(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965161
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】較正および初期化コイルを備えた単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/09 20060101AFI20211028BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20211028BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20211028BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
G01R33/09
G01R33/02 X
G01R35/00 M
H01L43/08 Z
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-541004(P2017-541004)
(86)(22)【出願日】2016年2月3日
(65)【公表番号】特表2018-506036(P2018-506036A)
(43)【公表日】2018年3月1日
(86)【国際出願番号】CN2016073244
(87)【国際公開番号】WO2016124135
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2019年1月23日
(31)【優先権主張番号】201510056576.4
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514116947
【氏名又は名称】江▲蘇▼多▲維▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MULTIDIMENSION TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】特許業務法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディーク、ジェイムズ ゲザ
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ ジミン
【審査官】
田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第103645449(CN,A)
【文献】
特表2014−532883(JP,A)
【文献】
特表2002−521696(JP,A)
【文献】
特開2011−196798(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0207646(US,A1)
【文献】
特表2002−516999(JP,A)
【文献】
特表2014−512003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 33/09、
15/20、
G01D 5/16、
H01L 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
較正および初期化コイルを有する単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサであって、高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサ、較正コイル、および初期化コイルを備え、
前記高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサは、基板の上で互い違いにされた基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび感知磁気抵抗センサユニットストリングと、細長い軟強磁性磁束ガイドとを備え、前記軟強磁性磁束ガイドの各々は遮蔽デバイスおよび減衰器を備え、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングは、それぞれ前記遮蔽デバイスおよび前記減衰器の表面におけるY軸中心線の位置に位置し、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングは電気的に接続されて基準ブリッジ構造を形成し、感知方向はX軸方向であり、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングはいずれも複数の磁気抵抗ユニットを備え、
前記較正コイルは平面コイルであり、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングにそれぞれ対応する直列接続された平行な基準ユニット直線ワイヤおよび感知ユニット直線ワイヤを備え、前記基準ユニット直線ワイヤは、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングの前記位置において前記基準磁気抵抗センサユニットストリングの前記感知方向に沿って基準ユニット較正磁界を生成し、前記感知ユニット直線ワイヤは、前記感知磁気抵抗センサユニットストリングの前記位置において前記感知磁気抵抗センサユニットストリングの前記感知方向に沿って感知ユニット較正磁界を生成し、
前記初期化コイルは、前記感知磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記基準磁気抵抗センサユニットストリングに対して垂直な複数の初期化直線ワイヤを備え、前記感知磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記基準磁気抵抗センサユニットストリングそれぞれの前記位置において前記感知方向に垂直な方向に沿って同じ初期化磁界を生成し、
前記較正コイルの前記感知ユニット直線ワイヤは細長い形状を有し、幅Lx1であり、前記減衰器の前記Y軸中心線に関して対称であり、前記較正コイルの前記基準ユニット直線ワイヤの各々は、並列接続された2本の直線サブワイヤを備え、前記直線サブワイヤは細長い形状を有し、幅Lx2であり、前記2本の直線サブワイヤは前記基準磁気抵抗センサユニットストリングの両側に対称に配置され、Lx2はLx1よりも小さく、前記基準ユニット直線ワイヤおよび前記感知ユニット直線ワイヤは直列接続される、較正および初期化コイルを備えた単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項2】
較正および初期化コイルを有する単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサであって、高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサ、較正コイル、および初期化コイルを備え、
前記高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサは、基板の上で互い違いにされた基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび感知磁気抵抗センサユニットストリングと、細長い軟強磁性磁束ガイドとを備え、前記軟強磁性磁束ガイドの各々は遮蔽デバイスおよび減衰器を備え、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングは、それぞれ前記遮蔽デバイスおよび前記減衰器の表面におけるY軸中心線の位置に位置し、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングは電気的に接続されて基準ブリッジ構造を形成し、感知方向はX軸方向であり、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングはいずれも複数の磁気抵抗ユニットを備え、
前記較正コイルは平面コイルであり、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングにそれぞれ対応する直列接続された平行な基準ユニット直線ワイヤおよび感知ユニット直線ワイヤを備え、前記基準ユニット直線ワイヤは、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングの前記位置において前記基準磁気抵抗センサユニットストリングの前記感知方向に沿って基準ユニット較正磁界を生成し、前記感知ユニット直線ワイヤは、前記感知磁気抵抗センサユニットストリングの前記位置において前記感知磁気抵抗センサユニットストリングの前記感知方向に沿って感知ユニット較正磁界を生成し、
前記初期化コイルは、前記感知磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記基準磁気抵抗センサユニットストリングに対して垂直な複数の初期化直線ワイヤを備え、前記感知磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記基準磁気抵抗センサユニットストリングそれぞれの前記位置において前記感知方向に垂直な方向に沿って同じ初期化磁界を生成し、
前記較正コイルの前記感知ユニット直線ワイヤは細長い形状を有し、幅Lx1であり、前記減衰器の前記Y軸中心線に関して対称であり、前記基準ユニット直線ワイヤは細長い形状を有し、幅Lx2であり、前記遮蔽デバイスの前記Y軸中心線に関して対称であり、Lx1はLx2よりも小さく、前記基準ユニット直線ワイヤおよび前記感知ユニット直線ワイヤは直列接続される、較正および初期化コイルを備えた単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項3】
較正および初期化コイルを有する単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサであって、高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサ、較正コイル、および初期化コイルを備え、
前記高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサは、基板の上で互い違いにされた基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび感知磁気抵抗センサユニットストリングと、細長い軟強磁性磁束ガイドとを備え、前記軟強磁性磁束ガイドの各々は遮蔽デバイスおよび減衰器を備え、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングは、それぞれ前記遮蔽デバイスおよび前記減衰器の表面におけるY軸中心線の位置に位置し、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングは電気的に接続されて基準ブリッジ構造を形成し、感知方向はX軸方向であり、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングはいずれも複数の磁気抵抗ユニットを備え、
前記較正コイルは平面コイルであり、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングにそれぞれ対応する直列接続された平行な基準ユニット直線ワイヤおよび感知ユニット直線ワイヤを備え、前記基準ユニット直線ワイヤは、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングの前記位置において前記基準磁気抵抗センサユニットストリングの前記感知方向に沿って基準ユニット較正磁界を生成し、前記感知ユニット直線ワイヤは、前記感知磁気抵抗センサユニットストリングの前記位置において前記感知磁気抵抗センサユニットストリングの前記感知方向に沿って感知ユニット較正磁界を生成し、
前記初期化コイルは、前記感知磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記基準磁気抵抗センサユニットストリングに対して垂直な複数の初期化直線ワイヤを備え、前記感知磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記基準磁気抵抗センサユニットストリングそれぞれの前記位置において前記感知方向に垂直な方向に沿って同じ初期化磁界を生成し、
前記較正コイルの前記基準ユニット直線ワイヤおよび前記感知ユニット直線ワイヤは全て、隣り合った遮蔽デバイスと減衰器との間隙に位置し、前記基準ユニット直線ワイヤは前記遮蔽デバイスに近い一側部に位置し、前記感知ユニット直線ワイヤは前記減衰器に近い一側部に位置し、前記感知ユニット直線ワイヤおよび前記基準ユニット直線ワイヤは全て細長い形状を有し、それぞれ幅Lx1およびLx2であり、Lx1はLx2より小さく、前記基準ユニット直線ワイヤおよび前記感知ユニット直線ワイヤは直列接続される、較正および初期化コイルを備えた単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項4】
前記感知ユニット較正磁界対前記基準ユニット較正磁界の比は、前記感知磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記基準磁気抵抗センサユニットストリングの前記位置における前記感知方向に沿ったX軸印加磁界の磁界比に等しい、またはそれより大きい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項5】
前記較正コイルは、前記基板の上かつ前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングの下、または前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングと前記軟強磁性磁束ガイドとの間、または前記軟強磁性磁束ガイドの上に設けられる、請求項1又は2に記載の単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項6】
前記較正コイルは、前記基板の上かつ前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングの下、または前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングと前記軟強磁性磁束ガイドとの間、または前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングの上かつ前記軟強磁性磁束ガイドの前記遮蔽デバイスと前記減衰器との間隙に設けられる、請求項3に記載の単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項7】
前記初期化コイルは平面初期化コイルであり、前記初期化直線ワイヤは、前記X軸方向に沿って配置された磁気抵抗センサユニットアレイの磁気抵抗センサユニット列の真上または真下に位置する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項8】
前記初期化コイルは3次元初期化コイルであり、前記Y軸中心線に対して垂直な上部直線ワイヤおよび下部直線ワイヤを備え、前記上部直線ワイヤおよび前記下部直線ワイヤは直列接続されて3次元コイルを形成し、前記3次元コイルは、前記軟強磁性磁束ガイド、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングに巻き付けられ、前記上部直線ワイヤおよび前記下部直線ワイヤは、それぞれ前記軟強磁性磁束ガイド、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングの表面に同じ間隔で配置される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項9】
前記平面初期化コイルは、前記基板の上かつ前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングの下、または前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングと前記軟強磁性磁束ガイドとの間、または前記軟強磁性磁束ガイドの上に設けられる、請求項7に記載の単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項10】
前記初期化コイルおよび前記較正コイルは高導電性材料で作られ、前記高導電性材料はCu、Au、またはAgである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項11】
前記初期化コイルおよび/または前記較正コイルは、絶縁材料によって前記高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサから絶縁され、前記絶縁材料はSiO2、Al2O3、Si3N4、ポリイミド、またはフォトレジストである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項12】
前記較正コイルは正ポートおよび負ポートを備え、前記2つのポートに較正電流が流れると前記較正コイルによって生成される較正磁界の振幅範囲は前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングの線形作用域の範囲内である、請求項2、3、4又は6に記載の単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項13】
前記較正電流は1または複数の設定電流値である、請求項12に記載の単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項14】
前記初期化コイルは2つのポートを備え、前記2つのポートに初期化電流が流れると前記初期化コイルによって生成される前記初期化磁界のマグニチュードは、前記基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび前記感知磁気抵抗センサユニットストリングの飽和磁界の値よりも高い、請求項1、2、3、7、8又は9に記載の単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【請求項15】
前記初期化電流はパルス電流または直流電流である、請求項14に記載の単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサの分野に関し、特に、較正および初期化コイルを備えた単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン磁気センサは主に、ホールセンサ、AMRセンサ、およびGMRセンサを含む。ホールセンサに関して、たとえばテルル化インジウムなどの半導体フィルムが基板に堆積され、様々な抵抗をもたらすために外部磁界によって担持体の経路が偏向する。これらの利点として、ホールセンサは、比較的広範囲の磁界を測定することができるが、欠点として、このセンサは低い磁界感度を有し、概して外部磁界を増幅するための磁束コンセントレータを導入する必要がある。AMRセンサに関して、単層磁気フィルムが基板に堆積され、磁気フィルムの磁気モーメント方向は外部磁界に応答して変化し、その結果、両端にわたって測定される抵抗が変化する。センサユニットおよびその電極は、電流方向と磁界方向との間に所望の角度が形成されるように傾斜した棒状にパターニングされ、そうすることで磁界方向が検出され得る。このセンサユニットの利点は、単純かつ1層のフィルムしか有さないことであるが、欠点は、比較的低い磁気抵抗を有するために感度が乏しいことである。GMR多層フィルム磁気センサは、強磁性フィルムおよび導電性フィルムから成るナノメートル厚さの多層フィルム構造によって形成される磁気抵抗センサであり、磁気フィルム層の磁化方向の相対変化に応答して抵抗を変化させることによって、電気担持体が多層フィルムを通過する際に磁界を通って移動しなければならない経路に変化が生じる。それによって、AMRセンサと比べて磁気抵抗の更なる改善がもたらされる。
【0003】
上記技術と比べて、TMRセンサは、強磁性層に導入される上昇/下降電子スピンの相対パーセンテージをそれぞれ変化させ、これらの層は、自由層の磁化方向が外部磁界に応答して比例的に動くように自由層を設計することによって、非金属性絶縁層によって強磁性自由層から分離された強磁性固定層である。その後、強磁性自由層と基準層との間をトンネルする電流が変化し、その結果、センサの抵抗が変化する。それらの磁気抵抗変化マグニチュードは200%を超え、ホール、AMR、またはGMR型の磁気抵抗センサよりも大幅に高くなり得る。
【0004】
現在、シリコン磁気3軸線形磁気抵抗センサは、たとえば携帯電話、タブレットコンピュータ、および他の電子製品などの消費者エレクトロニクスにおいて幅広く用いられている。3軸線形磁気抵抗センサは、X軸線形磁気抵抗センサ、Y軸線形磁気抵抗センサ、およびZ軸線形磁気抵抗センサを含む。これらのセンサは多くの場合、ホールセンサ、AMRセンサ、またはGMRセンサである。
【0005】
したがって、TMR磁気抵抗センサの応用分野および範囲を拡大するために、本発明は、優れた線形範囲および磁界感度を有し、既存のホール、AMR、またはGMR型X軸線形磁気抵抗センサに取って代わるものとして十分適格な、較正および初期化コイルを備えた単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサを提案する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、較正および初期化コイルを有する単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサを提案する。較正および初期化コイルはチップ上に導入され、適切な電流が較正コイルに流れ、磁気抵抗感知ユニットストリングおよび基準磁気抵抗ユニットストリングの位置においてそれぞれX方向に沿って較正磁界が生成され、較正電流を調整することによって較正磁界のマグニチュードの精確な調整がもたらされる。較正コイルはX軸センサチップに位置するので、測定中、較正電流を印加する間の迅速な測定のみが必要であり、その結果、測定の効率精度が向上する。
【0007】
同様に、外部磁界の作用中、X軸磁気抵抗センサにおいて磁気状態の不可逆変化が生じ、初期化コイルに電流が流入し、全ての磁気抵抗センサユニットの位置において自由層の初期磁化方向に沿った外部磁界が生成され、その結果、自由層の磁気状態が復元され、磁界の効果によって軟磁性フィルムの磁化状態における履歴的影響が除去される。
【0008】
本発明は、高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサ、較正コイル、および初期化コイルを含む、較正および初期化コイルを備えた単一チップ高磁界X軸線形磁気抵抗センサを提案し、
ここにおいて、高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサは、基板の上で互い違いにされた基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび感知磁気抵抗センサユニットストリングと、細長い軟強磁性磁束ガイドとを含み、軟強磁性磁束ガイドの各々は遮蔽デバイスおよび減衰器を含み、基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび感知磁気抵抗センサユニットストリングは、それぞれ遮蔽デバイスおよび減衰器の表面におけるY軸中心線の位置に位置し、基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび感知磁気抵抗センサユニットストリングは電気的に接続されて基準ブリッジ構造を形成し、感知方向はX軸方向であり、基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび感知磁気抵抗センサユニットストリングはいずれも複数の磁気抵抗ユニットを含み、較正コイルは平面コイルであり、基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび感知磁気抵抗センサユニットストリングにそれぞれ対応する直列接続された平行な基準ユニット直線ワイヤおよび感知ユニット直線ワイヤを含み、2つのグループの直線ワイヤは、基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび感知磁気抵抗センサユニットストリングの位置において、磁気抵抗センサユニットの感知方向に沿ってそれぞれ基準ユニット較正磁界および感知ユニット較正磁界を生成し、
初期化コイルは、感知磁気抵抗センサユニットストリングおよび基準磁気抵抗センサユニットストリングに対して垂直な複数の初期化直線ワイヤを含み、全ての磁気抵抗センサユニットストリングの位置において感知方向に垂直な方向に沿って同じ初期化磁界を生成する。
【0009】
較正中、較正コイルに較正電流が流れ、それによって感知磁気抵抗センサユニットストリングおよび基準磁気抵抗センサユニットストリングの位置においてX方向感知ユニット較正磁界および基準ユニット較正磁界がそれぞれ生成され、較正関数は、X軸磁気抵抗センサの出力信号を測定することによって実行され、初期化中、初期化コイルに初期化電流が流れ、各磁気抵抗センサユニットの位置においてY方向に沿って初期化磁界が生成され、その結果、磁気抵抗センサユニットの磁界状態が復元される。
【0010】
較正コイルの感知ユニット直線ワイヤは細長い形状を有し、幅Lx1であり、減衰器のY軸中心線に関して対称であり、較正コイルの基準ユニット直線ワイヤの各々は、並列接続された2本の直線サブワイヤを含み、直線サブワイヤは細長い形状を有し、幅Lx2であり、2本の直線サブワイヤは基準磁気抵抗センサユニットストリングの両側に対称に配置され、Lx2はLx1よりも小さく、基準ユニット直線ワイヤおよび感知ユニット直線ワイヤは直列接続される。
【0011】
好適には、較正コイルの感知ユニット直線ワイヤは細長い形状を有し、幅Lx1であり、減衰器のY軸中心線に関して対称であり、較正コイルの基準ユニット直線ワイヤは細長い形状を有し、幅Lx2であり、遮蔽デバイスのY軸中心線に関して対称であり、Lx1はLx2よりも小さく、基準ユニット直線ワイヤおよび感知ユニット直線ワイヤは直列接続される。
【0012】
好適には、較正コイルの基準ユニット直線ワイヤおよび感知ユニット直線ワイヤは全て、隣り合った遮蔽デバイスと減衰器との間隙に位置し、基準ユニット直線ワイヤは遮蔽デバイスに近い一側部に位置し、感知ユニット直線ワイヤは減衰器に近い一側部に位置し、感知ユニット直線ワイヤおよび基準ユニット直線ワイヤは全て細長い形状を有し、それぞれ幅Lx1およびLx2であり、Lx1はLx2より小さく、基準ユニット直線ワイヤおよび感知ユニット直線ワイヤは直列接続される。
【0013】
感知磁気抵抗センサユニットストリングおよび基準磁気抵抗センサユニットストリングの位置における感知方向に沿って生成された較正コイルの磁界比は、感知磁気抵抗センサユニットストリングおよび基準磁気抵抗センサユニットストリングの位置における感知方向に沿ったX外部磁界の磁界比に近い、またはそれより大きい。
【0014】
較正コイルは、基板の上かつ磁気抵抗センサユニットの下、または磁気抵抗センサユニットと軟強磁性磁束ガイドとの間、または軟強磁性磁束ガイドの上に設けられる。
【0015】
好適には、較正コイルは、基板の上かつ磁気抵抗センサユニットの下、または磁気抵抗センサユニットと軟強磁性磁束ガイドとの間、または磁気抵抗センサユニットの上かつ軟強磁性磁束ガイドの遮蔽デバイスと減衰器との間隙に設けられる。
【0016】
初期化コイルは平面初期化コイルであり、初期化直線ワイヤは、X軸方向に沿って配置された磁気抵抗センサユニットアレイの磁気抵抗センサユニット列の真上または真下に位置する。
【0017】
初期化コイルは3次元初期化コイルであり、Y軸中心線に対して垂直な上部直線ワイヤおよび下部直線ワイヤを含み、上部直線ワイヤおよび下部直線ワイヤは直列接続されて3次元コイルを形成し、3次元コイルは、軟強磁性磁束ガイドおよび磁気抵抗センサユニットに巻き付けられ、上部直線ワイヤおよび下部直線ワイヤは、それぞれ軟強磁性磁束ガイドおよび磁気抵抗センサユニットの表面に同じ間隔で配置される。
【0018】
平面初期化コイルは、基板の上かつ磁気抵抗センサユニットの下、または磁気抵抗センサユニットと軟強磁性磁束ガイドとの間、または軟強磁性磁束ガイドの上に設けられる。
【0019】
初期化コイルおよび較正コイルは高導電性材料で作られ、高導電性材料はCu、Au、またはAgである。
【0020】
初期化コイルおよび/または較正コイルは、絶縁材料によって高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサから絶縁され、絶縁材料はSiO
2、Al
2O
3、Si
3N
4、ポリイミド、またはフォトレジストである。
【0021】
較正コイルは正ポートおよび負ポートを含み、2つのポートに較正電流が流れると較正コイルによって生成される較正磁界の振幅範囲は、磁気抵抗センサユニットの線形作用域の範囲内である。
【0022】
較正電流は、電流値または複数の電流値に設定されてよい。
【0023】
初期化コイルは2つのポートを含み、2つのポートに初期化電流が流れると初期化コイルによって生成される初期化磁界のマグニチュードは、磁気抵抗センサユニットの飽和磁界の値よりも高い。
【0024】
初期化電流は、パルス電流または直流電流であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサの第1の構造図である。
【
図2】
図2は、高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサの第2の構造図である。
【
図3】
図3は、高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサの断面構造図である。
【
図4】
図4は、第1の型の平面較正コイルを含む高磁界X軸線形磁気抵抗センサの構造図である。
【
図5】
図5は、第1の型の平面較正コイルを含む高磁界X軸線形磁気抵抗センサの第1の断面図である。
【
図6】
図6は、第1の型の平面較正コイルを含む高磁界X軸線形磁気抵抗センサの第2の断面図である。
【
図7】
図7は、第1の型の平面較正コイルを含む高磁界X軸線形磁気抵抗センサの第3の断面図である。
【
図8】
図8は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサにおける第1の型の平面較正コイルの磁界分布の第1の図である。
【
図9】
図9は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサの磁気抵抗センサユニットの位置における第1の型の平面較正コイルのX方向磁界分布の第1の図である。
【
図10】
図10は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサにおける第1の型の平面較正コイルの磁界分布の第2の図である。
【
図11】
図11は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサの磁気抵抗センサユニットの位置における第1の型の平面較正コイルのX方向磁界分布の第2の図である。
【
図12】
図12は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサにおける第1の型の平面較正コイルの磁界分布の第3の図である。
【
図13】
図13は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサの磁気抵抗センサユニットの位置における第1の型の平面較正コイルのX方向磁界分布の第3の図である。
【
図14】
図14は、第2の型の平面較正コイルを含む高磁界X軸線形磁気抵抗センサの構造図である。
【
図15】
図15は、第2の型の平面較正コイルを含む高磁界X軸線形磁気抵抗センサの断面図である。
【
図16】
図16は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサにおける第2の型の平面較正コイルの磁界分布の図である。
【
図17】
図17は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサにおける第2の型の平面較正コイルの磁界分布の第2の図である。
【
図18】
図18は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサの磁気抵抗センサユニットの位置における第2の型の平面較正コイルのX方向磁界分布の図である。
【
図19】
図19は、第3の型の平面較正コイルを含む高磁界X軸線形磁気抵抗センサの構造図である。
【
図20】
図20は、第3の型の平面較正コイルを含む高磁界X軸線形磁気抵抗センサの断面図である。
【
図21】
図21は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサにおける第3の型の平面較正コイルの磁界分布の図である。
【
図22】
図22は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサの磁気抵抗センサユニットの位置における第3の型の平面較正コイルのX方向磁界分布の図である。
【
図23】
図23は、平面初期化コイルを含む高磁界X軸線形磁気抵抗センサの構造図である。
【
図24】
図24は、平面初期化コイルを含む高磁界X軸線形磁気抵抗センサの断面図である。
【
図25】
図25は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサにおける平面初期化コイルの磁界分布の図である。
【
図26】
図26は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサの磁気抵抗センサユニットの位置における平面初期化コイルのY方向磁界分布の図である。
【
図27】
図27は、3次元初期化コイルを含む高磁界X軸線形磁気抵抗センサの構造図である。
【
図28】
図28は、3次元初期化コイルを含む高磁界X軸線形磁気抵抗センサの断面図である。
【
図29】
図29は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサにおける3次元初期化コイルの磁界分布の図である。
【
図30】
図30は、高磁界X軸線形磁気抵抗センサの磁気抵抗センサユニットの位置における平面初期化コイルのY方向磁界分布の図である。
【
図31】
図31は、平面較正コイルおよび初期化コイルを含む高磁界X軸線形磁気抵抗センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
中国特許第201310719255.9号は、
図1および
図2に示すように、基板1と、基板の上に設けられた基準磁気抵抗センサユニットストリング4および41と、感知磁気抵抗センサユニットストリング5および51と、軟強磁性磁束ガイドとを含む、高磁界のための単一チップ基準ブリッジ磁気センサを開示する。軟強磁性磁束ガイドは、基準磁気抵抗センサユニットストリング4および41にそれぞれ対応する遮蔽デバイス2および21と、感知磁気抵抗センサユニットストリング5および51にそれぞれ対応する減衰器3および31とを含む。基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび感知磁気抵抗センサユニットストリングは、電気的に接続されて基準ブリッジ構造を形成し、ワイヤ6を介して接続され、ここにおいてポートは、電源端子7、接地端子9、および信号出力端子8および10を含む。
図1および
図2は、基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび感知磁気抵抗センサユニットストリングが異なる順序で配置されている点で異なっており、
図1の場合、2つの中間感知磁気抵抗センサユニットが隣り合い、対応する両側に2つの基準磁気抵抗センサユニットが配置されるが、
図2の場合、2つの中間基準磁気抵抗センサユニットストリングが隣り合い、対応する両側に2つの感知磁気抵抗センサユニットストリングが配置されており、基準磁気抵抗センサユニットストリングおよび感知磁気抵抗センサユニットストリングは、遮蔽デバイスおよびそれに対応する減衰器のY軸中心線に設けられ、磁気抵抗センサユニットストリングの磁界感知方向はX軸方向である。これらの原理は次のとおりである。X軸方向に磁界が作用すると、基準磁気抵抗センサユニットストリングにおいて生成される磁界成分減衰率は極めて高く、遮蔽デバイスは比較的大きな幅を有するので、それらの減衰器の幅は、基準磁気抵抗センサユニットストリングの幅よりもはるかに大きい。一方、感知磁気抵抗センサユニットストリングにおいて生成される磁界成分減衰振幅は比較的小さく、減衰器は比較的小さな幅を有するので、それらの幅振幅は感知磁気抵抗センサユニットストリングの幅に近い。その結果、磁気抵抗センサユニットストリングが比較的低い測定可能磁界値を有する場合でも、減衰器が、測定可能磁界値よりもはるかに大きい外部磁界を測定可能磁界範囲まで減衰することができ、遮蔽デバイスは、外部磁界を測定可能磁界振幅よりもはるかに小さい範囲まで減衰することができるので、基準ブリッジ高磁界測定X軸磁界センサが形成される。
【0027】
図3は、高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気センサの断面図であり、下から上に向かって順に、基板1、基準磁気抵抗センサユニットストリング4および感知磁気抵抗センサユニットストリング5を含む磁気抵抗ユニット、および軟強磁性磁束ガイド、すなわち基準磁気抵抗センサユニットストリング4の表面にある遮蔽デバイス2および感知磁気抵抗センサユニットストリング5の表面にある減衰器3を含み、加えて、基板1と磁気抵抗センサユニットとを隔離するための絶縁材料層11、軟強磁性磁束ガイドと磁気抵抗センサユニットとの間の絶縁材料層12、および表面層を被覆する絶縁層13を更に含む。また、7は4つの電極を表す。
【0028】
図1および
図2において、高磁界のための単一チップ基準ブリッジ磁気センサにおける磁気抵抗センサユニットストリングは、自由層、固定層、および中間バリア層を含むTMR磁気抵抗センサユニットである。それらの自由層の初期磁化方向はY方向であり、固定層の磁化方向、すなわち磁界感知方向はX方向である。上記単一チップX軸磁気抵抗センサは、X軸からの外部磁界成分における測定を実現することができるが、以下の問題点を有する。
【0029】
1)ウェハ試験段階において、電磁コイルおよび電磁コイル電源を含む複雑なX方向外部磁界生成システムを設計する必要があり、電磁コイルシステムはプローブプラットフォームを伴って移動する必要があるため、測定費用が増加し、測定の効率に影響を及ぼす。
【0030】
2)電磁コイルシステムの磁界の印加および配置に測定確度の問題があり、その結果、測定精度に影響を及ぼす。
【0031】
3)自由層の軟磁性フィルムに磁区が存在することにより、外部磁界の作用中、磁壁の移動は不可逆であり、その結果、外部磁界の除去後、自由層の磁気フィルムは初期状態に復元することができず、履歴現象が生じるので、センサの測定の反復性を保証することが難しい。
【0032】
本発明は、添付図面を参照し、実施形態とともに以下で詳しく説明される。
【0033】
便宜上、チップにおける較正コイルおよび初期化コイルの配置型および特徴は、例として
図2に示す高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサを用いて以下で説明されるが、その結果は、
図1に示す高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサにも適用可能である。
【0034】
実施形態1
図4は、第1の型の較正コイル70の構造および分布の図である。較正コイル70は平面コイルであり、直列接続された細長い感知ユニット直線ワイヤ101および基準ユニット直線ワイヤ104を含む。感知ユニット直線ワイヤ101は幅Lx1を有し、そのY軸中心線は、感知磁気抵抗センサユニットストリング51に沿って配置される。基準ユニット直線ワイヤ104の各々は、2本の直線サブワイヤ102および103を含む。直線サブワイヤ102および103は並列接続され、Y方向に沿って、基準磁気抵抗センサユニットストリング41の両側に対称に配置される。直線サブワイヤ102および103はいずれも幅Lx2を有する。
【0035】
図5〜7は、それぞれ
図4に示す第1の型の較正コイル70を含むX軸磁気抵抗センサの断面図である。
図5において、平面較正コイルは、基板1の上かつ磁気抵抗センサユニットの下に設けられ、感知ユニット直線ワイヤ101は、感知磁気抵抗センサユニットストリング51の下に設けられ、基準ユニット直線ワイヤ104は、並列接続された2本の直線サブワイヤ102および103を含み、102および103は基準磁気抵抗センサユニットストリング41の両側に対称に配置される。
【0036】
図6において、第1の型の較正コイル70は、磁気抵抗センサユニット41および51と軟強磁性磁束ガイド21および31との間に設けられる。
図7において、第1の型の較正コイル70は、軟強磁性磁束ガイド21および31の上に設けられる。また、第1の型の較正コイル70とX軸磁気抵抗センサの他の部品との間の電気絶縁を確実にするために、絶縁材料層14、15、および16が差し挟まれる。
【0037】
図8は、第1の型の較正コイルが磁気抵抗センサユニット41および51の下かつ基板の上に設けられる場合、較正コイルに含まれる、減衰器31に対応する直線ワイヤ101および遮蔽デバイス21に対応する直線ワイヤ104によって生成される磁界の分布の図であり、104は、並列接続された2本の直線サブワイヤ102および103を含み、m1〜m9はそれぞれ磁気抵抗センサの位置に対応する。
【0038】
図9は、
図8に示すm1〜m9を接続する磁気抵抗センサに対応する直線上のX軸磁界成分の分布の図であり、図から分かるように、減衰器に対応するm1、m3、m5、m7、およびm9は同じ磁界値を有し、遮蔽デバイスに対応するm2、m4、m6、およびm8もまた同じ磁界値を有し、前者は後者よりもはるかに大きく、Bs/Bf=8.28であり、ここでBsは高感度磁界振幅値であり、Bfは基準磁界振幅値である。
【0039】
図10は、第1の型の較正コイルが磁気抵抗センサユニット41および51の上かつ軟強磁性磁束ガイド21および31の下に設けられる場合、較正コイルに含まれる、減衰器31に対応する直線ワイヤ101および遮蔽デバイス21に対応する直線ワイヤ104によって生成される磁界の分布の図であり、104は、並列接続された2本の直線サブワイヤ102および103を含み、m11〜m19はそれぞれ磁気抵抗センサの位置に対応する。
【0040】
図11は、
図10に示すm11〜m19を接続する磁気抵抗センサに対応する直線上のX磁界成分の分散の図であり、図から分かるように、減衰器に対応するm11、m13、m15、m17、およびm19は同じ磁界値を有し、遮蔽デバイスに対応するm12、m14、m16、およびm18もまた同じ磁界値を有し、前者は後者よりもはるかに大きく、Bs/Bf=8.86である。
【0041】
図12は、第1の型の較正コイルが軟強磁性磁束ガイド21および31の上に設けられる場合、較正コイルに含まれる減衰器に31に対応する直線ワイヤ101および遮蔽デバイス21に対応する直線ワイヤ104によって生成される磁界の分布の図であり、104は、並列接続された2本の直線サブワイヤ102および103を含み、m21〜m29はそれぞれ磁気抵抗センサの位置に対応する。
【0042】
図13は、
図12に示すm21〜m29を接続する磁気抵抗センサに対応する直線上のX軸磁界成分の分布の図であり、図から分かるように、減衰器に対応するm21、m23、m25、m27、およびm29は同じ磁界値を有し、遮蔽デバイスに対応するm22、m24、m26、およびm28もまた同じ磁界値を有し、前者は後者よりもはるかに大きいが、外部磁界における軟強磁性磁束ガイドの遮蔽効果によって減衰器および遮蔽デバイスは全て大幅に減衰され、特に、減衰器磁界の磁界振幅は
図10および
図8に比べて著しく低減し、Bs/Bf=9.36である。
【0043】
実施形態2
図14は、高磁界単一チップX軸線形磁気抵抗センサにおける第2の型の平面較正コイル80の構造図である。第2の型の平面較正コイル80は、2本の直線ワイヤ、すなわち基準ユニット直線ワイヤ105および感知ユニット直線ワイヤ106を含み、これらは遮蔽デバイス21と減衰器31との間隙にそれぞれ設けられる。また、基準ユニット直線ワイヤ105はより大きな幅を有し、遮蔽デバイス21に近い一側部に設けられる。感知ユニット直線ワイヤ106はより小さな幅を有し、減衰器31に近い一側部に設けられ、感知ユニット直線ワイヤ106および基準ユニット直線ワイヤ105は互いに直列接続される。
【0044】
図15は、高磁界単一チップX軸線形磁気抵抗センサにおける第2の型の平面較正コイル80の断面図であり、基準ユニット直線ワイヤ105および感知ユニット直線ワイヤ106は減衰器31と遮蔽デバイス21との間隙、かつ磁気抵抗センサユニット41および51の上に設けられる。
【0045】
図16は、第2の型の平面較正コイル80の動作中の磁界分布の図であり、この図から、基準ユニット直線ワイヤおよび感知ユニット直線ワイヤにおける合計12の磁気抵抗センサユニットm31〜m42の相対位置関係、およびそれらの磁界分布が分かる。
図17は、
図16に示す基準磁気抵抗センサユニットおよび感知磁気抵抗センサユニットの位置における磁界の分布の図である。感知磁気抵抗センサユニット51における磁界強度は、基準磁気抵抗センサユニット41における磁界強度よりも明らかに強く、そのX方向磁界成分の分布の図は
図18に示すとおりであり、基準磁気抵抗センサユニットの位置におけるX方向磁界は0に近く、感知磁気抵抗センサユニットにおけるX方向磁界は突起部を有し、Bs/Bf=128.96である。
【0046】
説明を容易にするために、解決策は、第2の型の平面較正コイル80が、磁気抵抗センサユニット41および51の上、かつ隣り合った減衰器21と遮蔽デバイス31との間に設けられた事例のみを記載する。実際は、第2の型の平面較正コイル80は、基板の上かつ磁気抵抗センサユニットの下に設けられてもよく、または磁気抵抗センサの上かつ軟強磁性磁束ガイドの下に設けられてもよい。
【0047】
実施形態3
図19は、高磁界単一チップX軸磁気抵抗センサにおける第3の型の平面較正コイル81の分布の図である。第3の型の平面較正コイル81は、直列接続された感知ユニット直線ワイヤ107および基準ユニット直線ワイヤ108を含み、基準ユニット直線ワイヤ108は遮蔽デバイス21に対応し、感知ユニット直線ワイヤ107は減衰器31に対応し、基準ユニット直線ワイヤ108および感知ユニット直線ワイヤ107はいずれも細長く、それぞれ減衰器31および遮蔽デバイス21のY軸中心線と一致し、感知ユニット直線ワイヤ107の幅は基準ユニット直線ワイヤ108の幅よりも小さい。
【0048】
図20は、高磁界単一チップX軸磁気抵抗センサにおける第3の型の平面較正コイル81の断面図である。基準ユニット直線ワイヤ108および感知ユニット直線ワイヤ107は、それぞれ基準磁気抵抗センサユニットストリング41および感知磁気抵抗センサユニットストリング51の下に設けられる。この例は説明を容易にするために1つの状況を提供しているにすぎず、実際は、第3の型の平面較正コイル81は、磁気抵抗センサユニットと軟強磁性磁束ガイドとの間、または軟強磁性磁束ガイドの上に設けられてもよい。また、第3の型の平面較正コイル81と磁気抵抗センサユニット41および51との間の電気絶縁を確実にするために、絶縁層141が差し挟まれる。
【0049】
図21は、高磁界単一チップX軸磁気抵抗センサにおける第3の型の平面較正コイル81によって生成される磁界の分布の図であり、m51〜m59はそれぞれ基準磁気抵抗センサユニットおよび感知磁気抵抗センサユニットの位置におけるX軸磁界の分布の図を表し、そのX磁界値は
図22に示すとおりである。基準磁気抵抗センサユニットにおけるX方向磁界成分は非常に小さいが、感知磁気抵抗センサユニットにおけるX方向磁界成分は明らかに増加しており、Bs/Bf=5.68であることが分かる。
【0050】
実施形態4
図23は、直列接続された2つの型の直線ワイヤ109および110を含む単一チップ高磁界X軸磁気抵抗センサにおける平面初期化コイル82の分布の図である。直線ワイヤはY軸中心線に対して垂直であり、直線ワイヤ109は、X方向に沿った磁気抵抗センサユニットアレイの磁気抵抗センサユニット列の真上または真下に設けられ、直線ワイヤ110は、磁気抵抗センサユニット列の両外側における2つの隣り合った磁気抵抗センサユニット列または位置の間隙に設けられる。
【0051】
図24は、単一チップ高磁界X軸磁気抵抗センサにおける平面初期化コイル82の断面図である。平面初期化コイルは、基板の上かつ磁気抵抗センサユニットの下に設けられる。説明を容易にするために、この例は1つの事例のみを提供する。実際の実施中、平面初期化コイル82は、磁気抵抗センサユニットと軟強磁性磁束ガイドとの間、または軟強磁性磁束ガイドの上に設けられてもよい。また、平面初期化コイル82と磁気抵抗センサユニット41および51との間の電気絶縁を確実にするために、絶縁材料143が差し挟まれる。
【0052】
図25は、単一チップ高磁界X軸磁気抵抗センサにおける平面初期化コイル82の磁界分布の図である。磁気抵抗センサユニットm61〜m65は減衰器21または遮蔽デバイス31の表面に設けられ、そのX軸磁界の分布の曲線は、
図26に示すとおりである。
図24から分かるように、磁気抵抗センサユニットm61〜m65の位置は、同じY方向磁界成分を有する。
【0053】
実施形態5
図27は、Y軸中心線に対して垂直な直線ワイヤを含み、かつ上部直線ワイヤ111および下部直線ワイヤ112を含む、単一チップ高磁界X軸磁気抵抗センサにおける3次元初期化コイル83の分布の図である。上部直線ワイヤ111および下部直線ワイヤ112は3次元ソレノイドコイル構造を形成し、軟強磁性磁束ガイドおよび磁気抵抗センサユニットは磁心として用いられ、3次元ソレノイドコイル構造の軸中心方向はY方向として用いられ、上部直線ワイヤ111間および下部直線ワイヤ112間には同じ間隔が設けられる。
【0054】
図28は、単一チップ高磁界X軸磁気抵抗センサにおける3次元初期化コイル83の断面図である。3次元初期化コイルの上部直線ワイヤ112は、軟強磁性磁束ガイド21および31の上に設けられ、下部直線ワイヤ112は、基板の上かつ磁気抵抗センサユニット41および51の下に設けられる。3次元初期化コイル83と他の部品との間の電気絶縁を確実にするために、絶縁材料層131および144が差し挟まれる。
【0055】
図29は、単一チップ高磁界X軸磁気抵抗センサにおける3次元初期化コイル83の磁界分布の図であり、m71〜m75はそれぞれ減衰器21または遮蔽デバイス31における磁気抵抗センサユニット41および51の分布であり、対応するY方向磁界成分は
図30に示すとおりである。Y方向磁界成分は周期的分布特性を有しており、3次元初期化コイル83の上部直線ワイヤ111および下部直線ワイヤ112が等しい間隔を有し、かつ磁気抵抗センサユニット41および51がそれぞれ減衰器21および遮蔽デバイス31のY方向に沿って等しい周期的分布を有する限り、磁気抵抗センサユニットのY方向磁界の分布特徴も確保され得ることが分かる。
【0056】
実施形態6
上記は、単一較正コイルまたは単一初期化コイルを含む単一チップ高磁界X軸磁気抵抗センサである。
図31は、較正コイルおよび初期化コイルを同時に含む単一チップ高磁界X軸磁気抵抗センサを示し、ここで初期化コイルは平面初期化コイルであり初期化直線ワイヤ109および110を含み、較正コイルは平面コイルであり基準ユニット直線ワイヤ101および感知ユニット直線ワイヤ104を含み、101および104は磁気センサユニットの上かつ軟強磁性磁束ガイドの下に設けられ、感知ユニット直線ワイヤは2本の直線サブワイヤ102および103を含む。また、較正コイルおよび初期化コイルと他の部品との間の電気絶縁を確実にするために、絶縁材料層111、122、および152が差し挟まれる。
【0057】
説明を容易にするために、この例は、較正コイルおよび初期化コイルを含む単一チップ高磁界X軸磁気抵抗センサのみを提供する。実際は、較正コイルは第1の型、第2の型、および第3の型のいずれかであってよく、初期化コイルは平面初期化コイルまたは3次元初期化コイルであってよい。それらの位置に関して、較正コイルおよび平面初期化コイルは、基板の上かつ磁気抵抗センサユニットの下、または磁気抵抗センサユニットと軟強磁性磁束ガイドとの間、または軟強磁性磁束ガイドの上の任意の位置に設けられてよく、それらは互いに独立しており、較正コイルおよび3次元初期化コイルの場合、較正コイルは上記の位置に設けられてよいが、3次元初期化コイルは、軟強磁性磁束ガイドおよび磁気抵抗センサユニットを中心として3次元初期化コイルが巻き付けられる状態のみを有する。
【0058】
初期化コイルおよび/または較正コイルは、絶縁材料を用いて高磁界単一チップ基準ブリッジX軸磁気抵抗センサから絶縁される。絶縁材料は、SiO
2、Al
2O
3、Si
3N
4、ポリイミド、またはフォトレジストである。初期化コイルおよび較正コイルは、たとえばCu、Au、またはAgなどの高導電性材料で作られる。