特許第6965309号(P6965309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6965309-押圧装置および押圧方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965309
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】押圧装置および押圧方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-109715(P2019-109715)
(22)【出願日】2019年6月12日
(65)【公開番号】特開2020-202330(P2020-202330A)
(43)【公開日】2020年12月17日
【審査請求日】2020年1月29日
【審判番号】不服2020-14495(P2020-14495/J1)
【審判請求日】2020年10月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 祐太
【合議体】
【審判長】 恩田 春香
【審判官】 ▲吉▼澤 雅博
【審判官】 辻本 泰隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−100595号公報
【文献】 特開平8−148541号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧面を有する弾性部材で押圧対象物を押圧する押圧手段を備え、
前記押圧面は、前記押圧対象物を付勢せずに当該押圧対象物が前記押圧面から離間するように前記弾性部材が改質処理された改質処理部を備えていることを特徴とする押圧装置。
【請求項2】
押圧面を有する弾性部材で押圧対象物を押圧する押圧工程を実施し、
前記押圧面は、前記押圧対象物を付勢せずに当該押圧対象物が前記押圧面から離間するように前記弾性部材が改質処理された改質処理部を備えていることを特徴とする押圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧装置および押圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支持面を有する弾性部材で支持対象物を支持する支持手段を備えた支持装置や、押圧面を有する弾性部材で押圧対象物を押圧する押圧手段を備えた押圧装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−183169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたテーブル38(支持手段)や保持手段2(押圧手段)では、ウエハWF(支持対象物)や接着シートAS(押圧対象物)を弾性部材で支持して押圧すると、弾性部材の粘性により支持対象物や押圧対象物が弾性部材に貼り付いてしまう場合があり、支持対象物や押圧対象物から弾性部材を引き離すために余計な時間が費やされ、単位時間あたりの処理能力が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、支持対象物や押圧対象物が弾性部材に貼り付いてしまうことを防止し、単位時間あたりの処理能力が低下することを防止することができる押圧装置および押圧方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項に記載した構成を採用した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、弾性部材の支持面や押圧面が、弾性部材を改質処理した改質処理部を備えているため、支持対象物や押圧対象物が弾性部材に貼り付いてしまうことを防止し、単位時間あたりの処理能力が低下することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るシート貼付装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な図1の手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸と平行な図1中手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0010】
図1において、支持装置EAは、支持面12Aを有する弾性部材12で支持対象物としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」ともいう)WFを支持する支持手段10を備え、押圧装置EA1は、押圧面23Aを有する弾性部材23で押圧対象物としての接着シートASを押圧する押圧手段20を備え、支持装置EAと押圧装置EA1とでシート貼付装置EA2が構成されている。
【0011】
支持手段10は、基台11と、基台11に支持され、静電引力によって保持が可能な支持面12Aを有する弾性部材12と、弾性部材12内に設けられた電極13とを備えている。
弾性部材12は、それぞれがゴムや樹脂等の弾性材料で形成された第1弾性部材12Bと第2弾性部材12Cとを積層して構成され、弾性部材12の上面が支持面12Aとなっている。支持面12Aは、弾性部材12が改質処理された改質処理部12Dを備えている。改質処理部12Dは、エネルギー線としての粒子線を弾性部材12に照射することにより、当該弾性部材12の性質や表面粗さを変化させて形成され、ウエハWFが弾性部材12に貼り付くことを防止する。
電極13は、導電性を有する弾性材料で形成されるとともに、第1弾性部材12Bと第2弾性部材12Cとの間に設けられた複数の第1電極13Aおよび複数の第2電極13Bを備えている。第1電極13Aおよび第2電極13Bは、第1弾性部材12Bと第2弾性部材12Cとの間で交互に設けられ、一方が正極で他方が負極となるように図示しない電圧印加装置に接続されている。
【0012】
押圧手段20は、上面21Aが開口した箱状に形成され、底面部21Bで支持手段10を支持する下ケース21と、下面22Aが開口した箱状に形成され、図示しない駆動機器で昇降可能に支持された上ケース22と、筒状の基台22Cを介して上ケース22の上面部22Bに支持され、静電引力によって保持が可能な押圧面23Aを有する弾性部材23と、弾性部材23内に設けられた電極24と、上面部22B、基台22Cおよび弾性部材23で形成される第1空間SP1に配管22Dを介して接続された減圧ポンプや真空エジェクタ等の第1減圧手段25および加圧ポンプやタービン等の第1加圧手段26と、下ケース21および上ケース22により形成される第2空間SP2に配管21Cを介して接続された減圧ポンプや真空エジェクタ等の第2減圧手段27および加圧ポンプやタービン等の第2加圧手段28とを備えている。
弾性部材23は、その下面が押圧面23Aとなっている。押圧面23Aは、弾性部材23が改質処理された改質処理部23Dを備えている。改質処理部23Dは、エネルギー線としての粒子線を弾性部材23に照射することにより、当該弾性部材12の性質や表面粗さを変化させて形成され、接着シートASが弾性部材23に貼り付くことを防止する。
弾性部材23および電極24は、弾性部材12および電極13と同様に構成されており、弾性部材12における各構成の付番の先頭12の記号を23に置き換え、電極13における各構成の先頭13の記号を24に置き換えることで説明ができるので、それらの説明を省略する。
【0013】
以上の支持装置EAと押圧装置EA1とを備えたシート貼付装置EA2の動作を説明する。
先ず、図1中実線で示す初期位置に各部材が配置されたシート貼付装置EA2に対し、当該シート貼付装置EA2の使用者(以下、単に「使用者」という)、または多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段がウエハWFを支持面12A上の所定の位置に載置すると、支持手段10が図示しない電圧印加装置を駆動し、電極13に所定の電圧を印加して静電引力を発生させ、支持面12AでのウエハWFの保持を開始する。また、使用者または図示しない搬送手段が接着シートASを押圧面23A上の所定の位置に供給すると、押圧手段20が図示しない電圧印加装置を駆動し、電極24に所定の電圧を印加して静電引力を発生させ、押圧面23Aでの接着シートASの保持を開始する。
【0014】
次いで、押圧手段20が図示しない駆動機器を駆動し、図1中二点鎖線で示すように、上ケース22を下降させて第2空間SP2を形成する。その後、押圧手段20が第1および第2減圧手段25、27を駆動し、第1および第2空間SP1、SP2を同じ圧力となるように制御しながら減圧し、第1および第2空間SP1、SP2が所定の減圧状態にまで減圧されると、第1および第2減圧手段25、27の駆動を停止する。次に、押圧手段20が第1加圧手段26および第2減圧手段27を駆動し、第2空間SP2を所定の減圧状態に保ちつつ、第1空間SP1を所定の減圧状態よりも高圧状態とし、それらの差圧によって弾性部材23を弾性変形させる。すると、図1中二点鎖線で示すように、弾性部材23が弾性変形して中央部からウエハWFに接近し、接着シートASをその中央部から外周側に向けて徐々にウエハWFに押圧して貼付する。
【0015】
そして、ウエハWFへの接着シートASの貼付が完了すると、押圧手段20が図示しない電圧印加装置の駆動を停止し、押圧面23Aでの接着シートASの保持を解除する。次いで、押圧手段20が第1減圧手段25を駆動し、第2空間SP2を所定の減圧状態にまで減圧すると、弾性部材23が弾性復元して接着シートASから離間する。この際、押圧面23Aに改質処理部23Dが形成されているので、当該押圧面23Aに接着シートASが密着することがなく、弾性部材23を接着シートASから素早く離間させても、ウエハWFが押圧面23Aに引っ張られて損傷することはない。その後、押圧手段20が第1および第2加圧手段26、28を駆動し、第1および第2空間SP1、SP2を同じ圧力となるように制御しながら加圧し、第1および第2空間SP1、SP2が大気圧まで加圧されると、第1および第2加圧手段26、28の駆動を停止する。次に、押圧手段20が図示しない駆動機器を駆動し、上ケース22を初期位置に復帰させた後、支持手段10が図示しない電圧印加装置の駆動を停止し、支持面12AでのウエハWFの保持を解除する。
【0016】
そして、使用者または図示しない搬送手段が、接着シートASが貼付されたウエハWFを支持面12Aから取り外して次工程に搬送し、以降上記同様の動作が繰り返される。この際、支持面12Aに改質処理部12Dが形成されているので、当該支持面12AにウエハWFが密着することがなく、接着シートASが貼付されたウエハWFを支持面12Aから素早く取り外しても、ウエハWFが支持面12Aに引っ張られて損傷することはない。
【0017】
以上のような実施形態によれば、弾性部材12、23の支持面12Aや押圧面23Aが、弾性部材12、23を改質処理した改質処理部12D、23Dを備えているため、ウエハWFや接着シートASが弾性部材12、23に貼り付いてしまうことを防止し、単位時間あたりの処理能力が低下することを防止することができる。
【0018】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0019】
例えば、支持手段10は、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で支持対象物を支持(保持)する構成を採用してもよく、この場合、電極13はなくてもよい。
弾性部材12は、三角形以上の多角形や、円形、楕円形等、どのような形状であってもよいし、第1弾性部材12Bと第2弾性部材12Cとを異なる弾性材料で形成してもよいし、単一の弾性材料で1つの部材として構成してもよいし、第1弾性部材12Bと第2弾性部材12Cとが、同じ硬度を有してもよいし、異なる硬度を有していてもよいし、基台11に支持されていなくてもよい。
電極13は、第1電極13Aおよび第2電極13Bを少なくとも1つずつ備えていればよい。
弾性部材12、23に照射するエネルギー線は、弾性部材12、23が改質する光であれば、X線、ガンマ線、紫外線、可視光線、赤外線等どんな波長の光でもよいし、単波長でもよいし複波長でもよく、弾性部材12、23の性質、材質、素質、組成等に応じて適宜なエネルギー線を採用することができる。
【0020】
押圧手段20は、第1空間SP1のみを加圧することで、弾性部材23を弾性変形させてもよいし、液体やジェル体を第1空間SP1に供給したり、駆動機器を駆動したりして弾性部材23を弾性変形させてもよい。
押圧手段20は、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で弾性部材23に押圧対象物を支持(保持)させる構成を採用してもよく、この場合、電極24はなくてもよい。
押圧手段20は、電極24がなく、下ケース21、上ケース22または図示しない他の支持装置に支持(保持)された接着シートASを弾性部材23でウエハWFに押圧する構成であってもよい。
基台22Cの形状は、円形、楕円形、三角形以上の多角形等、どのような形状の筒状であってもよい。
弾性部材23は、三角形以上の多角形や、円形、楕円形等、どのような形状であってもよいし、第1弾性部材23Bと第2弾性部材23Cとを異なる弾性材料で形成してもよいし、単一の弾性材料で1つの部材として構成してもよいし、第1弾性部材23Bと第2弾性部材23Cとが、同じ硬度を有してもよいし、異なる硬度を有していてもよい。
電極24は、第1電極24Aおよび第2電極24Bを少なくとも1つずつ備えていればよい。
【0021】
支持装置EAは、接着シートASを支持対象物として支持してもよい。
押圧装置EA1は、ウエハWFを押圧対象物として押圧してもよい。
シート貼付装置EA2は、支持手段10で接着シートASを支持し、押圧手段20でウエハWFを支持して接着シートASに押圧して貼付してもよい。
【0022】
支持対象物および押圧対象物の材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、接着シートASは、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよいし、感圧接着性、感熱接着性等の接着形態のものであってもよく、感熱接着性の接着シートASが採用された場合は、当該接着シートASを加熱する適宜なコイルヒータやヒートパイプ等の加熱側等の加熱手段を設けるといった適宜な方法で接着されればよい。また、このような接着シートASは、例えば、接着剤層だけの単層のもの、基材シートと接着剤層との間に中間層を有するもの、基材シートの上面にカバー層を有する等3層以上のもの、更には、基材シートを接着剤層から剥離することのできる所謂両面接着シートのようなものであってもよく、両面接着シートは、単層又は複層の中間層を有するものや、中間層のない単層又は複層のものであってよい。また、支持対象物としては、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂板等、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。なお、接着シートASを機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意の形状の任意のシート、フィルム、テープ等を前述のような任意の支持対象物に貼付することができる。
【0023】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、支持手段は、支持面を有する弾性部材で支持対象物を支持するものであれば、出願当初の技術常識に照らし合わせ、その技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(他の手段および工程についての説明は省略する)。
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【符号の説明】
【0024】
EA…支持装置
EA1…押圧装置
10…支持手段
12…弾性部材
12A…支持面
12D…改質処理部
20…押圧手段
23…弾性部材
23A…押圧面
23D…改質処理部
AS…接着シート(押圧対象物)
WF…ウエハ(支持対象物)
図1