。このように、急速撹拌槽および緩速撹拌槽からなる凝集槽10により、粗大なフロックを含有する被処理水と凝集剤とを含む凝集処理水を浸漬槽12に導入して、膜ろ過処理を行うことができるため、より良好な水質を有するろ過水が得られる。なお、本実施形態では、急速撹拌槽及び緩速撹拌槽のいずれか一方または両方をインライン型ミキサー等に代えても良い。また、薬品の注入点を被処理水が越流し、槽に流れ込む部分に注入しても良い。
【0033】
本実施形態では、浸漬槽12の前段に凝集槽10を設置することが望ましいが、必ずしも凝集槽10を設置しなくてもよい。凝集槽10を設置しない場合には、原水配管22を凝集処理水配管36に接続し、凝集剤添加配管24を原水配管22或いは凝集処理水配管36に接続すればよい。
【0034】
凝集剤は、従来公知の凝集剤等が挙げられるが、特に、塩基度が60%以上70%以下のポリ塩化アルミニウム溶液を含むことが好ましい。塩基度が60%以上70%以下のポリ塩化アルミニウム溶液は、塩基度が40%以上50%以下の通常のポリ塩化アルミニウム溶液より、浸漬型ろ過膜32に対して剥離性の良好なフロックが形成され易く、よりろ過フラックスの低下が抑制される場合がある。
【0035】
塩基度が60%以上70%以下のポリ塩化アルミニウム溶液を用いることで、浸漬型ろ過膜32に対して剥離性が良好なフロックが形成される理由は、明らかではないが、以下のことが考えられる。塩基度が60%%以上70%%以下のポリ塩化アルミニウム溶液は高い荷電中和力を有し、塩基度が60%%以上70%%以下のポリ塩化アルミニウム溶液により形成されたフロックは荷電の中和が進んでいるため、荷電中和が進んだフロックと浸漬型ろ過膜32との親和性が低下したことによるものであると推察される。
【0036】
塩基度が60%以上70%以下のポリ塩化アルミニウム溶液は、例えば特開2009−203125号公報に記載の方法で製造することができる。具体的には、Al
2O
3濃度が5〜17質量%、Cl/Al
2O
3(モル比)が1.80〜3.60、SO
4/Al
2O
3(モル比)が0〜0.35で且つ塩基度が40〜63%の塩基性塩化アルミニウム溶液に、85℃以下の温度下でアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の化合物を添加した後、65〜85℃の温度で0.5〜2時間熟成を行うことによって製造することができる。ポリ塩化アルミニウム溶液の塩基度は、滴定により測定することができる(JIS K−154:2016)。
【0037】
ポリ塩化アルミニウム溶液は、塩基度が60%以上70%以下で、且つ、Al
2O
3濃度が10.2質量%のときのSO
4濃度が1〜4質量%、更に好ましくは1.5〜3.5質量%のポリ塩化アルミニウム溶液を用いることが好ましい。ポリ塩化アルミニウム溶液の塩基度が60%未満になると、残留アルミニウムが多くなる傾向があるので好ましくない。また、SO
4濃度が1質量%未満になると、ポリ塩化アルミニウム溶液の安定性がより増加するものの凝集性が悪くなる傾向があり、4質量%超になると、ポリ塩化アルミニウム溶液の安定性が低下する傾向がある。なお、ポリ塩化アルミニウム溶液の塩基度については、65%以上70%以下が特に好ましく、68%以上70%以下が更に好ましい。塩基度が68%以上70%以下であれば、本発明の効果が最もよく得られ、且つ、残留アルミニウムを少なくすることができる。また、PAC溶液中のAl
2O
3濃度は、9〜11質量%の範囲であることが好ましく、10質量%前後の範囲であることが更に好ましい。
【0038】
本実施形態におけるろ過工程は、ポンプ20aによる吸引式の膜ろ過処理に制限されるものではなく、浸漬槽12の水位と処理水槽18の水位との水位差によるサイホン作用を利用したサイホン式の膜ろ過処理等でもよい。
【0039】
浸漬型ろ過膜32の材質は、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ムライト、スピネル、又はこれらの混合物等のセラミック製材料、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、セルロースアセテート(CA)等の有機物製材料等が挙げられる。浸漬型ろ過膜32の形状は、例えば、管状、平膜状、中空糸膜状、スパイラル状等が挙げられる。浸漬型ろ過膜32の種類は、例えば、限外ろ過膜(UF膜)、精密ろ過膜(MF膜)、逆浸透膜(RO膜)等が挙げられる。そして、浸漬型ろ過膜32の材質、形状、種類の組み合わせについては、浸漬型ろ過膜32のろ過フラックスの低下を抑制する点で、セラミック製で、平膜状の精密ろ過膜であることが好ましい。なお、浸漬型ろ過膜32の通水方式は、内圧型、外圧型等のあらゆる通水方式が適用可能であり、クロスフローろ過やデッドエンドろ過等のあらゆるろ過方法が適用可能である。
【0040】
図4(A),(B)は、供給装置を構成する分配管の径方向断面の形状の一例を示す模式図である。分配管38に設けられる吐出口40は、分配管38のどの位置に設けられていてもよいが、
図4(A)に示すように、吐出口40から吐出される凝集処理水の吐出方向Xが水平方向Lより下方となるように配置されることが好ましく、凝集処理水の吐出方向Xが水平方向Lより30°以上下方となるように配置されることがより好ましい。これにより、浸漬槽12内のフロックにより吐出口40が閉塞されることが抑制される。また、
図4(B)に示すように、分配管38の上部にフロック堆積防止板52を設置し、分配管38上に浸漬槽12内のフロックが堆積することを抑制してもよい。
図4(B)に示すフロック堆積防止板52は、分配管38の上部を覆うようにテーパー状に広がった形状をなしているが、分配管38上にフロックが堆積し難い形状であれば
図4(B)に示す形状に制限されるものではない。なお、分配管38の径方向断面の形状は、
図4に示す円形に限定されるものではなく、多角形等でもよい。
【0041】
分配管38に設けられる吐出口40は、ブランケットゾーン42の形成が容易となる点等で、分配管38の周方向或いは長手方向に所定の間隔を空けて複数配置されることが好ましい。これにより、凝集処理水の上向流に乱流が発生して、フロックがより撹拌されるため、ブランケットゾーン42が形成され易くなる。
【0042】
図5及び
図6は、本実施形態に係る膜ろ過装置の他の一例を示す模式断面図である。供給装置14は、凝集処理水を浸漬型ろ過膜32より下方から浸漬槽12内に供給するように構成されていればよく、例えば、
図5に示す膜ろ過装置4のように、分配管38を設置せず、浸漬型ろ過膜32より下方の浸漬槽12に接続された凝集処理水配管36から直接凝集処理水を第1室44内に供給してもよい。また、
図6に示す膜ろ過装置5のように、凝集処理水配管36より上方であって、浸漬型ろ過膜32の下端より下方の第1室44内に、複数の孔53が形成された板状部材54を設置してもよい。凝集処理水が板状部材54の孔53を通過することで、板状部材54より上方で、凝集処理水の上向流に乱流が発生し、ブランケットゾーン42が形成され易くなる。
【0043】
浸漬槽12内における凝集処理水の上向流の流速は、特に制限されるものではないが、ブランケットゾーン42を形成する等の点で、例えば、0.5〜5m/hの範囲であることが好ましく、1.5〜3.0m/hの範囲であることがより好ましい。凝集処理水の上向流の流速は、例えば、供給装置14により供給される凝集処理水の流量によって調整することが可能である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
<実施例>
図1に示す膜ろ過装置を用いて、以下の条件で試験を行った。
<処理条件>
被処理水:河川水(水質を表1に示す。)
凝集剤:塩基度70%のポリ塩化アルミニウム溶液
凝集剤の添加量:100mg/L
凝集槽/撹拌条件:単槽/G:200/s×3min
浸漬型ろ過膜:孔径0.1μm、膜面積12.5m
2(0.5m
2×25枚)、セラミック製、平膜状の精密ろ過膜(明電舎製)
通水条件:1m/d
浸漬槽の断面積:1m
2
浸漬槽内における凝集処理水の上向流の流速(LV):0.5m/h
【0046】
上記処理条件により、分配管と浸漬型ろ過膜との間に、フロック群からなるブランケットゾーンが形成された。
【0047】
【表1】
【0048】
<比較例>
図7は、比較例で使用した膜ろ過装置の模式断面図である。
図7の比較例で使用した膜ろ過装置6では、浸漬型ろ過膜32より上方の浸漬槽に凝集処理水配管36を接続した。すなわち、浸漬型ろ過膜32より上方から浸漬槽12内に凝集処理水を供給し、浸漬型ろ過膜32に向かって下向流で流し、浸漬型ろ過膜32によりろ過処理を行った。その他の条件は、実施例と同様とした。なお、比較例では、浸漬槽12内にブランケットゾーンは形成されなかった。
【0049】
図8は、実施例及び比較例におけるろ過工程中のろ過水量に対するろ過フラックスの結果を示す図である。
図8に示すように、実施例及び比較例共にろ過水量が増すにつれてろ過フラックス(m/d)は低下したが、実施例の方が比較例よりろ過フラックスの低下が小さかった。したがって、実施例のように、浸漬型ろ過膜より下方の浸漬槽から凝集処理水を供給し、凝集処理水を浸漬型ろ過膜に向かって上向流で流して、ろ過処理を行うことにより、浸漬型ろ過膜のろ過フラックスの低下を抑制することが可能となる。
【0050】
また、実施例及び比較例では、ろ過工程中の浸漬型ろ過膜の上端、中央、下端、浸漬型ろ過膜の下端から20cm下方の位置における凝集処理水をサンプリングし、サンプリングした凝集処理水の濁度を濁度計(日本電飾社製、WA6000)により測定した。その結果を表2にまとめた。
【0051】
【表2】
【0052】
実施例では、浸漬型ろ過膜の周辺(上端、中央、下端)の濁度は3度以下であり、比較例と比べて著しく低い値であった。すなわち、実施例のように、凝集処理水を浸漬型ろ過膜より下方から浸漬槽内に供給し、浸漬型ろ過膜に向かって上向流で流すことで、浸漬型ろ過膜に到達する前に、凝集処理水中のフロックの大部分が除去されるため、フロックによる浸漬型ろ過膜の閉塞が抑制され、浸漬型ろ過膜のろ過フラックスの低下が抑制されると考えられる。