(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、自動除塵機は、一般に、水路に設置したスクリーンの左右両側位置に、チェーン駆動装置を設置し、両チェーン駆動装置を構成するチェーン間に、所定間隔毎にレーキを架け渡し、前記両チェーン駆動装置を駆動することで、前記スクリーンの前面に捕捉された夾雑物をレーキによって掻き上げる構成を具備している。そして従来、前記チェーンの位置決めや横揺れを防止するガイドレールと、このガイドレールを支持するためのフレームを設置していた。
【0003】
しかしフレームを設置すると、設置した箇所については流路が塞がれるため、スクリーンに夾雑物が捕捉された際の水位上昇が起こり易くなり、その分スクリーンへの流水による負荷が高くなってしまうという問題があった。
【0004】
また、一般に、フレームの下部には、チェーン反転用の従動ホイールが設置されており、このため従動ホイールのメンテナンスを行う必要があった。さらには、前記フレームや従動ホイールを設置することで、コストも高くなっていた。
【0005】
また、チェーンを構成する各リンクプレートを連結する連結ピンは、連結したリンクプレート間の屈曲する際の摺動と、駆動ホイールの歯と接触して駆動力を伝える際の荷重と、夾雑物等の搬送物やレーキやチェーン自重を懸垂する荷重とが全て作用するため、摩耗し易い構造であった。一方、駆動ホイールの前記連結ピンを駆動する歯も、前記連結ピンを駆動する際の荷重と、夾雑物等の搬送物やレーキやチェーン自重を懸垂する荷重とが作用するため、摩耗し易い構造であった。
【0006】
特許文献1には、チェーンを使用したスクリーンスクレーパが開示されている。このスクリーンスクレーパに用いているチェーンの各リンク部(40)は、これを略四角柱状に形成することで剛性を高めている。また、リンク部(40)の一端から突出する係合凸部(44)を、その隣のリンク部(40)の他端に設けた係合凹部(一対の係合凸部(42)の間の隙間)に係合(嵌合)させた上でこの係合部分を連結ピン(46)によって回動自在に連結する構成とすることで、各リンク部(40)間に横ブレが生じないようにしている。さらに、チェーンが上昇及び下降する際に、直線状態が維持されるように、直線状となった隣り合うリンク部(40)がさらに反る方向に回動しようとした際、リンク部(40)の端部に形成した当接端部(54)、(56)が、隣接するリンク部(40)の接合部(58)、(60)に当接し、それ以上反る方向には回動しない構成となっている。このように構成することで、チェーンをガイドするフレームや従動ホイールを用いなくても良くなり、このため部品点数の削減とメンテナンスの省力化を図ることができる。またこのスクリーンスクレーパによれば、各リンク部(40)に設けたノッチ(78)が駆動ホイール(28)のピン(80)の駆動力を受けるので、その分、各リンク部(40)間を連結するピン(46)への力の負担が減少・分散し、ピン(46)の摩耗を減少することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載のチェーンにおいても、以下のような問題があった。
(1)隣接するリンク部(40)が反らないように、両者の当接端部(54)、(56)と接合部(58)、(60)を当接するように構成しているが、これらの当接面は、チェーンの進行方向に対して垂直な面なので、その当接面積が小さく、また当接角度も必ずしも回転トルクを効果的に分散できる角度ではない。これらのことから強い力がこれらの当接面にかかった場合、損傷したり、徐々に摩耗して反りが生じてしまったりする虞があった。
【0009】
(2)チェーンの下部に従動ホイールを設置しない構成としているが、各リンク部(40)が反転する際に、適正な円弧を描かず、スムーズな反転が阻害される虞があった。
【0010】
(3)特許文献1のスクリーンスクレーパは、フレームを持たないスクリーンスクレーパであり、ガイドレールがないため、横揺れなどをチェーン自身の剛性で抑制させる必要があるので、チェーンに高い強度が必要となり、チェーン質量が重くなる。そのため、チェーンのピン(46)や駆動ホイール(28)のピン(80)にかかる負荷が大きくなり、摩耗が促進される。また、大きな夾雑物を移送する際にはチェーンが揺動し、揺動による荷重がチェーンのピン(46)及び駆動ホイール(28)のピン(80)にかかり、この点からもピン(46)やピン(80)の摩耗を促進させる。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、隣接するリンク部が容易且つ確実に反らないように規制することができ、また従動ホイールを設置しなくてもスムーズな反転が行え、また横揺れを防止でき、軽量化も図ることができるチェーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数のリンク部を
有し、当該リンク部の進行方向に向かって前端側と後端側の一方に係合凸部を設け、他方に係合凹部を設け、当該リンク部の係合凸部を隣接するリンク部の係合凹部に挿入して連結ピン
により回動自在に連結したチェーンであって、前記リンク
部の前端側と後端側に
は、前記連結された隣り合うリンク部が反る方向に回動する際に相互に当接してその回動を規制する
リンク部当接部を設け、
一方のリンク部当接部は、前記係合凸部の根元の左右両側に形成され且つ前記チェーンの内周側が当該一方のリンク部当接部に隣接する他のリンク部に向かって突出するように当該チェーンの外周側から内周側に向けて傾斜する傾斜面によって構成され、他方のリンク部当接部は、前記チェーンの外周側が当該他方のリンク部当接部に隣接する他のリンク部に向かって突出するように当該チェーンの外周側から内周側に向けて傾斜する傾斜面によって構成されていることを特徴としている。
本発明によれば、
リンク部当接部を設けたので、チェーンの反る方向への湾曲を防止でき、これによってこのチェーンをガイドするフレームや従動ホイールを用いなくても良くなり、このチェーンを用いて構成される各種動力伝達装置の部品点数の削減やメンテナンスの省力化を図ることができる。
さらに
リンク部当接部を傾斜面としたので、その当接面積を大きくできて単位面積当たりに受ける回転トルクの力を分散でき、効果的に回転トルクを受けることができる。このことから、リンク部の損傷や摩耗が防止でき、またリンク部の剛性を高めなくても良くなるので軽量化が図れ、チェーン全体の軽量化と耐久性の向上を図ることが出来る。
【0013】
また本発明は、
上記特徴に加えて、前記係合凹部は、その上部に天面を設け、この天面と、前記係合凸部とに、前記連結された隣り合うリンク部が反る方向に回動した際に当接する回動規制面を設けたことを特徴としている。
回動規制面を設けたので、チェーンの反る方向への湾曲を防止でき、これによってこのチェーンをガイドするフレームや従動ホイールを用いなくても良くなり、このチェーンを用いて構成される各種動力伝達装置の部品点数の削減やメンテナンスの省力化を図ることができる。
特に、前記リンク部同士の強い連結を行うために設けた係合凹部と係合凸部の部分を利用して、上記回動規制面を形成したので、別途独立して回動規制面を設ける必要がなく、リンク部の構造が複雑にならず、軽量化を図ることができる。
【0014】
また本発明は、上記特徴に加えて、前記係合凹部に設ける回動規制面は前記天面の下面であり、前記係合凸部に設ける回動規制面は当該係合凸部の上面であることを特徴としている。
天面の下面と係合凸部の上面とを当接させるという簡単な構造で、チェーンの反る方向への湾曲を容易且つ確実に防止することができる。
【0015】
また本発明は、上記特徴に加えて、
前記係合凹部はその上部に天面を設け、当該天
面の端面側から一部切欠いた切欠き部が形成され
、前記切欠き部内の前記天面の端面
と、前記係合凸
部の先端面
に、前記連結された隣り合うリンク部が反る方向に回動した際に当接する回動規制面を設けたことを特徴としている。
天面の一部に切欠き部を設けたので、係合凹部内に溜まろうとする夾雑物を、この切欠き部から容易に排出させることができる。特に、連結された隣り合うリンク部が反る方向に回動した際に、この切欠き部内に係合凸部が入り込むように構成すれば、係合凸部によって、強制的に前記夾雑物を押し出すことができ、より効果的に前記夾雑物の詰まりを防止することができる。さらに切欠き部内の前記天面の端面と係合凸部の先端面とを当接させるという簡単な構造で、チェーンの反る方向への湾曲を容易且つ確実に防止することができる。
【0016】
また本発明は、上記特徴に加えて、
前記係合凹部はその上部に天面を設け、前記係合凸部の先端面に、前記連結した隣り合うリンク部が前記反る方向とは反対方向に所定角度回動した際に、前記係合凹部の天面の下面に当接してその回動角度を規制する第2の回動規制面を設けたことを特徴としている。
これによって、チェーンが反転する際に、従動ホイールを設置しなくても、所定の大きさの円を描いてスムーズに反転する形状を維持することができる。
【0017】
また本発明は、上記特徴に加えて、前記リンク部の内周側の面に、チェーンの進行方向に延びる溝からなるチェーンガイド部を形成したことを特徴としている。
このチェーンガイド部に、例えばアイドラ装置を係合させてチェーンの移動を支えれば、チェーンの弛みや横揺れ等を防止でき、スムーズなチェーンの駆動を行うことができる。
【0018】
また本発明は、上記特徴に加えて、前記リンク部の内周側の面に、このチェーンを巻き掛ける駆動ホイールに当接させる駆動ホイール当接面を設けたことを特徴としている。
これによって、このチェーン自体やこのチェーンに取り付けた部材(例えばレーキ)やこのチェーンによって搬送される物体(例えばレーキによって搬送される夾雑物)の荷重(揺動による荷重を含む)を、このチェーンを巻き掛ける駆動ホイールに設けたチェーン当接部で支えることができ、またチェーンの横揺れの力を支えることもできる。
【0019】
また本発明は、上記特徴に加えて、前記チェーンは、その上部が水路の上部に、その下部が前記水路内に位置するように設置され、前記チェーンの上流側に位置する部分の内周側位置で水路よりも上部位置に設置されるアイドラ装置が、前記リンク部の内周側の面に設けた断面凹部形状のアイドラ係合部に係合し該アイドラ係合部の底面に形成されたアイドラ当接部に当接することを特徴としている。
このアイドラ装置によって、チェーンの弛みや横揺れ等を防止でき、スムーズなチェーンの駆動を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、隣接するリンク部が容易且つ確実に反らないように規制することができ、また従動ホイールを設置しなくてもスムーズな反転が行え、また横揺れを防止でき、軽量化を図ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる無端チェーン(以下「チェーン」という)141を用いて構成された除塵機100の一例を示す全体概略側面図である。同図に示すように、除塵機100は、上下に斜めに延びる板状のバー103を、水路Sの幅方向に等間隔に複数本配置して構成されるスクリーン101と、前記スクリーン101の前面(上流側の面)で捕捉された夾雑物をこのスクリーン101の前面に沿って上方に掻き上げる複数のレーキ111と、前記複数のレーキ111を所定間隔毎に取り付けたチェーン141と、前記チェーン141を循環移動させる駆動ホイール121と、を具備して構成されている。
【0023】
ここで、前記チェーン141と駆動ホイール121によってチェーン駆動装置1が構成されている。なお、チェーン駆動装置1は、水路Sの幅方向の両側に一対設置され、前記各レーキ111は、その両端がそれぞれのチェーン141に取り付けられている。また各チェーン141の内周側の所定位置には、これら各チェーン141をその内周側から支えて支持しガイドする一対のアイドラ装置(以下「アイドラローラ」という)181が設置されている。また、各チェーン141のレーキ111を取り付けた部分には、ガイド部材(以下「ガイドローラ」という)201が取り付けられている。
【0024】
スクリーン101は、上下方向に斜めに延びる多数本の板状のバー103を、夾雑物を含んだ水が流れる水路Sの幅方向(流れに直交する方向)に等間隔に平行に配置して構成されている。このスクリーン101を設置することで、水路Sの上流側から矢印a方向に、水と共に流れてきた夾雑物は、スクリーン101の前面側に滞留する。スクリーン101の材質としては、金属製であり、例えばアルミニウムやステンレス鋼、又は樹脂、又はステンレスと樹脂を規則的に配置したものがある。
【0025】
レーキ111は、板状であって、前記スクリーン101の幅方向の全長にわたる長さを有し、その先端辺に、スクリーン101を構成する各バー103の間の隙間に入り込む櫛歯状の爪部105を設けて構成されている。レーキ111の材質としては、ステンレス等が用いられる。
【0026】
図2は、駆動ホイール121及び駆動ホイール121に巻き掛けたチェーン141の部分を拡大して示す図であり、
図2(a)は概略側面図、
図2(b)は
図2(a)のA−A概略断面図である。同図に示すように、駆動ホイール121は、一対の円板状の側板123を、所定間隔離した状態で、筒状の連結部125によって連結すると共に、前記連結部125の外周側において、円周状に等間隔に複数本の円柱状の駆動ピン127によって連結して構成されている。
【0027】
連結部125の外周面は、下記するリンク部143のホイール当接部149を当接するチェーン当接部(チェーン当接面)129となっている。また各駆動ピン127は、前記チェーン当接部129から同一寸法ずつ径方向外方に離間して設置されている。駆動ホイール121の中央には、駆動軸131が固定されている。駆動軸131には、図示しない駆動モータが連結され、この駆動モータを駆動することによって回転駆動される。駆動ホイール121の材質としては、例えばステンレスが用いられるが、金属製、又は荷重に十分耐え得る強度を有する硬質樹脂製でも良い。
【0028】
チェーン141は、複数の同一形状のリンク部143を連結ピン145によって無端状に連結して構成されている。
図3,
図4は、リンク部143を示す図であり、
図3(a)は平面図、
図3(b)は正面図、
図3(c)は
図3(a)のB−B断面矢視図、
図3(d)は
図3(a)のC−C断面矢視図、
図4(a)は斜視図、
図4(b)は別の角度から見た斜視図である。なお以下のリンク部143の説明において、チェーン141の外側を向く方向を「上側」又は「外周側」、内側を向く方向を「下側」又は「内周側」ということとする。またチェーン141が進行する方向、即ちこの例では下記する係合凸部157が突出している側を「前側」、その反対側を「後側」ということとする。
【0029】
これらの図に示すように、リンク部143は、このリンク部143の進行方向(即ちチェーン141の進行方向)に向かって長尺な略四角柱形状に形成されている。リンク部143の下面には、このリンク部143の進行方向に向かう1本の直線状の溝が設けられ、この溝の内部をチェーンガイド部(以下「アイドラ係合部」という)147、この溝の両側の辺(内周辺)を一対の駆動ホイール当接面(以下「ホイール当接部」という)149とし、さらに一対のホイール当接部149の前後両端にそれぞれ略矩形状に切欠いてなる係合部(以下「係合切欠き部」という)151,152を形成している。
【0030】
ここで前記係合切欠き部151,152を第1の接触面、ホイール当接部149を第2の接触面ということとする。また、リンク部143の前後の端面は、それぞれ回動規制面を構成するリンク部当接部153,155となっている。また、前方のリンク部当接部153の中央からは、平板状の係合凸部157が突出し、後方のリンク部当接部155の中央には、前記アイドラ係合部147の溝よりも深い溝からなる係合凹部159が設けられている。係合凹部159の上部にはこれを塞ぐように天面160が設けられている。係合凸部157の上面は、係合凹部159の天面160の下面である被係止部159aに当接する当接部157aとなっており、この当接部157aと被係止部159aもそれぞれ回動規制面を構成している。
【0031】
また、係合凸部157の先端面は、前記係合凹部159の被係止部159aを当接する係止部157bであり、この係止部157bは、第2の回動規制面を構成している。なおこのリンク部143は、鋳造による量産品であり、材質は腐食環境での使用を考慮してオーステナイト系ステンレスが望ましいが、樹脂やその他の材質のものを用いても良い。また、軽量化のために内部の一部に空洞を設けることもできる。
【0032】
アイドラ係合部147は、下記するアイドラローラ181のリンク係合部183の幅とほぼ同一の幅の溝であり、その底面をアイドラ当接面161としている。アイドラ当接面161は直線状の平面である。アイドラ当接面161は、係合凸部157の先端の下面から、アイドラ係合部147の後端まで延びている。
【0033】
係合凸部157は平板形状であり、その中央付近に円形に貫通するピン取付孔163を形成している。係合凸部157の厚み寸法は、係合凹部159の溝幅寸法(即ち前記アイドラ係合部147の溝幅寸法)とほぼ同一(それらに挿入できる厚み寸法)に形成されている。係合凸部157の係止部157bの面は、上部よりも下部が突出する傾斜面となっている。また係合凸部157の係止部157aは、その後方部分の上辺よりも一段低くなっており、前記係合凹部159の被係止部159aの面の高さとほぼ同一の高さとなっている。
【0034】
係合凹部159は、前述のように、前記アイドラ当接面161の深さをさらに深くする溝によって形成されており、その中央付近の両側に位置する側壁には、これらを貫通するピン取付孔165が形成されている。ピン取付孔165は、前記ピン取付孔163と、同一内径寸法に形成されている。
【0035】
ホイール当接部149は、左右何れも同一形状であり、凹状の円弧面状に形成されている。円弧の曲率半径は、前記駆動ホイール121のチェーン当接部129の曲率半径と同一になっている。リンク部143の前側の係合切欠き部151は、一対のホイール当接部149の前側の端部を何れも同一形状に切欠いた形状である。リンク部143の後側の係合切欠き部152は、一対のホイール当接部149の後側の端部を何れも同一形状に切欠いた形状である。
【0036】
リンク部当接部153は、上側よりも下側(即ちチェーン141の内周側)が前方に突出する、直線状の傾斜面(チェーン141の外周側から内周側に向けて傾斜する傾斜面)によって構成されている。リンク部当接部153は、係合凸部157の根元の左右両側に形成されている。リンク部当接部155は、下側よりも上側(即ちチェーン141の外周側)が後方に突出する、直線状の傾斜面(チェーン141の外周側から内周側に向けて傾斜する傾斜面)によって構成されている。リンク部当接部155の傾斜角度(リンク部143の上下方向に向かう垂線に対して傾斜する角度、以下同様)と、前記リンク部当接部153の傾斜角度は、同一に形成されている。
【0037】
そしてチェーン141は、リンク部143の係合凸部157を、その前に位置するリンク部143の係合凹部159に挿入して、両者のピン取付孔163とピン取付孔165の位置を合わせて連結ピン145を挿入して回動自在に取り付け、これを繰り返すことで複数のリンク部143を無端状に連結して構成される。このようにリンク部143は、凸部と凹部の嵌合によって連結されるので、連結されたリンク部143の回動方向以外の方向へのブレや弛み等は生じにくい。
【0038】
図5は、チェーン141に対するアイドラローラ181の設置状態を示す図であり、
図5(a)は要部拡大側面図、
図5(b)は
図5(a)のD−D断面矢視図である。両図に示すように、アイドラローラ181は、円板状であって、その円形の外周面の中央からリング状のリンク係合部183を突出して構成されている。このアイドラローラ181は、回転自在に設置される。
【0039】
図6は、チェーン141に対するガイドローラ201の設置状態を示す図である。同図に示すように、ガイドローラ201は、円板状であって、その円形の外周面の中央からリング状のバー係合部203を突出して構成されている。このガイドローラ201は、取付部材205に回転自在に取り付けられ、さらに取付部材205は、レーキ111を取り付けたリンク部143に固定されている。バー係合部203の幅寸法は、隣接するバー103間の隙間寸法と略同一である。
【0040】
そして、このチェーン141は、
図1に示すように、スクリーン101の前面側において、駆動ホイール121に巻き掛けられている。このとき、
図2に示すように、チェーン141を構成するリンク部143のホイール当接部149は、駆動ホイール121のチェーン当接部129に面接触状態で当接して支持(載置)されており、同時に駆動ホイール121の駆動ピン127は、正回転時には、リンク部143の係合切欠き部152に係合している(なお、逆回転時には、係合切欠き部151に係合する)。
【0041】
また、チェーン141に取り付けたガイドローラ201は、
図6に示すように、そのバー係合部203が、スクリーン101の左右両側(両端)に位置する一対のバー103間の間隙に挿入され、チェーン141をスクリーン101から所定寸法離間した状態に保持している。またこのとき、レーキ111の爪部105は、スクリーン101を構成する各バー103の間の隙間に所定寸法だけ入り込む。
【0042】
一方、アイドラローラ181は、チェーン141の上流側部分(スクリーン101に対向する反対側の部分、下降する側の部分)の内周側位置で水路Sよりも上部の位置に設置され、そのリンク係合部183がリンク部143のアイドラ係合部147に挿入され、リンク係合部183の先端面がアイドラ係合部147底面のアイドラ当接面161に当接してチェーン141を支えている。
【0043】
なお、
図1に示すように、スクリーン101の上部後方には、掻き上げた夾雑物を排出するシュート211が設置されている。また、チェーン141がその下端部分において反転する際は、
図3(c)に点線で示すように、あるリンク部143の係合凸部157の係止部157bが、その前方のリンク部143の係合凹部159の被係止部159aに係止してそれ以上回転しないので、従動ホイールを設置しなくても、所定の大きさの円を描いてスムーズに反転する形状を維持している。
【0044】
以上のように構成された除塵機100において、水路Sの上流側から流れてきた夾雑物は、スクリーン101の前面に滞留する。そしてこのとき、駆動モータを駆動することで駆動ホイール121を回転すると、駆動ホイール121の駆動ピン127が、これを係合しているリンク部143の係合切欠き部152(逆転する場合は係合切欠き部151)を押圧してチェーン141を
図1に示す矢印方向に駆動する。これによって、スクリーン101の前面に滞留した夾雑物は、レーキ111によってスクリーン101の上方に引き上げられ、シュート211から所望の場所に排出される。
【0045】
このチェーン141には、ガイドローラ201が設置されているので、スクリーン101に対してレーキ111の位置を、所定寸法離間した状態に維持できる。またこの除塵機100においては、チェーン141の下部にチェーン141を反転させる従動ホイールを設置していないので、前記夾雑物が前記スクリーン101とチェーン141間の間隙よりも大きい寸法のものであった場合でも、チェーン141がスクリーン101から離れる方向に移動し、これに容易に対応できる。
【0046】
ここで、連結ピン145によって回動自在に連結されている隣り合うリンク部143の対向する面には、リンク部当接部153とリンク部当接部155が対向するが、両リンク部143が直線状になった際、
図7に点線で示すように、両者は当接する。なお
図7は
図3(c)に相当する部分を示している。このため、両リンク部143は、直線状態よりも反る方向(リンク部143が駆動ホイール121に巻き掛けられる際に回動する方向の反対方向)への回動が規制され、反ることはできない。なお、両リンク部143が直線状になった際、同時に、
図7に点線で示すように、係合凸部157の当接部157aも、係合凹部159の被係止部159aに当接し、直線状態よりも反る方向への回動を規制する。即ち、両リンク部当接部153,155と、当接部157a及び被係止部159aとによって、回動規制機構が構成される。
【0047】
なお、両リンク部当接部153,155と、当接部157a及び被係止部159aの何れかのみで回動規制機構を構成してもよいが、両者を用いることで規制時にかかる力を分散でき、より好適である。そしてこの回動規制機構によって、チェーン141が水路S内で反転して駆動ホイール121に向かって上昇する部分、及び駆動ホイール121で反転して水路S内に向かって下降する部分の何れにおいても、チェーン141は略直線状態を維持できる。
【0048】
この実施形態では、アイドラローラ181を、チェーン141の上流側部分(下降する側の部分)の内周側位置に設置してチェーン141を支えているので、さらに確実にチェーン141を正規の位置に維持できる。このため、スクリーン101の左右両側端に、チェーン141の位置決めや横揺れを防止するガイドレールや、このガイドレールを支持するためのフレームを設置する必要がなくなり、その分、流路Sが塞がれないので、スクリーン101に夾雑物が捕捉された際の水位上昇が起こりにくくなり、スクリーン101への負荷を小さくできる。また上述のように、従動ホイールを設置していないので、そのメンテナンスを省略できる。
【0049】
以上説明したように、上記チェーン141においては、そのリンク部143の前端側と後端側に、連結された隣り合うリンク部143が反る方向に回動する際に相互に当接してその回動を規制するリンク部当接部(回動規制面)153,155を設けたので、チェーン141の反る方向への湾曲を防止でき、これによってこのチェーン141をガイドするフレームや従動ホイールを用いなくても良くなり、このチェーン141を用いて構成されるチェーン駆動装置1の部品点数の削減やメンテナンスの省力化を図ることができる。
【0050】
さらに前記各リンク部当接部(回動規制面)153,155は、前記チェーン141の外周側から内周側に向けて傾斜する傾斜面(リンク部143の上下方向に向かう垂線に対して傾斜する傾斜面)によって構成しているので、その当接面積を大きくできて単位面積当たりに受ける回転トルクの力を分散でき、効果的に回転トルクを受けることができる。このことから、リンク部143の損傷や摩耗が防止でき、またリンク部143の剛性を高めなくても良くなるので軽量化が図れ、チェーン141全体の軽量化と耐久性の向上を図ることが出来る。
【0051】
また上記チェーン141においては、リンク部143は、一方の端面に係合凸部157を設け、他方の端面に係合凹部159を設けて構成され、連結する一方のリンク部143の係合凸部157を他方のリンク部143の係合凹部159に挿入した部分を連結ピン145で連結し、且つ前記係合凹部159は、その上部に天面160を設け、この天面160と、前記係合凸部157とに、前記連結された隣り合うリンク部143が反る方向に回動した際に当接する回動規制面を設けている。
【0052】
即ち、連結する一方のリンク部143の係合凸部157を、他方のリンク部143の係合凹部159に挿入してその部分を連結ピン145で連結する構成なので、リンク部143同士の連結強度が強く、連結したリンク部143間に横ブレが生じにくくなる。
【0053】
同時に、回動規制面157a,159aを設けたので、チェーン141の反る方向への湾曲を防止でき、これによってこのチェーン141をガイドするフレームや従動ホイールを用いなくても良くなり、このチェーン141を用いて構成されるチェーン駆動装置1の部品点数の削減やメンテナンスの省力化を図ることができる。特に、リンク部143同士の強い連結を行うために設けた係合凹部159と係合凸部157の部分を利用して、上記回動規制面157a,159aを形成したので、別途独立して回動規制面を設ける必要がなく、リンク部143の構造が複雑にならず、軽量化を図ることができる。
【0054】
また上記実施形態の場合、係合凹部159に設ける回動規制面を前記天面160の下面159aとし、前記係合凸部157に設ける回動規制面を当該係合凸部157の上面157aとしたので、これら天面160の下面159aと係合凸部157の上面157aとを当接させるという簡単な構造で、チェーンの反る方向への湾曲を容易且つ確実に防止することができる。
【0055】
また上記チェーン141においては、前記係合凸部157の先端面に、前記連結した隣り合うリンク部143が前記反る方向とは反対方向に所定角度回動した際に、前記係合凹部159の天面160の下面(回動規制面)159aに当接してその回動角度を規制する係止部(第2の回動規制面)157bを設けたので、チェーン141が反転する際に、従動ホイールを設置しなくても、所定の大きさの円を描いてスムーズに反転する形状を維持することができる。
【0056】
また上記チェーン141においては、リンク部143の内周側の面に、チェーン141の進行方向に延びる溝からなるアイドラ係合部(チェーンガイド部)147を形成したので、このアイドラ係合部(チェーンガイド部)147に、例えばアイドラローラ181のリンク係合部183を係合させて各リンク部143の移動を支えることで、チェーン141の弛みや横揺れ等を防止でき、スムーズなチェーン141の駆動を行うことができる。
【0057】
また上記チェーン141においては、リンク部143の内周側の面に、このチェーン141を巻き掛ける駆動ホイール121に当接させるホイール当接部(駆動ホイール当接面)149を設けたので、このチェーン141自体やこのチェーン141に取り付けたレーキ等の部材やこのチェーン141によって搬送される夾雑物等の物体の荷重(揺動による荷重を含む)を、このチェーン141を巻き掛ける駆動ホイール121に設けたチェーン当接部129で支えることができ、またチェーン141の横揺れの力も支えることができる。
【0058】
図9,
図10,
図11は、本発明の他の実施形態に係るリンク部143−2を示す図であり、
図9(a)は平面図、
図9(b)は正面図、
図9(c)は
図9(a)のE−E断面矢視図、
図9(d)は
図9(a)のF−F断面矢視図、
図10(a)は斜視図、
図10(b)は別の角度から見た斜視図、
図11はリンク部143−2の動作説明図である。これらの図に示すリンク部143−2において、前記
図1〜
図8に示すリンク部143と同一又は相当部分には同一符号(但し各符号に「−2」)を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記
図1〜
図8に示す実施形態と同じである。
【0059】
これらの図に示すリンク部143―2において、上記リンク部143と相違する点は、係合凸部157−2の上辺(
図1〜
図8の実施形態では係止部)157a−2の面を、その後方部分の上辺と同一高さに形成した点と、リンク部当接部155−2の上部の部分を逆向きの傾斜面になるようにカットしてなるカット部155a−2を形成した点と、係合凹部159−2に設けた天面160−2をその端面側(後方側)から一部切欠いた切欠き部(夾雑物排出部)167−2を形成した点と、切欠き部167−2内の前記天面160−2の端面(窪んだ部分の底面)160a−2を回動規制面とした点と、係合凸部157−2の係止部157b−2(その上部の部分)を前記天面160−2の端面160a−2に当接する回動規制面とした点とである。即ちこの実施形態の場合、係合凸部157−2の係止部157b−2は、その下部の部分が、係合凹部159−2の被係止部159a−2に当接する第2の回動規制面であり、その上部の部分が、天面160−2の端面160a−2に当接する回動規制面となっている。さらに言えば、この実施形態の場合、前記実施形態で回動規制面としていた係合凸部157の当接部157aの代わりに、係合凸部157−2の係止部157b−2(その上部の部分)を回動規制面としている。従ってこの例の場合、157a−2を「上辺」(当接しないので)ということとしている。
【0060】
ここで天面160−2の端面160a−2は、下側より上側が後方に位置する、直線状の傾斜面となっている。また端面160a−2の傾斜角度と、係止部157b−2の傾斜角度は同一に形成されている。またカット部155a−2は、下側よりも上側が前方に位置する、直線状の傾斜面によって構成されている。
【0061】
この実施形態の場合も、リンク部143−2の係合凸部157−2を、その前に位置するリンク部143−2の係合凹部159−2に挿入して、両者のピン取付孔163−2とピン取付孔165−2の位置を合わせて図示しない連結ピンを挿入して回動自在に取り付け、これを繰り返すことで複数のリンク部143−2を無端状に連結してチェーンが構成される。リンク部143−2は、凸部と凹部の嵌合によって連結されるので、連結されたリンク部143−2の回動方向以外の方向へのブレや弛み等は生じにくい。
【0062】
ここで、連結ピンによって回動自在に連結されている隣り合うリンク部143−2においては、両者のリンク部当接部153−2とリンク部当接部155−2が対向するが、両リンク部143−2が直線状になった際、
図11に示すように、両者は当接する。なお
図11は
図9(c)に相当する部分を示している。このため、両リンク部143−2は、直線状態よりも反る方向への回動が規制され、反ることはできない。なお、両リンク部143−2が直線状になった際、同時に、
図11に示すように、係合凸部157の係止部157b−2も、天面160−2の端面160a−2に当接し、直線状態よりも反る方向への回動を規制する。即ち、両リンク部当接部153−2,155−2と、係止部157b−2及び端面160a−2とによって、回動規制機構が構成される。なお、両リンク部当接部153−2,155−2の組合せと、係止部157b−2及び端面160a−2の組合せの内の何れかの組合せのみで回動規制機構を構成してもよいが、上記実施形態と同様、両方の組合せを用いることで規制時にかかる力を分散でき、より好適である。
【0063】
この実施形態において、天面160−2の一部に切欠き部167−2を設けたのは、係合凹部159−2内に溜まろうとする夾雑物を、この切欠き部167−2から排出させるためである。即ち、係合凹部159−2には、その形状上、夾雑物が溜まり易いが、この切欠き部167−2を設けることで、溜まろうとする夾雑物を天面160−2側にスムーズに排出することができる。特にこの実施形態においては、連結された隣り合うリンク部143−2が反る方向に回動した際に、切欠き部167−2内に係合凸部157−2が入り込むように構成しているので、係合凸部157−2によって、強制的に前記夾雑物を押し出すことができ、より効果的に前記夾雑物の詰まりを防止することができる。さらにこの実施形態においては、カット部155a−2を形成しているので、その分係合凹部159−2内の体積が小さくなって夾雑物が挟まりにくくなっている。
【0064】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、リンク部143のホイール当接部149を円弧状に形成し、駆動ホイール121の円形のチェーン当接部129と面接触させる場合を示したが、ホイール当接部149の形状はこれに限られず、種々の変形が可能であり、例えばホイール当接部149の形状は、所定の領域、範囲でチェーン当接部129と面接触する形状であればどのような形状であっても良い。また面接触でなく、点接触や線接触する形状であっても良い。
【0065】
また上記回動規制機構を構成するリンク部143のリンク部当接部153,155は、平面状の傾斜面で構成したが、
図8に示すリンク部143のように、階段状や凹凸状であっても、全体として傾斜する傾斜面であれば平面状以外の各種形状であっても良い。また上記リンク部当接部153,155や、当接部157a及び被係止部159aによる回動規制機構でのリンク部143間の反る方向への回動規制角度は、上記実施形態の回動規制角度(180°)に限定されず、他の各種の回動規制角度に規制しても良い。
【0066】
また上記実施形態では、本発明に係るチェーンを、除塵機(自動除塵機)10に用いた例を説明したが、沈澱池等に用いる汚泥掻き寄せ機やコンベア等、その他の各種水処理設備、さらには水処理設備以外の各種設備に用いてもよい。