(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965353
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】成形部品の独立したハンドリングのためのアクセサリを得るためのクラスタモデル及びシェル並びにこれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
B22C 7/02 20060101AFI20211028BHJP
B22C 9/04 20060101ALI20211028BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20211028BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
B22C7/02 102
B22C9/04 C
B22C9/04 D
F01D25/00 X
F02C7/00 D
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-534754(P2019-534754)
(86)(22)【出願日】2017年12月22日
(65)【公表番号】特表2020-504012(P2020-504012A)
(43)【公表日】2020年2月6日
(86)【国際出願番号】FR2017053815
(87)【国際公開番号】WO2018122516
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2020年12月2日
(31)【優先権主張番号】1663392
(32)【優先日】2016年12月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】306047664
【氏名又は名称】サフラン
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニアンヌ ガディア タア
(72)【発明者】
【氏名】ボーリ ラムジ
(72)【発明者】
【氏名】ギャルバン ロイック
(72)【発明者】
【氏名】ブクルマ サイド
【審査官】
坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−504784(JP,A)
【文献】
特開2007−203371(JP,A)
【文献】
特開平01−157741(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/005674(WO,A1)
【文献】
特開2004−160551(JP,A)
【文献】
特開2011−045903(JP,A)
【文献】
特開平03−226329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 5/00− 9/30
F02C 7/00− 7/36
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のターボ機械要素をロストワックス鋳造により製造するためのシェル(1)が周囲に形成されるクラスタモデルであって、
前記モデルは、
長手方向軸(X)を有し、
前記シェル(1)内への溶融金属の注入に適した鋳込みカップ(2)のレプリカと、
前記溶融金属を受け入れるための前記鋳込みカップ(2)に流体接続されるのに適すると共に、前記長手方向軸(X)に沿って延在する中央スプルー(3)のレプリカと、
各々が前記ターボ機械要素のうちの1つを得るためのシェル要素(4)の複数のレプリカであって、第1の底端部(4a)と、第2の上端部(4b)とを含むシェル要素(4)の複数のレプリカと、
前記シェル要素(4)のための底部供給導管(5)の複数のレプリカであって、前記シェル要素(4)の下注ぎ鋳造を可能にするように、前記中央スプルー(3)と、前記シェル要素(4)の前記第1の底端部(4a)とに流体接続されるのに適した底部供給導管(5)の複数のレプリカと、
前記シェル要素(4)への流体接続が存在しないように、前記複数のシェル要素(4)及びそれらの金属供給回路から独立しているハンドリングアクセサリシェル(6)のレプリカであって、当該ハンドリングアクセサリシェル(6)の上注ぎ鋳造を可能にするように前記中央スプルー(3)に流体接続されるのに適したハンドリングアクセサリシェル(6)のレプリカと、を備える、クラスタモデル。
【請求項2】
複数のターボ機械要素をロストワックス鋳造により製造するためのシェル(1)であって、前記クラスタシェルは、長手方向軸(X)を有し、
前記シェル(1)内への溶融金属の注入に適した鋳込みカップ(2)と、
前記溶融金属を受けるために前記鋳込みカップ(2)に流体接続されている、前記シェル(1)の前記長手方向軸(X)に沿って延在する中央スプルー(3)と、
各々が前記ターボ機械要素のうちの1つを得るための複数のシェル要素(4)であって、第1の底端部(4a)と、第2の上端部(4b)とを含む複数のシェル要素(4)と、
前記シェル要素(4)の下注ぎ鋳造を可能にするように、前記中央スプルー(3)と、前記シェル要素(4)の第1の底端部(4a)とに流体接続された、前記シェル要素(4)のための複数の底部供給導管(5)と、
前記シェル要素(4)への流体接続が存在しないように、前記複数のシェル要素(4)及びそれらの金属供給回路から独立しているハンドリングアクセサリシェル(6)であって、当該ハンドリングアクセサリシェル(6)の上注ぎ込み鋳造を可能にするように前記中央スプルー(3)に流体接続されたハンドリングアクセサリシェル(6)と、を備える、シェル(1)。
【請求項3】
前記ハンドリングアクセサリシェル(6)は、前記長手方向軸(X)を中心とするハンドリングリングシェル(9)を前記中央スプルー(3)に流体接続する半径方向アーム(8)を含む、請求項2に記載のシェル。
【請求項4】
前記ハンドリングアクセサリシェル(6)は、前記シェル(1)の長手方向軸(X)に一致する中央軸を有する中央要素(7)を含み、
当該中央要素(7)は、前記中央スプルー(3)又は前記鋳込みカップ(3)に取り付けられ、
前記半径方向アーム(8)は、前記ハンドリングリングシェル(9)を前記中央要素(7)に流体接続している、請求項3に記載のシェル。
【請求項5】
前記シェル要素(4)は、前記長手方向軸(X)の周りに互いに周方向に離間されて配置されると共に、前記長手方向軸(X)を中心とした内部空間を画成し、
当該内部空間に前記中央スプルー(3)が配置されている、
請求項2から4のうちいずれか一項に記載のシェル。
【請求項6】
各シェル要素(4)は、その前記第2の上端部(4b)の高さにおいて、前記鋳込みカップ(2)に接続された単一のワックス排出導管(10)に流体接続されている、請求項2から5のうちいずれか一項に記載のシェル。
【請求項7】
各シェル要素(4)は、当該シェル要素の前記第2の上端部(4b)の高さにおいて、単一のワックス排出導管(10)に流体接続され、
前記シェル(1)は、複数のワックス排出導管(10)から成る少なくとも1つの第1の組立体(12a)及び少なくとも1つの第2の組立体(12b)を含み、
前記複数のワックス排出導管(10)は、それぞれ少なくとも1つの第1の横方向導管(14a)及び1つの第2の横方向導管(14b)により互いに接続され、
前記少なくとも1つの第1横方向導管(14a)は、前記鋳込みカップ(2)と前記少なくとも1つの第1横方向導管(14a)との間に延在する少なくとも1つの第1の主要ワックス排出導管(13a)を介して、前記鋳込みカップ(2)に流体接続され、
前記少なくとも1つの第2横方向導管(14b)は、前記鋳込みカップ(2)と前記少なくとも1つの第2横方向導管(14b)との間に延在する少なくとも1つの第2の主要ワックス排出導管(13b)を介して、前記鋳込みカップ(2)に流体接続される、請求項2から5のうちいずれか一項に記載のシェル。
【請求項8】
前記シェルターボ機械要素(4)は、各々が単一の可動ブレードを得るように設計されたシェルのブレード要素(4)である、請求項2から7のうちいずれか一項に記載のシェル。
【請求項9】
複数のターボ機械要素をロストワックス鋳造により製造するための方法であって、
前記方法は、請求項2から8のうちいずれか一項に記載のシェル(1)を用いることで、及び/又は、請求項1に記載のクラスタモデルを用いることで実施され、
前記方法は、少なくとも前記ターボ機械要素を形成するために前記シェル(1)内に金属を鋳込むステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要素のクラスタ、特にはターボ機械のブレード要素のクラスタをロストワックス鋳造法により作製する分野に関する。各要素は、優先的には、個々のブレード、例えば、タービン又はコンプレッサの可動インペラブレードである。
【0002】
本発明は、任意のタイプの地上ターボ機械又は航空ターボ機械、特には航空機ターボ機械、例えば、ターボジェット及びターボプロップに関する。
【0003】
より詳細には、本発明は、クラスタモデルの設計、及び、部分的にワックスからつくられる前記モデルの周囲に形成されるためのシェルの設計に関する。このシェルは、その内部に、ターボ機械要素を得るために金属が鋳込まれることが意図されている。
【0004】
従って、本発明は、クラスタモデル、及び、前記クラスタの、形成されるターボ機械要素とは独立の少なくとも1つのハンドリングアクセサリを得るためのシェルを提供し、また、複数のターボ機械要素のロストワックス鋳造による製造のための関連する方法を提供する。
【背景技術】
【0005】
航空機ターボ機械の複数のブレード要素、例えば可動ブレードを同時に製造するためのロストワックス鋳造技術が、先行技術において公知である。このような技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0006】
念のために述べると、ロストワックス精密鋳造は、製造されるべきブレード要素のモデルの各々を、ワックスを用いて、ワックスをツール内に注入することにより作製することを含む。前記モデルをワックスディスペンサに組み付けることがクラスタモデルの作成を可能にする。クラスタモデルは、その後、クラスタモデルの周囲にほぼ均一の厚さのセラミックシェルが形成されるように、様々な物質内に浸漬される。クラスタモデルは、「レプリカ」(“replica”)、「クラスタアセンブリ」(“cluster assembly”)又は「ワックスツリー」(“wax tree”)としても一般的に知られているが、その構成要素は、必ずしも全てワックス又は別の犠牲材料から成るとは限らない。
【0007】
この方法の次の工程はワックスを溶融することである。溶融されたワックスは、その正確な鋳型をセラミックシェル中に残し、この鋳型内に溶融金属が、金属ディスペンサに組み付けられた鋳込みカップを介して注入される。金属を冷却した後、シェルは破壊され、金属部品が分離されて仕上げられる。
【0008】
前記技術は、寸法精度の利点をもたらし、幾つかの機械加工作業を省くことも可能にする。さらに、この技術は、非常に良好な表面仕上げを提供する。
【0009】
ロストワックス鋳造の分野において、溶融金属の上注ぎ鋳造又は重力の原理が公知であり、これは、ターボ機械部品を形成するために金属をシェルの鋳型内に上方から鋳込むことから成る。前記原理によれば、溶融金属がカップに注ぎ込まれ、次いで、溶融金属全体が、ターボ機械部品を形成するための複数の鋳型に供給するための環状のシステムに到達する。この様子は、例えば特許文献1に記載されている。
【0010】
有利には、このような供給システムは、また、クラスタを製造方法の種々の工程にてハンドリングする(取り扱う)ためのリングとしても用いられ得る。前記工程は、具体的には、炉から出された時、シェイクアウト中、すなわちシェルの破壊中であり、或いは、金属ターボ機械部品を得るためのカッティング中でもある。
【0011】
さらに、ロストワックス鋳造の分野において、溶融金属の下注ぎ鋳造の原理も知られている。これは、上述の上注ぎ鋳造とは反対に、ターボ機械部品を形成するためにシェルの鋳型に金属を底部(下側)から鋳込むことから成る。より多くの場合、溶融金属がカップに注ぎ込まれ、次いで、当該カップに接続された特定の導管が、金属を鋳型の底部から注入することを可能にしている。
【0012】
下注ぎ鋳造に関しては、鋳型に入る前に蓄えられた運動エネルギーがより大きく、従って、速度がより速くなる。従って、金属供給手段はヘッドのロスを助長し、また、速度を低減するために、例えばエルボーを有する。
【0013】
さらに、原則として、下注ぎ鋳造の原理が用いられるクラスタには、クラスタを取り扱うためのリングを形成する、上注ぎ鋳造の原理に関して上述したような供給システムが設けられる。
【0014】
前記ハンドリングリングは、一般的に、形成されるべき部品に直接接続される。従って、リングの質量が部品の質量と同等である場合、凝固中及び/又は冷却中にリングが部品と機械的に相互作用して、コアのずれ又はクラックタイプの欠陥を生じさせることがあり、また、力が十分であるならば、部品内に発生する内部応力により単結晶凝固が生じ、再結晶粒の発生を伴うという高いリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2985924号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、現在のロストワックス鋳造技術の、特には、ハンドリングアクセサリを備えたクラスタモデルを用いた下注ぎ鋳造の原理に関する最適化が、上述の欠陥の出現を回避するために必要とされている。上述の欠陥は、典型的に、形成されるべき部品と、クラスタの、上注ぎ鋳造システムにより形成されるハンドリングアクセサリ(例えば、ハンドリングリング)との有害な相互作用により発生する。
【0017】
具体的には、下注ぎ鋳造の利点を、ターボ機械部品の冶金学的健全性を低下させずに得ること、及び、ハンドリングアクセサリ(例えば、クラスタを取り扱うためのリング)の鋳造を、これもまたターボ機械部品の冶金学的健全性を低下させずに提供することの両方を可能にする必要性がある。
【0018】
本発明の目的は、上述の必要性及び先行技術の実施形態に関連する不利益を、少なくとも部分的に改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従って、本発明の態様の1つによれば、本発明の主題は、
複数の要素、特にはターボ機械のブレード要素をロストワックス鋳造により製造するためのシェルがその周囲に形成されることが意図されたクラスタモデルであり、前記モデルは長手方向軸を有し、
前記シェル内への溶融金属の注入に適した鋳込みカップのレプリカ(例えば、ワックス製)と、
前記溶融金属を受け入れるための前記鋳込みカップに流体接続されるのに適した、前記長手方向軸に沿って延在する中央スプルー(又は支持体)のレプリカ(例えば金属製)と、
シェル要素、特にはブレード要素の複数のレプリカ(例えば、ワックス製)であって、各々が、前記ターボ機械要素のうちの1つを得るためのものであり、各シェル要素が、第1の底端部及び第2の上端部を含む、シェル要素の複数のレプリカと、
前記シェル要素のための底部供給導管の複数のレプリカ(例えば、ワックス製)であって、前記シェル要素の下注ぎ鋳造を可能にするように、前記中央スプルーと、前記シェル要素の前記第2の底端部とに流体接続されるのに適している、底部供給導管の複数のレプリカと、
前記シェル要素との流体接続が存在しないように、前記複数のシェル要素及びそれらの金属供給回路から独立しているハンドリングアクセサリシェルのレプリカ(例えば、ワックス製)であって、当該ハンドリングアクセサリシェルが、当該ハンドリングアクセサリシェルの上注ぎ鋳造が可能にされるように前記中央スプルーに流体接続されるのに適しているハンドリングアクセサリシェルのレプリカと、
備えている。
【0020】
また、本発明の態様の1つによれば、本発明の主題は、複数の要素(特にはターボ機械のブレード要素)をロストワックス鋳造により製造するためのシェルであり、クラスタの形態の前記シェルが長手方向軸を有し、
前記シェルは、
前記シェル内への溶融金属の注入に適した鋳込みカップと、
前記溶融金属を受けるために前記鋳込みカップに流体接続されている、前記シェルの前記長手方向軸に沿って延在する中央スプルーと、
複数のシェル要素、特にはブレード要素であって、各々が、前記ターボ機械要素のうちの1つを得るためのものであり、各シェル要素が、第1の底端部及び第2の上端部を含む複数のシェル要素と、
前記シェル要素の下注ぎ鋳造を可能にするように、前記中央スプルーと、前記シェル要素の第2の底端部部分とに流体接続された、前記シェル要素のための複数の底部供給導管と、
前記シェル要素への流体接続が存在しないように前記複数のシェル要素及びそれらの金属供給回路から独立しているハンドリングアクセサリシェルであって、当該ハンドリングアクセサリシェルの上注ぎ込み鋳造が可能にされるように前記中央スプルーに流体接続されているハンドリングアクセサリシェルと、
を備えている。
【0021】
有利には、前記ハンドリングアクセサリ(特には、ハンドリングリングの形態)は、本発明において、クラスタをハンドリングする(具体的には、炉から出されたとき、シェイクアウト中、及びカッティング中に取り扱う)という単一の目的を有するのであり、溶融金属の、上述の上注ぎ鋳造原理に従うような供給はもはや目的としていない。優先的に、前記ハンドリングアクセサリは、ハンドリング中の自重による降伏を回避するように、そして主に、冷却中の破砕を回避するように、十分な機械的特性を有する。
【0022】
本発明による前記クラスタモデル及び前記シェルは、以下の特徴のうちの1以上を、単独で、又は任意の可能な技術的組合せに従って、さらに含み得る。
【0023】
前記ハンドリングアクセサリシェルは、前記長手方向軸を中心とするハンドリングリングシェルを前記中央スプルーに流体接続する半径方向アームを含み得る。
【0024】
さらに、前記ハンドリングアクセサリシェルは、前記シェルの前記長手方向軸に一致する中央軸を有する中央要素を含み、当該中央要素は前記中央スプルー又は前記鋳込みカップに取り付けられており、前記半径方向アームは、前記ハンドリングリングシェルを前記中央要素に流体接続している。
【0025】
さらに、前記シェル要素は、有利には、前記長手方向軸の周りに、互いに周方向に離間されて配置され、且つ、前記長手方向軸を中心とした内部空間を画成し、当該内部空間に前記中央スプルーが配置されている。
【0026】
第1の代替的な実施形態によれば、各シェル要素は、その前記第2の上端部の高さにおいて、前記鋳込みカップに接続された単一のワックス排出導管に流体接続され得る。
【0027】
第2の代替的な実施形態によれば、各シェル要素は、その前記第2の上端部の高さにおいて、単一のワックス排出導管に流体接続され得る。前記シェルは、複数のワックス排出導管から成る少なくとも1つの第1の組立体及び1つの第2の組立体を含み、前記複数のワックス排出導管は、それぞれ、少なくとも1つの第1の横方向導管及び1つの第2の横方向導管により互いに接続されており、前記少なくとも1つの第1横方向導管及び1つの第2の横方向導管は、それぞれ、前記鋳込みカップに、前記鋳込みカップと前記少なくとも1つの第1横方向導管及び1つの第2の横方向導管との間にそれぞれが延在している少なくとも1つの第1の主要ワックス排出導管及び1つの第2の主要ワックス排出導管を介して流体接続されている。
【0028】
前記シェルターボ機械要素は、例えば、単一の可動ブレードが得られるように各々が設計されたシェルのブレード要素であり得る。
【0029】
また、本発明の態様の1つによれば、本発明の主題は、複数の要素、特にはターボ機械のブレード要素をロストワックス鋳造により製造するための方法である。この方法は、上述のようなシェルを使用して、及び/又は、上述のようなクラスタモデルを使用して実行され、且つ、金属を前記シェルに鋳込むためのステップを含むことを特徴とする。
【0030】
有利には、この方法は、ハンドリングアクセサリを形成するために、金属以外の材料、特にはセラミックを生成するステップをさらに含み得る。
【0031】
本発明は、以下の詳細な説明、その実施の非限定的な実施例、並びに添付の図面の概略図及び部分図を精査することにより、よく良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】複数のターボ機械要素をロストワックス鋳造により製造するための、本発明によるシェルの実施形態の第1の例の部分斜視図である。
【
図2】複数のターボ機械要素をロストワックス鋳造により製造するための、本発明によるシェルの実施形態の、
図1の代替実施形態を形成する第2の例の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
前記図の全てにおいて、同一の参照符号は同一又は類似の要素を示し得る。
【0034】
また、図をより読み易くするために、図に示されている様々な部分は必ずしも一定の縮尺に従ってはいない。
【0035】
説明の全体において、可能な用語「上」(“top”)、「下」(“bottom”)、「より上」(“above”)及び「より下」(“below”)が、図面上の図の向きに従って理解されることに留意されたい。
【0036】
さらに、本発明が、ターボ機械要素(例えば、単独で又は複数のブレードを含むセクタとして製造される、コンプレッサ若しくはタービンの可動ブレードであり得、又は、タービン若しくはコンプレッサのステータブレードでもあり得る)の製造を可能にすることに留意されたい。
【0037】
また、以下に記載する特徴はシェル1に関して説明されるものであるが、それらが、シェル1がその周囲に形成されるためのクラスタモデルにも同様に当てはまることにも留意されたい。
【0038】
図1を参照すると、複数のターボ機械要素(特にはブレード要素)のロストワックス鋳造による製造のための、本発明によるシェルの第1の実施形態の例が示されている。
【0039】
シェルの作製のために、最初にクラスタモデル(図示せず)を作製する。クラスタモデルは、その周囲にシェル1(優先的にセラミック製)を形成するためのものである。前記クラスタモデルは、基本的にはワックスから作られた犠牲要素から成るが、ワックスでなくてもよい。しかし、簡単に言えば、このモデルは「ワックスモデル」(“wax model”)として知られている。
【0040】
セラミックシェル1を作製するための工程は、ワックスモデルを連続浴(図示せず)に浸漬する公知の方法で実行される。
【0041】
ワックスモデルを乾燥させた後、得られたシェル1は、一般的なクラスタ形状を有し、シェル要素(後述する)を含む。
図1に示されているシェル1は、その後シェル1に溶融金属が充填されるときのような配置にされている。
【0042】
まず第1に、シェル1は、金属製の鋳込みカップ2を備え、鋳込みカップ2は、シェル1により完全に又は部分的に覆われ得る。前記鋳込みカップ2は、シェル1の長手方向軸Xに沿って延在する中央スプルー3に流体接続されている。前記中央スプルー3は、優先的には、金属鋳込みカップ2の底部からシェルのブレード要素4の底端部4aの高さまで軸Xに沿って延在する中空シリンダの形態を有する。
【0043】
中央スプルー3は、有利には、シェルのブレード要素4の、
図2に見られる底部供給導管5(後述する)に公知の方法で接続している。底部供給導管5は、ブレード要素の形態の金属部品を形成するためのものである。すなわち、溶融金属は鋳込みカップ2内に注入され、次いで、中央スプルー3を通過して、底部にて底部供給導管5内に注入され、これにより、シェルのブレード要素4が底部を介して、すなわち底部から上部に充填されることを可能にする。
【0044】
シェルのブレード要素4は、ブレード状であるとみなされる。なぜなら、ワックスレプリカの除去後、ブレード要素4は、各々、ブレード要素4内に、ブレードに対応するキャビティを形成するからである。前記シェルのブレード要素4は、軸Xを中心に、そして中央スプルー3(前記同一軸Xに沿って鋳込みカップ2の底部から下方に延在する)も中心にして配置されることにより、上方に延在している。シェルのブレード要素4は、シェル1の周囲壁を長手方向軸Xに沿って形成している。シェルのブレード要素4は、周方向に互いに離間して配置され、且つ、前記軸線Xを中心に内部空間を画成しており、従って、この内部空間に中央スプルー3が配置されている。
【0045】
さらに、本発明によれば、シェル1は、ハンドリングアクセサリシェル6を含み、ハンドリングアクセサリシェル6は、シェルのブレード要素4及びその金属供給回路から完全に独立している。
【0046】
前記ハンドリングアクセサリシェル6は、例えば中央要素7を含み、中央要素7は、シェル1の中心軸Xに一致して鉛直に配向する中心軸を有する、回転式の、円筒形又は円錐形の要素である。
【0047】
前記中央要素7は、中央スプルー3に、又は鋳込みカップ2にも直接取り付けられている。
図2にさらに見られる半径方向アーム8が、中央要素7を、軸Xを中心とするハンドリングリングシェル9に接続している。半径方向アーム8及びハンドリングリングシェル9は、例えば鋳込みカップ2の真下に配置される。
【0048】
有利には、半径方向アーム8と中央アーム7とが中央スプルー3に流体接続され、中央スプルー3は鋳込みカップ2に流体接続されており、これにより、ハンドリングアクセサリを金属で作製することを可能にしている。本発明によれば、前記ハンドリングアクセサリを得るために上注ぎ鋳造が行われる。従って、本発明は、ターボ機械のブレード要素の形成を可能にするための下注ぎ鋳造と、ハンドリングアクセサリの形成を可能にするための上注ぎ鋳造との両方を実施し、従って、ブレード要素とハンドリングアクセサリとは完全に独立して作製され、これにより、先に説明したような製造上の欠点の出現を回避する。
【0049】
さらに、
図1の前記実施形態の例において、シェルのブレード要素4は、各々、その上端部4bの高さにおいて、単一のワックス排出導管10(ワックスプラー又は脱ワックスベント10とも称する)に流体接続されている。前記ワックス排出導管10は、
図1に示したシェル1の位置においてほぼ鉛直方向に向けられている。
【0050】
さらに、
図1は、ハンドリングリングシェル9の保持を強化するために、リングシェル9を鋳込みカップ2に接続する複数のセラミック保持補強材11を設け得ることも示している。
【0051】
図2の実施形態の例においては、ワックスプラーを、シェルのブレード要素4により形成された部分に連結しない、すなわち、ワックスプラーをシェルの各ブレード要素4に組み付けないという選択がなされていた。従って、前記例においては、第1の組立体12a、第2の組立体12b、第3の組立体12c、第4の組立体12d(各々、4つのワックス排出導管10から成る)が、それぞれ、シェルの4つのブレード要素4に組み付けられており、4つの各ワックス排出導管10はそれぞれ互いに、第1の横方向導管14a、第2の横方向導管14b、第3の横方向導管14c、第4の横方向導管14dにより流体接続されている。
【0052】
従って、ワックス排出導管10は、それらが堅固に連結されるように互いに部分的に連結されている。このようにして、特に振り落とし工程中に過度の振動を有することが回避できる。実際、前記振動は、再結晶化を生じさせ、それにより、成形部品上に再結晶化粒子を出現させることにより、有害であり得る。
【0053】
4つの横方向導管14a〜14dのそれぞれの高さにおいて、主要ワックス排出導管13a,13b,13c,13d、又はワックスプラー13a〜13dが鋳込みカップ2に流体接続されている。
【0054】
すなわち、前記例においては、ワックスの排出は、第1の主要排出導管13a、第2の主要排出導管13b、第3の主要排出導管13c、第4の主要排出導管13d(各々がシェルの複数のブレード要素4に流体接続されている)を介して鋳込みカップ2内になされる。
【0055】
有利には、
図2の例によるこのような実施形態は、鋳造及び安全面の改善を可能にし得る。また、これは、凝固段階中のブレード内の応力の低減又は再度の増大、及び、より正確なワックス排出を可能にし得る。従って、このようにして、脱ワックスシステムの最適化が可能である。
【0056】
シェル1を得て、シェル1内に閉じ込められていたクラスタモデルの基本材料(essential)を除去した後、シェル1を専用炉にて高温(例えば1,000℃〜1,200℃)で予熱する。これは、鋳造中のシェル1内での金属の流動性を高めるためである。
【0057】
シェル1の予熱が終了すると、溶融炉から放出される金属が、シェルのブレード要素4に鋳込みカップ2を介して鋳込まれる。これは、シェル1の、
図1又は
図2に示されているような位置、すなわち、鋳込みカップ2が上方に開放され、且つ、軸Xが常に鉛直方向に向けられている位置にて行われる。
【0058】
従って、溶融金属は、鋳込みカップ2、中央スプルー3、中央要素7、半径方向アーム8及びリングシェル9を辿って流れ、これによりハンドリングアクセサリを上注ぎ鋳造で形成し、そしてこれとほぼ同時に、中央スプルー3、底部供給導管5、及び、シェルのブレード要素4を辿って流れ、これによりターボ機械のブレード要素を下注ぎ鋳造により形成する。
【0059】
鋳込み後の金属の冷却の後、シェル1を破壊し、次いで、可動ブレードをクラスタから引き抜いて、可能な機械加工作業及び仕上げ作業、並びに検査作業を行う。
【0060】
有利には、クラスタを補強するために、及び、クラスタが自重により撓むことを回避するために、ハンドリングリングの各半径方向アーム8に補強材を追加してもよい。
【0061】
さらに、ブレード要素から完全に独立しているハンドリングリング(より一般的にはハンドリングアクセサリ)の実施形態は、ハンドリングリングの寸法を、先行技術に関連する部分で前述したような供給システムにより形成された上注ぎ鋳造方法でのハンドリングリングに関してハンドリングリングの寸法を低減可能にする。こうして、前記寸法の減少が、金属質量の低減、具体的には50%超の低減を可能にする。さらには、このようなハンドリングアクセサリ(特にこのようなハンドリングリング)を、金属以外、具体的にはセラミックで作製することも可能である。なぜなら、ハンドリングアクセサリはハンドリングにのみ使用され、もはやシェルのブレード要素4の供給には使用されないからである。従って、金属以外の材料を使用する場合、金属の質量をゼロまで低減することも可能である。ハンドリングアクセサリの寸法及び金属質量の前記低減は、十分な機械的特性を維持したまま実行され得る。
【0062】
さらに、クラスタの下注ぎ鋳造が、成形部品の冶金学的健全性を保護することを可能にし得る。こうして、コアの破損及びずれの危険性を、金属の腐食速度が非常に遅い(典型的には0.2m/s〜0.6m/s)ことにより低減できる。さらに、冶金学的欠陥、例えば、特には先行技術に関して前述したような、含有物、酸化、再結晶粒、干渉を低減し得る。
【0063】
概して、本発明は、クラスタの通気及び硬化を向上させて、鋳造及び仕上げに対する、より良好な耐性を得ることを可能にする。本発明による原理は、ハンドリングリングを前記ブレード要素から隔離して、凝固及び冷却中の塑性変形及び応力の低減を可能にすることを目的とする。
【0064】
実際、本発明は、指向性凝固の方向における温度勾配により生じる熱機械的応力を制限しようとするものである。再結晶粒及び低温割れの危険性が、本発明の解決策により軽減される。これは指向性凝固方法に関するものであるため、鋳型は不均一に冷却され、底部が最初に冷却され、冷たい金属による熱い金属の牽引が生じる。金型底部の温度を制御することにより、温度勾配を凝固方向に応じて制御することが可能である。底部に対する上部の金属質量のバランスが確立され、生成される全ての部分に加えられる応力が軽減されて、より良好に分散される。
【0065】
また、本発明による
図1及び
図2の例のように、クラスタが鋳込みカップ2に直接接続されている場合、すなわち、先行技術の上注ぎ鋳造方法によるような、リングの形態の供給システムに接続されているのとは異なる場合、本発明の方法の数値的検証(凝固の終了時のフォンミーゼス基準タイプの塑性基準の推定による)によれば、応力が、著しく、約45%〜50%軽減されることに留意されたい。従って、冶金学的欠陥、特に再結晶粒型の欠陥が生じる可能性が低い。
【0066】
有利なことに、上述の本発明の原理は、任意のタイプのクラスタ構造に適用され得る。
【0067】
もちろん、本発明は、以上に説明した実施形態の例に限定されない。様々な修正が当業者により行われ得る。
【符号の説明】
【0068】
1:シェル
2:鋳込みカップ
3:中央スプルー
4:シェルのブレード要素
4a:要素の底端部
4b:要素の上端部
5:底部供給導管
6:ハンドリングアクセサリシェル
7:中央要素
8:半径方向アーム
9:ハンドリングリングシェル
10:ワックス排出導管
13a,13b:主要ワックス排出導管
14a,14b:横方向導管