特許第6965186号(P6965186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965186
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
   C08F290/06
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-39283(P2018-39283)
(22)【出願日】2018年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-150522(P2018-150522A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2017-47529(P2017-47529)
(32)【優先日】2017年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】酒井 優
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 比祐吾
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄太
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−285119(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/109987(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/190373(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/157070(WO,A1)
【文献】 特開2016−045347(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/069217(WO,A1)
【文献】 特開2016−169396(JP,A)
【文献】 特開2017−043735(JP,A)
【文献】 特開2017−101223(JP,A)
【文献】 特開2017−116794(JP,A)
【文献】 特開2018−003880(JP,A)
【文献】 特開2018−031940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 255/00 − 299/08
C08F 2/00 − 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される金属アルコキシド(a)の縮合物(A)と、(メタ)アクリロイル基を6〜15個有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)と、(B)以外の多官能(メタ)アクリレート(C)と、光重合開始剤(D)とを含有し、
前記多官能(メタ)アクリレート(C)は分子内に水酸基を有する化合物であり、
前記金属アルコキシド(a)の縮合物(A)は、前記多官能(メタ)アクリレート(C)中で前記金属アルコキシド(a)を反応させてなる金属アルコキシド(a)の縮合物であり、
(A)〜(D)の合計重量に基づく(B)の含有量が5〜60重量%である光硬化性樹脂組成物。
【化1】

[式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基又は下記一般式(2)で表される金属原子含有基を表し、複数あるR及びRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Mはシリコン原子、チタニウム原子又はジルコニウム原子を表し、複数あるMは同一であっても異なっていてもよく、nは2〜15の整数である。]
【化2】

[式(2)中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基を表し、複数ある場合のR5及びR6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Mはシリコン原子、チタニウム原子又はジルコニウム原子を表し、複数あるMは同一であっても異なっていてもよく、kは1〜5の整数である。]
【請求項2】
一般式(1)におけるR〜R及び一般式(2)におけるR〜Rの内の少なくとも1個が多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基であり、一般式(1)で表される金属アルコキシド(a)の縮合物(A)が多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基を少なくとも1個有する請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基が、下記一般式(3)で表される有機基である請求項1又は2記載の光硬化性樹脂組成物。
【化3】

[式(3)中、mは0〜5の整数である。]
【請求項4】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)が、2官能又は3官能のポリイソシアネート化合物(b)と(メタ)アクリロイル基を3〜5個と水酸基を少なくとも1個有する(メタ)アクリレート(c)とのウレタン化物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)〜(D)の合計重量に基づいて、(A)の含有量が5〜80重量%である請求項1〜のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化性樹脂組成物に関する。詳しくは、耐擦傷性に優れ、高い鉛筆硬度及び透明性を有する硬化物を与える光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードコート膜を保護層にしたフィルムを表面に設けた液晶ディスプレイ及びタッチパネルディスプレイ等の表示装置が急速に普及している。特にスマートフォンやタブレット端末等指やペンで画面に直接触れて操作するタッチパネルを備えた電子機器の普及が著しく、このような機器ではタッチパネル表面の硬度向上が求められている。
タッチパネルの材質としてはガラスよりも安全かつ軽量なPETやアクリル等の樹脂の使用が望ましいが、これらの樹脂はガラスよりも硬度が劣るのが欠点である。
【0003】
このため、硬度の高いシリカ微粒子をフィラーとして配合した活性エネルギー線硬化樹脂を主成分とするハードコート層を形成させる方法が知られているが、無機物であるシリカ微粒子は有機物である活性エネルギー線硬化樹脂のモノマー中では均一に分散し難いため、シリカ微粒子の表面を有機処理することで、分散性を向上させる手法が行われている(例えば特許文献1〜3参照)。
しかし、本手法で作製した紫外線硬化樹脂組成物は、硬化物の透明性の観点からシリカ粒子の含有量に制限があり、所望するフィルム硬度が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−264621号公報
【特許文献2】特開2015−86103号公報
【特許文献3】特開2015−36402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は耐擦傷性に優れ、かつ高い硬度を有し、透明性に優れる硬化物を与える光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく検討を行った結果、本発明に到達した。
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表される金属アルコキシド(a)の縮合物(A)と、(メタ)アクリロイル基を6〜15個有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)と、(B)以外の多官能(メタ)アクリレート(C)と、光重合開始剤(D)とを含有する光硬化性樹脂組成物である。
【0007】
【化1】
【0008】
[式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基又は下記一般式(2)で表される金属原子含有基を表し、複数あるR3及びR4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Mはシリコン原子、チタニウム原子又はジルコニウム原子を表し、複数あるMは同一であっても異なっていてもよく、nは2〜15の整数である。]
【0009】
【化2】
【0010】
[式(2)中、R5、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基を表し、複数ある場合のR5及びR6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Mはシリコン原子、チタニウム原子又はジルコニウム原子を表し、複数あるMは同一であっても異なっていてもよく、kは1〜5の整数である。]
【発明の効果】
【0011】
本発明の光硬化性樹脂組成物は耐擦傷性に優れ、かつ高い硬度及び透明性を有する硬化物を与えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、金属アルコキシド(a)の縮合物(A)、(メタ)アクリロイル基を6〜15個有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)、(B)以外の多官能(メタ)アクリレート(C)及び光重合開始剤(D)を含有する。
尚、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸又はメタクリル酸」を、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基又はメタクリロイル基」を意味する。
【0013】
以下に、必須成分の金属アルコキシド(a)の縮合物(A)、(メタ)アクリロイル基を6〜15個有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)、(B)以外の多官能(メタ)アクリレート(C)及び光重合開始剤(D)を順次説明する。
【0014】
本発明における金属アルコキシド(a)の縮合物(A)は、下記一般式(1)で表される。
【0015】
【化3】
【0016】
一般式(1)におけるR1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基を表す。
【0017】
ここで、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)とは、多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とを反応させたエステル反応物の内、水酸基が少なくとも1個以上残っているエステル化合物を意味し、このエステル化合物から1個の水酸基を除いた残基をR1及び/又はR2として用いる。
【0018】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等の炭化水素の水素原子が水酸基で置換された一般的な多価ののアルコール;その誘導体としてのジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0019】
多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)としては、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びトリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中で硬度の観点から好ましいのは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びトリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートである。
【0020】
一般式(1)におけるR3及びR4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基又は下記一般式(2)で表される金属原子含有基を表し、複数あるR3及びR4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
【化4】
【0022】
一般式(2)におけるR5、R6及びR7は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基を表し、複数ある場合のR5及びR6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)と一般(2)におけるMは、シリコン原子、チタニウム原子又はジルコニウム原子を表し、硬度の観点から好ましいのはシリコン原子及びチタニウム原子である。一般式(1)と一般(2)においてそれぞれ複数あるMは同一であっても異なっていてもよい。
一般式(2)におけるkは1〜5の整数であり、硬度の観点から好ましくは1である。
【0023】
一般式(1)におけるnは2〜15の整数であり、硬度及び透明性の観点から好ましくは2〜10である。
【0024】
硬度の観点から、一般式(1)におけるR1〜R4及び一般式(2)におけるR5〜R7の内の少なくとも1個が多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基であり、一般式(1)で表される金属アルコキシド(a)の縮合物(A)が多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基を少なくとも1個有することが好ましい。
【0025】
更に、同様の観点から、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から1個の水酸基を除いた残基は、下記一般式(3)で表される有機基であることが好ましい。
【化5】
【0026】
一般式(3)におけるmは0〜5の整数であり、mが0の場合はペンタエリスリトールのトリアクリレートの残基、mが1の場合はジペンタエリスリトールペンタアクリレートの残基、mが2の場合はトリペンタエリスリトールヘプタアクリレートの残基、mが3の場合はテトラペンタエリスリトールノナンアクリレート、mが4の場合はペンタペンタエリスリトールウンデカンアクリレートの残基、mが5の場合はヘキサペンタエリスリトールトリデカンアクリレートの残基である。
硬度及び塗工性の観点から、mは0〜3であることが好ましい。
【0027】
本発明の金属アルコキシド(a)の縮合物(A)は、テトラアルコシキシラン等の金属アルコキシド(a)と水との加水分解物の縮合により得られる。
この縮合反応時に多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)を共存させることにより、一般式(1)のR1〜R4の内の少なくとも1個又は一般式(2)のR5〜R7の内の少なくとも1個が、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から水酸基を除いた残基となり、縮合物(A)に多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)から水酸基を除いた残基が導入されて硬度が著しく向上する。
【0028】
金属アルコキシド(a)としては、アルコキシシラン、アルコキシチタン及びアルコキシジルコニウム等が挙げられる。
これらの内、硬度の観点から好ましいのは、アルコキシシラン及びアルコキシジルコニウムである。
【0029】
アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシランが挙げられ、これらの市販品としては、テトラエトキシシラン(東京化成工業株式会社製)、エチルシリケート28、エチルシリケート28P、N−プロピルシリケート、N−ブチルシリケート(以上、コルコート株式会社製)、正珪酸メチル、正珪酸エチル、高純度正珪酸エチル、高純度正珪酸エチル(EL)(以上、多摩化学工業株式会社製)及びDynasylan SILBOND CONDENSED(エボニックジャパン社製)等が挙げられる。
アルコキシジルコニウムとしては、テトラエトキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等が挙げられ、これらの市販品としてはテトラブトキシジルコニウム(TBZR)(日本曹達株式会社製)等が挙げられる。
縮合物(A)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
金属アルコキシド(a)の縮合物(A)を製造する際の温度は、40〜80℃であることが好ましく、60〜70℃であることが更に好ましい。温度が40℃以上であると反応速度が速くなるため、生産性が向上する。また、80℃以下であると多官能(メタ)アクリレートが反応系中で重合しポリマー化することなく、金属アルコキシド(a)の加水分解、重縮合を進行させることができる。また、この条件下で金属アルコキシド(a)加水分解物と多価アルコールと(メタ)アクリル酸との1個以上の水酸基を有するエステル化合物(d)との反応も十分に進行する。
【0031】
金属アルコキシド(a)の縮合物(A)を製造する際の反応時間は、30分〜6時間であることが好ましく、2時間〜4時間であることが更に好ましい。
【0032】
本発明の光硬化性樹脂組成物は縮合物(A)を含有することにより、高い硬度を有する硬化物を得ることができるが、一般に硬度を上げるために縮合物(A)等の無機物の含有量を増やすと、透明性を損なわれる傾向にある。
そのため、縮合物(A)を製造する際に、後述の(B)以外の多官能(メタ)アクリレート(C)中で金属アルコキシド(a)と水とを反応させて金属アルコキシド(a)の縮合物(A)を得ることが好ましい。このようにして得られた縮合物(A)は、多官能(メタ)アクリレート(C)中で反応させて製造されるため、(C)との相溶性に優れており、縮合物(A)の含有量が多くても、透明性に優れ、硬度が高い硬化物を得ることができる。
【0033】
本発明の光硬化性樹脂組成物の必須成分の(メタ)アクリロイル基を6〜15個有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)としては、6〜15個の(メタ)アクリロイル基を有し、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートであれば特に限定されないが、2官能又は3官能のポリイソシアネート化合物(b)と、(メタ)アクリロイル基を3〜5個と水酸基を少なくとも1個有する(メタ)アクリレート(c)とのウレタン化反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0034】
2官能又は3官能のポリイソシアネート(b)としては、例えば脂肪族ポリイソシアネート[ヘキサメチレンジイソシアネート等]、芳香(脂肪)族ポリイソシアネート[2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等]、脂環式ポリイソシアネート[イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等]並びにこれらのヌレート化合物、ビウレット化合物及びアロファネート化合物が挙げられる。
【0035】
(メタ)アクリロイル基を3〜5個と水酸基を少なくとも1個有する(メタ)アクリレート(c)としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明の光硬化性樹脂組成物の必須成分の(B)以外の多官能(メタ)アクリレート(C)は、官能基数は特に限定されないが、硬度の観点からは、少なくとも2個、好ましくは3〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0037】
(B)以外の多官能(メタ)アクリレート(C)としては、具体的には、ジ(メタ)アクリレート(C1)、3価以上の(メタ)アクリレート(C2)、ポリエステル(メタ)アクリレート(C3)、(メタ)アクリロイル基を2〜4個有するウレタン(メタ)アクリレート(C4)、エポキシ(メタ)アクリレート(C5)、(メタ)アクリロイル基変性ブタジエン重合体(C6)、(メタ)アクリロイル基変性ジメチルポリシロキサン重合体(C7)等が挙げられる。
【0038】
ジ(メタ)アクリレート(C1)としては、ポリオキシアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート、2価フェノール化合物のアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」をAOと略記する。)付加物のジ(メタ)アクリレート、炭素数2〜30の直鎖又は分岐の脂肪族2価アルコールのジ(メタ)アクリレート及び炭素数6〜30の脂環式2価アルコールのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
ポリオキシアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレートとしては、ポリオキシアルキレングリコール(アルキレンの炭素数は2〜4)[化学式量106以上かつ数平均分子量{ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による数平均分子量:以下Mnと略記する。}3,000以下]のジ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(Mn400)、ポリプロピレングリコール(Mn200)及びポリテトラメチレングリコール(Mn650)の各ジ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
【0040】
2価フェノール化合物のAO付加物のジ(メタ)アクリレートとしては、2価フェノール化合物のAO(2〜30モル)付加物のジ(メタ)アクリレート、例えば、2価フェノール化合物[単環フェノール(カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等)、縮合多環フェノール(ジヒドロキシナフタレン等)及びビスフェノール化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等)]のAO付加物[レゾルシノールのエチレンオキサイド(以下、「EO」と略記する。)4モル付加物のジ(メタ)アクリレート、ジヒドロキシナフタレンのプロピレンオキサイド(以下、「PO」と略記する。)4モル付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールSのEO2モル又はPO4モル各付加物等]等が挙げられる。
【0041】
炭素数2〜30の直鎖又は分岐の脂肪族2価アルコールのジ(メタ)アクリレートとしては、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールの各ジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
炭素数6〜30の脂環式2価アルコールのジ(メタ)アクリレートとしては、ジメチロールトリシクロデカンのジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールのジ(メタ)アクリレート及び水素化ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
3価以上の(メタ)アクリレート(C2)としては、炭素数3〜40の多価アルコール及びそのAO付加物のポリ(メタ)アクリレート[トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのEO3モル及びPO3モル付加物の各トリ(メタ)アクリレート、グリセリンのEO3モル及びPO3モル付加物の各トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのEO4モル付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
【0044】
ポリエステル(メタ)アクリレート(C3)としては、多価カルボン酸と多価アルコールとエステル形成性のアクリロイル基含有化合物のエステル化により得られる複数のエステル結合と5個以上のアクリロイル基を有する分子量150以上かつMn4,000以下のポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0045】
上記の多価カルボン酸としては、例えば脂肪族[例えばマロン酸、マレイン酸(無水物)、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸及び酸無水物の反応物(ジペンタエリスリトールと無水マレイン酸の反応物等)]、脂環式[例えばシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸及びメチルテトラヒドロ(無水)フタル酸]及び芳香族多価カルボン酸[例えばイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸(無水物)、トリメリット酸(無水物)及びピロメリット酸(無水物)]等が挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリロイル基を2〜4個有するウレタン(メタ)アクリレート(C4)としては、ポリイソシアネート、ポリオール及び水酸基含有(メタ)アクリレートのウレタン化反応により得られる複数のウレタン結合と2〜4個のアクリロイル基を有するMn400〜5,000のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
(C4)に用いられるポリイソシアネートとしては、例えば脂肪族ポリイソシアネート[ヘキサメチレンジイソシアネート等]、芳香(脂肪)族ポリイソシアネート[2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等]及び脂環式ポリイソシアネート[イソホロンジイソシアネート及び4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等]が挙げられる。
(C4)に用いられるポリオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
(C4)に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
エポキシ(メタ)アクリレート(C5)としては、多価(2〜4価)エポキシドと(メタ)アクリル酸の反応により得られるMnは400〜5,000のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリロイル基変性ブタジエン重合体(C6)としては、主鎖及び/又は側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエンポリ(メタ)アクリレート(Mn500〜500,000)等が挙げられる。
【0050】
(メタ)アクリロイル基変性ジメチルポリシロキサン重合体(C7)としては、主鎖及び/又は側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するMn300〜20,000のジメチルポリシロキサンポリ(メタ)アクリレートであって縮合物(A)以外のもの等が挙げられる。
【0051】
これら(C1)〜(C7)の内、硬化物の硬度の観点から好ましいのは(C2)〜(C7)、更に好ましいのは(C2)及び(C4)である。また、密着性、屈曲性の観点から単官能(メタ)アクリレートを併用しても差し支えない。(C)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0052】
本発明における多官能(メタ)アクリレート(C)は、金属アルコキシド(a)の縮合物中の水酸基と反応し得る反応性基を有していることが好ましい。
水酸基と反応し得る反応性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基及びアミド基等が挙げられる。反応性基は金属アルコキシド(a)の縮合物(A)中の水酸基と反応し、有機−無機界面に化学結合が生成するため、高い硬度が発現する。これらの官能基の内、水酸基、カルボキシル基及びリン酸基が好ましく、水酸基とカルボキシル基が更に好ましく、水酸基が最も好ましい。
【0053】
水酸基を分子内に有する多官能メタクリレートの具体例としては、ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのEO付加物のトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのEO付加物のペンタ(メタ)アクリレート及びトリペンタエリスリトールポリ(n=2〜7)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
尚、水酸基を分子内に有する多官能メタクリレートは、多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステル反応で得られるが、一般的に異なったエステル結合の数(即ち水酸基の数)の混合物として得られる。例えば、水酸基を6個有するジペンタエリスリトール1モルに6モルのアクリル酸を反応させてジペンタエリスリトールのヘキサアクリレートを製造する際には、水酸基1個を有するジペンタエリスリトールのペンタアクリレートや水酸基2個を有するジペンタエリスリトールのテトラアクリレートも副生し、これらの混合物となる。
本発明においては、水酸基を分子内に有する多官能メタクリレートを上記混合物のまま使用することができる。
【0055】
本発明における光硬化性樹脂組成物に添加する光重合開始剤(D)は、可視光線、紫外線、遠赤外線、荷電粒子線及びX線等の放射線の露光により、重合性不飽和化合物の重合を開始しうるラジカルを発生する成分であればどのようなものでもよい。
【0056】
本発明の光硬化性樹脂組成物に添加する光重合開始剤(D)としては、フォスフィンオキサイド系化合物(D1)、ベンゾイルホルメート系化合物(D2)、チオキサントン系化合物(D3)、オキシムエステル系化合物(D4)、ヒドロキシベンゾイル系化合物(D5)、ベンゾフェノン系化合物(D6)、ケタール系化合物(D7)及び1,3αアミノアルキルフェノン系化合物(D8)等が挙げられる。
【0057】
フォスフィンオキサイド系化合物(D1)としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
ベンゾイルホルメート系化合物(D2)としては、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
チオキサントン系化合物(D3)としては、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0058】
オキシムエステル系化合物(D4)としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]及びエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
ヒドロキシベンゾイル系化合物(D5)としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びベンゾインアルキルエーテル等が挙げられる。
【0059】
ベンゾフェノン系化合物(D6)としては、ベンゾフェノン等が挙げられる。
ケタール系化合物(D7)としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
1,3αアミノアルキルフェノン系化合物(D8)としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0060】
これらの光重合開始剤(D)の内、硬化性の観点から好ましいのは、(D1)、(D5)及び(D8)であり、更に好ましいのは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンである。
光重合開始剤(D)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明の光硬化性樹脂組成物中の縮合物(A)の含有量は、硬度及び透明性のバランスの観点から(A)〜(D)の合計重量に基づいて、5〜80重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜70重量%であり、特に好ましくは20〜75重量%である。5重量%未満であると硬度が不足する場合があり、80重量%を越えると透明性が悪化する場合がある。
【0062】
本発明の光硬化性樹脂組成物中の(メタ)アクリロイル基を6〜15個有するウレタン(メタ)アクリレート(B)の含有量は、硬度及び透明性のバランスの観点から(A)〜(D)の合計重量に基づいて、5〜80重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜60重量%である。
【0063】
本発明の光硬化性樹脂組成物中の多官能(メタ)アクリレート(C)の含有量は、硬度及び透明性のバランスの観点から(A)〜(D)の合計重量に基づいて、5〜75重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜60重量%である。
【0064】
本発明の光硬化性樹脂組成物中の光重合開始剤(D)の含有量は、硬化性及び透明性の観点から(A)〜(D)の合計重量に基づいて、0.1〜10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.2〜7重量%である。
【0065】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、レベリング向上を目的として界面活性剤(E)を含有することができる。界面活性剤(E)としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤等が挙げられ、レベリング性の観点からはフッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤が好ましく、相溶性の観点からはオキシアルキル鎖を有する界面活性剤が好ましい。
【0066】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により種々の添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、可塑剤、有機溶剤、分散剤、消泡剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、スリップ剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤及び紫外線吸収剤が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0067】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、塗工の際に、塗工に適した粘度に調整するために、必要に応じて溶剤を含有することができる。
溶剤の使用量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて好ましくは2,000重量%以下、更に好ましくは10〜500重量%である。また、光硬化性樹脂組成物の粘度は、使用時の温度(例えば5〜60℃)で、例えば5〜5,000mPa・s、安定塗工の観点から好ましくは50〜1,000mPa・sである。
【0068】
溶剤としては、本発明の組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン及びエチルベンゼン)、エステル又はエーテルエステル(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル及びメトキシブチルアセテート)、エーテル(例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールのモノメチルエーテル及びジエチレングリコールのモノエチルエーテル)、ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン及びシクロヘキサノン)、アルコール(例えばメタノール、エタノール、n−又はi−プロパノール、n−、i−、sec−又はt−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール及びベンジルアルコール)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド)、水及びこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
【0069】
これらの溶剤の内、コーティング膜の平滑性及び溶剤除去の効率の観点から好ましいのは沸点が70〜100℃のエステル、ケトン及びアルコール、更に好ましいのは酢酸エチル、メチルエチルケトン、i−プロパノール及びこれらの混合物である。
【0070】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、必要により乾燥させた後、活性エネルギー線(紫外線、電子線及びX線等)の照射により硬化させることにより、硬化膜を有するハードコート被覆物を得ることができる。
【0071】
塗工に際しては、例えば塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター及びゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター及びブレードコーター等]が使用できる。
【0072】
塗工膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、0.5〜300μmであることが好ましい。乾燥性及び硬化性の観点から更に好ましい膜厚の上限は250μmであり、耐摩耗性、塗工適性の観点から更に好ましい下限は1μmである。
【0073】
上記基材としては、メチルメタクリレート(共)重合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリトリアセチルセルロース及びポリシクロオレフィン等の樹脂からなるものが挙げられる。
【0074】
本発明の光硬化性樹脂組成物が溶剤を含有する場合は、塗工後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。
乾燥温度は、好ましくは50〜200℃、塗膜の硬度及び外観の観点から更に好ましい上限は150℃、観測速度の観点から更に好ましい下限は60℃である。
【0075】
本発明の光硬化性樹脂組成物を紫外線により硬化させる場合は、種々の紫外線照射装置[例えば、紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]やLED照射装置を使用できる。
使用するランプとしては、例えば高圧水銀灯及びメタルハライドランプ等が挙げられる。紫外線の照射量は、組成物の硬化性及び硬化物の可撓性の観点から好ましくは10〜10,000mJ/cm2、更に好ましくは100〜5,000mJ/cm2である。
【0076】
本発明の光硬化性樹脂組成の硬化物のヘイズは1%以下であることが好ましい。1%を超えると硬化物の透明性が悪化する。尚、硬化物のヘイズは、実施例に記載の通り、硬化膜のフィルムをJIS K7105に準拠して、全光線透過率測定装置で測定される。
【実施例】
【0077】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、部は重量部を表す。なお実施例4は参考例1である。
【0078】
製造例1 [テトラエトキシシランの縮合物(A−1)のアクリレート(C−1)溶液の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、アクリレート(C−1)(組成は後述;以下のアクリレートも同様)67部、水1.51部及びテトラエトキシシラン(a−1)[商品名:Dynasylan Silbond Condensed、エボニックジャパン(株)製]33部を仕込み30分間攪拌した後、パラトルエンスルホン酸0.1部を仕込み、65℃で2時間反応させた。その後、反応容器を減圧にし、空気を吹き込みながら、70℃で2時間トッピングし、テトラエトキシシランの縮合物(A−1)のアクリレート(C−1)溶液を得た。
【0079】
製造例2 [テトラエトキシシランの縮合物(A−2)のアクリレート(C−2)溶液の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、アクリレート(C−2)43部、水1.51部及びテトラエトキシシラン(a−1)57部を仕込み30分間攪拌した後、パラトルエンスルホン酸0.1部を仕込み、65℃で2時間反応させた。その後、反応容器を減圧にし、空気を吹き込みながら、70℃で2時間トッピングし、テトラエトキシシランの縮合物(A−2)のアクリレート(C−2)溶液を得た。
【0080】
製造例3 [テトラ−n−ブトキシチタンの縮合物(A−3)のアクリレート(C−3)溶液の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、アクリレート(C−3)67部、水0.01部及びテトラ−n−ブトキシチタン(a−2)[商品名:B−1、日本曹達(株)製]33部を仕込み30分間攪拌した後、パラトルエンスルホン酸0.1部を仕込み、65℃で2時間反応させた。その後、反応容器を減圧にし、空気を吹き込みながら、70℃で2時間トッピングし、テトラ−n−ブトキシチタンの縮合物(A−3)のアクリレート(C−3)溶液を得た。
【0081】
製造例4 [テトラエトキシシランの縮合物(A−4)のアクリレート(C−1)と(C−4)による溶液の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、アクリレート(C−1)33部、アクリレート(C−4)33部、水1.29部及びテトラエトキシシラン(a−1)34部を仕込み30分間攪拌した後、パラトルエンスルホン酸0.1部を仕込み、65℃で2時間反応させた。その後、反応容器を減圧にし、空気を吹き込みながら、70℃で2時間トッピングし、テトラエトキシシランの縮合物(A−4)のアクリレート(C−1)とアクリレート(C−4)による溶液を得た。
【0082】
製造例5 [テトラエトキシシランの縮合物(A−5)のアクリレート(C−1)と(C−5)による溶液の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、アクリレート(C−1)12部、アクリレート(C−5)12部、水1.65部及びテトラエトキシシラン(a−1)40部を仕込み30分間攪拌した後、パラトルエンスルホン酸0.1部を仕込み、65℃で2時間反応させた。その後、反応容器を減圧にし、空気を吹き込みながら、70℃で2時間トッピングし、テトラエトキシシランの縮合物(A−5)のアクリレート(C−1)及びアクリレート(C−5)による溶液を得た。
【0083】
製造例6 [テトラエトキシシランの縮合物(A−6)のアクリレート(C−1)溶液の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、アクリレート(C−1)50部、エタノール30部、ギ酸30部及びテトラエトキシシラン(a−1)50部を仕込み30分間攪拌した後、65℃で2時間反応させた。その後、反応容器を減圧にし、空気を吹き込みながら、70℃で2時間トッピングし、テトラエトキシシランの縮合物(A−6)のアクリレート(C−1)溶液を得た。
【0084】
製造例7 [テトラエトキシシランの縮合物(A−7)のアクリレート(C−1)溶液の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、アクリレート(C−1)25部、水0.60部及びテトラエトキシシラン(a−1)75部を仕込み30分間攪拌した後、パラトルエンスルホン酸0.1部を仕込み、65℃で2時間反応させた。その後、反応容器を減圧にし、空気を吹き込みながら、70℃で2時間トッピングし、テトラエトキシシランの縮合物(A−7)のアクリレート(C−1)溶液を得た。
【0085】
製造例8 [15官能ウレタンアクリレート(B−1)の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、アクリレート(C−1)80部、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(b−1)[商品名:デュラネートTPA−100、旭化成(株)製]20部、を仕込み30分間撹拌したのち、ウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50重量%溶液)0.5部を仕込み、80℃で6時間反応させ、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体との15官能ウレタンアクリレート(B−1)を得た。
【0086】
製造例9 [15官能ウレタンアクリレート(B−2)の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、製造例1で得たテトラエトキシシランの縮合物(A−1)のアクリレート(C−1)溶液を80部、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(b−1)6.7部、を仕込み30分間撹拌したのち、ウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50重量%溶液)0.5部を仕込み、80℃で6時間反応させ、テトラエトキシシランの縮合物(A−1)を含有したジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体との15官能ウレタンアクリレート(B−2)を得た。
【0087】
製造例10 [9官能ウレタンアクリレート(B−3)の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、アクリレート(C−2)を75部、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(b−2)[商品名:24A−100、旭化成(株)製]25部、を仕込み30分間撹拌したのち、ウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50重量%溶液)0.5部を仕込み、80℃で6時間反応させ、ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体との9官能ウレタンアクリレート(B−3)を得た。
【0088】
製造例11 [6官能ウレタンアクリレート(B−4)の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、アクリレート(C−2)65部、イソホロンジイソシアネート(b−3)[商品名:IPDI、BASF(株)製]35部、を仕込み30分間撹拌したのち、ウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50重量%溶液)0.5部を仕込み、80℃で6時間反応させ、ペンタエリスリトールトリアクリレートとイソホロンジイソシアネートとの6官能の多官能ウレタンアクリレート(B−4)を得た。
【0089】
比較製造例1 [テトラエトキシシランの縮合物(A’−1)のフェノキシエチルアクリレート(C’−1)溶液の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、フェノキシエチルアクリレート(C’−1)[商品名:ライトアクリレートPO−A、共栄社化学(株)製]57部、水1.51部及びテトラエトキシシラン(a−1)43部を仕込み30分間攪拌した後、パラトルエンスルホン酸0.1部を仕込み、65℃で2時間反応させた。その後、反応容器を減圧にし、空気を吹き込みながら、70℃で2時間トッピングし、テトラエトキシシランの縮合物(A’−1)のフェノキシエチルアクリレート(C’−1)による溶液を得た。これは、単官能の(C’−1)を使用する点で、比較例2のための金属アルコキシドの縮合物溶液である。
【0090】
比較製造例2 [2個のアクリロイル基を有するウレタンアクリレート(B’−1)の製造]
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、ヒドロキシエチルアクリレート[商品名:BHEA、日本触媒(株)製]65部、イソホロンジイソシアネート(b−3)35部を仕込み30分間撹拌したのち、ウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50重量%溶液)0.5部を仕込み、80℃で6時間反応させ、比較例となるヒドロキシエチルアクリレートとイソホロンジイソシアネートとの2官能ウレタンアクリレート(B’−1)を得た。
【0091】
尚、製造例及び比較製造例中で使用した原料は以下の通りである。
(a−1):テトラエトキシシラン[商品名「Dynasylan Silbond Condensed」、エボニックジャパン(株)製]
(a−2):テトラ−n−ブトキシチタン[商品名「B−1」、日本曹達(株)製]
(C−1):アロニックスM−403[東亜合成(株)製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(ペンタ体比率=55モル%)]
(C−2):ETERMER235[長興化学(株)製、主成分はペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基1個)だが、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(水酸基0個)、ペンタエリスリトールジアクリレート(水酸基2個)も含む]
(C−3):ネオマーEA−300[三洋化成工業(株)製、主成分はペンタエリスリトールテトラアクリレート(水酸基0個)だが、ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基1個)も含む。]
(C−4):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(D−4)[商品名:ライトアクリレートDPE−6A、共栄社化学(株)製]
(C−5):ニューフロンティア MF−001[第一工業製薬(株)製、主成分はジペンタエリスリトールEO付加物ヘキサアクリレート(水酸基0個)だが、ジペンタエリスリトールEO付加物ペンタアクリレート(水酸基1個)も含む。]
(C−6):アロニックス M−315[東亜合成(株)製、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート]
(C’−1):フェノキシエチルアクリレート[商品名:ライトアクリレートPO−A、共栄社化学(株)製]
【0092】
実施例1
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、製造例1で得られたテトラエトキシシランの縮合物(A−1)の(メタ)アクリレート(C−1)溶液を90部、製造例8で得られた15官能のウレタンアクリレート10部、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(D−2)[商品名「イルガキュア907」、BASF社製]3部、フッ素原子含有ノニオン性界面活性剤(E−2)1部を加え、65℃で均一になるまで混合攪拌し、光硬化性樹脂組成物(F−1)を得た。
【0093】
実施例2〜8及び比較例1〜6
実施例1と同様に表1に示す部数(重量部)で均一混合させ、光硬化性樹脂組成物(F−2)〜(F−8)及び(F’−1)〜(F’−6)を得た。
尚、表1には製造例で得られた縮合物(A)のアクリレート(C)溶液の(A)と(C)の量を別々に記載しているしているので、配合に使用する製造例で得られた(A)の(C)溶液の量は、表1の縮合物(A)とアクリレート(C)の合計値である。
また、比較例3と4は、本発明のような(C)中で(A)を合成するのではなく、市販の無機酸化物微粒子(A’−2)及び(A’−3)を固形分がそれぞれ30重量%となるように配合した。
【0094】
【表1】
【0095】
表1中で使用した原料は以下の通りである。
(A’−2):シリカ微粒子[商品名「コロイダルシリカMEK−ST」粒径10−15nm MEK40重量%溶液、日産化学工業(株)製]
(A’−3):アクリル基変性シリカ微粒子[商品名「MEK−AC」粒径10−15nm MEK40重量%溶液、日産化学工業(株)製]
(D−1):1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[商品名「ルシリンTPO」、BASF(株)製]
(D−2):2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン[商品名「イルガキュア907」、BASF(株)製]
(D−3):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」、BASF(株)製]
【0096】
光硬化性樹脂組成物を硬化させて得られたフィルムについて、下記の方法で性能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0097】
<硬化フィルム作製法>
光硬化性樹脂組成物(F−1)〜(F−8)及び(F’−1)〜(F’−6)をそれぞれディスパーザーを用いてプロピレングリコールモノメチルエーテル又はメチルエチルケトンで希釈し、不揮発分40重量%に調製した。
厚さ40μmのTACフィルム基材の片面にバーコーターを用い、乾燥硬化後の膜厚が7μmになるように塗布し、70℃で1分間乾燥させた後、紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製。以下同じ。]により、窒素雰囲気下で紫外線を300mJ/cm2照射し、基材フィルム表面に硬化膜を有するフィルムを作製した。
【0098】
[耐擦傷性の評価]
上記の操作で得られた硬化膜を有するフィルムについて、樹脂面を♯0000のスチールウールを用いて、2000g/cm2荷重にて100往復擦過した。
擦過前と擦過後のそれぞれのヘイズ値(%)をJIS K7105に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−gard dual」BYK gardner(株)製]を用いて測定し、擦過後のヘイズ値と擦過前のヘイズ値(%)の差を算出した。
この評価条件では、一般にヘイズ値の差は1%以下が好ましい。
【0099】
[鉛筆硬度の評価]
上記の操作で得られた硬化膜を有するフィルムについて、JIS K−5400に準じ、鉛筆硬度を測定した。
この評価条件では、一般的に3H以上が好ましい。
【0100】
[ヘイズ(フィルムの透明性)の評価]
上記の操作で得られた硬化膜を有するフィルムについて、JIS−K7105に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−gard dual」BYK gardner(株)製]を用いてヘイズを測定した。
尚、本発明の硬化物のヘイズ値は1.0%以下であることが必要である。
【0101】
[全光線透過率(組成物の透明性)の測定]
厚さ1mmのスライドガラスの上に、2cm四方を刳り抜いた厚さ100μmのシリコンゴムを置き、刳り抜いた部分に光硬化性樹脂組成物を流し込んでもう一枚のスライドガラスで挟み、クリップで両端で固定してJIS−K7105に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−gard dual」、BYK gardner(株)製]を用いて全光線透過率(%)を測定した。
尚、本発明の組成物の全光線透過率は90%以上であることが必要である。
【0102】
本発明の実施例1〜8の光硬化性樹脂組成物は、表1に示す通り、耐擦傷性、鉛筆硬度及び透明性の全ての点で優れている。
一方、金属アルコキシドの縮合物を使用しない比較例1は鉛筆硬度が不良であり、3〜6官能(メタ)アクリレート(C)の代わりに単官能のフェノキシエチルアクリレート(C’−1)を使用した(A’−2)を用いている比較例2は耐擦傷性と鉛筆硬度が不良である。また、6〜15官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の代わりに2官能ウレタンアクリレート(B’−1)を使用している比較例6も耐擦傷性と鉛筆硬度が不良である。金属アルコキシドの縮合物(A)の代わりに金属参加微粒子(A’−2)を使用した比較例3及び(A’−3)を使用した比較例4は耐擦傷性と鉛筆硬度に加えて、透明性も不良である。6〜15官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)を使用しない比較例5は耐擦傷性が不良でとなる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の光硬化性樹脂組成物を硬化させて得られるハードコート膜を有するハードコートフィルムは、耐擦傷性、鉛筆硬度及び透明性に優れているため、スマートフォンやテレビ等のディスプレイ関連部材、プラスチック光学部品や車載加飾フィルム、ヘッドアップディスプレイ(HUD)のコンバイナ、自動車ウィンドウコーティング等に使用することができる。例えばフラットパネルディスプレイ、タッチパネル、コンバイナ等表面硬度、透明性が優れる分野に好適である。