(54)【発明の名称】神経変性疾患、例えばとりわけ、パーキンソン病およびハンチントン病の治療における、AAV/UPR−プラスウイルス、UPR−プラス融合たんぱく質、遺伝子治療、およびその使用
【文献】
Amparo Zuleta,Biochem Biophys Res Commun.,2012年,420(3),p.558-563
【文献】
Andrew E. Byrd ,Cells,2012年,1,p.738-753
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
組換えウイルスゲノムを含んでなり、そのゲノムは、融合たんぱく質をコードする目的のポリヌクレオチドと動作可能に結合する神経組織の特異的転写の調節領域を含んでなる発現カセットを含んでなり、ここで融合たんぱく質は、XBP1sおよびATF6fを含んでなる、アデノ随伴ベクター(AAV)。
前記AAVの血清型が、AAV2、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、および偽型AAVを含んでなる群から選択される、請求項1に記載のアデノ随伴ベクター。
転写調節領域が、とりわけ、CMV、PGK1、CAMKII、THY1、GAD34を含んでなる群から選択されたプロモーター領域を包含する、請求項1または2に記載のアデノ随伴ベクター。
とりわけ、Ha、Flag、Gfp、His、およびMyc群から選択された免疫応答部位に対する翻訳領域を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアデノ随伴ベクター。
目的の前記ポリヌクレオチドが、神経細胞に対して全身的に近接して作用するかまたは神経細胞で作用する、XBP1s−LGF−ATF6f−HA、XBP1s−LF−ATF6f−HA、XBP1s−L4H4−ATF6f−HA、ATF6f−LGF−XBP1s−HA、ATF6f−LF−XBP1s−HA、およびATF6f−L4H4−XBP1s−HAを含んでなる群の中で融合たんぱく質をコードする、請求項1〜6に記載のアデノ随伴ベクター。
神経細胞に対して全身的に近接して作用するかまたは神経細胞で作用する目的の前記ポリヌクレオチドが、神経変性に関与する細胞に特異的である、請求項8に記載のアデノ随伴ベクター。
神経細胞に対して全身的に近接して作用するかまたは神経細胞で作用する目的の前記ポリヌクレオチドが、パーキンソン病およびハンチントン病に関与する細胞に特異的である、請求項9に記載のアデノ随伴ベクター。
神経細胞に対して全身的に近接して作用するかまたは神経細胞で作用する目的の前記ポリヌクレオチドが、優先的には黒質のドーパミン作動性ニューロンにおいて、パーキンソン病に関与する細胞に特異的であり、またハンチントン病に関して、線条体の中型有棘神経細胞(MSN)と称されるGABA作動性の神経細胞にも特異的である、請求項10に記載のアデノ随伴ベクター。
アデノ随伴ウイルスのITRに隣接する発現カセットを含んでなり、前記発現カセットは、プロモーター、免疫応答に対する翻訳領域、および融合たんぱく質をコードする目的のポリヌクレオチドを含んでなり、ここで融合たんぱく質は、XBP1sおよびATF6fを含んでなる、ポリヌクレオチド。
前記プロモーター領域が、CMV、PGK1、CAMKII、THY1、およびGAD34からなる群から選択される、請求項16または17に記載のポリヌクレオチド。
免疫応答部位に対する翻訳領域が、Ha、Flag、Gfp、His、およびMycからなる群から選択される、請求項16〜18のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
前記発現カセットがまた、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)の転写後調節エレメントをさらに含んでなる、請求項16〜21のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
目的のポリヌクレオチドが、XBP1s−LGF−ATF6f−HA、XBP1s−LF−ATF6f−HA、XBP1s−L4H4−ATF6f−HA、ATF6f−LGF−XBP1s−HA、ATF6f−LF−XBP1s−HA、およびATF6f−L4H4−XBP1s−HAからなる群から選択される融合たんぱく質をコードし、融合たんぱく質は、神経細胞に対して全身的に近接して作用するかまたは神経細胞で作用するものである、請求項16〜22のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
目的の前記ポリヌクレオチドが、黒質のドーパミン作動性ニューロンに対して全身的に近接してまたは当該ニューロンで作用する、請求項16〜23のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
生物学的寄託の国際機関である、INIA、Instituto de Investigaciones Agropecuarias de Chileに第RGM2231号、第RGM2232号、第RGM2233号、第RGM2234号、第RGM2235号、および第RGM2236号からなる群から選択される寄託番号の下で寄託されたプラスミドであって、アデノ随伴ウイルスの配列、アデノ随伴ウイルスのITRと隣接する発現カセットを含んでなり、前記発現カセットは、プロモーター、免疫応答に対する翻訳領域、および目的のポリヌクレオチドを含んでなる、プラスミド。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
最近の研究は、ER(小胞体)におけるたんぱく質恒常性の慢性的変化が、とりわけ、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症などのたんぱく質フォールディング障害に関連する、事実上すべての神経変性疾患において観察される、横断的病理学的事象であることを示している。
【0011】
異なる状態では、小胞体の内腔におけるたんぱく質合成およびフォールディングプロセスが妨害され、ミスフォールドしたたんぱく質の異常な蓄積がもたらされる。小胞体ストレスと呼ばれるこの状態は、特定の突然変異体たんぱく質の発現によって、ならびにたんぱく質合成および成熟のプロセスにおける変化によって促進され得る。この現象に応じて、UPRと呼ばれる統合された細胞内シグナル伝達カスケードが活性化される。UPRの活性化は、たんぱく質恒常性に全体的な影響を及ぼす遺伝子発現において異なる変化をもたらし、例えば、以下に起因する異常凝集およびたんぱく質ミスフォールディングのレベルを低下させる:
(i)シャペロンおよびフォールダーゼ(foldase)の発現の増加;
(ii)たんぱく質品質管理の改善;および、
(iii)欠陥たんぱく質の大量除去。
【0012】
UPRの第1の目的は、たんぱく質平衡を回復させ、細胞生存率を維持することである。しかしながら、慢性的な小胞体ストレスは、いくつかの神経変性病態において観察される現象である、アポトーシスによる細胞死をもたらす。
【0013】
第1のUPR段階は、以下の3つの小胞体「ストレスセンサー」によって媒介される:
(1)PERK(小胞体キナーゼなどの二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ[PKR]);
(2)ATF6(活性化転写因子6);および、
(3)IRE1(イノシトール要求キナーゼ1)。
【0014】
これらのセンサーの各々は、特定の転写因子を制御することによって、小胞体内腔の折り畳み状態に関する情報を核に伝達するが、ここでXBP1(X−Box結合たんぱく質−1)が目立つ。XBP1は、その他のプロセスの中でも、たんぱく質の品質管理、フォールディングに関与する一連の遺伝子を制御する。これらの3つの適応経路は、たんぱく質恒常性および細胞生存を維持しながら、一斉に作用する。ATF6およびXBP1依存性応答とは異なり、PERKセンサーによって媒介されるシグナル伝達もまた、アポトーシス促進効果と関連している。これらの以前の定義は、これらの反応を測定するための新規の動物モデルの設計に加えて、神経変性疾患の治療におけるUPRの影響を定義するためにこのプロジェクトの開発に協力してきた。
【0015】
以前の証拠によると、XBP1機能の増加は、3つの神経変性疾患:ハンチントン病、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症の動物モデルにおける神経変性プロセスを遅らせるということが記載されている。一方で、パーキンソン病の前臨床モデルにおいて、ATF6転写因子欠損が神経細胞死に対する抵抗性の喪失を引き起こすこともまた決定されている。これらの前例は、有毒なたんぱく質凝集体の形成による神経変性過程における、これらの転写因子の重要性を示している。したがって、UPRplus(商標)は、XBP1、ATF6、およびリンカーペプチドのようなUPRの2つの活性成分の融合に基づく。
【0016】
現在、UPRplusが開発され、UPRに関連する遺伝子群(クラスター)の特異的転写活性が示されている。UPRplusは融合たんぱく質であり、潜在的にニューロン中の有毒なたんぱく質凝集物の負荷を軽減するプロセスに関与することができる。
【0017】
本発明の第1の態様は、中枢神経系におけるUPRplusのニューロン過剰発現を誘発するウイルスを用いた、哺乳類、好ましくはヒトにおける認知プロセスおよび運動プロセスにおける神経変性疾患の治療方法に関する。
【0018】
本発明の第2の態様は、認知プロセスおよび運動プロセスにおける神経変性疾患を治療する方法を提供する。本方法は、患者または対象の血液脳関門を過ぎて脳内にウイルスを導入する、静脈内、および/または腹腔内、および/または頭蓋内、および/または髄内、および/または鼻腔内、および/または神経内、および/またはあらゆる経路を包含する。ウイルスは、個体あたり1×10
6〜1×10
30ウイルス単位の用量範囲でUPRplusのニューロン過剰発現を誘導する。
【0019】
本発明の第3の態様は、神経変性疾患の治療におけるその使用のための、静脈内、および/または腹腔内、および/または頭蓋内、および/または髄内、および/または鼻腔内、および/または神経内医薬組成物、および/または血液脳関門を通過し、上述で記載されたものと同じ投与量範囲を有し、脳へのUPRplusのニューロン過剰発現を誘導するウイルスを伝導するあらゆる形態と、薬学的に許容可能なビヒクルとの形態である。
【0020】
本発明の第4の態様は、神経変性疾患の認知および運動能力の治療に有用な薬物を調製するために使用できるため、UPRplusおよびそのたんぱく質由来化合物のニューロン過剰発現を誘導するウイルスの使用である。
【0021】
本発明の第5の態様は、バクテリア大腸菌に含有される、表Iに記載のヌクレオチド配列またはその変種のいずれかを有するウイルスの配列およびインサートを伴うアデノ随伴ウイルス(AAV)であり、哺乳類、好ましくはヒトにおいて、UPRplusの神経転写因子の代わりに、これをコードするかまたは過剰発現する、中枢神経系または断片のあらゆる変異体において、国際生物学寄託機関である、Instituto de Investigaciones Agropecuarias de Chile(チリ農業研究所、INIA)に寄託番号第RGM2235号として寄託された、XBP1s−LFG−ATF6f(UPR−プラス5)神経転写因子が過剰発現しているプラスミドで翻訳される。
【0022】
本発明の第6の態様は、バクテリア大腸菌に含有される、表IIに記載のヌクレオチド配列またはその変種のいずれかを有するウイルスの配列およびインサートを伴うアデノ随伴ウイルス(AAV)であり、国際生物学寄託機関である、Instituto de Investigaciones Agropecuarias de Chile(INIA)に寄託番号第RGM2234号として寄託されたプラスミドで形質転換され、ここで、哺乳類、好ましくはヒトにおいて、XBP1s−LF−ATF6f(UPR−プラス4)神経転写因子またはUPRplusの神経転写因子の代わりに、この代替物をコードするかまたは過剰発現する断片のあらゆる変種が、好ましくは中枢神経系において、過剰発現する。
【0023】
本発明の第7の態様は、バクテリア大腸菌に含有される、表IIIに記載のヌクレオチド配列またはその変異体のいずれかを有するウイルスの配列およびインサートを伴うアデノ随伴ウイルス(AAV)であり、国際生物学寄託機関である、Instituto de Investigaciones Agropecuarias de Chile(INIA)に寄託番号第RGM2236号として寄託されたプラスミドで形質転換されており、哺乳類、好ましくはヒトにおいて、XBP1s−L4H4−ATF6f(UPR−プラス6)神経転写因子または、UPRplusの神経転写因子の代わりにこの代替物をコードするかまたは過剰発現する断片のあらゆる変異体が、好ましくは中枢神経系で、過剰発現する。
【0024】
本発明の第8の態様は、バクテリア大腸菌に含有される、表IVに記載のヌクレオチド配列またはその変異体のいずれかを有するウイルスの配列およびインサートを伴うアデノ随伴ウイルス(AAV)であり、国際生物学寄託機関である、Instituto de Investigaciones Agropecuarias de Chile(INIA)に寄託番号第RGM2232号として寄託されたプラスミドで形質転換されており、哺乳類、好ましくはヒトにおいて、、ATF6f−LFG−XBP1s(UPR−プラス2)神経転写因子、またはUPRplusの神経転写因子の代わりに、この代替物をコードするかまたは過剰発現する断片のあらゆる変異体が、好ましくは中枢神経系で、過剰発現する。
【0025】
本発明の第9の態様は、バクテリア大腸菌に含有される、表Vに記載のヌクレオチド配列またはその変異体のいずれかを有するウイルスの配列およびインサートを伴うアデノ随伴ウイルス(AAV)であり、国際生物学寄託機関である、Instituto de Investigaciones Agropecuarias de Chile(INIA)に寄託番号第RGM2233号として寄託されたプラスミドで形質転換されており、哺乳類、好ましくはヒトにおいて、、ATF6f−L4H4−XBP1s(UPR−プラス3)神経転写因子、またはUPRplusの神経転写因子の代わりに、この代替物をコードするかまたは過剰発現する断片のあらゆる変異体が、好ましくは中枢神経系で、過剰発現する。
【0026】
本発明の第10の態様は、バクテリア大腸菌に含有される、表VIに記載のヌクレオチド配列またはその変異体のいずれかを有するウイルスの配列およびインサートを伴うアデノ随伴ウイルス(AAV)であり、国際生物学寄託機関である、Instituto de Investigaciones Agropecuarias de Chile(INIA)に寄託番号第RGM2231号として寄託されたプラスミドで形質転換されており、哺乳類、好ましくはヒトにおいて、、ATF6f−LF−XBP1s(UPR−プラス1)神経転写因子、またはUPRplusの神経転写因子の代わりに、この代替物をコードするかまたは過剰発現する断片のあらゆる変異体が、好ましくは中枢神経系で、過剰発現する。
【0027】
微生物寄託
プラスミドpAAV_ATF6f−LFG−XBP1s−HAは、寄託番号第RGM2232号として、国際生物寄託機関である、Instituto de Investigaciones Agropecuarias de Chile(INIA)に、2015年10月7日に寄託された。
【0028】
プラスミドpAAV_ATF6f−LF−XBP1s−HAは、寄託番号第RGM2231号として、国際生物寄託機関である、Instituto de Investigaciones Agropecuarias de Chile(INIA)に、2015年10月7日に寄託された。
【0029】
プラスミドpAAV_ATF6f−L4H4−XBP1s−HAは、寄託番号第RGM2233号として、国際生物寄託機関である、Instituto de Investigaciones Agropecuarias de Chile(INIA)に、2015年10月7日に寄託された。
【0030】
プラスミドpAAV_XBP1s−LFG−ATF6f−HAは、寄託番号第RGM2235号として、国際生物寄託機関である、Instituto de Investigaciones Agropecuarias de Chile(INIA)に、2015年10月7日に寄託された。
【0031】
プラスミドpAAV_XBP1s−LF−ATF6f−HAは、寄託番号第RGM2234号として、国際生物寄託機関である、Instituto de Investigaciones Agropecuarias de Chile(INIA)に、2015年10月7日に寄託された。
【0032】
プラスミドpAAV_XBP1s−L4H4−ATF6f−HAは、寄託番号第RGM2236号として、国際生物寄託機関である、Instituto de Investigaciones Agropecuarias de Chile(INIA)に、2015年10月7日に寄託された。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の詳細な説明
本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、複合体、材料、製造技術、使用、および適用に限定されず、これらは変更してもよいことに留意されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の表現を説明するだけの目的のために使用され、本発明の見方および可能性を制限することを意図するものではないことも、理解されるべきである。
【0034】
特許請求の範囲および本文を通して表されるような単数形の使用および方法は、明確に単数形であること示す文脈でない限り、複数形を排除しないことに留意されたい。したがって、例えば、「使用または方法」への言及は、1つ以上の使用または方法への言及であり、主題(技術)の知識がある者に周知である均等物が包含される。同様に、別の例として、「1つのステップ」、「1つのステージ」、または「1つのモード」への言及は、1つ以上のステップ、ステージ、またはモードへの言及であり、暗示的および/または結果的に、サブステップ、サブステージ、またはサブモードを包含し得る。
【0035】
すべての接続詞は、可能な限り、最小限に制限的、かつ最大限に包括的に理解されるべきである。したがって、例えば、接続詞「または(or)」は、その正統的な論理的意味で理解されるべきであり、文脈または本文が明白にこれを必要とするかまたは示さない限り、「または除く」として理解されるべきではない。本明細書に記載の構造、材料、および/または要素は、無限かつ網羅的な列挙を避けるための、機能的等価物への参照として理解されるべきである。
【0036】
近似または概念化を示すために使用される表現は、文脈が異なる解釈を必要としない限り、本明細書で述べるように理解されるべきである。
【0037】
本明細書で使用されるすべての名称、ならびに技術的および/または科学的用語は、特に明確な断りのない限り、これらの事項において資格を有する共通の人間によって与えられた、共通の意味を有する。
【0038】
方法、技術、要素、化合物、および組成物を記載するが、記載されたこれらと同様および/または等価である方法、技術、化合物、および組成物が、実際におよび/または本発明のための試験において、使用されるか、または好ましくともよい。
【0039】
全ての特許およびその他の刊行物、例えば、本発明に関連して有用であり得るそのような刊行物に記載されている方法論は、説明および/または通知のために相互参照されている。
【0040】
これらの刊行物は、本特許出願の登録日に先立って、事前の特許情報のためにのみ包含される。
【0041】
この点に関して、著者および/または発明者が権利を有しないか、もしくはそのような刊行物がそれ以前の刊行物に基づき日付を記入されているか、またはその他のあらゆる理由によって、承認または受諾、拒絶または除外と解釈されることがあってはならない。
【0042】
本発明は、血清型AAV2、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV10、AAV11、および偽型AAVに基づき、ならびに中枢神経系への遺伝子導入を効率的に媒介することができるアデノ随伴ウイルスに由来するベクターを記載する。
【0043】
これらのベクターの全身投与はまた、脳および脊髄の両方への効率的な遺伝子供給をもたらす。本発明は、UPRplus転写因子プロモーターの近位領域を有するAAV2ベクターが、脳および脊髄における因子のクラスターにおいて非特異的応答の生成を可能にすることを主張する。特に、異種遺伝子XBP1sおよびATF6fがCMVプロモーターの制御下にある一連の発現カセットを含んでなる、AAV2ベクターの局所投与は、神経変性媒介性疾患に罹患している個体における運動および認知能力を改善する。(
図16および17、ならびに
図17)。
【0044】
I.一般的な用語および表現の定義
本明細書で使用される用語「アデノ随伴ウイルス」、「AAVウイルス」、「AAVビリオン」、「AAVウイルス粒子」、および「AAV粒子」は、互換性がある。これらは、少なくとも1つのAAVカプシドたんぱく質(好ましくは、特定のAAV血清型の全カプシドたんぱく質)、および1つのカプセル化AAVゲノムポリヌクレオチドからなるウイルス粒子を指す。粒子がAAVの末端逆位配列に隣接する異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳類細胞に送達される導入遺伝子のような天然型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含んでなる場合、典型的には「AAV粒子ベクター」または「AAVベクター」と呼ばれる。AAVとは、パルボウイルス科のディペンドウイルス属に属するウイルスを指す。AAVゲノムはおよそ4.7キロベース長であり、陽性または陰性として数えることができる一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)からなる。ゲノムは、DNA鎖の両端に末端逆位配列(ITR)、ならびに2つのオープンリーディングフレーム(ORF)であるREPおよびCAP(レプリカーゼおよびカプシド)を含んでなる。REPフレームワークは、AAVのライフサイクルに必要とされるREPたんぱく質(REP78、REP68、REP52、およびREP40)をコードする、4つの重なり合う遺伝子からなる。CAPフレームは、相互に作用して正二十面体対称カプシドを形成する、20個のカプシドたんぱく質配列:VP1、VP2、およびVP3の重なり合うヌクレオチドを含有する。
【0045】
本明細書で使用する用語「アデノ随伴IRTウイルス」または「AAV ITR」とは、アデノ随伴ウイルスゲノムのDNA鎖の両端に存在する反復逆位末端を指す。IRT配列は、AAVゲノムの効率的な増殖に必要である。これらの配列の別の特性は、フォークを形成する能力である。この特徴は、第2のDNA鎖の独立した一次合成を可能にする、自己複製に寄与する。IRTはまた、宿主細胞ゲノムへの天然AAV DNAの組み込み、および宿主細胞のレスキュー、ならびにAAV DNAの効果的なカプセル化と完全なアセンブリの生成の両方に必要であることが判明した。
【0046】
本発明で使用される用語「AAV2」とは、次のウェブサイトにあるGenBankアクセス番号第AF043303.1番で定義されるゲノム配列を有する、アデノ随伴ウイルスの血清型2を指す:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AF043303.1。
【0047】
現在、ベクターとして使用できる約11のヒトAAV血清型および約100の霊長類AAV血清型が報告されている。各血清型は、安定性、生産性、免疫原性、バイオアベイラビリティ、指向性などに関して、利点および欠点を示す。しかしながら、多くの研究室は、異なる血清型の利点を得るため、またはいくつかの血清型のいくつかのカバーたんぱく質の欠点を避けるために、擬似的な典型的ベクター、すなわち、異なる血清型のカバーたんぱく質を含有する改変AAVを開発している。例として、2つのウイルス血清型の特徴が混合されているAAV2/6ウイルスが、本発明において時には使用される。
【0048】
本発明で使用される用語「AAVベクター」はまた、AAV末端反復配列(ITR)に隣接する1つ以上の目的のポリヌクレオチド(または導入遺伝子)を含んでなるベクターを指す。そのようなAAVベクターは、それらがREPおよびCAP遺伝子(すなわち、REPおよびCAP AAVたんぱく質)をコードし、発現するベクターで形質移入された宿主細胞中に存在する場合、複製して感染性ウイルス粒子にパッケージングすることができ、宿主細胞は、E4orf6アデノウイルスリーディングフレーム由来のたんぱく質をコードし、発現するベクターで形質移入されている。AAVベクターがより大きなポリヌクレオチド(例えば、染色体、またはクローニングもしくは形質移入に使用されるプラスミドなどのその他のベクター)に組み込まれる場合、AAVベクターは典型的には「プロベクター(pro-vector)」と呼ばれる。プロベクターは、AAVパッケージング機能、およびE4orf6によって提供される必要な補助機能の存在下で、複製およびカプセル化によって「レスキュー」することができる。
【0049】
AAVベクターの血清型は、各血清型の指向性を与えられた導入遺伝子を発現する細胞型の特異性を提供する。
【0050】
本発明において使用される用語「UPRplus転写調節領域の特異的結合部位」とは、プロモーターとして働く(すなわち、選択された核酸配列の発現を調節し、プロモーターに作動的に結合する)核酸配列を指し、これは、ニューロンのような特定の組織細胞において選択された核酸配列の発現に影響を及ぼす。神経組織転写の調節エレメントの特異的結合部位は、構成的または誘導的であり得る。
【0051】
本発明で使用される用語「CAP遺伝子」または「AAV CAP遺伝子」とは、CAPたんぱく質をコードする遺伝子を指す。本明細書で使用する用語「CAPたんぱく質」とは、天然AAV(VP1、VP2、VP3)のCAPたんぱく質の少なくとも1つの機能活動の活性を有するポリペプチドを指す。VP1、VP2、およびVP3たんぱく質の機能活動の例として、カプシド形成を誘導する能力、単鎖DNA蓄積を促進する能力、カプシドへのAAV DNAのパッケージング(すなわち、カプセル化)を促進する能力、細胞受容体に結合する能力、および宿主へウイルスを侵入させる能力が挙げられる。
【0052】
本発明で使用される用語「カプシド」とは、ウイルスゲノムがパッケージングされた構造を指す。カプシドは、CAPたんぱく質の構造サブユニットを有するオリゴマー構造からなる。例えば、AAVは、3つのカプシドたんぱく質:VP1、VP2、およびVP3の相互作用によって形成される、正二十面体のカプシドを有する。
【0053】
本明細書で使用する用語「細胞組成物」とは、本発明の細胞および少なくとも1つのその他の成分を含んでなる、複合型材料を指す。組成物は、単一の製剤として製剤化されてもよく、または各成分の別々の製剤として提供されてもよく、組み合わせ製剤としての併用のために組み合わせてもよい。組成物は、各成分が個々に製剤化され包装される部品キットであってもよい。
【0054】
本発明において使用される用語「構成的プロモーター(constituent promoter)」とは、細胞の環境および外部条件についてほとんどまたは全く考慮せずに、生物体全体にわたってまたはほとんどの実験段階で、比較的一定のレベルで活性が維持されるプロモーターを指す。
【0055】
本明細書で使用される用語「発現カセット」とは、標的細胞へ特定の核酸を転写すること可能にする、核酸に特異的な一連の要素と、合成的にまたは組換えによって生成された、核酸の構築を指す。
【0056】
本明細書で使用される用語「支持機能を提供する遺伝子」とは、ポリペプチドをコードし、複製に依存するAAV上の機能(すなわち、「支持機能」)を実施する遺伝子を指す。補助機能は、AAV遺伝子転写の活性化、AAV mRNAスプライシングの特異的段階、AAV DNA複製、CAP産物の合成、およびAAVカプシドアセンブリに関与するこれらの断片を包含する、AAV複製に必要な機能を包含する。アクセサリーウイルス機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、およびワクシニアウイルスのような既知の補助ウイルスのいずれかから得ることができる。補助機能には、WHVレンチウイルスが包含されるが、これに限定されない。
【0057】
本明細書に記載されているように、用語「作動的に連結された」とは、目的のポリヌクレオチドに関するプロモーター配列の機能的関係および位置を指す(例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、その配列の転写に影響を及ぼすコード配列に作動的に連結されている)。一般に、作動的に連結されたプロモーターは、目的の配列に隣接している。しかしながら、エンハンサーは、その発現を制御するために目的の配列に隣接する必要はない。
【0058】
本明細書で使用される用語「局所投与される」とは、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、および/または医薬組成物が、特定の部位またはその近くで、対象に投与されることを意味する。
【0059】
用語「医薬的に許容可能な担体」、「薬学的に許容可能な希釈剤」、「薬学的に許容可能な賦形剤」、または「薬学的に許容可能なビヒクル」は、本明細書において互換性があり、非毒性の固体、半固体、または充填液、希釈剤、もしくはカプセル化材料、またはあらゆる従来型の補助調合物である。薬学的に許容可能な担体は、その用量および濃度で使用され、レシピエントに対して本質的に非毒性であり、製剤中のその他の成分と適合性である。薬学的に許容可能なビヒクルの数および性質は、所望の投与方法に依存する。薬学的に許容可能なビヒクルは公知であり、周知の技工法によって調製することができる。
【0060】
本明細書で使用する用語「プロモーター」とは、ポリヌクレオチドの配列の上流に位置する1つ以上のポリヌクレオチドの転写を制御する核酸を指し、RNAポリメラーゼ依存性DNA結合部位、転写開始部位、ならびに転写因子結合部位、リプレッサー、および活性化因子たんぱく質結合部位を包含するがこれに限定されないあらゆるその他のDNA配列、ならびにプロモーターからの転写量を調節するように直接または間接的に作用する技術で知られているあらゆるその他のヌクレオチド配列の存在により、構造的に同定される。「組織特異的」プロモーターは、特定のタイプの分化した細胞または組織においてのみ活性化される。
【0061】
本明細書で使用する用語「ポリヌクレオチド」とは、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドをそれぞれ含有する、DNAまたはRNAのいずれかの核酸分子を指す。核酸は、二本鎖、一本鎖であってもよく、二本鎖または一本鎖の配列のいずれかの一部を含有していてもよい。用語「ポリヌクレオチド」は、これらに限定されないが、ポリペプチドをコードする能力を有する核酸配列、および転写後にその様式で処理された細胞または対象の内因性ポリヌクレオチドに部分的または完全に相補的である核酸配列を包含し、内因性ポリヌクレオチド発現をハイブリダイズし、阻害することができるRNA分子(例えば、マイクロRNA、shRNA、siRNA)を生成する。
【0062】
本明細書中で使用される場合、用語「架橋またはリンカー」とは、目的の配列の物理的分離を可能にする、連続的または非連続的なポリヌクレオチド配列を指し、目的の配列を物理的に分離し、それらを翻訳および転写できるように適切な様式で配置することを可能にすることができる。
【0063】
本明細書中の用語「ストリング」とは、連続したヌクレオチドの配列(修飾された天然または非天然のヌクレオチドを含むか、または含まない)を指す。2つ以上の鎖は、別個の分子であるか、もしくは別個の分子の一部であってもよく、または、例えばカップリングによって共有結合的に相互連結されて(例えば、ポリエチレングリコールなどのリンカー)、分子を形成してもよい。鎖の少なくとも1本は、標的RNAに対して充分に相補的な領域を含有し得る。
【0064】
アンチセンス鎖に対する相補的領域を含むdsRNA剤の第2鎖は、「センス鎖」と呼ばれる。しかしながら、siRNA剤はまた、少なくとも部分的に自己相補的であり、例えば、ヘアピンまたはボタンホールの構造を形成し、二本鎖領域を包含する、単一RNA分子から形成することもできる。後者は、以下、短鎖ヘアピンRNAまたはshRNAと呼ばれる。そのような場合、用語「鎖」とは、同じRNA分子の別の領域に相補的なRNA分子の領域の1つを指す。
【0065】
本明細書で使用する用語「組換えウイルスゲノム」とは、少なくとも1つの非発現ポリヌクレオチドカセットが天然のAAVゲノムに挿入されているAAVゲノムを指す。
【0066】
本明細書で使用される用語「rep遺伝子」または「AAV rep遺伝子」とは、Repたんぱく質をコードする遺伝子を指す。本明細書で使用される用語「Repたんぱく質」とは、天然のAAV repたんぱく質(例えば、Rep40、52、68、78)の少なくとも1つの機能活動を有するポリペプチドを指す。Repたんぱく質(例えば、Rep40、52、68、78)の「機能活動」は、たんぱく質の生理学的機能に関連するあらゆる活動であり、AAV DNA複製の開始点の認識、結合、および切断によるDNA複製の促進、ならびにDNAのらせん活性を包含する。さらなる機能には、AAV転写(またはその他の異種)プロモーターの調節、および宿主染色体へのAAV DNAの部位特異的組込みが包含される。
【0067】
本明細書で使用する用語「対象」とは、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、チンパンジーまたはその他の類人猿、およびその他の猿種)、動物(例えば、鳥、魚、家畜、ヒツジ、ブタ、ヤギ、およびウマ)、哺乳類(例えば、イヌおよびネコ)、または実験動物(例えば、マウス、ラット、サイレンシングされた遺伝子を有するマウス(ノックアウトマウス)、遺伝子を過剰発現するマウス(トランスジェニックマウス)、およびモルモットなどのげっ歯類)を指す。この用語は、特定の年齢または性別を示すものではない。「対象」という用語には、胚および胎児が包含される。
【0068】
本明細書で使用される用語「全身投与される」および「全身投与」とは、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、または医薬組成物が、非局所形態で対象に投与されることを意味する。本発明のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、または医薬組成物の全身投与は、対象の全身のいくつかの臓器もしくは組織に到達してもよく、または新たな特定の器官もしくは組織に到達してもよい。例えば、本発明の医薬組成物の静脈内投与は、対象の2つ以上の組織または器官において形質導入をもたらし得る。
【0069】
本明細書で使用する用語「転写調節エレメント」とは、1つ以上の遺伝子の発現を調節することができる核酸フラグメントを指す。本発明のポリヌクレオチド調節エレメントは、プロモーター、および随意にエンハンサーを包含する。
【0070】
本明細書で使用される用語「形質導入」という用語は、外来ヌクレオチドの配列を細胞に導入してウイルスベクターにするプロセスを指す。
【0071】
この文書で使用される用語「形質移入」とは、標的真核細胞へのDNAの導入を指す。
【0072】
本明細書で使用される用語「ベクター」とは、宿主細胞中の1つ以上の目的のポリヌクレオチドを送達し、随意に発現させることができる構築物を指す。ベクターの例として、これらに限定されないが、ウイルスベクター、DNAまたは裸のRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤に関連するRNAまたはDNA発現ベクター、リポソーム封入DNAまたはRNA発現ベクター、および例えば細胞を産生するような特定の真核生物が挙げられる。ベクターは安定性であってもよく、自己複製することができる。使用できるベクターの種類に制限はない。ベクターは、増殖に好適であり、いくつかの異種生物に組み込まれたポリヌクレオチド、遺伝子構築物、または発現ベクターを得るのに好適である、クローニングベクターであってもよい。好適なベクターには、原核生物発現ベクター、ファージおよびシャトルベクター、ならびにウイルスベクター(例えばアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ならびにレトロウイルスおよびレンチウイルス)に基づく真核生物発現ベクター、ならびに、例えばpSilencer4.1−CMVのような非ウイルスベクターが包含される。
【0073】
本明細書において使用される用語「UPRplus」とは、XBP1s、ATF6f、プロモーター、連結または架橋配列、および同定のためのエピトープからなる配列を指す。
【0074】
本発明の方法および組成物(例えば、前述の挿入物を有するAAVウイルスの方法および組成物)は、本発明に記載のあらゆる用量および/または製剤、ならびに本発明に記載されるあらゆる投与経路と共に使用することができる。
【0075】
「認知および運動療法または治療スキル」という用語については、本発明で定義される病態を有する、異なる種および/または対象に対して行われる認知および運動試験を指す。
【0076】
用語「cDNA」または「相補的DNA」とは、RT−PCR合成を形成するために使用されるRNA配列を完全に補完するDNA配列を指す。
【0077】
「標的遺伝子のサイレンシング」という語句は、薬剤と接触していない同様の細胞と比較して、薬剤と接触していない場合の標的遺伝子の特定の産物を含有および/または発現する細胞が、薬剤と接触した場合のそのような遺伝子の産物の少なくとも、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくはそれ以下を含有および/または発現するプロセスを指す。この標的遺伝子産物は、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、たんぱく質、または調節エレメントであってもよい。
【0078】
本明細書において使用される用語「相補的」とは、化合物と標的RNA分子との間で安定した特異的結合が起こるほど充分な相補性を指す。特異的結合は、特異的結合が望まれる条件下、すなわちインビボ試験もしくは治療的処置の場合の生理学的条件下において、またはインビトロ試験の場合、試験が実施されている条件下において、非標的配列へのオリゴマー化合物の非特異的結合を回避するのに充分な相補性を必要とする。
【0079】
本明細書において使用される用語「制限部位」とは、前記配列のための特定の制限酵素が結合され切断されるか、または分離される、ヌクレオチド配列を指す。
【0080】
リガンド
その薬理学的特性を含有するウイルスの特性は、例えば、リガンドの導入によって影響され、調整され得る。さらに、ウイルス剤の薬理学的特性は、リガンドを薬剤製剤およびウイルスに組み込むことによって改善することができる。
【0081】
リガンドは、ウイルス剤に結合するリガンドなどの多種多様な実体に結合させることができるか、またはコンジュゲートもしくは製剤添加物として使用することができる。例えば、リガンドに結合したモノマーサブユニットのビヒクルを用いて行うことができる。以下の実施例は、リガンドに結合したモノマーサブユニットの文脈で記載されているが、これは好ましいものであり、実体はウイルスの他の場所で結合することができる。
【0082】
リガンドは、それが包埋されるウイルス剤の分布、方向、または寿命を変化させる。好ましい様式において、リガンドは、前記リガンドが存在しない主と比較して、選択された標的、例えば、例えば、分子、細胞、または細胞型、区画(細胞もしくは器官区画、組織、または身体の領域など)に対してより良好な親和性を提供する。
【0083】
本発明において、リガンドは、ウイルス中の標的分子の輸送、ハイブリダイゼーション、および特異性を改善し得る。
【0084】
リガンドは、一般に、例えば個体における分子の吸収を改善するための治療的改変剤、例えば、分布を監視するための診断化合物またはリポーター群、架橋剤、免疫反応に抵抗性を示す画分、および天然または珍しい核酸塩基を含有し得る。
【0085】
一般例として、親油性分子、脂質、レクチン(例えば、ヘシゲニン(hecigenin)、ジオスゲニン)、テルペン(例えば、トリテルペン、サルササポゲニン、フリーデリン、エピフリーデラノール(epifriedelanol)由来のリトコール酸)、ビタミン、炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン)、合成ポリマー(例えば、15塩基長のオリゴ乳酸)、および天然ポリマー(例えば、低および中分子量)、イヌリン、シクロデキストリン、またはヒアルロン酸)、たんぱく質、たんぱく質結合剤、インテグリン結合分子、ポリカチオン、ペプチド、ポリアミンならびにペプチド模倣物が挙げられる。その他の例として、上皮細胞または葉酸受容体リガンド、例えばトランスフェリンが挙げられる。
【0086】
リガンドは、合成ポリマー(例えば、合成ポリアミノ酸)などの、天然に存在するか、または組換えもしくは合成分子であり得る。ポリアミノ酸の例として、ポリリジン(PLL)、ポリアスパラギン酸L−アスパラギン酸、ポリ酸L−グルタミン酸、マレイン酸のスチレン無水物コポリマー、ジビニルエーテル無水マレイン酸のポリ(乳酸−グリコール酸)コポリマー、N−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド(HMPA)のコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2−エチルアクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファゼンが挙げられる。ポリアミンの例として、ポリエチレンイミン、ポリリシン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、偽ペプチドポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、例えばカチオン性脂質、カチオン性ポルフィリンなどのカチオン性画分、ポリアミンの第4級塩、またはアルファ−ヘリックスペプチドが挙げられる。
【0087】
リガンドはまた、甲状腺刺激ホルモン、メラノトロピン、界面活性たんぱく質A、ムチン炭水化物、グリコシル化ポリアミノ酸、ビスホスホネート、ポリグルタメート、ポリアスパルテート、Arg−Gly−Aspペプチド(RGD)、もしくはRGDペプチドの模倣物などの、細胞または組織に対するステアリング剤を含有していてもよい。
【0088】
リガンドは、たんぱく質、例えば、低密度リポたんぱく質(LDL)などの糖たんぱく質もしくはリポたんぱく質、または血清アルブミンなどのアルブミン、またはコリガンドに対して特異的親和性を有する分子などのペプチド、または特定の細胞型に結合する抗体などの抗体であってもよい。リガンドはまた、ホルモンおよびホルモン受容体も含み得る。これらはまた、補因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサミン、多価マンノース、または多価フコースのような非ペプチド種も含み得る。
【0089】
リガンドは、例えば、細胞の細胞骨格、またはその微小管、微小線維、および/もしくは中間径線維を改変することによって、細胞内のウイルス剤の吸収を増加させることができる薬剤などの物質であってもよい。
【0090】
ひとつの点では、リガンドは脂質であるか、または脂質ベースの分子である。この脂質または脂質ベースの分子は、好ましくは、アルブミン血清のようなホエーたんぱく質に結合される。
【0091】
あるいは、ウイルスをパッケージングしてもよい。
【0092】
注射可能なウイルス溶液の調製は、PBS(生理食塩水緩衝液)中に必要なウイルス濃度を希釈することにより実施され、以下のように処方される。
【0093】
1.以下を有する800mlの蒸留水にウイルス用量(事前にPBSで1倍に希釈したもの)を溶解する:
8gのNaCl
0.2gのKCl
1.44gのNa
2HPO
4
0.24gのKH
2PO
4。
2.pHをHClで7.4まで調節する。
3.追加の蒸留水H2Oを用いて量を1Lに設定する。
4.滅菌および高圧蒸気滅菌。
【0094】
設計および選択
UPRplus分子変種の作成。
本特許の目的の1つは、XBP1sと呼ばれる活性型のXBP1、およびATF6fと呼ばれるATF6の活性型の、ヒト配列から構成される組換えDNAの6つの変種を作製することである。UPRplus変種は、その設計に2つの変数、すなわち、2つの配列間のXBP1sおよびATF6f分子(XBP1s−ATF6fおよびATF6f−XBP1s)、ならびに結合ペプチド(リンカーとしても知られる)の順序を含む。使用するリンカーは以下の通りである:
・19−AAグリシンフレキシブルリンカー(「GFL」);
・25−AAアルファヘリックスリンカー(「AHL4」);および、
・50−AA可動性リンカー(「FL」)。
【0095】
これらの3つのタイプの結合部または架橋は、これらの間の相互作用を達成するために、その端部で結合されたたんぱく質間の柔軟性および適切な距離を提供することが示されている。XBP1sとATF6f分子の間のこれらの3つのリンカーの生成および評価は、特異的遺伝子エレメントを結合するのに充分な三次元形状を採用する、活性機能転写因子を生成する可能性を拡大させた。
【0096】
さらに、これらのキメラたんぱく質の発現をより検出するために、ヘマグルチニンペプチド(HA)たんぱく質配列(とりわけ、このエピトープに限定されない)を全てのたんぱく質の末端カルボキシル終点に付加した。
【0097】
利用したクローニング戦略は、pAAV発現ベクターへのその後の連結のための制限部位を包含する新規の合成によって、XBP1s、ATF6f、および3つの異なるリンカーのDNA配列を生成した。この発現ベクターは、インビトロでの最も高い神経保護活性を有するUPRplus変種の選択の前に、ウイルス粒子を生成するために使用された。
【0098】
新規の合成により、2組の遺伝子配列が得られた。これらは第3末端にHA配列を包含し、リンカーに依存する。種々の制限部位を以下に示す。
第1組 XBP1s−リンカー−ATF6f
SnaBI_XBP1s−LFG−ATF6f_FseI
BspEI_XBPS1s−LF−ATF6f_KpnI
BspEI_XBPs−L4H4−Atf6f_KpnI
第2組 ATF6−リンカー−XBP1s
SnaBI_ATF6−LFG−XBP1s_FseI
KpnI_ATF6−L4H4−XBP1s_SfiI
KpnI_ATF6−LF−XBP1s_SfiI
【0099】
この目的に使用されるmRNA配列は、それぞれ表VIIおよび表VIII、ATF6fおよびXBP1sに記載されている。
【0100】
リンカーまたはブリッジのmRNA配列は、LGF、L4H4、およびLFリンカーを示す、表IXに記載されている。
【0101】
これらの6種のUPRplus変種の生成に伴い、AAVに関連するXBP1sおよびATF6fの個別のバージョン(それぞれ表XIおよびXII)が産生され、これらの転写因子の個々の発現に関してUPRplusの活性を正確に比較するために、pAAV発現ベクターにクローン化された。
【0102】
これらの配列の発現は、UPRplus変種の同一のプロモーターを使用し、HAペプチドを提示し、これらの要素を含有しなかった転写因子XBP1sおよびATF6fで実施された以前の研究とは異なる。
【0103】
これらの配列が新規合成によって得られた直後、上記の制限部位を介して、それらをpAAV発現ベクターに連結した。生成した組換えDNAの8つのバージョンを配列決定し、配列が正確であり、期待される結果と一致することを確認した。
【0104】
前述の配列の新規合成およびこれらの配列のpAAVベクターへの連結は、米国のGENEWIZ社によって行われた。
【0105】
プラスミドで得られた配列は、
図1、2、3、4、5、および6のマップとして見ることができる。
【0106】
これらのプラスミドを確認するために、得られた配列の制限分析を、EcoR1制限酵素を用いたプラスミドDNA消化によって行った。
【0107】
制限酵素アッセイで得られたフラグメントサイズは、
図7に示すように、予想通りであった。
【0108】
治療的使用のための生物医学的範囲の分析によって、この技術の使用がその適用において驚くべき結果を生み出した、神経変性疾患を治療するための効果的で革新的な方法が提供された。
【0109】
UPRplusの関与を調査するために、上の段落に記載された6つの組換えDNA変種が生成された。これらは、XBP1sと呼ばれる活性型のXBP1のヒト配列、および異なるリンカーによって連結され、その他の可能性のあるエピトープの中でヘマグルチニン(HA)のエピトープに連結された、ATF6fと呼ばれるATF6の活性型のヒト配列をコードする。
【0110】
アデノ随伴ウイルス(AAV)の開発に関して、目的のポリヌクレオチドに作動的に連結された転写調節エレメントを有する発現カセットを包含する、ウイルス組換えゲノムを含んでなる。AAV血清型の種類は、排他的にではなく、目的のポリヌクレオチドが発現される組織選択性の一部を提供する。
【0111】
本発明によれば、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、42種類のあらゆる既知の血清型を包含し、パルボウイルスに由来する。一般に、種々のAAV血清型は、アミノ酸および核酸に関して有意に相同なゲノム配列であり、同一の遺伝的機能、機能的かつ物理的に本質的同一である、ビブリオ細菌、それらの複製および事実上同一のメカニズムを用いる組合せた使用を提供する。
【0112】
本発明において、特に、AAV血清型2を使用した(AAV2に関して表X中に示される、GenBankアクセス番号((AAV2)NC_001401.2、(AAV6)AF028704.1、NC006260(AAV7)、NC006261(AAV8)、AX753250.1(AAV9)、(AAV10)、(AAV11)、および偽型AAVにて言及したようなもの)。
【0113】
AAV10およびAAV11ウイルスについては、カプシドたんぱく質が異なるため、完全な配列は入手できない。
【0114】
本発明によれば、AAVゲノムは、通常、シス5内のアクチュエータ、逆位3末端反復配列、および発現カセットを含んでなる。ITRまたはLTR配列は、141塩基対の長さを有する。好ましくは、LTRの完全な配列が分子内で使用され、配列のわずかな改変のみが許される。本発明の好ましい形態において、AAVの組換えゲノムは、第5および第3のAAV LTRを含んでなる。本発明の別の好ましい形態において、第5および第3のAAV LTRは、AAV血清型2に由来する。本発明の別のより好ましい形態では、AAVの組換えゲノムは、RepおよびCapオープンリーディングフレームを欠いている。
【0115】
一方で、ITRはその他のAAV血清型に由来し得る。
【0116】
本発明のAAVは、あらゆる血清型由来のカプシドを含んでなる。特に、本発明では、血清型2、6、7、8、9、および10に由来するカプシドが好ましい。しかしながら、血清型2のAAVカプシドが好ましい。
【0117】
いくつかの実施形態では、本発明の方法における使用のためのAAVキャップは、AAVキャップの1つ、またはそれらのコード核酸の突然変異誘発(すなわち、挿入、欠失、または置換)によって生成され得る。いくつかの生産において、AAVキャップは、前述のAAVキャップの1つ以上と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%以上類似している。
【0118】
いくつかの実施において、AAVキャップは、前述のAAVキャップの2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のドメインを含んでなる、キメラである。いくつかの設計において、AAVキャップは、モノマーVP1、VP2、VP3のモザイクであり、2つまたは3つの異なるAAVまたは組換えAAV(rAAV)に由来する。いくつかの生産において、rAAVの組成物は、上記のCAPSの2つ以上を含んでなる。
【0119】
いくつかの実施形態では、rAAV組成物にて使用するためのAAV CAPは、異種配列またはその他の修飾を含有するように設計される。例えば、選択的標的化または免疫回避を与えるペプチドまたはたんぱく質配列は、Capたんぱく質上で遺伝子操作され得る。あるいは、または加えて、rAAVの表面が、免疫回避を促進し得るポリエチレングリコールなどの特定の化学修飾を示すように、キャップを化学的に修飾することができる。Capたんぱく質はまた、誘導された突然変異(例えば、その天然結合受容体を除去するため、または免疫原性エピトープを隠すため)によっても生成され得る。
【0120】
一実施形態において、AAVベクターは、GenBankから得た、以下:表I(SnaBI_XBP1s−LFG−ATFG−ATF6f_FseI)、または表II(BspEI_XBPS1s−LF−ATF6f_KpnI)、または表III(BspEI_XBPs−L4H4−Atf6f_KpnI)、または表IV(SnaBI_ATF6−LFG−XBP1s_FseI)、または表V(KpnI_ATF6−L4H4−XBP1s_SfiI)、または表VI(KpnI_ATF6−LF−XBP1s_SfiI)から選択することができる、SnaBI_XBP1s−LFG−ATFG−ATF6f_FseI;またはBspEI_XBPS1s−LF−ATF6f_KpnI;またはBspEI_XBPs−L4H4−Atf6f_KpnI;またはSnaBI_ATF6−LFG−XBP1s_FseI;またはKpnI_ATF6−L4H4−XBP1s_SfiI、またはKpnI_ATF6−LF−XBP1s_SfiIのうち少なくとも1つの配列の、少なくとも1つの標的配列の付加を伴うプロモーターを含有する。
【0121】
一実施形態において、AAVベクターは、SnaBI_XBP1s−LFG−ATF6f_FseI;またはBspEI_XBPS1s−LF−ATF6f_KpnI;またはBspEI_XBPs−L4H4−Atf6f_KpnI;またはSnaBIの標的配列の少なくとも1つの付加を伴うプロモーターを含有する。
【0122】
一実施形態において、AAVベクターは、前述の表から選択された標的配列と85%相同である、少なくとも1つの標的配列の付加を伴うプロモーターを含有する。
【0123】
一実施形態において、AAVベクターは、前述の表から選択された標的配列と70%相同である、少なくとも1つの標的配列の付加を伴うプロモーターを含有する。
【0124】
一実施形態において、AAVベクターは、前述の表から選択される標的配列の機能的等価物である、少なくとも1つの標的配列の付加を伴うプロモーターを含有する。
【0125】
転写調節エレメントは、プロモーター、および随意にエンハンサー領域を含むことができる。プロモーターは、好ましくは、とりわけ、CMV、PGK1、CAMKII、THY1、GAD34の中から選択される。エンハンサーは、神経組織に特異的である必要はない。
【0126】
一実施形態において、プロモーターは、例えば、CMVとしても知られているサイトメガロウイルスに特異的である。
【0127】
一実施形態において、プロモーターは、例えば、PGK1としても知られているホスホグリセリン酸キナーゼ1たんぱく質に特異的である。
【0128】
一実施形態において、プロモーターは、例えば、CAMKIIとしても知られているカルシウムカルモジュリンキナーゼ2に特異的である。
【0129】
一実施形態において、プロモーターは特異的であり、例えば、Thy1としても知られている。
【0130】
一実施形態において、プロモーターは特異的であり、例えば、GABA作動性ニューロンにおいて通常作動するGAD34としても知られている、グルタミン酸デカルボキシラーゼ34に対して特異的である。
【0131】
別の実施形態では、本発明のAAVの一部を形成する発現カセットは、転写後調節エレメントも含んでなる。好ましい実施形態では、転写後調節エレメントは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)またはその機能的変種および断片、ならびにPPT−CTSまたは機能的変種および断片そのものである。1つの特定の実施形態において、転写後調節エレメントは、WPREである。
【0132】
本発明によるAAVの一部を形成する発現カセットは、「目的のポリヌクレオチド」を含んでなる。好ましい実現において、目的のポリヌクレオチドは、全身作用性たんぱく質をコードする。別の実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、ニューロン内で作用するたんぱく質をコードする。好ましい実施形態において、ニューロン内で作用するたんぱく質は、XBP1s−LFG−ATF6f、またはXBP1s−LF−ATF6f、またはXBP1s−LF−ATF6f、またはXBP1s−L4H4−ATF6f、またはATF6f−LFG−XBP1、またはATF6−L4H4−XBP1、またはATF6f−LF−XBP1sであり、細胞内位置において変動するそれらのアイソザイムのいずれかを包含する。
【0133】
AAVベクターパッケージングのサイズ制限は、AAV血清型に応じてサイズが変動する、野生型AAVゲノムのサイズに制限される(すなわち、4087〜4767)。例えば、天然のAAV−2は、5382のゲノムサイズを有する。実施のいくつかの形態において、組換えRNAベクターのクローニング能力は制限され得、所望のコード配列はウイルスゲノムの4.8キロベースの完全な置換を伴ってもよい。したがって、大型の遺伝子は、場合によっては、標準的な組換えAAVベクターでの使用に適していない可能性がある。平均的な専門家は、限られたコーディング能力を克服する手法において、選択肢が利用可能であることを理解できよう。例えば、2ゲノムAAV IRTは、頭〜尾にコンカテマーを形成するようにハイブリダイズし、ベクターの能力をほぼ倍増させることができる。スプライス部位の挿入は、転写後のIRTの除去を可能にする。限定されたクローニング能力を克服するためのその他の選択肢は、主題の専門家には明らかであろう。
【0134】
次の目的として、これらの変種の発現をヒト細胞株で試験した。この目的を達成するために、SHSY5Y細胞の形質移入率が低い(30%)ため、SHSY5Y神経芽細胞腫由来細胞をHEK293細胞と交換した。HEK293細胞はヒト腎臓胚細胞系に相当し、CaPO
4法によって高い形質移入率(80%)を示す。
【0135】
HEK293細胞を、UPRplusの6つの変種で形質移入した。対照として、同一の発現ベクターにクローン化されたヒトXBP1sおよびATF6f(それぞれ、表XIおよびXII)の個々のバージョンを包含した。また、実験室に存在するXBP1sのマウスDNA配列に対応する、2つのバージョンの発現も包含されていた。
【0136】
HEK293細胞を、CaPO
4法を用いてそれぞれの組換えDNAで形質移入し、発現の48時間後にRIPA緩衝液によりたんぱく質抽出し、総たんぱく質の定量を行った。
【0137】
続いて、抗HA抗体、抗XBP1抗体、および抗ATF6抗体を用いて、ウエスタンブロット(WB)によって異なるたんぱく質を検出した。
【0138】
WB分析は、
図8に示されるように、抗HA抗体を有するUPRplusの全ての変種を検出することが可能であったので、これらのたんぱく質が正確に発現されたことを示した。ヘマグルチニン(HA)のエピトープは、全てのUPRplus変種の末端C末端に存在するため、第1の近似として使用した。得られた分子量は、UPRplus変種についておよそ100kDaであり、個々のたんぱく質について約50kDaであった。
【0139】
UPRplus変異体のウイルス発現においてクローニングされたXBP1sの個々のバージョンについて得られた分子サイズは、同一のアッセイ(
図8、レーン8および11)において既に特徴付けられ決定されているマウスXBP1sバージョンと比較して、差異がない。電気泳動によって得られた分子量は、UPRplusたんぱく質および個々のたんぱく質の両方について、予想された分子量よりも多かった(
図8参照)。
【0140】
一方で、ヒトXBP1sの発現は、抗XBP1 143F(Biolegend)抗体を用いた全てのUPRplus変種(レーン1−6、
図9)、ならびに個々の変種(レーン8、
図9)において検出された。この抗体はXBP1sのヒト型のみを認識するので、マウスXBP1s配列の発現を検出することはできなかった(レーン9、11、および12、
図9)。
【0141】
最後に、
図10に示すように、UPRplus変種に存在するATF6fたんぱく質も抗ATF6(abCam)抗体で検出された。この抗体は、ATF6fのヒトおよびマウスバージョンの両方を認識した(
図10)。
【0142】
HEK293細胞におけるこれらのたんぱく質の細胞内位置を決定するために、間接免疫蛍光アッセイを、UPRplusたんぱく質およびそれらの個々のバージョンを発現する細胞に対して行った。WB分析に用いた上記と同一の抗体を使用した。UPRplusの異なる変種で一時的に形質移入されたHEK293細胞、ならびにXBP1sおよびATF6たんぱく質の個々のバージョンで形質移入された細胞においても、XBP1およびATF6たんぱく質のエピトープHAの発現が検出された(
図11、12、および13)。これらの結果から、本発明者らは、6つのUPRplus変種の細胞内位置が、細胞の核を特異的に染色するHoechstプローブとの共マーキングにより明らかになった核パターンに相当することを確認した(
図11、12、および13)。抗HA抗体の特異性を決定するために、XBP1のマウス配列に対応するmXBP1s/EGFPプラスミドで一過性に形質移入した細胞を、陰性対照として包含した(
図11B)。
【0143】
また、抗XBP1抗体は、UPRplusの全ての変種において、免疫蛍光によってXBP1たんぱく質を特異的に認識することも判明した。抗XBP1抗体の特異性は、ATF6を個々に形質移入した細胞上、または非形質移入細胞中に標識がないことによって判定した(
図12A)。このアッセイによって、抗XBP1抗体を用いてXBP1sのマウス配列を検出することができた(
図12B)。
【0144】
ATF6の発現はまた、UPRplus変種で形質移入されたHEK293細胞における免疫蛍光によっても確証された。ATF6たんぱく質の検出は、陰性対照として使用したXBP1sを個別に形質移入した細胞を除いて、UPRplusの全てのたんぱく質変種で観察された(
図13)。
【0145】
形質移入されたHEK293細胞におけるこれらのたんぱく質の発現の細胞内局在化に続いて、ルシフェラーゼ活性に結合したレポーターを用いて、プロモーターエレメントの活性を、pAAV−UPRplusウイルスによって媒介される、折り畳まれていないたんぱく質応答「UPR」に対する応答について評価した。
【0146】
pAAV−UPRplus変種の転写活性のこの分析は、好ましくはATF6fとXBP1sとの間のヘテロダイマーに応答する、「UPRE」と呼ばれるUPR要素の制御下において、ルシフェラーゼレポーターシステムを用いて行った。この目的のために、HEK293細胞を、ルシフェラーゼ−UPREレポータープラスミドと共にプラスミドpAAV−UPRplus1〜6で同時に形質移入した。さらに、化学発光分子(Promega、Dual-Luciferase(商標)レポーターアッセイシステム)を恒常的に発現する、Renillaコードプラスミドを形質移入し、アッセイの内部対照として使用して全てのプラスミドを発現する細胞のパーセンテージを決定した。発現の48時間後、得られた発光をルミノメーターで測定した。pAAV−UPRplus変異体によるUPRに対する応答エレメントの活性化レベルを、pAAV−XBP1sと呼ばれる活性化形態のXBP1s、およびpAAV−ATF6fと呼ばれる活性型のATF6、ならびにおよび両方のプラスミド(pAAV−XBP1sおよびpAAV−ATF6f)の同時形質移入に対する、コード化プラスミドの形質移入によって生成されたレベルと比較した。また、実験の陽性対照としては、XBP1sのマウス配列のバージョンに対応するpCDNA3−mXBP1sプラスミドの形質移入が包含された。pCDNA3空ベクター形質移入はまた、XBP1/ATF6転写因子のXBP1/ATF6転写活性系のベースライン活性として包含されていた。
【0147】
図14は、UPRplusおよび関連する対照の6つの変異体の転写活性を示す。示した値は、3つの独立した実験の平均を表す。以下の表XIIIに示す通り:
【0149】
最大活性(転写活性の100%)を、同時形質移入されたXBP1sおよびATF6f変種によって到達された活性化値として決定し、この値に基づいて各実験における各変種の活性を正規化した。
【0150】
得られた結果は、XBP1sおよびATF6fの共発現条件と同様に、1〜3の変種の転写活性を示す。これらの変異体は、UPREプロモーター領域に結合し、ルシフェラーゼレポーターの発現を活性化させることができる。4〜6の変種は、ATF6f/XBP1s共発現制御に関して約20%の転写活性レベルを示したので、UPREプロモーター領域に結合することができないか、またはこのキメラたんぱく質を採用する構造がそのDNA配列へのその結合を変化させるであろう。
【0151】
さらに、個々の変種はUPREプロモーター領域を活性化することができ、ATF6fはXBP1sたんぱく質よりも高い活性を示すことが判明した。
【0152】
これらの結果は、「ATF6f−XBP1s」の混合変種の3つ(1、2、および3として指定された変種)がUPRの活性化特性を維持し、プロジェクトで提案された戦略が実行可能であり、ヘテロダイマーATF6f/XBP1sの転写活性に関連する標的遺伝子を活性化することができる可能性があることを確認した。
【0153】
この開発における次のステップは、pAAV−UPRplusの発現によって媒介されるUPR転写標的の活性化を評価することであった。
【0154】
HEK293細胞を用いてこの研究を行い、6つのpAAV−UPRplus変種、ならびに個々のpAAV−XBP1sおよびpAAV−ATF6f変種に対してコード化プラスミドを形質移入した。さらに、これらの実験的試験においてヘテロダイマーによって達成された最大活性化であると考えられる状態である、両方の変種(pAAV−XBP1sおよびpAAV−ATF6f)の同時形質移入を包含した。
【0155】
発現の24時間後、リアルタイムPCR技術を用いて、ヘテロダイマーATF6f−XBP1sによって調節される転写標的として記載された遺伝子の群のmRNAレベルを定量化することにより、UPR経路に関連する遺伝子の転写活性化を測定した。
【0156】
このプロジェクト段階で分析された遺伝子は、HEK293細胞のXBP1sおよび/またはATF6によって示差的に調節される遺伝子を大量配列決定する、最近の研究(Shoulders et al., 2013)に記載された。この研究では、これらのたんぱく質の発現を制御する薬物の添加によって、示差的かつ誘導された方法でXBP1sおよび/またはATF6f転写因子を発現することができる、HEK293細胞が生成された。このシステムは、ドキシサイクリン、薬物トリメトプリム(TMP)によるATF6f、および両方の薬物とのインキュベーションによる両方のたんぱく質(ヘテロダイマー)を添加することによって、XBP1sを発現することができる。
【0157】
これらの転写因子によって示差的に発現される記載された遺伝子は、以下の表XIVに示されている:
【0159】
上記の表XIVは、誘導性HEK293細胞におけるXBP1および/またはATF6によって調節される遺伝子を示す。
【0160】
この情報に基づいて、オリゴヌクレオチド配列を生成して、小胞体ストレス(ER)を誘導する薬物であるツニカマイシンで処理したHEK細胞における、リアルタイムPCRを用いた表XIVに示される遺伝子の発現レベルを決定した。
【0161】
このアッセイにより、これらの遺伝子の増幅効率を試験し、これらの遺伝子が小胞体ストレス条件に応答して活性化されることを確証することができた。
【0162】
図15に示すように、遺伝子が効率的に増幅されていることが確認され、小胞体ストレス条件に応答して発現が増加することも確認された。
【0163】
続いて、pAAV−UPRplus、pAAV−XBP1s、またはpAAV−ATF6fの6つの変種のそれぞれを個別に形質移入したHEK293細胞から得られた、いくつかの転写UPR標的のmRNAレベルを比較し、両方の変種(pAAV−XBP1sおよびpAAV−ATF6f)で同時形質移入した。
【0164】
分析のために選択された遺伝子は、ヘテロダイマーの活性化に関連する遺伝子であった。選択された遺伝子は、ERAD(「小胞体関連たんぱく質分解」)と呼ばれる小胞体プロセスに関連し折り畳まれていないたんぱく質の分解に関連する遺伝子であるCRELD2、たんぱく質フォールディングプロセスに関連するHYOU1、ならびに細胞外マトリックスの形成に関与する分泌酵素である、ERADおよびSULF1に関連するEDEM1であった。さらに、ERADプロセスに関与するたんぱく質フォールディングおよびHERPUDに関連する、BIPの活性化が判定された。Creld2、Edem1、Hyou1、およびSulf1のようなヘテロダイマーの発現に関連するメッセンジャーRNAについて、変種1、2、および3は、4、5、および6の変種と比較して、この遺伝子群を活性化することができるということが観察される(
図16)。さらに、SULF1遺伝子の発現の場合、UPRplus3変種は、XBP1sおよびATF6f変種が共発現される場合に得られる活性よりも大きな活性化を示す。
【0165】
この結果は、UPRplusキメラたんぱく質が、折り畳まれていないたんぱく質応答に関連する遺伝子を活性化することができるということを示す。さらに、1、2、および3の変異体によって達成される活性化レベルは、両方のたんぱく質を同時発現することによって得られる活性化レベルと類似するか、またはそれ以上である(
図16)。ERADに関連するシャペロンBipおよびHERPUD遺伝子に関して、UPRplusの1、2、および3変異体がこれらの遺伝子を優先的に活性化し、これらの転写因子を同時発現する場合と類似の誘導レベルに達することができるということもまた観察された。得られた結果は、3つの独立した実験の平均に対応する。
【0166】
投与経路
ウイルスの投与経路は、標的ニューロンを感染させるために血液脳関門を通過させる。
【0167】
本発明においてこの目的を達成するために、2つの投与経路が主に定義されている。
【0168】
これらの経路の第1経路は経鼻である。一般に、経鼻投与される薬物は、全身循環を介して血流に入ることができ、脳に直接浸透することができるか、または場合によっては両方の経路に従うことができる。しかしながら、これらの経路の各々による薬物の流れを制御する多くの要因は完全には定義されていない。一般に、鼻腔に投与される薬物が移動することができる3つの経路が存在する。これらの経路には、鼻粘膜からの全身循環への直接的な侵入、ニューロンを介する軸索輸送による嗅球への侵入、および脳への直接的な侵入が包含される。異なるタイプのウイルスについて、種々のモデル基質に対するこれらの経路の各々の役割を支持する証拠を、以下に要約する。
【0170】
この表は本質的に包括的なものではなく、1つ以上の経路に従うことが示されている、異なる種類の溶質を強調するためのものである。
【0171】
CNSにおける細胞へのその他の投与経路には、以下が包含される。
【0172】
眼内の硝子体液などの液体区画への直接注入;脈絡叢、脳室上皮/髄膜に送達するための脳室内もしくはくも膜下腔内(**)の異なる経路を介する、脊椎の髄液中への直接投与、およびそこからこれらの層内に伸展するプロセスを介する近接する脳への直接投与;および一時的浸透圧もしくは薬理学的中断と組み合わせた動脈内注射により血液脳関門または血液腫瘍関門を介するその経路。
【0173】
用語(**)髄腔内(Intrathecal、intra + theca、「鞘内」)とは、鞘内の解剖学的空間または潜在的な空間、最も一般的には脳のくも膜または脊髄中に生じるか、または導入されるものを指す形容詞である。
【0174】
投与量計算
Ulusoy et al,.によると、ベクター滴定は、10
10〜10
12gc/mlの実証された用量で、1mlあたり10
9〜10
13ゲノムコピー(GC)の範囲を必要とする。他方で、評価されるベクターのあらゆる希釈倍率においては、10
11gc/mlの低い中程度の範囲を有さなければならないため、毒性が消失する。
【0175】
ヒトにおける用量
ヒトにおける用量範囲は、この範囲を異なる年齢群の適用に制限することなく、または年齢もしくは病態による分布の変更量で制限することなく、10
9〜10
30ウイルス単位/体重kgの間で見出される。
【0176】
同一の生物種の正常な(対照)生物および定義された暴露条件下でのストレスにおいて観察されるものとは区別できる標的生物の、形態、機能的能力、成長、発達、または寿命の検出可能な有害な変化を引き起こさない、実験または観察によって見出される物質の、最大濃度または量。
【0177】
適用法
rAAV2ベクターを、約60〜80ミクロンの先端直径を有するガラスキャピラリーを備えた5μLのHamiltonシリンジを使用して、NSに左右に注入した。適切な濃度のウイルス粒子を含有する2マイクロリットルの緩衝液を、0.4μl/分の速度で注入した。注射完了の5分後に針をゆっくりと抜いた。
【実施例】
【0179】
応用例
パーキンソン病およびハンチントン病は、黒質のドーパミン作動性ニューロンにおいて優先的に、選択的な神経細胞死を引き起こすたんぱく質凝集体の形成に関連する。これらの影響を観察するために、
図17に示すように、ウエスタンブロット試験を行った。
【0180】
3×10
5個のN2A細胞を30mmウェルに播種した。24時間後、pAAV−UPRplus、pAAV−XBP1s、またはpAAV−ATF6ベクターを同時形質移入し、pEGFP−ポリ−Q79ベクターをEffectene法で使用した。0.6μgの各ベクター+3.2μlのエンハンサー、および100μlのEC緩衝液を混合した。混合物をボルテックスで15秒間振とうし、室温で10分間インキュベートした。8μlのEffectene(Qiagen)を加え、ボルテックスで10秒間振とうし、室温で15分間インキュベートした。この溶液を500μlのDMEM 10%SFB培地と混合し、表面全体を覆う滴下培養プレートに添加した。
【0181】
発現の24時間後または48時間後、細胞を、細胞スクレーパーを用いて培養プレートから取り出し、収集し、4℃で5分間、2000rpmにて遠心分離した。沈殿物を、プロテアーゼ阻害剤(Roche)を添加した、1%Tritonを有するPBS緩衝液に再懸濁した。細胞を氷上において5秒間で3回超音波処理し、最後に、BCAたんぱく質アッセイ(ピアス、イリノイ州ロックフォード)を用いて各サンプルにおいてたんぱく質濃度を決定した(Zhang et al. 2014)。
【0182】
25μgの全たんぱく質を用いてたんぱく質試料を調製し、4Xチャージバッファー(Tris−HCl 0.2M[pH6.8]、SDS 10%、ブロモフェノールブルー0.05%およびグリセロール20%)と混合し、95℃で5分間加熱した。これらを8%変性剤ゲルに充填した。Tris−HCl 380mM[pH8.3]、アクリルアミド−ビス−アクリルアミド8%、SDS 0.1%、過硫酸アンモニウム0.1%、およびTEMED 0.06%を用いて8%ポリアクリルアミド分離ゲルを調製した。コンプレッサーポリアクリルアミドゲルを、Tris−HCl 60mM[pH6.8]、アクリルアミド−ビス−アクリルアミド4%、SDS 0.1%、過硫酸アンモニウム0.1%、およびTEMED 0.06%を用いて調製した。
【0183】
電気泳動は、100Vの定電圧でランニングバッファー(Tris 25mM、グリシン250mM、およびSDS 0.1%)中で行った。ゲル前面が青色でなくなった場合、電気泳動を停止した。続いて、たんぱく質をトランスファーバッファー(Tris 25mM、グリシン250mM、およびメタノール20%)中のPVDF膜に、100Vの定電圧で2時間30分、氷上において移動させた。次いで、膜をブロッキング溶液(PBS中の5%ミルク)中において室温で1時間、一定の攪拌下でインキュベートした。最後に、膜を次の抗体のいずれかと共にインキュベートし、5%ミルクPBS 0.02%Tweenで希釈した;抗GFP1:1000(Santa Cruz)または抗HSP90 1:3000(Santa Cruz)で、4℃にて16時間、絶えず攪拌しながらインキュベートする。翌日、膜をPBS Tween 0.1%で5分間3回洗浄し、その後、室温で1時間インキュベートし、関連する二次抗体である、1:3000(PBS Tween 0.02%中のミルク5%)に希釈された抗ウサギ−HRPまたは抗マウス−HRP(Invitrogen)を用いて一定に撹拌した。この期間が転動した後、膜をPBS Tween 0.1%で洗浄し、今回は5分間3回洗浄した。最後に、ウエスタンブロッティング基質キット(Pierce)およびChemidoc画像検出システム(Biorad)を用いて、たんぱく質分析を行った。
【0184】
上記で得られたデータを確認するために、フィルタートラップアッセイを行い、PBS−SDS 4×緩衝液と混合した25μgの全たんぱく質を使用して、これを行った。
【0185】
これらの試料を、セルロースアセテートフィルターを含有する真空ポンプに連結された96ウェルプレートに載せた。試料を添加した後、真空により高分子量種のみをフィルターに保持した。続いて、フィルターをブロッキング溶液(PBS中5%ミルク)中において室温で1時間、一定に攪拌しながらインキュベートした。その後、抗GFP抗体1:1000(Santa Cruz)と共にインキュベートし、5%ミルクPBS Tween 0.02%中において16時間4℃で一定に攪拌しながら希釈した。翌日、フィルターをPBS Tween 0.1%で5分間3回洗浄し、その後室温で1時間インキュベートし、1:3000(PBS Tween 0.02%中5%ミルク)に希釈した2次抗マウスHRP抗体(Invitrogen)で一定に撹拌した。
【0186】
この期間の後、膜をPBS Tween 0.1%で洗浄し、今回は5分間3回洗浄した。最後に、ウエスタンブロッティング基質キット(Pierce)およびChemidoc画像検出システム(Biorad)を用いて、たんぱく質分析を行った。
【0187】
結論:
UPRplus、XBP1s、およびATF6fたんぱく質を24時間発現させると、N2A細胞におけるポリQ79−EGFPたんぱく質の凝集率は減少した。UPRplus、XBP1s、およびATF6fたんぱく質の発現は、それぞれ、WBを用いて決定された凝集率である23.2%、47%、および51.4%にまで減少した。
【0188】
フィルタートラップ技術を用いて抗凝集効果もまた測定した。この場合、UPRplus、XBP1s、およびATF6fたんぱく質の発現は、24時間後に、それぞれ15.1%、15%、および39.1%に低下した。
【0189】
さらに、XBP1s、ATF6f、およびUPRplusたんぱく質の発現の抗凝集効果を、48時間後にWBを用いて評価した。ポリQ79の凝集は、UPRplus処理(47%減少)のみ有意に低下したことが観察された。
【0190】
さらに、フィルタートラップ技術により、XBP1s、ATF6f、およびUPRplusたんぱく質の発現は、ポリQ79−GFPのたんぱく質凝集を、対照に関して、48時間後に、それぞれ48.5%、65.6%、および24%まで低下させることが観察された。
【0191】
材料および方法
アデノ随伴ベクター産生
AAVウイルス血清型2(AAV2/6)粒子は、293−AAV細胞(Agilent Technologies、カリフォルニア州サンタクララ)の形質移入によって産生され、イオジキサノール勾配、続いてカラムアフィニティークロマトグラフィーで精製された。ゲノムが懸濁液中に含有するAAV粒子の数、ならびにHEK293T細胞におけるベクターの懸濁液の感染力を、TaqMan qPCRアッセイによって決定した。
【0192】
6つの変異体についてのアデノウイルスプラスミド(pAAV)の調製
この標的の開発のために、XBP1s配列、ヒトATF6f配列、およびそれぞれのリンカーを新規合成し、CMVプロモーターの下で、トランスジーンを発現するアデノウイルスプラスミドpAAV−CMV−MCSにクローニングした。HAタグ配列(
図17/17A)は、生成した構築物の全てに包含されているため、形質導入された細胞を同定することができた。空のアデノウイルスプラスミドpAAV−CMV−MCSを対照として使用した。
【0193】
生成した構築物の発現を確認するために、異なる構築物でHEK細胞を形質移入し、形質移入の48時間後に、抗HA抗体を用いてWBによって評価されたたんぱく質の抽出を行った。
【0194】
図10に示すように、本発明者らは、pAAV−XBP1s−HA(55kDa)、pAAV−ATF6f−HA(55kDa)、およびpCDNA−mXBP1s(55kDa)の発現制御と共に、変異体UPRplus(130kDa)の予想される分子量を有するバンドを検出した。
【0195】
リアルタイムPCR
異なるプラスミドでトランスフェクトしたHEK293細胞から全RNAを単離した。PBS中でホモジナイズした後、製造者が推奨するTrizol RNA抽出プロトコールに従った。cDNAは、高容量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems)を用いて合成した。SYBRグリーンおよびMx3005P QPCRシステム(Stratagene)を定量的RT−PCRに使用した。mRNAの相対定量は対照としてのβ−アクチンを用いた比較閾値サイクル法により計算した。配列のプライマーは、PrimerBankから得た(表XV)。
【0196】
【表4】
【0197】
ウエスタンブロット
本技術は実験1にて詳述する。
【0198】
培養
Neuro2A細胞およびHEK293T細胞をATCCから入手し、それぞれ10%または5%ウシ血清、および抗生物質(10000U/mlペニシリン、10mg/mlストレプトマイシン)を補充したDMEM培地中、37℃および5%CO
2で培養した。
【0199】
アッセイ
フィルタートラップアッセイ:全たんぱく質25μgを、酢酸セルロースフィルターを含有する真空ポンプ(Microfiltration Apparatus、bio-rad、http://www.bio-rad.com/en-us/applications-technologies/protein-blotting-equipment-cells-power-supplies#3)に連結された、96ウェルプレートに適用する。
【0200】
試料を添加した後、真空によって高分子量種のみをフィルターに保持した。次いで、フィルターをブロッキング溶液(PBS中5%ミルク)中において、室温で攪拌しながら1時間インキュベートした。次いで、それらを抗GFP抗体1:1000(Santa Cruz)と共にインキュベートし、撹拌しながら4℃で16時間、5%ミルク/PBS Tween 0.02%中において希釈した。翌日、フィルターをPBS Tween 0.1%で5分間3回洗浄し、次いで、1:3000(5%ミルク/PBS Tween 0.02%)に希釈した二次抗マウスHRP抗体(Invitrogen)でと共に一定に撹拌しながら、室温で1時間インキュベートした。
【0201】
Effectene法:この方法は、プラスミドを真核細胞に形質移入する方法からなり、製造者のプロトコール(Qiagen)によって記載され標準化されている。(https://www.qiagen.com/es/shop/assay-technologies/transfection-reagents/effectene-transfection-reagent/)。
【0202】
このプロトコールは、0.6μgの各ベクター+3.2μlのエンハンサー、および100μlのEC緩衝液を混合することからなる。混合物をボルテックスで10秒間振とうし、室温で10分間インキュベートする。次いで、8μlのEffecteneを加え、ボルテックスで10秒間振とうし、室温で15分間インキュベートした。この溶液を、500μlのDMEM 10%FBS培地と混合し、表面全体を覆う30mm滴下培養プレートに加える。
【0203】
統計
データは、平均およびSEMとして表される。実験に応じて、結果は、スチューデントのT検定、またはマンホイットニー検定、2元配置分散分析、その後、ポストホック検定としてホルム−シダックまたはボンフェローニ、もしくはランク上の1元配置分散分析によるクラスカル・ワリス、続いてポストホック検定としてダン試験またはボンフェローニを用いて、統計的に比較した。
【0204】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】