【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらは、本発明をより詳細に説明するためのものであって、本発明の権利範囲は下記の実施例によって限定されない。
【0060】
[実施例1]
ZIF‐8‐GF(Graphite felt、GF)の製造:
a)20×30×4mmの黒鉛フェルト(Graphite felt)(GFD 4.6、SGL Group)を酸素条件の下で、520℃、9時間熱処理を行った後、常温まで冷却させた。
【0061】
b)硝酸亜鉛六水和物(Zinc nitrate hexahydrate)5.95gおよび2‐メチルイミダゾール13.14gをそれぞれメタノール100mlに十分に溶解させた後、各溶液を15mlずつ取り、1分間攪拌して十分に混合した後、前記熱処理されたグラファイトフェルトが入っているビーカに追加し、6時間放置した後、混合溶液内のグラファイトフェルトを取り出し、メタノールで十分に洗浄した。
【0062】
前記b)ステップを3回繰り返してZIF‐8‐GFを取得し、最後に、50℃で十分に乾燥した。
【0063】
NGF(Pyridinic nitrogen‐doped microporous carbon decorated on graphite felt)の製造:
前記得られたZIF‐8‐GFをAr条件および5℃/minの昇温速度で700℃で5時間炭化した後、常温まで冷却した。次に、2Mの塩酸が入っているビーカに入れて60℃で12時間攪拌してNGFを取得し、最後に、蒸留水100mL、エタノール100mLおよびアセトン100mLの順にそれぞれ洗浄した後、100℃で12時間乾燥し、NGF‐700を得た。
【0064】
前記ZIF‐8‐GFおよびNGFの製造過程は、
図3に例示的に簡略に図示されている。
図3に図示されているように、グラファイトフェルトの表面を酸化するステップと、前記酸化されたグラファイトフェルトの表面にZIF‐8を形成するステップと、前記グラファイトフェルト上に形成されたZIF‐8を炭化するステップとを含み、前記一連の経時的なステップを経て多孔性炭素体基材上に一体化されたピリジン系窒素でドープされた炭素体(NGF)が製造される。
【0065】
前記得られたNGF‐700に対して走査電子顕微鏡画像を分析し、その結果を
図4の(a)に図示した。
【0066】
次に、前記NGF‐700をエタノールで10分間超音波処理(Sonication)して炭化されたZIF‐8粒子を分離し、分離した前記粒子を透過電子顕微鏡分析し、その結果を
図4の(b)および(c)に図示した。
【0067】
最後に、分離した前記粒子に対して走査電子顕微鏡およびEDS(Energy Dispersive Spectrometry)分析し、その結果を
図4の(d)〜(f)に図示した。
【0068】
図4の(a)に示されているように、炭化されたZIF‐8層がGF表面に均一に形成されたことが分かる。
【0069】
図4の(b)に示されているように、ZIF‐8粒子が炭化された後にも多面体形状を示し、平均粒子径は90nm未満であることが分かり、
図4の(c)に示されているように、前記炭化されたZIF‐8粒子に平均気孔径2nm以下のマイクロ気孔が形成されたことが分かる。
【0070】
また、
図4の(e)および(f)に示されているように、炭素と窒素が前記粒子に均一に分布されたことが分かる。
【0071】
[実施例2]
前記実施例1で炭化温度を700℃の代わりに、600℃にした以外は、同様に実施し、得られたNGFをNGF‐600と名付けた。
【0072】
[実施例3]
前記実施例1で炭化温度を700℃の代わりに、800℃にした以外は、同様に実施し、得られたNGFをNGF‐800と名付けた。
【0073】
[実施例4]
前記実施例1で炭化温度を700℃の代わりに、900℃にした以外は、同様に実施し、得られたNGFをNGF‐900と名付けた。
【0074】
[実施例5]
前記実施例1で炭化温度を700℃の代わりに、1000℃にした以外は、同様に実施し、得られたNGFをNGF‐1000と名付けた。
【0075】
(比較例)
20×30×4mmのPristineグラファイトフェルト(GFD 4.6、SGL Group)を使用し、GFと名付けた。
【0076】
試験例1:走査電子顕微鏡画像分析
前記実施例1〜実施例5で製造されたNGFに対して走査電子顕微鏡画像およびEDSを分析し、その結果を
図5に図示した。
【0077】
具体的には、
図5の(a)はNGF‐600、(b)はNGF‐700、(c)はNGF‐800、(d)はNGF‐900、および(e)はNGF‐1000に対する走査電子顕微鏡画像およびEDS分析結果を示し、炭化温度が増加するほど、NGFの表面が滑らかであることが分かる。
【0078】
試験例2:XPS分析
前記実施例1〜実施例5で製造されたNGFに対してXPS分析を行い、その結果を
図6に図示した。
【0079】
図6に示されているように、炭化温度の増加に伴い、NGFの全窒素含量(原子%)は減少する傾向を示し、具体的には、全窒素含量のNGF‐600〜NGF‐1000の順に、それぞれ16.7%、9.8%、7.1%、3.1%および2.3%を示したが、全窒素含量のうち、ピリジン系窒素(Pyridinic N)の原子%はNGF‐700で50.14%と、最も高く示されたことが分かる。具体的には、炭化温度が600℃から700℃に増加するに伴い、ピロール系窒素(Pyrrolic N)がピリジン系窒素に転換されてピロール系窒素の含量が急激に減少し、ピリジン系窒素の含量が急激に増加した。しかし、炭化温度800℃以上ではピリジン系窒素が4価窒素(Quaternary N)に転換されて、ピリジン系窒素の含量がまた減少し、4価窒素の含量が増加し、酸化された窒素(Oxidized N)およびピロール系窒素の含量も増加したことが分かる。
【0080】
試験例3:BET分析
前記実施例1〜実施例5で製造されたNGFに対してBET比表面積分析を行い、その結果を
図7に図示した。
【0081】
図7に示されているように、炭化温度が増加するに伴い、比表面積が増加することが分かる。具体的には、NFG‐600は14.8、NFG‐700は16.1、NFG‐800は17.0、NFG‐900は17.7、NFG‐1000は18.5m
2/gであり、NFG‐1000が最も高い比表面積を示したことが分かる。
【0082】
また、炭化温度が増加するに伴い、マイクロ気孔の表面積も増加したが、ほとんどの場合、NGF‐1000ではむしろ減少したことが分かる。これは、マイクロ気孔が1000℃以上で分解されたためであると推定される。
【0083】
試験例4:Ar吸着等温線(Ar adsorption isotherm)分析
前記実施例1〜実施例5で製造されたNGFに対してAr吸着等温線分析を行い、その結果を
図8に図示した。
【0084】
図8に示されているように、本発明により製造されたNGFに導入されたマイクロ気孔の平均気孔径は0.6〜1.9nmであり、炭化温度が600℃から900℃に増加する時にはマイクロ気孔のサイズが減少し、1000℃ではまた増加する傾向を示した。
【0085】
試験例5:分光(Spectroscopic)分析
前記実施例1〜実施例5のうち、ピリジン系窒素含量(原子%)が最も高いNGF‐700(実施例1);比表面積が最も高いNGF‐1000(実施例5);およびGF(比較例)に対して臭素系イオンおよび臭素化合物の吸着能を評価した。
【0086】
具体的には、
図9に図示されているように、前記GF、NGF‐1000およびNGF‐700をそれぞれ正極として使用し、シールされたガラス容器の下側に配置し、上側にはZn電極を配置し、電解液は2.25M ZnBr
2を使用してMLFL‐ZBBを構成した。次に、5mA/cm
2の電流密度で1時間充電しながら、充電過程中に10分おきに画像を撮影し、その結果を
図10の(a)に図示した。
【0087】
図10の(a)に示されているように、充電過程が進むにつれて、正極側電解質が徐々に黄色を変わることが分かり、これは、正極から臭素系イオンまたは臭素化合物が放出されたことを意味する。特に、GFを正極として使用した場合、充電して10分後に色の変化を示し、60分後には電解質全体の色が変化したことが分かる。逆に、NGF‐1000およびNGF‐700を正極として使用した場合、充電過程中に色の変化がひどくなかったため、臭素系イオンまたは臭素化合物が前記正極に効率的に吸着したことが分かる。特に、NGF‐700の場合、はるかに効率的な吸着効果を示した。
【0088】
また、前記各MLFL‐ZBB充電過程中に、正極近くの電解液を充電時間10分、30分および60分おきにそれぞれサンプリングしてUV分析を行い、その結果を
図10の(a)に図示した。
【0089】
図10の(a)に示されているように、Br
2およびポリブロミド(Polybromide)イオンの最大の吸光波長である270nmでの吸光度がGF>NGF‐1000>NGF‐700の順に示されたことが分かる。特に、NGF‐700の場合、充電時間60分後にも非常に低い吸光度を示し、これにより、前記Br
2およびポリブロミドイオンのクロスオーバを効果的に抑制したことが分かる。
【0090】
すなわち、NGF‐1000の高い比表面積影響よりも、NGF‐700の高いピリジン系窒素含量の影響が、臭素系イオンおよび臭素化合物の吸着効果にさらに大きく作用するということが分かる。
【0091】
また、前記MLFL‐ZBBの充電過程中に、正極でのBr
−→Br
2→ポリブロミドアニオン転換効率を確認するために、前記各正極に含まれた電解液を充電時間10分、30分および60分おきにそれぞれサンプリングし、ラマン分析を行い、その結果を
図10の(b)に図示した。
【0092】
図10の(b)に示されているように、GFの場合、充電時間30分内には主にBr
2ピークが示され、30分後にはポリブロミドイオンのピークが示されたことが分かる。
【0093】
一方、NGF‐1000およびNGF‐700の場合、充電初期からポリブロミドイオンのピークを示し、Br
−からBr
2への転換およびポリブロミドアニオンの生成がGFに比べ、はるかに迅速に行われることが分かる。
【0094】
試験例6:電気化学的分析
前記実施例1により製造されたNGF‐700;実施例5により製造されたNGF‐1000;および比較例によるGFをそれぞれ1×1cm
2サイズで切断した後、作業電極として使用し、相対電極を白金電極、基準電極としてAg/AgCl電極、また、電解液として2.25M ZnBr
2を使用して、周波数範囲1000kHz〜0.01Hzおよび振幅10mVの条件でEIS分析を行い、その結果を
図11に図示した。
【0095】
図11に示されているように、NGF‐700およびNGF‐1000のいずれもGFよりはるかに低い抵抗を示したことを確認することができる。具体的には、インピーダンスグラフで、半円の直径が電荷移動抵抗を示すため、直径が小さいほど抵抗が小さく、電気化学特性に優れる。
図11に示されているように、NGF‐700およびNGF‐1000の場合、GFよりもはるかに小さい半円直径を示したため、著しく減少した電荷移動抵抗を示したことが分かる。さらに、NGF‐1000の場合、NGF‐700よりも小さい抵抗値を示したことも分かる。
【0096】
試験例7:MLFL‐ZBB充放電テスト
前記実施例1により製造されたNGF‐700;実施例5により製造されたNGF‐1000;および比較例によるGFをそれぞれ正極として使用し、2×2×2cm
3サイズの長方形石英管(Rectangular quartz tube)に配置し、Znコーティングされた白金電極を負極として使用し、電解液は、pH3.8の2.25M ZnBr
2を使用して、MLFL‐ZBBセル(Cell)を構成した。
【0097】
次に、20mAの充電電流で20mAhの容量で充電を行った後、放電電流別に放電を行い、その結果を
図12の(a)〜(c)に図示した。具体的には、
図12の(a)は放電電流による電流効率;(b)は電圧効率;(c)はエネルギー効率を示したものである。
【0098】
図12の(a)に示されているように、低い放電電流では放電時間が増加するに伴い、自己放電がひどくなり低い電流効率を示し、放電電流が高くなるにつれて、電流効率は増加し、55mA以上ではまた減少する傾向を示した。前記GF、NGF‐700およびNGF‐1000はいずれも類似した傾向を示したが、NGF‐700およびNGF‐1000がGFよりも高い電流効率値を示し、NGF‐700がNGF‐1000より若干高い電流効率を示した。
【0099】
また、
図12の(b)に示されているように、放電電流が増加するに伴い、電圧効率が減少する傾向を示し、NGF‐700およびNGF‐1000のいずれもGFよりも高い電圧効率を示したが、NGF‐1000がNGF‐700より若干高い電圧効率を示した。
【0100】
したがって、
図12の(c)に示されているように、GFの場合、7〜15mAの放電電流で60%以下のエネルギー効率を示した一方、NGF‐700およびNGF‐1000は、80%程度の高いエネルギー効率を示した。
【0101】
次に、各MLFL‐ZBBの自己放電位を判断するために、OCV(Open circuit voltage、開回路電圧)維持試験(Retention Test)を行った。具体的には、充電された状態のMLFL‐ZBBセルの時間経過によるOCV減少速度を測定することで、自己放電程度を評価し、その結果を
図12の(d)に図示した。
【0102】
図12の(d)に示されているように、GFの場合、OCVが0Vまで落ちるのにかかる時間が16.4時間である一方、NGF‐1000は21.3時間であり、NGF‐700は53.2時間を示すことから、NGF‐700が自己放電を著しく減少させたことが分かる。この結果は、上述の
図10の(a)に対する結果と一致し、さらに、NGF‐1000の高い比表面積およびマイクロ気孔構造の影響よりも、NGF‐700の高いピリジン型窒素の含量の影響が臭素系イオンおよび臭素化合物の吸着効果にさらに大きく作用し、クロスオーバによる自己放電の影響を著しく低減できることが分かる。
【0103】
次に、各MLFL‐ZBBの長時間の充放電実験を行い、その結果を
図12の(e)および(f)に図示した。
【0104】
図12の(e)に示されているように、充放電サイクルが増加するに伴い、GFの場合、エネルギー効率が速い速度で減少し、414サイクル後にはエネルギー効率が30%以下に落ちたことを確認することができ、NGF‐1000の場合、GFよりは減少速度が遅かったが、587サイクルでエネルギー効率が30%以下に落ちたことを確認することができる。一方、NGF‐700の場合、1000サイクル後にも80%程度のエネルギー効率を維持したことを確認することができる。
【0105】
図12の(f)から確認することができるように、充放電サイクルによる電流効率も前記エネルギー効率変化に類似した傾向を示し、NGF‐700の場合、1000サイクル後にも90%程度の電流効率を示したことを確認することができる。
【0106】
試験例8:MLFL‐ZBB長時間充放電テスト後の電極および電解液の劣化(Degradation)分析
前記1000サイクル充放電を行った後、正極および負極の劣化程度を分析するために、正極、負極および電解液をそれぞれ観察し、その画像を
図13に図示した。
【0107】
図13の(a)はGF、(b)はNGF‐1000、(c)はNGF‐700を含むMLFL‐ZBBの1000サイクル充放電後の電極および電解液に対する画像を示した図である。
【0108】
図13に示されているように、GFを含むMLFL‐ZBBの場合、長時間の充放電過程の後、電解液および電極に深刻な変化が生じたことを確認することができる。具体的には、電解液は、放電が終了した状態であるにもかかわらず、濃い褐色を示し、これは、Br
2およびポリブロミドイオンが電解液に大量含まれていることを意味する。また、負極は、大量のZn残渣が生成されたことを確認することができ、正極の場合、負極から脱離されたZn層が正極の表面に形成されたことを確認することができる。NGF‐1000を含むMLFL‐ZBBの場合、電極および電解液の変化がGFほどに深刻ではなかったが、劣化したことを確認することができる。
【0109】
一方、NGF‐700を含むMLFL‐ZBBの場合、1000サイクルの充放電過程の後にも電解液の色の変化が非常に小さく、負極にZn残渣が生成されず、正極の場合にも、Zn層が形成される現象なしに非常にきれいな状態を維持したことを確認することができる。