(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記荷重計測器側から前記タイヤ支持部側を前記第2方向に見て、前記荷重計測器は、前記タイヤ軸線に対向する位置から前記タイヤの第3方向における両端部に対向する位置まで、前記第3方向における位置が調整可能に構成されている、
請求項1に記載のスタッドピンの抜け荷重計測装置。
前記タイヤ支持部は、前記タイヤ軸線が第1方向に沿って延びる第1軸第1回動位置と、前記タイヤ軸線が第2方向に沿って延びる第1軸第2回動位置とにおいて、前記第1軸周りの回動が固定されるように構成されている、
請求項5に記載のスタッドピンの抜け荷重計測装置。
前記タイヤ支持部は、前記タイヤ軸線が第2方向に沿って延びる第2軸第1回動位置と、前記タイヤ軸線が第3方向に沿って延びる第2軸第2回動位置とにおいて、前記第2軸周りの回転が固定されるように構成されている、
請求項8に記載のスタッドピンの抜け荷重計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実車にタイヤが装着された状態では、スタッドピンには、軸線方向に作用する力の他、路面からの接線方向(タイヤ周方向)への力や、旋回時等にタイヤ幅方向への力が作用する。このため、例えば、スタッドピンが軸線方向には抜け難い一方でタイヤ周方向には抜け易い場合等、軸線方向における抜け荷重による評価では、実車におけるスタッドピンの耐抜け性を精度よく評価できない場合がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、スタッドピンの抜け荷重を、この軸線方向以外の方向において計測することができるスタッドピンの抜け荷重計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
スタッドピンが埋設された空気入りタイヤが支持されるタイヤ支持部と、
前記空気入りタイヤに対して、このタイヤ軸線の延在方向である第1方向に直交する第2方向に離間した位置に配置された荷重計測器と、
前記荷重計測器と前記スタッドピンとを前記第2方向に接続する接続部材とを備え、
前記タイヤ支持部に前記空気入りタイヤが支持された状態で、前記荷重計測器を前記タイヤ支持部に対して前記第2方向に離間させて前記接続部材を介して前記スタッドピンを前記空気入りタイヤから引き抜く際の抜け荷重が前記荷重計測器によって計測される、スタッドピンの抜け荷重計測装置であって、
前記第1方向及び前記第2方向それぞれに直交する方向を第3方向として、
前記荷重計測器側から前記タイヤ支持部側を前記第2方向に見て、前記荷重計測器は、前記タイヤ軸線から前記第3方向に離間して位置するスタッドピンに対向するように、前記第3方向における位置が調整可能に構成されている。
【0007】
本発明によれば、第2方向から見たときにタイヤ軸線から第3方向に離間して位置するスタッドピンに対応して位置するように、荷重計測器は第3方向における位置が調整される。ここで、スタッドピンは、第2方向から見てタイヤ軸線から第3方向に離間した位置に配置されているので、空気入りタイヤのラジアル方向に延びるスタッドピンの軸線方向はタイヤ内径側に向かって、第2方向に対してタイヤ軸線に向かうように傾斜している。
【0008】
この結果、接続部材は、スタッドピンの軸線方向に対して角度差を有するように第2方向に延びるように配設される。その結果、スタッドピンは、この軸線方向から傾斜した第2方向に引き抜かれるので、該傾斜した第2方向におけるスタッドピンの抜け荷重が計測される。換言すれば、スタッドピンの抜け荷重を、該スタッドピンが埋設された部分におけるラジアル方向とは異なる方向において計測することができる。
【0009】
好ましくは、前記荷重計測器側から前記タイヤ支持部側を前記第2方向に見て、前記荷重計測器は、前記タイヤ軸線に対向する位置から前記タイヤの第3方向における両端部に対向する位置まで、前記第3方向における位置が調整可能に構成されている。
【0010】
本構成によれば、荷重計測部をタイヤ軸線に対向する位置に配置した場合には、スタッドピンの軸線方向(すなわちタイヤに対してラジアル方向)における抜け荷重を計測することができる。また、荷重計測部を空気入りタイヤの第3方向における両端部に対向する位置に配置した場合にはスタッドピンのタイヤ周方向における抜け荷重を計測することができる。すなわち、第2方向から見てスタッドピンを空気入りタイヤの第3方向における任意の位置に配置することにより、スタッドピンの抜け荷重を、ラジアル方向からタイヤ周方向までの間の任意の方向において計測することができる。
【0011】
また、好ましくは、前記タイヤ支持部は、ここに支持される前記空気入りタイヤを、このタイヤ軸周りに回転させるとともに、所望の回転位置に保持可能に構成されている。
【0012】
本構成によれば、空気入りタイヤをタイヤ支持部に取り付けた状態で、スタッドピンを第2方向から見てタイヤ軸から第3方向に離間した位置に容易に配置できる。
【0013】
また、好ましくは、前記荷重計測器の前記第2方向への移動量を計測する移動量計測部を更に備え、
前記移動量計測部は、前記荷重計測器による前記抜け荷重の計測と同期して、前記移動量を計測する。
【0014】
本構成によれば、スタッドピンの抜け荷重と変位とを同期して計測することにより、変位が少ない場合にはスタッドピン孔の剛性が高くスタッドピンの保持力が高いと判断でき、変位が大きくても保持力がある場合にはスタッドピン孔の底部の噛み合わせがよくてスタッドピンの保持力が高いと判断できる。また、変位が大きくて引き抜け荷重が小さい場合には、スタッドピンが埋設された陸部の剛性が低いと判断できるので、スタッドピンの埋設位置を陸部のうち剛性が高い部分に埋設するように変更することにより、スタッドピンの抜け荷重を向上させることができる。すなわち、陸部におけるスタッドピンの埋設位置を評価できる。
【0015】
また、好ましくは、前記タイヤ支持部は、前記第3方向に平行な第1軸周りに回転可能に構成されている。
【0016】
本構成によれば、タイヤ支持部を第1軸周りに回転させることにより、接続部材をスタッドピンに対してタイヤ幅方向に傾斜させることができる。これにより、スタッドピンの抜け荷重を、タイヤ幅方向に傾斜した方向において計測することができる。
【0017】
また、好ましくは、前記タイヤ支持部は、前記タイヤ軸線が第1方向に沿って延びる第1軸第1回動位置と、前記タイヤ軸線が第2方向に沿って延びる第1軸第2回動位置とにおいて、前記第1軸周りの回動が固定されるように構成されている。
【0018】
本構成によれば、タイヤ支持部を第1軸第2回動位置に位置させることにより、スタッドピンの抜け荷重を、この軸線方向に対して直角をなすタイヤ幅方向において計測することができる。
【0019】
また、好ましくは、前記タイヤ支持部は、前記第1軸周りにおいて、前記第1軸第1回動位置と前記第1軸第2回動位置との間の任意の回動位置に保持可能に構成されている。
【0020】
本構成によれば、スタッドピンの抜け荷重を、ラジアル方向からタイヤ幅方向までの間の任意の方向において計測することができる。なお、タイヤ支持部を第1軸周りに回転させることによって、第1方向を実車の天地方向とした場合のキャンバー角を模擬したタイヤ姿勢を実現でき、実車装着状態により近い状態におけるスタッドピンの抜け荷重を計測することができる。
【0021】
また、好ましくは、前記タイヤ支持部は、前記第1方向に平行な第2軸周りに回転可能に構成されている。
【0022】
本構成によれば、タイヤ支持部を第2軸周りに回転させることにより、接続部材をスタッドピンの軸線方向に対して、タイヤ周方向及び/又はタイヤ幅方向に傾斜させることができる。これにより、スタッドピンの抜け荷重を、接地面内に傾斜した方向において計測することができる。
【0023】
また、好ましくは、前記タイヤ支持部は、前記タイヤ軸線が第2方向に沿って延びる第2軸第1回動位置と、前記タイヤ軸線が第3方向に沿って延びる第2軸第2回動位置とにおいて、前記第2軸周りの回転が固定されるように構成されている。
【0024】
本構成によれば、タイヤ支持部を第2軸第2回動位置に位置させることにより、スタッドピンの抜け荷重をタイヤ周方向に傾斜した方向において計測することができる。
【0025】
また、好ましくは、前記タイヤ支持部は、前記第2軸周りにおいて、前記第2軸第1回動位置と前記第2軸第2回動位置との間の任意の回転位置に固定可能に構成されている。
【0026】
本構成によれば、スタッドピンの抜け荷重を、タイヤ幅方向からタイヤ周方向までの任意の方向において計測することができる。なお、タイヤ支持部を第2軸周りに回転させることにより、スリップ角及び操舵時を模擬したタイヤ姿勢を実現でき、実車装着状態により近い状態におけるスタッドピンの抜け荷重を計測することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るスタッドピンの抜け荷重計測装置よれば、スタッドピンの抜け荷重を、この軸線方向以外の方向において計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0030】
(第1実施形態)
図1は本発明の一実施形態に係るスタッドピンの抜け荷重計測装置1の側面図であり、
図2は同平面図である。以下の説明では、
図1における上下方向及び左右方向を抜け荷重計測装置1の上下方向及び前後方向とそれぞれ称し、
図2における左右方向及び上下方向を抜け荷重計測装置1の前後方向及び右左方向とそれぞれ称する。
【0031】
図1に示されるように、抜け荷重計測装置1は、前後方向に延びる装置フレーム2と、この前端部に配置されたタイヤ支持部10と、装置フレーム2の後端部に配置された荷重計測部30とを有している。スタッドピン7(
図2参照)が埋設された空気入りタイヤ8は、タイヤ軸線TCが上下方向に延びる姿勢でタイヤ支持部10によって支持され、スタッドピン7の空気入りタイヤ8からの引き抜き荷重が荷重計測部30によって計測される。
【0032】
図2を併せて参照して、装置フレーム2は、前後方向に延びる左右一対のメインフレーム3と、この前端部それぞれにおいて上方に延びる左右一対の前部柱4とを有している。
【0033】
タイヤ支持部10は、左右一対の前部柱4の間に取り付けられて前方に延びる第1筐体11と、この前端部から上方に延びるタイヤ支持柱12と、この上端部にタイヤ支持柱に対して回転可能に設けられたタイヤ固定ハブ13と、タイヤ支持柱12の上部にブラケットを介して固着されたブレーキ装置14とを有している。第1筐体11は、前部柱4に相対変位不能に固定されている。
【0034】
タイヤ固定ハブ13は軸芯が上下方向に延びる円盤状の形態をなしており、この下面に拡径されたブレーキディスク15が一体的に設けられている。タイヤ固定ハブ13の上端面には、この軸芯に、空気入りタイヤ8がタイヤ軸線TCを一致させた状態で、ホイール9を介して不図示の締結手段により固定されて支持されている。
【0035】
ブレーキ装置14は、ブレーキディスク15を厚み方向(
図1、
図2において上下方向)に挟むように設けられており、作動時にブレーキディスク15を厚み方向に把持して、ブレーキディスク15のタイヤ支持柱12周りの回転位置を固定する。すなわち、ブレーキ装置14を作動させることにより、タイヤ固定ハブ13がブレーキディスク15を介してタイヤ支持柱12周りにおいて回転不能に固定される。
【0036】
荷重計測部30は、左右一対のメインフレーム3の後端部に取り付けられて上方に延びるベース31と、ベース31の前面に対して上下方向に昇降可能に設けられた上下方向移動ユニット40と、上下方向移動ユニット40の上面に対して左右方向に移動可能に設けられた左右方向移動ユニット50と、左右方向移動ユニット50の上面に対して前後方向に移動可能に設けられた前後方向移動ユニット60とを有している。
【0037】
ベース31は、直方体状のハウジング32と、ハウジング32の内側において上下方向に延びており軸線周りに回転可能に支持された上下方向ボールネジ33と、ハウジング32の上面に配置されており上下方向ボールネジ33の上端部に連結されてこれと一体的に回転するハンドル34と、ハウジング32の前面に固着されて上下方向に延びる左右一対の上下方向スライドレール35とを有する。
【0038】
上下方向移動ユニット40は、直方体状のハウジング41と、ハウジング41の後面に固着された左右一対のキャリッジ42及びこれらの左右方向間に配置されたナット受け43と、ハウジング41の上面に固着されたテーブル44とを有している。左右一対のキャリッジ42はそれぞれ、左右一対の上下方向スライドレール35にガイドされて上下方向に移動する。ナット受け43は、ベース31のハウジング32の内側に突出しており、ここに上下方向に延びる雌ねじ部を有し、該雌ねじ部に上下方向ボールネジ33が上下に貫通して螺合している。テーブル44は水平方向に延びている。
【0039】
すなわち、ベース31のハンドル34を回転させることによって、上下方向移動ユニット40は、ナット受け34を介して上下方向ボールネジ33によりベース31に対して上下方向へ移動させられると共に、その移動がキャリッジ42を介して上下方向スライドレール35によりガイドされる。
【0040】
テーブル44上には、左右方向に延びる前後一対の左右方向スライドレール45と、これらの間において左右方向に延びており軸線周りに回転可能に支持された左右方向ボールネジ46と、左右方向ボールネジ46の左端部に連結されてこれと一体的に回転するハンドル47とが配置されている。
【0041】
左右方向移動ユニット50は、水平方向に延びるテーブル51と、テーブル51の下面に固着された前後一対のキャリッジ52及びこれらの前後方向間に配置されたナット受け53とを有している。前後一対のキャリッジ52はそれぞれ、前後一対の左右方向スライドレール45にガイドされて左右方向に移動する。ナット受け53は、左右方向に延びる雌ねじ部を有し、該雌ねじ部に左右方向ボールネジ46が左右に貫通して螺合している。
【0042】
すなわち、上下方向移動ユニット40のハンドル47を回転させることによって、左右方向移動ユニット50が、ナット受け53を介して左右方向ボールネジ46により上下方向移動ユニット40に対して左右方向へ移動させられると共に、その移動がキャリッジ52を介して左右方向スライドレール45によりガイドされる。
【0043】
テーブル51上には、前後方向に延びる左右一対の前後方向スライドレール54と、これらの間において前後方向に延びており軸線周りに回転可能に支持された前後方向ボールネジ55と、前後方向ボールネジ55の後端部に連結されたモータ56とが配置されている。モータ56は、前後方向に延びる出力軸を有し、該出力軸の軸線を前後方向ボールネジ55の軸線に一致させて配置されている。モータ56は、駆動された際に出力軸を前後方向に延びる軸線周りに回転させる。
【0044】
前後方向移動ユニット60は、水平方向に延びるテーブル61と、テーブル61の下面に固着された左右一対のキャリッジ62及びこれらの左右方向間に配置されたナット受け63とを有している。左右一対のキャリッジ62はそれぞれ、左右一対の前後方向スライドレール54にガイドされて前後方向に移動する。ナット受け63は、前後方向に延びる雌ねじ部を有し、該雌ねじ部に前後方向ボールネジ55が前後に貫通して螺合している。
【0045】
すなわち、モータ56を駆動させることによって、前後方向移動ユニット60が、ナット受け63を介して前後方向ボールネジ55により左右方向移動ユニット50に対して前後方向に移動させられると共に、その移動がキャリッジ62を介して前後方向スライドレール54によりガイドされる。
【0046】
テーブル61上には、ロードセル(荷重計測器)64が固着されている。ロードセル64の前端部には、後述する接続部材66が連結される連結部65が設けられている。ロードセル64は、接続部材66を介して連結部65に入力された荷重を計測する。なお、ロードセル64として荷重の前後方向成分のみ計測するものを採用してもよい。
【0047】
接続部材66は、タイヤ支持部10に支持された空気入りタイヤ8に埋設されたスタッドピン7とロードセル64の連結部65とを前後方向に接続する線状部材であり、軸線方向に延び難い部材であればよく、本実施形態では金属製のチェーンが採用されている。なお、接続部材66と、ロードセル64の連結部65及びスタッドピン7それぞれとの連結は、適宜の連結手段を採用できる。例えば、スタッドピン7の頂部及び連結部65にフック部又はリング部を設け、カラビナ等を用いて接続部材66と連結するように構成してもよい。
【0048】
また、抜け荷重計測装置1は、制御装置5を更に備えている。制御装置5は、CPU、メモリ、記憶装置、および入出力装置を備えた周知のコンピュータと、コンピュータに実装されたソフトウエアとにより構成されている。制御装置5は、モータ56の駆動を制御すると共に、ロードセル64による計測結果が入力されるようになっている。
【0049】
具体的には、制御装置5は、モータ56の単位時間当たりの回転数(rpm)を制御すると共に、その回転量が入力される。これにより前後方向移動ユニット60の前後方向の移動速度を制御することができると共に、前後方向への移動量を計測することができる。
【0050】
さらに、制御装置5には、前後方向移動ユニット60の移動量の計測に同期させて、ロードセル64による荷重の計測結果が入力される。すなわち、制御装置5は、接続部材66を介してロードセル64に入力される荷重と、前後方向移動ユニット60の前後方向への移動量とを同期して計測する。
【0051】
以下、抜け荷重計測装置1によるスタッドピン7の抜け荷重の計測について説明する。
【0052】
図2に示されるように、空気入りタイヤ8をタイヤ支持部10にする。このとき、ロードセル64側からタイヤ支持部10側を前後方向に見て、引き抜き荷重の計測対象となっているスタッドピン7Aが、タイヤ軸線TCに対して左右方向に離間して位置するように、空気入りタイヤ8はタイヤ軸線TC周りの回転位置に配置されている。この状態で、ブレーキ装置14を作動させることにより、空気入りタイヤ8がタイヤ支持柱12周りにおいて回転方向に固定されている。
【0053】
次いで、ロードセル64の連結部65が計測対象のスタッドピン7Aの頂部に前後方向に対向して位置するように、上下方向移動ユニット40及び左右方向移動ユニット50により前後方向移動ユニット60の位置を上下方向及び左右方向に調整する。例えば、ロードセル64の連結部65が前後方向に対向する位置を照射するレーザー照射装置(不図示)を前後方向移動ユニット60に設け、レーザー照射装置が照射する光が計測対象のスタッドピン7Aの頂部を照射するように前後方向移動ユニット60の位置を調整することにより、調整作業を容易化できる。
【0054】
次いで、接続部材66により、計測対象のスタッドピン7Aとロードセル64の連結部65とを前後方向に接続する。ここで、ロードセル64の連結部65は計測対象のスタッドピン7Aの頂部に前後方向に対向して位置しているので、これらを接続する接続部材66は、前後方向に平行に延びることになる。
【0055】
次いで、制御装置5によりモータ56を駆動制御して、前後方向移動ユニット60を後方へ移動させて、接続部材66を介してスタッドピン7Aに空気入りタイヤ8からの引き抜き力を加える。このとき、制御装置5は、スタッドピン7Aが引き抜かれるまで、前後方向移動ユニット60の後方への移動量と同期させて、ロードセル64により計測されたスタッドピン7Aの引き抜き荷重を記録する。
【0056】
すなわち、本実施形態によれば、前後方向から見たときにタイヤ軸線TCから右側に離間して位置するスタッドピン7Aに対応して位置するように、ロードセル64は左右方向における位置が調整される。ここで、スタッドピン7Aは、前後方向から見てタイヤ軸線TCから右方向に離間した位置に配置されているので、空気入りタイヤ8のラジアル方向に延びるスタッドピン7Aの軸線方向はタイヤ内径側に向かって、タイヤ軸線に向かうように左側に傾斜している。
【0057】
この結果、
図3に示されるように、接続部材66は、スタッドピン7Aの軸線方法に対して角度差Xを有するように前後方向に延びるように配設されるので、スタッドピン7Aをこの軸線方向から傾斜した前後方向に引き抜く際の荷重が計測される。換言すれば、スタッドピン7Aの抜け荷重を、該スタッドピン7Aが埋設された部分におけるラジアル方向に対して角度差Xで傾斜した方向において計測することができる。
【0058】
また、タイヤ支持部10は、空気入りタイヤ8をタイヤ軸線TC周りに回転させるとともに、ブレーキ装置14により所望の回転位置に保持可能に構成されている。これにより、前後方向から見て、空気入りタイヤ8をタイヤ支持部10に取り付けた状態で、スタッドピン7のタイヤ軸線TCに対する左右方向の位置を容易に調整できる。また、ロードセル64の連結部65がスタッドピン7に前後方向に対向するように、前後方向移動ユニット60の位置が左右方向及び上下方向に移動可能となるように構成されている。
【0059】
例えば、
図3に示されるように、前後方向から見て、スタッドピン7B及び7Cを空気入りタイヤ8の左右方向の両端部に位置させた場合、スタッドピン7B及び7Cの軸線方向(ラジアル方向)が左右方向に向く一方で、これに対して直交して接続部材66は前後方向に延びている。すなわち、スタッドピン7B及び7Cに関して、空気入りタイヤ8のラジアル方向に対して直交する方向、すなわちタイヤ周方向に沿った方向における抜け荷重を計測することができる。
【0060】
また、前後方向から見て、スタッドピン7Dを空気入りタイヤ8のタイヤ軸線TCに対して前後方向に対向させて位置させた場合、スタッドピン7Dの軸線方向(ラジアル方向)が前後方向に向き、これは接続部材66の延びる方向と一致している。すなわち、スタッドピン7Dに関して、空気入りタイヤ8のラジアル方向における抜け荷重を計測することができる。
【0061】
よって、スタッドピン7を、前後方向から見て、空気入りタイヤ8のタイヤ軸線TCに対して左右方向の任意の場所に位置させることにより、スタッドピン7の軸線と接続部材66の延びる方向との間のなす角度を0°〜90°まで任意の角度に設定することができる。これにより、スタッドピン7の抜け荷重を、タイヤ軸線TCに直交する面内における任意の方向において、計測することができる。
【0062】
また、スタッドピン7の抜け荷重と変位とを同期して計測することにより、変位が少ない場合にはスタッドピン孔の剛性が高くスタッドピン7の保持力が高いと判断でき、変位が大きくても保持力がある場合にはスタッドピン孔の底部の噛み合わせがよくてスタッドピン7保持力が高いと判断できる。また、変位が大きくて引き抜け荷重が小さい場合には、スタッドピン7が埋設された陸部の剛性が低いと判断できるので、スタッドピン7の埋設位置を陸部のうち剛性が高い部分に埋設するように変更することにより、スタッドピン7の抜け荷重を向上させることができる。すなわち、陸部におけるスタッドピン7の埋設位置を評価できる。
【0063】
(第2実施形態)
図4〜
図6を参照して、第2実施形態に係るスタッドピンの抜け荷重計測装置70を説明する。抜け荷重計測装置70は、第1実施形態に係る抜け荷重計測装置1に対して、タイヤ支持部10が前後方向及び上下方向に平行な平面内を回動可能に構成されている点が異なっている。以下の説明では、上記第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0064】
図4はスタッドピンの抜け荷重計測装置70の側面図である。
図4に示されるように、荷重抜け装置70において、タイヤ支持部10は、左右方向に延びて第1筐体11を左右に貫通する第1軸71と、左右一対の前部柱4に取り付けられて第1軸71をこの軸線周りに回転可能に支持する第1軸受け72とを更に備えている。すなわち、タイヤ支持部10は、前部柱4に対して、第1軸71周りに前後方向及び上下方向に平行な平面内を回転可能に構成されている。
【0065】
本実施形態では、タイヤ支持部10は、第1筐体11が前部柱4に対して第1軸71周りに回動することにより、ここに支持される空気入りタイヤ8のタイヤ軸線TCが上下方向に延びる第1軸第1回動位置と、タイヤ軸線TCが前後方向に延びる第1軸第2回動位置との間を移動可能に構成されている。なお、タイヤ支持部10は、第1筐体11が前部柱4に対して、第1軸第1回動位置及び第1軸第2回動位置それぞれに保持されるように図示しないストッパを備えている。
【0066】
図4において二点鎖線で示されるようにタイヤ支持部10が第1軸第1回動位置に保持されている場合、上記第1実施形態と同様に、スタッドピン7の抜け荷重をタイヤ軸線TCに直交する面内における任意の方向において計測することができる。
【0067】
また、
図4において実線で示されるようにタイヤ支持部10が第1軸第2回動位置に保持されている場合、スタッドピン7は、前後方向に垂直な面内において空気入りタイヤ8のラジアル方向に延びているのに対して、接続部材66は前後方向に延びている。この場合、接続部材66が、スタッドピン7の軸線方向(ラジアル方向)に対して直交、すなわちタイヤ幅方向に延びるように配置されることになる。よって、スタッドピン7の抜け荷重をタイヤ幅方向において計測することができる。
【0068】
図5は、第2実施形態の変形例に係るスタッドピンの抜け荷重装置75の平面図であり、タイヤ支持部10の周辺を示している。
図5に示すように、抜け荷重装置75は、第1位置決めモータ76を更に有している。第1位置決めモータ76は、出力軸を第1軸71の軸芯に一致させて第1軸71の左端部に連結されている。第1位置決めモータ76は、制御装置5により制御されて出力軸を任意の回転角度位置に保持できるように構成されており、例えばステッピングモータを採用することができる。
【0069】
スタッドピンの抜け荷重装置75によれば、タイヤ支持部10を第1軸第1回動位置と第1軸第2回動位置との間の任意の角度位置に保持できる。例えば、
図6に示される側面視において、上下方向を実車の天地方向とした場合に、タイヤ支持部10に支持された空気入りタイヤ8をタイヤ軸線TCが後方に向かって下方に傾斜するように実車装着状態でのキャンバー角Yを模擬することもできる。すなわち、実車装着状態により近い状態におけるスタッドピンの抜け荷重を計測することができる。
【0070】
(第3実施形態)
図7〜
図10を参照して、第3実施形態に係るスタッドピンの抜け荷重計測装置80を説明する。抜け荷重計測装置80は、第2実施形態に係る抜け荷重計測装置70に対して、タイヤ支持部10のタイヤ支持柱12が水平方向に回動可能に構成されている点が異なっている。以下の説明では、上記第1及び第2実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0071】
図7はスタッドピンの抜け荷重計測装置80の平面図である。
図8に示されるように、荷重抜け装置80において、タイヤ支持部10は、上下方向に延びてタイヤ支持柱12を上下に貫通する第2軸81と、第1筐体11に取り付けられて第2軸81をこの軸線周りに回転可能に支持する第2軸受け82とを更に備えている。すなわち、タイヤ支持部10において、タイヤ支持柱12は第1筐体11に対して、第2軸81周りに水平方向に回転可能に構成されている。
【0072】
本実施形態では、タイヤ支持部10は、タイヤ支持柱12が第1筐体11に対して第2軸81周りに回動することにより、ここに支持される空気入りタイヤ8のタイヤ軸線TCが前後方向及び上下方向に平行な面内を延びる第2軸第1回動位置と、タイヤ軸線TCが左右方向に延びる第2軸第2回動位置との間を移動可能に構成されている。なお、タイヤ支持部10は、タイヤ支持柱12が第1筐体11に対して、第2軸第1回動位置及び第2軸第2回動位置それぞれに保持されるように図示しないストッパを備えている。
【0073】
図7において二点鎖線で示されるように、タイヤ支持部10が第1軸第2回動位置に位置している状態でタイヤ支持柱12が第2軸第1回動位置に保持されている場合、上記第2実施形態と同様に、スタッドピン7の抜け荷重をタイヤ幅方向において計測することができる。
【0074】
また、
図7において実線で示されるようにタイヤ支持部10が第1軸第2回動位置に位置している状態でタイヤ支持柱12が第2軸第2回動位置に保持されている場合、スタッドピン7は、左右方向に垂直な面内において空気入りタイヤ8のラジアル方向に延びているのに対して、接続部材66は前後方向に延びている。この場合、接続部材66が、スタッドピン7の軸線方向(ラジアル方向)に対して、左右方向に垂直、すなわちタイヤ軸線TCに垂直な面内において角度差をもって延びるように配置されることになる。よって、スタッドピン7の抜け荷重をタイヤ軸線TCに垂直な面内における任意の方向において計測することができる。
【0075】
図8は、第3実施形態の変形例に係るスタッドピンの抜け荷重計測装置85の側面図であり、タイヤ支持部10の周辺を示している。
図8に示すように、抜け荷重計測装置85は、第2位置決めモータ86を更に有している。第2位置決めモータ86は、出力軸を第2軸81の軸芯に一致させて第2軸81の下端部に連結されている。第2位置決めモータ86は、制御装置5により制御されて出力軸を任意の回転角度位置に保持できるように構成されており、例えばステッピングモータを採用することができる。
【0076】
抜け荷重計測装置85によれば、タイヤ支持柱12を第2軸第1回動位置と第2軸第2回動位置との間の任意の角度位置に保持できる。
【0077】
この他、
図9に示される、更なる変形例に係るスタットピンの抜け荷重計測装置90のように、第1位置決めモータ76と第2位置決めモータ86とを両方備えるように構成してもよい。これによって、タイヤ支持部10を第1軸71周りの任意の角度位置に保持しつつ、タイヤ支持柱12を第2軸81周りの任意の角度位置に保持できる。これにより、スタッドピンの抜け荷重を、より一層様々な方向において計測することができる。
【0078】
例えば、
図10Aに示すように、タイヤ支持部10が第1軸第2位置に位置する状態で、第2軸81周りに回動させて、空気入りタイヤ8のタイヤ軸線TCが前後方向に対して微少な角度差Z1(例えば5°以下)を有するようにして、左右方向を進行方向とした場合のスリップアングルを再現するようにしてもよい。この場合、前後方向に延びる接続部材66は、空気入りタイヤ8の進行方向に直交する(車両の)幅方向に延びることになり、スリップアングルを考慮した場合の、スタッドピンのタイヤ幅方向における抜け荷重を計測することができる。
【0079】
また、
図10Bに示すように、タイヤ支持部10が第1軸第2位置に位置する状態で、第2軸81周りに回動させて、空気入りタイヤ8のタイヤ軸線TCが左右方向に対して微少な角度差Z2(例えば5°以下)を有するようにして、前後方向を進行方向とした場合のスリップアングルを再現するようにしてもよい。この場合、前後方向に延びる接続部材66は、空気入りタイヤ8の進行方向に延びることになり、スリップアングルを考慮した場合の、スタッドピンのタイヤ周方向における抜け荷重を計測することができる。
【0080】
すなわち、タイヤ支持柱12を第2軸81周りに回動させることにより、スタッドピンの抜け荷重を、タイヤ幅方向からタイヤ周方向までの任意の方向において計測することができ、上述したようにスリップアングルや、旋回時の状況を考慮した、スタッドピンの抜け荷重を計測することができる。
【0081】
第1実施形態において、タイヤ支持部10をタイヤ軸線TCが上下方向に延びている場合を例にとって説明したがこれに限らない。すなわちタイヤ支持部10をタイヤ軸線TCが左右方向に延びていてもよい。この場合、上記実施形態の各部材を、上下方向と左右方向とを入れ替えて構成すればよい。また、タイヤ支持部10が第1軸71を備えていない場合であっても、第2軸81を備えるように構成してもよく、この場合、タイヤ支持部10が第1軸第2位置に固定された状態で、タイヤ支持柱12を第2軸81周りに回動可能に構成してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、接続部材66とスタッドピン7及びロードセル64の連結部65とを、フック及びカラビナ等を用いて連結する場合を例示したが、この他、例えばペンチ、プライヤ等の適宜の把持手段によりスタッドピンの頂部近傍の外筒面を把持して、該把持手段を接続部材66に連結するようにしてもよい。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。