特許第6965465号(P6965465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965465
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】積層鉄心及び積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20211028BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20211028BHJP
   H02K 1/28 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   H02K1/18 C
   H02K15/02 F
   H02K1/28 D
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-562464(P2020-562464)
(86)(22)【出願日】2019年12月26日
(86)【国際出願番号】JP2019051312
(87)【国際公開番号】WO2020138372
(87)【国際公開日】20200702
【審査請求日】2020年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2018-248037(P2018-248037)
(32)【優先日】2018年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 修司
(72)【発明者】
【氏名】陣 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】関 和明
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 健太
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6633171(JP,B1)
【文献】 特開2017−108578(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/170523(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/090137(WO,A1)
【文献】 特開2010−011645(JP,A)
【文献】 特開2017−169296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 15/02
H02K 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性を有する円弧状鉄心片を環状に並べた環状鉄心片と、
積層された複数の前記環状鉄心片により形成された積層鉄心本体と、
前記積層鉄心本体の周面に対する凹みであって、前記環状鉄心片の積層方向に沿って形成された溝部と、
前記溝部において、前記積層方向に沿って全ての前記環状鉄心片に対して設けられた第一溶接部と、
前記第一溶接部が設けられている前記溝部において前記第一溶接部と前記環状鉄心片の周方向で隣接し、かつ最外層の前記環状鉄心片を含む一部の前記環状鉄心片に対して設けられ、積層方向内側に延びる第二溶接部と、
を有する積層鉄心。
【請求項2】
前記第二溶接部は、積層方向内側の端部に向かうにつれて先細りとなっている請求項1に記載の積層鉄心。
【請求項3】
前記第二溶接部は、積層方向外側の端部が前記積層鉄心本体の積層方向外側の端面と同じ位置又は前記端面より積層方向内側に位置している請求項1又は2に記載の積層鉄心。
【請求項4】
前記第二溶接部は、前記積層鉄心本体の径方向の端部が前記積層鉄心本体の前記第二溶接部が設けられた側の周面に接する円と同じ位置又は前記円より前記積層鉄心本体の内部側に位置している請求項1〜3の何れか1項に記載の積層鉄心。
【請求項5】
磁性を有する円弧状鉄心片を環状に並べて環状鉄心片を形成しつつ、複数の前記環状鉄心片を積層させて積層鉄心本体を形成する積層工程と、
前記積層鉄心本体の周面に対する凹みであって、前記環状鉄心片の積層方向に沿って形成された溝部において、前記積層方向に沿って全ての前記環状鉄心片に対して溶接を行う第一溶接工程と、
前記第一溶接工程を行った前記溝部における前記第一溶接工程の溶接位置との前記環状鉄心片の周方向に対する隣接位置において、最外層の前記環状鉄心片を含む一部の前記環状鉄心片に対し、積層方向外側から積層方向内側に向けて溶接を行う第二溶接工程と、
を有する積層鉄心の製造方法。
【請求項6】
前記第二溶接工程では、積層方向内側に向けて溶接入熱量を減少させる請求項5に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項7】
前記第二溶接工程では、前記積層鉄心本体に対して入熱方向を積層方向から斜めに傾けた請求項5又は6に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項8】
前記第二溶接工程は、積層方向両側のうち一方の最外層の前記環状鉄心片に対して行われ、
積層方向に対して前記積層鉄心本体を反転させた後、積層方向両側のうち他方の最外層の前記環状鉄心片に対して前記第二溶接工程を行う請求項5〜7の何れか1項に記載の積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心及び積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015−208066号公報には、環状に並ぶ複数の円弧状鉄心片からなる環状鉄心片が、周方向に位相をずらして積層され、積層方向に沿って溶接されることにより形成された積層鉄心が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の如き積層鉄心において、最外層の環状鉄心片は、中間層の環状鉄心片と異なり、片側の層としか接合されていないため、中間層の環状鉄心片と比較して溶接による接合強度が半分となる。
【0004】
そして、このような積層鉄心をモータの回転子又は固定子に使用すると、使用環境によっては最外層の環状鉄心片が積層鉄心の本体からずれたり離脱したりする場合がある。そこで、最外層の環状鉄心片に対して追加の溶接を施すことが考えられるが、この場合、溶接の方法によっては積層鉄心の本体から溶接部が突出する場合がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、溶接部を突出させることなく、鉄心片のずれや離脱を抑制する積層鉄心を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る積層鉄心は、磁性を有する円弧状鉄心片を環状に並べた環状鉄心片と、積層された複数の前記環状鉄心片により形成された積層鉄心本体と、前記積層鉄心本体に対し、前記環状鉄心片の積層方向に沿って設けられた第一溶接部と、最外層の前記環状鉄心片を含む一部の前記環状鉄心片に対して設けられ、積層方向内側に延びる第二溶接部と、を有している。
【0007】
第1の態様に係る積層鉄心は、各層の環状鉄心片を一体に接合する第一溶接部と、最外層の環状鉄心片を含む一部の層の環状鉄心片を接合する第二溶接部と、を有している。ここで、第二溶接部は最外層の環状鉄心片から積層方向内側に向かって延びている。このように、第一溶接部に加えて第二溶接部を設けることで、積層鉄心本体において最外層の環状鉄心片の接合強度を増すことができる。また、第二溶接部が積層方向外側から積層方向内側にかけて形成されることで、積層鉄心本体の上面に第二溶接部が突出することが抑制される。以上、第1の態様によれば、溶接部を突出させることなく、最外層の環状鉄心片の接合強度が向上し、環状鉄心片のずれや離脱を抑制することができる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る積層鉄心では、前記第二溶接部は、積層方向内側の端部に向かうにつれて先細りとなっている。
【0009】
第2の態様に係る積層鉄心によれば、積層方向内側の端部に向かうにつれて先細りになるように第二溶接部を形成することで、積層鉄心本体の第二溶接部が設けられた周面から第二溶接部が突出することが抑制される。
【0010】
本発明の第3の態様に係る積層鉄心では、前記第二溶接部は、積層方向外側の端部が前記積層鉄心本体の積層方向外側の端面と同じ位置又は前記端面より積層方向内側に位置している。
【0011】
第3の態様に係る積層鉄心では、積層鉄心本体の積層方向において第二溶接部による突出箇所が生じないことから、積層鉄心本体からなる積層鉄心をロータシャフト等に組み付ける際の組み付け精度の低下を抑制しつつ、最外層の環状鉄心片の接合強度を向上させることができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る積層鉄心では、前記第二溶接部は、前記積層鉄心本体の径方向の端部が前記積層鉄心本体の前記第二溶接部が設けられた側の周面に接する円と同じ位置又は前記円より前記積層鉄心本体の内部側に位置している。
【0013】
第4の態様に係る積層鉄心では、積層鉄心本体の周面において第二溶接部による突出箇所が生じないことから、積層鉄心本体からなる積層鉄心をロータシャフト等に組み付ける際の組み付け精度の低下を抑制しつつ、最外層の環状鉄心片の接合強度を向上させることができる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る積層鉄心の製造方法は、磁性を有する円弧状鉄心片を環状に並べて環状鉄心片を形成しつつ、複数の前記環状鉄心片を積層させて積層鉄心本体を形成する積層工程と、前記積層鉄心本体に対し、前記環状鉄心片の積層方向に沿って溶接を行う第一溶接工程と、最外層の前記環状鉄心片を含む一部の前記環状鉄心片に対し、積層方向外側から積層方向内側に向けて溶接を行う第二溶接工程と、を有している。
【0015】
第5の態様に係る積層鉄心の製造方法は、各層の環状鉄心片を一体に接合する第一溶接工程と、最外層の環状鉄心片を含む一部の層の環状鉄心片を接合する第二溶接工程と、を有している。ここで、第二溶接工程においては最外層の環状鉄心片から積層方向内側に溶接を行っている。このように、第一溶接工程に加えて第二溶接工程を行うことで、積層鉄心本体において最外層の環状鉄心片の接合強度を増すことができる。また、第二溶接工程では積層方向外側から積層方向内側にかけて溶接部を形成するので、積層鉄心本体の上面に溶接部が突出することが抑制される。以上、第5の態様によれば、溶接部を突出させることなく、最外層の環状鉄心片の接合強度が向上し、環状鉄心片のずれや離脱を抑制することができる。
【0016】
本発明の第6の態様に係る積層鉄心の製造方法は、前記第二溶接工程では、積層方向内側に向けて溶接入熱量を減少させるものである。
【0017】
第6の態様に係る積層鉄心の製造方法によれば、第二溶接工程において、積層方向内側に向けて溶接入熱量が減少されるため、積層鉄心本体の溶接部が設けられた周面から溶接部が突出することが抑制される。
【0018】
本発明の第7の態様に係る積層鉄心の製造方法は、前記第二溶接工程では、前記積層鉄心本体に対して入熱方向を積層方向から斜めに傾けたものである。
【0019】
第7の態様に係る積層鉄心の製造方法では、溶接機の加工ヘッドを斜めに傾けるなどして入熱方向を斜めにして溶接を行うことで、次に溶接する部分を加熱しておくことができるため、溶接ビートを幅広にでき、溶接強度を向上させることができる。
【0020】
本発明の第8の態様に係る積層鉄心の製造方法では、前記第二溶接工程は、積層方向両側のうち一方の最外層の前記環状鉄心片に対して行われ、積層方向に対して前記積層鉄心本体を反転させた後、積層方向両側のうち他方の最外層の前記環状鉄心片に対して前記第二溶接工程を行うものである。
【0021】
第8の態様に係る積層鉄心の製造方法によれば、積層方向両側の最外層の環状鉄心片の接合強度を向上させて環状鉄心片のずれや離脱を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、溶接部を突出させることなく、鉄心片のずれや離脱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る積層鉄心の斜視図である。
図2】積層鉄心の部分的な構成を示す分解斜視図である。
図3A】円弧状鉄心片の溝部に設けられた溶接部を拡大して示す平面図である。
図3B】円弧状鉄心片の溝部に設けられた溶解用凸部を拡大して示す平面図である。
図4A】実施形態の第二溶接部の平面図である。
図4B】実施形態の第二溶接部の側面図である。
図4C】実施形態の第二溶接部における図4BのX−X断面図である。
図4D】実施形態の第二溶接部の底面図である。
図5】整列治具上に積層された積層鉄心本体を示す斜視図である。
図6】溶接工程において積層鉄心本体が溶接されている状況を示す斜視図である。
図7】溶接工程において積層鉄心本体が溶接されている状況を示す断面図である。
図8A】比較例の第二溶接部の平面図である。
図8B】比較例の第二溶接部の側面図である。
図8C】比較例の第二溶接部における図8BのY−Y断面図である。
図8D】比較例の第二溶接部の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る積層鉄心及びその製造方法について説明する。
【0025】
(積層鉄心の構成)
先ず、本実施形態に係る積層鉄心10について説明する。この積層鉄心10は、車両駆動用モータ(電動機)の回転子側に用いられる積層回転子鉄心であり、磁石付き回転子の構成要素である。図1に示されるように、この積層鉄心10は、4つに分割された円弧状鉄心片12(分割鉄心片)を環状に並べた環状鉄心片14を複数積層して構成された積層鉄心本体16が、複数の溶接部18によって一体化されることにより形成されている。
【0026】
本実施形態において各円弧状鉄心片12は、磁性鋼板製であって、円弧角θが90度に設定されている。各円弧状鉄心片12の外周側には、周方向に並ぶ複数(ここでは4つ)の円弧状の磁石装着部20(磁極片部)が形成されている。これらの磁石装着部20は、円弧角δが22.5度に設定されており、各磁石装着部20には、磁石を装着するための磁石装着孔22が形成されている。
【0027】
また、各円弧状鉄心片12の幅方向中間部(外周と内周との間の中間部)には、周方向に並ぶ複数(ここでは4つ)の円形のガイド孔24が形成されている。これらのガイド孔24は、複数の環状鉄心片14の積層時及び積層鉄心本体16の溶接時に用いられる整列治具62に設けられたガイドピン68(図5参照)を挿入するためのパイロット孔である。
【0028】
上記のガイド孔24および磁石装着部20は、円弧状鉄心片12を環状に並べて環状鉄心片14を構成した状態で、22.5度毎に配置されるように設けられており、上記のガイド孔24は、環状鉄心片14の周方向において磁石装着部20と同位相で設けられている。
【0029】
互いに重なる環状鉄心片14は、図2に示されるように、周方向の円弧状鉄心片12同士の繋ぎ目26が周方向に位相ずれされて、いわゆるレンガ積みに所定枚数積層されている。そして、本実施形態では、上記の位相ずれ角が、磁石装着部20の円弧角δと同じ22.5度に設定されている。
【0030】
22.5度の位相ずれを有して環状鉄心片14を積層すると、磁石装着部20およびガイド孔24が22.5度毎に配置されているため、磁石装着部20およびガイド孔24のそれぞれの位置が、環状鉄心片14の積層方向(以下、単に「積層方向」とする)に一致する。したがって、磁石装着部20およびガイド孔24は、積層鉄心本体16の積層方向一端側から積層方向他端側へ貫通する。
【0031】
図1に示されるように、上記の如く積層された複数の環状鉄心片14は複数の溶接部18により接合されている。複数の溶接部18は、ガイド孔24に対して磁石装着部20とは反対側の面、すなわち、積層鉄心本体16の内周側に設けられている。補足すると、この溶接部18は、各環状鉄心片14の内周側のガイド孔24に対応する位置に形成された溝部28に設けられている。溶接部18は、積層鉄心本体16に対し、積層方向に沿って設けられた線状の第一溶接部18Aと、最外層の環状鉄心片14を含む一部の環状鉄心片14に対して設けられ、積層方向内側に延びる線状の第二溶接部18Bと、を有している(図3A参照)。
【0032】
なお、溶接部18を設ける前の溝部28においては、複数の溶解用凸部30が突出形成されている。図3Bに示されるように、この溶解用凸部30は、上面視において溝部28の中央側に設けられた第一凸部30Aと、第一凸部30Aの周方向両側に設けられた第二凸部30Bと、を有している。第二凸部30Bは、平面視において第一凸部30Aに対して3〜4度程ずれた位置に形成されている。
【0033】
図1に示されるように、第一溶接部18Aは、積層鉄心本体16の内周側において、周方向に複数本並んで設けられている。本実施形態では、第一溶接部18Aは、積層鉄心本体16の磁極数と同数(ここでは16本)設けられている。すなわち、第一溶接部18Aは、積層鉄心本体16の内周側に22.5度毎に設けられている。第一溶接部18Aは、第一凸部30Aに対応する位置に設けられているが、この第一凸部30Aは第一溶接部18Aを形成する際、すなわち溶接時に溶解されている。第一溶接部18Aは、周方向に位相ずれした各層の円弧状鉄心片12を積層方向に沿って溶接(接合)している。
【0034】
第二溶接部18Bは、積層鉄心本体16の内周側において、第一溶接部18Aに隣接して設けられている。第二溶接部18Bは、積層鉄心本体16の積層方向両側(上部及び下部)において、それぞれ第一溶接部18Aと同数(ここでは16本)設けられている。すなわち、第二溶接部18Bは、上部及び下部において、それぞれ積層鉄心本体16の内周側に22.5度毎に設けられている。第二溶接部18Bは、第二凸部30Bに対応する位置に設けられているが、第二溶接部18Bに対応する第二凸部30Bは第二溶接部18Bを形成する際、すなわち溶接時に溶解されている。
【0035】
また、第二溶接部18Bは、積層鉄心本体16の上部においては、平面視で第一溶接部18Aに対して3〜4度程反時計回り方向に、積層鉄心本体16の下部においては、平面視で第一溶接部18Aに対して3〜4度程時計回り方向に設けられている。さらに、第二溶接部18Bは、積層鉄心本体16の上面から数mm程の長さを有しており、最外層の環状鉄心片14を含む複数枚(ここでは10枚前後)の環状鉄心片14を積層方向に沿って溶接(接合)している。
【0036】
図4A図4Dは、第二溶接部18Bを拡大した図である。本実施形態の第二溶接部18Bは、その溶接状態に以下の特徴を有している。すなわち、図4Bに示されるように、第二溶接部18Bは、積層方向内側である下方側の端部19Cに向かうにつれて先細りに形成されている。
【0037】
また、図4B及び図4Cに示されるように、第二溶接部18Bは、上方側の端部19Aが積層鉄心本体16における積層方向外側の端面(上面)より積層方向内側に位置している。つまり、第二溶接部18Bは、積層方向外側の端部19Aが積層鉄心本体16における積層方向外側の端面(上面)から突出しないように形成されている。
【0038】
さらに、図4A及び図4Dに示されるように、第二溶接部18Bは、平面視又は背面視において第二凸部30Bから突出していない。また、図3Aに示されるように、第二溶接部18Bは、積層鉄心本体16の径方向内側の端部19Bが、積層鉄心本体16の内周面32に接する円Sより積層鉄心本体16の内部側に位置している。つまり、第二溶接部18Bは、径方向内側の端部19Bが、積層鉄心本体16の内周面32に接する円Sから突出しないように形成されている。なお、本実施形態では、第一溶接部18Aも径方向内側の端部が、積層鉄心本体16の内周面32に接する円Sから突出しないように形成されている。
【0039】
(積層鉄心の製造方法)
次に、上記構成の積層鉄心10の製造方法について説明する。
【0040】
積層鉄心10の製造方法は、第1の工程であるプレス工程と、第2の工程である積層工程と、第3の工程である溶接工程と、第4の工程である検査工程とによって構成されている。
【0041】
プレス工程においては、帯状の磁性鋼板を、金型装置によりプレス加工することにより、複数の円弧状鉄心片12を一対の連結部で連結したキャリア付き単板(図示省略)を製造する。そして、製造したキャリア付き単板をリール(図示省略)に巻き回し、次工程の積層工程へと移行する。
【0042】
積層工程では、搬送されるキャリア付き単板から円弧状鉄心片12を順次切り離した後、切り離した円弧状鉄心片12を環状に並べて環状鉄心片14を形成しつつ、複数の環状鉄心片14を周方向に位相をずらして積層することにより積層鉄心本体16を製造する。具体的に、キャリア付き単板から切り離された円弧状鉄心片12は、電気式インデックス機(図示省略)の回転台上に着脱可能に取り付けられた整列治具62(図5参照)上に配置される。この整列治具62は、図5に示されるように、リング形の下板64と、当該下板64から上方へ突出した複数本(ここでは16本)のガイドピン68(パイロットピン)と、整列治具62から上方へ突出した複数本(ここでは8本)の支柱70とを備えている。なお、ガイドピン68及び支柱70の数は適宜変更可能である。
【0043】
16本のガイドピン68は、下板64の周方向に等間隔(22.5度の間隔)に並んでおり、下板64に強固に固定されている。また、8本の支柱70は、16本のガイドピン68よりも下板64の内周側で下板64の周方向に等間隔(45度の間隔)に並んでおり、下板64に強固に固定されている。なお、この整列治具62は、図6に示されるリング形の上板72を含んで構成されているが、積層工程では上板が取り外された状態で使用される。
【0044】
図5に示されるように、上記の整列治具62上に押し込まれた円弧状鉄心片12は、4つのガイド孔24にそれぞれガイドピン68が挿入された状態で整列治具62上に保持される。ここで、1枚の円弧状鉄心片12が整列治具62上に押し込まれる毎に整列治具62が図5の矢印A方向へ90度(円弧状鉄心片12の円弧角θ)回転される。この90度の回転が3回繰り返されることにより、一層の環状鉄心片14が完成する。次いで、整列治具62が円弧状鉄心片12の板厚分だけ下降されると共に、図5の矢印A方向へ22.5度(位相ずれ角δ)回転される。上記の処理が順次繰り返されることにより、複数の環状鉄心片14が周方向に位相をずらされて積層(回転積層)され、積層鉄心本体16が製造される。
【0045】
なお、積層鉄心本体16が製造されると、各環状鉄心片14では周方向において、第一凸部30A及び第二凸部30Bのそれぞれの位置が一致する。すなわち、第一凸部30A及び第二凸部30Bは、積層方向に並んだ状態となる。そして、製造された積層鉄心本体16は、整列治具62ごと回転台から取り外されて、次工程の溶接工程へと移行する。
【0046】
溶接工程では、積層鉄心本体16の内周側における周方向の複数の部位において、周方向に位相ずれした各層の円弧状鉄心片12を積層方向に沿って溶接する。まず、図6に示されるように、整列治具62に上板72が取り付けられる。この上板72は、例えばボルト締結によって8本の支柱70の上端に固定され、積層鉄心本体16を所定の厚さに保持する。あるいは例えば、上板72と下板64を8本の支柱70を間に挟んで上下に挟持する専用の挟持装置によって、積層鉄心本体16を所定の厚さに保持する。
【0047】
次いで、図6に示されるファイバーレーザー溶接機が備える回転台74上に整列治具62が取り付けられ、当該ファイバーレーザー溶接機によって上記の溶接が行われる(なお、図6において符号76が付された部材は、ファイバーレーザー溶接機の加工ヘッドとしてのトーチである)。ここで、溶接工程においては、第一溶接部18Aを形成する第一溶接工程と、第二溶接部18Bを形成する第二溶接工程とがある。
【0048】
第一溶接工程では、図7に示されるように、積層鉄心本体16に対してトーチ76を積層方向外側である上方側に45度傾けつつ、トーチ76を積層方向に沿って下方(矢印B方向)へ移動させて積層された各環状鉄心片14を溶接する。具体的に、第一溶接工程では、最上層の環状鉄心片14から最下層の環状鉄心片14に向けて積層方向に沿って配置される第一凸部30Aに対して溶接用レーザーを連続的又は断続的に照射する。これにより、レーザーが照射された第一凸部30Aは溶解し、線状の第一溶接部18Aが形成される。
【0049】
次に、回転台74を図6の矢印A方向へ22.5度(位相ずれ角δ)回転させて次の第一凸部30Aに対して溶接用レーザーを照射し、次の第一溶接部18Aを形成する。上記の処理が順次繰り返されることにより、積層鉄心本体16の内周側に16本の第一溶接部18Aが形成される。
【0050】
そして、第一溶接工程に続いて第二溶接工程が行われる。第二溶接工程では、図7に示されるように、第一溶接工程と同様に積層鉄心本体16に対してトーチ76を積層方向外側である上方側に45度傾けつつ、トーチ76を積層方向に沿って下方(矢印B方向)へ移動させて積層された複数層の環状鉄心片14を溶接する。具体的に、第二溶接工程では、環状鉄心片14における第二凸部30Bに対して積層方向外側から斜めに、詳しくは45度上方側から斜めに溶接用レーザーを照射する。この時、レーザーが照射される第二凸部30Bは、上面視において第一凸部30Aの反時計回り方向側の第二凸部30Bである。
【0051】
なお、本実施形態の第二溶接工程における入熱方向はレーザーの照射方向と一致しており、積層方向に対して斜めに傾いている。また、図7では積層鉄心本体16に対するトーチ76の方向がレーザーの照射方向、すなわち入熱方向と一致しているが、これに限らず、レーザーが積層方向から斜めに傾いて照射されていれば、トーチ76が積層方向から斜めに傾いていなくてもよい。
【0052】
そして、トーチ76を積層方向に沿って下方(矢印B方向)に数mm程移動させる。すなわち、最上層の環状鉄心片14から最下層の環状鉄心片14に向けて積層方向に沿って配置される第二凸部30Bの上端側の一部に対して溶接用レーザーを連続的または断続的に照射する。これにより、レーザーが照射された第二凸部30Bは溶解し、線状の第二溶接部18Bが形成される。なお、第二溶接工程においては、トーチ76を積層方向外側から積層方向内側に向けて下方に移動させるにつれて、溶接入熱量を減少させている。これにより、図4Bに示されるように、第二溶接部18Bは積層方向内側である下方側の端部19Cに向かうにつれて先細りとなる。
【0053】
次に、回転台74を図6の矢印A方向へ22.5度(位相ずれ角δ)回転させて次の第二凸部30Bに対して溶接用レーザーを照射し、次の第二溶接部18Bを形成する。上記の処理が順次繰り返されることにより、積層鉄心本体16の上部の内周側に16本の第二溶接部18Bが形成される。
【0054】
さらに、作業者は上板72と下板64とを分離して整列治具62から積層鉄心本体16を取出し、上下反転させた後、積層鉄心本体16を再び整列治具62に固定する。整列治具62に上板72が取り付けられた後、再度、第二溶接工程が実施される。つまり、積層鉄心本体16の上部(1度目の第二溶接工程においては下部)の内周側に16本の第二溶接部18Bが形成される(図1参照)。
【0055】
以上、第1溶接工程と、2度の第二溶接工程を経ることで、第一溶接部18A及び第二溶接部18Bが形成され、積層鉄心10が完成する。完成した積層鉄心は、次工程の検査工程において所定の検査を受ける。
【0056】
(作用効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0057】
本実施形態の積層鉄心10は、積層工程を経た後、第一溶接工程及び第二溶接工程によって環状鉄心片14が積層方向において接合される。ここで、第一溶接工程によって形成される第一溶接部18Aは、積層鉄心本体16に対し、積層方向に沿って設けられた線状の溶接部である。第一溶接部18Aは、各層の環状鉄心片14を一体に接合している。また、第二溶接工程によって形成される第二溶接部18Bは、最外層の環状鉄心片14を含む一部の環状鉄心片14に対して設けられ、積層方向内側に延びる線状の溶接部である。第二溶接部18Bは、最外層の環状鉄心片14を含む一部の層の環状鉄心片14を接合している。
【0058】
ここで、中間層の環状鉄心片14は、隣接する2つの層の環状鉄心片14に対してそれぞれ溶接されるが、最外層の環状鉄心片14は、隣接する片側の層の環状鉄心片14に対してのみ溶接される。したがって、第一溶接部18Aのみで積層鉄心本体16を形成し、この積層鉄心本体16からなる積層鉄心10をモータの回転子に使用した場合、次のような不具合が生じる場合がある。すなわち、使用環境によっては最外層の環状鉄心片14が積層鉄心本体16からずれたり離脱したりする場合がある。これに対し、本実施形態の第二溶接部18Bは、積層鉄心本体16において最外層の環状鉄心片14の接合強度を向上させることができる。
【0059】
また、第二溶接部18Bは、第二溶接工程において、積層方向外側から積層方向内側に向けてレーザー溶接を施すことにより、最外層の環状鉄心片14から積層方向内側に向けて延びている。ここで、図8A図8Dに比較例として、単一の箇所のみにレーザーを照射させるレーザースポット溶接による第二溶接部118Bを示す。図8B及び図8Cに示されるように、比較例の第二溶接部118Bは積層鉄心本体16の上面から突出している。これに対し、本実施形態では、第二溶接部18Bが積層方向外側から積層方向内側にかけて形成されることで、図4B及び図4Cに示されるように、積層鉄心本体16の上面から第二溶接部18Bが突出することが抑制される。以上、本実施形態によれば、溶接部を積層鉄心本体16の上面から突出させることなく、最外層の環状鉄心片14の接合強度が向上し、環状鉄心片14のずれや離脱を抑制することができる。
【0060】
また、第二溶接部18Bは、第二溶接工程において、トーチ76を積層方向内側である下方に移動させるにつれて溶接入熱量を減少させて形成している。ここで、トーチ76を移動させる際に溶接入熱量を変化させない場合、第二溶接部18Bでは下方側の端部に溶融部分が溜まるため、積層鉄心本体16の内周側に突出しやすい。本実施形態では、トーチ76を下方に移動させる際に溶接入熱量を減少させることにより、図4Bに示されるように、第二溶接部18Bは積層方向内側である下方側の端部19Cに向かうにつれて先細りとなる。このように形成された第二溶接部18Bは、図3Aに示されるように、径方向内側の端部19Bが積層鉄心本体16の内周側に突出しない。さらに第二溶接部18Bは、径方向内側の端部19Bが積層鉄心本体16の内周面32に接する円Sからから突出しない。
【0061】
そして、本実施形態では、追加の溶接部である第二溶接部18Bが、積層鉄心本体16の積層方向外側の面である上面や下面から突出せず、積層鉄心本体16の内周面32に接する円Sからから突出しないことで、次の効果を有している。すなわち、本実施形態によれば、積層鉄心本体16からなる積層鉄心10をロータシャフト等に組み付ける際の組み付け精度の低下を抑制しつつ、最外層の環状鉄心片14の接合強度を向上させることができる。
【0062】
さらに第二溶接工程では、積層鉄心本体16に対して溶接用のレーザーを積層方向外側から進行方向に向けて、本実施形態では45度上方側から斜めに照射することを特徴としている。入熱方向を溶接方向に向けることで、次に溶接する部分を加熱しておくことができるため、溶接ビートを幅広にでき、溶接強度を向上させることができる。さらに、図4Bに示されるように、溶接方向と重力方向とが同じ場合、溶接方向に沿って融解部分が流れ、融解から凝固までの時間が好適となるため溶接ビートの表面が滑らかになる。
【0063】
本実施形態では、溶接工程において、溶接方向外側の一方に第二溶接部18Bを形成後、積層鉄心本体16を反転させて、溶接方向外側の他方に第二溶接部18Bを形成することで、積層方向両側に第二溶接部18Bを設けることができる。これにより、最外層の環状鉄心片14の接合強度を向上させて環状鉄心片14のずれや離脱を抑制することができる。
【0064】
(実施形態の補足説明)
本実施形態では、図6に示されるように、積層方向が上下方向(重力方向)となるように積層鉄心本体16を整列治具62に固定してレーザー溶接を行ったが、これに限らず、積層方向を水平方向や斜め方向に設定して溶接してもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、複数層の環状鉄心片14を接合する方法としてレーザー溶接を用いたがこれに限らず、他の方法を用いてもよい。例えば、電子ビーム溶接、光ビーム溶接、アーク溶接等のレーザー溶接以外の方法を用いてもよい。ここで、電子ビーム溶接、光ビーム溶接等の溶接方法の場合は、トーチが加工ヘッドに相当し、入熱方向はビームの照射方向と一致する。また、アーク溶接等の溶接方法の場合は、電極棒が加工ヘッドに相当し、入熱方向はアークの放電方向と一致する。
【0066】
また、本実施形態では、16本の第一溶接部18Aを形成した後、16本の第二溶接部18Bを形成したが、これに限らず、積層鉄心本体16の上部においては、第一溶接部18Aと第二溶接部18Bとを交互に形成してもよい。
【0067】
また、本実施形態では、第二溶接部18Bは、積層鉄心本体16の上部においては、平面視で第一溶接部18Aに対して反時計回り方向に、積層鉄心本体16の下部においては、平面視で第一溶接部18Aに対して時計回り方向に設けられているがこの限りではない。例えば、第二溶接部18Bは、積層鉄心本体16の上部においては、平面視で第一溶接部18Aに対して時計回り方向に、積層鉄心本体16の下部においては、平面視で第一溶接部18Aに対して反時計回り方向に設けてもよい。また例えば、第二溶接部18Bは、積層鉄心本体16の上部及び下部共に、平面視で第一溶接部18Aに対して同じ方向に設けてもよい。さらに、第二溶接部18Bは、積層鉄心本体16の上部及び下部共に、平面視で第一溶接部18Aの両側に設ける、すなわち、本実施形態では32箇所に設けてもよい。なお、溶接工程を考慮すれば、第二溶接部18Bは、周方向において等角度で形成されている方が溶接工程を簡素化できる。
【0068】
また、本実施形態によれば、第一溶接部18A及び第二溶接部18Bがそれぞれ周方向において等角度に形成されることで、回転バランスの良い積層鉄心10を提供することができる。
【0069】
なお、各円弧状鉄心片12における溶接位置について考察した場合、第二溶接部18Bは周方向の外側である繋ぎ目26側(図1参照)に形成するとよい。なるべく外側に設けた方が、積層鉄心10に働く遠心力に対して接合強度を高めることができる。
【0070】
本実施形態では、一つの溝部28に対して、三つの溶解用凸部30(第一凸部30A、第二凸部30B)を設けたが、これに限らず、第一凸部30A及び第二凸部30B毎に溝部を設けてもよい。この場合、第一凸部30Aと第二凸部30Bとの距離が短いと溝部と溝部の間の突出部分が溶接により変形する等、脆弱部となることがある。のため、第一凸部30Aと第二凸部30Bとの距離が短い場合は、本実施形態のように一つの溝部28に第一凸部30A及び第二凸部30Bを突出形成することが望ましい。
【0071】
本実施形態では、積層鉄心本体16が16極とされた構成としたが、これに限らず、積層鉄心本体16の磁極数は適宜変更することができる。
【0072】
また、本実施形態では、積層鉄心本体16の磁極数と同数の溶接部18が設けられた構成にしたが、これに限らず、溶接部18の数は適宜変更することができる。例えば、積層鉄心本体16の磁極数の半数の溶接部を設けた構成にしてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、溶接部18と磁石装着部20とがガイド孔24を介して互いに反対側に設けられた構成にしたが、これに限らず、溶接部とガイド孔とが円弧状鉄心片の周方向にずれて設けられた構成にしてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、溶接部18が積層鉄心本体16の内周側に設けられた構成にしたが、これに限らず、溶接部が積層鉄心本体の外周側に設けられた構成にしてもよい。この場合、第一溶接部及び第二溶接部を含む溶接部は、径方向外側の端部が積層鉄心本体の外周面に接する円から突出しないように形成されている。
【0075】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【0076】
2018年12月28日に出願された日本国特許出願2018−248037の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D