(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る電池パックを
図1〜
図6に示す。これ等の図に示す電池パックは、主としてノート型パソコンやタブレット等の薄型の携帯電子機器に装着されて、これ等の機器の電源として使用される。ただ、本発明の電池パックは、薄型の携帯電子機器以外の電気機器に装着して、電源として使用することもできる。
【0021】
図1〜
図6に示す電池パック100は、薄型の二次電池セル1と、二次電池セル1と電気的に接続され、保護回路を実装した回路基板5と、二次電池セル1と回路基板5を収納するホルダーケース2と、ホルダーケース2に収納された回路基板5をインサート成形してなる樹脂モールド部4と、回路基板5に一端が接続されると共に、樹脂モールド部4から外部に引き出されて他端にコネクタ69が接続されてなる複数の引出線6とを備えている。図に示す電池パック100は、2個の二次電池セル1を備えており、これ等の二次電池セル1を対向する姿勢でホルダーケース2の両端部に配置すると共に、対向する二次電池セル1の間に回路基板5を配置して、二次電池セル1と回路基板5とを略同一平面に配置している。
(二次電池セル1)
【0022】
二次電池セル1は、幅よりも厚さが小さい外形であって、全体を薄い形状の角型電池としている。二次電池セル1は、
図7に示すように、一面を開口した有底筒状の金属製の外装缶11と、この外装缶11の開口を閉塞する封口板12とを備えている。外装缶11の開口部は、金属板をプレス加工した平板状の封口板12により、レーザー溶接でもって密封されている。図に示す二次電池セル1は、外装缶11の両側を湾曲面としている。ただし、薄型の二次電池セルには、角形電池のみでなく、プラスチック製の外装フィルムの内部に電極を配置しているラミネート電池も使用できる。薄型の二次電池セル1は、厚さ3mm〜10mmのリチウムイオン二次電池である。ただし、二次電池セルは、リチウムイオン二次電池以外の非水系電解液二次電池や、ニッケル−水素電池等の充電できる他の全ての二次電池とすることができる。二次電池セル1をリチウムイオン二次電池とする電池パック100は、全体の電池容量を大きくできる。
【0023】
二次電池セル1は、封口板12を端子面1Xとして、この端子面1Xに正負の電極10を設けている。
図7に示す二次電池セル1は、封口板12の中央部に、封口板12と絶縁された凸部電極13を設けている。この二次電池セル1は、封口板12に設けた凸部電極13を第1の電極10Aとし、封口板12を第2の電極10Bとして端子面1Xに正負の電極10を設けている。図の二次電池セル1は、封口板12の一方の端部にクラッド板14を固定して、第2の電極10Bを形成している。この二次電池セル1は、クラッド板14を介して接続リード板16を確実に接続できる。なお、図に示す二次電池セル1では、凸部電極13(第1の電極10A)が負極となり、封口板12及びクラッド板14(第2の電極10B)が正極となる。
【0024】
さらに、二次電池セル1は、封口板12に安全弁15を設けている。安全弁15は、電池の内圧が設定圧力よりも高くなるときに開弁して、内部のガス等を排出して、内圧上昇を防止する。ただ、二次電池セルの安全弁は、外装缶に設けてもよい。この場合、封口板を樹脂モールド部で埋設する電池パックは、内部のガス等の排出を外装缶の側面から容易に行うことができる。
【0025】
さらに、二次電池セル1は、端子面1Xに設けた正負の電極10に、通電のための接続リード板16を接続している。二次電池セル1は、第1の電極10Aである凸部電極13に接続された第1接続リード板16Aと、第2の電極10Bである封口板12に接続された第2接続リード板16Bを介して回路基板5に接続される。図に示す電池パック100は、2個の二次電池セル1を回路基板5に接続している。2個の二次電池セル1は、回路基板5上において直列に接続されている。
【0026】
(回路基板5)
回路基板5は、二次電池セル1の保護回路などを実現する電子部品を実装している。保護回路は、二次電池セル1の温度、電圧、電流などを検出して、充放電の電流をコントロールする。このことを実現する保護回路は、二次電池セル1の電圧を検出する電圧検出回路(図示せず)と、電流を検出する電流検出回路(図示せず)と、二次電池セル1の温度を検出する温度センサ(図示せず)と、二次電池セル1の充放電電流をコントロールするFETなどの半導体スイッチング素子(図示せず)と、二次電池セル1の温度や過電流を検出して動作する電流遮断素子等の保護素子7とを実装している。回路基板5への保護素子7の実装及びその接続の詳細については後述する。
【0027】
回路基板5は、エポキシ樹脂製とすることができる。本発明の電池パックでは、ホルダーケース2により全体の強度を高めることができるので、回路基板5には、ガラス繊維等の補強繊維で補強された樹脂を使用することなく低コストに製造できる。ただ、ガラス繊維等で補強されたエポキシ樹脂で製造することもできる。ホルダーケース2に配置される回路基板5は、電池パックに要求される外形や大きさに応じて、その形状や大きさ、及びホルダーケースに配置される姿勢等が決定される。回路基板は、詳細には後述するが、ホルダーケースに形成される基板収納部に配置できる外形となるように形成される。
【0028】
(ホルダーケース2)
ホルダーケース2は、二次電池セル1と回路基板5とを収納して定位置に配置している。ホルダーケース2は、薄型の二次電池セル1と回路基板5とを同一平面に配置できるように、全体を薄い板状であって、片側面(
図2〜
図6では上面)に二次電池セル1や回路基板5を収納できる収納開口を有する形状に樹脂で成形している。ホルダーケース2は、樹脂モールド部4を成形する樹脂とは異なる樹脂製であって、好ましくは耐熱性と強度に優れた樹脂、例えば、ポリカーボネートやABS等の樹脂で成形される。これ等の樹脂で成形されるホルダーケース2は、耐熱温度を70℃以上としながら、外形の寸法精度を高めることができる。
【0029】
ホルダーケース2は、二次電池セル1が配置される電池配置領域21と、回路基板5が配置される基板配置領域22とを同一平面に有している。
図6に示すホルダーケース2は、2個の二次電池セル1を収納できるように、両端部に電池配置領域21を設けて、対向する電池配置領域21の間に基板配置領域22を設けている。このように、電池配置領域21と基板配置領域22を有するホルダーケース2は、基板配置領域22の大きさを調整することで、ホルダーケース2の外形を容易に変更できる。例えば、二次電池セル1はその規格や容量によりその外形が特定されるため、電池配置領域21における大きさ等の設計変更は難しいが、基板配置領域22は高い自由度で設計変形が可能である。したがって、このホルダーケース2は、電池パックに要求される外形を実現するために基板配置領域22を最適な大きさや形状に設計変形することで、電子機器への対応を容易にできる。さらに、複数の二次電池セルを備える電池パックにおいては、収納する二次電池セルの個数や、電池配置領域と基板配置領域の配置を調整することによっても、ホルダーケースの外形を容易に変更して、電池パックが装着される電子機器への対応を容易にできる。
【0030】
図6に示すホルダーケース2は、全体の外形を一方向に延在された矩形状としている。このホルダーケース2は、長手方向の両端部に電池配置領域21を形成すると共に、中間に形成される基板配置領域22を長手方向に延在された形状として、ホルダーケース2の全長を調整している。この基板配置領域22には、対向して配置される二次電池セル1の端子面1Xに回路基板5の両端が近接するように、長手方向に延在された回路基板5が配置される。
【0031】
ここで、ホルダーケース2の外形を調整するために、面積を広くする基板配置領域22においては、配置される回路基板5や樹脂モールド部4を小さくしてコストを下げることが求められる。このことを実現するために、
図6に示すホルダーケース2は、基板配置領域22を、回路基板5が配置されて樹脂モールド部4が成形される樹脂成形領域23と、樹脂モールド部4が成形されない中空領域24とに区画している。図に示すホルダーケース2は、基板配置領域22の中央部であって、対向する二次電池セル1の端子面1Xの中央部を繋ぐ領域を樹脂成形領域23とし、樹脂成形領域23の両側を中空領域24としている。樹脂成形領域23と中空領域24は、区画壁33で区画されている。図のホルダーケース2は、基板収納領域22の中央部に、長手方向に沿って一対の区画壁33を設けており、対向する区画壁33の間に回路基板5を収納する基板収納部26を形成している。
【0032】
中空領域24は、格子状に縦横に交差する複数の補強リブ34を設けて、全体を複数の中空室28に分割して補強している。このように、基板配置領域22に中空領域24を設けて、複数の中空室28を設ける構造は、ホルダーケース2を軽量にしながら、使用する絶縁成形樹脂を少なくして製造コストを低減できる。
図6のホルダーケース2は、基板配置領域22の両側に中空部24を設けているが、ホルダーケースは、要求される外形に応じて、中空部の配置や形状、大きさ等を種々に変更できる。ただ、ホルダーケースは、必ずしも基板配置領域に中空領域を設ける必要はなく、基板配置領域全体を基板収納部とすることもできる。例えば、基板配置領域を、全長を短くして幅方向(ホルダーケースの短手方向)に長くする構造においては、中空領域を設けることなく、対向する二次電池セルの間に、短手方向に延在する回路基板を収納する基板収納部を設けることもできる。
【0033】
図3〜
図6に示すホルダーケース2は、矩形状の外周に沿って周壁30を設けて、内側に二次電池セル1を収納する電池収納部25と回路基板5を収納する基板収納部26とを設けている。ホルダーケース2は、
図3に示すように、基板配置領域22の底面となる底面プレート32を電池配置領域21の底面となる表面プレート31よりも高くなる段差構造として、回路基板5が配置される基板収納部26を電池収納部25よりも浅く成形している。この構造は、回路基板5をインサート成形する樹脂モールド部4を薄く成形して使用する絶縁成形樹脂の量を少なくできる。さらに、図に示すホルダーケース2は、外周に設けた周壁30から外側に突出する複数の突出片38を一体成形して設けている。この突出片38は、電池パック100が装着される電子機器に連結するための連結部として使用される。
【0034】
ホルダーケース2は、電池配置領域21に、二次電池セル1の外形に沿うフレーム部27を備えており、このフレーム部27の内側を電池収納部25としている。フレーム部27は、二次電池セル1の端子面1Xに沿う保持壁35と、端子面1Xを除く3辺に沿う周壁30と、二次電池セル1の一方の主面1Aに沿う表面プレート部31とを備えている。保持壁35は、
図5に示すように、基板収納部26と対向する部分をカットして、電池収納部25と基板収納部26とを連通させている。表面プレート部31は、中央部を開口して、二次電池セル1の主面1Aの外周縁部に沿う四角いリング形状としている。フレーム部27の周壁30の高さは、二次電池セル1の厚さとほぼ等しくして、電池収納部25に二次電池セル1を収納できるようにしている。フレーム部27の内形は、二次電池セル1の外形とほぼ等しくして、ここに収納される二次電池セル1を定位置に配置できるようにしている。二次電池セル1は、一対の電極10を設けた端子面1Xが基板配置部22と対向する姿勢となるようにフレーム部27に収納される。
【0035】
基板収納部26は、
図8に示すように、対向する一対の区画壁33と底面プレート32とで囲まれた空間に形成される。この基板収納部26は、回路基板5が配置されると共に、溶融された絶縁成形樹脂が内部に充填されて樹脂モールド部4が成形される。
図8の基板収納部26は、連結機構19を介して回路基板5を定位置に固定している。図に示す連結機構19は、ホルダーケース2に設けられて回路基板5の両側縁部を係止する係止リブ36及び係止フック37と、回路基板5に設けた係止部56とで構成している。ホルダーケース2は、一方の区画壁33(
図8において右側)に、係止リブ36として、基板収納部26の内側に突出する垂直リブ36aと水平リブ36bとを設けると共に、この区画壁33と対向する側に位置して、底面プレート32から突出する係止フック37を設けている。水平リブ36bは水平方向に配置されており、底面プレート32との間に回路基板5の側縁部を挿入できるようにしている。回路基板5は、
図5に示すように、係止部56として、垂直リブ36aと対向する位置にスリット凹部56aを設けると共に、係止フック37と対向する位置には係止凹部56bを設けている。この連結機構19は、スリット凹部56aに垂直リブ36aを案内して回路基板5の左右方向の位置を特定する。さらに、連結機構19は、水平リブ36bと底面プレート32の間に回路基板5の一方の側縁部を挿入すると共に、回路基板5の反対側の側縁部に設けた係止凹部56bに係止フック37のフック部を係止させて回路基板5を抜けないように定位置に固定する。
【0036】
さらに、
図5と
図6に示すホルダーケース2は、基板収納部26に配置される回路基板5を樹脂モールド部4にインサート成形するために、溶融された絶縁成形樹脂を注入するための樹脂注入ガイド29を基板配置領域22に設けている。
図5のホルダーケース2は、基板収納部26の一方の端部(図において左側)と外部とを連通する通路を設けて樹脂注入ガイド29としている。
図5に示す樹脂注入ガイド29は、対向する通路壁39によって、中空室28と区画されている。この構造のホルダーケース2は、樹脂モールド部4の成形時において、基板配置領域22の開口部側を成形金型(図示せず)で閉塞して基板収納部26の内部に成形室が形成される。樹脂注入ガイド29は、周壁30に注入孔29aを開口しており、樹脂注入時において、基板配置領域22の開口部を成形金型で閉塞する状態で、この注入孔29aを外部に表出させるようにしている。
【0037】
さらに、ホルダーケース2は、基板収納部26の一方の端部側に設けた樹脂注入ガイド29に加えて、基板収納部26の反対側の端部と外部とを連通する第2の樹脂注入ガイドを設けることもできる。この構造は、樹脂モールド部の成形工程において、2箇所から絶縁成形樹脂を注入できるので、絶縁成形樹脂の注入時間を短縮しながら、成形室の隅々まで絶縁成形樹脂を充填できる特長がある。
【0038】
(樹脂モールド部4)
樹脂モールド部4は、回路基板5、回路基板5に実装された電子部品、及び二次電池セル1の端子面1Xの一部または全体を絶縁成形樹脂に埋設して定位置に固定する。樹脂モールド部4は、回路基板5と二次電池セル1とをホルダーケース2の定位置に配置した状態で、ホルダーケース2の収納開口を成形金型(図示せず)で閉塞して成形室を形成し、この成形室に溶融された絶縁成形樹脂を注入して成形される。
【0039】
樹脂モールド部4は、熱可塑性樹脂を加熱し溶融状態で成形室に注入して成形される。絶縁成形樹脂の熱可塑性樹脂は、低温に加熱して、低圧で成形室に注入して成形できる樹脂、たとえば、ポリアミド樹脂やポリオレフィン系やウレタン系の熱可塑性樹脂を使用する。低温低圧で成形室に注入される樹脂は、二次電池セル1や回路基板5の実装部品に熱による悪影響を及ぼさない特徴がある。成形室に注入される溶融樹脂の温度は、ホルダーケース2の耐熱温度よりも低くすることが好ましく、例えば、70℃以下とする。ポリオレフィン系の樹脂はポリアミド樹脂に比較して機械的強度が高いので、回路基板5や二次電池セル1をより強固に連結できる特徴がある。ポリアミド樹脂はポリオレフィン系の樹脂に比較して使用温度範囲が−40℃〜150℃と広いので、二次電池セル1が使用中に高温になる場合でも強固に連結できる特徴がある。成形室に注入される溶融された絶縁成形樹脂は、回路基板5を埋設して、二次電池セル1の端子面1Xの一部または全体を埋設して、これらを埋設して定位置に固定する。
【0040】
回路基板5を埋設する樹脂モールド部4は、回路基板5に実装されるFETなどの半導体スイッチング素子も埋設している。この構造は、半導体スイッチング素子の発熱を樹脂モールド部4に伝導して放熱できる。したがって、樹脂モールド部4は、半導体スイッチング素子等の発熱部材の発熱を吸収して温度上昇を少なくし、さらに吸収した熱エネルギを表面から放熱して、半導体スイッチング素子の温度上昇を小さくする。また、回路基板5と二次電池セル1の端子面1Xを樹脂モールド部4に埋設しているので、回路基板5と二次電池セル1の端子面1Xとを防水構造にできる特徴もある。
【0041】
さらに、
図2に示す樹脂モールド部4は、表面に複数列の溝部41を形成している。複数列の溝部41は、回路基板5の長手方向に沿って設けられている。このように、樹脂モールド部4の表面に複数列の溝部41を設ける構造は、使用する絶縁成形樹脂の量を少なくして製造コストを低減できる特徴がある。図に示すように、複数列の溝部41は、例えば、絶縁成形樹脂で樹脂モールド部4を成形する成形室の内面であって、成形金型の表面に複数列の凸条を形成することで実現できる。ここで、
図2に示す樹脂モールド部4は、回路基板5の長手方向に沿って複数列の溝部41が形成されるようにしている。この構造は、
図6の矢印Aで示すように、樹脂注入ガイド29から供給される溶融状態にある絶縁成形樹脂を、矢印Bで示すように、回路基板5の長手方向に沿ってスムーズに流入できる特徴がある。すなわち、成形室に注入される絶縁成形樹脂は、成形金型の表面に形成された複数列の凸条に沿って流動させて注入側の反対側まで充填することができる。これにより、一方向に延長された回路基板5の片側から溶融状態にある絶縁成形樹脂を注入しながら、反対側にまで流動させて成形室の隅々まで充填できる。なお、成形室の端部から溶融樹脂を注入する構造は、回路基板5に引出線6や接続リード板16を半田付けする際に微細な半田屑が発生して回路基板5上に残存することがあっても、流動される溶融樹脂により成形室の隅部まで押し流すことができるので安全性を向上できる。さらに、表面に複数列の溝部41を設けている樹脂モールド部4は、表面側の表面積を広くできるので、この部分からの放熱特性を向上して放熱できる特徴も実現できる。ただ、樹脂モールド部は、必ずしも表面に溝部を設ける必要はなく、表面を平面状に成形することもできる。
【0042】
(保護素子7)
保護素子7は、二次電池セル1の温度を検出して、検出温度が設定温度よりも高くなると電流を遮断し、あるいは、回路に流れる過電流を検出して電流を遮断する素子であって、ブレーカ71やヒューズ72、PTC等が使用できる。すなわち、本明細書において、保護素子7とは、二次電池セル1の温度上昇や回路に流れる過電流を検出して電流を遮断するブレーカ71やヒューズ72、PTC等の電流遮断素子を含む広い意味で使用する。図に示す回路基板5は、長手方向における両端部であって、二次電池セル1の端子面1Xと対向する位置にブレーカ71を配置すると共に、回路基板5の中央部の片側にヒューズ72を配置している。
【0043】
(ブレーカ71)
保護素子7であるブレーカ71は、電池パック100に内蔵される各二次電池セル1に対して配置されている。図に示す電池パック100は2個の二次電池セル1を備えているので、2個のブレーカ71を各々の二次電池セル1に接続している。各ブレーカ71は、回路基板5の端縁部に実装されており、
図5に示すように、二次電池セル1を回路基板5に接続する接続リード板16を介して、対向する二次電池セル1に直列に接続されている。
【0044】
ブレーカ71は、
図9と
図10に示すように、外形を角型とする本体部71Xと、この本体部の両端から突出する一対のリード板71A、71Bとを備えている。図のブレーカ71は、回路基板5の端縁部に形成された切欠部51に全体を収納する状態で配置されている。図の回路基板5は、端子面1Xと対向する端縁部をコ字状に切り欠いて、ブレーカ71を回路基板5の両面に表出させる状態で収納する切欠部51を設けている。このブレーカ71は、切欠部51に配置される状態で、本体部71Aの表面を、回路基板5の表面と略同一平面に配置している。さらに、切欠部51に配置されるブレーカ71は、回路基板5の第1面である裏側面に電気接続されている。このブレーカ71は、
図10に示すように、回路基板5の第1面において、切欠部51の両側部から内側に突出して固定された一対の接続プレート53を介して回路基板5に接続されている。具体的には、ブレーカ71の一方のリード板71Aを第1接続プレート53Aに接続すると共に、他方のリード板71Bを第2接続プレート53Bに接続して回路基板5に接続している。接続プレート53には、例えばニッケル板等の金属板が使用できる。
【0045】
さらに、回路基板5の裏側面に固定された第1接続プレート53Aは、回路基板5の内部に配線された金属パターンである接続ライン54を介して、回路基板5の第2面である表側面に形成された第1接続ランド52Aに電気接続されている。
図9に示す回路基板5は、二次電池セル1から引き出された一対の接続リード板16を接続するために、第2面の端部に一対の接続ランド52を形成している。二次電池セル1は、第1接続リード板16Aが第1接続ランド52Aに接続されると共に、第2接続リード板16Bが第2接続ランド52Bに接続されて回路基板5の第2面に電気接続される。この二次電池セル1は、第2の電極10B側では、平面電極14→第2接続リード板16B→第2接続ランド52Bの順に通電して、回路基板5のプラス側出力ライン(図示せず)に出力する。また、二次電池セル1は、第1の電極10A側では、回路基板5のマイナス側出力ライン(図示せず)から供給される電力が、第2接続プレート53B→リード板71B→ブレーカ71の本体部71X→リード板71A→第1接続プレート53A→接続ライン54→第1接続ランド52A→第1接続リード板16A→凸部電極13の順に通電されて二次電池セル1に入力される。このように、二次電池セル1の負極側である第1の電極10Aをブレーカ71を接続する構造は、保護素子7をグランド側に接続できるので、安全性を確保できる。ただ、ブレーカは二次電池セルの正極側である第2の電極に接続することもできる。
【0046】
以上の構造は、回路基板5の第1面である裏側面においてブレーカ71のリード板71A、71Bを回路基板5に接続し、回路基板5の第2面である表側面において二次電池セル1から引き出された接続リード板16を回路基板5に接続するので、ブレーカ71と接続リード板16とを接近させて配線する状態においても、接続リード板16とリード板71A、71Bとが接触してショートするのを確実に阻止できる特長がある。ただ、ブレーカは、必ずしも回路基板に設けた切欠部に配置する必要はなく、回路基板の表面に実装することもできる。このように配置されるブレーカは、例えば、リフロー半田等の方法で簡単に回路基板に実装することができる。
【0047】
さらに、電池パック100は、二次電池セル1の発熱を、保護素子7であるブレーカ71で確実に検出するために、ブレーカ71の本体部71Xの表面に接続リード板16を熱結合状態で積層している。
図9と
図10に示す構造では、第1の電極10Aである凸部電極13に接続された第1接続リード板16Aを、ブレーカ71の本体部71Xの表面に積層する状態で配置して、ブレーカ71の本体部71Xと第1接続リード板16Aとを熱結合させている。これにより、二次電池セル1の発熱を効果的にブレーカ71に熱伝導させて、二次電池セル1の温度が設定温度まで上昇すると、この発熱をブレーカ71で確実に検出して電流を遮断できようにしている。
【0048】
図に示す第1接続リード板16Aは、ブレーカ71の本体部71Xに対して交差する姿勢で配置されており、第1接続リード板16Aの先端部を第1接続ランド52Aに接続する状態で、第1接続リード板16Aの中間部を、本体部71Xの表面に確実に接触させるようにしている。とくに、図に示すブレーカ71は、回路基板5に設けた切欠部51に配置することで、本体部71Xの表面を回路基板5の表側面と略同一平面としている。このため、二次電池セル1の電極10から引き出された接続リード板16を回路基板5の表側面に設けた接続ランド52に接続する状態で、接続リード板16を理想的にブレーカ71の本体部71Xの表面に積層させて接触させることができる。
【0049】
以上の電池パック100は、二次電池セル1の凸部電極13に接続された接続リード板16をブレーカ71に積層している。このように、二次電池セル1の凸部電極13に接続された接続リード板16をブレーカ71に熱結合させる構造は、二次電池セル内部の発熱を凸部電極13からブレーカ71に効果的に熱伝導させてブレーカ71を確実に動作させることができる。ただ、電池パックは、図示しないが、二次電池セルの封口板に接続された接続リード板をブレーカに積層させて、二次電池セルの発熱を検出することもできる。
【0050】
(ヒューズ72)
保護素子7であるヒューズ72は、直列に接続される二次電池セル1の間に接続されて、過電流が流れる状態で溶断されて電流を遮断する。
図6に示すヒューズ72は、回路基板5の中央部の片側の領域であって、溶融された絶縁成形樹脂が注入される樹脂注入ガイド29から離れた領域に配置されている。この構造は、
図6の矢印A及びBで示すように、樹脂注入ガイド29から供給される溶融樹脂の流動距離を長くできるので、溶融樹脂の熱でヒューズ72が誤って溶断されるのを有効に防止できる。
【0051】
さらに、
図2と
図3に示す樹脂モールド部4は、樹脂注入ガイド29から注入される溶融樹脂が直接にヒューズ72に当接するのを防止するために、遮蔽溝42を設けている。この遮蔽溝42は、溶融樹脂を成形室に注入する状態で、成形金型の内面に突出して設けた遮蔽リブ91(
図6において鎖線で表示)により形成される。
図6に示す遮蔽リブ91は、平面視をコ字状としており、溶融された絶縁成形樹脂の流入側を閉塞して反対側に開口部を配置する姿勢で設けられている。この遮蔽リブ91により、成形室に供給される絶縁成形樹脂は、直接にヒューズ72に当接することなく遮蔽リブ91を迂回する状態でヒューズ72の周囲まで充填される。このため、溶融状態にある高温の絶縁成形樹脂が直接にヒューズ72に接触することなく、ある程度、温度が低下した状態でヒューズ72に接触することでヒューズの誤作動が防止される。ただ、樹脂注入ガイド29とヒューズ72の間隔を広くして溶融樹脂の流動距離を長くできる場合には、必ずしも樹脂モールド部に遮蔽溝を設ける必要はない。
【0052】
(引出線6)
さらに、
図1〜
図6に示す電池パック100は、複数の引出線6を回路基板5に接続して、これを樹脂モールド部4から外部に引き出している。複数の引出線6は、一端を回路基板5に連結すると共に、他端にはコネクタ69を接続している。引出線6は、一端が回路基板5に接続された状態で、絶縁成形樹脂に埋設されて固定され、回路基板5がインサート成形された樹脂モールド部4から外部に引き出される。複数の引出線6は、
図11に示すように、回路基板5に接続される端部を、位置決め機構60を介して定位置に配置している。
【0053】
(位置決め機構60)
図11〜
図13に示す位置決め機構60は、ホルダーケース2に一体成形して設けている。図に示すホルダーケース2は、基板収納部26に配置された回路基板5の定位置に複数の引出線6を配置するために、基板収納部26の外周面であって区画壁33の一部に位置決め機構60を設けている。
図11〜
図13に示す位置決め機構60は、複数の引出線6を平行な姿勢で所定の間隔で配置できるように、互いに平行な姿勢で形成された複数列の櫛状リブ61を備えており、隣接する櫛状リブ61の間に引出線6を挿入して定位置に配置する複数列のガイド溝62を設けている。複数列のガイド溝62は、各々の引出線6を別々に独立して挿入でき、かつ挿入された引出線6を櫛状リブ61に沿って移動できるようにしている。なお、櫛状リブ61は必ずしも平行な姿勢で形成される必要はなく、必要に応じて互いに適宜に傾斜していてもよい。
【0054】
図13に示す位置決め機構60は、複数列の櫛状リブ61を等間隔に並設して複数列のガイド溝62を等間隔に設けている。この位置決め機構60は、各々のガイド溝62に引出線6を挿入して、各引出線6を一定の間隔に配置する。ガイド溝62の間隔は、先端のコネクタ69に連結している引出線6の間隔とほぼ等しくすることができる。この位置決め機構60は、コネクタ69に連結している各引出線6を、コネクタ69の近傍で速やかにガイド溝62に案内できる。それは、コネクタ69を介して複数の引出線6をガイド溝62の間隔に配置できるので、複数の引出線6をガイド溝62に押し込んで、全ての引出線6を簡単にガイド溝62に挿入できるからである。
【0055】
ガイド溝62は、引出線6を挿入できる深さと幅を有すると共に、上端開口63を引出線6の太さよりもやや狭くして、ここに挿入される引出線6が外部に抜けるのを防止している。
図12と
図13に示すガイド溝62は、櫛状リブ61の上端部を内側に突出する形状に形成して上端開口63を狭くしている。このガイド溝62は、上端開口62の開口幅を引出線6の外形よりも小さく、かつ、引出線6の芯線6aの太さよりも大きくしている。このガイド溝62は、上端開口63から引出線6を押し込むことで、引出線6を簡単に挿入できると共に、ガイド溝62に挿入した状態では、引出線6をガイド溝62に沿って摺動させることができる。複数の引出線6は、図示しないが、位置決め機構60に設けた複数列のガイド溝62に沿う複数列の凸条を有する治具を利用して簡単に挿入できる。
【0056】
さらに、
図12と
図13に示す位置決め機構60は、ガイド溝62の回路基板5側であって、基板収納部26との境界である区画壁33に、引出線6の外周面に沿う円形溝64を設けている。このように、回路基板側の端面に形成される円形溝64は、ここに挿通される引出線6との隙間を狭くできるので、樹脂モールド部4の成形時に成形室となる基板収納部26に充填される溶融樹脂がガイド溝62から外部に漏れるのを有効に防止できる。さらに、図に示すホルダーケース2は、引出線6が引き出される側の周壁30と位置決め機構60との間に引出線6を通過させる引き出し凹部66を設けている。
【0057】
以上の位置決め機構60は、上端開口63からそれぞれのガイド溝62に引出線6を挿入する状態で、引出線6を軸方向に摺動できるようにしている。この位置決め機構60は、コネクタ69の近傍で引出線6をガイド溝62に挿入した後、コネクタ69をガイド溝62から遠ざける方向に移動させて、ホルダーケース2から引き出される引出線6の長さが所定の長さとなるように調整する。複数の引出線6は、ホルダーケース2から所定の長さが引き出された状態で、先端部が回路基板5に半田付けして接続される。さらに、位置決め機構60は、回路基板4にハンダ付けされる引出線6の先端部を回路基板5との接続部分まで移動させた状態で、複数の引出線6を一定の間隔に配置する。回路基板4には、
図11に示すように、位置決め機構60で一定の間隔に保持される引出線6の先端部をハンダ付けできる位置に、複数の接続部55を設けている。複数の接続部55の間隔は、位置決め機構60が引出線6を配置する間隔に等しいので、各引出線6の先端をハンダ付けする接続部55に配置して、各引出線6を能率よくハンダ付けできる。位置決め機構60を介して回路基板5の定位置に接続された複数の引出線6は、回路基板5が絶縁成形樹脂に埋設される状態で固定されて、樹脂モールド部4から外部に引き出される。
【0058】
以上の位置決め機構60は、ホルダーケース2に一体成形して設けている。ただ、位置決め機構60は、ホルダーケース2と別部材の位置決めホルダとして、ホルダーケースに連結して固定することもできる。この位置決めホルダは、前述の位置決め機構と同様の形状とすることができ、ホルダーケースには、位置決めホルダを定位置に配置する連結部を設けることができる。この位置決めホルダは、例えば、回路基板の定位置に固定した状態で、引出線を接続し、その後、ホルダーケースの基板収納部に回路基板を配置してホルダーケースの定位置に配置することができる。
【0059】
(外装シート8)
さらに、電池パック100は、二次電池セル1の周囲を外装シート8で被覆している。
図1の電池パック100は、ホルダーケース2のフレーム部27に収納された二次電池セル1とフレーム部27とを外装シート8で被覆して固定している。この外装シート8は絶縁シートで、二次電池セル1の外周を絶縁しながら、フレーム部27と二次電池セル1とを強固に連結している。
【0060】
以上の電池パック100は、以下のようにして製造される。
(1)回路基板5に保護素子7であるブレーカ71を接続する。回路基板5は、
図5に示すように、長手方向の両端部であって、二次電池セル1の端子面1Xと対向する部分にブレーカ71が固定される。ブレーカ71は、
図9と
図10に示すように、回路基板5の端部に設けた切欠部51に配置されると共に、本体部71Xの両端から突出するリード板71A、71Bが回路基板5に設けた接続プレート53に接続される。
【0061】
(2)回路基板5をホルダーケース2に配置する。回路基板5は、ホルダーケース2の基板収納部26に案内されて、
図8に示すように、連結機構19を介して係止構造で定位置にセットされる。
【0062】
(3)位置決め機構60の複数列ガイド溝62に、他端にコネクタ69が接続されてなる複数の引出線6を個別に挿入する(挿入工程)。
図4と
図6に示す引出線6は、他端にコネクタ69を備えており、コネクタ側の中間部を位置決め機構60のガイド溝62に挿入する。この状態で、複数列のガイド溝62に挿入された複数の引出線6を、ガイド溝62に沿って引き出し方向に同時に移動させて、引出線6の引き出し長さを調整する(長さ調整工程)。所定の長さに引き出された複数の引出線6の一端を回路基板5に半田付けする(接続工程)。
【0063】
(4)ホルダーケース2の電池収納部25に二次電池セル1を配置する。
図5に示すホルダーケース2は、両端部にフレーム部27を備えており、このフレーム部27の内側に二次電池セル1をセットして定位置に配置する。2個の二次電池セル1は、端子面1Xが互いに対向する姿勢で配置される。
【0064】
(5)二次電池セル1の端子面1Xに接続された一対の接続リード板16を回路基板5に接続する。二次電池セル1は、
図9に示すように、第1の電極10Aに接続された第1接続リード板16Aが、ブレーカ71の表面に積層する状態で配置されて、回路基板5の第1接続ランド52Bに接続され、第2の電極10Bに接続された第2接続リード板16Bが、回路基板5の第2接続ランド52Bに接続される。
【0065】
(6)ホルダーケース2の基板配置領域22の開口部側を成形金型(図示せず)で閉塞して基板収納部26の内部に成形室を成形する。この状態で、溶融された絶縁成形樹脂を樹脂注入ガイド29の注入孔29aから注入して樹脂モールド部4を成形する。二次電池セル1と複数の引出線6が接続された回路基板5が絶縁成形樹脂にインサートされて、複数の引出線6の他端を外部に引き出す樹脂モールド部4が成形される(成形工程)。
【0066】
(7)絶縁成形樹脂が硬化して、成形金型を脱型した後、ホルダーケース2のフレーム部2と二次電池セル1とを外装シート8で被覆する。
【0067】
以上の電池パック100は、対向する二次電池セル1を両端部に配置して、これ等の間に回路基板5を配置する構造としているが、電池パックは、複数の二次電池セルを端子面が同一平面に位置するように横に並べて配置し、複数の端子面と対向する位置に回路基板を配置することもできる。
【0068】
さらに、以上の実施形態の電池パック100は、2個の二次電池セル1をホルダーケース2の両端部に配置して、対向する二次電池セル1の間に回路基板5を配置する構造としたが、本発明の電池パックは、1個の二次電池セルを備えることも、3個以上の二次電池セルを備えることもできる。以下、本発明の他の実施形態に係る電池パックとして、1個の二次電池セル1を備える電池パック200の一例を
図14に、また、4個の二次電池セル1を備える電池パック300の一例を
図15にそれぞれ示している。ここで、
図14と
図15に示す電池パック200、300は、樹脂モールド部と外装シートを除いた状態を示している。また、これ等の図に示す実施形態において、前述の実施形態と同じ構成要素については、同符号を付してその詳細な説明は省略している。
【0069】
図14に示す電池パック200は、ホルダーケース2Bが、1個の二次電池セル1が配置されるフレーム部27Bで構成される電池配置領域21Bと、この二次電池セル1の端子面1Xに沿って回路基板5Bが配置される基板配置領域22Bとを備えている。図に示す基板配置領域22Bは、中空部を設けることなく、樹脂成形領域23Bのみを設けており、この樹脂成形領域23Bを基板収納部26Bとして回路基板5Bを配置している。ただ、ホルダーケースは、図の鎖線で示すように、基板収納部の設計変更等により領域を広くする場合に中空部を設けることもできる。図の回路基板5Bは、ホルダーケース2Bの短手方向に延在された形状としており、二次電池セル1の端子面1Xと対向する側縁部に保護素子7であるブレーカ71を実装している。また、この電池パック200は、ホルダーケース2Bの周壁30Bに設けた位置決め機構60Bを介して複数の引出線6を回路基板5Bの定位置に接続すると共に、コネクタ69を接続した引出線6を外部に引き出す構造としている。
【0070】
さらに、
図15に示す電池パック300は、ホルダーケース2Cが、両端部にそれぞれ2個ずつの二次電池セル1が配置されるフレーム部27Cで構成される電池配置領域21Cを有すると共に、これらの電池配置領域21Cの間に基板配置領域22Cを設けて回路基板5を配置している。電池配置領域21Cは、2個の二次電池セル1を収納できるように、3辺を囲う周壁30Cと、隣接する二次電池セル1の間に配置される中間壁40とで、2つの電池収納部25を形成している。さらに、基板配置領域22Cは、樹脂モールド部が形成される樹脂成形領域23Cと、中空領域24Cとが形成されている。
図15に示す電池パック300は、図において前方に配置される2個の二次電池セル1の間に基板収納部26を設けて回路基板5を配置し、図において後方に配置される2個の二次電池セル1の間には回路基板を配置することなく、ほぼ全体を中空領域24Cとしている。
【0071】
また、
図15に示す電池パック300においては、前方に配置される2個の二次電池セル1の端子面1Xと対向する位置に回路基板5を配置し、後方に配置される2個の二次電池セル1は、延長リード板17を介して回路基板5に接続する構造としている。この電池パック300は、延長リード板17が配置される領域を樹脂成形領域23Cとして、絶縁成形樹脂を充填することで、後方に配置される二次電池セル1の端子面1X及び延長リード板17を樹脂モールド部にインサートして固定できる。
【0072】
さらに、本発明の電池パックは、
図16〜
図20に示す構造とすることもできる。
図16ないし
図20に示す電池パック400は、2個の二次電池セル1と、二次電池セル1の各々に電気接続している回路基板5Dと、回路基板5Dを埋設している金型成形の樹脂モールド部4Dとを有している。これ等の図に示す電池パック400は、2個の二次電池セル1の端子面1Xを回路基板5Dと対向する位置に配置して、回路基板5Dを埋設している樹脂モールド部4Dでもって同一平面に配置している複数の二次電池セル1を連結している。
【0073】
図17に示す二次電池セル1は、正負の電極10である凸部電極13に溶着する接続リード板46をアンカー部47として、樹脂モールド部4Dに埋設している。接続リード板46はL字状に折曲されて、一端を二次電池セル1の凸部電極13に固定して、他端を回路基板5Dに固定している。L字状の接続リード板46は、凸部電極13から回路基板5Dに向かって突出する部分を樹脂モールド部4Dに埋設して樹脂モールド部4Dに抜けないように連結される。アンカー部47となる接続リード板46は、全長を長くして突出部を設け、あるいは横幅を広くして突出部を設けて、これを樹脂モールド部4Dに埋設することもできる。
【0074】
回路基板5Dは、ガラス繊維で補強されたエポキシ樹脂であって、樹脂モールド部4Dに比較して充分な強度を有する。この回路基板5Dは樹脂モールド部4Dに埋設されて、樹脂モールド部4Dを補強する。
【0075】
樹脂モールド部4Dは、回路基板5Dと二次電池セル1とを金型の定位置に仮止めし、金型の成形室に溶融樹脂を注入して成形される。樹脂モールド部4Dは、回路基板5Dを埋設し、回路基板5Dと各々の二次電池セル1とをインサート成形して定位置に連結して固定する。樹脂モールド部4Dは、熱可塑性樹脂を加熱し溶融状態で金型の成形室に注入して成形される。このような熱可塑性樹脂には前述のものが使用できる。
【0076】
図17の樹脂モールド部4Dは、二次電池セル1の両面に延びるラップ部4aを一体的に成形して設けている。ラップ部4aは、二次電池セル1の両面に密着されて樹脂モールド部4Dを強固に二次電池セル1に連結する。ラップ部4aは、二次電池セル1の端子面1Xの近傍に設けられて、樹脂モールド部4Dに連結される。
【0077】
図17と
図18の電池パック400は、二次電池セル1を回路基板5Dの両側に配設して、二次電池セル1の間の回路基板5Dを樹脂モールド部4Dに埋設して、樹脂モールド部4Dでもって、同一平面に配置している二次電池セル1の各々を連結する。この電池パック400は、回路基板5Dの両側に二次電池セル1を連結するので、全長がひとつの二次電池セル1の2倍となるが、両側の二次電池セル1を連結する樹脂モールド部4Dが充分な曲げ強度を有することからすぐれた強度になっている。
【0078】
さらに、電池パック400は、二次電池セル1の周囲を外装シート8Dで被覆している。
図16の電池パック400は、各々の二次電池セル1の周囲を外装シート8Dで被覆している。この外装シート8Dは、二次電池セル1と樹脂モールド部4Dとの境界部分にわたって被覆することで、二次電池セル1と樹脂モールド部4Dとの連結強度を強くできる。
【0079】
回路基板5Dは、複数の引出線6を接続してこれを外部に引き出している。
図16に示す電池パック400は、回路基板5Dに接続している引出線6を樹脂モールド部4Dから外部に引き出している。引出線6は先端にコネクタ69を接続している。引出線6は、絶縁成形樹脂にインサート成形される回路基板5Dに接続されて、絶縁成形樹脂にインサート成形して固定される。引出線6は、
図17〜
図20に示すように、回路基板5Dに接続している端部を、樹脂モールド部4Dの絶縁成形樹脂とは別にプラスチックで成形している位置決めホルダ9で定位置に配置しており、この位置決めホルダ9を位置決め機構90としている。この位置決めホルダ9は絶縁成形樹脂にインサート成形して固定される。位置決め機構90である位置決めホルダ9は、複数の引出線6を平行な姿勢で所定の間隔で配置できるように、互いに平行な姿勢で形成された複数列の櫛状リブ91を備えており、隣接する櫛状リブ91の間に引出線6を挿入して定位置に配置する複数列のガイド溝92を設けている。複数列のガイド溝92は、各々の引出線6を別々に独立して挿入でき、かつ挿入された引出線6を櫛状リブ91に沿って移動できるようにしている。
【0080】
位置決めホルダ9は、各々のガイド溝92に引出線6を挿入して、各引出線6を一定の間隔に配置する。ガイド溝92は、引出線6を挿入できる深さと幅を有しており、上端開口93の開口幅を引出線6の外形よりも小さく、かつ、引出線6の芯線6aの太さよりも大きくして、挿入された引出線6を抜け難くしている。ガイド溝92の間隔は、先端のコネクタ69に連結している引出線6の間隔に等しくしている。この位置決めホルダ9は、コネクタ69の近傍で引出線6を挿入した後、コネクタ69を位置決めホルダ9から遠ざける方向に移動させることで、回路基板5Dにハンダ付けされる引出線6の端部まで移動させた状態で、引出線6を一定の間隔に配置する。回路基板5Dには、位置決めホルダ9で一定の間隔に保持される引出線6の端部をハンダ付けできる位置に複数の接続部55を設けている。複数の接続部55の間隔は、位置決めホルダ9が引出線6を配置する間隔に等しいので、各引出線6の先端をハンダ付けする接続部55に配置して、各引出線6を能率よくハンダ付けできる。位置決めホルダ9で定位置に配置して、回路基板5Dにハンダ付けした状態で、回路基板5Dは絶縁成形樹脂にインサート成形して固定される。
図19に示す位置決めホルダ9は、ガイド溝92の外側に位置する側面に、引出線6の外周面に沿う円形溝94を設けている。このように、位置決めホルダ9の側面に形成される円形溝94は、ここに挿通される引出線6との隙間を狭くできるので、樹脂モールド部4Dの成形時に成形室に充填される溶融樹脂がガイド溝92から外部に漏れるのを有効に防止できる。
【0081】
以上の位置決めホルダ9は、回路基板5Dの定位置に固定されて、複数のガイド溝92が複数の接続部55に対向するように配置される。
図20に示す位置決めホルダ9は、回路基板5Dの端部を嵌入して定位置に固定する嵌入凹部97を備えている。図に示す位置決めホルダ9は、底板95と側壁96とで囲まれる内部であって、複数列に配列された櫛状リブ91の下方に水平方向に延びる溝状の凹部を形成して嵌入凹部97としている。位置決めホルダ9は、この嵌入凹部97に回路基板5の端部が挿入されて回路基板5の定位置に固定される。
【0082】
なお、以上の実施形態では、先端にコネクタが接続された複数の引出線を外部に引き出してなる電池パックとして、引出線の一端が接続された回路基板を樹脂モールド部インサートする構造について詳述したが、電池パックは、必ずしも回路基板を樹脂モールド部にインサートする必要はなく、樹脂モールド部のない構造とすることもできる。樹脂モールド部が形成されない電池パックにおいては、引出線が接続された回路基板を、例えば、外装ケースや外装シートにより被覆することができる。このような電池パックにおいても、前述と同様にして、位置決め機構を介して複数の引出線の先端の位置を特定することで、回路基板の定位置に正確に接続することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態乃至実施例を図面に基づいて説明した。ただ、上記の実施形態乃至実施例は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は上記のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以上の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。