特許第6965222号(P6965222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965222
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20211028BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20211028BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20211028BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20211028BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20211028BHJP
   H01L 27/00 20060101ALI20211028BHJP
   H01L 25/065 20060101ALI20211028BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20211028BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   H01L21/30 541W
   H01L21/88 S
   H01L21/30 541D
   G03F7/20 504
   H01L27/00 301B
   H01L25/08 B
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-173109(P2018-173109)
(22)【出願日】2018年9月14日
(65)【公開番号】特開2020-47667(P2020-47667A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2020年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】東 和幸
(72)【発明者】
【氏名】香西 昌平
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−508991(JP,A)
【文献】 特開2008−235571(JP,A)
【文献】 特開2012−079475(JP,A)
【文献】 特開2008−041870(JP,A)
【文献】 特開2002−217089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/027
H01L 21/3205
H01L 27/00
H01L 25/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電位が固定された第1の基板領域を有する第1の半導体層と、
電位が固定された第2の基板領域を有する第2の半導体層と、
前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との間に設けられ、前記第1の半導体層から前記第2の半導体層に向かう第1の方向に積層された複数の第1の導電層を有する第1の多層配線層と、
前記第1の多層配線層と前記第2の半導体層との間に設けられ、前記第1の方向に積層された複数の第2の導電層を有する第2の多層配線層と、
前記第1の半導体層の中の第1の不純物領域を有する第1のトランジスタと、
前記第2の半導体層の中の第2の不純物領域を有する第2のトランジスタと、
前記第1の半導体層、前記第1の多層配線層、前記第2の多層配線層、及び、前記第2の半導体層を貫通する第1の孔と、
前記第1の半導体層、前記第1の多層配線層、前記第2の多層配線層、及び、前記第2の半導体層を貫通する第2の孔と、
前記第1の多層配線層の中に設けられた第1の電極と、
前記第1の多層配線層の中に設けられ、前記第1の孔を間に挟んで前記第1の電極に対向する第2の電極と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第1の電極は前記第1の導電層を含む積層構造を有し、
前記第2の電極は前記第1の導電層を含む積層構造を有する請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の電極は、前記第1の半導体層に電気的に接続される請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の電極は、前記第1の不純物領域に電気的に接続される請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の多層配線層の中に設けられ、前記第1の電極に電気的に接続された第3の電極と、
前記第2の多層配線層の中に設けられ、前記第2の電極に電気的に接続され、前記第1の孔を間に挟んで前記第3の電極に対向する第4の電極と、
を更に備える請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第3の電極は前記第2の導電層を含む積層構造を有し、
前記第4の電極は前記第2の導電層を含む積層構造を有する請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第3の電極は前記2の半導体層に電気的に接続される請求項5又は請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1の多層配線層の中に設けられた第5の電極と、
前記第1の多層配線層の中に設けられ、前記第2の孔を間に挟んで前記第5の電極に対向する第6の電極と、
前記第2の多層配線層の中に設けられ、前記第5の電極に電気的に接続された第7の電極と、
前記第2の多層配線層の中に設けられ、前記第6の電極に電気的に接続され、前記第2の孔を間に挟んで前記第7の電極に対向する第8の電極と、
を更に備える請求項5ないし請求項7いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第5の電極は、前記第1の半導体層に電気的に接続される請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第8の電極は、前記第2の不純物領域に電気的に接続される請求項8又は請求項9記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1の電極及び前記第2の電極は、前記第1の孔の側面に露出する請求項1ないし請求項10いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1の基板領域及び前記第2の基板領域の電位は、グラウンド電位である請求項1ないし請求項11いずれか一項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチビーム方式の電子ビーム描画装置では、複数の電子ビームを試料に同時に照射する。複数の電子ビームの試料への照射と非照射を個別に制御するために、ブランキングアパーチャアレイ(BAA)が用いられる。BAAの半導体層には、複数の電子線ビームを通過させるための貫通孔が複数設けられる。各々の貫通孔が1対の電極を有し、電極間に発生する電界により各々の電子ビームを独立して偏向する。
【0003】
例えば、電子ビームの本数が増加すると、貫通孔の配置ピッチを短くすることが要求される。しかし、貫通孔の配置ピッチが短くなると、隣り合う貫通孔の電極によって発生する電界の影響で電子ビームの偏向精度が低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−79475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電子ビームの偏向精度を向上させる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の半導体装置は、電位が固定された第1の基板領域を有する第1の半導体層と、電位が固定された第2の基板領域を有する第2の半導体層と、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との間に設けられ、前記第1の半導体層から前記第2の半導体層に向かう第1の方向に積層された複数の第1の導電層を有する第1の多層配線層と、前記第1の多層配線層と前記第2の半導体層との間に設けられ、前記第1の方向に積層された複数の第2の導電層を有する第2の多層配線層と、前記第1の半導体層の中の第1の不純物領域とを有する第1のトランジスタと、前記第2の半導体層の中の第2の不純物領域と、を有する第2のトランジスタと、前記第1の半導体層、前記第1の多層配線層、前記第2の多層配線層、及び、前記第2の半導体層を貫通する第1の孔と、前記第1の半導体層、前記第1の多層配線層、前記第2の多層配線層、及び、前記第2の半導体層を貫通する第2の孔と、前記第1の多層配線層の中に設けられた第1の電極と、前記第1の多層配線層の中に設けられ、前記第1の孔を間に挟んで前記第1の電極に対向する第2の電極と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の半導体装置の模式図。
図2】第1の実施形態の半導体装置の一部の拡大模式断面図。
図3】第1の実施形態の半導体装置の製造途中の模式断面図。
図4】第1の実施形態の半導体装置の製造途中の模式断面図。
図5】第1の実施形態の半導体装置の製造途中の模式断面図。
図6】第1の実施形態の半導体装置の製造途中の模式断面図。
図7】第1の実施形態の半導体装置の製造途中の模式断面図。
図8】第1の実施形態の半導体装置の製造途中の模式断面図。
図9】第1の実施形態の半導体装置の作用の説明図。
図10】第2の実施形態の半導体装置の一部の拡大模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書中、同一又は類似する部材については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0009】
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する場合がある。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の半導体層と、第2の半導体層と、第1の半導体層と第2の半導体層との間に設けられ、第1の半導体層から第2の半導体層に向かう第1の方向に積層された複数の第1の導電層を有する第1の多層配線層と、第1の多層配線層と第2の半導体層との間に設けられ、第1の方向に積層された複数の第2の導電層を有する第2の多層配線層と、第1のゲート電極と、第1の半導体層の中の第1の不純物領域とを有する第1のトランジスタと、第2のゲート電極と、第2の半導体層の中の第2の不純物領域と、を有する第2のトランジスタと、第1の半導体層、第1の多層配線層、第2の多層配線層、及び、第2の半導体層を貫通する第1の孔と、第1の半導体層、第1の多層配線層、第2の多層配線層、及び、第2の半導体層を貫通する第2の孔と、第1の多層配線層の中に設けられた第1の電極と、第1の多層配線層の中に設けられ、第1の孔を間に挟んで第1の電極に対向する第2の電極と、を備える。
【0011】
図1は、第1の実施形態の半導体装置の模式図である。図1(a)は上面図、図1(b)は断面図である。図1(b)は、図1(a)のAA’断面図である。
【0012】
第1の実施形態の半導体装置は、例えば、マルチビーム方式の電子ビーム描画装置に用いられるBAA100である。マルチビーム方式の電子ビーム描画装置は、複数の電子ビームを用いて試料にパターンを描画する。
【0013】
BAA100は、複数の電子ビームの各々を個別に偏向する機能を備える。例えば、BAA100と電子ビームを遮蔽するアパーチャとを組み合わせることによって、各々の電子ビームの試料への照射と非照射を独立に制御することができる。
【0014】
図1に示すようにBAA100は、中央部に複数の貫通孔101を有する。貫通孔101のそれぞれを、電子ビームが通過する。図1(a)では、横11個、縦11個の計121個の貫通孔101がアレイ状に配置される場合を例示している。しかし、貫通孔101の個数及び配置の形状は、上記形態に限定されるものではない。
【0015】
貫通孔101の径は、例えば、3μm以上20μm以下である。貫通孔101の配置ピッチは、例えば、20μm以上40μm以下である。
【0016】
BAA100の上面には、電極パッド102が設けられる。電極パッド102は、BAA100に外部から電圧を印加するために設けられる。電極パッド102は、例えば、図示しないBAA100の制御回路や偏向制御用の電極に電気的に接続される。
【0017】
図2は、第1の実施形態の半導体装置の一部の拡大模式断面図である。図2は、2個の貫通孔101の断面を含む。
【0018】
BAA100は、第1の半導体層10、第2の半導体層20、第1の多層配線層30、第2の多層配線層40、第1のトランジスタTR1、第2のトランジスタTR2を備える。BAA100は、第1の電極E1、第2の電極E2,第3の電極E3、第4の電極E4,第5の電極E5、第6の電極E6、第7の電極E7、第8の電極E8を備える。また、BAA100は、第1の貫通孔101a(第1の孔)、第2の貫通孔101b(第2の孔)を有する。
【0019】
第1の半導体層10は、p型の第1の基板領域11、n型の第1のソース・ドレイン領域12(第1の不純物領域)、p型の第1のコンタクト領域13を有する。第2の半導体層20は、p型の第2の基板領域21、n型の第2のソース・ドレイン領域22(第2の不純物領域)、p型の第2のコンタクト領域23を有する。
【0020】
第1の多層配線層30は、第1の導電層31、第1のゲート電極32、第1のコンタクトプラグ33、第1の接続パッド34、第1の層間絶縁層35を有する。第2の多層配線層40は、第2の導電層41、第2のゲート電極42、第2のコンタクトプラグ43、第2の接続パッド44、第2の層間絶縁層45を有する。
【0021】
第1の半導体層10は、例えば、単結晶シリコンである。p型の第1の基板領域11は、p型不純物を含むシリコンである。n型の第1のソース・ドレイン領域12はn型不純物を含むシリコンである。p型の第1のコンタクト領域13は、p型不純物を含むシリコンである。
【0022】
第1の半導体層10の電位は、例えば、グラウンド電位である。p型の第1の基板領域11の電位は、例えば、グラウンド電位である。
【0023】
第2の半導体層20は、例えば、単結晶シリコンである。p型の第2の基板領域21は、p型不純物を含むシリコンである。n型の第2のソース・ドレイン領域22はn型不純物を含むシリコンである。p型の第2のコンタクト領域23は、p型不純物を含むシリコンである。
【0024】
第2の半導体層20の電位は、例えば、グラウンド電位である。p型の第2の基板領域21の電位は、例えば、グラウンド電位である。
【0025】
第1の多層配線層30は、第1の半導体層10と第2の半導体層20との間に設けられる。第1の多層配線層30は、複数の第1の導電層31を有する。第1の導電層31は、第1の半導体層10から第2の半導体層20に向かう第1の方向に積層される。第1の方向は、第1の半導体層の表面に対して垂直な方向である。第1の導電層31の層数は、例えば、3層以上20層以下である。
【0026】
第1の導電層31の間には、第1の層間絶縁層35が設けられる。第1の層間絶縁層35は、例えば、酸化シリコンである。
【0027】
第1の導電層31の一部は、配線として機能する。第1の導電層31は、例えば、金属である。
【0028】
第1のコンタクトプラグ33は、第1の半導体層10と第1の導電層31との間、第1の導電層31と第1の導電層31との間、第1の導電層31と第1の接続パッド34との間に設けられる。第1のコンタクトプラグ33は、第1の半導体層10と第1の導電層31との間、第1の導電層31と第1の導電層31との間、第1の導電層31と第1の接続パッド34との間を電気的に接続する機能を有する。第1のコンタクトプラグ33は、例えば、金属である。
【0029】
第1の接続パッド34は、第2の接続パッド44と接する。第1の接続パッド34は、第2の接続パッド44と電気的に接続される。第1の接続パッド34は、例えば、金属である。
【0030】
第1のゲート電極32は、導電体である。第1のゲート電極32は、例えば、導電性不純物を含む多結晶シリコンである。
【0031】
第2の多層配線層40は、第1の多層配線層30と第2の半導体層20との間に設けられる。第2の多層配線層40は、複数の第2の導電層41を有する。第2の導電層41は、第1の半導体層10から第2の半導体層20に向かう第1の方向に積層される。第2の導電層41の層数は、例えば、5層以上20層以下である。
【0032】
第2の導電層41の間には、第2の層間絶縁層45が設けられる。第2の層間絶縁層45は、例えば、酸化シリコンである。
【0033】
第2の導電層41の一部は、配線として機能する。第2の導電層41は、例えば、金属である。
【0034】
第2のコンタクトプラグ43は、第2の半導体層20と第2の導電層41との間、第2の導電層41と第2の導電層41との間、第2の導電層41と第2の接続パッド44との間に設けられる。第2のコンタクトプラグ43は、第2の半導体層20と第2の導電層41との間、第2の導電層41と第2の導電層41との間、第2の導電層41と第2の接続パッド44との間を電気的に接続する機能を有する。第2のコンタクトプラグ43は、例えば、金属である。
【0035】
第2の接続パッド44は、第1の接続パッド34と接する。第2の接続パッド44は、第1の接続パッド34と電気的に接続される。第2の接続パッド44は、例えば、金属である。
【0036】
第2の接続パッド44と第1の接続パッド34とが電気的に接続されることにより、第1の導電層31と第2の導電層41とが電気的に接続される。
【0037】
第2のゲート電極42は、導電体である。第2のゲート電極42は、例えば、導電性不純物を含む多結晶シリコンである。
【0038】
第1の貫通孔101aは、第1の半導体層10、第1の多層配線層30、第2の多層配線層40、及び、第2の半導体層20を貫通する。
【0039】
第2の貫通孔101bは、第1の半導体層10、第1の多層配線層30、第2の多層配線層40、及び、第2の半導体層20を貫通する。
【0040】
第1の電極E1、第2の電極E2、第5の電極E5、第6の電極E6は、第1の多層配線層30の中に設けられる。第1の電極E1、第2の電極E2、第5の電極E5、第6の電極E6は、複数の第1の導電層31を含む積層構造を有する。第1の電極E1、第2の電極E2、第5の電極E5、第6の電極E6は、第1のコンタクトプラグ33で接続された複数の第1の導電層31で構成される。
【0041】
第1の電極E1と第2の電極E2は、第1の貫通孔101aを間に挟んで対向する。第1の電極E1と第2の電極E2は、例えば、第1の貫通孔101aの側面に露出する。
【0042】
第1の電極E1は、第1の半導体層10に電気的に接続される。第1の電極E1は、p型の第1のコンタクト領域13に電気的に接続される。第1の電極E1の電位は、グラウンド電位である。
【0043】
第2の電極E2は、n型の第1のソース・ドレイン領域12に電気的に接続される。第2の電極E2の電位は変化する。第2の電極E2の電位は、例えば、グラウンド電位と所定の正電位との間で変化する。
【0044】
第5の電極E5と第6の電極E6は、第2の貫通孔101bを間に挟んで対向する。第5の電極E5と第6の電極E6は、例えば、第2の貫通孔101bの側面に露出する。
【0045】
第5の電極E5は、第1の半導体層10に電気的に接続される。第5の電極E5は、p型の第1のコンタクト領域13に電気的に接続される。第5の電極E5の電位は、グラウンド電位である。
【0046】
第6の電極E6は、n型の第2のソース・ドレイン領域22に電気的に接続される。第6の電極E6の電位は、変化する。第6の電極E6の電位は、例えば、グラウンド電位と所定の正電位との間で変化する。
【0047】
第3の電極E3、第4の電極E4、第7の電極E7、第8の電極E8は、第2の多層配線層40の中に設けられる。第3の電極E3、第4の電極E4、第7の電極E7、第8の電極E8は、複数の第2の導電層41を含む積層構造を有する。第3の電極E3、第4の電極E4、第7の電極E7、第8の電極E8は、第2のコンタクトプラグ43で接続された複数の第2の導電層41で構成される。
【0048】
第3の電極E3と第4の電極E4は、第1の貫通孔101aを間に挟んで対向する。第3の電極E3と第4の電極E4は、例えば、第1の貫通孔101aの側面に露出する。
【0049】
第3の電極E3は、第2の半導体層20に電気的に接続される。第3の電極E3は、p型の第2のコンタクト領域23に電気的に接続される。第3の電極E3の電位は、グラウンド電位である。
【0050】
第4の電極E4は、n型の第1のソース・ドレイン領域12に電気的に接続される。第4の電極E4は、第2の電極E2に電気的に接続される。第4の電極E4の電位は変化する。第4の電極E4の電位は、例えば、グラウンド電位と所定の正電位との間で変化する。
【0051】
第7の電極E7と第8の電極E8は、第2の貫通孔101bを間に挟んで対向する。第7の電極E7と第8の電極E8は、例えば、第2の貫通孔101bの側面に露出する。
【0052】
第7の電極E7は、第2の半導体層20に電気的に接続される。第7の電極E7は、p型の第2のコンタクト領域23に電気的に接続される。第7の電極E7の電位は、グラウンド電位である。
【0053】
第8の電極E8は、n型の第2のソース・ドレイン領域22に接続される。第8の電極E8は、第4の電極E4に電気的に接続される。第8の電極E8の電位は変化する。第8の電極E8の電位は、例えば、グラウンド電位と所定の正電位との間で変化する。
【0054】
第1のトランジスタTR1は、第1のゲート電極32と、1対のn型の第1のソース・ドレイン領域12とを有する。第1のゲート電極32と第1の半導体層10との間には、図示しない第1のゲート絶縁膜が設けられる。第1のトランジスタTR1は、電子をキャリアとするnチャネル型のトランジスタである。
【0055】
第1のトランジスタTR1は、例えば、第2の電極E2、及び、第4の電極E4に印加される電位を制御する機能を有する。なお、第1の半導体層10及び第1の多層配線層30には、第1のトランジスタTR1以外にも、BAA100を制御する多数のトランジスタが含まれる。また、例えば、nチャネル型のトランジスタ以外にpチャネル型のトランジスタも含まれる。第1のトランジスタTR1がpチャネル型のトランジスタであっても構わない。
【0056】
第2のトランジスタTR2は、第2のゲート電極42と、1対のn型の第2のソース・ドレイン領域22とを有する。第2のゲート電極42と第2の半導体層20との間には、図示しない第2のゲート絶縁膜が設けられる。第2のトランジスタTR2は、電子をキャリアとするnチャネル型のトランジスタである。
【0057】
第2のトランジスタTR2は、例えば、第6の電極E6、及び、第8の電極E8に印加される電位を制御する機能を有する。なお、第2の半導体層20及び第2の多層配線層40には、第2のトランジスタTR2以外にも、BAA100を制御する多数のトランジスタが含まれる。また、例えば、nチャネル型のトランジスタ以外にpチャネル型のトランジスタも含まれる。第2のトランジスタTR2がpチャネル型のトランジスタであっても構わない。
【0058】
次に、第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例について説明する。図3図4図5図6図7図8は、第1の実施形態の半導体装置の製造途中の模式断面図である。
【0059】
最初に、第1のウェハに複数の第1の半導体チップSC1を形成する(図3)。第1の半導体チップSC1は、第1の半導体層10と第1の多層配線層30とを有する。
【0060】
次に、第2のウェハに複数の第2の半導体チップSC2を形成する(図4)。第2の半導体チップSC2は、第2の半導体層20と第2の多層配線層40とを有する。
【0061】
次に、第1のウェハと第2のウェハを、第1の多層配線層30と第2の多層配線層40とが接するように、公知のウェハ貼り合わせプロセスにより貼り合わせる。次に、研削により第2の半導体層20を薄くする(図5)。
【0062】
次に、リソグラフィ法と反応性イオンエッチング法を用いて、第2の半導体層20及び第2の多層配線層40に孔101xを形成する(図6)。
【0063】
次に、接着層50を用いて第2の半導体層20に支持基板52を貼りつける。支持基板52は、例えば、石英ガラスである。次に、研削により第1の半導体層10を薄くする。
【0064】
次に、リソグラフィ法と反応性イオンエッチング法を用いて、第1の半導体層10及び第1の多層配線層30に孔101xに達するように、第1の貫通孔101aと第2の貫通孔101bを形成する(図7)。
【0065】
次に、第1の導電層31及び第2の導電層41が、第1の貫通孔101aと第2の貫通孔101bの側面に露出するように、第1の層間絶縁層35と第2の層間絶縁層45をエッチングする(図8)。エッチングは、例えば、ウェットエッチングにより行う。
【0066】
次に、支持基板52を剥離する。次に、貼り合わせされた第1のウェハと第2のウェハをダイシングにより個片化し、第1の半導体チップSC1と第2の半導体チップSC2とが貼り合わされたBAA100が製造される。
【0067】
以下、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0068】
図9は、第1の実施形態の半導体装置の作用の説明図である。図9は、BAA100の電子ビームの偏向制御の説明図である。
【0069】
第1の貫通孔101aを通過する電子ビームEB1に着目する。第1の電極E1及び第3の電極E3は、グラウンド電位の第1の半導体層10と第2の半導体層20に電気的に接続される。したがって、第1の電極E1及び第3の電極E3は、グラウンド電位となる。
【0070】
第1の電極E1に対向する第2の電極E2と、第3の電極E3に対向する第4の電極E4は、電気的に接続されている。第2の電極E2及び第4の電極E4は、例えば、第1のトランジスタTR1の制御により、所定の正電位となる。
【0071】
この場合、第1の貫通孔101aには、白矢印で示す向きの電界が生じる。第1の貫通孔101aに生じた電界により、電子ビームEB1は偏向する。
【0072】
次に、第2の貫通孔101bを通過する電子ビームEB2に着目する。第5の電極E5及び第7の電極E7は、グラウンド電位の第1の半導体層10と第2の半導体層20に電気的に接続される。したがって、第5の電極E5及び第7の電極E7は、グラウンド電位となる。
【0073】
第5の電極E5に対向する第6の電極E6と、第7の電極E7に対向する第8の電極E8は、電気的に接続されている。第6の電極E6及び第8の電極E8は、例えば、第2のトランジスタTR2の制御により、グラウンド電位となる。
【0074】
この場合、第2の貫通孔101bには、電界が生じない。したがって、電子ビームEB2は偏向せず直進する。
【0075】
一般に、貫通孔の配置ピッチが短くなると、隣り合う貫通孔の電極によって生じる電界の影響で電子ビームの偏向精度が低くなる。このため、隣り合う貫通孔の電極によって生じる電界の影響を低減することが望まれる。
【0076】
第1の実施形態のBAA100では、第1の電極E1、第2の電極E2,第3の電極E3、第4の電極E4,第5の電極E5、第6の電極E6、第7の電極E7、第8の電極E8は、電位の固定された第1の半導体層10と第2の半導体層20との間に挟まれる。このため、例えば、第1の貫通孔101aの電極によって生じる電界は、第1の半導体層10と第2の半導体層20によって遮蔽される。したがって、第1の貫通孔101aの電極によって生じる電界が、第1の貫通孔101aに隣り合う第2の貫通孔101bの電界に与える影響が低減する。よって、BAA100の電子ビームの偏向精度が向上する。
【0077】
第1の貫通孔101aと第2の貫通孔101bとの間に存在する、第1の導電層31及び第2の導電層41によっても、電界の遮蔽効果が生じる。したがって、BAA100の電子ビームの偏向精度が向上する。
【0078】
また、第1の実施形態のBAA100では、電極の直下の半導体層によって、電極の電位をグランド電位に固定することが可能となる。更に、電極の上下の第1の半導体層10と第2の半導体層20の双方によって、電極の電位をグランド電位に固定することが可能となる。したがって、電極のグラウンド電位が安定し、BAA100の電子ビームの偏向精度が向上する。
【0079】
貫通孔の配置ピッチが短くなると、トランジスタを形成するために用いることのできる半導体層の面積も縮小する。このため、例えば、トランジスタの形成に必要な半導体層の面積を確保するため、貫通孔の配置ピッチの縮小が制限されるということが起こり得る。
【0080】
第1の実施形態のBAA100では、第1の半導体層10に加え、第2の半導体層20を用いてトランジスタを形成する。例えば、電極の片側にしか半導体層がないBAAと比べ、トランジスタを形成するために用いることのできる半導体層の面積が2倍になる。よって、貫通孔の配置ピッチの縮小が容易になる。
【0081】
第1の電極E1と第2の電極E2は、第1の貫通孔101aの側面に露出することが好ましい。第3の電極E3と第4の電極E4は、第1の貫通孔101aの側面に露出することが好ましい。第5の電極E5と第6の電極E6は、第2の貫通孔101bの側面に露出することが好ましい。第7の電極E7と第8の電極E8は、第2の貫通孔101bの側面に露出することが好ましい。
【0082】
第1の貫通孔101aの側面及び第2の貫通孔101bの側面の絶縁層の面積が減少することにより、第1の貫通孔101aの側面及び第2の貫通孔101bの側面のチャージアップが抑制される。したがって、BAA100の電子ビームの偏向精度が向上する。
【0083】
以上、第1の実施形態の半導体装置によれば、電極を上下の2層の半導体層で挟み込むことにより、電界の遮蔽効果が向上する。したがって、電子ビームの偏向精度が向上する。また、上下の2層の半導体層にトランジスタを形成することが可能となり、貫通孔の配置ピッチの縮小が容易になる。
【0084】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、第1の電極と第3の電極とが電気的に接続されない点で、第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については記述を一部省略する。
【0085】
第2の実施形態の半導体装置は、第1の実施形態の半導体装置と同様、マルチビーム方式の電子ビーム描画装置に用いられるBAA200である。
【0086】
図10は、第2の実施形態の半導体装置の一部の拡大模式断面図である。図10は、2個の貫通孔101の断面を含む。
【0087】
BAA200は、第1の半導体層10、第2の半導体層20、第1の多層配線層30、第2の多層配線層40、第1のトランジスタTR1、第2のトランジスタTR2を備える。BAA100は、第1の電極E1、第2の電極E2,第3の電極E3、第4の電極E4,第5の電極E5、第6の電極E6、第7の電極E7、第8の電極E8を備える。また、BAA100は、第1の貫通孔101a(第1の孔)、第2の貫通孔101b(第2の孔)を有する。
【0088】
第1の半導体層10は、p型の第1の基板領域11、n型の第1のソース・ドレイン領域12(第1の不純物領域)、p型の第1のコンタクト領域13を有する。第2の半導体層20は、p型の第2の基板領域21、n型の第2のソース・ドレイン領域22(第2の不純物領域)、p型の第2のコンタクト領域23を有する。
【0089】
第1の多層配線層30は、第1の導電層31、第1のゲート電極32、第1のコンタクトプラグ33、第1の層間絶縁層35を有する。第2の多層配線層40は、第2の導電層41、第2のゲート電極42、第2のコンタクトプラグ43、第2の層間絶縁層45を有する。
【0090】
BAA200では、第1の導電層31と第2の導電層41とは電気的に接続されない。
【0091】
第2の電極E2と第4の電極E4は、電気的に接続されない。第2の電極E2は、n型の第1のソース・ドレイン領域12に電気的に接続される。第4の電極E4は、n型の第2のソース・ドレイン領域22に電気的に接続される。第2の電極E2の電位と第4の電極E4の電位は、独立に制御される。
【0092】
第6の電極E6と第8の電極E8は、電気的に接続されない。第6の電極E6は、n型の第1のソース・ドレイン領域12に電気的に接続される。第8の電極E8は、n型の第2のソース・ドレイン領域22に電気的に接続される。第6の電極E6の電位と第8の電極E8の電位は、独立に制御される。
【0093】
以上、第2の実施形態の半導体装置によれば、第1の実施形態と同様、電極を上下の2層の半導体層で挟み込むことにより、電界の遮蔽効果が向上する。
【0094】
第1及び第2の実施形態では、第1の半導体層10及び第2の半導体層20が単結晶シリコンである場合を例に説明したが、第1の半導体層10及び第2の半導体層20は単結晶炭化珪素など、その他の半導体材料であっても構わない。
【0095】
第1及び第2の実施形態では、本発明のBAAを、マルチビーム方式の電子ビーム描画装置に用いる場合を例に説明したが、本発明のBAAを、例えば、マルチビーム方式の電子ビーム検査装置など、その他のマルチビーム方式の電子ビーム露光装置に用いることが可能である。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
10 第1の半導体層
12 第1のソース・ドレイン領域(第1の不純物領域)
20 第2の半導体層
22 第2のソース・ドレイン領域(第2の不純物領域)
30 第1の多層配線層
31 第1の導電層
32 第1のゲート電極
40 第2の多層配線層
41 第2の導電層
42 第2のゲート電極
100 BAA(半導体装置)
101a 第1の貫通孔(第1の孔)
101b 第2の貫通孔(第2の孔)
200 BAA(半導体装置)
E1 第1の電極
E2 第2の電極
E3 第3の電極
E4 第4の電極
E5 第5の電極
E6 第6の電極
E7 第7の電極
E8 第8の電極
TR1 第1のトランジスタ
TR2 第2のトランジスタ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10