特許第6965342号(P6965342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965342
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】船舶用ディーゼル潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 159/16 20060101AFI20211028BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20211028BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20211028BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20211028BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20211028BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20211028BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20211028BHJP
【FI】
   C10M159/16
   C10N10:02
   C10N20:00 Z
   C10N20:04
   C10N30:00 Z
   C10N30:10
   C10N40:25
【請求項の数】13
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2019-517975(P2019-517975)
(86)(22)【出願日】2017年10月12日
(65)【公表番号】特表2019-530782(P2019-530782A)
(43)【公表日】2019年10月24日
(86)【国際出願番号】EP2017076091
(87)【国際公開番号】WO2018069460
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】62/407,276
(32)【優先日】2016年10月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501381217
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・テクノロジー・ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボーンス、コルネリス ヘンドリクス マリア
(72)【発明者】
【氏名】クレオファス、テオドルス コンスタンス
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−104857(JP,A)
【文献】 特表2010−523733(JP,A)
【文献】 特開2010−174092(JP,A)
【文献】 特開2006−291211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)潤滑油組成物の全重量に基づいて1.0重量%〜5.0重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、400〜2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用ディーゼル潤滑油組成物であって:
当該潤滑油組成物が5〜200mg KOH/gのBNを有し、更に、当該船舶用ディーゼル潤滑油組成物が、SAE20、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用ディーゼル潤滑油組成物。
【請求項2】
BNが、5〜150mg KOH/g、5〜100mg KOH/g、5〜75mg KOH/g、5〜70mg KOH/g、5〜60mg KOH/g、5〜50mg KOH/g、5〜40mg KOH/g、5〜35mg KOH/g、5〜30mg KOH/g、5〜25mg KOH/g、5〜20mg KOH/g、又は5〜15mg KOH/gである、請求項1に記載の船舶用ディーゼル潤滑油組成物。
【請求項3】
スルホネート、フェネート、ナフテネート、カルボキシレート、サリチレート、又はいかなるそれらの組合せから選択される洗浄剤を更に含む、請求項1又は2に記載の船舶用ディーゼル潤滑油組成物。
【請求項4】
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物の全重量に基づいて1.0重量%〜5.0重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、400〜2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物であって:
当該船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物が10〜80mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物が、SAE30又はSAE40モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物。
【請求項5】
BNが、10〜75mg KOH/g、10〜70mg KOH/g、10〜65mg KOH/g、10〜60mg KOH/g、10〜55mg KOH/g、10〜50mg KOH/g、10〜45mg KOH/g、10〜40mg KOH/g、10〜35mg KOH/g、10〜30mg KOH/g、10〜25mg KOH/g、10〜20mg KOH/g、又は10〜15mg KOH/gである、請求項に記載の船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物。
【請求項6】
スルホネート、フェネート、ナフテネート、カルボキシレート、サリチレート、又はいかなるそれらの組合せから選択される洗浄剤を更に含む、請求項4又は5に記載の船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物。
【請求項7】
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用システム潤滑油組成物の全重量に基づいて1.0重量%〜5.0重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、400〜2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用システム潤滑油組成物であって:
当該船舶用システム油潤滑油組成物が5〜40mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用システム油潤滑油組成物が、SAE20、SAE30又はSAE40モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用システム潤滑油組成物。
【請求項8】
スルホネート、フェネート、ナフテネート、カルボキシレート、サリチレート、又はいかなるそれらの組合せから選択される洗浄剤を更に含む、請求項に記載の船舶用システム潤滑油組成物。
【請求項9】
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて1.0重量%〜5.0重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、400〜2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物であって:
当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が5〜200mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
【請求項10】
BNが、5〜150mg KOH/g、5〜100mg KOH/g、5〜75mg KOH/g、5〜70mg KOH/g、5〜60mg KOH/g、5〜50mg KOH/g、5〜40mg KOH/g、5〜35mg KOH/g、5〜30mg KOH/g、5〜25mg KOH/g、5〜20mg KOH/g、又は5〜15mg KOH/gである、請求項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
【請求項11】
スルホネート、フェネート、ナフテネート、カルボキシレート、サリチレート、又はいかなるそれらの組合せから選択される洗浄剤を更に含む、請求項9又は10に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
【請求項12】
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて1.0重量%〜5.0重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、400〜2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物であって:
当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が5〜40mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
【請求項13】
スルホネート、フェネート、ナフテネート、カルボキシレート、サリチレート、又はいかなるそれらの組合せから選択される洗浄剤を更に含む、請求項12に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般に、船舶用ディーゼル内燃機関用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
船舶用ディーゼル内燃機関(エンジン)は、一般に、低速、中速、又は高速エンジンに分類でき、低速の種類のものは、最大のディープシャフトの船舶及び発電用途などのいくつかの他の産業用途に使用される。
【0003】
低速ディーゼルエンジンは、大きさ及び操作方法の点で独特である。これらのエンジンは、かなり大きく、約60〜約200の範囲の毎分回転数で典型的に動作する。低速ディーゼルエンジンは、2ストロークサイクルで動作し、典型的に、「クロスヘッド」構造の直結及び直接反転エンジンであり、クランクケースからパワーシリンダーを分離する1種以上のスタッフィングボックス及び仕切板を持ち、燃焼生成物がクランクケースに入ること及びクランクケースオイルと混合することを妨げる。船舶用2ストロークディーゼルシリンダー潤滑油は、シリンダーライナーの厳しい負荷及び高温、高出力で運転されるより現代的なより大きい口径エンジン用に要求される厳しい操作条件に適合するために性能要求を満たさなければならない。クランクケースを燃焼ゾーンから完全に分離することにより、当業者は、燃焼室とクランクケースを、各タイプの潤滑剤の独特の要求に起因してそれぞれ異なる潤滑油、シリンダー潤滑剤及びシステム油を用いて潤滑するようになった。
【0004】
2サイクル(2ストローク)クロスヘッドエンジンでは、シリンダーは、シリンダーライナーの周りに配置された潤滑装置を用いて各シリンダーに、シリンダー油が別々に注入されて、全損基準で潤滑される。シリンダー潤滑剤は、再循環されず、燃料と一緒に燃焼する。シリンダー潤滑剤は、摩耗を妨げるのに十分なシリンダー壁の潤滑のために、ピストンリングとシリンダーライナーとの間に強い膜を提供する必要があり、そして、潤滑剤がピストンリング及びピストンの熱い表面上に沈殿物を形成しないために熱的に安定である必要があり、そして、燃焼の硫黄ベースの酸性生成物を中和できる必要がある。この中和は、金属洗浄剤などの塩基性種を含めることによって典型的に達成されてきた。不運にも、船舶用シリンダー潤滑油の塩基性度は、(潤滑剤がエンジン中で受ける熱及び酸化応力に起因する)船舶用シリンダー潤滑油の酸化によって減少でき、こうして潤滑剤の中和能力を減少させる。エンジン操作の間に潤滑剤中に存在することが一般に公知である摩耗金属などの酸化触媒を、船舶用シリンダー潤滑油が含有するならば、酸化は促進できる。金属触媒による酸化及び潤滑油の重合を妨げるために、金属イオンが酸化及び重合触媒の機能を果たすことを妨げてそして金属イオンを隔離又は複合体化する方法を見つけることが望ましいであろう。
【0005】
システム油は、2ストロークエンジンのクロスヘッド及びクランクシャフトを潤滑にする。それは、主軸受、クロスヘッド軸受、ギア及びカムシャフトを潤滑にして、そして、それは、ピストンアンダークラウンを冷却してそして腐食に対してクランクケースを保護する。システム油は、汚染水の存在下での時にクランクケース中のさびを妨げること及び軸受胴中の金属の腐食を妨げることが可能である必要がある。システム油は、軸受の十分な動圧潤滑を提供する必要もあり、そして、極圧条件下で軸受及びギアへの摩耗保護を提供するのに十分な耐磨耗性システムを有する必要もある。シリンダー潤滑剤と対照的に、システム油は、燃料が燃焼している燃焼室に曝されず、そして、当該油の寿命を最大にすることが可能な限り持続するために配合される。従って、システム油の主要な性能特徴は、摩耗保護、酸化安定性、粘度上昇コントロール及び沈殿物性能に関連する。
【0006】
中速エンジンは、典型的に、約250〜約1100rpmの範囲で操作され、そして、4行程(ストローク)サイクルで操作される。これらのエンジンは、典型的に、トランクピストン設計である。トランクピストンエンジンでは、クロスヘッドエンジンとは対照的に、エンジンの全ての領域の潤滑のために、単一の潤滑油が使用される。従って、トランクピストンエンジンオイルは、独特の要求をもつ。トランクピストンエンジンを操作するためのキーとなる性能パラメーターは、ピストンリングパック及びピストン冷却ギャラリの沈殿物コントロール、酸化及び粘度上昇コントロール、及びスラッジコントロールを含む。船舶用残留燃料操作では、これらの性能パラメーターは、船舶用残留燃料からのアスファルテン汚染によってほとんど排他的に決定される。
【0007】
シリンダー潤滑油と類似して、システム及びトランクピストンエンジンオイルは、金属イオンの存在下で酸化を受ける。従って、そのようなタイプの酸化の妨害が、金属イオンを隔離するか又は複合体化することによって、必要である。
【0008】
最近の健康及び環境的懸念は、船舶用ディーゼルエンジンの操作用低硫黄燃料の使用を指図する、いくつかの領域に存在する規則へと導いた。結果として、製造者は、一般的に高い硫黄及び高いアスファルテン含有量を持つ船舶用残留燃料などのより貧弱な品質の中間体又は重質燃料に、高い品質の留出物燃料及び非残留ガス状燃料(例えば、圧縮又は液化天然ガス)を含む種々の燃料で使用するための船舶用ディーゼルエンジンを設計中である。非残留燃料操作では、燃料は、燃料中に存在する有意なアスファルテンを含有せず、そして、非常により低い硫黄レベルを含有する。低硫黄燃料が燃焼する時、燃焼室中では少ない酸が形成される。船舶用残留燃料に対して低硫黄ガス状及び留出物燃料を使用するエンジンの操作用に使用される潤滑油の要求は、非常に異なる。例えば、低硫黄燃料で運転している船舶用エンジン中のピストン沈殿物コントロールは、特にチャレンジである。多量の高セッケン含有洗浄剤を添加した時でさえも、所望のレベルのピストン沈殿物コントロールにつながらなかった、ということが発見されたからである。さらに、潤滑剤の塩基性度は、船舶用シリンダー潤滑剤の酸化によって減少され得る。酸化に起因する潤滑剤の中和能力の低下は、低硫黄燃料で運転している船舶用エンジンで使用するために設計された船舶用潤滑油にとっては特に問題になり得る。
【0009】
船舶用ディーゼル内燃機関の潤滑のための潤滑油は、低操作速度及び高い負荷に起因して高粘度という業界要求を有しており、そして、典型的に、SAE20、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60粘度等級(粘度グレード)の高粘度モノグレード(すなわち、粘度指数改善特性を全く示さないか又はほとんど示さないもの)潤滑油である。水素化分解は、ベースストックの粘度損失という結果になるため、船舶用オイルは、一般的に、水素化分解ベースストックで単に配合することはできないが、ブライトストックのかなりの量の使用を要求する。しかし、酸化的に不安定な芳香族の存在の理由で、ブライトストックへの依存は常に望ましいとは限らない。さらに、ブライトストックの利用度が減少しており、船舶用エンジン用のものなどの高容積の使用という結果になり、潤滑油に所望の粘度測定を付与するための代替の解決策が要求されている。
【0010】
船舶用ディーゼル潤滑剤の別の重要な性能面は、発泡性能である。大量のガスが液体に混入した場合、発泡する。発泡は、浮揚、洗浄及びクリーニング等の特定の用途では望ましいが、発泡により潤滑の効果がなくなるため、発泡が障害となり得る潤滑剤関連用途では望ましくない場合がある。潤滑剤の粘度及び表面張力は、泡の安定性に寄与する。低粘度の油は、大きな気泡を有する泡を生成するが、これは、急速に壊れるので、殆ど問題とならない傾向にある。しかし、船舶用潤滑剤として使用される油等の高粘度油は、微細気泡を含有し、壊れ難い安定な泡を生成する。時間の経過と共に、発泡によって、潤滑剤の酸化分解が加速され、加えて、油の輸送及び圧送能力が影響を受け得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ブライトストックの供給を減少し、船舶用ディーゼル内燃機関用の操作条件及び燃料源を変える制限的な排出規則を考慮すると、潤滑油中の金属イオンを複合体化又は隔離して、種々のBNレベルにわたって高い洗浄力性能及び酸化安定性及び発泡コントロールを提供し、塩基性度の減損(BNの損失)の速度を低下させ、潤滑油組成物中で使用されるブライトストックの量の低減を可能にして、そして、SAE20、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60モノグレード潤滑油組成物用の要求及び船舶用潤滑剤性能要求を満たす、船舶用ディーゼル潤滑油技術の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明の一形態によれば、以下の潤滑油組成物が提供される:
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの;
を含む潤滑油組成物であって:
当該潤滑油組成物が5〜200mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該潤滑油組成物が、SAE20、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の潤滑油組成物。
【0013】
本発明の別の形態によれば、以下の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が提供される:
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物であって:
当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が5〜200mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
【0014】
本発明の別の形態によれば、以下の船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物が提供される:
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物であって:
当該船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物が10〜80mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物が、SAE30又はSAE40モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物。
【0015】
本発明の別の形態によれば、以下の船舶用システム油潤滑油組成物が提供される:
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用システム潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用システム潤滑油組成物であって:
当該船舶用システム油潤滑油組成物が5〜40mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用システム油潤滑油組成物が、SAE20、SAE30又はSAE40モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用システム油潤滑油組成物。
【0016】
本発明の別の形態によれば、以下の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が提供される:
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物であって:
当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が5〜40mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
【0017】
本発明の別の形態によれば、低硫黄燃料で操作する船舶用2サイクルクロスヘッドエンジンの潤滑のために設計された以下の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が提供される:
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物であって:
当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が5〜40mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
【0018】
本発明の別の形態によれば、以下の船舶用ディーゼル潤滑油組成物が提供される:
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用ディーゼル潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用ディーゼル潤滑油組成物であって:
当該船舶用ディーゼル潤滑油組成物が5〜40mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用ディーゼル潤滑油組成物が、SAE20、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用ディーゼル潤滑油組成物。
【0019】
本発明の別の形態によれば、低硫黄燃料で操作する船舶用エンジンの潤滑のための以下の船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物が提供される:
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物であって:
当該船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物が10〜20mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物が、SAE30又はSAE40モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物。
【0020】
船舶用ディーゼル潤滑組成物中おいて潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するものが、性能利益、例えば、オイル増粘(ブライトストックの代替)、洗浄力性能の向上、塩基性度の減損速度の低下、発泡性能、及び、潤滑油の金属触媒酸化及び重合の妨害に起因する酸化安定性など、を達成できることが、見出された。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましい形態の詳細な記述
「船舶用残留燃料」とは、その内容の全体をここに取り込む、国際標準化機構規格ISO 8217:2005,“Petroleum products - Fuels (class F) - Specifications of marine fuels,”で定義される船舶用残留燃料などの、50℃で14.0cStより大きい粘度、国際標準化機構(ISO)10370)で定義されるような炭素残留物を(燃料の総重量に関して)少なくとも2.5重量%(例えば、少なくとも5重量%又は少なくとも8重量%)有する大型船舶用エンジン中の可燃性物質のことを言う。
【0022】
「残留燃料」とは、ISO 8217:2010国際標準で述べるような残留船舶用燃料の規格を満たす燃料のことを言う。「低硫黄船舶用燃料」とは、燃料の総重量に関して約1.5重量%以下又は更に約0.5%重量%以下の硫黄をさらに有する、ISO 8217:2010規格で述べるような残留船舶用燃料の規格を満たす燃料のことを言う。
【0023】
「留出物燃料」とは、ISO 8217:2010国際標準で述べるような留出物船舶用燃料の規格を満たす燃料のことを言う。「低硫黄留出物燃料」とは、燃料の総重量に関して約0.1重量%以下又は更に約0.005重量%以下の硫黄をさらに有する、ISO 8217:2010国際標準で述べる留出物船舶用燃料の規格を満たす燃料のことを言う。
【0024】
「低硫黄燃料」とは、燃料の総重量に関して約1.5重量%以下、又は更に約1.0重量%以下、又は更に0.5%重量%以下、又は更に0.1重量%以下の硫黄を有することを言う。
【0025】
用語「活性(物質)基準で」とは、希釈剤オイルでも溶媒でもない添加剤材料のことを言う。
【0026】
ここで使用される用語「マンニッヒ縮合生成物」とは、下記の式を有する縮合生成物を生成するために、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物と、ここに記載されるアルデヒド及びアミノ酸との縮合反応によって得られる生成物の混合物のことを言う。下記の式は、本発明のものと考えられるマンニッヒ縮合生成物のいくつかの例としてのみ提供され、ここに記載される方法を使用して形成できる他の可能なマンニッヒ縮合生成物を排除する意図ではない。
【0027】
【化1】

【化2】

ここで、R、R、X及びWは、ここで定義されるものである。
【0028】
「全塩基価」又は「TBN」又は「BN」の用語は、油サンプル中のアルカリ度のレベルを意味し、これは、ASTM標準番号D2896又は同等の手順に従って、腐食性の酸を中和し続ける組成物の能力を示す。当該試験は、電気伝導率の変化を測定し、そして、その結果を、mg・KOH/g(1グラムの生成物を中和するのに必要なKOHのミリグラム当量数)として表す。従って、高いTBNは、強い過塩基性生成物を表し、そして結果として、酸を中和するためのより高い塩基予備力(base reserve)を表す。
【0029】
本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物は、船舶用潤滑剤としての使用に適した任意のTBNを有することができる。幾つかの実施形態では、本発明の船舶用潤滑油組成物のTBNは、約200mg KOH/g未満である。他の実施形態では、本開示の船舶用潤滑油組成物のTBNは、約5〜約200、又は約5〜約140、又は約5〜約100、又は約5〜約80、又は約5〜約70、又は約5〜約50、又は約5〜40、又は約5〜約30、又は約5〜25、又は約8〜約200、又は約8〜約140、又は約8〜約100、又は約8〜約80、又は8〜約40、又は約8〜約30、又は約10〜約200、又は約10〜約140、又は約10〜約100、又は約10〜約80、又は約10〜約70、又は約10〜約50、又は10〜約40、又は10〜約30、又は約10〜約25、又は約15〜約200、又は約15〜約140、又は約15〜約100、又は約15〜約80、又は約15〜約70、又は約15〜約50、又は約15〜約40、又は約15〜約30、又は約20〜約200、又は約20〜約140、又は約20〜約100、又は約20〜約80、又は約20〜約70、又は約20〜約40、又は約20〜約30mg KOH/gの範囲を有することができる。
【0030】
潤滑油組成物は、SAE20モノグレード潤滑油組成物、又はSAE30モノグレード潤滑油組成物、又はSAE40モノグレード潤滑油組成物、又はSAE50モノグレード潤滑油組成物、又はSAE60モノグレード潤滑油組成物であることができる。潤滑油組成物のモノグレードは、the SAE J300 standard Rev. January 2015に従って定義される。
【0031】
本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物は、100℃で約6.9〜約26.1cSt、又は100℃で約9.3〜約21.9cSt、又は100℃で約9.3〜約16.3cSt、又は100℃で約12.5〜約21.9、又は100℃で約12.5〜約16.3cSt、又は100℃で約16.3〜約21.9cSt、又は100℃で約16.3〜約26.1cStの範囲の動粘度を有することができる。船舶用ディーゼル潤滑油組成物の動粘度は、ASTM D445によって測定される。
【0032】
船舶用ディーゼル潤滑油組成物は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物であることができる。船舶用シリンダー潤滑油は、シリンダーライナー壁上に高温で十分に厚い潤滑膜を提供するために、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60規格で、典型的に製造される。典型的に、船舶用シリンダー潤滑油は、ASTM D2896で測定して5mg KOH/gよりも高い塩基価を有し、ごく最近では200mg KOH/gもの高いものが配合されている。本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、100℃で約9.3〜約26.1cSt、又は100℃で約12.5〜約26.1cSt、又は100℃で約12.5〜約21.9cSt、100℃で約16.3〜約21.9cSt、又は100℃で約16.3〜約26.1cStの範囲の動粘度を有することができる。本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑組成物は、約5〜約200mg KOH/g、又は約5〜約140mg KOH/g、又は約5〜約100mg KOH/g、又は約5〜約70mg KOH/g、又は約5〜約40mg KOH/g、又は約5〜約30mg KOH/g、又は約8〜約200、又は約8〜約140、又は約8〜約100、又は約8〜約80、又は8〜約40、又は約8〜約30、又は約10〜約140mg KOH/g、又は約10〜約100mg KOH/g、又は約10〜約80mg KOH/g、又は約10〜約50mg KOH/g、又は約10〜約40mg KOH/g、又は約15〜約100mg KOH/g、又は約15〜約80mg KOH/g、又は約15〜約40mg KOH/g、又は約20〜約200mg KOH/g、又は約20〜約140mg KOH/g、又は約20〜約100mg KOH/g、又は約20〜約80mg KOH/g、又は約25〜約80mg KOH/g、又は約30〜約80mg KOH/gの範囲の塩基価を有することができる。
【0033】
船舶用ディーゼル潤滑油組成物は、船舶用システム油潤滑油組成物であることができる。船舶用システム油潤滑油は、SAE20、SAE30又はSAE40規格で典型的に製造される。船舶用システム油のための粘度は、部分的にそのような相対的に低いレベルにセットされる。なぜならば、システム油は、使用中に粘度が上昇し得るからであり、そして、エンジン設計者は操作上の問題を妨げるために粘度上昇の制限をセットしたからである。本発明の船舶用システム油潤滑油組成物は、100℃で約6.9〜約16.3cSt、又は100℃で約6.9〜約12.5cSt、又は約6.9〜約9.3、又は100℃で約9.3〜約16.5cSt、又は100℃で約9.3〜約12.5cStの範囲の動粘度を有することができる。典型的に、船舶用システム油潤滑油は、ASTM D2896によって測定して5mg KOH/gより高い塩基価を有する。本発明の船舶用システム油潤滑剤組成物は、約5〜約40mg KOH/g、又は約5〜約30mg KOH/g、又は約5〜約25mg KOH/g、又は約5〜約15mg KOH/g、又は約10〜約30mg KOH/g、又は約8〜約40、又は約8〜約30、又は約8〜約20mg KOH/gの範囲の塩基価を有することができる。
【0034】
船舶用ディーゼル潤滑油組成物は、船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物であることができる。船舶用トランクピストンエンジン潤滑油は、典型的に、SAE30又はSAE40規格で製造される。本発明の船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物は、100℃で約9.3〜約16.3cSt、又は100℃で約12.5〜約16.3cStの範囲の動粘度を有することができる。典型的に、船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油は、ASTM D2896によって測定して約10mg KOH/gより高い塩基価を有する。船舶用トランクピストンエンジンオイルは、10〜約80mg KOH/g、例えば、10〜約60mg KOH/g、20〜80mg KOH/g、又は約20〜約60mg KOH/gの塩基価を有することができる。
【0035】
本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物は、船舶用ディーゼル潤滑油組成物を製造するための当業者に既知の任意の方法によって調製することができる。成分は、任意の順序で且つ任意の方法で添加することができる。任意の適切な混合又は分散装置を、成分をブレンド、混合又は可溶化するために使用することができる。ブレンド、混合又は可溶化は、ブレンダー、撹拌器、分散機、ミキサー、ホモジナイザー、ミル又は当該技術分野で既知の任意の他の混合若しくは分散装置を用いて実施することができる。
【0036】
本発明の船舶用ディーゼル潤滑剤組成物には、主要量の潤滑粘度の油が含まれる。「主要量」とは、船舶用ディーゼル潤滑剤組成物が、船舶用ディーゼル潤滑油組成物の全重量に基づいて、少なくとも約40重量%、又は少なくとも約45重量%、又は少なくとも約50重量%、又は少なくとも約55重量%、又は少なくとも約60重量%、特に少なくとも約70重量%の、以下に記載するような潤滑粘度の油を好適に含むことを意味する。
【0037】
潤滑粘度の油は、船舶用ディーゼルエンジンの潤滑に適した任意の油であることができる。潤滑粘度の油は、天然潤滑油、合成潤滑油又はそれらの混合物から誘導された基油であることができる。好適な基油には、合成ワックス及びスラックワックスの異性化によって得られるベースストック、並びに原油の芳香族成分及び極性成分の水素化分解(溶媒抽出ではなく)によって生成される水素化分解ベースストックが含まれる。
【0038】
好適な天然油には、例えば、液体石油等の鉱物潤滑油、パラフィン系、ナフテン系又は混合パラフィン系ナフテン系の溶媒処理又は酸処理した鉱物潤滑油、石炭又はシェール由来の油、動物油、植物油(例えば、ナタネ油、ヒマシ油及びラード油)等が含まれる。
【0039】
好適な合成潤滑油には、非限定的に、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えばポリマー化及びインターポリマー化オレフィン、例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)等及びそれらの混合物;アルキルベンゼン、例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)−ベンゼン等;ポリフェニル、例えばビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル等;アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド並びにその誘導体、類似体及び同族体等が含まれる。
【0040】
他の合成潤滑油には、非限定的に、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブテン、ペンテン、及びそれらの混合物等の5個未満の炭素原子のオレフィンを重合することによって作られる油が含まれる。このようなポリマー油を調製する方法は、当業者に周知である。追加的な合成炭化水素油には、適切な粘度を有するアルファオレフィンの液体ポリマーが含まれる。特に有用な合成炭化水素油は、CからC12アルファオレフィン、例えば1−デセン三量体等の水素化液体オリゴマーである。
【0041】
合成潤滑油の別の種類には、非限定的に、アルキレンオキシドポリマー、即ち、末端ヒドロキシル基が例えばエステル化又はエーテル化によって修飾されているホモポリマー、インターポリマー及びそれらの誘導体が含まれる。これらの油の例には、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合によって調製される油、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びフェニルエーテル(例えば、平均分子量が1,000のメチルポリプロピレングリコールエーテル、分子量が500から1,000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量が1,000から1,500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)又はそれらのモノ及びポリカルボン酸エステル、例えば、酢酸エステル、混合CからC脂肪酸エステル、若しくはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステル等が挙げられる。
【0042】
合成潤滑油の更に別の種類には、非限定的に、ジカルボン酸、例えばフタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等と、種々のアルコール、例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等とのエステルが含まれる。これらのエステルの特定の例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2−エチルヘキサン酸等との反応により形成される複合エステルが含まれる。
【0043】
潤滑粘度の油は、天然又は合成の未精製、精製及び再精製油、又は上記の種類の任意の2つ以上の混合物から誘導することができる。未精製油は、天然又は合成の供給源(例えば、石炭、シェール、又はタールサンドビチューメン)から更に精製又は処理することなく直接得られるものである。未精製油の例には、非限定的に、レトルト操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油又はエステル化プロセスから直接得られるエステル油が含まれ、これらはそれぞれ、その後、更なる処理をすることなく使用される。精製油は、1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製工程で更に処理されていることを除いて、未精製油と類似している。これらの精製技術は、当業者に既知であり、これには、例えば、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、パーコレーション、水素化精製、脱ろう等が含まれる。再精製油は、精製油を得るのに使用したプロセスに類似したプロセスで、使用済み油を処理することによって得られる。このような再精製油は、再生又は再処理された油としても知られており、しばしば、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を目指す技術によって追加的に処理される。
【0044】
更に、ろう(ワックス)の水素化異性化から誘導された潤滑油ベースストックは、単独で、又は前記天然及び/又は合成ベースストックとの組合せで使用することができる。このようなろう異性化油は、水素化異性化触媒上での天然又は合成ろう(ワックス)又はその混合物の水素化異性化によって生成される。天然ろう(ワックス)は、典型的に、鉱油の溶媒脱ろうによって回収されたスラックワックスである。合成ろうは、典型的に、フィッシャー・トロプシュ法により生成されたろうである。
【0045】
一実施形態では、潤滑粘度の油は、グループIのベースストック(I種ベースストック)である。一般に、ここで使用するためのグループIのベースストックは、API刊行物1509、第16版、補遺I、2009年10月(API Publication 1509, 16th Edition, Addendum I, Oct., 2009)に定義されている潤滑粘度の石油誘導基油とすることができる。APIガイドラインには、多様な異なるプロセスを使用して製造することができる潤滑剤成分としてベースストックが定義されている。グループIの基油(I種基油)は、一般的に、飽和分含量が90重量%未満(ASTM D2007により定量)及び/又は全硫黄含量が300ppm超過(ASTM D2622、ASTM D4294、ASTM D4297又はASTM D3120により定量)、そして、粘度指数(VI)が80以上且つ120未満(ASTM D2270により定量)である石油誘導潤滑基油を意味する。
【0046】
グループIの基油には、減圧蒸留塔からの軽質オーバーヘッドカット及びより重質のサイドカットを含ませることができ、更に、例えば、軽質ニュートラル、中質ニュートラル及び重質ニュートラルのベースストックを含ませることができる。更に、石油誘導基油には、例えば、ブライトストック等の残渣ストック又はボトム留分を含ませることができる。ブライトストックは、従来から残留ストック又はボトムから製造され、高度に精製且つ脱ろうされてきた高粘度基油である。ブライトストックは、40℃で約180cSt超過、又は40℃で約250cSt超過、又は40℃で約500から約1100cStの範囲の動粘度を有することができる。
【0047】
一実施形態では、1種以上のベースストックは、異なる分子量及び粘度を有する2種以上、3種以上、又は更に4種以上のグループIのベースストックのブレンド又は混合物とすることができ、この場合、当該ブレンドは、船舶用ディーゼルエンジンで使用するための適切な特性(上で議論した粘度及びTBN値等)を有する基油を作るのに適切な方法で加工処理される。一実施形態では、1種以上のベースストックには、ExxonMobil CORE(登録商標)100、ExxonMobil CORE(登録商標)150、ExxonMobil CORE(登録商標)600、ExxonMobil CORE(登録商標)2500又はそれらの組合せ又は混合物が含まれる。
【0048】
別の実施形態では、潤滑粘度の油は、API刊行物1509、第16版、補遺I、2009年10月に定義されているグループIIのベースストック(II種ベースストック)とすることができる。グループIIのベースストックは、一般的に、全硫黄含量が300ppm(parts per million)以下(ASTM D2622、ASTM D4294、ASTM D4927又はASTM D3120により定量)、飽和分含量が90重量%以上(ASTM D2007により定量)及び粘度指数(VI)が80から120(ASTM D2270により定量)である石油誘導潤滑基油を意味する。
【0049】
別の実施形態では、潤滑粘度の油は、API刊行物1509、第16版、補遺I、2009年10月に定義されているグループIIIのベースストック(III種ベースストック)とすることができる。グループIIIのベースストックは、一般的に、全硫黄含量が0.03重量%以下(ASTM D2270により定量)、飽和分含量が90重量%以上(ASTM D2007により定量)、及び粘度指数(VI)が120以上(ASTM D4294、ASTM D4297又はASTM D3120により定量)である。一実施形態では、当該ベースストックは、グループIIIのベースストック、又は2種以上の異なるグループIIIのベースストックのブレンドである。
【0050】
一般に、石油系油から誘導されるグループIIIのベースストックは、高度に水素化処理(水素化精製)された鉱油である。水素化処理には、水素を処理すべきベースストックと反応させて、炭化水素からヘテロ原子を除去し、オレフィン及び芳香族化合物をそれぞれアルカン及びシクロパラフィンに還元すること、そして、非常に高度な水素化処理では、ナフテン系環状構造を非環式ノルマル及びイソアルカン(「パラフィン類」)に開環することが含まれる。一実施形態では、グループIIIのベースストックは、少なくとも約70%のパラフィン系炭素含量(%C)を有し、それは、試験方法ASTM D3238−95(2005),“Standard Test Method for Calculation of Carbon Distribution and Structural Group Analysis of Petroleum Oils by the n-d-M Method”により定量される。別の実施形態では、グループIIIのベースストックは、少なくとも約72%のパラフィン系炭素含量(%C)を有する。別の実施形態では、グループIIIのベースストックは、少なくとも約75%のパラフィン系炭素含量(%C)を有する。別の実施形態では、グループIIIのベースストックは、少なくとも約78%のパラフィン系炭素含量(%C)を有する。別の実施形態では、グループIIIのベースストックは、少なくとも約80%のパラフィン系炭素含量(%C)を有する。別の実施形態では、グループIIIのベースストックは、少なくとも約85%のパラフィン系炭素含量(%C)を有する。
【0051】
別の実施形態では、グループIIIのベースストックは、約25%以下のナフテン系炭素含量(%C)を有し、それは、ASTM D3238−95(2005)により定量される。別の実施形態では、グループIIIのベースストックは、約20%以下のナフテン系炭素含量(%C)を有する。別の実施形態では、グループIIIのベースストックは、約15%以下のナフテン系炭素含量(%C)を有する。別の実施形態では、グループIIIのベースストックは、約10%以下のナフテン系炭素含量(%C)を有する。
【0052】
一実施形態では、ここで使用するためのグループIIIのベースストックは、フィッシャー・トロプシュ誘導基油である。「フィッシャー・トロプシュ誘導」の用語は、生成物、留分、又はフィードが、フィッシャー・トロプシュプロセスから生じるか、又はフィッシャー・トロプシュプロセスによってある段階で生成されることを意味する。例えば、フィッシャー・トロプシュ基油は、フィードがフィッシャー・トロプシュ合成から回収されるろう状の(ワックス状の)フィードであるプロセスから製造することができ、例えば、米国特許出願公開第2004/0159582号;第2005/0077208号;第2005/0133407号;第2005/0133409号;第2005/0139513号;第2005/0139514号;第2005/0241990号が参照され、それらの各々を本明細書に参照により援用する。一般に、当該プロセスには、パラフィンを選択的に異性化することができる触媒又は二元機能触媒を利用する、完全な又は部分的な水素化異性化脱ろう工程が含まれる。水素化異性化脱ろうは、ろう状のフィードを、異性化ゾーンで水素化異性化条件下にて水素化異性化触媒と接触させることによって達成される。
【0053】
別の実施形態では、潤滑粘度の油は、API刊行物1509、第16版、補遺I、2009年10月に定義されているグループIVのベースストック(IV種ベースストック)とすることができる。グループIVのベースストック、即ちポリアルファオレフィン(PAO)は、典型的に、低分子量のアルファオレフィン、例えば少なくとも6個の炭素原子を含有するアルファオレフィンをオリゴマー化することによって作られる。一実施形態では、アルファオレフィンは、10個の炭素原子を含有するアルファオレフィンである。PAOは、二量体、三量体、四量体等の混合物であり、所望の最終的なベースストックの粘度に応じて正確に混合される。PAOは、典型的に、オリゴマー化後に水素化されて、残りの不飽和物を除去する。
【0054】
上記のように、船舶用ディーゼルエンジンで使用するための潤滑剤は、典型的に100℃で6.9から26.1cStの範囲の動粘度を有する。このような潤滑剤を配合するために、ブライトストックをより低粘度油と組合せることができる。しかし、ブライトストックの供給は次第に減少しているので、船舶用潤滑剤の粘度を製造者が推奨する所望の範囲に高めるために、ブライトストックに頼ることはできない。この問題への1つの解決策は、船舶用潤滑剤を高粘度にするために、ポリイソブチレン(PIB)等の増粘剤又はオレフィンコポリマー等の粘度指数向上剤を使用することである。PIBは、幾つかの製造者から市販されている材料である。PIBは、典型的に、約1,000から約8,000、又は約1,500から約6,000の範囲の重量平均分子量、及び、約2,000から約5,000又は約6,000cSt(100℃)の範囲の粘度を有する粘性の油混和性液体である。船舶用潤滑剤に添加されるPIBの量は、通常、最終的な油の約1から約20重量%、又は最終的な油の約2から約15重量%、又は最終的な油の約4から約12重量%であろう。
【0055】
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10.0重量%、又は約0.5重量%〜約10.0重量%、又は約0.5重量%〜約8.0重量%、又は約1.0重量%〜約10.0重量%、又は約3.0重量%〜約10.0重量%、又は約3.0重量%〜約8.0重量%、又は約2.5〜約10.0重量%、又は約2.5重量%〜約8.0重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの、を更に含有するであろう。一般に、主要なマンニッヒ縮合生成物は、式Iの構造で表すことができる:
【0056】
【化I】
【0057】
上記の式中、各Rは独立して−CHR’−であり、R’は、1個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖アルキル、約3個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有するシクロアルキル、約6個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有するアリール、約7個の炭素原子〜約20個の炭素原子を有するアルカリール、又は、約7個の炭素原子〜約20個の炭素原子を有するアラルキルであり、Rは、約400〜約2500の範囲の数平均分子量を有してかつ少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導されるポリイソブチル基であり;
Xは水素、アルカリ金属イオン、又は1個〜約6個の炭素原子を有するアルキルであり;
Wは、−[CHR’’]−であり、ここで、各R’’は、独立して、Hか、1個の炭素原子〜約15個の炭素原子を有するアルキルか、又は、アミノ、アミド、ベンジル、カルボキシル、ヒドロキシル、ヒドロキシフェニル、イミダゾリル、イミノ、フェニル、スルフィド、又はチオールから成る群から選択される1つ以上の置換基及び1個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有する置換アルキルか、であり;そして、mは1〜4の整数であり;
Yは、水素か、1個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有するアルキルか、−CHR’OH(R’は、上記で定義されたもの)か、又は
【化3】

(ここで、Y’は−CHR’OHであり、R’は上記で定義されたものであり;及びR、X,及びWは上記で定義されたもの)か、であり;
Zは、ヒドロキシルか、又は、下記の式のヒドロキシフェニル基である:
【化4】

上記式中、R、R、Y’、X,及びWは、上記で定義されたものであり、
そして、nは、0〜20の整数であり、ただし、n=0の時、Zは下記のものでなければならない:
【化5】

上記式中、R、R、Y’、X,及びWは、上記で定義されたものである。
【0058】
一形態では、Rポリイソブチル基は、約500〜約2500の数平均分子量を有する。一形態では、Rポリイソブチル基は、約700〜約1,500の数平均分子量を有する。一形態では、Rポリイソブチル基は、約700〜約1,100の数平均分子量を有する。一形態では、Rポリイソブチル基は、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導される、一形態では、Rポリイソブチル基は、少なくとも約90重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導される。
【0059】
上記の式Iの化合物では、Xは、アルカリ金属イオンであり、最も好ましくは、ナトリウム又はカリウムイオンである。別の実施形態では、上記の式Iの化合物では、Xは、メチル又はエチルから選択されるアルキルである。一形態では、本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物は、マンニッヒ反応生成物を含み、マンニッヒ生成物の製造で使用されるアルカリ金属は、ナトリウムである。別の実施形態では、本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物は、マンニッヒ反応生成物を含み、マンニッヒ生成物の製造で使用されるアルカリ金属は、カリウムである。別の実施形態では、本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物は、マンニッヒ反応生成物の組合せを含み、マンニッヒ生成物の製造で使用されるアルカリ金属は、カリウム及びナトリウムである。
【0060】
一形態では、RはCHであり、Rは、約700〜約1,100の範囲の数平均分子量及び少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、WはCHであり、Xはナトリウムイオンであり、そして、nは0〜20である。
【0061】
本発明の潤滑油組成物で使用するためのマンニッヒ縮合生成物は、反応条件下でポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基を組合せることによって調製でき、ここで、ポリイソブチル基は、約400〜約2500の数平均分子量を有する。一形態では、マンニッヒ縮合生成物は、下記の(a);(b);(c);及び(d)のマンニッヒ縮合によって調製される:
(a)下記の式を有するポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物:
【化6】

上記式中、Rは、約400〜約2500の範囲の数平均分子量を有しかつ少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導されたポリイソブチル基であり、Rは、水素か又は1個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有する低級アルキルであり、そして、Rは水素か又は−OHである;
(b)ホルムアルデヒド又は下記の式を有するアルデヒド:
【化7】

上記式中、R’は、1個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖アルキルか、約3個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有するシクロアルキルか、約6個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有するアリールか、約7個の炭素原子〜約20個の炭素原子を有するアルカリールか、又は約7個の炭素原子〜約20個の炭素原子を有するアラルキルである;
(c)下記の式を有するアミノ酸又はそのエステル誘導体:
【化8】

上記式中、Wは、−[CHR’’]−であり、ここで、各R’’は、独立して、Hか、1個の炭素原子〜約15個の炭素原子を有するアルキルか、又は、アミノ、アミド、ベンジル、カルボキシル、ヒドロキシル、ヒドロキシフェニル、イミダゾリル、イミノ、フェニル、スルフィド、又はチオールから成る群から選択される1つ以上の置換基及び1個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有する置換アルキルであり;mは、1〜4の整数であり,Aは、水素か又は1個の炭素原子〜約6個の炭素原子を有するアルキルである;及び
(d)アルカリ金属塩基。
【0062】
種々のポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、本発明のマンニッヒ縮合生成物の調製において利用できる。重要な特徴は、ポリイソブチル置換基が、完成したマンニッヒ縮合生成物に油溶性を付与するのに十分に大きいことである。一般に、マンニッヒ縮合生成物の油溶性を可能にすることが要求されるポリイソブチル置換基上の炭素原子の数は、およそ約C20以上程度である。これは、約400〜約2500の範囲の分子量に対応する。フェノール環上のC20以上のアルキル置換基が、フェノール上のOH基に対してパラ位に位置するのが望ましい。
【0063】
ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物は、典型的に、ポリイソブチル置換フェノールであり、ポリイソブチル部位は、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、より好ましくは、ポリイソブチル部位は、少なくとも約90重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導される。ここで使用される用語「ポリイソブチル又はポリイソブチル置換基」とは、ヒドロキシ芳香族環上のポリイソブチル置換基のことを言う。ポリイソブチル置換基は、約400〜約2500の範囲の数平均分子量を有する。一形態では、ポリイソブチル部位は、約450〜約2500の範囲の数平均分子量を有する。一形態では、ポリイソブチル部位は、約700〜約1500の範囲の数平均分子量を有する。一形態では、ポリイソブチル部位は、約700〜約1100の範囲の数平均分子量を有する。
【0064】
二置換フェノールも、本発明のマンニッヒ縮合生成物のための適切な出発物質である。二置換フェノールは、それらがフェノール環上に非置換オルト位が存在するようなやり方で置換されていれば適切である。適切な二置換フェノールの例は、パラ位にC20以上のポリイソブチル置換基で置換されているo−クレゾール誘導体などである。
【0065】
一形態では、ポリイソブチル置換フェノールは、以下の式を有する:
【化9】

ここで、Rは、約400〜約2500の範囲の数平均分子量を有しかつ少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導されたポリイソブチル基であり、Yは水素である。
【0066】
適切なポリイソブテンは、米国特許第4,152,499及び4,605,808に記載されているような三フッ化ホウ素(BF)アルキル化触媒を使用して調製でき、これらの引用の各々の内容は、参照によりここに取り込む。高いアルキルビニリデン含有量を有する市販されているポリイソブテンは、BASFから入手可能なGlissopal(登録商標)1000、1300及び2300を含む。
【0067】
マンニッヒ縮合生成物の調製で使用するための好ましいポリイソブチル置換フェノールは、モノ置換フェノールであり、ポリイソブチル置換基は、フェノール環のパラ位に付いている。しかし、マンニッヒ縮合反応を受けることができる他のポリイソブチル置換フェノールも、本発明によるマンニッヒ縮合生成物の調製用に使用できる。
【0068】
マンニッヒ縮合生成物の調製においてポリイソブチル置換フェノールの反応及び取扱いを促進するために、溶媒を使用することができる。適切な溶媒の例は、炭化水素化合物、例えば、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、芳香族溶媒、潤滑粘度の中性油、パラフィン及びナフテンなどである。芳香族混合物である他の市販されている適切な溶媒の例は、Chevron(登録商標)Aromatic 100N、中性油、Exxon(登録商標)150N、中性油を含む。
【0069】
一形態では、マンニッヒ縮合生成物は、最初に、アルキル置換芳香族溶媒中に溶解できる。一般的に、芳香族溶媒上のアルキル置換基は、約3個の炭素原子〜約15個の炭素原子を有する。一形態では、芳香族溶媒上のアルキル置換基は、約6個の炭素原子〜約12個の炭素原子を有する。
【0070】
マンニッヒ縮合生成物を形成する上で使用するための適切なアルデヒドは、ホルムアルデヒド又は下記の式を有するアルデヒドを含む:
【化10】

ここで、R’は、1個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖アルキル、約3個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有するシクロアルキル、約6個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有するアリール、約7個の炭素原子〜約20個の炭素原子を有するアルカリール、又は約7個の炭素原子〜約20個の炭素原子を有するアラルキルである。
【0071】
代表的なアルデヒドは、脂肪族アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロアルデヒド及びヘプトアルデヒドなどを含むが、それらに限定されない。芳香族アルデヒド、例えばベンズアルデヒド及びアルキルベンズアルデヒド、例えばパラトルアルデヒドなども、マンニッヒ縮合生成物の調製で使用するために企図される。ホルムアルデヒド生成試薬、例えばパラホルムアルデヒド及び水性ホルムアルデヒド溶液、例えばホルマリンも、有用である。1つの好ましい形態では、マンニッヒ縮合生成物の調製において使用するためのアルデヒドは、ホルムアルデヒド又はホルマリンである。ホルムアルデヒドは、ガス状、液体及び固体を含む全てのその形態を意味する。ガス状ホルムアルデヒドの例は、モノマーCHO及び下記の式を有する三量体、(CHO)(トリオキサン)である。
【化11】
【0072】
液体ホルムアルデヒドの例は、下記のものである:
エチルエーテル中のモノマーCHO。
式HO(−CHO)−H及びCH(HO)(メチレングリコール)を有する水中のモノマーCHO。
式CHO(−CHO)−H及びOHCHOCHを有するメタノール中のモノマーCHO。
【0073】
ホルムアルデヒド溶液は、様々なアルコール及び水中で市販されている。水中では、それは、37%〜50%溶液として入手可能である。ホルマリンは、水中での37%溶液である。ホルムアルデヒドは、直鎖及び環状(トリオキサン)ポリマーとしても市販されている。直鎖ポリマーは、低分子量又は高分子量ポリマーであることができる。
【0074】
マンニッヒ縮合生成物を形成する上で使用するための適切なアミノ酸又はそのエステル誘導体は、下記の式を有するアミノ酸を含む:
【化12】

ここで、Wは、−[CHR’’]−であり、各R’’は、独立して、Hか、1個の炭素原子〜約15個の炭素原子を有するアルキルか、又は、アミノ、アミド、ベンジル、カルボキシル、ヒドロキシル、ヒドロキシフェニル、イミダゾリル、イミノ、フェニル、スルフィド、又はチオールから成る群から選択される1つ以上の置換基及び1個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有する置換アルキルであり;mは1〜4の整数であり;Aは、水素又は1個の炭素原子〜約6個の炭素原子を有するアルキルである。好ましくは、アルキルは、メチル又はエチルである。
【0075】
一形態では、アミノ酸は、グリシンである。
【0076】
ここで使用される用語「アミノ酸塩」とは、下記の式を有するアミノ酸の塩のことを言う:
【化13】

ここで、Wは上記で定義されたものであり、Mはアルカリ金属イオンである。好ましくは、Mは、ナトリウムイオン又はカリウムイオンである。より好ましくは、Xはナトリウムイオンである。
【0077】
マンニッヒ縮合生成物の調製で使用するために企図されるアルファアミノ酸のいくつかの例は、下記のものである:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、チロシン、及びバリン。
【0078】
マンニッヒ縮合生成物を形成する上で使用するための適切なアルカリ金属塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシドなどを含む。一形態では、アルカリ金属塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム又は水酸化カリウムから成る群から選択されるアルカリ金属水酸化物である。
【0079】
一形態では、アミノ酸は、そのアルカリ金属イオン塩の形態で添加できる。一形態では、アルカリ金属イオンは、ナトリウムイオン又はカリウムイオンである。1つの好ましい形態では、アルカリ金属イオンは、ナトリウムイオンである。
【0080】
マンニッヒ縮合生成物を形成するための反応は、バッチ式、又は連続式又は半連続式モードで実施できる。通常、この反応の圧力は大気圧であるが、反応は、必要に応じて、大気圧より低い圧力又は過圧下で実施できる。
【0081】
この反応の温度は、広く変化させることができる。この反応の温度範囲は、約10℃〜約200℃、又は約50℃〜約150℃、又は約70℃〜約130℃で変化させることができる。
【0082】
反応は、希釈剤又は希釈剤の混合物の存在下で実施できる。重要なことは、反応物を反応させるためにそれらをお互いに密接に接触するのを確保することである。これは重要な考慮である。なぜならば、マンニッヒ縮合生成物のための出発物質は、相対的に非極性のポリイソブチル置換ヒドロキシル芳香族化合物及び相対的に極性のアミノ酸又はそのエステル誘導体を含むからである。従って、全ての出発物質を溶解するであろう希釈剤又は反応条件の適切なセットを見出すことが必要である。
【0083】
この反応の希釈剤は、この反応の出発物質を溶解できて、反応材料がお互いに接触することを可能にするものでなければならない。この反応では、希釈剤の混合物を使用することができる。この反応の有用な希釈剤は、下記のものを含む:水、アルコール(下記のものを含む:メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ブタンジオール、2−エチルヘキサノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、エチレングリコールなど)、DMSO、NMP、HMPA、セロソルブ、ジグリム、様々なエーテル(下記のものを含む:ジエチルエーテル、THF、ジフェニルエーテル、ジオキサンなど)、芳香族希釈剤(下記のものを含む:トルエン、ベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレンなど)、エステル、アルカン(下記のものを含む:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、及び様々な天然及び合成希釈油(下記のものを含む:100中性油、150中性油、ポリアルファオレフィン、フィッシャー・トロプシュ誘導基油など、及びこれらの希釈剤の混合物。メタノール及びヘプタンなどの2相を形成する希釈剤の混合物は、この反応の適切な希釈剤である。
【0084】
反応は、最初にヒドロキシ芳香族化合物をアルカリ金属塩基と反応させて、その後、アミノ酸又はそのエステル誘導体及びアルデヒドを添加することによって実施でき、又は、アミノ酸又はそのエステル誘導体をアルデヒドと反応させて、その後、ヒドロキシ芳香族化合物及びアルカリ金属塩基などを添加することもできる。
【0085】
グリシンなどのアミノ酸又はそのエステル誘導体、プラス、ホルムアルデヒドなどのアルデヒドの反応は、下記式の中間体を生成できると考えられる:
【化14】

当該中間体は、最終的には下記の環状構造を形成できる:
【化15】
【0086】
これらの中間体は、ヒドロキシ芳香族化合物及び塩基と反応して本発明のマンニッヒ縮合生成物を形成できると考えられる。
【0087】
あるいは、ヒドロキシ芳香族化合物とアルデヒドとの反応は、下記式の中間体を生成できると考えられる:
【化16】
【0088】
この中間体は、アミノ酸又はそのエステル誘導体及び塩基と反応して本発明のマンニッヒ縮合生成物を形成できると考えられる。
【0089】
反応時間は、温度に応じて広く変化させることができる。反応時間は、約0.1時間〜約20時間、又は約2時間〜約10時間、又は約3時間〜約7時間の間で変化させることができる。
【0090】
試薬の投入モル比(CMR)も、広い範囲にわたって変化させることができる。下記の表Iは、もしも異なる投入モル比が使用されるならば生じ得る異なる式のリストを与える。少なくとも、油溶性マンニッヒ縮合生成物は、1つのアルカリ金属及び1つのアルデヒド基によって結合した1つのアミノ酸基及び少なくとも1つのポリイソブチル置換フェノール環を含有するべきなのが好ましい。下記の表Iにも示されている、この分子でのポリイソブチル置換フェノール/アルデヒド/アミノ酸/塩基の投入モル比は、1.0:1.0:1.0:1.0である。他の投入モル比も可能であり、そして、他の投入モル比の使用は、異なる式の異なる分子の製造につながり得る。
【0091】
【表I】
【0092】
更なる実施形態では、ここで議論される本発明の潤滑油組成物のいずれも、マンニッヒ生成物以外の1つ以上の添加剤を更に含むことができる。そのような添加剤は、洗浄剤又は分散剤であることができる。
【0093】
一実施形態では、本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物には、1種以上のポリアルケニルビススクシンイミド分散剤であって、前記ポリアルケニル置換基が約900から約3000の数平均分子量を有するポリアルケン基から誘導される、分散剤が更に含まれる。一般に、ビススクシンイミドは、ポリアルケニル置換コハク酸又は無水物と、1種以上のポリアミン反応物との間の反応からの完成した反応生成物であり、その生成物が、第1級アミノ基と無水物部分との反応から得られるタイプのイミド結合に加えて、アミド、アミジン、及び/又は塩結合を有する場合がある化合物を包含することを意図する。ビススクシンイミド分散剤は、当該分野で周知の方法に従って調製され、例えば、特定の基本的なタイプのスクシンイミド及び当該技術分野における「スクシンイミド」の用語に包含される関連物質は、例えば、米国特許第2,992,708号;3,018,291;3,024,237;3,100,673;3,219,666;3,172,892;及び3,272,746に教示されており、その内容を、参照により本明細書に援用する。
【0094】
一実施形態では、1種類以上のポリアルケニルビススクシンイミド分散剤は、式Iのポリアルケニル置換無水コハク酸をポリアミンと反応させることによって得ることができる。
【化I】

式中、Rは、数平均分子量が約900から約3000のポリアルケン基から誘導されるポリアルケニル置換基である。一実施形態では、Rは、約900から約2500の数平均分子量を有するポリアルケン基から誘導されるポリアルケニル置換基である。一実施形態では、Rは、約1500から約3000の数平均分子量を有するポリブテンから誘導されるポリブテニル置換基である。別の実施形態では、Rは、約2000から約3000の数平均分子量を有するポリブテンから誘導されるポリブテニル置換基である。別の実施形態では、Rは、約1500から約2500の数平均分子量を有するポリブテンから誘導されるポリブテニル置換基である。
【0095】
ポリオレフィンと無水マレイン酸との反応によるポリアルケニル置換無水コハク酸の調製は、例えば、米国特許第3,018,250号及び第3,024,195号に記載されている。このような方法には、ポリオレフィンと無水マレイン酸との熱反応、及びハロゲン化ポリオレフィン、例えば塩素化ポリオレフィンと無水マレイン酸との反応が含まれる。ポリアルケニル置換無水コハク酸の還元によって、対応するアルキル誘導体が得られる。あるいは、ポリアルケニル置換無水コハク酸は、例えば、米国特許第4,388,471号及び第4,450,281号に記載されているように調製することができ、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0096】
無水マレイン酸等や無水コハク酸との反応のための約900から約3000の数平均分子量を有するポリアルケン基は、主要量のCからCモノオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン及びペンテンを含むポリマーである。ポリマーは、ポリイソブチレン等のホモポリマー、並びにエチレンとプロピレン、ブチレン及びイソブチレン等とのコポリマー等の2種以上のこのようなオレフィンのコポリマーとすることができる。他のコポリマーには、少量(例えば1から20モルパーセント)のコポリマーモノマーが、CからC非共役ジオレフィン、例えば、イソブチレンとブタジエンとのコポリマー又はエチレン、プロピレン及び1,4−ヘキサジエンのコポリマー等であるものが含まれる。
【0097】
約900から約3000の数平均分子量を有する特に好ましいクラスのポリアルケン基には、1−ブテン、2−ブテン及びイソブテンの1種以上の重合によって調製されるポリブテンが含まれる。実質的な割合の、イソブテンから誘導される単位を含有するポリブテンが特に望ましい。ポリブテンは、少量のブタジエンを含有することができ、それは、当該ポリマー中に結合して(取り込まれて)いても、結合して(取り込まれて)いなくてもよい。ほとんどの場合、イソブテン単位は、ポリマー中の単位の約80%、又は少なくとも約90%を構成する。これらのポリブテンは、当業者に周知の容易に入手可能な市販の材料であり、例えば、米国特許第3,215,707号;第3,231,587号;第3,515,669号;第3,579,450号、及び第3,912,764号に記載されているものであり、それらの内容は参照により本明細書に援用する。
【0098】
非ホウ酸化ビススクシンイミド分散剤の調製に使用するのに好適なポリアミンには、ポリアルキレンポリアミンが含まれる。このようなポリアルキレンポリアミンは、典型的に、約2から約12個の窒素原子及び約2から24個の炭素原子を含む。特に好適なポリアルキレンポリアミンは、式:HN−(RNH)H(式中、Rは2又は3個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキレン基であり、cは1から9である。)で表されるものである。好適なポリアルキレンポリアミンの代表例には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン及びこれらの混合物が含まれる。最も好ましくは、ポリアルキレンポリアミンはテトラエチレンペンタミンである。
【0099】
好適なポリアミンの例には、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、及び重質ポリアミン(heavypolyamines)(例えば、Dow Chemical Company, Midland, Mich.から入手可能なDow HPA−X 数平均分子量275)が含まれる。このようなアミンは、分枝鎖ポリアミン、及びヒドロカルビル置換ポリアミンを含む、先に言及した置換ポリアミン等の異性体を包含する。HPA−X重質ポリアミン(「HPA−X」)には、1分子当たり平均約6.5個のアミン窒素原子が含有される。このような重質ポリアミンは、一般的に優れた結果をもたらす。
【0100】
一般的に、本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物における、1種以上のポリアルケニルビススクシンイミド分散剤であって、前記ポリアルケニル置換基が約900から約3000の数平均分子量を有するポリアルケン基から誘導される、分散剤の濃度は、船舶用ディーゼル潤滑油組成物の全重量に基づいて、活性物質基準で、約0.25重量%超過、又は約0.5重量%超過、又は約1.0重量%超過、又は約1.2重量%超過、又は約1.5重量%超過、又は約1.8重量%超過、又は約2.0重量%超過、又は約2.5重量%超過、又は約2.8重量%超過である。別の実施形態では、本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物中に存在する、1種以上の非ホウ酸化ポリアルケニルビススクシンイミド分散剤であって、前記ポリアルケニル置換基が約900から約3000の数平均分子量を有するポリアルケン基から誘導される、分散剤の量は、船舶用ディーゼル潤滑油組成物の全重量に基づいて、活性物質基準で、約0.25から10重量%、又は約0.25から8.0重量%、又は約0.25から5.0重量%、又は約0.25から4.0重量%、又は0.25から3.0重量%、又は約0.5から10重量%、又は約0.5から8.0重量%、又は約0.5から5.0重量%、又は約0.5から4.0重量%、又は約0.5から3.0重量%、又は約0.5から10重量%、又は約0.5から8.0重量%、又は約1.0から5.0重量%、又は約1.0から4.0重量%、又は約1.0から3.0重量%、又は約1.5から10重量%、又は約1.5から8.0重量%、又は約1.5から5.0重量%、又は約1.5から4.0重量%、又は約1.5から3.0重量%、又は約2.0から10重量%、又は約2.0から8.0重量%、又は約2.0から5.0重量%、又は約2.0から4.0重量%の範囲とすることができる。
【0101】
別の実施形態では、本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物には、環式カーボネート後処理ポリアルケニルビススクシンイミド分散剤が更に含まれる。この実施形態のポリアルケニルビススクシンイミド分散剤は、上述のように、即ち、ポリアルケニル置換無水コハク酸とポリアミンとの反応によって調製することができる。
【0102】
この実施形態のポリアルケニルビススクシンイミド分散剤は、環式カーボネートで後処理されて、環式カーボネート後処理ポリアルケニルビススクシンイミド分散剤を形成する。本発明で使用するのに適した環式カーボネートには、非限定的に、1,3−ジオキソラン−2−オン(エチレンカーボネート):4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(プロピレンカーボネート);4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン:4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン;4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(ブチレンカーボネート)などが含まれる。他の好適な環式カーボネートは、ソルビトール、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の糖類から、及び当該技術分野で既知の方法によってCからC30オレフィンから調製されるビシナルジオールから調製することができる。
【0103】
ポリアルケニルビススクシンイミド分散剤は、当該技術分野において周知の方法に従って環式カーボネートを用いて後処理することができる。例えば、環式カーボネート後処理ポリアルケニルビススクシンイミド分散剤は、ビススクシンイミド分散剤を反応器に、場合により窒素パージ下に装入し、約80℃から約170℃の温度で加熱することを含む方法によって調製することができる。場合により、希釈油を、窒素パージ下で同じ反応器に装入することができる。環式カーボネートを、場合により窒素パージ下で反応器に装入する。この混合物を窒素パージ下で約130℃から約200℃の範囲の温度に加熱する。場合により、混合物を約0.5から約2.0時間、減圧状態にし、反応で形成された水を除去する。
【0104】
補助的機能を付与するために、本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物に、前記の分散剤以外の、従来の船舶用ディーゼル潤滑油組成物の添加剤もまた含有させて、これらの添加剤が分散又は溶解した船舶用ディーゼル潤滑油組成物を得ることができる。例えば、船舶用ディーゼル潤滑油組成物は、酸化防止剤、清浄剤(洗浄剤)、抗摩耗剤、防錆剤、曇り除去剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤(antifoaming agents)、補助溶媒、腐食防止剤、染料、極圧剤等及びそれらの混合物とブレンドすることができる。多様な添加剤が既知であり、市販されている。これらの添加剤は、普通のブレンド手順によって、本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物の調製に利用することができる。
【0105】
一実施形態では、本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物は、増粘剤(即ち、粘度指数向上剤)を本質的に含有しない。
【0106】
本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物に、基油の酸化を低減又は防止することができる1種以上の酸化防止剤を含有させることができる。好適な酸化防止剤の非限定的な例には、アミン系酸化防止剤(例えば、アルキルジフェニルアミン、例えばビスノニル化ジフェニルアミン、ビスオクチル化ジフェニルアミン、及びオクチル化/ブチル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル又はアリールアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化p−フェニレンジアミン、テトラメチルジアミノジフェニルアミン等)、フェノール系酸化防止剤(例えば、2−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール等)、リン系酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛、並びにこれらの組合せが含まれる。
【0107】
酸化防止剤の量は、船舶用ディーゼル潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%から約10重量%、約0.05重量%から約5重量%、又は約0.1重量%から約3重量%で変化できる。
【0108】
本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物には、1種以上の清浄剤を含有させることができる。金属含有清浄剤又は灰形成清浄剤は、堆積物(沈殿物)を低減又は除去する清浄剤(洗浄剤)、及び酸中和剤又は防錆剤の両方として機能し、それによって摩耗及び腐食が低減され、エンジン寿命が伸びる。清浄剤は、一般的に、長い疎水性尾部(疎水性テール)を有する極性頭部(極性ヘッド)を含む。極性頭部は、酸性有機化合物の金属塩を含む。塩には、実質的に化学量論的量の金属を含有させることができ、その場合、それらは、通常、正塩又は中性塩として記載される。大量の金属塩基を、過剰の金属化合物(例えば、酸化物又は水酸化物)と酸性ガス(例えば、二酸化炭素)とを反応させることによって組込むことができる。
【0109】
使用できる清浄剤には、特にアルカリ又はアルカリ土類金属、例えばバリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウム等の金属の、油溶性中性及び過塩基性スルホン酸塩(スルホネート)、フェネート、硫化フェネート、チオホスホネート、サリチレート及びナフテネート及び他の油溶性カルボキシレートが含まれる。最も普通に使用される金属は、カルシウム及びマグネシウムであり、これらは共に潤滑剤中で使用される清浄剤中に存在することができ、そして、カルシウム及び/又はマグネシウムとナトリウムとの混合物である。
【0110】
市販の生成物は、一般的に、中性又は過塩基性と称される。過塩基性金属清浄剤は、一般的に、炭化水素、清浄剤酸(洗剤酸)、例えば:スルホン酸、カルボキシレート等、金属酸化物又は水酸化物(例えば酸化カルシウム又は水酸化カルシウム)及び促進剤(プロモーター)、例えばキシレン、メタノール及び水の混合物をカーボネイト化することによって生成される。例えば、カーボネイト化(炭酸化)において、過塩基性スルホン酸カルシウムを調製するために、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムを、気体の二酸化炭素と反応させて、炭酸カルシウム(カルシウムカーボネイト)を形成する。スルホン酸を過剰のCaO又はCa(OH)で中和して、スルホネートを形成する。
【0111】
過塩基性清浄剤は、低過塩基性、例えば100未満のTBNを有する過塩基性塩とすることができる。一実施形態では、低過塩基性塩のTBNは、約5から約50であることができる。別の実施形態では、低過塩基性塩のTBNは、約10から約30であることができる。更に別の実施形態では、低過塩基性塩のTBNは、約15から約20であることができる。
【0112】
過塩基性清浄剤は、中過塩基性、例えば約100から約250のTBNを有する過塩基性塩であることができる。一実施形態では、中過塩基性塩のTBNは、約100から約200であることができる。別の実施形態では、中過塩基性塩のTBNは、約125から約175であることができる。
【0113】
過塩基性清浄剤は、高過塩基性、例えば250を超えるTBNを有する過塩基性塩であることができる。一実施形態では、高過塩基性塩のTBNは約250から約550であることができる。
【0114】
一実施形態では、清浄剤は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であることができ、そして、「カルボキシレート」又は「サリチレート」である。好適なヒドロキシ芳香族化合物には、1から4個、好ましくは1から3個のヒドロキシル基を有する単核モノヒドロキシ及びポリヒドロキシ芳香族炭化水素が含まれる。好適なヒドロキシ芳香族化合物には、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾール等が含まれる。好ましいヒドロキシ芳香族化合物はフェノールである。
【0115】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のアルキル置換部分(部位)は、約10から約80個の炭素原子を有するアルファオレフィンから誘導される。使用されるオレフィンは、直鎖、異性化直鎖、分枝鎖又は部分的に分枝した直鎖であることができる。オレフィンは、直鎖オレフィンの混合物、異性化直鎖オレフィンの混合物、分枝鎖オレフィンの混合物、部分的に分枝した直鎖の混合物又はこれらの任意の混合物であることができる。
【0116】
一実施形態では、使用することができる直鎖オレフィンの混合物は、1分子当たり約12から約30個の炭素原子を有するオレフィンから選択されるノルマルアルファオレフィンの混合物である。一実施形態では、ノルマルアルファオレフィンは、固体触媒又は液体触媒の少なくとも1種を使用して異性化される。
【0117】
別の実施形態では、オレフィンは、約20から約80個の炭素原子を有する分枝鎖オレフィン性プロピレンオリゴマー又はその混合物、即ちプロピレンの重合から誘導される分枝鎖オレフィンである。オレフィンは、他の官能基、例えばヒドロキシ基、カルボン酸基、ヘテロ原子等で置換されていてもよい。一実施形態では、分枝鎖オレフィン性プロピレンオリゴマー又はその混合物は、約20から約60個の炭素原子を有する。一実施形態では、分枝鎖オレフィン性プロピレンオリゴマー又はその混合物は、約20から約40個の炭素原子を有する。
【0118】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸清浄剤のアルカリ土類金属塩のアルキル基等の、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩に含有されるアルキル基の少なくとも約75モル%(例えば、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、又は少なくとも約99モル%)は、C20以上である。別の実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、アルキル基が少なくとも75モル%のC20以上のノルマルα−オレフィンを含有するノルマルアルファオレフィンの残渣であるアルキル置換ヒドロキシ安息香酸から誘導されるアルキル置換ヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である。
【0119】
別の実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のアルキル基等の、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩に含有されるアルキル基の少なくとも約50モル%(例えば、少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、又は少なくとも約99モル%)は、約C14から約C18である。
【0120】
得られるアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、オルト及びパラ異性体の混合物であろう。一実施形態では、生成物は、約1から99%のオルト異性体及び99から1%のパラ異性体を含有するであろう。別の実施形態では、生成物は、約5から70%のオルト異性体及び95から30%のパラ異性体を含有するであろう。
【0121】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、中性又は過塩基性であることができる。一般的に、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のTBNが、塩基供給源(例えば、石灰)及び酸性過塩基性化合物(例えば、二酸化炭素)の添加等のプロセスによって増加したものである。
【0122】
スルホネートは、典型的には、アルキル置換芳香族炭化水素、例えば、石油の分留から又は芳香族炭化水素のアルキル化によって得られるもののスルホン化によって得られるスルホン酸から調製することができる。例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル又はそれらのハロゲン誘導体をアルキル化することによって得られるものが含まれる。アルキル化は、触媒の存在下で、約3個から70個を超える炭素原子を有するアルキル化剤を用いて行うことができる。アルカリールスルホネートには、通常、アルキル置換芳香族部分1つ当たり約9から約80個又はそれ以上の炭素原子、好ましくは約16から約60個の炭素原子が含有される。
【0123】
油溶性スルホネート又はアルカリールスルホン酸は、金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド、カーボネイト、カルボキシレート、スルフィド、ヒドロスルフィド、ナイトレート、ボレート及びエーテルを用いて中和することができる。金属化合物の量は、最終的な生成物の所望のTBNを考慮して選択されるが、典型的には化学量論的に必要な量の約100から約220重量%(好ましくは少なくとも約125重量%)の範囲である。
【0124】
硫化フェネート洗浄剤であるフェノール及び硫化フェノールの金属塩は、適切な金属化合物、例えば酸化物又は水酸化物との反応によって調製され、中性又は過塩基性生成物は、当該技術分野で周知の方法によって得ることができる。硫化フェノールは、フェノールを硫黄又は硫黄含有化合物、例えば硫化水素、一ハロゲン化硫黄又は二ハロゲン化硫黄と反応させることによって調製して、一般的に、2個以上のフェノールが硫黄含有架橋によって架橋された化合物の混合物である生成物を形成することができる。
【0125】
硫化フェネートの一般的な調製に関する追加の詳細は、例えば、米国特許第2,680,096;3,178,368及び3,801,507に見つけることができ、それらの内容は、参照によりここに取り込む。
【0126】
本プロセスで使用される反応物及び試薬をここで詳細に考慮すると、最初に全ての同素体の形態の硫黄を使用することができる。硫黄は、溶融硫黄として、又は固体(例えば、粉末又は粒子)として、又は相溶性炭化水素液体中の固体懸濁液としてのいずれかで使用することができる。
【0127】
例えば酸化カルシウムに対するその取り扱いの利便の理由で、及び、優れた結果をもたらすという理由でも、カルシウム塩基として水酸化カルシウムを使用するのが望ましい。例えばカルシウムアルコキシドなどの他のカルシウム塩基も使用できる。
【0128】
使用することができる適切なアルキルフェノールは、得られる過塩基性硫化カルシウムアルキルフェネート組成物を油溶性にするのに十分な数の炭素原子を含有するアルキル置換基を持つものである。油溶性は、単一の長鎖アルキル置換によって又はアルキル置換基の組合せによって、提供できる。典型的に、本プロセスで使用されるアルキルフェノールは、例えばC20〜C24アルキルフェノールなどの異なるアルキルフェノールの混合物であろう。275以下のTBNを有するフェネート生成物が所望される場合、その商業的入手性及び一般的により低いコストの理由で、100%ポリプロペニル置換フェノールを使用することが経済的に有利である。より高いTBNのフェネート生成物が所望される場合、アルキルフェノールの約25〜約100モルパーセントは、約15個〜約35個の炭素原子の直鎖アルキル置換基を有することができ、約75〜約0モルパーセントでは、アルキル基は、9個〜18個の炭素原子のポリプロペニルである。一形態では、アルキルフェノールの約35〜約100モルパーセントで、アルキル基は、約15個〜約35個の炭素原子の直鎖アルキルであろうし、そして、アルキルフェノールの約65〜0モルパーセントで、アルキル基は、9個〜18個の炭素原子のポリプロペニルであろう。多い量の主に直鎖アルキルフェノールを使用すると、一般的により低い粘度で特徴づけられる高TBN生成物という結果になる。他方では、ポリプロペニルフェノールは、主に直鎖アルキルフェノールよりも一般的に経済的である一方で、カルシウム過塩基性硫化アルキルフェネート組成物の調製において約75モルパーセントよりも多いポリプロペニルフェノールを使用すると、望ましくなく高い粘度の生成物という結果に一般的になる。しかし、約9個〜約18個の炭素原子のポリプロペニルフェノールを約75モルパーセント以下と約15個〜約35個の炭素原子の主に直鎖アルキルフェノールを約25モルパーセント以上との混合物を使用すると、容認できる粘度のより経済的な生成物を可能にする。一形態では、適切なアルキルフェノール系化合物は、蒸留カシューナッツ油又は水素化蒸留カシューナッツ油を含む。蒸留CNSLは、生分解性のメタ−ヒドロカルビル置換フェノールの混合物であり、ここで、ヒドロカルビル基は、カルダノールを含む直鎖及び不飽和である。蒸留CNSLの接触水素化により、主に3−ペンタデシルフェノールリッチなメタ−ヒドロカルビル置換フェノールの混合物を生じる。
【0129】
アルキルフェノールは、パラ−アルキルフェノール、メタ−アルキルフェノール又はオルトアルキルフェノールであることができる。p−アルキルフェノールは、過塩基性生成物が所望される高度に過塩基性のカルシウム硫化アルキルフェネートの調製を促進すると考えられるので、アルキルフェノールは、好ましくは、主に、パラアルキルフェノールであって、アルキルフェノールの約45モルパーセント以下がオルトアルキルフェノールであり;より好ましくは、アルキルフェノールの約35モルパーセント以下がオルトアルキルフェノールである。アルキルヒドロキシトルエン又はキシレン、及び、少なくとも1つの長鎖アルキル置換基に加えて1つ以上のアルキル置換基を有する他のアルキルフェノールも、使用できる。蒸留カシューナッツ油の場合、蒸留CNSLの接触水素化により、メタ−ヒドロカルビル置換フェノールの混合物を生じる。
【0130】
一般に、アルキルフェノールの選択は、船舶用ディーゼルエンジン潤滑油組成物のための所望の特性、特にTBN、及び油溶性に基づくことができる。例えば、実質的に直鎖のアルキル置換基を有するアルキルフェネートの場合、アルキルフェネート組成物の粘度は、フェニル環へのアルキル鎖の結合の位置、例えば、末端結合対中央結合、によって影響され得る。適切なアルキルフェノールの調製及び選択及びこれに関する追加の情報は、例えば、米国特許第5,024,773、5,320,763;5,318,710;及び5,320,762中に見つけることができ、それらの各々は、参照によりここに取り込む。
【0131】
一般的に、清浄剤の量は、船舶用ディーゼル潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%から約50重量%、又は約0.05重量%から約25重量%、又は約0.1重量%から約20重量%、又は約0.01重量%から約15重量%であることができる。
【0132】
本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物には、可動部品間の摩擦を低減することができる1種以上の摩擦調整剤を含有させることができる。好適な摩擦調整剤の非限定的な例には、脂肪族カルボン酸;脂肪族カルボン酸の誘導体(例えば、アルコール、エステル、ホウ酸エステル、アミド、金属塩等);モノ−、ジ−若しくはトリ−アルキル置換リン酸又はホスホン酸;モノ−、ジ−若しくはトリ−アルキル置換リン酸又はホスホン酸の誘導体(例えば、エステル、アミド、金属塩等);モノ−、ジ−若しくはトリ−アルキル置換アミン;モノ−若しくはジ−アルキル置換アミド並びにそれらの組合せが含まれる。幾つかの実施形態では、摩擦調整剤の例には、非限定的に、アルコキシ化脂肪族アミン;ホウ酸化脂肪族エポキシド;脂肪族ホスファイト、脂肪族エポキシド、脂肪族アミン、ホウ酸化アルコキシ化脂肪族アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミド、グリセロールエステル、ホウ酸化グリセロールエステル;及び脂肪族イミダゾリン(これらは、米国特許第6,372,696号に開示されており、その内容を、参照により本明細書に援用する);CからC75、又はCからC24、又はCからC20の脂肪酸エステルと、アンモニア及びアルカノールアミン等並びにこれらの混合物から成る群から選択される窒素含有化合物との反応生成物から得られる摩擦調整剤が含まれる。
【0133】
本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物には、摩擦及び過度の摩耗を低減することができる1種以上の耐摩耗剤を含有させることができる。当業者に既知の耐摩耗剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な耐摩耗剤の非限定的な例には、ジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸の金属(例えば、Pb、Sb、Mo等)塩、ジチオカルバミン酸の金属(例えば、Zn、Pb、Sb、Mo等)塩、脂肪酸の金属(例えば、Zn、Pb、Sb等)塩、ホウ素化合物、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩、ジシクロペンタジエンとチオリン酸との反応生成物及びそれらの組合せが含まれる。
【0134】
特定の実施形態では、耐摩耗剤は、ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩、例えばジアルキルジチオリン酸亜鉛化合物等であるか、又はこれを含む。ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩の金属は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル又は銅であることができる。幾つかの実施形態では、金属は亜鉛である。他の実施形態では、ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩のアルキル基は、約3から約22個の炭素原子、約3から約18個の炭素原子、約3から約12個の炭素原子、又は約3から約8個の炭素原子を有する。更なる実施形態では、アルキル基は直鎖又は分枝鎖である。
【0135】
本明細書に開示される潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛塩を含むジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩の量は、そのリン含量によって測定される。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される潤滑油組成物のリン含量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%から約0.14重量%である。
【0136】
本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物には、油中の泡を壊すことができる1種以上の抑泡剤又は消泡剤を含有させることができる。好適な抑泡剤又は消泡剤の非限定的な例には、シリコーン油又はポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーン、アルコキシ化脂肪酸、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、分枝状ポリビニルエーテル、アルキルアクリレートポリマー、アルキルメタクリレートポリマー、ポリアルコキシアミン及びそれらの組合せが含まれる。
【0137】
本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物には、船舶用ディーゼル潤滑油組成物の流動点を低下させることができる1種以上の流動点降下剤を含有させることができる。当業者に既知の任意の流動点降下剤を、船舶用ディーゼル潤滑油組成物に使用することができる。好適な流動点降下剤の非限定的な例には、ポリメタクリレート、アルキルアクリレートポリマー、アルキルメタクリレートポリマー、ジ(テトラ−パラフィンフェノール)フタレート、テトラパラフィンフェノールの縮合物、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物及びこれらの組合せが含まれる。幾つかの実施形態では、流動点降下剤には、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリアルキルスチレン等が含まれる。
【0138】
別の実施形態では、本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物には、水又は蒸気に曝される潤滑油組成物中で油−水分離を促進することができる1種以上の抗乳化剤を含有させることができる。当業者に既知の任意の抗乳化剤を、船舶用ディーゼル潤滑油組成物に使用することができる。好適な抗乳化剤の非限定的な例には、陰イオン界面活性剤(例えば、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート等)、非イオン性アルコキシ化アルキルフェノール樹脂、アルキレンオキシドのポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のブロックコポリマー)、油溶性酸のエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル及びそれらの組合せが含まれる。
【0139】
本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物には、腐食を低減することができる1種以上の腐食防止剤を含有させることができる。当業者に既知の任意の腐食防止剤を船舶用ディーゼル潤滑油組成物に使用することができる。好適な腐食防止剤の非限定的な例には、ドデシルコハク酸の半エステル又はアミド、リン酸エステル、チオホスフェート、アルキルイミダゾリン、サルコシン及びそれらの組合せが含まれる。
【0140】
本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物には、極圧条件下で摺動金属表面が焼き付くのを防止することができる1種以上の極圧(EP)剤を含有させることができる。当業者に既知の任意の極圧剤を、船舶用ディーゼル潤滑油組成物に使用することができる。一般的に、極圧剤は、金属と化学的に結合して、高負荷下で対向する金属表面の凹凸が溶接するのを防止する表面フィルムを形成することができる化合物である。好適な極圧剤の非限定的な例には、硫化した動物性又は植物性の油脂、硫化した動物性又は植物性の脂肪酸エステル、リンの3価又は5価の酸の完全に又は部分的にエステル化したエステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリスルフィド、硫化ディールス−アルダー付加物、硫化ジシクロペンタジエン、脂肪酸エステルとモノ不飽和オレフィンの硫化又は共硫化混合物、脂肪酸、脂肪酸エステル及びアルファオレフィンの共硫化ブレンド、官能基置換ジヒドロカルビルポリスルフィド、チアアルデヒド、チアケトン、エピチオ化合物、硫黄含有アセタール誘導体、テルペン及び非環式オレフィンの共硫化ブレンド、及びポリスルフィドオレフィン生成物、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩及びそれらの組合せが含まれる。
【0141】
本発明の船舶用ディーゼル潤滑油組成物には、鉄金属表面の腐食を抑制することができる1種以上の防錆剤(さび止め剤)を含有させことができる。好適な防錆剤の非限定的な例には、非イオン性ポリオキシアルキレン剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、及びポリエチレングリコールモノオレエート;ステアリン酸及び他の脂肪酸;ジカルボン酸;金属セッケン;脂肪酸アミン塩;重質スルホン酸の金属塩;多価アルコールの部分カルボン酸エステル;リン酸エステル;(短鎖)アルケニルコハク酸;それらの部分エステル及びそれらの窒素含有誘導体;合成アルカリールスルホネート、例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩;等並びにそれらの混合物が含まれる。
【0142】
以下の非限定的な例は、本発明の例示である。
【0143】
Komatsuホットチューブ(KHT)試験
Komatsuホットチューブ試験は、潤滑油の熱及び酸化安定性及び高温洗浄力の程度を測定する潤滑工業ベンチ試験である。試験の間、ある温度にセットされたオーブンの内部に置かれたガラス管を通って上方に、指定の量の試験オイルをポンプ輸送する。オイルがガラス管に入る前に、オイル流れ中に空気が導入され、そして、オイルと一緒に上へ流れる。船舶用トランクピストンエンジン潤滑油の評価は、300〜320℃の間の温度で実施された。冷却及び洗浄後、ガラス試験管上に堆積(沈着)したラッカーの量を、1.0(非常にブラック)〜10.0(完全にクリーン)の評価スケール範囲と比較することによって、試験結果を決定する。結果は、0.5の倍数で報告する。ガラス管が堆積物(沈殿物)で完全にブロックされる場合、試験結果は、「ブロック」(閉そく)と記録する。閉そくは、1.0という結果よりも小さい堆積であり、そこでは、ラッカーが非常に厚く暗いが、しかし、使用可能なオイルとしては完全に不満足な速度だが依然として流体が流れるのが可能である。
【0144】
DSC酸化試験
ASTM D−6186に従って、試験オイルの薄膜酸化安定性を評価するために、DSC試験が使用される。サンプルカップ中の試験オイルからの及び試験オイルへの熱流が、試験の間、参照カップと比較される。酸化開始温度は、試験オイルの酸化が開始する温度である。酸化誘導時間は、試験オイルの酸化が開始する時間である。より高い酸化誘導時間は、ベターな性能を意味する。酸化反応は、熱流によってはっきりと示されている発熱反応という結果になる。酸化誘導時間は、試験オイルの薄膜酸化安定性を評価するために計算される。
【0145】
ブラックスラッジ沈殿物(BSD)試験
この試験は、残留燃料オイル中の不安定な−未燃アスファルテンに対処する船舶用潤滑油の能力を評価するために使用される。試験は、重質燃料オイル及び潤滑剤の混合物に酸化温熱ひずみを適用することによって、試験ストリップ上に沈殿物を引き起こす潤滑油の傾向を測定する。船舶用潤滑剤オイル組成物のサンプルは、特定の量の船舶用残留燃料と混合して、試験混合物を形成した。試験混合物は、一定時間(12時間)試験温度(200℃)にコントロールされている金属試験ストリップ上に、薄膜として試験中にポンプ輸送される。試験オイル−燃料混合物は、サンプル容器中に再循環される。試験後、試験ストリップは、冷却されてその後、洗浄されてそして乾燥される。試験プレートは、その後、重さを計る。この方法において、試験プレート上に残っている沈殿物の重量が測定されて、そして、試験プレートの重量の変化として記録された。
【0146】
例1〜4及び比較例A
例1〜4及び比較例Aが調製されて、そして、試験オイルの薄膜酸化安定性を評価するために使用される示差走査熱量計(DSC)試験、及び、高温洗浄力の測定であるKomatsuホットチューブ(KHT)試験を使用して、評価された。
【0147】
比較例A:5BN、SAE30粘度等級の完全に配合された船舶用シリンダー潤滑油組成物が調製され、大多数の量のI種基油(100℃で、それぞれ約5.14及び11.8cStの動粘度を有するXOM Core150N及びXOM Core600Nの混合物)、高過塩基性カルシウムスルホネート洗浄剤、低過塩基性カルシウムスルホネート洗浄剤、中過塩基性カルシウム硫化フェネート洗浄剤、アミン系酸化防止剤、抑泡剤、及び、2300MW PIBから誘導された約2.5重量%エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド分散剤、を含んだ。
【0148】
例1:例1が約1.0重量%のマンニッヒ反応生成物(約45重量%希釈油を有する、70重量%より多いメチルビニリデン異性体を有する数平均分子量1,000のポリイソブチレンで調製されたポリイソブチル置換フェノール、ナトリウムグリシン、及びホルムアルデヒドの反応生成物)を更に含有することを除いて、比較例Aのシリンダー潤滑剤が再現された。
【0149】
例2:例2が約5.0重量%のマンニッヒ反応生成物(約45重量%希釈油を有する、70重量%より多いメチルビニリデン異性体を有する数平均分子量1,000のポリイソブチレンで調製されたポリイソブチル置換フェノール、ナトリウムグリシン、及びホルムアルデヒドの反応生成物)を更に含有することを除いて、比較例Aのシリンダー潤滑剤が再現された。
【0150】
例3:15BN、SAE50粘度等級の完全に配合された船舶用シリンダー潤滑油組成物が調製され、大多数の量のI種基油、XOM Core150N(1.71質量%)、XOM Core2500BS(24.64質量%)及びXOM Core600N(41.21質量%)の混合物、高過塩基性カルシウムスルホネート洗浄剤、低過塩基性カルシウムスルホネート洗浄剤、中過塩基性カルシウム硫化フェネート洗浄剤、アミン系酸化防止剤、抑泡剤、2300MW PIBから誘導された約0.19重量%エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド分散剤、及び約5.0重量%のマンニッヒ反応生成物(約45重量%希釈油を有する、70重量%より多いメチルビニリデン異性体を有する数平均分子量1,000のポリイソブチレンで調製されたポリイソブチル置換フェノール、ナトリウムグリシン、及びホルムアルデヒドの反応生成物)を含んだ。
【0151】
例4:25BN、SAE50粘度等級の完全に配合された船舶用シリンダー潤滑油組成物が調製され、大多数の量のI種基油、XOM Core150N(1.83質量%)、XOM Core2500BS(23.15質量%)及びXOM Core600N(40.35質量%)の混合物、高過塩基性カルシウムスルホネート洗浄剤、低過塩基性カルシウムスルホネート洗浄剤、中過塩基性カルシウム硫化フェネート洗浄剤、アミン系酸化防止剤、抑泡剤、2300MW PIBから誘導された約0.19重量%エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド分散剤、及び約5.0重量%のマンニッヒ反応生成物(約45重量%希釈油を有する、70重量%より多いメチルビニリデン異性体を有する数平均分子量1,000のポリイソブチレンで調製されたポリイソブチル置換フェノール、ナトリウムグリシン、及びホルムアルデヒドの反応生成物)を含んだ。
【0152】
本発明の例1〜4及び比較例AのMCL組成物のKHT試験及びDSC酸化試験の結果を、下記の表1に述べる。
【0153】
【表1】
【0154】
表1に例証される結果から明らかなように、70重量%より多いメチルビニリデン異性体を有する数平均分子量1,000のポリイソブチレンで調製されたポリイソブチル置換フェノール、ナトリウムグリシン、及びホルムアルデヒドのマンニッヒ反応生成物を含有する船舶用シリンダー潤滑油組成物は、驚くべきことに、マンニッヒ反応生成物を含有しない比較例と比較して、全般的な高い酸化誘導時間によって明らかなように、試験オイルのより良好な薄膜酸化安定性を示した。更に、70重量%より多いメチルビニリデン異性体を有する数平均分子量1,000のポリイソブチレンで調製されたポリイソブチル置換フェノール、ナトリウムグリシン、及びホルムアルデヒドのマンニッヒ反応生成物を含有する船舶用シリンダー潤滑油組成物は、驚くべきことに、比較例と比較して、それらの全般的な高い評価によって明らかなように、高温でのより良好な洗浄力及び酸化安定性特性を示した。
【0155】
例5〜6及び比較例B
例5〜6及び比較例Bが調製されて、そして、試験オイルの薄膜酸化安定性を評価するために使用される示差走査熱量計(DSC)試験、及び、高温洗浄力の測定であるKomatsuホットチューブ(KHT)試験を使用して、評価された。
【0156】
比較例B:30BN、SAE50粘度等級の完全に配合された船舶用シリンダー潤滑油組成物が調製され、大多数の量のI種基油(100℃で、それぞれ約5.14及び31.3cStの動粘度を有するXOM Core150N及びESSO Core2500BSブライトストックの混合物)、高過塩基性カルシウムスルホネート洗浄剤、中過塩基性カルシウム硫化フェネート洗浄剤、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のカルシウム塩である中過塩基性カルボキシレート洗浄剤、抑泡剤、及び、2300MW PIBから誘導された約2.5重量%エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド分散剤、を含んだ。
【0157】
例5:例5が約1.0重量%のマンニッヒ反応生成物(約45重量%希釈油を有する、70重量%より多いメチルビニリデン異性体を有する数平均分子量1,000のポリイソブチレンで調製されたポリイソブチル置換フェノール、ナトリウムグリシン、及びホルムアルデヒドの反応生成物)を更に含有することを除いて、比較例Bのシリンダー潤滑剤が再現された。
【0158】
例6:例6が約5.0重量%のマンニッヒ反応生成物(約45重量%希釈油を有する、70重量%より多いメチルビニリデン異性体を有する数平均分子量1,000のポリイソブチレンで調製されたポリイソブチル置換フェノール、ナトリウムグリシン、及びホルムアルデヒドの反応生成物)を更に含有することを除いて、比較例Bのシリンダー潤滑剤が再現された。
【0159】
本発明の例5及び6及び比較例BのMCL組成物のKHT試験及びDSC酸化試験の結果を、下記の表2に述べる。
【0160】
【表2】
【0161】
表2に例証される結果から明らかなように、70重量%より多いメチルビニリデン異性体を有する数平均分子量1,000のポリイソブチレンで調製されたポリイソブチル置換フェノール、ナトリウムグリシン、及びホルムアルデヒドのマンニッヒ反応生成物を含有する船舶用シリンダー潤滑油組成物は、驚くべきことに、マンニッヒ反応生成物を含有しない比較例と比較して、全般的な高い酸化誘導時間によって明らかなように、試験オイルのより良好な薄膜酸化安定性を示した。更に、70重量%より多いメチルビニリデン異性体を有する数平均分子量1,000のポリイソブチレンで調製されたポリイソブチル置換フェノール、ナトリウムグリシン、及びホルムアルデヒドのマンニッヒ反応生成物を含有する船舶用シリンダー潤滑油組成物は、驚くべきことに、325℃の温度で比較例と比較して、全般的な高い評価によって明らかなように、高温でのより良好な洗浄力及び酸化安定性特性を示した。これは、より高温での改善された洗浄力性能の試験オイルを例証する。
【0162】
例7:30BNの完全に配合されたトランクピストン潤滑油組成物が調製され、大多数の量のI種基油、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のカルシウム塩である高過塩基性カルシウムカルボキシレート洗浄剤、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のカルシウム塩である中過塩基性カルシウムカルボキシレート洗浄剤、二級ジチオリン酸亜鉛、アミン系酸化防止剤、抑泡剤、及び、約5.0重量%のマンニッヒ反応生成物(約45重量%希釈油を有する、70重量%より多いメチルビニリデン異性体を有する数平均分子量1,000のポリイソブチレンで調製されたポリイソブチル置換フェノール、ナトリウムグリシン、及びホルムアルデヒドの反応生成物)を含んだ。
【0163】
例8:15BNの完全に配合されたトランクピストン潤滑油組成物が調製され、大多数の量のI種基油、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のカルシウム塩である高過塩基性カルシウムカルボキシレート洗浄剤、中過塩基性カルシウムカルボキシレート洗浄剤、二級ジチオリン酸亜鉛、アミン系酸化防止剤、抑泡剤、及び、約5.0重量%のマンニッヒ反応生成物(約45重量%希釈油を有する、70重量%より多いメチルビニリデン異性体を有する数平均分子量1,000のポリイソブチレンで調製されたポリイソブチル置換フェノール、ナトリウムグリシン、及びホルムアルデヒドの反応生成物)を含んだ。
【0164】
例7〜8
例7及び8が調製されて、そして、オイルの洗浄力を評価するために使用されるブラックスラッジ沈殿物(BSD)試験、及び、高温洗浄力の測定であるKomatsuホットチューブ(KHT)試験を使用して、評価された。結果を、下記の表3に述べる。
【0165】
【表3】
【0166】
表3に例証される結果から明らかなように、70重量%より多いメチルビニリデン異性体を有する数平均分子量1,000のポリイソブチレンで調製されたポリイソブチル置換フェノール、ナトリウムグリシン、及びホルムアルデヒドのマンニッヒ反応生成物を含有する船舶用トランクピストン潤滑油組成物は、KHT試験及びBSD試験の両方で例証されるように、良好な洗浄力性能を示した。
【0167】
疑義を避けるため、本発明は、以下の番号のパラグラフに記載された主題に関する。
[パラグラフ1]
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用ディーゼル潤滑油組成物であって:
当該潤滑油組成物が5〜200mg KOH/gのBNを有し、更に、当該船舶用ディーゼル潤滑油組成物が、SAE20、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用ディーゼル潤滑油組成物。
[パラグラフ2]
BNが、5〜150mg KOH/g、5〜100mg KOH/g、5〜75mg KOH/g、5〜70mg KOH/g、5〜60mg KOH/g、5〜50mg KOH/g、5〜40mg KOH/g、5〜35mg KOH/g、5〜30mg KOH/g、5〜25mg KOH/g、5〜20mg KOH/g、又は5〜15mg KOH/gである、[パラグラフ1]に記載の船舶用ディーゼル潤滑油組成物。
[パラグラフ3]
(b)が、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.5重量%〜約10重量%活性、約1重量%〜約10重量%活性、約2重量%〜約8重量%活性、約2重量%〜約6重量%活性、又は約2.5重量%〜約5.5重量%活性の、少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物を含む、[パラグラフ1]に記載の船舶用ディーゼル潤滑油組成物。
[パラグラフ4]
スルホネート、フェネート、ナフテネート、カルボキシレート、サリチレート、又はいかなるそれらの組合せから選択される洗浄剤を更に含む、[パラグラフ1]に記載の船舶用ディーゼル潤滑油組成物。
[パラグラフ5]
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物であって:
当該船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物が10〜80mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物が、SAE30又はSAE40モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物。
[パラグラフ6]
BNが、10〜75mg KOH/g、10〜70mg KOH/g、10〜65mg KOH/g、10〜60mg KOH/g、10〜55mg KOH/g、10〜50mg KOH/g、10〜45mg KOH/g、10〜40mg KOH/g、10〜35mg KOH/g、10〜30mg KOH/g、10〜25mg KOH/g、10〜20mg KOH/g、又は10〜15mg KOH/gである、[パラグラフ5]に記載の船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物。
[パラグラフ7]
(b)が、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.5重量%〜約10重量%活性、約1重量%〜約10重量%活性、約2重量%〜約8重量%活性、約2重量%〜約6重量%活性、又は約2.5重量%〜約5.5重量%活性の、少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物を含む、[パラグラフ5]に記載の船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物。
[パラグラフ8]
スルホネート、フェネート、ナフテネート、カルボキシレート、サリチレート、又はいかなるそれらの組合せから選択される洗浄剤を更に含む、[パラグラフ5]に記載の船舶用トランクピストンエンジンオイル潤滑油組成物。
[パラグラフ9]
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用システム潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用システム潤滑油組成物であって:
当該船舶用システム油潤滑油組成物が5〜40mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用システム油潤滑油組成物が、SAE20、SAE30又はSAE40モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用システム潤滑油組成物。
[パラグラフ10]
(b)が、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.5重量%〜約10重量%活性、約1重量%〜約10重量%活性、約2重量%〜約8重量%活性、約2重量%〜約6重量%活性、又は約2.5重量%〜約5.5重量%活性の、少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物を含む、[パラグラフ9]に記載の船舶用システム潤滑油組成物。
[パラグラフ11]
スルホネート、フェネート、ナフテネート、カルボキシレート、サリチレート、又はいかなるそれらの組合せから選択される洗浄剤を更に含む、[パラグラフ9]に記載の船舶用システム潤滑油組成物。
[パラグラフ12]
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物であって:
当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が5〜200mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[パラグラフ13]
BNが、5〜150mg KOH/g、5〜100mg KOH/g、5〜75mg KOH/g、5〜70mg KOH/g、5〜60mg KOH/g、5〜50mg KOH/g、5〜40mg KOH/g、5〜35mg KOH/g、5〜30mg KOH/g、5〜25mg KOH/g、5〜20mg KOH/g、又は5〜15mg KOH/gである、[パラグラフ12]に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[パラグラフ14]
スルホネート、フェネート、ナフテネート、カルボキシレート、サリチレート、又はいかなるそれらの組合せから選択される洗浄剤を更に含む、[パラグラフ]に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[パラグラフ15]
(b)が、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.5重量%〜約10重量%活性、約1重量%〜約10重量%活性、約2重量%〜約8重量%活性、約2重量%〜約6重量%活性、又は約2.5重量%〜約5.5重量%活性の、少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物を含む、[パラグラフ12]に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[パラグラフ16]
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量%活性の、ポリイソブチル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミノ酸又はそのエステル誘導体、及びアルカリ金属塩基の縮合によって調製される少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物であって、ポリイソブチル基が、少なくとも約70重量%のメチルビニリデン異性体を含有するポリイソブテンから誘導され、そして、ポリイソブチル基が、約400〜約2500の数平均分子量を有するもの;
を含む船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物であって:
当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が5〜40mg KOH/gのTBNを有し、更に、当該船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が、SAE30、SAE40、SAE50又はSAE60モノグレード潤滑油用の2015年1月改訂のSAE J300要求事項の規格(the specifications for SAE J300 revised January 2015 requirements)を満たすモノグレード潤滑油組成物である、前記の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[パラグラフ17]
(b)が、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.5重量%〜約10重量%活性、約1重量%〜約10重量%活性、約2重量%〜約8重量%活性、約2重量%〜約6重量%活性、又は約2.5重量%〜約5.5重量%活性の、少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物を含む、[パラグラフ16]に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[パラグラフ18]
スルホネート、フェネート、ナフテネート、カルボキシレート、サリチレート、又はいかなるそれらの組合せから選択される洗浄剤を更に含む、[パラグラフ16]に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。