【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の態様では、エアロゾル発生装置と、この装置で使用されるように構成されたカートリッジとを備える電気加熱式エアロゾル発生システムが提供され、この装置は、
装置ハウジングと、
フラットスパイラルインダクタコイルと、
フラットスパイラルインダクタコイルに接続され、かつ高周波振動電流をフラットスパイラルインダクタコイルに提供するように構成された電源と、を備え、
このカートリッジが、
エアロゾル形成基体を含み、かつ装置ハウジングを係合するように構成されたカートリッジハウジングと
エアロゾル形成基体を加熱するように位置するサセプタ素子と、を備える。
【0006】
動作時に、高周波振動電流がフラットスパイラルインダクタコイルを通過して、サセプタ素子内で電圧を誘起する交番磁界を発生させる。誘起された電圧はサセプタ素子内に電流を流させ、この電流がサセプタ素子のジュール加熱を起こし、これが今度はエアロゾル形成基体を加熱する。サセプタ素子は強磁性である場合、サセプタ素子内のヒステリシス損失も熱を発生する場合がある。
【0007】
「フラットスパイラルコイル」は本明細書で使用される時、一般的に平面のコイルで、コイルの巻線の軸がコイルのある表面に対して垂直であるコイルを意味する。いくつかの実施形態では、フラットスパイラルコイルは、平らなユークリッド平面内にあるという意味で平面状であってもよい。しかし、「フラットスパイラルコイル」という用語は本明細書で使用される時、曲面または他の3次元表面と一致するような形状のコイルも網羅する。例えば、フラットスパイラルコイルは、円筒ハウジングまたは装置のくぼみと一致する形状にされうる。その時フラットスパイラルコイルは「平面の」と呼ばれる可能性があるが、コイルの巻線の軸がコイルの中心で円筒面に垂直で、円筒面と一致する。フラットスパイラルコイルが円筒面または非ユークリッド平面と一致する場合、好ましくは、フラットスパイラルコイルはフラットスパイラルコイルの直径より大きいフラットスパイラルコイルの領域の曲率の半径を持つ平面内にある。フラットスパイラルコイルが、例えば円筒状または他の形状のハウジングと一致するように湾曲している時、サセプタ素子が相補的な形状を有するよりも望ましく、これによってフラットスパイラルコイルとサセプタとの間の距離はサセプタ素子の範囲全体で実質的に一定である。特にフラットスパイラルコイルとサセプタとの間に気流経路がある実施形態では、サセプタ素子とフラットスパイラルコイルとの間の最短距離は0.5〜1mmであるのが好ましい。
【0008】
高周波振動電流は本明細書で使用される時、500kHz〜30MHzの周波数を持つ振動する電流を意味する。高周波振動電流の周波数は1〜30MHzとすることができ、1〜10 MHzであることが好ましく、5〜7MHzであることがより好ましい。
【0009】
「サセプタ素子」は本明細書で使用される時、変動する磁場に晒された時に加熱する導体素子を意味する。これはサセプタ素子内で誘起された渦電流および/またはヒステリシス損失の結果でありうる。サセプタ素子のための可能性がある材料としては、黒鉛、モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス鋼、ニオブ、アルミニウム、およびほとんどの任意の他の導電性元素が挙げられる。有利なことに、サセプタ素子はフェライト素子である。サセプタ素子の材料および幾何学的形状は、望ましい電気抵抗および発熱を提供するために選択できる。
【0010】
誘導加熱を利用したこの配列はカートリッジと装置の間に電気的な接点が一切形成される必要がないという利点を持つ。また、発熱体(この場合には、サセプタ素子)は、任意の他の構成要素にも電気結合されている必要がなく、はんだまたはその他の結合要素の必要性が除去される。さらに、単純で安価かつ堅牢なカートリッジの構成を可能にする装置の部品としてコイルが提供されている。カートリッジは作動に用いる装置よりもずっと大量に製造される一般に使い捨ての物品である。従って、より高価な装置を必要とする場合でも、カートリッジのコストを低減することは、製造者および消費者の両者にとって著しいコスト節約につながりうる。
【0011】
さらに、コイルに関連する電力損失、特にコイルと装置の電力供給システムとの間の接続部での接触抵抗に起因する損失は誘導加熱システムに存在しないため、コイル設計ではなく誘導加熱の使用がエネルギー変換の改善を提供する。機能するために、コイルは恒久的または交換可能のいずれかで装置の中に提供されるリードを通して電源に接続される。改善した自動製造技法を用いてさえ、コイルシステムは、寄生損失を生成するリードにおいて一般に接触抵抗を有する。交換可能なコイル装置は、交換可能なカートリッジと装置のリードとの間の接触抵抗を増やすフィルムまたはその他の材料の堆積に苦しめられる場合がある。対照的に、誘導加熱システムは、発熱体と装置のリードとの間の接触を必要とせず、したがってコイルに基づく装置に存在する接触抵抗の問題に苦しめられることはない。
【0012】
フラットスパイラルコイルの使用により、堅牢でかつ製造が安価な単純なデザインを持つコンパクトな装置デザインが許容される。コイルはコイルへの付着物および腐食を防止でき、また装置の掃除を簡単にするように、装置ハウジング内に保持でき、また生成されたエアロゾルに晒される必要がない。また、フラットスパイラルコイルの使用により、装置とカートリッジの間の単純な境界面が許容され、単純かつ安価なカートリッジ設計ができるようになる。
【0013】
装置ハウジングは少なくともカートリッジの一部分を受けるためのくぼみを備え、そのくぼみは内部表面を持つ。フラットスパイラルインダクタコイルは電源に最も近いくぼみの表面上またはそれに隣接して配置されうる。フラットスパイラルコイルは、くぼみの内部表面と一致する形状としうる。
【0014】
装置ハウジングは本体およびマウスピース部分を備えうる。くぼみは本体内とすることができ、またマウスピース部分は出口を持つことができ、システムによって生成されたエアロゾルはその出口を通してユーザーの口へと引き出される。フラットスパイラルインダクタコイルはマウスピース部分内または本体内としうる。
【0015】
別の方法として、マウスピース部分はカートリッジの部品として提供されてもよい。マウスピース部分という用語は本明細書で使用される時、エアロゾル発生システムにより生成されたエアロゾルを直接吸い込むために、ユーザーの口に入れられる装置またはカートリッジの部分を意味する。エアロゾルはマウスピース部分を通してユーザーの口に運ばれる。
【0016】
システムは空気吸込み口から空気出口に延びる空気経路を備えうるが、ここで空気経路はフラットスパイラルインダクタを通過する。空気の流れがシステムを通してコイルを通過できるようにすることで、コンパクトなシステムを達成できる。
【0017】
システムは、複数のインダクタコイルを含んでもよく、そのうちのいくつかまたは全てはフラットスパイラルコイルであってもよい。例えば、一つの可能な構成では、システムは、カートリッジを受ける装置ハウジング内のくぼみの反対側に配置された2つのフラットスパイラルコイルを備えうる。
【0018】
フラットスパイラルインダクタはコイルの平面内で望ましい任意の形状を持たせることができる。例えば、フラットスパイラルコイルは円形形状を持つことも、一般的に長楕円形の形状を持つこともできる。コイルの直径は5mm〜10mmとしうる。
【0019】
カートリッジは単純なデザインを持ちうる。カートリッジは、その内部にエアロゾル形成基体が保持されるハウジングを持つ。カートリッジハウジングは液体に対して不浸透性の材料を含む剛性のハウジングであることが好ましい。本明細書で使用される場合、「剛直なハウジング」とは、自立型のハウジングを意味する。
【0020】
エアロゾル形成基体はエアロゾルを形成できる揮発性化合物を放出する能力を持つ基体である。揮発性化合物はエアロゾル形成基体の加熱により放出されうる。エアロゾル形成基体は固体でも液体でもよく、固体および液体の両方の成分を含んでもよい。
【0021】
エアロゾル形成基体は植物由来材料を含みうる。エアロゾル形成基体はたばこを含みうる。エアロゾル形成基体は加熱に伴いエアロゾル形成基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含む、たばこ含有材料を含みうる。別の方法として、エアロゾル形成基体は非たばこ含有材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は均質化した植物由来材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は均質化したたばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は少なくとも一つのエアロゾル形成剤を含んでもよい。エアロゾル形成剤は、使用において、密度の高い安定したエアロゾルの形成を容易にする、およびシステムの操作温度で熱分解に対して実質的に抵抗性のある任意の適切な公知の化合物または化合物の混合物である。好適なエアロゾル形成体は当業界で周知であり、多価アルコール(トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、およびグリセリンなど)、多価アルコールのエステル(グリセロールモノアセテート、ジアセテート、またはトリアセテートなど)、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸、またはポリカルボン酸の脂肪族エステル(ドデカン二酸ジメチルおよびテトラデカン二酸ジメチルなど)を含むが、これに限定されない。好ましいエアロゾル形成体は多価アルコールまたはその混合物(トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオールおよびグリセリン(最も好ましい)など)である。エアロゾル形成基体は、その他の添加物および成分(風味剤など)を含みうる。
【0022】
エアロゾル形成基体は、担体または支持体に吸着、被覆、含浸またはその他の方法で装填される場合がある。一例において、エアロゾル形成基体は毛細管材料内に保持される液体基体である。毛細管材料は繊維質または海綿状の構造を有する場合がある。毛細管材料は一束の毛細管を含むことが好ましい。例えば、毛細管材料は複数の繊維もしくは糸、またはその他の微細チューブを含む場合がある。繊維または糸は、一般的に液体をヒーターに移動するように整列されたものとしうる。別の方法として、毛細管材料は海綿体様または発泡体様の材料を含んでもよい。毛細管材料の構造は複数の小さな穴またはチューブを形成し、それを通して液体が毛細管作用によって移動できる。毛細管材料は適切な任意の素子または材料の組み合わせを含んでもよい。適切な材料の例としては、海綿体または発泡体材料、繊維または焼結粉末の形態のセラミック系またはグラファイト系の材料、発泡性の金属またはプラスチックの材料、例えば紡がれたかまたは押し出された繊維(酢酸セルロース、ポリエステル、または結合されたポリオレフィン、ポリエチレン、テリレンまたはポリプロピレン繊維、ナイロン繊維またはセラミックなど)でできた繊維性材料がある。毛細管材料は異なる液体物理特性で使用されるように、適切な任意の毛細管および空隙率を有する場合がある。液体は毛細管作用により毛細管材料を通過して移動できるようにする粘性、表面張力、密度、熱伝導率、沸点および蒸気圧を含むがこれに限定されない物理的特性を持つ。毛細管材料はエアロゾル形成基体をサセプタ素子に運ぶように構成されうる。
【0023】
サセプタ素子はエアロゾル形成基体と接触されうる。別の方法として、サセプタ素子はエアロゾル形成基体から離間されてもよいが、エアロゾル形成基体を加熱するためにエアロゾル形成基体の近くに配置されてもよい。
【0024】
サセプタ素子は、カートリッジハウジングが装置ハウジングと係合した時に、フラットスパイラルインダクタコイルに隣接して配置されるように構成されたカートリッジハウジングの壁上に提供されてもよい。使用時には、サセプタ素子で誘起される電圧を最大化するために、サセプタ素子をフラットスパイラルコイルの近くに配置させることが有利である。
【0025】
カートリッジハウジングが装置ハウジングと係合した時、フラットスパイラルインダクタコイルとサセプタ素子の間に気流通路を提供しうる。気化したエアロゾル形成基体は気流通路内の空気の流れに混入させることができ、その後、冷めてエアロゾルを形成する。
【0026】
サセプタ素子は、メッシュ、フラットスパイラルコイル、内側フォイル、繊維、またはロッドを備えてもよい。サセプタ素子は、液体エアロゾル形成基体または気化したエアロゾル形成基体がサセプタを通過しうるように流体浸透性としうる。
【0027】
カートリッジ内に毛細管材料が使用される場合(例えば、サセプタがメッシュまたはフィラメントの配列の形態である場合)、毛細管材料はサセプタ内の隙間の中へと延びる場合がある。サセプタ素子はシートの形態で提供されてもよく、カートリッジハウジング内の開口部を横切って延びうる。別の方法として、サセプタ素子はエアロゾル形成基体に埋め込まれてもよい。
【0028】
サセプタ素子は毛細管材料を含んでもよい。サセプタは、システムを通る空気経路を横切って延びる毛細管芯を含んでもよい。
【0029】
有利なことに、サセプタ素子は1〜40000の相対浸透性を持つ。大半の加熱のために渦電流に依存することが望ましい時には低めの浸透性の材料を使用してもよく、またヒステリシス効果が望ましい時には高めの浸透性の材料を使用してもよい。材料の相対浸透性は500〜40000であることが好ましい。これにより効率的な加熱が提供される。
【0030】
サセプタ素子の材料は、そのキュリー温度を理由に選択してもよい。そのキュリー温度を超えるとヒステリシス損失がもはや発生しないため、材料はもはや強磁性ではなくなり、そのため加熱されなくなる。サセプタ素子が単一の材料でできている場合、キュリー温度はサセプタ素子が持つべき最高温度に対応しうる(すなわち、キュリー温度はサセプタ素子が加熱されるべき最高温度と等しいか、またはこの最高温度から約1〜3%だけ逸脱した温度である)。これにより、急激な過熱の可能性が低減される。
【0031】
サセプタ素子が複数の材料でできている場合、サセプタ素子の材料はさらなる態様に関して最適化できる。例えば材料は、サセプタ素子の第一の材料がサセプタ素子が加熱されるべき最高温度を超えるキュリー温度を持ちうるように選択できる。その後、サセプタ素子のこの第一の材料は、例えば最大発熱に関して最適化し、一方でエアロゾル形成基体に移動して、サセプタの効率的な加熱が提供されるようにしうる。ところが、サセプタ素子はその後、追加的にサセプタが加熱されるべき最高温度に対応するキュリー温度を持つ第二の材料を備えることができ、サセプタ素子がこのキュリー温度に達すると、サセプタ素子全体の磁性が変化する。この変化は検出されてマイクロコントローラに通信されることができ、その後、温度が再びキュリー温度よりも低い温度まで冷めるまでAC電力の発生が妨害され、冷めた後でAC電力の発生が再開される。
【0032】
システムは電気的に作動する喫煙システムとしうる。システムは手持ち式のエアロゾル発生システムでもよい。エアロゾル発生システムは従来型の葉巻たばこや紙巻たばこと匹敵するサイズを持ちうる。喫煙システムの全長は、およそ30mm〜およそ150mmとしうる。喫煙システムの外径は、およそ5mm〜およそ30mmとしうる。
【0033】
システムはさらに、インダクタコイルおよび電源に接続された電気回路を備えうる。電気回路はマイクロプロセッサを備えうるが、これはプログラマブルマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または特定用途向けICチップ(ASIC)または制御能力を持つその他の電子回路としうる。電気回路はさらなる電子構成要素を備えうる。電気回路はフラットスパイラルコイルへの電流供給を調節するよう構成しうる。電流はシステムの起動後、フラットスパイラルコイル素子に連続的に供給されてもよく、または毎回の吸入ごとのように断続的に供給されてもよい。電気回路は有利なことにDC/ACインバータを備えることができ、これはクラスDまたはクラスEの電力増幅器を備えうる。
【0034】
システムはハウジングの本体内に電源(一般にリチウムイオンリン酸型電池などの電源)を備えることが有利である。別の方法として、電源はコンデンサーなど別の形態の電荷蓄積装置としうる。電源は再充電を要するものとしてもよく、例えば1回以上の喫煙の体験などの1回以上のユーザー操作のために十分なエネルギーの蓄積が許容される容量を持ちうる。例えば、電源は従来型の紙巻たばこ1本を喫煙するのにかかる一般的な時間に対応する約6分の時間、または6分の倍数の時間にわたるエアロゾルの連続的な生成を許容するのに十分な容量を持ちうる。別の例では、電源は所定回数の喫煙、またはフラットスパイラルコイルの不連続的な起動を許容する十分な容量を持ちうる。
【0035】
第二の態様では、電気加熱式エアロゾル発生装置が提供され、この装置は、
カートリッジの少なくとも一部分を受けるためのくぼみを画定し、カートリッジがエアロゾル形成基体およびエアロゾル形成基体と接触するサセプタ素子を含む装置ハウジングを備え、くぼみが内部表面を持つ、装置ハウジングと、
くぼみの内部表面上に配置されるフラットスパイラルインダクタコイルと、
フラットスパイラルインダクタコイルに接続され、かつ高周波振動電流をフラットスパイラルインダクタコイルに提供するように構成された電源と、を備える。
【0036】
第三の態様は、エアロゾルを発生する方法が提供され、この方法は、
サセプタと、サセプタに接触またはサセプタに近接するエアロゾル形成基体と、を備えるカートリッジを提供することと、
サセプタがフラットスパイラルインダクタコイルに近接するようにカートリッジを配置することと、
フラットスパイラル誘導コイルを通して高周波振動電流を通過させてサセプタ内に電流を誘起し、これによってエアロゾル形成基体を加熱することと、を含む。
【0037】
一つの態様に関連して説明した特徴は本開示の他の態様に適用されうる。特に、本開示の第一の態様に関連して説明した有利なまたは随意的な特徴は本発明の第二のおよび第三の態様に適用されうる。
【0038】
ここで本開示によるシステムの実施形態を、以下の添付図面を参照しながら、例証としてのみではあるが詳細に説明する。