特許第6965234号(P6965234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965234
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】情報表示システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/52 20060101AFI20211028BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20211028BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20211028BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20211028BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   B60Q1/52
   B60R11/02 C
   B60R11/02 A
   G08G1/09 H
   G08G1/16 A
   H01Q1/22 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-242217(P2018-242217)
(22)【出願日】2018年12月26日
(65)【公開番号】特開2020-104535(P2020-104535A)
(43)【公開日】2020年7月9日
【審査請求日】2020年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 直嗣
(72)【発明者】
【氏名】石川 達也
(72)【発明者】
【氏名】岩城 孝広
【審査官】 山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0005860(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0258895(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0134984(US,A1)
【文献】 国際公開第2017/103920(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/180900(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0046920(KR,A)
【文献】 特開2007−320339(JP,A)
【文献】 特開2017−007417(JP,A)
【文献】 実開平08−000037(JP,U)
【文献】 特表2007−531904(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0194082(US,A1)
【文献】 米国特許第05825281(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/52
B60R 11/02
G08G 1/09
G08G 1/16
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部から外部情報を受信するアンテナと、
前記車両の外部に対して表示を行う表示器と、
前記アンテナが受信した前記外部情報に基づいて、前記表示器を制御し、当該外部情報と連携した表示を行わせる外部向け表示処理を実行可能である処理部と、
前記アンテナ、前記表示器、及び、前記処理部が組み付けられてユニット化し前記車両に据え付けられる筐体とを備え、
前記アンテナ、前記表示器、前記処理部は、前記車両を統括的に制御する車両制御システムから独立したシステムを構成し、
前記アンテナが受信する前記外部情報は、前記車両の車両前後方向の前方を走行する先行車両から受信する警告情報を含み、
前記警告情報は、後続車両に対して警告すべき事象として、前記先行車両の運転者の体調不良の発生、又は、災害の発生を表す情報であり、
前記処理部は、前記外部向け表示処理では、前記アンテナが受信した前記警告情報に基づいて、前記表示器を制御し、当該警告情報と連携した警告表示を行わせ、前記警告情報が表す事象の種類に応じて当該警告表示の表示態様を変更することを特徴とする、
情報表示システム。
【請求項2】
前記アンテナ、前記表示器、前記処理部、及び、前記筐体は、前記車両の車両前後方向の後部に設けられ、
前記処理部は、前記外部向け表示処理では、前記表示器を制御し、前記車両の前記車両前後方向の後方に対して表示を行わせる、
請求項1に記載の情報表示システム。
【請求項3】
前記アンテナ、前記表示器、前記処理部、及び、前記筐体は、前記車両の車両前後方向の後部に設けられるリアスポイラーに内蔵される、
請求項1又は請求項に記載の情報表示システム。
【請求項4】
前記筐体は、前記車両の車両前後方向の後部に設けられるリアスポイラーによって兼用される、
請求項1又は請求項に記載の情報表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される従来の情報表示システムとして、例えば、特許文献1には、外部に光を照射する光源が信号透過性の高いハウジングに収容され、このハウジングが車両ルーフの上面前部に取り付けられた車両用灯体が開示されている。この車両用灯体は、ハウジングが車両ルーフの上面前部に取り付けられるとともに、ハウジング内に通信手段の信号受信部と信号発信部の少なくとも一方が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−320339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の車両用灯体は、例えば、車両の外部に対するより有用な情報の提供の点で更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、車両の外部に対して有用な情報を提供することがきる情報表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る情報表示システムは、車両の外部から外部情報を受信するアンテナと、前記車両の外部に対して表示を行う表示器と、前記アンテナが受信した前記外部情報に基づいて、前記表示器を制御し、当該外部情報と連携した表示を行わせる外部向け表示処理を実行可能である処理部と、前記アンテナ、前記表示器、及び、前記処理部が組み付けられてユニット化し前記車両に据え付けられる筐体とを備え、前記アンテナ、前記表示器、前記処理部は、前記車両を統括的に制御する車両制御システムから独立したシステムを構成し、前記アンテナが受信する前記外部情報は、前記車両の車両前後方向の前方を走行する先行車両から受信する警告情報を含み、前記警告情報は、後続車両に対して警告すべき事象として、前記先行車両の運転者の体調不良の発生、又は、災害の発生を表す情報であり、前記処理部は、前記外部向け表示処理では、前記アンテナが受信した前記警告情報に基づいて、前記表示器を制御し、当該警告情報と連携した警告表示を行わせ、前記警告情報が表す事象の種類に応じて当該警告表示の表示態様を変更することを特徴とする。
【0007】
また、上記情報表示システムでは、前記アンテナが受信する前記外部情報は、前記車両の車両前後方向の前方を走行する先行車両から受信する警告情報を含み、前記処理部は、前記外部向け表示処理では、前記アンテナが受信した前記警告情報に基づいて、前記表示器を制御し、当該警告情報と連携した警告表示を行わせるものとすることができる。
【0008】
また、上記情報表示システムでは、前記アンテナ、前記表示器、前記処理部、及び、前記筐体は、前記車両の車両前後方向の後部に設けられ、前記処理部は、前記外部向け表示処理では、前記表示器を制御し、前記車両の前記車両前後方向の後方に対して表示を行わせるものとすることができる。
【0009】
また、上記情報表示システムでは、前記アンテナ、前記表示器、前記処理部、及び、前記筐体は、前記車両の車両前後方向の後部に設けられるリアスポイラーに内蔵されるものとすることができる。
【0010】
また、上記情報表示システムでは、前記筐体は、前記車両の車両前後方向の後部に設けられるリアスポイラーによって兼用されるものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る情報表示システムは、車両に据え付けられた筐体を介してユニット化されたアンテナ、表示器、及び、処理部が連携して外部向け表示処理を実行することができる。ここで、外部向け表示処理とは、処理部によって実行される処理であり、アンテナが受信した外部情報に基づいて表示器を制御し当該外部情報と連携した表示を行わせる処理である。この結果、情報表示システムは、車両の外部に対して有用な情報を提供することがきる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る情報表示システムが搭載される車両の概略構成を表す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る情報表示システムの適用例を表す模式図である。
図3図3は、実施形態に係る情報表示システムの概略構成を表すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る情報表示システムの処理部の概略構成を表すブロック図である。
図5図5は、実施形態に係る情報表示システムにおける制御の一例を表すフローチャート図である。
図6図6は、変形例に係る情報表示システムの概略構成を表すブロック図である。
図7図7は、変形例に係る情報表示システムの概略構成を表すブロック図である。
図8図8は、変形例に係る情報表示システムの適用例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
[実施形態]
本実施形態に係る情報表示システム1は、図1図2に示すように、車両Vに搭載される車載システムである。本実施形態の情報表示システム1は、車両Vの外部の外部通信対象TA1から外部情報を受信し情報提供対象TA2に対して当該外部情報と連携した情報を提示するための構造的なモジュールを構成する。情報表示システム1は、図3に示す構成要素を車両Vに搭載することで実現される。以下、各図を参照して情報表示システム1の構成について詳細に説明する。
【0015】
なお、以下の説明では、車両Vの「車両前後方向X」とは、典型的には、車両Vの全長方向に相当し、さらに言えば、車両Vの前後直進方向に沿った方向に相当する。車両Vの「車両幅方向Y」とは、典型的には、車両Vの全幅方向に相当し、車両Vの車両左右方向に相当する。車両Vの「車両高さ方向Z」とは、典型的には、車両Vの車高方向に相当する。第1方向である車両前後方向Xと第2方向である車両幅方向Yと第3方向である車両高さ方向Zとは、相互に直交し、車両Vが水平面に位置する状態で、車両前後方向X、車両幅方向Yが水平方向に沿い、車両高さ方向Zが鉛直方向に沿う。また、以下の説明では、車両前後方向Xにおいて、車両Vが前進する側を「前方」、車両Vが後進する側を「後方」という場合がある。また、車両Vにおいて、車両前後方向Xの前方側の部分を「車両前部VF」、車両V車両前後方向Xの後方側の部分を「車両後部VR」という場合がある。また、車両高さ方向Zにおいて、鉛直方向上側を「上方」、鉛直方向下側を「下方」という場合がある。以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。
【0016】
また、本実施形態の外部通信対象TA1、及び、情報提供対象TA2は、典型的には、当該情報表示システム1が搭載された車両(自車両)V以外の他の車両(他車両)である。以下の説明では、一例として、外部通信対象TA1は、車両Vの車両前後方向Xの前方を走行する先行車両であり、情報提供対象TA2は、車両Vの車両前後方向Xの後方を走行する後続車両であるものとして説明する。
【0017】
また、情報表示システム1が搭載される車両Vは、電気車両(EV(Electric Vehicle))、ハイブリッド車両(HEV(Hybrid Electric Vehicle))、プラグインハイブリッド車両(PHEV(Plug−in Hybrid Electric Vehicle))、ガソリン車両、ディーゼル車両など、駆動源としてモータ又はエンジンを用いるいずれの車両であってもよい。また、当該車両Vの運転は、運転者による手動運転、半自動運転、完全自動運転等、いずれであってもよい。また、当該車両Vは、いわゆる個人が所有する自家用車、レンタカー、シェアリングカー、バス、タクシー、ライドシェアカーのいずれであってもよい。
【0018】
具体的には、情報表示システム1は、図3に示すように、アンテナ2と、表示器3と、処理部4と、筐体5とを備える。アンテナ2、表示器3、及び、処理部4は、筐体5に組み付けられユニット化されることで通信/表示モジュールを構成する。
【0019】
本実施形態のアンテナ2、表示器3、処理部4、及び、筐体5は、車両後部VR(図1参照)に設けられる。より詳細には、本実施形態のアンテナ2、表示器3、処理部4、及び、筐体5は、車両後部VRに設けられるリアスポイラーRS(図1参照)に内蔵される。ここで、リアスポイラーRSとは、車両Vの揚力を減らすためのいわゆるエアロパーツであり、車両VのボデーBOにおいて外部に露出して設けられる。リアスポイラーRSは、アンテナ2による電磁波の送受信を阻害しない樹脂材料等によって形成される。リアスポイラーRSは、車両Vにおいて電磁波の送受信を行い易い部位、例えば、ボデーBOの一部を構成する屋根部材RFの車両前後方向Xの後方端部(図1参照)や車両後部VRのトランク上部等に設けられる。
【0020】
アンテナ2は、車両Vの外部の外部通信対象TA1との間で電磁波を送受信することで外部通信対象TA1と通信を行い各種の情報を送受信するものである。アンテナ2は、様々な形式のものとすることができる。アンテナ2は、電荷が対称に分布する平衡アンテナ、電荷が非対称に分布する不平衡アンテナ等のいずれの形式であってもよい。アンテナ2は、例えば、平面アンテナ、マイクロストリップアンテナ(パッチアンテナ)、逆Fアンテナ、ダイポールアンテナ等のいずれの形式であってもよい。ここでは、アンテナ2は、リアスポイラーRS等の狭小スペースでも内蔵し易いものとして、平面アンテナを用いることが好ましい。
【0021】
アンテナ2によって送受信される電磁波としては、例えば、ラジオ(AM、FM等)、DTV(2K、4K、8K等)、TEL(PCS、CDMA、LTE、WiMAX(登録商標)、4G、5G等)、衛星通信(GNSS:Global Navigation Satellite Systems(GPS、GLONASS、Galileo等))、V2I(Vehicle to Infrastructure)、V2X(Vehicle to everything)、ETC/DSRC、VICS(登録商標)、無線LAN、ミリ波通信、Wi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等で用いられる各周波数帯域の電磁波を含んでいてもよい。本実施形態のアンテナ2は、典型的には、外部通信対象TA1である先行車両との間で電磁波を介して情報を送受信するV2X用のアンテナを含んで構成される。
【0022】
本実施形態のアンテナ2は、外部通信対象TA1から外部情報を受信する。外部情報とは、外部通信対象TA1から送信されアンテナ2によって受信される情報であり、後述する外部向け表示処理に用いられる情報である。外部情報は、例えば、他車両状態情報、周辺状況情報等を含んでいてもよい。他車両状態情報は、外部通信対象TA1である他車両(ここでは、先行車両)の状態を表す情報である。周辺状況情報は、外部通信対象TA1である他車両(ここでは、先行車両)の周辺状況を表す情報である。他車両状態情報は、例えば、他車両の車速情報、加速度(車両前後方向加速度、車両幅方向加速度、車両ロール方向加速度等)情報、操舵角情報、アクセルペダルの操作量(アクセル踏み込み量)情報、ブレーキペダルの操作量(ブレーキ踏み込み量)情報、シフトポジション情報現在位置情報(GPS情報)、各部の電流値/電圧値情報、蓄電装置の蓄電量情報、方向指示器(ウインカ)情報等を含んでいてもよい。他車両状態情報は、さらに、他車両の乗員の心拍数、呼吸数、脈拍数、血圧、体温、脳波、筋電流等のバイタルサイン、指紋情報、静脈情報、顔貌情報、声紋情報、虹彩情報等の個人を識別可能な個体識別情報、血糖値情報、血中アルコール濃度、心電情報、覚醒度情報、顔向き・視線情報、瞼開閉度情報等の生体情報を含んでいてもよい。周辺状況情報は、例えば、他車両の周辺環境や他車両の周辺の人物、車両、障害物等の外部物体を撮像した周辺画像情報、外部物体の有無や当該外部物体との相対距離、相対速度、TTC(Time−To−Collision:接触余裕時間)等を表す外部物体情報、他車両が走行する車線の白線情報、他車両が走行する走行路の交通情報、他車両Vの現在位置における天候/降雨の有無/日照の有無/照度/気温等の環境情報等を含んでいてもよい。
【0023】
本実施形態のアンテナ2が受信する外部情報は、外部通信対象TA1である先行車両から受信する警告情報を含む。当該警告情報は、典型的には、情報提供対象TA2である後続車両に対して警告すべき事象の発生を表す情報である。警告情報は、例えば、後続車両に対して警告すべき事象として、外部通信対象TA1である先行車両の運転者の体調不良の発生、外部通信対象TA1である先行車両の前方の事故/渋滞の発生、地震/火災/竜巻/洪水等の災害の発生等を表す情報である。
【0024】
表示器3は、車両Vの外部に対して情報の表示を行うための情報表示機器である。表示器3は、例えば、バルブ電球やLED(Light Emitting Diode)等の発光素子によって構成される表示灯、複数の発光素子を配列したインジケータ/文字表示器(サインボード)、画像を表示する液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の画像表示装置等によって構成される。本実施形態の表示器3は、一例として、いわゆるハイマウントストップランプ(HMSL:High Mount Stop Lamp)を兼用して構成されるものとして説明する。ハイマウントストップランプは、車両Vの車両後部VRに設けられる表示灯である(図1参照)。ハイマウントストップランプは、典型的には、車両Vの制動動作時に点灯する表示灯である。表示器3として兼用されるハイマウントストップランプは、上述したように車両後部VRのリアスポイラーRSに設けられ、車両Vの車両前後方向Xの後方の情報提供対象TA2である後続車両に対して表示を行う。表示器3として兼用されるハイマウントストップランプは、典型的には、後述する外部向け表示処理においては、制動動作時の表示態様(点灯態様)とは区別して異なる表示態様で点灯する。
【0025】
処理部4は、情報表示システム1の各部を統括的に制御するものである。処理部4は、車両Vの外部の外部通信対象TA1から外部情報を受信し情報提供対象TA2に対して当該外部情報と連携した情報を提示するための種々の演算処理を実行する。本実施形態の処理部4は、アンテナ2が受信した外部情報に基づいて、後述する外部向け表示処理を実行する機能を有している。処理部4は、CPU(Central Processing Unit)等の中央演算処理装置、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。処理部4は、アンテナ2、表示器3が電気的に接続される。処理部4は、各種の電気信号を各部との間で相互に授受することができる。
【0026】
具体的には、処理部4は、図4に例示するように、機能概念的に、記憶部4a、送受信処理部4b、及び、表示処理部4cを含んで構成される。
【0027】
記憶部4aは、種々の情報を記憶する部分である。記憶部4aは、処理部4での各種処理に必要な条件や情報、処理部4で実行する各種プログラムやアプリケーション、制御データ等が格納されている。記憶部4aは、アンテナ2によって受信された外部情報を一時的に記憶することもできる。また、記憶部4aは、後述する外部向け表示処理における表示器3の表示内容を表す表示情報も記憶している。記憶部4aは、送受信処理部4b、表示処理部4c等によってこれらの情報が必要に応じて読み出される。
【0028】
送受信処理部4b、及び、表示処理部4cは、記憶部4aに記憶されている各種プログラムを実行し、当該プログラムが動作することにより各部に出力信号を出力し各種機能を実現するための種々の処理を実行する部分である。
【0029】
送受信処理部4bは、アンテナ2を制御し、アンテナ2を介した情報の送受信に係る処理を実行する。本実施形態の送受信処理部4bは、アンテナ2を介して外部通信対象TA1から外部情報を受信し記憶部4aに記憶する処理を実行する。
【0030】
表示処理部4cは、表示器3を制御し、表示器3による情報の表示に係る処理を実行する。本実施形態の表示処理部4cは、表示器3を制御し、外部向け表示処理を実行する。ここで、外部向け表示処理とは、アンテナ2が受信し記憶部4aに記憶された外部情報に基づいて表示器3を制御し表示器3に当該外部情報と連携した表示を行わせる処理である。表示処理部4cは、外部向け表示処理では、記憶部4aから、アンテナ2が受信した外部情報に対応する表示内容を表す表示情報を読み出し、当該読み出した表示情報を表示器3に表示させることで、表示器3に当該外部情報と連携した表示を行わせる。
【0031】
なお、表示処理部4cは、外部向け表示処理では、上述したように、表示器3として兼用されるハイマウントストップランプを制御し、車両Vの制動動作時の表示態様(点灯態様)とは異なる表示態様で表示を行う。表示器3として兼用されるハイマウントストップランプは、例えば、ハイマウントストップランプの点滅パターン、点滅周期、点灯色等を異ならせることで、その表示態様(点灯態様)を異ならせることができる。すなわち、表示処理部4cは、例えば、当該表示器3(ハイマウントストップランプ)の点滅パターン、点滅周期、点灯色等を異ならせることで、車両Vの制動動作時の表示態様と外部向け表示処理における表示態様とを異ならせることができる。
【0032】
より具体的には、本実施形態の表示処理部4cは、外部向け表示処理では、アンテナ2が受信した外部情報に含まれる警告情報に基づいて、表示器3を制御し、当該警告情報と連携した警告表示を行わせる。表示処理部4cは、当該外部向け表示処理では、表示器3を制御し、車両Vの車両前後方向Xの後方の情報提供対象TA2である後続車両に対して警告表示を行わせる。表示処理部4cは、外部向け表示処理では、警告情報が表す事象の種類(先行車両の運転者の体調不良、先行車両の前方の事故/渋滞、地震/火災/竜巻/洪水等の災害等)に応じて点滅パターン、点滅周期、点灯色等の表示態様(点灯態様)を変更することができる。表示処理部4cは、外部向け表示処理では、記憶部4aから警告情報に対応する表示内容を表す表示情報を読み出し、当該読み出した表示情報を表示器3に表示させることで、表示器3に当該警告情報と連携した表示を行わせる。
【0033】
筐体5は、アンテナ2、表示器3、及び、処理部4が組み付けられてユニット化し車両Vに据え付けられるものである。筐体5は、例えば、絶縁性を有する合成樹脂によって形成される。筐体5は、例えば、複数の部材が組み合わさって構成されてもよい。筐体5は、アンテナ2、表示器3、及び、処理部4が組み付けられ、情報表示システム1としてユニット化する。アンテナ2、表示器3、処理部4、及び、筐体5は、ユニット化された状態で、上述のように、リアスポイラーRS(図1参照)に内蔵される。アンテナ2、表示器3、処理部4、及び、筐体5は、リアスポイラーRSに内蔵された状態で、表示器3が外部に露出し車両前後方向Xの後方を向く位置関係で当該リアスポイラーRSに設けられる。
【0034】
上記のようにリアスポイラーRSに内蔵される情報表示システム1は、車両Vの電源から電力が供給され各部が駆動する。電力供給のための各構成要素間の接続方式は、電線等の配索材を介した有線による接続、非接触給電等の無線による接続のいずれであってもよい。
【0035】
一方、上記のように構成された情報表示システム1は、上述した外部向け表示処理については、基本的には、アンテナ2が受信した外部情報のみで完結することがきる。つまり、情報表示システム1は、車両V全体を統括的に制御する車両制御システムから独立した状態で車両制御システム側から各種情報を受け取らずに外部向け表示処理を実行することができる。さらに言えば、情報表示システム1は、アンテナ2が受信した外部情報を、他の制御装置等を介在させずに、ダイレクトに処理部4で処理し、表示器3に当該外部情報と連携した処理を行わせることができる。また、情報表示システム1は、アンテナ2が受信した外部情報を、当該情報表示システム1内のみで使用し、上記車両制御システム側には提供せず、外部向け表示処理以外の処理には使用させない構成とすることもできる。つまり、情報表示システム1は、電源以外は上記車両制御システムから独立して完結したシステムとして構成することができる。なお、情報表示システム1は、さらに、情報表示システム1自身で蓄電装置や発電装置(例えば、太陽光パネル等)等の電源を備えることで、電源も含め上記車両制御システムから独立して完結したシステムとして構成することもできる。
【0036】
次に、図5のフローチャート図を参照して情報表示システム1における制御の一例の概略を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、例えば、数msないし数十ms毎の制御周期(クロック単位)で繰り返し実行される。
【0037】
処理部4の送受信処理部4bは、アンテナ2によって外部情報を受信したか否かを判定する(ステップST1)。送受信処理部4bは、外部情報を受信していないと判定した場合(ステップST1:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0038】
処理部4の送受信処理部4bは、外部情報を受信したと判定した場合(ステップST1:Yes)、当該受信した外部情報に対して各種処理を施して記憶部4aに記憶する(ステップST2)。
【0039】
次に、処理部4の表示処理部4cは、ステップST2の処理で受信、処理した外部情報に基づいて、表示器3を制御し、当該外部情報と連携した表示を行わせる外部向け表示処理を実行し(ステップST3)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0040】
以上で説明した情報表示システム1は、車両Vに据え付けられた筐体5を介してユニット化されたアンテナ2、表示器3、及び、処理部4が連携して外部向け表示処理を実行することができる。ここで、外部向け表示処理とは、処理部4によって実行される処理であり、アンテナ2が受信した外部情報に基づいて表示器3を制御し当該外部情報と連携した表示を行わせる処理である。つまり、情報表示システム1は、当該情報表示システム1が搭載された車両Vが外部から得た外部情報を周囲に表示、提供することができる。この結果、情報表示システム1は、車両Vの外部に対して有用な情報を提供することがきる。これにより、情報表示システム1は、例えば、外部との通信システムを備えない他車両や通行人等に対しても、車両Vが得た外部情報に基づく有用な情報を適正に提供することができる。
【0041】
また、情報表示システム1は、アンテナ2、表示器3、及び、処理部4が筐体5によってユニット化されて車両Vに据え付けられるので、アンテナ2、表示器3、処理部4を近接して配置することができる。この結果、情報表示システム1は、アンテナ2、表示器3、処理部4の相互間を接続する配索材を極力省略することができる。そして、情報表示システム1は、アンテナ2が受信した外部情報を、他の制御装置等を介在させずに、ダイレクトに処理部4で処理し、表示器3に当該外部情報と連携した処理を行わせることができるので、例えば、動作遅延等を抑制することができる。また、情報表示システム1は、アンテナ2、表示器3、及び、処理部4が筐体5によってユニット化されて車両Vに据え付けられるので、車両Vへの組み付け性を向上することができ、例えば、完成車両に対して後付することも容易にすることができる。その上で、情報表示システム1は、上記のように車両Vの外部に対して有用な情報を提供することがきる。
【0042】
さらに、以上で説明した情報表示システム1は、処理部4による外部向け表示処理では、アンテナ2が外部通信対象TA1である先行車両から受信した外部情報に含まれる警告情報に基づいて表示器3を制御し当該警告情報と連携した警告表示を行わせる。この結果、情報表示システム1は、車両Vの外部に対して警告表示を行う警報システムとして機能することができる。これにより、情報表示システム1は、例えば、外部との通信システムを備えない他車両や通行人等に対しても、車両Vが外部通信対象TA1である先行車両から得た警告情報に基づいて、警告すべき事象の発生を報せることができる。
【0043】
また、以上で説明した情報表示システム1は、処理部4による外部向け表示処理では、表示器3を制御し、車両Vの車両前後方向Xの後方に対して表示を行わせる。この結果、情報表示システム1は、当該情報表示システム1を搭載した車両Vによって車両前後方向Xの前方側の視野が阻害され易い傾向にある後続車両等に対して、車両Vが得た外部情報に基づく有用な情報を提供することがきる。
【0044】
さらに、以上で説明した情報表示システム1は、アンテナ2、表示器3、処理部4、及び、筐体5がユニット化された状態で車両後部VRに設けられるリアスポイラーRSに内蔵される。この構成により、情報表示システム1は、車両Vにおいて、比較的に後付し易く、かつ、相対的に電磁波状況が良く、さらには、後続車両等から比較的に目視し易い位置に、アンテナ2、表示器3、処理部4、及び、筐体5を設けることができる。
【0045】
なお、上述した本発明の実施形態に係る情報表示システムは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0046】
以上の説明では、筐体5は、リアスポイラーRSに内蔵されるものとして説明したがこれに限らない。図6に示す変形例に係る情報表示システム1Aは、筐体5がリアスポイラーRSによって兼用されて構成される。この情報表示システム1Aは、筐体5として兼用されるリアスポイラーRSに直接的にアンテナ2、表示器3、及び、処理部4が組み付けられてユニット化され、車両Vの車両後部VRに据え付けられる。この場合であっても、情報表示システム1Aは、車両Vの外部に対して有用な情報を提供することがきる。そしてこの場合、情報表示システム1Aは、構成部品数を抑制することができるので、例えば、重量の増大や製造コストの増加を抑制することができる。
【0047】
以上の説明では、情報表示システム1は、電源以外は車両V全体を統括的に制御する車両制御システムから独立して完結したシステムとして構成することができるものとして説明したがこれに限らない。図7に示す変形例に係る情報表示システム1Bは、処理部4が車載ネットワーク等を介してECU(Electronic Control Unit)100にも電気的に接続されており、各種の電気信号を相互に授受可能に構成される。ECU100は、電子制御ユニットであり、車両V全体を統括的に制御する車両制御システムの一部を構成するものである。この場合、情報表示システム1Bは、上述した外部向け表示処理については、アンテナ2が受信した外部情報に加えて、ECU100から取得した情報も用いてもよい。つまり、情報表示システム1Bは、上記車両制御システムと連携してECU100から各種情報を受けとり外部向け表示処理を実行するようにしてもよい。またこの場合、情報表示システム1Bは、アンテナ2が受信した外部情報を、当該情報表示システム1内だけでなく、上記車両制御システム側にも提供し、ECU100において外部向け表示処理以外の処理にも使用させるようにしてもよい。この場合であっても、情報表示システム1Bは、車両Vの外部に対して有用な情報を提供することがきる。そしてさらにこの場合、情報表示システム1Bは、車両制御システム側のECU100とも連携して車両Vの外部に対してより有用な情報を提供することがきると共に、例えば、車両Vの乗員に対してもアンテナ2が受信した外部情報を提供することもできる。
【0048】
以上の説明では、情報表示システム1は、自車両である車両Vに搭載されるものとして説明したが、図8に示す変形例のように、車両V以外の他車両、ここでは、外部通信対象TA1である先行車両、情報提供対象TA2である後続車両等にも搭載されていてもよい。この場合、アンテナ2は、外部通信対象TA1から外部情報を受信するだけでなく、外部情報を含む各種情報を外部に送信するようにしてもよい。例えば、情報表示システム1は、外部通信対象TA1である先行車両から受信した外部情報に基づいて外部向け表示処理を実行するだけでなく、情報提供対象TA2である後続車両に対して外部情報を送信するようにしてもよい。つまりこの場合、外部通信対象TA1である先行車両から外部情報を受信し外部向け表示処理を実行した車両Vは、情報提供対象TA2である後続車両における外部通信対象TA1となる。そして、情報提供対象TA2であった車両V(後続車両)に搭載された情報表示システム1は、受信した外部情報に基づいて外部向け表示処理を実行してもよい。つまり、各情報表示システム1は、それぞれに情報表示システム1を搭載した複数の車両Vを連携させて外部情報を送受信すると共に各車両Vにおいてそれぞれ外部向け表示処理を実行するようにしてもよい。この場合、情報提供対象TA2に送信する外部情報は、自車両である車両Vに関する外部情報に加え、外部通信対象TA1である先行車両から受信した外部情報を含んでいてもよい。
【0049】
以上で説明した情報表示システム1は、さらに、車両Vの外部の画像を撮像する外部カメラ(例えばドライブレコーダ)を含んで構成されてもよい。この場合、外部カメラは、アンテナ2、表示器3、処理部4と共に筐体5によってユニット化され、アンテナ2は、外部カメラによって撮像された画像を表す画像情報を外部(例えば、外部サーバ等)に送信するようにしてもよい。
【0050】
以上の説明では、外部通信対象TA1、情報提供対象TA2は、情報表示システム1が搭載された車両(自車両)V以外の他の車両(他車両)であるものとして説明したがこれに限らない。外部通信対象TA1は、車両Vの外部に位置し情報表示システム1と通信可能なものであればよく、例えば、先行車両以外の他の車両(後続車両、並走車両等)、路上機、通信衛星、通信基地局、外部サーバ等であってもよい。情報提供対象TA2は、車両Vの外部に位置するものであればよく、例えば、後続車両以外の他の車両(先行車両、並走車両等)、通行人等であってもよい。この場合、情報表示システム1は、車両Vにおいて情報提供対象TA2が位置する傾向にある側に設けられていてもよく、例えば、車両後部VRのリアスポイラーRSではなく、車両前部VFのボンネットや車両側部のドアパネル等に設けられていてもよい。
【0051】
以上の説明では、アンテナ2が受信する外部情報は、外部通信対象TA1である先行車両から受信する警告情報を含むものとして説明したがこれに限らない。また、処理部4は、外部向け表示処理では、記憶部4aから警告情報に対応する表示内容を表す表示情報を読み出し、当該読み出した表示情報を表示器3に表示させることで、表示器3に当該警告情報と連携した表示を行わせるものとして説明したがこれに限らない。処理部4は、外部向け表示処理では、より高度な演算処理を行うようにしてもよい。例えば、処理部4は、外部向け表示処理では、アンテナ2が受信した外部情報に含まれる周辺画像情報等を解析し、表示器3に当該解析結果に応じた表示内容を表示させることで、表示器3に当該外部情報(周辺画像情報等)と連携した表示を行わせるようにしてもよい。また、別の例として、処理部4は、例えば、外部向け表示処理では、アンテナ2が外部通信対象TA1である後続車両から受信した外部情報に含まれる外部物体情報等を解析し、自車両である車両Vと後続車両との相対速度を算出する。そして、処理部4は、表示器3に当該相対速度に応じた表示内容を表示させることで、表示器3に当該外部情報(外部物体情報等)と連携した表示を行わせるようにしてもよい。この場合、表示器3は、上述のハイマウントストップランプのような表示灯に限らず、例えば、より詳細な情報を表示可能なインジケータ/文字表示器、画像表示装置等が用いられてもよい。
【0052】
本実施形態に係る情報表示システムは、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1、1A、1B 情報表示システム
2 アンテナ
3 表示器
4 処理部
4a 記憶部
4b 送受信処理部
4c 表示処理部
5 筐体
100 ECU
BO ボデー
RF 屋根部材
RS リアスポイラー
TA1 外部通信対象
TA2 情報提供対象
V 車両
VF 車両前部
VR 車両後部
X 車両前後方向
Y 車両幅方向
Z 車両高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8