(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965279
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】電池用途のグラフェン封入電極活物質粒子のケミカルフリー製造
(51)【国際特許分類】
H01M 4/36 20060101AFI20211028BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20211028BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20211028BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20211028BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20211028BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20211028BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20211028BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20211028BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20211028BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20211028BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20211028BHJP
H01G 11/06 20130101ALN20211028BHJP
【FI】
H01M4/36 C
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 A
H01G11/42
H01G11/30
!H01G11/06
【請求項の数】28
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2018-560210(P2018-560210)
(86)(22)【出願日】2017年5月9日
(65)【公表番号】特表2019-522868(P2019-522868A)
(43)【公表日】2019年8月15日
(86)【国際出願番号】US2017031697
(87)【国際公開番号】WO2017200798
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2020年2月17日
(31)【優先権主張番号】15/156,504
(32)【優先日】2016年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518190776
【氏名又は名称】ナノテク インストゥルメンツ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanotek Instruments,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ツァーム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
【審査官】
原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0058397(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0255785(US,A1)
【文献】
特表2014−514683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/36 −4/62
H01M 4/139−4/1399
H01G 11/00 −11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン包有またはグラフェン封入電極活物質を黒鉛材料から直接製造する直接移動方法であって、前記方法が:
a)エネルギー衝突装置の衝突チャンバー中で黒鉛材料の複数の粒子と、固体電極活物質の複数の粒子とを混合して混合物を形成するステップであって、前記黒鉛材料が、インターカレート、酸化、および剥離があらかじめ行われておらず、前記衝突チャンバーが、あらかじめ製造された単離グラフェンシートを中に含まず、固体電極活物質の前記複数の粒子以外のボールミル粉砕媒体を含まないステップと;
b)黒鉛材料の前記粒子からグラフェンシートを剥離し、前記剥離したグラフェンシートを前記固体電極活物質粒子の表面まで移動させ、前記粒子を完全に包有または封入して、グラフェン包有またはグラフェン封入電極活物質の粒子を前記衝突チャンバーの内部で形成するのに十分な時間の長さである頻度およびある強度で前記エネルギー衝突装置を運転するステップと;
c)グラフェン包有またはグラフェン封入電極活物質の前記粒子を前記衝突チャンバーから回収するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記グラフェン包有電極活物質を電池電極中に組み込むステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、ある量の残留黒鉛材料が前記ステップb)後に残留し、前記方法が、前記グラフェン包有電極活物質および前記残留黒鉛材料を電池電極中に組み込むステップをさらに備え、前記残留黒鉛材料が前記電池電極中の伝導性添加剤として使用されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、ある量の残留黒鉛材料が前記ステップb)後に残留し、前記ステップc)が、前記残留量の前記黒鉛材料を前記グラフェン包有電極活物質から部分的または完全に分離するステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、固体電極活物質の前記粒子が、ステップa)の前に前記粒子中にあらかじめ充填された0.1重量%〜54.7重量%のリチウムイオンまたはナトリウムイオンを有するプレリチウム化またはプレナトリウム化粒子を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、固体電極活物質の前記粒子が、炭素、ピッチ、炭化樹脂、伝導性ポリマー、伝導性有機材料、金属コーティング、金属酸化物シェル、またはそれらの組合せから選択される伝導性材料の層があらかじめコーティングされた粒子を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、固体電極活物質の前記粒子が、ステップa)の前に炭素前駆体材料があらかじめコーティングされた粒子を含み、前記炭素前駆体材料が、コールタールピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、ポリマー、有機材料、またはそれらの組合せから選択され、それによって前記炭素前駆体材料は、固体電極活物質の前記粒子の表面と前記グラフェンシートとの間に存在し、前記方法が、前記グラフェン包有電極活物質を熱処理して、前記炭素前駆体材料を炭素材料および細孔に変換するステップをさらに備え、前記細孔が、固体電極活物質の前記粒子の表面と前記グラフェンシートとの間に空間を形成し、前記炭素材料が、固体電極活物質粒子の前記表面上にコーティングされるおよび/または前記グラフェンシートを互いに化学結合させることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、固体電極活物質の前記粒子が、金属、ピッチ、ポリマー、有機材料、またはそれらの組合せから選択される犠牲材料があらかじめコーティングされた粒子を含み、それによって前記犠牲材料は、固体電極活物質の前記粒子の表面と前記グラフェンシートとの間に存在し、前記方法が、前記犠牲材料を部分的または完全に除去して、前記固体電極活物質粒子の表面と前記グラフェンシートとの間に空間を形成するステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、電子および/またはリチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、もしくは亜鉛のイオンが伝導性である伝導性材料の液体または蒸気に、前記グラフェン包有電極活物質を曝露するステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、電極活物質の前記粒子が:
(A)リチウム化および非リチウム化ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびカドミウム(Cd);
(B)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co、またはCdと別の元素とのリチウム化および非リチウム化合金または金属間化合物;
(C)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、またはCdのリチウム化および非リチウム化酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物、ならびにそれらの混合物、複合材料、またはリチウム含有複合材料;
(D)Snのリチウム化および非リチウム化塩および水酸化物;
(E)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、リチウム含有酸化チタン、リチウム遷移金属酸化物;
ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるアノード活物質であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記電極活物質が、無機材料、有機もしくはポリマー材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、またはそれらの組合せから選択されるカソード活物質であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、コバルト酸ナトリウム ニッケル酸ナトリウム、マンガン酸ナトリウム、バナジウム酸ナトリウム、ナトリウム混合金属酸化物、リン酸鉄ナトリウム、リン酸マンガンナトリウム、リン酸バナジウムナトリウム、ナトリウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、多硫化リチウム、多硫化ナトリウム、多硫化マグネシウム、またはそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記電極活物質が、硫黄、硫黄化合物、硫黄−炭素複合材料、硫黄−ポリマー複合材料、多硫化リチウム、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、またはそれらの組合せから選択されるカソード活物質であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法において、前記無機材料が、TiS2、TaS2、MoS2、NbSe3、MnO2、CoO2、酸化鉄、酸化バナジウム、またはそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法において、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、VO2、LixVO2、V2O5、LixV2O5、V3O8、LixV3O8、LixV3O7、V4O9、LixV4O9、V6O13、LixV6O13、それらのドープされた種類のもの、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択される酸化バナジウムを含み、式中、0.1<x<5であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法において、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、層状化合物LiMO2、スピネル化合物LiM2O4、オリビン化合物LiMPO4、シリケート化合物Li2MSiO4、タボライト化合物LiMPO4F、ボレート化合物LiMBO3、またはそれらの組合せから選択され、式中のMは遷移金属または複数の遷移金属の混合物であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法において、前記無機材料が:(a)セレン化ビスマスもしくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイドもしくはトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属の硫化物、セレン化物、もしくはテルル化物;(d)窒化ホウ素、または(e)それらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法において、前記有機材料またはポリマー材料が、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン−4,5,9,10−テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11−ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5−アミノ−1,4−ダイヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS2)3]n)、リチウム化1,4,5,8−ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(Hexaazatrinaphtylene)(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN)6)、5−ベンジリデンヒダントイン、イサチン(Isatine)リチウム塩、ピロメリット酸ジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン誘導体(THQLi4)、N,N’−ジフェニル−2,3,5,6−テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’−ジアリル−2,3,5,6−テトラケトピペラジン(AP)、N,N’−ジプロピル−2,3,5,6−テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4−ベンゾキノン、5,7,12,14−ペンタセンテトロン(PT)、5−アミノ−2,3−ジヒドロ−1,4−ダイヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5−アミノ−1,4−ダイヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li4C6O6、Li2C6O6、Li6C6O6、またはそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記チオエーテルポリマーが、ポリ[メタンテトリル−テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4−ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン−1,1,2,2−テトラチオール)(PETT)を含むポリマー、共役芳香族部分からなる主鎖を有しペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2−フェニル−1,3−ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4−ジ(1,3−ジチオラン−2−イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5−テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB、またはポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項11に記載の方法において、前記有機材料が、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガン(II)フタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンクロリド、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、それらの化学的誘導体、またはそれらの組合せから選択されるフタロシアニン化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、前記電極活物質が、有機材料と無機材料または金属酸化物/リン酸塩/硫化物との混合物を含むカソード活物質であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法において、前記電極活物質粒子が、10nm〜20μmの直径または厚さを有する粉末、フレーク、ビーズ、ペレット、球、ワイヤ、繊維、フィラメント、ディスク、リボン、またはロッドを含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記直径または厚さが1μm〜10μmであることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法において、前記黒鉛材料が、天然黒鉛、合成黒鉛、高配向熱分解黒鉛、黒鉛繊維、黒鉛ナノファイバー、フッ化黒鉛、化学修飾黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、部分結晶性黒鉛、またはそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法において、前記エネルギー衝突装置が、振動ボールミル、遊星ボールミル、高エネルギーミル、バスケットミル、アジテーターボールミル、極低温ボールミル、マイクロボールミル、タンブラーボールミル、連続ボールミル、撹拌ボールミル、加圧ボールミル、プラズマ支援ボールミル、フリーザーミル、振動ふるい、ビーズミル、ナノビーズミル、超音波ホモジナイザーミル、遠心分離遊星ミキサー、真空ボールミル、または共鳴音響ミキサーであることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法において、前記グラフェンシートが単層グラフェンシートを含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法において、前記グラフェンシートが少なくとも80%の単層グラフェン、または10以下のグラフェン面を有する少なくとも80%の数層グラフェンを含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項1に記載の方法において、前記エネルギー衝突装置を運転する手順が、連続エネルギー衝突装置を用いて連続方法で行われることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に援用される2016年5月17日に出願された米国特許出願第15/156504号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、リチウム電池の分野に関し、特に、リチウム電池用のグラフェンで保護された電極活物質の環境に優しく費用対効果の高い製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アノード活物質の再検討
リチウムイオン電池の最も一般的に使用されるアノード材料は、リチウムとインターカレート可能な天然黒鉛および合成黒鉛(もしくは人造黒鉛)であり、結果として得られる黒鉛インターカレーション化合物(GIC)はLi
xC
6(式中、xは典型的には1未満である)で表すことができる。完全な黒鉛結晶のグラフェン面間の間隙中に可逆的にインターカレート可能なリチウムの最大量がx=1に対応し、それによって372mAh/gの理論比容量が画定される。
【0004】
黒鉛または炭素のアノードは、最初の数回の充電−放電サイクル中にリチウムと電解質との間(またはリチウムとアノード表面/エッジ原子または官能基との間)の反応によって得られる保護表面−電解質界面層(SEI)が存在するため、長いサイクル寿命を有することができる。この反応におけるリチウムは、電荷移動の目的が本来意図されたリチウムイオンの一部に由来する。SEIが形成されると、それらのリチウムイオンは不活性なSEI層の一部となって、不可逆的となり、すなわちそれらはもはや電荷移動の活性元素となることはできない。したがって、有効なSEI層の形成のために最小量のリチウムが使用されることが望ましい。SEIの形成に加えて、不可逆容量損失Q
irは、電解質/溶媒共インターカレーションおよび別の副反応によって生じる黒鉛の剥離によっても生じうる。
【0005】
炭素系または黒鉛系のアノード材料に加えて、可能性のあるアノード用途で評価されている別の無機材料としては、リチウム原子/イオンを収容できる、またはリチウムと反応できる金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物など、ならびに一連の金属、金属合金、および金属間化合物が挙げられる。これらの材料の中で、Li
aA(AはAlなどの金属であり、「a」は0<a#5を満たす)の組成式を有するリチウム合金は、たとえばLi
4Si(3,829mAh/g)、Li
4.4Si(4,200mAh/g)、Li
4.4Ge(1,623mAh/g)、Li
4.4Sn(993mAh/g)、Li
3Cd(715mAh/g)、Li
3Sb(660mAh/g)、Li
4.4Pb(569mAh/g)、LiZn(410mAh/g)、およびLi
3Bi(385mAh/g)など、高い理論容量のために、高い関心が持たれている。しかし、これらの材料から構成されるアノードでは、アノード活物質を出入りするリチウムイオンの挿入および抽出によって誘発されるアノード活物質の膨張および収縮のために、充電および放電サイクル中に激しい微粉化(合金粒子の細分化)が生じる。この膨張および収縮、ならびに結果として生じる活物質粒子の微粉化によって、活性粒子と伝導性添加剤との間の接触が減少し、アノード活物質とその集電体との間の接触が減少する。この劣化現象を
図1中に示している。これらの悪影響によって、充電−放電サイクル寿命が大幅に短縮される。
【0006】
このような機械的劣化に関連する問題を克服するために、3つの技術的方法が提案されている:
(1)おそらくは、粒子中に貯蔵されることがあり、粒子中の亀裂形成の推進力となるひずみエネルギーを減少させる目的で、活物質粒子のサイズを減少させること。しかし、粒度の減少は、液体電解質と場合により反応可能な表面積が広くなることを意味する。このような反応は、不可逆容量損失の原因となるので望ましくない。
(2)銅箔などの集電体上に薄膜の電極活物質を直接堆積すること。しかし、非常に小さい厚さ方向寸法(典型的には500nmよりもはるかに小さく、多くの場合100nmよりも必然的に薄い)を有するこのような薄膜構造は、ごく少量の活物質を電極(同じ電極または集電体表面積の場合)中に混入することができ、低い全リチウム貯蔵容量、および(単位質量当たりの容量は大きくなりうるが)単位電極表面積当たりの低いリチウム貯蔵容量が得られることを意味する。このような薄膜は、サイクルによって誘発される亀裂に対してより抵抗性にするために100nm未満の厚さを有する必要があり、全リチウム貯蔵容量および単位電極表面積当たりのリチウム貯蔵容量がさらに低下する。このような薄膜電池は、用途範囲が非常に限定される。望ましい典型的な電極厚さは100μm〜200μmである。これらの薄膜電極(<500nmまたはさらには<100nmの厚さを有する)は、3分の1どころではなく3桁の大きさで必要な厚さにおよばない。
(3)より活性の低いまたは不活性のマトリックスで保護された(その中に分散、またはそれによって封入された)小さな電極活性粒子、たとえば、炭素で被覆されたSi粒子、ゾルゲル黒鉛で保護されたSi、金属酸化物で被覆されたSiもしくはSn、およびモノマーで被覆されたSnナノ粒子から構成される複合材料を使用すること。おそらく、保護マトリックスによって、粒子の膨張または収縮に対する緩衝作用が得られ、電極活物質との電解質の接触および反応が防止される。アノード活性粒子の例は、Si、Sn、およびSnO
2である。残念ながら、Si粒子などの活物質粒子が電池充電ステップ中に膨張すると、保護コーティング材料の機械的脆弱性および/または脆性のために、保護コーティングは容易に破壊される。それ自体がリチウムイオン伝導性でもある利用可能な高強度および高靱性の材料はこれまで存在しない。
【0007】
活性粒子(SiおよびSnなど)の保護に使用されるコーティングまたはマトリックス材料は、炭素、ゾルゲル黒鉛、金属酸化物、モノマー、セラミック、および酸化リチウムであることにさらに留意することができる。これらの保護材料は単独では、すべて非常に脆く、弱く(低強度であり)、および/または非伝導性(たとえば、セラミックまたは酸化物のコーティング)である。理想的には、保護材料は以下の要求を満たすべきである。(a)コーティングまたはマトリックス材料は、リチウム化するときに電極活物質粒子が過度に膨張するのを抑制するのに役立つように、高い強度および剛性を有するべきである。(b)保護材料は、繰り返すサイクル中の崩壊を回避するために高い破壊靱性または亀裂形成に対する高い抵抗性も有するべきである。(c)保護材料は、電解質に対して不活性(非反応性)であるが、良好なリチウムイオン伝導体である必要がある。(d)保護材料によって、リチウムイオンを不可逆的に捕捉する多量の欠陥部位が生じてはならない。(e)保護材料は、リチウムイオン伝導性である必要がある。従来技術の保護材料のすべては、これらの要求に到達していない。したがって、結果として得られるアノードが、典型的には期待されるよりもはるかに低い可逆比容量を示すことが確認されることは驚くことではなかった。多くの場合、第1サイクル効率は非常に低い(ほとんどが80%未満、一部ではさらに60%未満)。さらに、ほとんどの場合、電極は多数のサイクルの動作が不可能である。さらに、これらの電極のほとんどは、高レートが不可能であり高放電率において許容できないほど低い容量を示す。
【0008】
これらおよびその他の理由のため、従来技術のほとんどの複合電極は、いくつかの点で欠陥を有し、たとえば、ほとんどの場合、十分よりも低い可逆容量、不十分なサイクル安定性、高い不可逆容量、リチウムイオン挿入および抽出ステップ中の内部応力またはひずみの軽減における無効性、ならびに他の望ましくない副次的作用を有する。
【0009】
特に関心の高い複合粒子は、炭素マトリックス中に分散した別個のSiおよび黒鉛の粒子の混合物であり;たとえばMaoら[“Carbon−coated Silicon Particle Powder as the Anode Material for Lithium Batteries and the Method of Making the Same,”米国特許出願公開第2005/0136330号明細書(2005年6月23日)]によって作製されるものである。中に分散した複合ナノSi(酸化物によって保護される)および黒鉛粒子を含有する炭素マトリックス、および黒鉛粒子の表面上に分布した炭素被覆Si粒子も関心が高い この場合も、これらの複合粒子では、低い比容量が得られるか、または少ない数のサイクルまででのみ充電−放電が可能となる。炭素は単独では比較的弱く脆性であり、ミクロンサイズの黒鉛粒子が存在しても、黒鉛粒子自体は比較的弱いので、炭素の機械的完全性は改善されないと思われる。これらの場合、黒鉛は、おそらくはアノード材料の導電性を改善するために使用された。さらに、ポリマー炭素、非晶質炭素、または前黒鉛化炭素は、最初の数サイクル中にリチウムを不可逆的に捕捉するリチウム捕捉部位が多すぎることがあり、過度の不可逆性となりうる。
【0010】
要約すると、従来技術では、リチウムイオン電池中のアノード材料としての使用に望ましい性質のすべてまたは大部分を有する複合材料は示されていない。したがって、長いサイクル寿命、高い可逆容量、低い不可逆容量、小さい粒度(高レート容量のため)、および一般に使用される電解質に対する適合性を有するリチウムイオン電池用の新規なアノードが切実かつ継続的に必要とされている。大量にこのような材料が即座にまたは容易に製造される方法も必要とされている。
【0011】
これらの要求に応えて、本発明者らの以前の出願の1つは、リチウムイオン電池アノードとして使用するためのナノスケールグラフェンプレートレット系複合組成物を開示している[A.Zhamu and B.Z.Jang,“Nano Graphene Platelet−Based Composite Anode Compositions for Lithium Ion Batteries,”米国特許出願第11/982,672号明細書(2007年11月5日);現在は米国特許第7,745,047号明細書(2010年6年29日)]。この組成物は、(a)アノード活物質のミクロンサイズまたはナノメートルサイズの粒子またはコーティングと、(b)複数のナノスケールのグラフェンプレートレット(NGP)とを含み、プレートレットは、100nm未満のプレートレット厚さを有するグラフェンシートまたはグラフェンシートのスタックを含み、粒子またはコーティングは、NGPに物理的に取り付けられるか、または化学的に結合される。ナノグラフェンプレートレット(NGP)は、個別のグラフェンシート(黒鉛結晶から単離された炭素原子の個別の底面)、または厚さ方向に一緒に結合した複数のグラフェン面のスタックである。NGPは、100nm未満の厚さと、10μmを超える場合も下回る場合もある長さ、幅、または直径とを有する。厚さは、より好ましくは10nm未満、最も好ましくは1nm未満である。
【0012】
本発明者らの別の特許出願では、より特殊な組成物が開示されており、これはNGPおよび/または別の伝導性フィラメントと、伝導性バインダーによってこれらのNGPまたはフィラメントに結合する選択されたアノード活物質粒子との3D網目構造から構成される[Jinjun Shi,Aruna Zhamu and Bor Z.Jang,“Conductive Nanocomposite−based Electrodes for Lithium Batteries,”米国特許出願第12/156,644号明細書(2008年6月4日)]。
図2に概略的に示されるさらに別の出願では、どちらも保護マトリックス(たとえば炭素マトリックス)中に分散されるNGPと電極活物質粒子とを含有するナノグラフェン強化ナノ複合固体粒子組成物が提供されている[Aruna Zhamu,Bor Z.Jang,and Jinjun Shi,“Nano Graphene Reinforced Nanocomposite for Lithium Battery Electrodes,”米国特許出願第12/315,555号明細書(2008年12月4日)]。
【0013】
アノード活物質の優れた支持体となるグラフェンの本発明者らの発見の後、他者による多くの後続の研究によって、この方法の有効性が確認されている。たとえば、Wangらは、Liイオンの挿入を向上させるための自己組織化TiO
2−グラフェン複合ナノ構造を研究している[D.Wang,et al.“Self−Assembled TiO
2−Graphene Hybrid Nanostructures for Enhanced Li−Ion Insertion.”ACS Nano,3(2009)907−914]。それらの結果、純粋なTiO
2相と比較すると、この複合体の比容量は高充電率において2倍を超えることが示される。高い充電−放電率におけるこの改善された容量は、金属酸化物電極中に埋め込まれた浸透グラフェン網目構造によって得られる電極の伝導率の増加によるものであった。しかし、これらすべての以前の研究は、アノード活物質粒子に電子伝導経路の網目構造を提供することのみに集中しており、アノード材料の加工の容易さ、電極の加工性、電極のタップ密度(特定の容積中に高密度材料を充填する能力)、および長期サイクル安定性などの別の重要な問題には対処できていない。たとえば、自己組織化複合ナノ構造の製造方法は、大量生産には適していない。使用される酸化グラフェンシートは、組立手順の前に、環境に望ましくないプロセスを使用して製造されている。アノード材料粒子でコーティングされたグラフェンシート単独は、電極製造には適しておらず(集電体上への材料のコーティングが困難なため)、結果として得られる電極は、典型的にはタップ密度が低くなりすぎる。さらに、紙を主成分とする複合構造は、現行のリチウムイオン電池製造設備には適合していない。これらすべては、実際の電池製造環境において対処する必要がある非常に重要な問題である。
【0014】
カソード活物質の再検討
リチウムイオンセル、リチウム金属セル、またはリチウム硫黄セルの中のすべてのカソード(正極)活物質は導電性が非常に低いため、典型的には5%〜20%の量の伝導性添加剤(たとえばカーボンブラック、微細黒鉛粒子、膨張黒鉛粒子、またはそれらの組合せ)を電極中に加える必要がある。リチウム硫黄セルの場合、カソード中の硫黄の伝導性支持体として50重量%と同程度の量の炭素量が使用される。しかし、伝導性添加剤は電極活物質ではない(すなわちリチウムイオンを可逆的に貯蔵することができない)。非活物質の使用は、LiFePO
4などの電極活物質の相対比率が低下する、すなわち希釈されることを意味する。たとえば、バインダーとしての5重量%のPVDFおよび伝導性添加剤としての5%のカーボンブラックをカソード中に混入することは、カソード活物質(たとえば、コバルト酸リチウム)の最大量がわずか90%となり、全リチウムイオン貯蔵容量が事実上低下することを意味する。より一般的に使用されるカソード活物質の比容量は既に非常に低い(140〜170mAh/g)ので、多量の非活物質が使用されて活物質の濃度が薄まる場合に、この問題がさらに悪化する。
【0015】
伝導性添加剤としての最新技術のカーボンブラック(CB)材料は、いくつかの欠点を有する:
(1)CBは、典型的には、典型的には球状の形状である複数の一次粒子の凝集体の形状で利用可能となる。この幾何学的特徴(最大寸法対最小寸法の比、すなわちアスペクト比が約1)と、CBが電気絶縁性マトリックス(たとえばコバルト酸リチウムおよびリン酸鉄リチウム)中の別個の粒子として分散した小さな相となる見解とのため、CB粒子が合体して電子伝導経路の3D網目構造を形成する浸透閾値に到達するために多量のCBが必要となる。
(2)CB自体は比較的低い導電率を有し、したがって、結果として得られる電極は、浸透閾値に到達する場合でさえも比較的低い伝導率のままとなる。結果として得られる複合電極を適度に伝導性にするために、比較的高い比率のCB(浸透閾値をはるかに超える)をカソード中に混入させる必要がある。
【0016】
明らかに、より効果的な導電性添加剤材料に対する切迫した要求が存在する。好ましくは、この導電性添加剤は高い熱伝導性でもある。このような熱伝導性添加剤は、Liイオン電池の電気化学的動作により発生する熱を散逸させることができ、それによって電池の信頼性が高まり、電池の熱暴走および破裂が問題となる可能性が低下する。高い導電率を有すると、伝導性添加剤を高い比率で加える必要性がなくなる。
【0017】
リチウム電池のカソード用の伝導性添加剤としてカーボンブラック(CB)およびアセチレンブラック(AB)以外の別の炭素ナノ材料を使用する試みがいくつか行われている。このようなものとしては、カーボンナノチューブ(CNT)、気相成長カーボンナノファイバー(VG−CNF)、およびカソード活物質粒子の表面の単純な炭素コーティングが挙げられる。その結果は十分なものではなく、したがって、現在では、事実上カーボンブラックおよび人造黒鉛粒子が、リチウムイオン電池産業において広く使用されているわずか2種類のカソード伝導性添加剤である。それらの理由は、単にCNTおよびVG−CNFの両方の明らかに高いコストだけではない。CNTおよびVG−CNFのもつれをなくし、それらを液体または固体の媒体中に均一に分散させることの困難さが、伝導性添加剤としてのこれらの高価な材料のより広範な利用への障害となっている。さらに、CNTおよびVG−CNFの両方の製造には、触媒としてかなりの量の遷移金属ナノ粒子の使用が通常は必要となる。これらの遷移金属粒子を除去することは困難であり、完全な除去は不可能であるため、それによってリチウム金属のサイクル安定性に悪影響が生じることがある。
【0018】
より安価な炭素コーティングに関しては、リン酸鉄リチウム中での使用が考慮され、炭素コーティング(典型的には、熱分解によって糖または樹脂などの前駆体を変換することによって得られる)の伝導率は比較的低い。炭素コーティングの伝導率を高めるために黒鉛化処理が行われるが、この処理は2,000℃を超える温度を必要とし、それによって下にあるカソード活物質(たとえば、LiFePO
4)が劣化する。
【0019】
別の方法の1つとして、Dingらは、LiFePO
4/グラフェン複合材料の電気化学的挙動を研究した[Y.Ding,et al.“Preparation of nano−structured LiFePO
4/graphene composites by co−precipitation method,”Electrochemistry Communications 12(2010)10−13]。共沈方法によって、グラフェンナノシートの両主面上にコーティングされたLiFePO
4ナノ粒子が形成される。次に、これらのLiFePO
4でコーティングされたグラフェンシートを互いに積層することによって、カソードが形成される。この方法はいくつかの大きな欠点を有する:
(1)LiFePO
4ナノ粒子が結合したグラフェンシートの2つの主面を有することで、結果として得られる電極には、積層体中の2つの隣接するコーティングされたシートの間で多くの絶縁体間の接触が生じる。
(2)どちらの面上でもグラフェン表面積のわずか30%未満がLiFePO
4粒子で覆われる。このためカソード活物質は比較的小さな比率となる。
(3)取扱中および電極製造中にLiFePO
4粒子はグラフェンシートから容易に分離する。
(4)本発明者らは、共沈方法によって形成されるナノ粒子が結合したグラフェンシートが、現行の電極コーティング設備を用いたカソードの製造には適していないことを見出した。特に、これらの粒子が結合したグラフェンシートは、単位電極堆積当たりに大きな質量を有する高密度状態に圧密化することができなかった。言い換えると、カソードのタップ密度が比較的低い。これは非常に重要な問題となるが、その理由は、LiFePO
4などの一般に使用されるすべてのカソード活物質は既に比較的低い比容量(mAh/g)を有し、多量のカソード活物質を特定の電極体積中に充填できないことは、カソード側の全体の容量が過度に低くなることを意味するからである(カソード活物質の典型的な比容量(140〜170mAh/g)は、アノード活物質の比容量(330〜360mAh/g)よりも既にはるかに低いことに注意されたい。このようなアンバランスは、リチウムイオン電池の設計および製造において主要な問題となっている)。
【0020】
グラフェン(単離グラフェンシートまたはナノグラフェンプレートレット)の再検討
単層グラフェンシートは、2次元の六角形格子を占める炭素原子から構成される。多層グラフェンは、2つ以上のグラフェン面から構成されるプレートレットである。個別の単層グラフェンシートおよび多層グラフェンプレートレットは、本明細書では一括してナノグラフェンプレートレット(NGP)またはグラフェン材料と記載される。NGPとしては、純粋なグラフェン(実質的に99%炭素原子)、わずかに酸化されたグラフェン(<5重量%の酸素)、酸化グラフェン(≧5重量%の酸素)、わずかにフッ素化されたグラフェン(<5重量%のフッ素)、フッ化グラフェン(≧5重量%のフッ素)、他のハロゲン化グラフェン、および化学官能化グラフェンが挙げられる。
【0021】
NGPは、一連の独特の物理的、化学的、および機械的性質を有することが分かっている。たとえば、グラフェンは、あらゆる既存の材料の中で最も高い固有強度および最も高い熱伝導率を示すことが分かった。グラフェンの実際の電子デバイス用途(たとえば、トランジスタ中の主要要素としてのSiの代替)は、今後5〜10年の間に実現するとは考えられていないが、複合材料中、およびエネルギー貯蔵装置の電極材料中のナノフィラーとしてのその用途は目前に迫っている。加工可能グラフェンシートを大量に利用できることが、グラフェンの複合物用途、エネルギー用途、および別の用途の開発に成功するために重要である。
【0022】
本発明者らの研究グループは、グラフェンを最初に発見した[B.Z.Jang and W.C.Huang,“Nano−scaled Graphene Plates”、2002年10月21日に提出された米国特許出願第10/274,473号明細書;現在は米国特許第7,071,258号明細書(07/04/2006)]。NGPおよびNGPナノ複合物の製造方法は本発明者らによって最近レビューされている[Bor Z.Jang and A Zhamu,“Processing of Nano Graphene Platelets (NGPs) and NGP Nanocomposites:A Review,”J.Materials Sci.43(2008)5092−5101]。本発明者らの研究によって、以下に概略を示すナノグラフェンプレートレットの確立された製造方法には従わないという点で新規である、単離ナノグラフェンプレートレットのケミカルフリー製造方法が得られた。さらに、この方法は、費用対効果が高く、大幅に少ない環境影響で新規グラフェン材料が得られるという点で有用性が高い。NGPを製造するために4つの主要な従来技術の方法が採用されてきた。これらの利点および欠点を以下に簡潔にまとめている。
【0023】
単離されたグラフェンシート(NGP)の製造についての従来技術の方法
方法1:酸化黒鉛(GO)プレートレットの化学的形成および還元
第1の方法(
図1)は、黒鉛インターカレーション化合物(GIC)、または実際には酸化黒鉛(GO)を得るために、インターカラントおよび酸化剤(たとえば、それぞれ濃硫酸および硝酸)を用いた天然黒鉛粉末の処理を伴う[William S.Hummers,Jr.,et al.,Preparation of Graphitic Oxide,Journal of the American Chemical Society,1958,p.1339]。インターカレーションまたは酸化の前、黒鉛は約0.335nmのグラフェン面間隔を有する(L
d=1/2 d
002=0.335nm)。インターカレーションおよび酸化処理を行うと、グラフェン間隔は、典型的には0.6nmを超える値まで増加する。これは、この化学的経路中に黒鉛材料に生じる第1の膨張段階である。得られたGICまたはGOは、次に、熱衝撃曝露、または溶液系の超音波支援グラフェン層剥離方法のいずれかを用いることでさらに膨張する(多くの場合で剥離と呼ばれる)。
【0024】
熱衝撃曝露方法では、典型的には依然として互いに相互接続する黒鉛フレークから構成される「黒鉛ワーム」の形態である剥離またはさらに膨張した黒鉛を形成するために、GICまたはGOを高温(典型的には800〜1,050℃)に短時間(典型的には15〜60秒)曝露して、GICまたはGOを剥離または膨張させる。この熱衝撃手順によって、一部分離した黒鉛フレークまたはグラフェンシートを製造することができるが、通常は、黒鉛フレークの大部分は相互接続されたままである。典型的には、次に、剥離した黒鉛または黒鉛ワームに対して、エアミル粉砕、機械的剪断、または水中の超音波処理を用いたフレーク分離処理が行われる。したがって、方法1は、基本的に、第1の膨張(酸化またはインターカレーション)と、さらなる膨張(または「剥離」)と、分離との3つの異なる手順を伴う。
【0025】
溶液系分離方法では、膨張または剥離したGO粉末を水中または水性アルコール溶液中に分散させ、これに対して超音波処理を行う。これらの方法において、超音波処理は、黒鉛のインターカレーションおよび酸化の後(すなわち第1の膨張の後)、ならびに典型的には得られたGICまたはGOの熱衝撃曝露の後(第2の膨張の後)に使用することに留意することが重要である。あるいは、面間空間内に存在するイオン間の反発力がグラフェン間ファンデルワールス力に打ち勝って、結果としてグラフェン層が分離するように、水中に分散させたGO粉末のイオン交換または長時間の精製手順が行われる。
【0026】
この従来の化学的製造方法に関連したいくつかの大きな問題が存在する:
(1)この方法は、硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムもしくは塩素酸ナトリウムなどのいくつかの望ましくない化学物質を多量に使用する必要がある。
(2)化学処理方法は、典型的には5時間から5日間の長いインターカレーションおよび酸化の時間を必要とする。
(3)強酸によって、「黒鉛中に入り込むこと」によるこの長いインターカレーションまたは酸化プロセス中に、多量の黒鉛が消費される(黒鉛が二酸化炭素に変換され、これがプロセス中に失われる)。強酸および酸化剤中に浸漬した黒鉛材料の20〜50重量%が失われることは珍しくない。
(4)熱剥離は、高温(典型的には800〜1,200℃)を必要とし、したがって、非常にエネルギーを消費するプロセスである。
(5)熱で誘発される剥離方法および溶液で誘発される剥離方法の両方は、非常に時間のかかる洗浄および精製のステップを必要とする。たとえば、洗浄して1グラムのGICを回収するために典型的には2.5kgの水が使用され、適切な処理が必要となる多量の廃水が生じる。
(6)熱で誘発される剥離方法および溶液で誘発される剥離方法の両方では、得られる生成物は、酸素含有量を減少させるためのさらなる化学的還元処理を行う必要があるGOプレートレットである。典型的には、還元後でさえも、GOプレートレットの導電率は、純粋なグラフェンの導電よりもはるかに低いままである。さらに、この還元手順は、ヒドラジンなどの毒性化学物質の利用を伴うことが多い。
(7)さらに、排液後にフレーク上に保持されるインターカレーション溶液の量は、黒鉛フレーク100重量部当たり20〜150部(pph)の溶液の範囲、より典型的には約50〜120pphの範囲となりうる。高温剥離中、フレークによって保持される残存インターカレート(intercalate)種は分解して硫黄化合物および窒素化合物の種々の化学種(たとえば、NO
xおよびSO
x)を生成し、これらは望ましくない。流出液は、環境に対して悪影響が生じないようにするために費用のかかる改善手順が必要となる。
【0027】
方法2:純粋なナノグラフェンプレートレットの直接形成
2002年に、本発明者らの研究チームは、ポリマーまたはピッチ前駆体から得られた部分的に炭化または黒鉛化されたポリマー炭素から単層および多層のグラフェンシートを単離することに成功した[B.Z.Jang and W.C.Huang,“Nano−scaled Graphene Plates”、2002年10月21日に提出された米国特許出願第10/274,473号明細書;現在は米国特許第7,071,258号明細書(2006年7月4日)]。Mackら[“Chemical manufacture of nanostructured materials”米国特許第6,872,330号明細書(2005年3月29日)]は、黒鉛にカリウム溶融物をインターカレートさせるステップと、結果としてKがインターカレートされた黒鉛をアルコールと接触させて、NGPを含む剥離黒鉛を乱暴に生成するステップとを含む方法を開発した。カリウムおよびナトリウムなどの純アルカリ金属は水分に対して非常に敏感であり、爆発の危険が生じるので、この方法は、真空中または非常に乾燥したグローブボックス環境中で注意深く行う必要がある。この方法は、NGPの大量生産には適していない。
【0028】
方法3:無機結晶表面上でのグラフェンシートのエピタキシャル成長および化学蒸着
基板上の超薄グラフェンシートの小規模製造は、熱分解に基づくエピタキシャル成長およびレーザー脱離イオン化技術によって行うことができる[Walt A.DeHeer,Claire Berger,Phillip N.First,“Patterned thin film graphite devices and method for making same”米国特許第7,327,000B2号明細書(2003年6月12日)]。わずか1層または数層の原子層を有する黒鉛のエピタキシャル膜は、それらの特有の特性およびデバイス基板としての大きな可能性のため、技術的および化学的に重要である。しかし、これらの方法は、複合材料およびエネルギー貯蔵用途の単離されたグラフェンシートの大量生産には適していない。
【0029】
方法4:ボトムアップ方法(小分子からのグラフェンの合成)
Yangら[“Two−dimensional Graphene Nano−ribbons,”J.Am.Chem.Soc.130(2008)4216−17]は、1,4−ジヨード−2,3,5,6−テトラフェニル−ベンゼンと4−ブロモフェニルボロン酸との鈴木−宮浦カップリングから開始する方法を用いて最長12nmの長さのナノグラフェンシートを合成した。結果として得られるヘキサフェニルベンゼン誘導体をさらに誘導体化させ環を縮合させて小さいグラフェンシートを得た。これは、これまでは非常に小さいグラフェンシートが生成されている遅いプロセスである。
【0030】
したがって、望ましくない化学物質の量の減少(またはこれらの化学物質全ての除去)、短縮された処理時間、より少ないエネルギー消費、より低いグラフェン酸化度、望ましくない化学種の排液中(たとえば、硫酸)または空気中(たとえば、SO
2およびNO
2)への流出の減少または排除が要求されるグラフェン製造方法が緊急に必要とされている。この方法によって、より純粋(より少ない酸化および損傷)で、より高い導電性で、より大きい/より幅広のグラフェンシートが製造可能となるべきである。これらのグラフェンシートは、強化用ポリマーマトリックス材料中で特に有用である。
【0031】
例としてリチウムイオン電池およびリチウム金属電池を使用すると、これらのグラフェンシートは、(a)改善されたサイクル安定性のための、繰り返される電池の充電/放電中の、アノード活物質もしくはカソード活物質の(たとえば体積膨張/収縮によって誘発される微粉化に対する)保護および電極の(アノードおよびカソードの両方の過度の体積変化に対する)保護と、(b)非活物質である(電池の重量および体積を増加させるが、リチウムイオンの貯蔵のさらなる容量は得られない)伝導性添加剤を過度の量で使用することなく電子伝導経路の3D網目構造が得られることとにおいて有効である必要がある。
【0032】
最も望ましくは、黒鉛材料から単離グラフェンシートを直接製造することができ、同時に、アノード活物質またはカソード活物質の粒子を包み込むまたは包有するためにそれらのグラフェンシートを移動させることができる方法が必要とされている。
【0033】
要約すると、本発明は、現行のリチウム電池と、これらの電池の保護に使用されるグラフェン材料との上述の制限を克服した。
【発明の概要】
【0034】
本発明は、多種多様の電池用の、非常に単純で、迅速で、規模の変更が可能であり、環境に優しく、費用対効果の高い、グラフェン包有(グラフェン封入)電極活物質(アノード活物質またはカソード活物質のいずれか)の製造方法を提供する。この方法は前述の要求を満たす。この方法は、黒鉛材料または炭素質材料(グラフェン源材料)から単層または数層グラフェンシートを直接製造し、これらの単離された(剥離された)グラフェンシートを電極活物質粒子の表面上に直ちに移動させて、グラフェン包有またはグラフェン封入電極活物質粒子を形成することを伴う。一実施形態では、黒鉛材料または炭素質材料は、インターカレート、酸化、および剥離が行われておらず、あらかじめ製造された単離グラフェンシートを含まない。
【0035】
特に、本発明は、グラフェン包有またはグラフェン封入電極活物質を黒鉛材料から直接製造する自己包接または自己封入方法を提供する。一実施形態では、この方法は:
a)エネルギー衝突装置の衝突チャンバー中で黒鉛材料の複数の粒子と、固体電極活物質の複数の粒子とを混合して混合物を形成するステップにおいて、黒鉛材料は、インターカレート、酸化、および剥離が行われておらず、あらかじめ製造された単離グラフェンシートを含まず、衝突チャンバーはボールミル粉砕媒体を含まない(すなわち、固体電極活物質粒子自体が衝突媒体として機能し、外部から加えられるボールミル粉砕媒体を必要としない、または含まない)ステップと;
b)グラフェンシートを黒鉛材料の粒子から固体電極活物質粒子の表面まで移動させて、グラフェン包有電極活物質を衝突チャンバーの内部で形成する(すなわち、固体電極活物質粒子が黒鉛材料粒子の表面上に衝突し、そこからグラフェンシートが剥離され、剥離したグラフェンシートが自然に固体電極活物質粒子を完全に包み込むまたは包有する)のに十分な時間の長さで、ある頻度およびある強度で、エネルギー衝突装置を操作するステップと;
c)グラフェン包有電極活物質の粒子を衝突チャンバーから回収する(これは衝突チャンバーのキャップを取り外し、グラフェン包有電極活物質の粒子を取り出すような単純なものであってよい)ステップと、
を含む。
【0036】
この方法は、グラフェン包有またはグラフェン封入電極活物質を電池電極中に混入させるステップをさらに含む。
【0037】
ステップb)後に、十分に利用されていない黒鉛材料の一部の粒子が存在することがある(すなわち、すべてのグラフェンシートが剥離されたとは限らない)。したがって、一実施形態では、ある量の残留黒鉛材料がステップb)後に残留し、本発明の方法は、グラフェン包有電極活物質と残留黒鉛材料とを電池電極中に混入させるステップをさらに含む。残留黒鉛材料は、電池電極中の伝導性フィラーとして機能することができる。
【0038】
別の実施形態では、ある量の残留黒鉛材料がステップb)後に残留し、ステップc)が、残留量の黒鉛材料をグラフェン包有電極活物質から部分的または完全に分離するステップを含む。
【0039】
ある実施形態では、固体電極活物質の粒子は、プレリチウム化またはプレナトリウム化された粒子を含む。言い換えると、電極活物質粒子(SiまたはSnO
2など)がグラフェンシートによって包有される前に、これらの粒子には、最大0.1重量%〜30重量%のLiまたはNaの量で(たとえば電気化学的充填によって)LiまたはNaイオンがあらかじめインターカレートされている。これは以下の検討事項に関して非常に革新的で独自の方法である。これらの粒子へのLiまたはNaのインターカレーションによって、SiまたはSnO
2の粒子は大きな体積(場合によりその元の体積の最大380%)まで膨張することができた。これらのプレリチウム化またはプレナトリウム化された粒子は、次にグラフェンシートによって包み込まれ、または包有され、電極中に混入され(すなわちSiまたはSnO
2のグラフェン包有粒子を含むアノード)、この電極は、リチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池の後の充電−放電サイクル中の電極の膨張および膨張によって誘発される故障がもはやなくなる。言い換えると、SiまたはSnO
2の粒子には、これらの粒子および包み込むグラフェンシートとの間に膨張空間が設けられている。驚くべきことに、本発明者らの実験データは、この方法によって、顕著に長い電池サイクル寿命と、電極活物質容量のより有効な利用とが実現されることを示している。
【0040】
ある実施形態では、本発明の「グラフェン直接移動および包有プロセス」の前に、固体電極活物質の粒子は、炭素、ピッチ、炭化樹脂、伝導性ポリマー、伝導性有機材料、金属コーティング、金属酸化物シェル、またはそれらの組合せから選択される伝導性材料のコーティング層があらかじめコーティングされた粒子を含む。コーティング層の厚さは、好ましくは1nm〜20μm、好ましくは10nm〜10μm、さらに好ましくは100nm〜1μmの範囲内である。
【0041】
ある実施形態では、固体電極活物質の粒子は、コールタールピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、ポリマー、有機材料、またはそれらの組合せから選択される炭素前駆体材料があらかじめコーティングされた粒子を含み、炭素前駆体材料が固体電極活物質粒子の表面とグラフェンシートとの間に存在し、この方法は、グラフェン包有電極活物質を熱処理して、炭素前駆体材料を炭素材料および細孔に変換するステップをさらに含み、細孔は、固体電極活物質粒子の表面とグラフェンシートとの間に空間を形成し、炭素材料は、固体電極活物質粒子の表面上にコーティングされる、および/またはグラフェンシートを互いに化学結合させる。
【0042】
ある実施形態では、固体電極活物質の粒子は、金属、ピッチ、ポリマー、有機材料、またはそれらの組合せから選択される犠牲材料があらかじめコーティングされた粒子を含み、それによって犠牲材料が固体電極活物質の粒子の表面とグラフェンシートとの間に存在し、この方法は、犠牲材料を部分的または完全に除去して、固体電極活物質粒子の表面とグラフェンシートとの間に空間を形成するステップをさらに含む。
【0043】
ある実施形態では、本発明の方法は、電子および/またはリチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、もしくは亜鉛のイオンが伝導性である伝導性材料の液体または蒸気に、グラフェン包有電極活物質を曝露するステップをさらに含む。
【0044】
電極活物質の粒子は:(A)リチウム化および非リチウム化ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびカドミウム(Cd);(B)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co、またはCdと別の元素とのリチウム化および非リチウム化合金または金属間化合物;(C)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、またはCdのリチウム化および非リチウム化酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物、ならびにそれらの混合物、複合材料、またはリチウム含有複合材料;(D)Snのリチウム化および非リチウム化塩および水酸化物;(E)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、リチウム含有酸化チタン、リチウム遷移金属酸化物;ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるアノード活物質であってよい。
【0045】
電極活物質は、無機材料、有機もしくはポリマー材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、またはそれらの組合せから選択されるカソード活物質であってよい。金属酸化物/リン酸塩/硫化物は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、コバルト酸ナトリウム ニッケル酸ナトリウム、マンガン酸ナトリウム、バナジウム酸ナトリウム、ナトリウム混合金属酸化物、リン酸鉄ナトリウム、リン酸マンガンナトリウム、リン酸バナジウムナトリウム、ナトリウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、多硫化リチウム、多硫化ナトリウム、多硫化マグネシウム、またはそれらの組合せから選択することができる。
【0046】
ある実施形態では、電極活物質は、硫黄、硫黄化合物、硫黄−炭素複合材料、硫黄−ポリマー複合材料、多硫化リチウム、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、またはそれらの組合せから選択されるカソード活物質であってよい。無機材料は、TiS
2、TaS
2、MoS
2、NbSe
3、MnO
2、CoO
2、酸化鉄、酸化バナジウム、またはそれらの組合せから選択することができる。
【0047】
金属酸化物/リン酸塩/硫化物は、VO
2、Li
xVO
2、V
2O
5、Li
xV
2O
5、V
3O
8、Li
xV
3O
8、Li
xV
3O
7、V
4O
9、Li
xV
4O
9、V
6O
13、Li
xV
6O
13、それらのドープされた種類のもの、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択される酸化バナジウムを含み、式中、0.1<x<5である。ある実施形態では、金属酸化物/リン酸塩/硫化物は、層状化合物LiMO
2、スピネル化合物LiM
2O
4、オリビン化合物LiMPO
4、シリケート化合物Li
2MSiO
4、タボライト化合物LiMPO
4F、ボレート化合物LiMBO
3、またはそれらの組合せから選択され、式中のMは遷移金属または複数の遷移金属の混合物である。
【0048】
無機材料は:(a)セレン化ビスマスもしくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイドもしくはトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属の硫化物、セレン化物、もしくはテルル化物;(d)窒化ホウ素、または(e)それらの組合せから選択することができる。
【0049】
有機材料またはポリマー材料は、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン−4,5,9,10−テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11−ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5−アミノ−1,4−ダイヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS
2)
3]n)、リチウム化1,4,5,8−ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(Hexaazatrinaphtylene)(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN)
6)、5−ベンジリデンヒダントイン、イサチン(Isatine)リチウム塩、ピロメリット酸ジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン誘導体(THQLi
4)、N,N’−ジフェニル−2,3,5,6−テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’−ジアリル−2,3,5,6−テトラケトピペラジン(AP)、N,N’−ジプロピル−2,3,5,6−テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4−ベンゾキノン、5,7,12,14−ペンタセンテトロン(PT)、5−アミノ−2,3−ジヒドロ−1,4−ダイヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5−アミノ−1,4−ダイヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li
4C
6O
6、Li
2C
6O
6、Li
6C
6O
6、またはそれらの組合せから選択される。これらの化合物は、好ましくは、それらの導電性を改善し、黒鉛材料粒子からグラフェンシートを剥離できるように剛性を改善するために伝導性材料と混合される。
【0050】
上記一覧のチオエーテルポリマーは、ポリ[メタンテトリル−テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4−ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン−1,1,2,2−テトラチオール)(PETT)を含むポリマー、共役芳香族部分からなる主鎖を有しペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2−フェニル−1,3−ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4−ジ(1,3−ジチオラン−2−イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5−テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB、またはポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択することができる。
【0051】
ある実施形態では、有機材料は、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガン(II)フタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンクロリド、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、それらの化学的誘導体、またはそれらの組合せから選択されるフタロシアニン化合物を含む。これらの化合物は、好ましくは、それらの導電性を改善し、黒鉛材料粒子からグラフェンシートを剥離できるように剛性を改善するために伝導性材料と混合される。
【0052】
ある実施形態では、電極活物質粒子は、10nm〜20μmの直径または厚さを有する粉末、フレーク、ビーズ、ペレット、球、ワイヤ、繊維、フィラメント、ディスク、リボン、またはロッドを含む。好ましくは、直径または厚さは1μm〜100μmである。
【0053】
本発明による方法では、黒鉛材料は、天然黒鉛、合成黒鉛、高配向熱分解黒鉛、黒鉛繊維、黒鉛ナノファイバー、フッ化黒鉛、化学修飾黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、部分結晶性黒鉛、またはそれらの組合せから選択することができる。
【0054】
本発明の方法のエネルギー衝突装置は、振動ボールミル、遊星ボールミル、高エネルギーミル、バスケットミル、アジテーターボールミル、極低温ボールミル、マイクロボールミル、タンブラーボールミル、連続ボールミル、撹拌ボールミル、加圧ボールミル、プラズマ支援ボールミル、フリーザーミル、振動ふるい、ビーズミル、ナノビーズミル、超音波ホモジナイザーミル、遠心分離遊星ミキサー、真空ボールミル、または共鳴音響ミキサーであってよい。エネルギー衝突装置の操作手順は、連続エネルギー衝突装置を用いて連続方法で行うことができる
【0055】
グラフェン包有電極活物質粒子中で、グラフェンシートは単層グラフェンシートを含む。ある実施形態では、グラフェンシートは、少なくとも80%の単層グラフェン、または10以下のグラフェン面を有する少なくとも80%の数層グラフェンを含む。
【0056】
衝突チャンバーは官能化剤をさらに含むことができ、エネルギー衝突装置を操作するステップ(b)は、上記グラフェンシートを上記官能化剤で化学官能化する機能を果たす。官能化剤は、アルキルもしくはアリールシラン、アルキルもしくはアラルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基、スルホネート基(−SO
3H)、アルデヒド基、キノイダル、フルオロカーボン、またはそれらの組合せから選択される化学官能基を含むことができる。
【0057】
ある実施形態では、官能化剤は、ヒドロキシル、ペルオキシド、エーテル、ケト、およびアルデヒドからなる群から選択される酸素化基を含む。ある実施形態では、官能化剤は、SO
3H、COOH、NH
2、OH、R’CHOH、CHO、CN、COCl、ハライド、COSH、SH、COOR’、SR’、SiR’
3、Si(−OR’−)
yR’
3−y、Si(−O−SiR’
2−)OR’、R”、Li、AlR’
2、Hg−X、TlZ
2、およびMg−X(式中、yは3以下の整数であり、R’は、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、またはアラルキル、シクロアリール、またはポリ(アルキルエーテル)であり、R”は、フルオロアルキル、フルオロアリール、フルオロシクロアルキル、フルオロアラルキル、またはシクロアリールであり、Xはハライドであり、Zは、カルボキシレートまたはトリフルオロアセテートである)、およびそれらの組合せからなる群から選択される官能基を含む。
【0058】
ある実施形態では、官能化剤は、アミドアミン、ポリアミド、脂肪族アミン、変性脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、無水物、ケチミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ポリエチレンポリアミン、ポリアミンエポキシ付加体、フェノール系硬化剤、非臭素化硬化剤、非アミン硬化剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される官能基を含む。
【0059】
官能化剤は、OY、NHY、O=C−OY、P=C−NR’Y、O=C−SY、O=C−Y、−CR’1−OY、N’Y、またはC’Yから選択される官能基を含むことができ、Yは、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、酵素、抗体、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、抗原、もしくは酵素基質、酵素阻害剤、もしくは酵素基質の遷移状態アナログの官能基である、またはR’−OH、R’−NR’
2、R’SH、R’CHO、R’CN、R’X、R’N
+(R’)
3X
−、R’SiR’
3、R’Si(−OR’−)
yR’
3−y、R’Si(−O−SiR’
2−)OR’、R’−R”、R’−N−CO、(C
2H
4O−)
wH、(−C
3H
6O−)
wH、(−C
2H
4O)
w−R’、(C
3H
6O)
w−R’、R’から選択され、wは1を超え200未満の整数である。
【0060】
本発明は、上記方法によって製造された固体活物質のグラフェン包有粒子の材料において、グラフェンの比率が、グラフェンおよび固体活物質粒子を合わせた全重量を基準として0.01重量%〜20重量%である材料も提供する。
【0061】
本発明による方法により製造されたグラフェン包有電極活物質を含む電池電極、およびそのような電極を含む電池も提供される。グラフェン包有電極活物質を含む電池電極は、リチウムイオン電池、リチウム金属二次電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、リチウムセレン電池、ナトリウムイオン電池、ナトリウム金属二次電池、ナトリウム硫黄電池、ナトリウム空気電池、マグネシウムイオン電池、マグネシウム金属電池、アルミニウムイオン電池、アルミニウム金属二次電池、亜鉛イオン電池、亜鉛金属電池、または亜鉛空気電池であってよい。
【0062】
従来の研究者および製造者は、工業的な量でグラフェンを製造するために、より複雑で、時間がかかり、費用のかかる方法に集中していたことを考慮すると、本発明のグラフェン製造ステップ自体(グラフェンシートを黒鉛粒子から直接剥離し、直ちにまたは同時にこれらのグラフェンシートを電極活物質粒子表面に移動させる)が、非常に驚くべきことであることに留意されたい。言い換えると、大量の単離グラフェンシート(NGP)を製造するために化学的インターカレーションおよび酸化が必要であると一般に考えられていた。本発明は、この予想を多くの方法で否定する:
1.化学的インターカレーションおよび酸化(グラフェン間の空間の膨張、グラフェン面のさらなる膨張または剥離、ならびに剥離したグラフェンシートの完全な分離が必要)とは異なり、本発明の方法は、原材料の黒鉛材料からグラフェンシートを直接除去し、これらのグラフェンシートを電極活物質粒子の表面に移動させる。望ましくない化学物質(たとえば硫酸および硝酸)は使用されない。
2.酸化およびインターカレーションとは異なり、純粋なグラフェンシートを電極活物質上に移動させることができる。シートの酸化による損傷がないことで、より高い導電率および熱伝導率を有するグラフェン封入粒子製品が形成可能となる。
3.一般的な製造方法とは逆に、かなりの量の水または溶媒を必要とする洗浄プロセスが不要である
4.小さなグラフェンシートを製造可能なボトムアップ製造方法とは異なり、本発明の方法を用いて大きなグラフェンシートを製造することができる。
5.CVDおよび溶液系金属有機製造方法とは異なり、酸化グラフェンをグラフェンに還元し、金属有機化合物を純金属に還元するための高温が不要である。これによって、電極活物質中への炭素の望ましくない拡散の可能性が大きく低下する。
6.CVDおよび溶液系金属有機製造方法とは異なり、この方法は、ほぼあらゆる電極活物質に適用できる。電極活物質は、CVDプロセスの場合に必要となるような適合性の「テンプレート」または触媒である必要がない。
7.この直接移動プロセスは、外部から加えられるボールミル粉砕媒体(ジルコニアビーズまたはプラスチックビーズなど)を使用する必要がない。電極活物質粒子自体がグラフェン剥離媒体となる。追加の粉砕媒体が存在すると、過度な厚さのグラフェンシェルが得られることが多く、それによって、電池シェルの単位重量当たりの活物質の量が減少し、全エネルギー密度が低下する。これらの観察は顕著であり、予期せぬものである。
8.この方法によって、グラフェンシートの連続相互侵入三次元網目構造を形成することができる。
9.本発明は、連続エネルギー衝突装置中での工業規模の製造に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】
図1は、長時間の化学酸化/インターカレーション、洗浄、および高温剥離手順を伴う、高度に酸化されたグラフェンシート(またはナノグラフェンプレートレット、NGP)の最も一般的に使用される従来技術の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、エネルギー衝突装置によるグラフェン包有またはグラフェン封入電極活物質粒子の本発明による製造方法を示す図である。
【
図3】
図3は、連続ボールミルによるグラフェン包有電極活物質粒子の本発明による製造方法を示す図である。
【
図4】
図4は、a)保護されていないCo
3O
4粒子を含むものと、b)還元酸化グラフェン(RGO)包有Co
3O
4粒子(従来技術の方法の1つ)と、c)本発明の直接移動方法によって製造されたグラフェン封入Co
3O
4粒子とのCo
3O
4粒子系アノードを特徴とする3つのリチウムセルの充電−放電サイクル挙動である。
【
図5】
図5は、一方は保護されていないSnO
2粒子を含み、他方は本発明の直接移動方法によって製造されたグラフェン封入SnO
2粒子を含むSnO
2粒子系アノードを特徴とする2つのリチウムセルの充電−放電サイクル挙動である。
【
図6】
図6は、a)保護されていないSi粒子を含むものと、b)間接移動方法(外部から加えれた粉砕媒体を使用)によって製造されたグラフェン包有Si粒子と、c)本発明の直接移動方法(Si粒子自体がグラフェン剥離剤となる)によって製造されたグラフェン封入Si粒子とのミクロンスケール(3μm)のSi粒子系アノードを特徴とする3つのリチウムセルの充電−放電サイクル挙動である。
【
図7】
図7は、一方は(12重量%の炭素と混合された)保護されていないLFO粒子を含み、他方は本発明の直接移動方法によって製造されたグラフェンに封入され炭素が添加されたLFP粒子(4%グラフェン+8%C)を含むリン酸鉄リチウム(LFP)粒子系カソードを特徴とする2つのリチウムセルの充電−放電サイクル挙動である。
【
図8】
図8は、a)(10重量%カーボンブラック粒子と混合された保護されていないLiV
2O
5ナノロッドを含むものと、b)直接移動方法によって製造されたグラフェン包有LiV
2O
5ナノロッド(約5%のグラフェン+7%のC)と、c)炭素マトリックスによって保護されたLiV
2O
5ナノロッドとのLiV
2O
5ナノロッド系カソードを特徴とする3つのリチウムセルの充電−放電サイクル挙動である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
炭素材料は、実質的に非晶質の構造(ガラス状炭素)、高度に組織化された結晶(黒鉛)、または種々の比率およびサイズの黒鉛微結晶および欠陥が非晶質マトリックス中に分散することを特徴とするあらゆる種類の中間構造を想定することができる。典型的には、黒鉛微結晶は、底面に対して垂直の方向であるc軸方向でファンデルワールス力によって互いに結合する多数のグラフェンシートまたは底面から構成される。これらの黒鉛微結晶は、典型的にはミクロンサイズまたはナノメートルサイズである。これらの黒鉛微結晶は、黒鉛フレーク、炭素/黒鉛繊維セグメント、炭素/黒鉛ウィスカー、または炭素/黒鉛ナノファイバーであってよい黒鉛粒子中の結晶の欠陥または非晶質相の中に分散している、またはそれらと連結している。言い換えると、グラフェン面(炭素原子の六角形格子構造)は、黒鉛粒子のかなりの部分を構成する。
【0065】
本発明の好ましい特定の一実施形態は、炭素原子のグラフェン面(単層または数層グラフェンシートである原子の1〜10個の面)を剥離し、それらを電極活物質粒子の表面に直接移動させる方法である。グラフェンシートまたはナノグラフェンプレートレット(NGP)は、グラフェン面の1つのシート、または互いに積層または結合したグラフェン面の複数のシート(典型的には、多層プレートレット1つ当たり平均で10未満のシート)から実質的に構成される。グラフェンシートまたは六角形底面とも呼ばれる各グラフェン面は、炭素原子の2次元六角形構造を含む。各プレートレットは、黒鉛面に平行な長さおよび幅、ならびに黒鉛面と直交する厚さを有する。定義により、NGPの厚さは100ナノメートル(nm)以下であり、単一シートのNGPは0.34nmの薄さである。しかし、本発明の方法により製造されたNGPは、大部分が単層グラフェンであり、一部が数層グラフェンシート(<5層)である。NGPの長さおよび幅は、典型的には200nm〜20μmの間であるが、供給源の黒鉛材料粒子のサイズによってより大きいまたはより小さい場合もある。
【0066】
本発明は、グラフェンシートの従来技術の製造方法に関連する実質的にすべての欠点を回避し、製造されたグラフェンシートと電極活物質の粒子とを互いに結合させて複合またはハイブリッド電極活物質を形成する別個の(追加の)方法を実施する必要がなくなる、非常に単純で、迅速で、規模の変更が可能であり、環境に優しく、費用対効果の高い方法を提供する。
【0067】
図2中に概略的に示されるように、この方法の好ましい一実施形態は、供給源の黒鉛材料の粒子と、固体電極活物質の粒子(ボールミル粉砕媒体などの外部から加えられる衝突ボールは有さない)とを衝突チャンバー中に入れることを伴う。投入後、得られる混合物は衝突エネルギーに曝露され、これは、たとえば、チャンバーを回転させて活物質粒子を黒鉛粒子に衝突可能にすることによって行われる。これらの繰り返される衝突事象(高頻度および高強度で起こる)は、黒鉛材料粒子の表面からグラフェンシートを剥離し、直ちに直接、これらのグラフェンシートを活物質粒子の表面に移動させて、グラフェン包有活物質粒子を形成する役割を果たす。典型的には、粒子全体がグラフェンシートで覆われる(完全に包み込まれる、包有される、または封入される)。これを本明細書では「直接移動」プロセスと呼ぶ。
【0068】
あまり望ましくないが別の選択肢として、衝突ボール(たとえばステンレス鋼またはジルコニアビーズ)を衝突チャンバー中に加えることができ、それによって、グラフェンシートは衝突ボールによっても剥離され、最初にこれらの衝突ボールの表面に一時的に移動する。グラフェン被覆衝突ボールが次に固体電極活物質粒子に衝突すると、グラフェンシートが電極活物質粒子の表面に移動して、グラフェン被覆活物質粒子が形成される。これは「間接移動」プロセスである。このような直接移動プロセスにおける主要な欠点の1つは、外部から加えた衝突ボール(たとえばボールミル粉砕媒体)のグラフェン包有粒子からの分離が必要なことである。しかし、これは常に可能とは限らず、経済的に実現可能とは限らない。
【0069】
2時間未満(多くの場合は1時間未満)の直接移動プロセスを実施すると、供給源の黒鉛粒子の構成グラフェンシートの大部分が剥離され、大部分が単層グラフェンおよび数層グラフェン(大部分が5層未満または5つ未満のグラフェン面)を形成する。直接移動プロセス(グラフェンシートが活物質粒子を包み込んだ)後、残留黒鉛粒子(存在する場合)は、多岐にわたる方法を用いてグラフェン包有(グラフェン封入)粒子から分離される。残留黒鉛粒子(存在する場合)からのグラフェン包有(グラフェン封入)粒子の分離または分級は、それらの重量または密度、粒度、磁気的性質などの差に基づいて容易に行うことができる。結果として得られるグラフェン包有粒子は既に二成分材料であり、すなわちこれらは既に「混合」されており、単離グラフェンシートを電極活物質粒子と混合する別個のプロセスを有する必要はない。
【0070】
言い換えると、グラフェンシートの製造と、グラフェンシートの電極活物質との混合とが、1つの作業で実質的に同時に行われる。これは、最初にグラフェンシートを製造し、続いてグラフェンシートを活物質と混合する従来の方法とは全く対照的である。従来の乾式混合は、典型的には、2つまたは複数の成分の均一な混合または分散が得られない。ナノ材料を溶媒中に適切に分散させて、集電体上にコーティングするための電池スラリー材料を形成することも困難である。
【0071】
図1中に示されるように、グラフェンシートまたはプレートレットのみを製造するための従来技術の化学的方法は、典型的には、濃硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムまたは過塩素酸ナトリウムなどの酸化剤の混合物中に黒鉛粉末を浸漬し、化学的インターカレーション/酸化反応を終了させるために典型的には5〜120時間を要する反応性材料を形成することを含む。反応が終了すると、得られたスラリーは、水によるすすぎおよび洗浄のステップが繰り返され、次に水を除去するための乾燥処理が行われる。得られた乾燥粉末は、黒鉛インターカレーション化合物(GIC)または酸化黒鉛(GO)と呼ばれるものであり、次に熱衝撃処理が行われる。これは、典型的には800〜1100℃(より典型的には950〜1050℃)の温度にあらかじめ設定された炉の中にGICを入れることによって行うことができる。この結果得られる生成物は、典型的には高酸化グラフェン(すなわち高酸素含有量の酸化グラフェン)であり、還元酸化グラフェン(RGO)を得るためにはこれを化学的または熱的に還元する必要がある。RGOは、高欠陥集団を含むことが分かっており、したがって純粋なグラフェンほど導電性ではない。本発明者らは、純粋なグラフェンペーパー(本明細書に記載のように作製される、純粋なグラフェンシートの真空支援濾過によって作製した)は1,500〜4,500S/cmの範囲内の導電率値を示すことを確認している。対照的に、同じ製紙手順によって作製されたRGOペーパーは、典型的には100〜1,000S/cmの範囲内の導電率値を示す。
【0072】
ボールミル混合の最も一般的な実施では、あらかじめ製造したグラフェンシートまたはプレートレットが電極活物質粉末に加えられる。ボールミルによって衝突エネルギーをある時間加えることによって、グラフェンプレートレットまたはシートを粉末中に分散させる。これは、多くの場合、液体(溶媒)溶液中で行われる。このグラフェン/活物質混合プロセスの欠点は明らかであり、グラフェンは費用のかかる投入材料であり、溶媒の回収が必要であり、最も顕著には、プロセスへのグラフェン投入材料が、前の処理中に酸化によって損傷していることである。これによって、熱伝導率および導電率などの望ましい最終特性が低下する。
【0073】
別の従来技術の方法の1つは、金属ナノ粒子上へのCVDのコーティングである。これはすべての従来技術の方法の中で最も限定されたものであり、炭素原子を形成するための炭化水素ガスの分解を促進するために適切な触媒であり、グラフェンを上に成長させるテンプレートとしてのある種の金属上でのみ可能となる。「ボトムアップ」グラフェン製造方法として、費用のかかる資本設備および費用のかかる投入材料が必要となる。
【0074】
グラフェン被覆電極活物質粒子を製造するためのこれらすべての従来技術の方法では、単離グラフェンシートと活物質の粒子とを溶媒(たとえばNMP)中に分散させて、スラリーが形成される。次にこのスラリーを乾燥させて(たとえば噴霧乾燥を使用)、グラフェン−活物質複合粒子が形成される。これらの複合材料は、必ずしも、完全に包み込まれたまたは包有された活物質粒子の形態または構造を有するわけではない。
【0075】
対照的に、本発明による衝突方法は、グラフェンの製造、官能化(希望する場合)、およびグラフェンと電極活物質粒子との混合の組合せが1つの作業で行われる。この迅速かつ環境に優しい方法では、多量の化学物質の使用が回避されるだけでなく、従来方法によって製造される熱還元酸化グラフェンとは対照的に、より高品質の純粋なグラフェンの包有用グラフェンシートも製造される。純粋なグラフェンによって、より高い導電率および熱伝導率を有する包有粒子を形成可能である。
【0076】
機構は依然として完全には理解されていないが、本発明のこの画期的な方法では、グラフェン面の膨張、インターカラントの侵入、剥離、およびグラフェンシートの分離の通常必要な機能が実質的に排除され、その代わりに単一の完全に機械的な剥離プロセスが使用される。この方法全体は、2時間未満(典型的には10分〜1時間)で行うことができ、化学物質を加えずに行うことができる。このことは、最先端の科学者および技術者または当技術分野の熟練者にとってさえも、非常に驚異的で衝撃的で驚くべきことである。
【0077】
本発明の研究の別の驚くべき結果の1つは、粒度の減少および前処理を行うことなく、多種多様な炭素質材料および黒鉛材料を直接処理できることを確認したことである。黒鉛の粒度は、電極活物質の粒度よりも、小さい場合も、同等の場合も、大きい場合もある。この黒鉛材料は、天然黒鉛、合成黒鉛、高配向熱分解黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、黒鉛繊維、黒鉛ナノファイバー、酸化黒鉛、フッ化黒鉛、化学修飾黒鉛、剥離黒鉛、またはそれらの組合せから選択することができる。従来技術の酸化グラフェンの化学的製造および還元に使用される黒鉛材料は75um以下の平均粒度までサイズを減少させる必要があることに留意されたい。この方法は、サイズ減少装置(たとえばハンマーミルまたはスクリーニングミル)、エネルギー入力、およびダスト軽減が必要である。対照的に、エネルギー衝突装置の方法は、ほとんどあらゆるサイズの黒鉛材料を使用することができる。サイズが数mmもしくは数cm以上の出発黒鉛材料、またはナノスケールの小ささの出発物質が首尾良く加工されて、カソードまたはアノード活物質のグラフェン被覆またはグラフェン埋め込み粒子が形成されている。唯一のサイズの制限はエネルギー衝突装置のチャンバーの容量であるが、このチャンバーは非常に大型(工業規模)であってよい。
【0078】
本発明による方法によって、電極活物質の粒子を完全に包み込む単層グラフェンシートを製造することができる。多くの例では、製造されるグラフェンシートは少なくとも80%の単層グラフェンシートを含む。製造されるグラフェンは、純粋なグラフェン、5重量%未満の酸素含有量の酸化グラフェン、フッ化グラフェン、5重量%未満のフッ素を有する酸化グラフェン、95重量%以上の炭素含有量のグラフェン、または官能化グラフェンを含むことができる。
【0079】
本発明による方法は、GICの製造を伴わず、したがって、高い剥離温度(たとえば800〜1,100℃)におけるGICの剥離は不要である。これは環境保護の観点から別の大きな利点となる。従来技術の方法は、グラフェン間の空間中に意図的に使用された硫酸および硝酸を含む乾燥GICの作製が必要であり、したがって、高度に規制される環境危険要因である揮発性ガス(たとえばNO
xおよびSO
x)を生成するH
2SO
4およびHNO
3の分解を必然的に伴う。本発明による方法は、H
2SO
4およびHNO
3を分解させる必要性が全くなく、したがって、環境に優しい。本発明の組み合わされた黒鉛の膨張/剥離/分離プロセス中に望ましくないガスが環境中に放出されない。
【0080】
望ましい一実施形態では、本発明による方法は、自動化されたおよび/または連続的な方法で行われる。たとえば、
図3中に示されるように、黒鉛粒子1と電極活物質粒子2との混合物がコンベヤベルト3によって送給され、連続ボールミル4中に供給される。ボールミル粉砕によってグラフェン包有粒子を形成した後、生成混合物(ある程度の残留黒鉛粒子も場合により含む)がボールミル装置4から、ふるい分け装置(たとえば回転ドラム5)中に放出されて、グラフェン包有粒子が残留黒鉛粒子(存在する場合)から分離される。この分離作業は、電極活物質が強磁性である(たとえばいくつかの望ましい電子配置においてFe、Co、Ni、またはMnを主成分とする金属を含む)場合には、磁気分離器6によって支援することができる。グラフェン包有粒子は、粉末分級機、サイクロン、およびまたは静電分離器に送給することができる。粒子は、希望するなら、溶融7、プレス加工8、または粉砕/ペレット化装置9によってさらに処理することができる。これらの手順は完全に自動化することができる。本発明の方法は、生産材料の特性決定および分級、ならびに処理が不十分な材料の連続エネルギー衝突装置中への再循環を含むことができる。本発明の方法は、材料の性質および処理量を最適化するために、連続エネルギー衝突装置中への投入材料の重量監視を含むことができる。
【0081】
衝突チャンバー中に入れられる電極活物質は、アノード活物質またはカソード活物質であってよい。アノード活物質の場合、372mAh/g(天然黒鉛の理論容量)を超えるリチウムイオンを貯蔵可能な材料が特に望ましい。これらの高容量アノード活物質の例は、Si、Ge、Sn、SnO
2、Co
3O
4などである。前述のように、これらの材料は、アノード中に組み込まれると、電池の充電および放電のときに膨張および収縮が起こる傾向を有する。電極レベルでは、アノード活物質の膨張および収縮によって、アノードの膨張および収縮が起こることがあり、それによって電池セルの機械的不安定性が生じうる。アノード活物質レベルでは、Si、Ge、Sn、SnO
2、Co
3O
4などの粒子の繰り返される膨張/収縮によって、これらの粒子の微粉化が急激に生じ、電極の急激な容量低下が生じる。
【0082】
したがって、これらの問題に対処するために、固体電極活物質の粒子は、プレリチウム化またはプレナトリウム化された粒子を含むことができる。言い換えると、電極活物質粒子(Si、Ge、Sn、SnO
2、Co
3O
4など)がグラフェンシートによって包有される前に、これらの粒子には既にLiまたはNaイオンがあらかじめインターカレートされている(たとえば電気化学的充填によって)。これは、以下の考慮点に基づくと非常に革新的で独特な方法である。これらの粒子へのLiまたはNaのインターカレーションによって、これらの粒子は大きな体積まで、またはその最大容量(場合によりその元の体積の最大380%)まで膨張することができる。これらのプレリチウム化またはプレナトリウム化された粒子が次にグラフェンシートによって包み込まれ、または完全に包有され、電極中に組み込まれると(たとえばアノードがグラフェン包有SiまたはSnO
2粒子を含む)、電極は、リチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池の後の充電−放電サイクル中の電極の膨張および膨張によって誘発される故障の問題がもはやなくなる。言い換えると、SiまたはSnO
2粒子は、それらの最大体積まで膨張しており(電池の充電中)、それらは収縮のみが可能となる(後の電池の放電中)。これらの収縮した粒子は、これらの粒子と包有するグラフェンシートと間に膨張空間があらかじめ設けられている。本発明者らの実験データは、この方法によって、驚くべきことに、はるかに長い電池サイクル寿命が得られ、電極活物質容量のより良好な利用が行われることを示している。
【0083】
ある実施形態では、本発明のグラフェンの製造、直接移動、および包有プロセスの前に、固体電極活物質の粒子は、炭素、ピッチ、炭化樹脂、伝導性ポリマー、伝導性有機材料、金属コーティング、金属酸化物シェル、またはそれらの組合せから選択される伝導性材料のコーティングがあらかじめコーティングされた粒子を含む。コーティング層の厚さは、好ましくは1nm〜10μm、好ましくは10nm〜1μm、さらに好ましくは20nm〜200nmの範囲内である。このコーティングは、リチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池の有用なサイクル寿命を増加させるために固体−電解質界面(SEI)を形成する目的で実施される。
【0084】
ある実施形態では、固体電極活物質の粒子は、コールタールピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、ポリマー、有機材料、またはそれらの組合せから選択される炭素前駆体材料があらかじめコーティングされた粒子を含み、それによって炭素前駆体材料が固体電極活物質粒子の表面とグラフェンシートとの間に存在し、本発明の方法は、グラフェン包有電極活物質を熱処理して、炭素前駆体材料を炭素材料および細孔に変換するステップをさらに含み、細孔は、固体電極活物質粒子の表面とグラフェンシートとの間に空間を形成し、炭素材料は、固体電極活物質粒子の表面上にコーティングされる、および/またはグラフェンシートを互いに化学結合させる。炭素材料は、包有されたアノード活物質を液体電解質と直接接触するのを防止するために包有用グラフェンシートを完全に封止するのに役立ち、他の場合では、電解質中のリチウムイオンまたは溶媒が連続的に消費されることによってさらなるSEIの形成が続き、それによって急速に容量が低下する。
【0085】
ある実施形態では、固体電極活物質の材料は、金属、ピッチ、ポリマー、有機材料、またはそれらの組合せから選択される犠牲材料があらかじめコーティングされた粒子を含み、それによって犠牲材料が固体電極活物質の粒子の表面とグラフェンシートとの間に存在し、本発明の方法は、犠牲材料を部分的または完全に除去して、固体電極活物質粒子の表面とグラフェンシートとの間に空間を形成するステップをさらに含む。これらの空間は、包有粒子を破壊することなく包有活物質粒子の膨張に適応することができる。
【0086】
ある実施形態では、本発明の方法は、電子および/またはリチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、もしくは亜鉛のイオンが伝導性である伝導性材料の液体または蒸気に、グラフェン包有電極活物質を曝露するステップをさらに含む。この手順は、安定なSEIを得る役割、またはSEIをより安定にする役割を果たす。
【0087】
電極活物質の粒子は:(A)リチウム化および非リチウム化ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびカドミウム(Cd);(B)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co、またはCdと別の元素とのリチウム化および非リチウム化合金または金属間化合物;(C)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、またはCdのリチウム化および非リチウム化酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物、ならびにそれらの混合物、複合材料、またはリチウム含有複合材料;(D)Snのリチウム化および非リチウム化塩および水酸化物;(E)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、リチウム含有酸化チタン、リチウム遷移金属酸化物;ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるアノード活物質であってよい。上記一覧中の材料のナトリウム化された種類およびナトリウム化されていない種類の種類は、ナトリウムイオン電池のアノード活物質にもなる。
【0088】
電極活物質は、無機材料、有機材料、本来伝導性のポリマー(一連のリチウムイオンが可能であることが知られている)、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、またはそれらの組合せから選択されるカソード活物質であってよい。金属酸化物/リン酸塩/硫化物は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、コバルト酸ナトリウム ニッケル酸ナトリウム、マンガン酸ナトリウム、バナジウム酸ナトリウム、ナトリウム混合金属酸化物、リン酸鉄ナトリウム、リン酸マンガンナトリウム、リン酸バナジウムナトリウム、ナトリウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、多硫化リチウム、多硫化ナトリウム、多硫化マグネシウム、またはそれらの組合せから選択することができる。
【0089】
ある実施形態では、電極活物質は、硫黄、硫黄化合物、硫黄−炭素複合材料、硫黄−ポリマー複合材料、多硫化リチウム、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、またはそれらの組合せから選択されるカソード活物質であってよい。無機材料は、TiS
2、TaS
2、MoS
2、NbSe
3、MnO
2、CoO
2、酸化鉄、酸化バナジウム、またはそれらの組合せから選択することができる。この材料の群は、リチウム金属電池のカソード活物質としての使用に特に適している。
【0090】
金属酸化物/リン酸塩/硫化物は、VO
2、Li
xVO
2、V
2O
5、Li
xV
2O
5、V
3O
8、Li
xV
3O
8、Li
xV
3O
7、V
4O
9、Li
xV
4O
9、V
6O
13、Li
xV
6O
13、それらのドープされた種類のもの、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択される酸化バナジウムを含み、式中、0.1<x<5である。ある実施形態では、金属酸化物/リン酸塩/硫化物は、層状化合物LiMO
2、スピネル化合物LiM
2O
4、オリビン化合物LiMPO
4、シリケート化合物Li
2MSiO
4、タボライト化合物LiMPO
4F、ボレート化合物LiMBO
3、またはそれらの組合せから選択され、式中のMは遷移金属または複数の遷移金属の混合物である。
【0091】
無機材料は:(a)セレン化ビスマスもしくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイドもしくはトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属の硫化物、セレン化物、もしくはテルル化物;(d)窒化ホウ素、または(e)それらの組合せから選択することができる。
【0092】
有機材料またはポリマー材料は、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン−4,5,9,10−テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11−ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5−アミノ−1,4−ダイヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS
2)
3]n)、リチウム化1,4,5,8−ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(Hexaazatrinaphtylene)(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN)
6)、5−ベンジリデンヒダントイン、イサチン(Isatine)リチウム塩、ピロメリット酸ジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン誘導体(THQLi
4)、N,N’−ジフェニル−2,3,5,6−テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’−ジアリル−2,3,5,6−テトラケトピペラジン(AP)、N,N’−ジプロピル−2,3,5,6−テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4−ベンゾキノン、5,7,12,14−ペンタセンテトロン(PT)、5−アミノ−2,3−ジヒドロ−1,4−ダイヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5−アミノ−1,4−ダイヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li
4C
6O
6、Li
2C
6O
6、Li
6C
6O
6、またはそれらの組合せから選択される。これらの化合物は、好ましくは、それらの導電性を改善し、黒鉛材料粒子からグラフェンシートを剥離できるように剛性および強度を改善するために伝導性材料と混合される。
【0093】
上記一覧のチオエーテルポリマーは、ポリ[メタンテトリル−テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4−ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン−1,1,2,2−テトラチオール)(PETT)を含むポリマー、共役芳香族部分からなる主鎖を有しペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2−フェニル−1,3−ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4−ジ(1,3−ジチオラン−2−イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5−テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB、またはポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択することができる。
【0094】
ある実施形態では、有機材料は、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガン(II)フタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンクロリド、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、それらの化学的誘導体、またはそれらの組合せから選択されるフタロシアニン化合物を含む。これらの化合物は、好ましくは、それらの導電性を改善し、黒鉛材料粒子からグラフェンシートを剥離できるように剛性を改善するために伝導性材料と混合される。
【0095】
ある実施形態では、電極活物質粒子は、10nm〜20μmの直径または厚さを有する粉末、フレーク、ビーズ、ペレット、球、ワイヤ、繊維、フィラメント、ディスク、リボン、またはロッドを含む。好ましくは、直径または厚さは1μm〜100μmである。
【0096】
本発明による方法では、黒鉛材料は、天然黒鉛、合成黒鉛、高配向熱分解黒鉛、黒鉛繊維、黒鉛ナノファイバー、フッ化黒鉛、化学修飾黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、部分結晶性黒鉛、またはそれらの組合せから選択することができる。
【0097】
エネルギー衝突装置は、振動ボールミル、遊星ボールミル、高エネルギーミル、バスケットミル、アジテーターボールミル、極低温ボールミル、マイクロボールミル、タンブラーボールミル、連続ボールミル、撹拌ボールミル、加圧ボールミル、プラズマ支援ボールミル、フリーザーミル、振動ふるい、ビーズミル、ナノビーズミル、超音波ホモジナイザーミル、遠心分離遊星ミキサー、真空ボールミル、または共鳴音響ミキサーであってよい。エネルギー衝突装置の操作手順は、連続エネルギー衝突装置を用いて連続方法で行うことができる
【0098】
電極活物質表面に移動したグラフェンシートは、黒鉛結晶のエッジ面に対応する大きな表面比率を有する。エッジ面における炭素原子は反応性であり、炭素の原子価を満たすためにある程度のヘテロ原子または基を含む必要がある。固体担体粒子に移動させることで形成されるグラフェンナノプレートレットのエッジまたは表面にもともと存在する多くの種類の官能基(たとえばヒドロキシルおよびカルボン酸)が存在する。衝突によって誘発される運動エネルギーは、活物質粒子を包有するグラフェンシートのエッジ、さらには表面を化学的に活性化させる(たとえば高活性部位またはフリーラジカルを形成する)のに十分なエネルギーおよび強度を有する。所望の化学官能基(たとえば−OH、−COOH、−NH
2、Br−など)を含む特定の化学種を衝突チャンバー中に混入すると、これらの官能基をグラフェンのエッジおよび/または表面に付与することができる。言い換えると、グラフェンシートの製造および化学官能化は、衝突チャンバー中に適切な化合物を混入することによって同時に行うことができる。要約すると、他の方法に対する本発明の大きな利点の1つは、電池性能の向上のために製造とグラフェン表面化学の改質とを同時に行うことが簡単なことである。
【0099】
この方法によって得られるグラフェンプレートレットは、衝突チャンバー中に種々の化学種を混入することで官能化することができる。後述の化学種の各グループの中で、本発明者らは、官能化の研究のために2または3の化学種を選択した。
【0100】
化学物質の好ましいグループの1つでは、結果として得られる官能化NGPは、式:[NGP]−R
mで大まかに表すことができ、式中、mは異なる官能基の種類の数(典型的には1〜5の間)であり、Rは、SO
3H、COOH、NH
2、OH、R’CHOH、CHO、CN、COCl、ハライド、COSH、SH、COOR’、SR’、SiR’
3、Si(−OR’−)
yR’
3−y、Si(−O−SiR’
2−)OR’、R”、Li、AlR’
2、Hg−X、TlZ
2およびMg−Xから選択され;yは3以下の整数であり、R’は、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、またはアラルキル、シクロアリール、またはポリ(アルキルエーテル)であり、R”は、フルオロアルキル、フルオロアリール、フルオロシクロアルキル、フルオロアラルキル、またはシクロアリールであり、Xはハライドであり、Zはカルボキシレートまたはトリフルオロアセテートである。
【0101】
グラフェン包有電極活物質粒子は、電極機械的性質、導電率、および熱伝導率を改善するために使用することができる。向上したリチウム捕捉および貯蔵能力のため、官能基−NH
2および−OHの関心が特に高い。たとえば、ジエチレントリアミン(DETA)は3つの−NH
2基を有する。DETAが衝突チャンバー中に含まれると、その3つの−NH
2基の中の1つがグラフェンシートのエッジまたは表面に結合することができ、残りの2つの未反応−NH
2基は、リチウム原子またはナトリウム原子を可逆的に捕捉し、それらと酸化還元対を形成することができる。このような配置によって、電池電極中でリチウムイオンまたはナトリウムイオンを貯蔵するためのさらなる機構が得られる。
【0102】
他の有用な化学官能基または反応性分子は、アミドアミン、ポリアミド、脂肪族アミン、変性脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、無水物、ケチミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ヘキサメチレンテトラミン、ポリエチレンポリアミン、ポリアミンエポキシ付加体、フェノール系硬化剤、非臭素化硬化剤、非アミン硬化剤、およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの官能基は、多官能性であり、少なくとも2つの末端から少なくとも2つの化学種と反応可能である。最も重要なことには、これらは、その末端の1つを用いて、グラフェンのエッジまたは表面に結合可能であり、エポキシ硬化段階中に、1つまたは2つの他の末端でエポキシドまたはエポキシ樹脂材料と反応可能である。
【0103】
上記の[NGP]−R
mはさらに官能化することができる。これは、−R
m基グラフェンシートに結合させた後に衝突チャンバーの蓋を開け、次に新しい官能化剤を衝突チャンバーに加え、衝突操作を再開することによって行うことができる。この結果得られるグラフェンシートまたはプレートレットは、式:[NGP]−A
m(式中、Aは、OY、NHY、O=C−OY、P=C−NR’Y、O=C−SY、O=C−Y、−CR’1−OY、N’Y、またはC’Yから選択され、Yは、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、酵素、抗体、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、抗原、もしくは酵素基質、酵素阻害剤、もしくは酵素基質の遷移状態アナログの適切な官能基である、またはR’−OH、R’−NR’
2、R’SH、R’CHO、R’CN、R’X、R’N
+(R’)
3X
−、R’SiR’
3、R’Si(−OR’−)
yR’
3−y、R’Si(−O−SiR’
2−)OR’、R’−R”、R’−N−CO、(C
2H
4O−)
wH、(−C
3H
6O−)
wH、(−C
2H
4O)
w−R’、(C
3H
6O)
w−R’、R’から選択され、wは1を超え200未満の整数である)の組成を含む。
【0104】
NGPは、式:[NGP]−[R’−A]
m(式中、m、R’、およびAは前述の定義の通りである)で表される組成物が生成されるように官能化することもできる。本発明の組成物は、ある種の環状化合物が上に吸着するNGPも含む。これらは、式:[NGP]−[X−R
a]
m(式中、aは0または10未満の数であり、Xは、多環式芳香族、複素多環式芳香族、または金属複素多環式芳香族部分であり、Rは前述の定義の通りである)の物質の組成物を含む。好ましい環状化合物は平面状である。吸着のためのより好ましい環状化合物はポルフィリンおよびフタロシアニンである。吸着した環状化合物は官能化することができる。このような組成物は、式、[NGP]−[X−A
a]
m(式中、m、a、X、およびAは前述の定義の通りである)の化合物を含む。
【0105】
本発明の官能化NGPは、スルホン化、脱酸素したプレートレット表面への求電子付加、またはメタル化によって調製することができる。黒鉛プレートレットは、官能化剤を接触させる前に処理することができる。このような処理としては、溶媒中へのプレートレットの分散を挙げることができる。ある場合では、次にプレートレットを濾過し、乾燥させた後に接触させることができる。官能基の特定の有用な種類の1つは、カルボン酸部分であり、これは、NGPが前述の酸インターカレーション経路から調製される場合に、NGP表面上にもともと存在する。カルボン酸官能化が必要な場合、NGPは、クロレート、硝酸、または過硫酸アンモニウム酸化を行うことができる。
【0106】
カルボン酸官能化黒鉛プレートレットは、別の種類の官能化NGPを調製するための出発点として機能できるので、特に有用である。たとえば、アルコールまたはアミドは、酸と容易に結合して安定なエステルまたはアミドを得ることができる。アルコールまたはアミンが二官能性または多官能性分子の一部である場合、O−またはNH−を介した結合によって別の官能基がペンダント基として残る。これらの反応は、当技術分野において周知のようなカルボン酸のアルコールまたはアミンによるエステル化またはアミノ化のために開発されたいずれかの方法を用いて行うことができる。これらの方法の例は、G.W.Anderson,et al.,J.Amer.Chem.Soc.96,1839(1965)に見ることができ、その全体が参照により本明細書に援用される。プレートレットを硝酸および硫酸で処理してニトロ化プレートレットを得て、次にそのニトロ化形態を亜ジチオン酸ナトリウムなどの還元剤で化学的に還元して、アミノ官能化プレートレットを得ることによって、アミノ基を黒鉛プレートレット上に直接導入することができる。グラフェン被覆無機粒子の官能化は、電極活物質中にドーパントを導入する方法として使用することができる。
【0107】
以下の実施例は、本発明の実施の最良の形態を提供する役割を果たすものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0108】
実施例1:電極活物質のグラフェン包有粒子
微粉末の形態の数種類の電極活物質(アノード活物質およびカソード活物質の両方)を調べた。これらは、Co
3O
4、Si、LiCoO
2、LiMn
2O
4、リン酸鉄リチウムなどを含み、これらが実施の最良の形態を説明するための例として使用される。これらの活物質は、組織内で製造されたか、または市販されるものであったかのいずれかであった。
【0109】
典型的な実験において、1kgの電極活物質粉末および100グラムの50メッシュの天然フレーク黒鉛(平均粒度0.18mm;Asbury Carbons、Asbury NJ)を高エネルギーボールミル容器中に入れた。このボールミルを300rpmで0.5〜4時間運転した。次に容器の蓋を取り外すと、活物質の粒子は、ラマン分光法によってグラフェンであることが確認された暗色の層で完全に覆われた(包有または封入された)ことが分かった。この処理された材料を50メッシュふるい上に置き、いくつかの場合では、少量の未処理のフレーク黒鉛を除去した。
【0110】
実施例2:官能化グラフェン封入Sn粒子
窒素源として50グラムの尿素を混入して、実施例1の方法を繰り返した。形成した被覆粉末は、リチウムイオン電池中のアノード活物質として使用するための官能化グラフェン封入Sn粒子であった。電解質による電極活物質のぬれ性、または電池中の電極活物質と電解質との間の適合性を改善するために化学官能化が使用されることに留意されたい。
【0111】
実施例3:グラフェン包有SnO
2粒子
実験において、2グラムの純度99.9%の酸化スズ粉末(直径90nm)および0.25グラムの高配向熱分解黒鉛(HOPG)を共鳴音響ミル中に入れ、5分間処理した。比較のため、粉砕容器がジルコニア粉砕ビーズを含んだことを除けば同じ実験を行った。本発明者らは、驚くべきことに、前者の方法(酸化スズ粒子が粉砕媒体自体として機能し、外部から加えられるジルコニア粉砕ビーズは含まない)によって、ほぼ単一粒子の粒子状物質(各粒子状物質はグラフェンシートによって封入された1つの粒子を含む)となることを発見した。対照的に、外部から加えられた粉砕ビーズが存在すると、グラフェン包有粒子状物質は、グラフェンシートによって包み込まれた複数の酸化スズ粒子(典型的には3〜50個)を含む傾向にある。これらと同じ結果が、金属酸化物系電極活物質(アノードおよびカソードの両方)の大部分でも確認された。本発明者らは、包有された単一粒子の粒子状物質が、より高い比容量(特に高レート条件下)およびより長いサイクル寿命が得られる傾向にあることをさらに確認した。
【0112】
実施例4:グラフェン封入Siミクロン粒子
第1の実験において、500gのSi粉末(粒径約3μm)および50グラムの高配向熱分解黒鉛(HOPG)を高強度ボールミル中に入れた。このミルを20分間運転し、その後、容器の蓋を開き、未処理のHOPGを50メッシュふるいによって除去した。Si粉末は、暗色の層で覆われ、これはラマン分光法によってグラフェンであることが確認された。
【0113】
第2の実験において、トルエン中に溶解させたPEの溶液を調製するステップと、この溶液中にSi粒子を分散させてスラリーを形成するステップと、スラリーをspry乾燥させてPE封入Si粒子を形成するステップとを含むマイクロ封入方法を用いて、同じバッチのミクロンスケールのSi粒子に、ポリエチレン(PE)の層をあらかじめコーティングした。次に、500gのPE封入Si粒子および50グラムのHOPGを高強度ボールミル中に入れた。このミルを20分間運転し、その後、容器の蓋を開き、未処理のHOPGを50メッシュふるいによって除去した。PE封入Si粒子(PE層は0.3〜2.0μmで変動した)は、この時点でグラフェンシートで包有もされた。次にこれらのグラフェン包有PE封入粒子に対して、PEを炭素に変換させる熱処理(最高600℃)を行った。変換した炭素は、ほとんどがSi粒子の外面上に堆積し、Si粒子表面と封入するグラフェンシェルとの間には間隙または細孔が残った。この間隙によって、リチウムイオン電池が充電されるときのSi粒子の体積膨張に適応する余裕が得られる。このような方法によって、顕著に改善された電池サイクル寿命が得られる。
【0114】
第3の実験において、5%〜54%のLiを含む数種類の試料を作製するために、Si粒子に対して電気化学的プレリチウム化を行った。電極活物質のプレリチウム化は、電池セルが作製される前に材料にリチウムがインターカレートまたは充填されることを意味する。次に種々のプレリチウム化Si粒子に対して、本発明によるグラフェン封入処理を行った。結果として得られたグラフェン封入プレリチウム化Si粒子を、数個のリチウムイオンセル中のアノード活物質として組み込んだ。
【0115】
実施例5:グラフェン包有Ge粒子(メソカーボンマイクロビーズ、すなわちMCMBをグラフェン源として使用)
一例において、500グラムのBドープGe粉末(アノード活物質)および10グラムのMCMB(China Steel Chemical Co.、Taiwan)をボールミル中に入れて、3時間処理を行った。別の実験において、未処理のMCMBをふるい分け、空気分級、および溶媒溶液中の沈降によって除去した。被覆された粒子のグラフェン使用量を評価すると1.4重量%であった。
【0116】
実施例6:直接移動対グラフェンシートの化学的製造およびフリーザーミル粉砕によるグラフェン封入
グラフェン包有チタン酸リチウム粒子の試料を本発明による直接移動方法(チタン酸リチウム粒子自体を粉砕媒体として使用し、天然黒鉛をグラフェン源として使用)によって作製した。
【0117】
別の実験において、10グラムのチタン酸リチウム粉末および1グラムの還元酸化グラフェンシート(以下に説明するHummerの方法を用いて製造)をフリーザーミル(Spex Mill、Spex Sample Prep、Metuchen NJ)中に入れ、10分間処理を行った。この実験において、酸化黒鉛は、Hummersの方法[米国特許第2,798,878号明細書、1957年7月9日]による硫酸、硝酸塩、および過マンガン酸塩を用いた黒鉛フレークの酸化によって調製される。反応終了後、得られた混合物を脱イオン水中に注ぎ、濾過した。大部分の硫酸イオンを除去するため、得られた酸化黒鉛をHClの5%溶液中で繰り返し洗浄した。次に、濾液のpHが中性となるまで、試料を脱イオン水で繰り返し洗浄した。得られたスラリーを噴霧乾燥し、真空オーブン中60℃で24時間保管した。結果として得られる層状酸化黒鉛の層間隔をDebey−ScherrerのX線技術によって測定すると約0.73nm(7.3A)であった。次にこの材料の試料を、剥離のために、650℃にあらかじめ設定した炉に4分間入れ、1200℃の不活性雰囲気の炉中で4時間加熱して、数層還元酸化グラフェン(RGO)から構成される低密度粉末を形成した。窒素吸着BETによって表面積を測定した。
【0118】
背景技術の項で議論したように、グラフェン製造の化学的方法に関連する7つの主要な問題が存在する。さらに、これらのグラフェンシートは、一度製造されると、グラフェンシートによって包有または封入された複数の電極活物質粒子をそれぞれが含む複数粒子の粒子状物質を形成する傾向にある。これらは単一粒子の封入が不可能に思われる。
【0119】
実施例7:リチウム金属電池のカソード活物質としてのグラフェン封入リン酸鉄リチウム(LFP)
被覆されていない、または炭素被覆されたLFP粉末は、いくつかの供給元から市販されている。炭素被覆されたLFP粉末および被覆されていないLFP粉末の試料を天然黒鉛粒子と高強度ボールミル装置のボールミルポット中で別々に混合した。グラフェン封入LFP粒子を製造するために、各LFP試料で、この装置を0.5〜4時間運転した。別の一連の実験において、同じボールミル粉砕装置中にジルコニアビーズを粉砕媒体として加え、これを同等の条件下で運転した。この場合の結果からも、ジルコニアビーズなどの外部から加えた粉砕媒体によって、典型的には、単一粒子の粒子状物質(それぞれの粒子状物質が、グラフェンシートによって封入された1つのLFP粒子を含む)ではなく、複数粒子の粒子状物質が形成されるという見解がさらに確認される。
【0120】
実施例8:リチウム電池の遷移金属酸化物カソード活物質の一例としてのグラフェン封入V
2O
5
V
2O
5粉末は市販されている。V
2O
5粉末と天然黒鉛との混合物(重量比10/1)を高強度ボールミル中に対称に配置された4つのボールミル粉砕ポットのそれぞれの中に密封した。このミルを1時間運転して、グラフェン封入V
2O
5粒子の粒子状材料を製造し、それらをリチウム金属電池中のカソード活物質として組み込んだ。
【0121】
実施例9:リチウムイオン電池のリチウム遷移金属酸化物カソード活物質の一例としてのLiCoO
2
一連の実験において、LiCoO
2粉末と天然黒鉛との混合物(重量比100/1〜10/1)を高強度ボールミル中に対称に配置された4つのボールミル粉砕ポットのそれぞれの中に密封した。このミルを0.5〜4時間運転して、グラフェン封入LiCoO
2粒子の粒子状物質を製造した。
【0122】
実施例10:リチウム金属電池のカソード活物質としての有機材料(Li
2C
6O
6)
本発明による直接移動方法を用いて、Li
2C
6O
6などの有機材料をグラフェンシート中に封入できるかどうかを調べるために、この実施例に関連する実験を行った。結果として、有機活物質単独では、通常は、黒鉛粒子からグラフェンシートを剥離することができない。しかし、ボールミル粉砕ポット中で有機活物質とともに第2の活物質(すなわち無機材料または金属酸化物/リン酸塩/硫化物の剛性粒子)が使用されると、有機材料粒子および無機材料粒子が、別々にまたは同時に封入されて、グラフェン封入有機粒子、グラフェン封入無機粒子、ならびに有機粒子および無機粒子のグラフェン封入混合物を形成できる。このことは興味深く、驚くべきことである。
【0123】
ロジゾン酸二リチウム(Li
2C
6O
6)を合成するために、ロジゾン酸二水和物(以下のスキーム中の化学種1)を前駆体として使用した。塩基性リチウム塩のLi
2CO
3を水性媒体中に使用して、両方のエンジオール酸官能基を中和することができる。厳密に化学量論量のロジゾン酸および炭酸リチウムの両方の反応物質を10時間反応させて、90%の収率を達成した。ロジゾン酸二リチウム(化学種2)は、少量の水に対しても容易に溶解し、これは化学種2の中に水分子が存在することを示していることを示している。真空中180℃で3時間かけて水を除去して、無水物の種類のもの(化学種3)を得た。
【0124】
有機カソード活物質(Li
2C
6O
6)と無機カソード活物質(別々にV
2O
5およびMoS
2)との混合物を0.5〜2.0時間ボールミル粉砕して、グラフェン封入粒子の混合物を得た。
【0125】
式Li
2C
6O
6中の2つのLi原子は、固定された構造の一部であり、これらは可逆的なリチウムイオンの貯蔵および放出には関与しないことに留意されたい。これは、リチウムイオンをアノード側から得る必要があることを示している。したがって、リチウム源(たとえばリチウム金属またはリチウム金属合金)がアノードに存在する必要がある。本明細書で試験した電池セルの1つでは、アノード集電体(Cu箔)にリチウムの層が(スパッタリングによって)堆積される。結果として得られるセルはリチウム金属セルである。
【0126】
実施例11:ナトリウム金属電池のグラフェン封入Na
3V
2(PO
4)
3/CおよびNa
3V
2(PO
4)
3カソード
以下の手順による固相反応によってNa
3V
2(PO
4)
3/C試料を合成した:NaH
2PO
4・2H
2O(99.9%、Alpha)とV
2O
3(99.9%、Alpha)粉末との化学量論混合物を前駆体としてメノウ製ジャー中に入れ、次に前駆体を遊星ボールミル中400rpmにおいてステンレス鋼容器中で8時間ボールミル粉砕した。ボールミル粉砕中、炭素被覆試料のため、糖(99.9%、Alpha)も炭素前駆体として加え、V3
+の酸化を防止する還元剤も加えた。ボールミル粉砕後、混合物をAr雰囲気中900℃で24時間加熱した。これとは別に、糖を使用しないことを除けば同様の方法でNa
3V
2(PO
4)
3粉末を調製した。両方の粉末の試料を天然黒鉛粒子の存在下でボールミル粉砕して、グラフェン封入Na
3V
2(PO
4)
3粒子およびグラフェン封入炭素被覆Na
3V
2(PO
4)
3粒子を調製した。これらのカソード活物質を、電解質としてPC+DOL中に1MのNaPF
6塩を含む数個のNa金属セル中に使用した。グラフェン封入によって、研究したすべてのNa金属セルのサイクル安定性が顕著に改善されたことが分かった。サイクル寿命に関して、以下の順序が確認された:グラフェン封入Na
3V
2(PO
4)
3/C>グラフェン封入Na
3V
2(PO
4)
3>Na
3V
2(PO
4)
3/C>Na
3V
2(PO
4)
3。
【0127】
実施例12:Na金属電池のカソード活物質としてのグラフェン封入MoS
2粒子の調製
この実施例では多種多様の無機材料を調べた。たとえば、(NH
4)
2MoS
4およびヒドラジンのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中200℃における1段階ソルボサーマル反応によって、超薄MoS
2材料を合成した。典型な手順の1つでは、22mgの(NH
4)
2MoS
4を10mlのDMFに加えた。この混合物を、透明で均一な溶液が得られるまで、室温で約10分間音波処理した。その後、0.1mlのN
2H
4・H
2Oを加えた。この反応溶液をさらに30分間音波処理した後、Teflonでライニングされた40mLのオートクレーブに移した。この系をオーブン中200℃で10時間加熱した。8000rpmで5分間遠心分離して生成物を収集し、脱イオン水で洗浄し、遠心分離によって再び収集した。ほとんどのDMFを確実に除去するために洗浄ステップを5回繰り返した。最後に、MoS
2粒子を乾燥させ、天然黒鉛粒子の存在下での高強度ボールミル粉砕によってグラフェン封入を行った。
【0128】
実施例13:二次元(2D)層状Bi
2Se
3カルコゲナイドナノリボンの調製
(2D)層状Bi
2Se
3カルコゲナイドナノリボンの調製は、当技術分野においてよく知られている。本発明の研究では、蒸気−液体−固体(VLS)方法を用いてBi
2Se
3ナノリボンを成長させた。この場合に生成されたナノリボンは、平均で30〜55nmの厚さであり、幅および長さは数百ナノメートルから数マイクロメートルの範囲である。より大きなナノリボンは、横寸法(長さおよび幅)を200nm未満まで減少させるためにボールミル粉砕を行った。これらの手順によって調製したナノリボンについて、本発明による直接移動方法を用いたグラフェン封入を行った。得られたグラフェン封入Bi
2Se
3ナノリボンをNa電池のカソード活物質として使用した。驚くべきことに、Bi
2Se
3カルコゲナイドナノリボンは、それらの表面上にNaイオンを貯蔵することができる。
【0129】
実施例14:Na金属セルおよびZn金属セルのグラフェン封入MnO
2およびNaMnO
2カソード活物質の調製
MnO
2粉末を調製するために、過マンガン酸カリウムを脱イオン水中に溶解させて0.1mol/LのKMnO
4水溶液を調製した。一方で、13.32gの界面活性剤の高純度ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムを300mLのイソオクタン(油)中に加え、光学的に透明な溶液を得るために十分撹拌した。次に、この溶液中に0.1mol/LのKMnO
4溶液32.4mLを加え、これを30分間超音波処理して、暗褐色沈殿物を調製した。この生成物を分離し、蒸留水およびエタノールで数回洗浄し、80℃で12時間乾燥させた。一部の量のMnO
2粉末に対して、次に直接移動処理を行って、グラフェン封入MnO
2粒子を得た。
【0130】
さらに、Na
2CO
3とMnO
2との混合物(1:2のモル比)を12時間ボールミル粉砕し、続いて870℃で10時間加熱することによって、NaMnO
2粒子を合成した。結果として得られたNaMnO
2粒子に対して、MCMB粒子の存在下でボールミル粉砕を行って、グラフェン封入NaMnO
2粒子を調製した。
【0131】
グラフェン封入を行ったまたは行っていないMnO
2粒子も、アルカリZn/MnO
2セル中に組み込まれる。グラフェン封入によって、この種類のセルのサイクル寿命を大幅に増加させることが分かった。Zn−グラフェン/MnO
2電池は、グラフェン/MnO
2系カソード(場合によりカソード集電体および場合により伝導性フィラーを有する)と、Zn金属または合金系アノード(場合によりアノード集電体を有する)と、水性電解質(たとえば水中の薄いZnSO
4またはZn(NO
3)
2とMnSO
4と混合物)とから構成される。
【0132】
実施例15:ハイブリッドカソード材料としてのグラフェンシートに封入された層状水酸化亜鉛塩
層状水酸化亜鉛塩中の層間空間中のドデシル硫酸(DS)陰イオン(LZH−DS)の構造配列、および水酸化亜鉛層の構造の構造配列を調べた。調製時の、高結晶性LZH−DSは31.5Å(3.15nm)の基底間隔を有する。室温でメタノールを用いて処理した後、水酸化亜鉛層は収縮して、26.4Åおよび24.7Åの基底間隔を有する2つの層状相を形成した。この収縮は、層間空間中のDS陰イオンの含有量の減少によって実現され、これはインターカレートした陰イオンの配列の変化、および水酸化亜鉛層の電荷密度の低下を示している。この研究は、四面体Znイオンは水酸化物層から可逆的に移動することができ、八面体に配位したZnイオンは影響されずに残ることを示している。この結果は、層状水酸化亜鉛をZnインターカレーション化合物として使用できることを示唆している。本発明の研究では、層状水酸化亜鉛粒子も天然黒鉛粒子の存在下でボールミル粉砕を行って、グラフェン封入水酸化亜鉛粒子を形成した。グラフェン封入によって、Zn金属セルのカソード活物質として使用した場合の層状水酸化亜鉛に高レート容量が付与されることが分かった。
【0133】
実施例16:種々の電池セルの作製および電気化学的試験
研究した大部分のアノード活物質およびカソード活物質のために、本発明者らは、従来のスラリーコーティング方法を用いてリチウムイオンセルまたはリチウム金属セルを作製した。典型的なアノード組成物の1つは、85重量%の活物質(たとえば、グラフェン封入SiまたはCo
3O
4粒子)、7重量%のアセチレンブラック(Super−P)、およびN−メチル−2−ピロリジノ(pyrrolidinoe)(NMP)中に溶解させた8重量%のポリフッ化ビニリデンバインダー(PVDF、5重量%の固体含有量)を含む。スラリーをCu箔上にコーティングした後、得られた電極を真空中120℃で2時間乾燥させて溶媒を除去した。本発明の方法では、典型的にはバインダー樹脂は不要であるか、または使用されず、8%の重量が減少する(非活物質の量が減少)。従来のスラリーコーティングおよび乾燥手順を用いて同様の方法でカソード層が形成される(カソード集電体としてAl箔を使用)。次にアノード層、セパレータ層(たとえばCelgard 2400膜)、およびカソード層を互いに積層し、プラスチック−Alエンベロープ中に収容する。次に、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合物(EC−DEC、1:1v/v)中に溶解させた1MのLiPF
6電解質をセルに注入する。いくつかのセルでは、イオン液体を液体電解質として使用した。アルゴンを充填したグローブボックス中でセル組立体を作製した。
【0134】
Arbin電気化学ワークステーションを用いて1mV/sの典型的な走査速度でサイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。さらに、50mA/g〜10A/gの電流密度における定電流充電/放電サイクルによる種々のセルの電気化学的性能の評価も行った。長期サイクル試験の場合、LAND製造のマルチチャネル電池試験装置を使用した。
【0135】
リチウムイオン電池産業では、必要な電気化学的形成後に測定される初期容量を基準として電池の容量が20%低下する充電−放電サイクル数として電池のサイクル寿命を定義することが一般的な方法である。
【0136】
図4中には、(a)保護されていないCo
3O
4粒子を含むものと、(b)還元酸化グラフェン(RGO)包有Co
3O
4粒子(従来技術の方法の1つ)と、(c)本発明の直接移動方法によって製造されたグラフェン封入Co
3O
4粒子とのすべてCo
3O
4粒子系アノードを特徴とする3つのリチウムセルの充電−放電サイクル挙動が示されている。これらのデータは、本発明によるグラフェン封入Co
3O
4粒子は、アノード活物質として使用される場合に、アノード活物質としてRGO包有Co
3O
4粒子を有する電池よりもさらに良好な、最高の電池サイクル挙動を示すという驚くべき結果を明確に示している。対照的に、保護されていないCo
3O
4粒子をアノード活物質として有する電池は、繰り返される充電および放電後に急速な容量低下を示している。
【0137】
図5は、一方は保護されていないSnO
2粒子を含み、他方は本発明の直接移動方法によって製造されたグラフェン封入SnO
2粒子を含むSnO
2粒子系アノードを特徴とする2つのリチウムセルの充電−放電サイクル挙動を示している。この場合も、本発明の方法によって、はるかにより安定なサイクル挙動を示すリチウム電池が得られる。
【0138】
図6は、a)保護されていないSi粒子を含むものと、b)間接移動方法(外部から加えれた粉砕媒体を使用)によって製造されたグラフェン包有Si粒子と、c)本発明の直接移動方法(Si粒子自体がグラフェン剥離剤となる)によって製造されたグラフェン封入Si粒子とのミクロンスケール(3μm)のSi粒子系アノードを特徴とする3つのリチウムセルの充電−放電サイクル挙動を示している。この場合も、非常に予期せぬことに、本発明の直接移動方法によって製造されたグラフェン封入Si粒子によって、間接移動方法によって製造されたグラフェン包有Si粒子よりも顕著に良好な電池サイクル性能が付与される。
【0139】
図7は、一方は(12重量%の炭素と混合された)保護されていないLFO粒子を含み、他方は本発明の直接移動方法によって製造されたグラフェンに封入され炭素が添加されたLFP粒子(4%グラフェン+8%C)を含むリン酸鉄リチウム(LFP)粒子系カソードを特徴とする2つのリチウムセルの充電−放電サイクル挙動を示している。後者は、はるかに良好なサイクル挙動を示し、これらの差は非常に大きい。
【0140】
図8は、a)(10重量%カーボンブラック粒子と混合された保護されていないLiV
2O
5ナノロッドを含むものと、b)直接移動方法によって製造されたグラフェン包有LiV
2O
5ナノロッド(約5%のグラフェン+7%のC)と、c)炭素マトリックスによって保護されたLiV
2O
5ナノロッドとのLiV
2O
5ナノロッド系カソードを特徴とする3つのリチウムセルの充電−放電サイクル挙動を示している。これらの結果は、直接移動方法により製造されたグラフェン包有LiV
2O
5ナノロッドによって、最も安定な電池サイクル挙動が得られることを示している。
【0141】
図4〜
図8は、本発明によるグラフェン封入電極活物質粒子を特徴とするリチウム電池の驚くべき優れたサイクル性能を示す大量のデータの少しの例に過ぎない。同様の結果が、別のリチウム金属二次電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、リチウムセレン電池、ナトリウムイオン電池、ナトリウム金属二次電池、ナトリウム硫黄電池、ナトリウム空気電池、マグネシウムイオン電池、マグネシウム金属電池、アルミニウムイオン電池、アルミニウム金属二次電池、亜鉛イオン電池、亜鉛金属電池、亜鉛空気電池、リチウムイオンキャパシタ、およびナトリウムイオンキャパシタなどの別の種類の電池を用いて得られている。