(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ハニカム構造体の長手方向に対して垂直な断面方向で切断した断面の断面写真で観察される無機繊維について、断面写真に映った無機繊維の断面の長軸の長さと、上記長軸の垂直二等分線の長さとして求める短軸の長さの比(長軸/短軸)の値が1.00〜1.30である無機繊維が、断面写真に映った無機繊維のうち60%以上存在する請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【0013】
(発明の詳細な説明)
[ハニカム構造体]
本発明のハニカム構造体について説明する。
図1は、本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、ハニカム構造体10は、複数の貫通孔12が隔壁13を隔てて長手方向(
図1中、両矢印Lで示す方向)に並設され、最外周に外周壁14が設けられたハニカム焼成体11からなる。
ハニカム焼成体11は、セリア−ジルコニア複合酸化物粒子(以下、CZ粒子ともいう)と無機繊維を含んでなる。
図1に示すように、ハニカム構造体10が単一のハニカム焼成体11からなる場合、ハニカム焼成体11はハニカム構造体そのものでもある。
【0014】
本発明のハニカム構造体において、ハニカム焼成体は、CZ粒子と無機繊維を含む。
後述するように、ハニカム焼成体は、CZ粒子と無機繊維を含む原料ペーストを押出成形した後、焼成することにより作製されている。
本発明のハニカム構造体がCZ粒子を有しているか否かについては、X線回折(XRD)にて確認できる。
また、ハニカム構造体はアルミナ粒子及び無機バインダをさらに含んでいてもよい。
【0015】
本発明のハニカム構造体においては、ハニカム構造体の長手方向であるa軸に沿った方向で測定したa軸熱膨張係数より、ハニカム構造体の長手方向に垂直な方向であるb軸に沿った方向で測定したb軸熱膨張係数が大きい。
【0016】
上記ハニカム構造体では、a軸熱膨張係数よりもb軸熱膨張係数のほうが大きくなっている。この場合、ハニカム構造体に温度差が生じた際にハニカム構造体のb軸方向にかかる引張応力が大きくなり、先にクラックの生じる方向がa軸に沿った方向になる。この方向に生じるクラックはリングオフクラックではなく、仮にクラックが生じてもハニカム構造体が脱落しにくいので、リングオフクラックが生じる場合よりも故障モードとしては軽微になる。
すなわち、本発明のハニカム構造体はリングオフクラックが生じにくいハニカム構造体であるといえる。
【0017】
a軸熱膨張係数及びb軸熱膨張係数は、熱膨張測定装置を用いて測定することができる。
測定装置としては、例えば、NETZSH社製、DIL402Cを用いることができる。
測定温度範囲は40−800℃、昇温速度は10℃/min、空気中で、ガス流量100ml/minとする。参照物質としてはサファイヤを用いる。
試験片のサイズは3.5mm×3.5mm(3セル×3セル)×25mmとする。
5個の試験片についてa軸熱膨張係数、b軸熱膨張係数のそれぞれを求め、平均値を算出して測定結果とする。
【0018】
このようにして測定されるa軸熱膨張係数は、7.5×10
−6/K以上、8.0×10
−6/K未満であることが好ましい。また、b軸熱膨張係数は8.0×10
−6/K以上、8.5×10
−6/K以下であることが好ましい。
さらに、b軸熱膨張係数とa軸熱膨張係数の差(b軸熱膨張係数−a軸熱膨張係数)が0.1〜1.0×10
−6/Kであることが好ましい。
a軸熱膨張係数、b軸熱膨張係数、b軸熱膨張係数とa軸熱膨張係数の差をこの範囲にすることで、よりリングオフクラックが生じにくいハニカム構造体とすることができる。
【0019】
また、ハニカム構造体の長手方向に対して垂直な断面方向で切断した断面の断面写真(以下、単にハニカム構造体の断面写真ともいう)で観察される無機繊維について、断面写真に映った無機繊維の断面の長軸の長さと、長軸の垂直二等分線の長さとして求める短軸の長さの比(長軸/短軸)の値が1.00〜1.30である無機繊維が、断面写真に映った無機繊維のうち60%以上存在することが好ましい。
【0020】
ハニカム構造体の断面写真において、無機繊維の断面の円、略楕円形状における長軸を描き、その長軸に対する垂直二等分線を短軸とする。
このようにして長軸と短軸を描いた際に、(長軸/短軸)の値が1.00である場合に、断面が真円の無機繊維がハニカム構造体の長手方向(以下、a軸方向ともいう)に対して完全に平行な向きとなっていることを意味する。(長軸/短軸)の値が1.00〜1.30である無機繊維は、多少の傾きはあるもののa軸方向に沿って配向している無機繊維とみなすことができる。
断面写真中の無機繊維100本につき、(長軸/短軸)の値を計測し、(長軸/短軸)の値が1.00〜1.30である無機繊維の割合を求める。そして、(長軸/短軸)の値が1.00〜1.30である無機繊維が断面写真中の無機繊維のうち60%以上存在することが好ましい。このことは、ハニカム構造体では多くの無機繊維がa軸方向に沿って配向していることを意味している。1枚の断面写真中に無機繊維が100本存在しない場合は、無機繊維が100本になるまで無作為に複数の断面写真を撮影して計測する。
多くの無機繊維がa軸方向に沿って配向していると、a軸方向の熱膨張係数が低くなるので、リングオフクラックが生じにくいハニカム構造体とすることができる。
【0021】
無機繊維の平均繊維長は特に限定されないが、10〜90μmであることが好ましい。
無機繊維の平均繊維径は特に限定されないが、1〜5μmであることが好ましい。
また無機繊維のアスペクト比は5〜300であることが望ましく、10〜200であることがより望ましく、10〜100であることがさらに望ましい。
無機繊維の平均繊維長は、粉砕条件を適宜変更することで調整することができる。
無機繊維の平均繊維径は、無機繊維前駆体の繊維径を適宜変更することで調整することができる。
【0022】
無機繊維の割合はハニカム焼成体の重量に対して5〜20重量%であることが好ましい。無機繊維の割合を5〜20重量%にすることで、排ガスの浄化性能を維持しつつ、十分な強度向上の効果を得ることができる。
【0023】
無機繊維を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等が挙げられ、二種以上併用してもよい。これらの中では、アルミナ繊維が好ましい。
アルミナ繊維は、アルミナ含有量が70重量%以上の無機繊維であり、Al以外の元素、例えばSi等を含んでいてもよい。
また、アルミナ繊維に加えて、シリカ繊維、炭化ケイ素繊維、ガラス繊維、チタン酸アルミニウム繊維等を含んでいてもよい。
また、アルミナ繊維は結晶質アルミナ繊維、非晶質アルミナ繊維のいずれでもよく、結晶質アルミナ繊維と非晶質アルミナ繊維の混合物であってもよい。
粉末X線回折を用いて、XRDを用いてアルミナ繊維を分析し、2θが25〜30°の間に回折ピークを有するものを結晶質アルミナ繊維とし、上記範囲に回折ピークを有しないものを非晶質アルミナ繊維とする。
【0024】
本発明のハニカム構造体は、単一のハニカム焼成体を備えていてもよいし、複数個のハニカム焼成体を備えていてもよい。ハニカム構造体が複数のハニカム焼成体を備える場合、複数個のハニカム焼成体が接着剤層により結合されていることが好ましい。
【0025】
本発明のハニカム構造体において、ハニカム焼成体を構成するCZ粒子の含有割合は、25〜75重量%であることが好ましい。
ハニカム焼成体を構成するCZ粒子の含有割合が25〜75重量%であると、セリウムの酸素吸蔵能(OSC)を高めることができる。
【0026】
本発明のハニカム構造体の形状としては、円柱状、角柱状、楕円柱状、長円柱状、丸面取りされている角柱状(例えば、丸面取りされている三角柱状)等が挙げられる。
【0027】
本発明のハニカム構造体の隔壁の厚さは、均一であることが好ましい。具体的には、ハニカム焼成体の隔壁の厚さは、0.14mm未満であることが好ましい。また、0.05mm以上であることが好ましい。
【0028】
本発明のハニカム構造体において、ハニカム焼成体の貫通孔の形状としては、四角柱状に限定されず、三角柱状、六角柱状等が挙げられる。
貫通孔の形状はそれぞれ異なっていてもよいが、全て同じであることが好ましい。すなわち、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面において、隔壁に囲まれた貫通孔のサイズが同じであることが好ましい。
【0029】
本発明のハニカム構造体において、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面の貫通孔の密度は、31〜155個/cm
2であることが好ましい。
【0030】
本発明のハニカム構造体において、ハニカム焼成体の気孔率は、45〜70%であることが望ましい。
ハニカム焼成体の気孔率が45〜70%であると、高い機械的強度と排ガス浄化性能を両立させることができる。
【0031】
上記ハニカム焼成体の気孔率が45%未満であると、隔壁のうち内部へのガス拡散に寄与することができる気孔の割合が少なくなり、排ガス浄化性能が低下してしまうことがある。一方、上記ハニカム焼成体の気孔率が70%を超えると、気孔率が高くなりすぎるため、ハニカム構造体の機械的特性が劣化し、ハニカム構造体を使用中、クラックや破壊等が発生し易くなる。
【0032】
ハニカム焼成体の気孔率は、以下に説明する重量法により測定することができる。
(1)ハニカム焼成体を10セル×10セル×10mmの大きさに切断して、測定試料とする。この測定試料をイオン交換水及びアセトンを用いて超音波洗浄した後、オーブンを用いて100℃で乾燥する。なお、10セル×10セル×10mmの測定試料とは、貫通孔が縦方向に10個、横方向に10個並んだ状態で、最も外側の貫通孔とその貫通孔を構成する隔壁を含み、長手方向の長さが10mmとなるように切り出した試料を指す。
(2)測定顕微鏡(ニコン製Measuring Microscope MM−40 倍率:100倍)を用いて、測定試料の断面形状の寸法を測定し、幾何学的な計算から体積を求める(なお、幾何学的な計算から体積を求めることができない場合は、飽水重量と水中重量とを実測して体積を測定する)。
(3)計算から求められた体積及びピクノメータで測定した測定試料の真密度から、測定試料が完全な緻密体であると仮定した場合の重量を計算する。なお、ピクノメータでの測定手順は(4)に示す通りとする。
(4)ハニカム焼成体を粉砕し、23.6ccの粉末を準備する。得られた粉末を200℃で8時間乾燥させる。その後、Micromeritics社製 Auto Pycnometer1320を用いて、JIS R 1620(1995)に準拠して真密度を測定する。排気時間は40分とする。
(5)測定試料の実際の重量を電子天秤(A&D製 HR202i)で測定する。
(6)以下の式から、ハニカム焼成体の気孔率を求める。
(ハニカム焼成体の気孔率)=100−(測定試料の実際の重量/測定試料が完全な緻密体であると仮定した場合の重量)×100[%]
なお、本発明のハニカム構造体に貴金属を直接担持させた場合であっても、貴金属担持によるハニカム焼成体の気孔率の変化は無視できるほど小さい。
【0033】
本発明のハニカム構造体において、ハニカム焼成体にはさらにアルミナ粒子や無機バインダが含まれていてもよい。
【0034】
アルミナ粒子は、θ相のアルミナ粒子であることが好ましい。
アルミナ粒子がθ相のアルミナ粒子であると耐熱性が高いため、貴金属を担持させ、長時間使用した後であっても高い排ガス浄化性能を発揮することができる。
【0035】
無機バインダとしては、ベーマイトが好ましい。
焼成工程によって、ベーマイトの大部分がγアルミナとなるからである。
【0036】
本発明のハニカム構造体においては、ハニカム焼成体に貴金属が担持されていることが好ましい。
貴金属としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウムなどの白金族金属が挙げられる。
ハニカム焼成体全体への貴金属の担持量は、0.1〜15g/Lであることが好ましく、0.5〜10g/Lであることがより好ましい。
本明細書において、貴金属の担持量とは、ハニカム構造体の見掛けの体積当たりの貴金属の重量をいう。なお、ハニカム構造体の見掛けの体積は、空隙の体積を含む体積であり、接着層を含む場合は接着層の体積を含むこととする。
【0037】
本発明のハニカム構造体において、ハニカム焼成体の外周面には、外周コート層が形成されていてもよい。
【0038】
[ハニカム構造体の製造方法]
次に、本発明のハニカム構造体を製造する方法について説明する。
本発明のハニカム構造体は、例えば、CZ粒子、アルミナ粒子、無機繊維及び無機バインダを含む原料ペーストを成形することにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製する成形工程と、上記成形工程により成形されたハニカム成形体を乾燥する乾燥工程と、上記乾燥工程により乾燥されたハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム焼成体を作製する焼成工程と、により作製することができる。
【0039】
(成形工程)
成形工程では、まず、CZ粒子及び無機繊維を混合して原料ペーストを調製する。
原料ペーストには、さらにアルミナ粒子、無機バインダ、有機バインダ、造孔剤、成形助剤、分散媒等が含まれていてもよい。
【0040】
CZ粒子は、排ガス浄化触媒の助触媒(酸素貯蔵材)として用いられている材料である。CZ粒子としては、セリアとジルコニアとが固溶体を形成したものが好ましい。
【0041】
CZ粒子は、セリウム以外の希土類元素をさらに含んでいてもよい。希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテニウム(Lu)等が挙げられる。
【0042】
CZ粒子は、セリアを20重量%以上含むことが好ましく、40重量%以上含むことがより好ましく、一方、セリアを90重量%以下含むことが好ましく、80重量%以下含むことがより好ましい。また、CZ粒子は、ジルコニアを60重量%以下含むことが好ましく、50重量%以下含むことがより好ましい。このようなCZ粒子は熱容量が小さいため、ハニカム構造体の温度が上昇しやすくなり、暖機性能を高めることができる。
【0043】
CZ粒子の平均粒子径は、1〜50μmであることが好ましい。また、CZ粒子の平均粒子径は1〜30μmであることがより好ましい。CZ粒子の平均粒子径が1〜50μmであると、ハニカム構造体とした際に、表面積が大きくなるため、酸素吸蔵能を高くすることができる。
【0044】
アルミナ粒子の種類は特に限定されないが、θ相のアルミナ粒子(以下、θ−アルミナ粒子ともいう)であることが好ましい。
θ相のアルミナ粒子をCZ粒子の仕切り材として用いることにより、アルミナ粒子が使用中に熱によって互いに焼結することを抑制できるため、触媒機能を維持することが可能となる。さらに、アルミナ粒子をθ相とすることにより、耐熱性を高くすることができる。
【0045】
アルミナ粒子の平均粒子径は特に限定されないが、ガス浄化性能及び暖機性能を向上させる観点から、1〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましい。
【0046】
CZ粒子及びアルミナ粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(MALVERN社製 MASTERSIZER2000)により求めることができる。
【0047】
無機繊維を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等が挙げられ、二種以上併用してもよい。これらの中では、アルミナ繊維が好ましい。
【0048】
無機バインダとしては、ベーマイトが好ましい。
ベーマイトは、AlOOHの組成で示されるアルミナ1水和物であり、水等の媒体に良好に分散するので、ベーマイトをアルミナバインダとして用いることが好ましい。
また、ベーマイトを用いることで原料ペースト中の水分率を低くし、成形性を高めることができる。
【0049】
有機バインダとしては、特に限定されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0050】
造孔剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、コークス、デンプン等が挙げられる。
造孔剤とは、ハニカム焼成体を製造する際、ハニカム焼成体の内部に気孔を導入するために用いられるものをいう。
【0051】
成形助剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0052】
分散媒としては、特に限定されないが、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0053】
上記した原料としてCZ粒子、アルミナ粒子、アルミナ繊維及びアルミナバインダを使用した際、これらの配合割合は、原料中の焼成工程後に残存する全固形分に対し、CZ粒子:25〜75重量%、アルミナ粒子:15〜35重量%、アルミナ繊維:5〜20重量%、アルミナバインダ:5〜20重量%が好ましい。
【0054】
原料ペーストを調製する際には、混合混練することが好ましく、ミキサー、アトライタ等を用いて混合してもよく、ニーダー等を用いて混練してもよい。
【0055】
成形工程では、CZ粒子と無機繊維とを含む上記原料ペーストを押出成形することにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を得る。
このとき、ハニカム構造体のa軸熱膨張係数よりもb軸熱膨張係数のほうが大きくなるようにするために、原料ペーストの調製条件及び成形工程の条件を下記の方法(複数を組み合わせてもよい)により調整することが好ましい。
(1)無機繊維の繊維長を調整する。無機繊維の平均繊維長を長くすると、無機繊維がa軸方向に配向しやすくなり、その結果、a軸方向の熱膨張係数が低くなる。
例えば、無機繊維の平均繊維長が10〜90μmであることが好ましい。
(2)原料ペーストの流動性を調整する(粘度を調整する)。原料ペーストが柔らかく流動性が高いと、無機繊維がa軸方向に配向しやすくなり、その結果、a軸方向の熱膨張係数が低くなる。例えば、原料ペーストは、せん断速度が500(1/s)の時に、せん断応力が500Pa・s以下であることが好ましい。
(3)押出成形における成形圧力を調整する。成形圧力が高いと、無機繊維がa軸方向に配向しやすくなり、その結果、a軸方向の熱膨張係数が低くなる。
例えば、成形圧力が4〜5MPaであることが好ましい。
(4)押出成形機内に網を配置し、網のメッシュを調整する。網のメッシュの値が大きいと、無機繊維がa軸方向に配向しやすくなり、その結果、a軸方向の熱膨張係数が低くなる。
【0056】
ハニカム成形体の形状は特に限定されるものではないが、円柱形状が好ましい。また、円柱形状の場合の直径が150mm以下であることが好ましい。
また、ハニカム成形体の形状は角柱形状であってもよく、角柱形状である場合は、四角柱形状であることが好ましい。
【0057】
(乾燥工程)
続いて、ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を得る乾燥工程を行う。
乾燥工程では、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等の乾燥機を用いて、ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を作製する。
【0058】
(焼成工程)
焼成工程では、乾燥工程により乾燥されたハニカム乾燥体を焼成することにより、ハニカム焼成体を作製する。なお、この工程は、ハニカム乾燥体の脱脂及び焼成が行われるため、「脱脂・焼成工程」ということもできるが、便宜上「焼成工程」という。
【0059】
焼成工程の温度は、800〜1300℃であることが好ましく、900〜1200℃であることがより好ましい。また、焼成工程の時間は、1〜24時間であることが好ましく、
3〜18時間であることがより好ましい。焼成工程の雰囲気は特に限定されないが、酸素濃度が1〜20%であることが好ましい。
【0060】
以上の工程により、本発明のハニカム構造体を製造することができる。
【0061】
(その他の工程)
本発明のハニカム構造体を製造する方法では、必要に応じて、上記ハニカム焼成体に貴金属を担持させる担持工程をさらに含んでいてもよい。
ハニカム焼成体に貴金属を担持する方法としては、例えば、貴金属粒子もしくは錯体を含む溶液にハニカム焼成体又はハニカム構造体を浸漬した後、引き上げて加熱する方法等が挙げられる。
ハニカム構造体が外周コート層を備える場合、外周コート層を形成する前のハニカム焼成体に貴金属を担持してもよいし、外周コート層を形成した後のハニカム焼成体又はハニカム構造体に貴金属を担持してもよい。
【0062】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記担持工程で担持した貴金属の担持量は、0.1〜15g/Lであることが好ましく、0.5〜10g/Lであることがより好ましい。
【0063】
本発明のハニカム構造体を製造する方法において、ハニカム焼成体の外周面に外周コート層を形成する場合、外周コート層は、ハニカム焼成体の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布した後、乾燥固化することにより形成することができる。外周コート層用ペーストとしては、原料ペーストと同じ組成のものが挙げられる。
【0064】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0065】
[ハニカム構造体の作製]
(実施例1)
CZ粒子(平均粒子径:2μm)を26.5重量%、θ−アルミナ粒子(平均粒子径:2μm)を13.2重量%、アルミナ繊維(平均繊維径:3μm、平均繊維長:60μm)を5.3重量%、アルミナバインダとしてベーマイトを11.3重量%、有機バインダとしてメチルセルロースを7.8重量%、造孔剤としてアクリル樹脂を1.9重量%、同じく造孔剤としてグラファイトを2.3重量%、成形助剤として界面活性剤であるポリオキシエチレンオレイルエーテルを4.3重量%、及び、イオン交換水を27.4重量%混合混練して、原料ペーストを調製した。
【0066】
[成形工程]
押出成形機を用いて、原料ペーストを押出成形して、円柱状のハニカム成形体を作製した。
押出成形機内に網を設置した。
網のメッシュと成形圧力は表1に示す通りであり、メッシュ♯42、成形圧力4.5MPaとした。
【0067】
[乾燥工程]
マイクロ波乾燥機を用いて、ハニカム成形体を出力1.8A、マイクロ波照射時間110秒で乾燥させた。
【0068】
[焼成工程]
得られたハニカム成形体の乾燥体を1100℃で10時間脱脂・焼成することにより実施例1に係るハニカム焼成体を作製した。ハニカム焼成体は直径が117mm、長さが80mmの円柱状であり、貫通孔の密度が77.5個/cm
2(500cpsi)、隔壁の厚さが0.127mm(5mil)であった。
【0069】
(実施例2、3、比較例1)
原料中のアルミナ繊維の平均繊維長、成形工程における網のメッシュ及び成形圧力を変更して原料の調製及び押出成形を行い、その他の条件は実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。
結果を表1に示す。
【0070】
[熱膨張係数の測定]
a軸熱膨張係数及びb軸熱膨張係数を熱膨張測定装置を用いて測定した。
測定装置としては、NETZSH社製、DIL402Cを用いた。
測定温度範囲は40−800℃、昇温速度は10℃/min、空気中で、ガス流量100ml/minとした。参照物質としてはサファイヤを用いた。
試験片のサイズは3.5mm×3.5mm(3セル×3セル)×25mmとした。
5個の試験片についてa軸熱膨張係数、b軸熱膨張係数のそれぞれを求め、平均値を算出して測定結果として、結果を表1に示した。
【0071】
[配向度の測定]
各実施例及び比較例のハニカム構造体の断面写真を撮影し、断面写真中の無機繊維100本につき、(長軸/短軸)の値を計測し、(長軸/短軸)の値が1.00〜1.30である無機繊維の割合を求めた。この割合を「配向度」として、結果を表1に示した。
【0072】
[クラック状態及びクラックサイズの観察]
ハニカム構造体に高温のガスを流入させ、ハニカム構造体の温度を1000℃へ上昇させ、室温まで15秒で冷却するサイクルを30回繰り返す冷熱衝撃試験を行ってハニカム構造体にクラックを発生させた。
ハニカム構造体にクラックを発生させたのち、クラックの発生した方向及び最大クラックサイズを測定して、結果を表1に示した。
クラックの発生した方向は、a軸に沿った方向の場合を「a軸方向」と示しており、リングオフクラックの場合(b軸方向に沿った方向の場合)を「リングオフ」と示している。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示すように、実施例1−3のハニカム構造体は、a軸熱膨張係数よりもb軸熱膨張係数のほうが大きくなっており、クラックの方向がa軸方向となっている。また、クラックのサイズも小さくなっている。
このことから、a軸熱膨張係数とb軸熱膨張係数の関係を調整することで、ハニカム構造体に温度差が生じた際にリングオフクラックが生じにくいハニカム構造体とすることができることがわかる。