特許第6965397号(P6965397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965397
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】クロロトリフルオロエチレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20211028BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20211028BHJP
   B01J 23/42 20060101ALN20211028BHJP
   B01J 23/44 20060101ALN20211028BHJP
   B01J 23/46 20060101ALN20211028BHJP
   B01J 27/12 20060101ALN20211028BHJP
   B01J 27/138 20060101ALN20211028BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20211028BHJP
【FI】
   C07C17/25
   C07C21/18
   !B01J23/42 Z
   !B01J23/44 Z
   !B01J23/46 Z
   !B01J23/46 301Z
   !B01J23/46 311Z
   !B01J27/12 Z
   !B01J27/138 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-81064(P2020-81064)
(22)【出願日】2020年5月1日
(62)【分割の表示】特願2017-512799(P2017-512799)の分割
【原出願日】2015年9月3日
(65)【公開番号】特開2020-125347(P2020-125347A)
(43)【公開日】2020年8月20日
【審査請求日】2020年6月1日
(31)【優先権主張番号】62/046,340
(32)【優先日】2014年9月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/843,076
(32)【優先日】2015年9月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ハイユー
(72)【発明者】
【氏名】トゥン,シュー・スン
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0324345(US,A1)
【文献】 特表2010−532762(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/049742(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/25
C07C 21/18
B01J 27/138
B01J 23/42
B01J 23/46
B01J 23/44
B01J 27/12
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1種類以上の金属ハロゲン化物;(ii)1種類以上のハロゲン化金属酸化物;(iii)1種類以上の0価の金属又は金属合金;(iv)これらの組合せ;からなる群から選択される触媒の存在下で1,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン(HCFC−123a)を脱塩化水素化して、CFO−1113を含む反応生成物を生成させる;
ことを含む、クロロトリフルオロエチレン(CFO−1113)の製造方法。
【請求項2】
HCFC−123aの転化率が少なくとも重量%であり、クロロトリフルオロエチレンへの選択率が少なくとも70重量%であり、反応生成物は10重量%未満のCFO−1112を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脱塩化水素化工程の相当部分を480℃〜550℃の温度において行う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
触媒が少なくとも1種類の金属ハロゲン化物を含み、成分の金属は、Cr3+、Fe3+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Pd2+、Li、Na、K、及びCsからなる群から選択され、成分のハロゲンは、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
触媒が、MgFと、CsCl、LiCl、NaCl、KCl、LiF、NaF、KF、及び/又はCsFの1以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
触媒が、フッ素化又は塩素化MgO、フッ素化又は塩素化CaO、フッ素化又は塩素化LiO、フッ素化又は塩素化NaO、フッ素化又は塩素化KO、及びフッ素化又は塩素化CsOからなる群から選択される少なくとも1種類のハロゲン化金属酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
触媒が、0価の金属、0価の金属合金、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
0価の金属又は0価の金属合金が、場合によっては担持されており、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、Os、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cr、Mn、及び組合せからなる群から選択される少なくとも1種類の金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
0価の金属又は0価の金属合金が、MgO上に担持されているPd、Pt、Ru、Rh、及び/又はIrの1以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
0価の金属合金が、ステンレススチール合金、モネル合金、インコネル合金、ハステロイ合金、インコロイ合金、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2014年9月4日出願の米国出願62/046,340(下記に完全に示すようにその全部を参照として本明細書中に包含する)に関連し、その優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、少なくとも部分的に、1,2-ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン
(HCFC−123a)からクロロトリフルオロエチレン(CFO−1113)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
1-クロロ−1,2,2−トリフルオロエチレン(クロロトリフルオロエチレン(CT
FE)又はCFO−1113とも命名されている)は、極低温用途において冷媒として通常的に用いられている。CFO−1113は炭素−炭素二重結合を有しており、したがって重合してポリクロロトリフルオロエチレンを形成するか、又は共重合してプラスチックECTFEを製造することができる。クロロトリフルオロエチレン(CFO−1113)は、現在は、溶媒としてメタノールの存在下において亜鉛と反応させることにより1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン(CFC−113)を脱塩素化することによって商業的に製造されている。このプロセスに関する主要な欠点は、主要副生成物として1,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン(HCFC−123a)が形成され、これによってCFO−1113の収量が大きく減少し、同時に廃棄するのが高コストであることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人らは、HCFC−123aを、具体的にはCFO−1112などのより有用な生成物に転化させることができる方法を開発することが望ましいであろうことを認識するに至った。本出願人によって意図されるHCFC−123aからCFO−1113を製造するための1つの経路は、液相反応において苛性溶液の存在下、或いはより好ましくは蒸気相反応において固体触媒の存在下のいずれかにおけるその脱塩化水素化によるものである。幾つかの蒸気相プロセスに関連する可能性がある1つの潜在的な問題は、競合する脱フッ化水素化反応によって形成される可能性がある1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレン(CFO−1112)のトランス−及び/又はシス−異性体のような副生成物が形成されることである。相当量のこれらの副生成物が形成されることにより、所望のCFO−1112生成物の収量が減少する可能性があり、生成物の分離に関する更なる要件のためにプロセス効率に悪影響が与えられる可能性がある。したがって、本出願人らは、望ましくない脱フッ化水素化反応の程度を減少又は抑制し、所望のフッ素化オレフィン、即ちCFO−1113の生産性及び収量を増加させることができる触媒系を含むプロセス及びシステムを開発することが有利であろうことを認識するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
幾つかの非限定的な形態においては、本発明は、1,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン(HCFC−123a)からクロロトリフルオロエチレン(CFO−1113)を製造する方法を提供する。幾つかの態様においては、本方法は、(i)1種類以上の金属ハロゲン化物;(ii)1種類以上のハロゲン化金属酸化物;(iii)1種類以上の0価の金属又は金属合金;及び(iv)これらの組合せ;からなる群から選択される触媒の存在下で1,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン(HCFC−123a)を脱塩化水素化することを含む。この反応は概略的に次のように示すことができる
【0006】
【化1】
【0007】
好ましくは、本方法は、少なくとも約5重量%、より好ましくは幾つかの態様においては少なくとも約10重量%、更により好ましくは幾つかの態様においては少なくとも約15重量%であるHCFC−123aの転化率を与える。ここで言及する好ましい転化率のそれぞれにしたがうことを含む幾つかの好ましい態様においては、本方法のクロロトリフルオロエチレンへの選択率は、少なくとも約70重量%、より好ましくは幾つかの態様においては少なくとも約80重量%、更により好ましくは幾つかの態様においては少なくとも約90重量%である。
【0008】
脱塩化水素化工程の反応生成物流は、即ち蒸留又は精製の前においては、幾つかの態様においては、好ましくは約10重量%未満の有機副生成物不純物、より好ましくは幾つかの態様においては約7重量%未満の有機副生成物不純物、更により好ましくは幾つかの態様においては約5%未満の有機副生成物不純物を含む。幾つかの態様においては、蒸留又は精製の前における反応生成物流は、好ましくは約10重量%未満の有機副生成物不純物のCFO−1112、より好ましくは幾つかの態様においては約7重量%未満のCFO−1112、更により好ましくは幾つかの態様においては約5重量%未満のCFO−1112を含む。ここで用いる「有機副生成物不純物」という用語は、HCFC−123aなどの出発反応物質以外の有機生成物を意味するが、HCl又はHFのような副生成物の酸ガスは包含しない。
【0009】
脱塩化水素化工程は、所望のCFO−1113生成物を生成させ、好ましくはここで議論する有利性の1以上をもたらす、温度、圧力、及び反応時間の条件などの反応条件下で行うことができる。幾つかの好ましい態様においては、本方法は、約400℃より高く、より好ましくは幾つかの態様においては約425℃より高く、更により好ましくは幾つかの態様においては約450℃より高い温度において脱塩化水素化を行うことを含む。幾つかの形態においては、脱塩化水素化反応の少なくとも相当部分、好ましくは幾つかの態様においては脱塩化水素化反応の実質的に全体は、約400℃〜約550℃の温度範囲内、より好ましくは幾つかの態様においては約425℃〜約550℃の温度範囲内、更により好ましくは幾つかの態様においては約480℃〜約550℃の温度範囲内で行う。幾つかの好ましい態様においては、脱塩化水素化反応の少なくとも相当部分、好ましくは幾つかの態様においては脱塩化水素化反応の実質的に全体は、約480℃〜約525℃の温度範囲内で行う。
【0010】
幾つかの好ましい態様においては、触媒は、1価の金属ハロゲン化物、2価の金属ハロゲン化物、3価の金属ハロゲン化物、又はこれらの組合せを含む。触媒は担持又は非担持であってよいが、幾つかの態様においては担持触媒系が好ましい。かかる好ましい態様における成分の金属としては、Cr3+、Fe3+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Pd2+、Li、Na、K、及びCsの1以上を挙げることができる。成分のハロゲンとしては、F、Cl、Br、及びIの1以上を挙げることができる。かかる触媒の非限定的な例としては、LiF、NaF、KF、CsF、MgF、CaF、LiCl、NaCl、KCl、及びCsClの1以上が挙げられる。幾つかの態様においては、触媒は、場合によっては担持されている、MgFと、CsCl、LiCl、NaCl、KCl、LiF、NaF、KF、及び/又はCsFの1以上の組合せを含む。上記の組合せの幾つかの好ましい態様においては、CsCl、LiCl、NaCl、K
Cl、LiF、NaF、KF、及び/又はCsFの1以上は、MgFと組合せた触媒の全重量を基準として約5.0重量%〜約50重量%の量で存在する。
【0011】
更なる態様においては、触媒には、場合によっては置換されているハロゲン化1価金属酸化物、ハロゲン化2価金属酸化物、ハロゲン化3価金属酸化物、又はこれらの組合せの1以上を含めることができる。かかる態様においては、成分の金属としては、Cr3+、Fe3+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Pd2+、Li、Na、K、及びCsの1以上を挙げることができる。かかる触媒の非限定的な例としては、フッ素化又は塩素化MgO、フッ素化又は塩素化CaO、フッ素化又は塩素化LiO、フッ素化又は塩素化NaO、フッ素化又は塩素化KO、及びフッ素化又は塩素化CsOからなる群から選択される少なくとも1種類の場合によっては担持されているハロゲン化金属酸化物が挙げられる。幾つかの形態においては、触媒としては、場合によって担持されているフッ素化MgOと、フッ素化CsO、フッ素化LiO、フッ素化NaO、及び/又はフッ素化KOの1以上の組み合わせが挙げられる。かかる組合せの幾つかの形態においては、フッ素化CsO、フッ素化LiO、フッ素化NaO、及び/又はフッ素化KOの1以上は、MgOと組合せた触媒の全重量を基準として約5.0重量%〜約50重量%の量で存在させることができる。
【0012】
更なる態様においては、触媒は、場合によって担持されている0価の金属、0価の金属合金、又はこれらの組合せを含む。かかる態様においては、成分の金属としては、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、Os、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cr、及びMnの1以上を挙げることができる。0価の金属合金としては、ステンレススチール合金、モネル合金、インコネル合金、ハステロイ合金、インコロイ合金、及びこれらの組合せの1以上を挙げることができる。触媒担体としては、MgO、フッ素化MgO、MgF、活性炭及びカーボンモレキュラーシーブのような炭素材料、並びにα−Alを挙げることができるが、これらに限定されない。幾つかの好ましい態様においては、0価の金属又は0価の金属合金は、MgO上に担持されているPd、Pt、Ru、Rh、及び/又はIrの1以上を含む。かかる好ましい組合せの幾つかの好ましい態様においては、Pd、Pt、Ru、Rh、及び/又はIrの1以上は、MgOと組合せた触媒の全重量を基準として約0.05〜約5重量%の量で存在させることができる。更なる態様においては、触媒は反応器の壁内に含まれる0価の金属合金である。
【0013】
更なる態様及び有利性は、ここに与える開示事項に基づいて当業者に容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明においては、触媒の存在下で1,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン(HCFC−123a)を脱塩化水素化して、クロロトリフルオロエチレン(CFO−1113)を含む生成物を形成する。
【0015】
本発明方法においては、触媒は、好ましくは、ここに記載する1以上の好ましい態様にしたがってHCFC−123aのCFO−1113への選択率及び/又は転化率を達成するように選択される。本発明方法は、好ましくはここに記載する触媒を用いる。これは、かかる触媒は、特に及び好ましくはここに規定する他の反応条件下で、1つ又は複数の脱フッ化水素化副反応などの競合反応に関するよりも脱塩化水素化反応に関する有利な選択率を与えることができることを本出願人らが見出したからである。
【0016】
本発明において特に有用であることを本出願人らが見出した3つの好ましい種類の触媒:(i)金属ハロゲン化物、(ii)ハロゲン化金属酸化物、及び(iii)0価の金属/金属合金が存在する。
【0017】
触媒の第1のクラスは金属ハロゲン化物である。幾つかの好ましい態様においては、金属ハロゲン化物としては、1価、2価、及び3価の金属ハロゲン化物、並びにそれらの混合物/組合せ、幾つかのより好ましい態様においては、1価及び2価の金属ハロゲン化物、並びにそれらの混合物/組合せが挙げられる。成分の金属としては、Cr3+、Fe3+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Pd2+、Li、Na、K、及びCsが挙げられるが、これらに限定されない。成分のハロゲンとしては、F、Cl、Br、及びIが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい1価又は2価の金属ハロゲン化物の例としては、LiF、NaF、KF、CsF、MgF、CaF、LiCl、NaCl、KCl、及びCsClが挙げられるが、これらに限定されない。触媒は、例えばここで議論する触媒担体の1つ又は組合せによって担持されていても、非担持であってもよい。幾つかの態様においては、触媒は、MgFと、CsCl、LiCl、NaCl、KCl、LiF、NaF、KF、及び/又はCsFの1以上の組合せである。かかる態様の幾つかの形態においては、CsCl、LiCl、NaCl、KCl、LiF、NaF、KF、及び/又はCsFは、触媒の全重量を基準として約5.0重量%〜約50重量%の量で存在する。
【0018】
触媒の第2のクラスはハロゲン化金属酸化物である。幾つかの好ましい態様においては、ハロゲン化金属酸化物としては、ハロゲン化されている1価、2価、及び3価の金属酸化物、並びにそれらの混合物/組合せ、幾つかのより好ましい態様においては、ハロゲン化されている1価及び2価の金属酸化物、並びにそれらの混合物/組合せが挙げられる。成分の金属としては、Cr3+、Fe3+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Pd2+、Li、Na、K、及びCsが挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化処理としては、従来技術において公知の任意のもの、特にハロゲン化源物質としてHF、F、HCl、Cl、HBr、Br、HI、及びIを用いるものを挙げることができる。好ましいハロゲン化されている1価及び2価金属酸化物の例としては、フッ素化又は塩素化MgO、フッ素化又は塩素化CaO、フッ素化又は塩素化LiO、フッ素化又は塩素化NaO、フッ素化又は塩素化KO、及びフッ素化又は塩素化CsOが挙げられるが、これらに限定されない。触媒は、例えばここで議論する触媒担体の1つ又は組合せによって担持されていても、非担持であってもよい。幾つかの態様においては、触媒は、フッ素化MgOと、フッ素化CsO、フッ素化LiO、フッ素化NaO、及び/又はフッ素化KOの1以上の組み合わせを含む。かかる態様の幾つかの形態においては、フッ素化CsO、フッ素化LiO、フッ素化NaO、及び/又はフッ素化KOは、触媒の全重量を基準として約5.0〜約50重量%の量で存在する。
【0019】
触媒の第3のクラスは、中性(即ち0価)の金属、金属合金、及びそれらの混合物である。0価の金属としては、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、Os、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cr、Mn、及び合金又は混合物としての上記の組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。触媒は担持又は非担持であってよい。有用な担体としては、MgO、フッ素化MgO、MgF、活性炭及びカーボンモレキュラーシーブのような炭素材料、α−Alが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの態様においては、触媒は、MgOと、Pd、Pt、Ru、Rh、及び/又はIrの1以上の組合せを含む。かかる態様の幾つかの形態においては、Pd、Pt、Ru、Rh、及び/又はIrは、触媒の全重量を基準として約0.05〜約5重量%の量で存在する。
【0020】
金属合金の非限定的な例としては、ステンレススチール合金(304、316、316L等)、モネル合金(400、401、404等)、インコネル合金(600、617、625、718等)、ハステロイ合金(B−2、C−4、C−22、C−276等)、及びインコロイ合金(800、825等)が挙げられる。幾つかの好ましい態様においては、金属合金触媒はインコネル合金である。幾つかの好ましい態様においては、触媒はイン
コネル625合金である。1つの好ましい態様においては、金属合金反応容器の表面、好ましい態様においては容器の内表面を、HCFC−123aの脱塩化水素化のための触媒として機能させることができる。
【0021】
CFO−1113に加えて、反応生成物混合物はまた、未転化のHCFC−123a及び塩化水素も有する可能性がある。幾つかの形態においては、最終反応生成物は、蒸留又は精製の前において、最終生成物の全重量を基準として約10重量%未満の有機副生成物不純物、約7重量%未満の有機副生成物不純物、又は約5重量%未満の有機副生成物不純物を含む。かかる有機副生成物不純物としては、HCFC−123aを転化させる能力、及び/又は特に下記においてより詳細に議論するレベルのクロロトリフルオロエチレン(CFO−1113)の生成(例えばその選択率)を抑制する任意の1種類以上の化合物を挙げることができる。一態様においては、かかる有機副生成物不純物としては、CFO−1112異性体(例えば、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレン)、HFO−1123(1,1,2−トリフルオロエテン)、CFC−13(クロロトリフルオロメタン)、CFC−12(ジクロロジフルオロメタン)、及びG−124異性体(2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン)が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの好ましい態様においては、有機副生成物不純物としては、CFO−1112異性体、特に1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレンが挙げられる。
【0022】
幾つかの好ましい態様によれば、反応生成物流は、蒸留又は精製の前において、反応生成物流中の成分の合計重量を基準として約10重量%未満のCFO−1112、より好ましくは約7重量%未満のCFO−1112、更により好ましくは約5重量%未満のCFO−1112を含む。幾つかの好ましい態様においては、本発明の反応は、有機副生成物不純物、好ましくは幾つかの態様においてはCFO−1112の量を、精製又は蒸留の前に、ここに開示する好ましい反応条件のそれぞれの外側にある反応条件によって生成する不純物の量と比べて減少させることを確保するのに有効な条件下で行う。
【0023】
CFO−113に関する大きく増大又は向上した選択率は、予期しなかったが、本発明の好ましい形態の非常に有利な特徴である。脱塩化水素化反応は、幾つかの好ましい態様においては、好ましくは、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90%の選択率を得るのに有効な条件下で行う。脱塩化水素化反応は、幾つかの好ましい態様においては、好ましくは、少なくとも約5%、より好ましくは少なくとも約10%、更により好ましくは少なくとも約15%の転化率を得るのに有効な条件下で行う。幾つかの非常に好ましい態様においては、脱塩化水素化反応は、ここに記載する好ましい形態の任意の1つにしたがう選択率及び転化率を同時に得るのに有効な条件下で行う。
【0024】
脱塩化水素化工程は、ここで議論する生成物、及び好ましくは有利性をもたらす任意の温度及び圧力において行うことができる。幾つかの形態においては、脱塩化水素化は、約200℃〜約800℃、幾つかの態様においては約300℃〜約600℃の温度範囲において行うことができる。幾つかの態様においては、この温度は、約400℃以上、約425℃以上、又は約450℃以上である。更なる態様においては、この温度は、触媒の存在下において約425℃〜約525℃の範囲内である。幾つかの形態においては、脱塩化水素化工程は約425℃〜約550℃の温度範囲内で行う。更なる形態においては、脱塩化水素化工程は約480℃〜約550℃の温度範囲内で行い、更なる形態においては、脱塩化水素化工程は約480℃〜約525℃の温度範囲内で行う。
【0025】
大気圧以上、大気圧、及び大気圧以下のような種々の反応圧力を用いることができることが意図される。いくつかの形態においては、大気圧が好ましい。
脱塩化水素化は、場合によっては酸化剤の存在下又は不存在下で行うことができる。酸
化剤の有用な例としては酸素及び二酸化炭素が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤を用いることによって、触媒の寿命を延ばすことができる。酸化剤は純粋であってよく、或いは反応器中に導入する前に窒素のような不活性ガスで希釈することができる。酸化剤のレベルは、一般に、有機供給材料の体積を基準として約1体積%〜約10体積%、好ましくは約2体積%〜5体積%である。
【0026】
また、触媒を長時間の使用後に反応器内に配置したままで周期的に再生することも有利である可能性がある。触媒の再生は、当該技術において公知の任意の手段によって達成することができる。1つの方法は、約200℃〜約600℃(幾つかの好ましい態様においては約350℃〜約450℃)の温度において、約0.5時間〜約3日間、触媒上に酸素又は窒素で希釈した酸素を流し、次に、ハロゲン化金属酸化物触媒及び金属ハロゲン化物触媒に関しては約25℃〜約400℃(幾つかの好ましい態様においては約200℃〜約350℃)の温度におけるハロゲン化処理、或いは金属触媒に関しては約100℃〜約600℃(好ましくは約200℃〜約350℃)の温度における還元処理のいずれかを行うことによるものである。
【0027】
脱塩化水素化は、好ましくは耐腐食性の反応容器内で行う。耐腐食性材料の例は、ハステロイ、インコネル、モネル、及びフルオロポリマーライニングである。容器は、固定及び/又は流動触媒床を有していてよい。所望の場合には、運転中において窒素又はアルゴンのような不活性ガスを反応器内で用いることができる。
【実施例】
【0028】
下記は本発明の実施例であり、限定と解釈すべきではない。
実施例1:
約40mLの10%CsCl/MgF触媒を、3/4インチ×0.035インチの管状インコネル625反応器中に充填した。反応器を、電気式3区画分割炉の中央部内に設置した。反応器の内部及び触媒床内に配置した多点式熱電対を用いてプロセス温度を記録した。反応器を、まず窒素流中で所望の温度に加熱し、次に純度94.6%のHCFC−123aを含む流れを、垂直に設置した反応器の底部中に12g/時の供給速度で供給して反応を開始させた。反応器圧力は1気圧に設定した。反応器流出流を周期的にサンプリングし、GC−MS及びGCによってその組成に関して分析して、原材料の転化率レベル及び生成物の選択率を求めた。
【0029】
表1に示すように、HCFC−123aの転化率及びCFO−1113の選択率は両方とも、10%CsCl/MgF触媒上で温度を上昇させると増加した。500℃においては、HCFC−123aの転化率及びCFO−1113の選択率は、それぞれ平均で16.2及び96.7%であった。比較として、空のインコネル625反応器は、同じ500℃において、約6%の転化率及び約94%のCFO−1113の選択率を与えた。
【0030】
【表1】
【0031】
次の触媒:10%LiCl/MgF、10%NaCl/MgF、10%KCl/MgF、10%LiF/MgF、10%NaF/MgF、10%KF/MgF、及び10%CsF/MgFを用いて、上記の実験プロトコルを実施した。480℃以上においては、これらの触媒のそれぞれは、10%CsCl/MgF触媒と実質的に同等の転化率及び選択率(%)を示し、同様の不純物レベルを示した。
【0032】
実施例2:
HCFC−123aの脱塩化水素化のために、約40mLのフッ素化15重量%CsO/MgO触媒を、実施例1に記載したものと同じ3/4インチ×0.035インチの管状インコネル625反応器中に装填した。反応器を窒素流中で480℃に加熱した。温度が安定した後、純度94.6%のHCFC−123a供給材料を、12グラム/時(g/時)の速度で触媒床に通した。反応器圧力は1気圧に設定した。表2に示すように、15重量%CsO/MgO触媒によって、平均で約15%のHCFC−123aの転化率及び約95%のCFO−1113の選択率が与えられた。
【0033】
【表2】
【0034】
次の触媒:フッ素化15重量%LiO/MgO、フッ素化15重量%NaO/MgO、及びフッ素化15重量%KO/MgOを用いて、上記の実験プロトコルを実施した。480℃以上においては、これらの触媒のそれぞれは、フッ素化15重量%CsO/MgOと実質的に同等の転化率及び選択率(%)を示し、同様の不純物レベルを示した。
【0035】
実施例3:
HCFC−123aの脱塩化水素化のために、約40mLの1重量%Pd/MgO触媒を、実施例1に記載したものと同じ3/4インチ×0.035インチの管状インコネル625反応器中に装填した。反応器を窒素流中で450℃に加熱した。温度が安定した後、純度94.6%のHCFC−123a供給材料を、12グラム/時(g/時)の速度で触媒床に通した。反応器圧力は1気圧に設定した。表3に示すように、1重量%Pd/MgO触媒によって、約10%のHCFC−123aの転化率及び約97%のCFO−1113の選択率が与えられた。
【0036】
【表3】
【0037】
次の触媒:1重量%Pt/MgO、1重量%Ru/MgO、1重量%Rh/MgO、及び1重量%Ir/MgOを用いて、上記の実験プロトコルを実施した。450℃以上においては、これらの触媒のそれぞれは、1重量%Pd/MgOと実質的に同等の転化率及び選択率(%)を示し、同様の不純物レベルを示した。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
(i)1種類以上の金属ハロゲン化物;(ii)1種類以上のハロゲン化金属酸化物;(iii)1種類以上の0価の金属又は金属合金;(iv)これらの組合せ;からなる群から選択される触媒の存在下で1,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン(HCFC−123a)を脱塩化水素化して、CFO−1113を含む反応生成物を生成させる;
ことを含む、クロロトリフルオロエチレン(CFO−1113)の製造方法。
[2]
HCFC−123aの転化率が少なくとも約5重量%であり、クロロトリフルオロエチレンへの選択率が少なくとも約70重量%であり、反応生成物は約10重量%未満のCFO−1112を含む、[1]に記載の方法。
[3]
脱塩化水素化工程の相当部分を約480℃〜約550℃の温度において行う、[2]に記載の方法。
[4]
触媒が少なくとも1種類の金属ハロゲン化物を含み、成分の金属は、Cr3+、Fe3+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Pd2+、Li、Na、K、及びCsからなる群から選択され、成分のハロゲンは、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[5]
触媒が、MgFと、CsCl、LiCl、NaCl、KCl、LiF、NaF、KF、及び/又はCsFの1以上を含む、[1]に記載の方法。
[6]
触媒が、フッ素化又は塩素化MgO、フッ素化又は塩素化CaO、フッ素化又は塩素化LiO、フッ素化又は塩素化NaO、フッ素化又は塩素化KO、及びフッ素化又は塩素化CsOからなる群から選択される少なくとも1種類のハロゲン化金属酸化物を含む、[1]に記載の方法。
[7]
触媒が、0価の金属、0価の金属合金、又はこれらの組合せを含む、[1]に記載の方法。
[8]
0価の金属又は0価の金属合金が、場合によっては担持されており、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、Os、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cr、Mn、及び組合せからなる群から選択される少なくとも1種類の金属を含む、[1]に記載の方法。
[9]
0価の金属又は0価の金属合金が、MgO上に担持されているPd、Pt、Ru、Rh、及び/又はIrの1以上を含む、[1]に記載の方法。
[10]
0価の金属合金が、ステンレススチール合金、モネル合金、インコネル合金、ハステロイ合金、インコロイ合金、及びこれらの組合せからなる群から選択される、[1]に記載の方法。