(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、我々が使用する多くの装置や機器には、金属材料、プラスティック材料、ガラス材料、塗装された金属や樹脂材料など、様々な材質の部材が使用されており、これらの多くは、製品の外観を構成する部材表面の用途に適用されている。
例えば、金属材料であれば、金属表面が有する輝き、質感、感触などの外観品質を高めるため、鏡面仕上げされた平滑な金属、あるいは金属表面をエッチングや研磨等の方法で粗面化された金属、さらにはスパッタ等による着色を施した高級感に優れる金属が広く使用されている。
具体的には、例えば、建材、キッチン機器、オーディオ機器、車載用金属材、エレベーターのドア・操作パネル、医療機器、産業機器などに適用されている。
また、プラスティック材料であれば、軽量性、低コスト、強度、容易な成型性、透明性などの観点から、例えば、カバー、ボックス、容器、遮蔽板、電化製品、建材、キッチン機器、TV・IT機器、オーディオ機器、車用部品、産業機器など、幅広い分野の製品で適用されている。
【0003】
しかし、これらの製品の外観を構成する部材表面は、人々の様々な動作や操作に伴って油や指紋あるいは手垢等が付着しやすく、また指紋や手垢は白く、あるいは長い時間が経過すると黒くなって目立つために、外観の品質面で問題となる場合があった。例えば、製品の製造・出荷工程では、製品の組立時、出荷時、運搬時、納品時、据え付け時、検査・点検時などの動作を伴う作業中には、作業中に使用している機械油や工作油、防錆油、食用油などの油が手袋を介して部材表面に転写されたり、また素手で作業した場合には指紋あるいは手垢の付着がないように外観品質を損なわないよう細心の注意をしながら取り扱う必要があった。また、一般顧客が製品を使用したり、持ったり、操作するなどの際にも手についた油が転写しないようにしたり、指紋あるいは手垢の付着がないように同様に注意する必要があった。
【0004】
これらの油や指紋あるいは手垢等の汚れが、上述の製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した場合には、金属表面やプラスティック表面、ガラス表面、塗装された金属や樹脂材料表面などの凹部に油や指紋あるいは手垢等に含まれる成分が入り込んで固着し除去しづらくなるため、これらの汚れ成分を良く溶解し、さらに取り除くことを目的に、界面活性剤を多量に含む洗浄剤(ここでいう洗浄剤とは、本発明の溶解剤に相当するものである)や塩素系溶剤、アルコール溶剤やシンナーなどの炭化水素系溶剤を使用して拭き取る操作が必要となる。そのため、部材表面には、洗浄剤の多量な界面活性剤成分が残存したり、使用溶剤によるダメージによって、例えば、下地の部材が割れたり、白化したり、または色落ちなどの悪影響や、溶剤による臭気並びに毒性などによって物的・人的・環境的な負担が増加する課題があった。
【0005】
そこで、これまでに、金属部品等の表面の油、指紋の汚れを洗浄する洗浄剤として、例えば、レンズやウエハー表面の洗浄剤として、水酸化第四級アンモニウム塩と非イオン性界面活性剤及びアルカノールアミンを含む有機アルカリ水溶液組成物が提案されている(特許文献1)。
また、金属箔の洗浄剤として、同様に、水酸化第四級アンモニウム等の塩基性化合物と水及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの溶解度パラメーターδが8以上16以下の有機溶媒を含む組成物が提案されている(特許文献2)。
また、電子部品用の洗浄剤として、テトラブチルアンモニウムハイドライドとアルキレンオキシド付加物を含む組成物が提案されている(特許文献3)。
また、金属部品用の洗浄剤として、テトラn−ブチルアンモニウムハイドロオキサイドとグリセリン等を含む組成物が提案されている(特許文献4)。
さらに、金属部品等に付着した油等を除去する方法として、汚れ部分に洗浄剤を塗布して拭き取る方法が提案されている(特許文献5、6、7、8、9、10)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、製品の外観を構成する部材表面とは、例えば、上述した建材、キッチン機器、オーディオ機器のように、製品化された最終形態の表面を構成する金属材料、プラスティック材料、ガラス材料、塗装された金属や樹脂材料などの部材表面である。
また、本発明の溶解剤、及びそれを用いた除去方法の対象とは、具体的には、製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を対象物とし、あるいは、それらの対象物を成分ごとに分類する場合には、油成分や酸性物質以外の皮脂成分、酸性物質の皮脂成分、及び無機成分を対象成分とする。
具体的な対象物としては、油とは、作業や動作、操作などに伴い、使用中の、及び/又は使用した機械油や工作油、防錆油、食用油などの油が手袋の模様や指紋の模様で部材表面に転写されたものである。
また、指紋あるいは手垢とは、具体的には、作業や動作、操作などに伴い、手のひらなどから分泌される汗などが、指紋の模様で部材表面に転写されたものである。
一般に、汗に含まれる成分は、98%が水分であるものの、残りの2%には、乳酸、アミノ酸、尿酸、脂肪酸等の酸性物質の皮脂成分と酸性物質以外の皮脂成分が含まれ、さらに塩化ナトリウム、カリウム成分、カルシウム成分などの無機成分が含まれることが知られている。
このことから、油や指紋あるいは手垢の成分とは、械油や工作油、防錆油、食用油などの油成分や汗に含まれる酸性物質の皮脂成分と酸性物質以外の皮脂成分、及び無機成分からなる成分である。
【0008】
この部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢は、金属材料、プラスティック材料、ガラス材料、塗装された金属や樹脂材料などの部材表面に存在する微細な凹部に浸み込みやすく、かつ強固に付着するため、製品の外観品質が低下する課題があった。
さらに、油や指紋あるいは手垢が転写して付着した部材表面を洗浄剤等で除去しようとした場合では、最終形態である製品全体を大量の水ですすいだり、水によるリンス工程を入れることが難しいために、部材表面には油や指紋あるいは手垢が残ったり、あるいは洗浄剤に含まれる成分が残ったりする場合があった。
そこで、最終形態である製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を速やかに溶解し、大量の水ですすぐ工程や、水によるリンス工程がなくとも、油や指紋あるいは手垢、洗浄剤などが部材表面に残らないことが要求されている。
【0009】
しかし、特許文献1及び2の水酸化第四級アンモニウムを含む洗浄剤は、水酸化第四級アンモニウムのアンモニウムカチオンと結合するアルキル基の炭素鎖長が炭素数1、あるいは炭素数2と短いために、油を可溶化する能力に乏しく、また皮脂成分と無機成分の溶解性が小さいという課題があった。
さらに、これらの洗浄方法は、例えば、金属部品を洗浄槽に投入し、浸漬洗浄(加温を伴う場合がある)、スプレー洗浄、超音波洗浄、ベーパー洗浄などの化学的・物理的な手法を追加することを前提としているため、洗浄槽に投入することが不可能な上述した最終形態である製品の外観を構成する部材表面の場合には、適用できない場合があった。
【0010】
また、特許文献3及4のテトラブチルアンモニウムハイドライドを含む洗浄剤は、テトラブチルアンモニウムハイドライド及びその他の成分量が多く、またリンス等が必要である。このため、リンス工程を入れることができない最終形態である製品の外観を構成する部材表面の場合には適用できない場合があった。さらに、水によるリンスが無い場合では、洗浄剤に含まれる多量の成分が部材表面に残ってしまい、外観品質を著しく低下させる場合があった。
【0011】
また、特許文献5から10の汚れ部分に洗浄剤を塗布して拭き取る方法では、洗浄剤に含まれる成分量が多いために、洗浄剤を拭き取ったのちに洗浄剤成分が大量に部材表面残ってしまい、外観品質を著しく低下させる場合があった。
【0012】
そこで、本発明者らは、上記課題について鋭意検討したところ、従来技術に対して、最終形態である製品の外観を構成する金属材料、プラスティック材料、ガラス材料、塗装された金属や樹脂材料などの部材表面に存在する微細な凹部に浸み込みやすく、かつ強固に付着した油や指紋あるいは手垢を速やかに溶解し、かつ大量の水ですすぐ工程や、水によるリンス工程がなくとも、油や指紋あるいは手垢、洗浄剤に含まれる成分が部材表面に残らずに速やかに除去するための溶解剤と、それを用いた除去方法を見出した。
すなわち、本発明は、製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を除去するための溶解剤、及びそれを用いた除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の観点によれば、製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を除去するための溶解剤であって、
(A)一般式(1)
[(C
nH
2n+1)
4N
+]OH
− (1)
(式中、nは3〜18の整数である。)
で表される第四級アンモニウムヒドロキシドを含む指紋除去剤と、
(B)水及び/又はアルコールを含む溶媒、
とからなる溶解剤であり、当該溶解剤中の指紋除去剤の濃度が0.05重量%以上5.0重量%以下であることを特徴とする製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を除去する溶解剤が提供される。
【0014】
前記の溶解剤が、製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を溶解し、繊維の毛管現象を利用して油や指紋あるいは手垢を溶解した溶解剤を繊維に含侵させて拭き取る溶解剤であって、当該繊維に含侵させる粘性を有することを特徴とする製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を除去する溶解剤であることが好ましい。
【0015】
また、前記の指紋除去剤が、非イオン性の界面活性剤を含むことを特徴とする製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を除去する溶解剤であることが好ましい。
【0016】
さらに、前記の指紋除去剤が、アルカリ性化合物を含むことを特徴とする製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を除去する溶解剤であることが好ましい。
【0017】
さらに、前記の水及び/又はアルコールを含む溶媒が、水とアルコールからなる溶媒であることを特徴とする製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を除去する溶解剤であることが好ましい。
【0018】
また、油や指紋あるいは手垢が転写して付着した製品の外観を構成する部材表面に、
(A)一般式(1)
[(C
nH
2n+1)
4N
+]OH
− (1)
(式中、nは3〜18の整数である。)
で表される第四級アンモニウムヒドロキシドを含む指紋除去剤と、
(B)水及び/又はアルコールを含む溶媒、
とからなる溶解剤であり、当該溶解剤中の指紋除去剤の濃度が0.05重量%以上5.0重量%以下である溶解剤を塗布する第1のステップと、
繊維の毛管現象を利用して、油や手垢あるいは指紋を溶解した溶解剤を繊維に含侵させる第2のステップ、からなる製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢の除去方法であることが好ましい。
【0019】
また、油や指紋あるいは手垢が転写して付着した製品の外観を構成する部材表面に対して、
(A)一般式(1)
[(C
nH
2n+1)
4N
+]OH
− (1)
(式中、nは3〜18の整数である。)
で表される第四級アンモニウムヒドロキシドを含む指紋除去剤と、
(B)水及び/又はアルコールを含む溶媒、
とからなる溶解剤であり、当該溶解剤中の指紋除去剤の濃度が0.05重量%以上5.0重量%以下である溶解剤を繊維に塗布する第1のステップと、
繊維に塗布された溶解剤が部材表面に転写して付着した油や手垢あるいは指紋を溶解させる第2のステップと、
繊維の毛管現象を利用して、油や手垢あるいは指紋を溶解した溶解剤を繊維に含侵させる第3のステップ、からなることを特徴とする製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢の除去方法であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、最終形態である製品の外観を構成する金属材料、プラスティック材料、ガラス材料、塗装された金属や樹脂材料などの部材表面に存在する微細な凹部に浸み込みやすく、かつ強固に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を速やかに溶解し、かつ大量の水ですすぐ工程や、水によるリンス工程がなくとも、油や指紋あるいは手垢、洗浄剤に含まれる成分が部材表面に残らずに速やかに除去するための溶解剤と、それを用いた除去方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の、製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を除去するための溶解剤、及びそれを用いた除去方法を
図1〜
図6に説明する。
図1は、溶解剤を塗布して拭き取る前後の外観観察結果を示す全体写真である。1はヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片であり、
図1(a)及び
図1(b)は、実施例1の外観観察結果である。2は1のヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片に指紋を付着した後の外観を示し、2aは実施例1の溶解剤を指紋上に塗布し、さらにマイクロファイバークロスで拭き取った後の外観である。
図1(c)及び
図1(d)は、比較例1の外観観察結果である。3はヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片に指紋を付着した後の外観を示し、3aは比較例1の溶解剤を指紋上に塗布し、さらにマイクロファイバークロスで拭き取った後の外観である。
図1(e)及び
図1(f)は、比較例2の外観観察結果である。4はヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片に指紋を付着した後の外観を示し、4aは比較例2の溶解剤を指紋上に塗布し、さらにマイクロファイバークロスで拭き取った後の外観である。
図2は、部材表面上の水滴の接触角測定方法に関する定義を示す断面図である。
図2(a)は、ヘアーライン加工によって粗面化された後のSUS304試験片の断面状態を示す。5はSUS304試験片であり、5aはSUS304試験片の表面をヘアーライン加工によって粗面化された表面の平均粗さ(Ra)が0.2μm以上1.0mm未満の凹凸部を示す。
図2(b)は、ヘアーライン加工によって粗面化されたSUS305試験片の凹凸表面上に水滴を滴下したときの断面図を示す。6は0.8μLから1.2μLの容積を有する1滴の水滴であり、水滴は表面の凹凸部を濡らして試験片と接している。7は凹凸表面が凸部と凹部の頂点と底部までの深さを平均化し、さらに平均化した面を平滑な面であると見なした金属基材表面と水滴が接する基準線である。8は7の基準線を基にした水滴との接線を示し、9は基準線と接線の内角、すなわち水滴の接触角を示す。
図3は、部材表面に付着した指紋等の成分の有無を判定する方法のフローチャート図を示す。
図3(a)は、部材表面に付着した指紋等の成分の有無を判定するために必要な基準角を設定するための第1のステップを示す。はじめに、判定すべき部材と同じ材質、同じ表面形状の部材を洗浄する。その後、清浄な表面の水滴の接触角を測定し、さらに接触角のバラツキを考慮した基準角を設定するステップである。
図3(b)は、判定すべき部材表面の水滴の接触角値を求める第2のステップを示す。例えば、溶解剤で拭き取った判定すべき部材を用意し、その後、判定すべき表面の水滴の接触角を測定するステップである。
図3(C)は、第1のステップで設定した基準角と第2のステップで測定した水滴の接触角値を比較し、判定する第3のステップを示す。清浄な表面の水滴の基準角に比べて判定すべき表面の水滴の接触角値が小さいときは指紋等の成分、または指紋除去剤成分があると判定され、清浄な表面の水滴の基準角と判定すべき表面の水滴の接触角値がほぼ同じときに指紋等の成分、または指紋除去剤成分はないと判定される。
図4は、部材表面に付着した指紋等の成分の有無を判定する方法を示す具体的な断面図であり、ヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片に指紋を付着した後の金属表面の構成図及び金属表面に付着した指紋等の成分の水滴の接触角測定による判定方法を示す断面図である。
図4(a)は、金属表面の構成を示す。5はヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片である。上述した
図2(a)に示したように、表面には凹凸構造を伴うが、これ以降、図面中の表記は省略する。10は金属表面に付着した指紋層を示す。5bは指紋層を有する金属基材を切断した断面方向線である。
図4(b)は、指紋層のない清浄な金属表面の水滴を滴下したときの断面図を示す。6aは0.8μLから1.2μLの水滴であり、8aは水滴との接線を示し、9aは水滴の接触角を示す。この清浄な金属表面の接触角は、指紋が付着したかどうか、あるいは指紋が除去されたかどうか、または指紋除去剤に含まれる界面活性剤などの水溶性成分が付着していないかを判定する基準となるものである。
図4(c)は、10の指紋層の上に6bの0.8μLから1.2μLの水滴を滴下したときの断面図を示す。8bは水滴との接線を示し、9bは水滴の接触角を示す。
図4(d)は、溶解剤を10の指紋上に塗布し、さらにマイクロファイバークロスで拭き取った後に、指紋の存在した表面位置に6cの0.8μLから1.2μLの水滴を滴下したときの断面図である。10aは指紋が存在した金属表面の位置を示し、8cは水滴との接線を示し、9cは水滴の接触角を示す。
図5は、基準となる清浄面及び実施例1、さらに比較例1及び比較例2の水滴の接触角測定方法を示す断面図である。
図5(a)は、塩素系溶剤によって洗浄、かつ乾燥した清浄な金属表面に水滴を滴下したときの断面図を示す。11はヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片であり、12は0.8μLから1.2μLの水滴であり、13は水滴との接線を示し、14は水滴の接触角を示す。
図5(b)は、実施例1の水滴を滴下したときの断面図を示す。12aは0.8μLから1.2μLの水滴であり、13aは水滴との接線を示し、14aは水滴の接触角を示す。
図5(c)は、比較例1の水滴を滴下したときの断面図を示す。15は金属表面に残る指紋層を示し、12bは0.8μLから1.2μLの水滴であり、13bは水滴との接線を示し、14bは水滴の接触角を示す。
図5(d)は、比較例2の水滴を滴下したときの断面図を示す。16は金属表面に残る指紋除去剤層を示し、12cは0.8μLから1.2μLの水滴であり、13cは水滴との接線を示し、14cは水滴の接触角を示す。
図6は、溶解剤に含まれる指紋除去剤の濃度と、拭き取った後の水の接触角との関係を表すグラフである。具体的には、ヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片に指紋を付着した後に、本発明の実施例1〜9、さらに比較例1及び比較例2の溶解剤を塗布して拭き取った後の水の接触角との関係を表すグラフである。実施例1〜9の溶解剤に含まれる指紋除去剤の濃度は、0.05重量%から5.0重量%の範囲内であり、これは清浄な表面の水滴の基準角と判定すべき表面の水滴の接触角値がほぼ同じであり、指紋等の成分、または指紋除去剤成分がないと判定される領域である。事実、指紋除去剤の濃度が、0.05重量%と5.0重量%のプロット点は実施例3と実施例9であり、0.1重量%と2.0重量%のプロット点は実施例3〜7と実施例8であり、0.5重量%と1.5重量%のプロット点は実施例1と実施例2である。
また、比較例1及び比較例2の指紋除去剤の濃度は、0.04重量%と6.0重量%のプロット点を示し、清浄な表面の水滴の基準角と判定すべき表面の水滴の接触角値がほぼ同じであり、指紋等の成分、または指紋除去剤成分がないと判定される領域の外側である。
【0023】
さらに、以下、本発明の製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を除去するための溶解剤であって、
(A)一般式(1)
[(C
nH
2n+1)
4N
+]OH
− (1)
(式中、nは3〜18の整数である。)
で表される第四級アンモニウムヒドロキシドを含む指紋除去剤と、
(B)水及び/又はアルコールを含む溶媒、
とからなる溶解剤であり、当該溶解剤中の指紋除去剤の濃度が0.05重量%以上5.0重量%以下であることを特徴とする製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を除去する溶解剤について詳細に説明する。
【0024】
本発明にかかる製品の外観を構成する部材表面とは、例えば、建材、キッチン機器、TV・IT機器、オーディオ機器、車載用金属材、車用部材、エレベーターのドア・操作パネル、医療機器、産業装置・機器、カバー、ボックス、容器、遮蔽板、電化製品、窓ガラス、鏡、家具、事務設備・器機、住宅設備・器機、厨房内設備、冷蔵庫などの製品に使用される部材表面である。
部材表面の材質は、金属材料、プラスティック材料、ガラス材料、陶器、塗装された金属や樹脂材料等が挙げられる。
【0025】
金属材料の材質としては、例えば、鉄鋼、ステンレス鋼、銅及び銅合金、アルミ及びアルミ合金等が挙げられ、そのうちステンレス鋼及びアルミは耐食性、加工性に優れているため、多くの分野で使用されている。
【0026】
金属の表面は、平面又は曲面への鏡面加工のほか、ヘアーライン加工、バフ研磨、ブラスト処理等の加工方法により粗面化され、表面の平均粗さ(Ra)が0.2μm以上1mm未満の凹凸構造を有する金属表面であってもよい。
【0027】
さらに、上述した金属の表面が、スパッタリング、蒸着、CVD(Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)等の方法で、チタンやクロム等の金属薄膜、あるいはチタンやクロム等の酸化膜を形成した着色された金属表面であってもよい。
【0028】
また、プラスティック材料の材質としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン‐スチレン樹脂)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などが挙げられ、特にアクリル樹脂、ポリカーボネート及びPETは、透明性、軽量性、加工性、さらに価格の面に優れているため、多くの分野で使用されている。
【0029】
そのほか、ガラス材料としては、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ほうけい酸ガラス、結晶化ガラス、石英ガラスが使用でき、さらに、エポキシ塗料やアクリル塗料、ウレタン塗料などで塗装された鉄系金属及びアクリルなどの樹脂材料が使用できる。
【0030】
本発明にかかる、製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を除去するための溶解剤に含有される指紋除去剤は、(A)一般式(1)
[(C
nH
2n+1)
4N
+]OH
− (1)
(式中、nは3〜18の整数である。)
で表される第四級アンモニウムヒドロキシドを必須成分として含有する。
【0031】
本発明の溶解剤、及びそれを用いた除去方法の対象とは、具体的には、製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を対象物とし、あるいは、それらの対象物を成分ごとに分類する場合には、油成分や酸性物質以外の皮脂成分、酸性物質の皮脂成分、及び無機成分を対象成分とする。
具体的な対象物としては、油とは、作業や動作、操作などに伴い、使用中の、及び/又は使用した機械油や工作油、防錆油、食用油などの油が手袋の模様や指紋の模様で部材表面に転写されたものである。
また、指紋あるいは手垢とは、具体的には、作業や動作、操作などに伴い、手のひらなどから分泌される汗などが、指紋の模様で部材表面に転写されたものである。
一般に、汗に含まれる成分は、98%が水分であるものの、残りの2%には、乳酸、アミノ酸、尿酸、脂肪酸等の酸性物質の皮脂成分と酸性物質以外の皮脂成分が含まれ、さらに塩化ナトリウム、カリウム成分、カルシウム成分などの無機成分が含まれることが知られている。
このことから、油や指紋あるいは手垢の成分とは、械油や工作油、防錆油、食用油などの油成分や汗に含まれる酸性物質の皮脂成分と酸性物質以外の皮脂成分、及び無機成分からなる成分である。
【0032】
必須成分として含有する第四級アンモニウムヒドロキシドは、油や指紋あるいは手垢を成分ごとに分類した場合の、油成分や酸性物質以外の皮脂成分、酸性物質の皮脂成分、及び無機成分を速やかに溶解するため有効である。
以下、具体的に説明する。
第四級アンモニウムヒドロキシドは、作業や動作、操作などに伴い、使用中の、及び/又は使用した機械油や工作油、防錆油、食用油などの油が手袋の模様や指紋の模様で部材表面に転写された油成分を速やかに溶解する作用がある。
これは、アンモニウムカチオンと結合するアルキル基の炭素鎖長が炭素数3以上の場合、油成分に対する親油性が増大するために、付着した油成分をより効果的に分子中に取り込み、すなわち可溶化することができるため有効である。
さらに、指紋あるいは手垢などに含まれる酸性物質以外の皮脂成分も可溶化することができるため有効である。
このことから、部材表面に転写して付着した油成分や指紋あるいは手垢などに含まれる酸性物質以外の皮脂成分を速やかに溶解するという効果が得られる。
【0033】
さらに、第四級アンモニウムヒドロキシドは、指紋の模様で部材表面に転写された指紋あるいは手垢に含まれる乳酸、アミノ酸、尿酸、脂肪酸等の酸性物質の皮脂成分と塩化ナトリウム、カリウム成分、カルシウム成分などの無機成分を速やかに溶解する作用がある。
指紋あるいは手垢に含まれる酸性物質の皮脂成分は、第四級アンモニウムヒドロキシドの対イオンである水酸化イオンが強アルカリ性であるために、酸性物質と速やかにケン化する。この反応によって生成したケン化反応物は、溶解剤に含まれる水あるいはアルコール溶媒に対する溶解性が増大するために結果として高い溶解能力を有することができる。
また、指紋あるいは手垢に含まれる無機成分は、水酸化イオンがナトリウム成分やカリウム成分、あるいはカルシウム成分などの無機成分に由来するプラスイオン、すなわちナトリウムカチオンやカリウムカチオン、あるいはカルシウムカチオンなどと相互作用するために無機成分に対する高い溶解能力を有することができる。
このことから、部材表面に付着した指紋あるいは手垢などに含まれる酸性物質の皮脂成分と無機成分を速やかに溶解するという効果が得られる。
【0034】
上述した第四級アンモニウムヒドロキシドとしては、第四級アンモニウムヒドロキシドのアンモニウムカチオンと結合するアルキル基の炭素鎖長が炭素数3以上、18以下が好ましい。例えば、具体的には、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクタデシルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられ、1種類、または2種類以上を組合わせて使用することができる。
炭素数2以下では、部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢などに含まれる油成分や酸性物質以外の皮脂成分を可溶化する効果が小さいために油や指紋あるいは手垢の溶解性に劣り、炭素数18を超える化合物は合成上困難であり実用性が乏しい場合がある。
【0035】
特に、アンモニウムカチオンと結合するアルキル基の炭素鎖長が炭素数4のテトラブチルアンモニウムヒドロキシドは、部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢などに含まれる油成分や酸性物質以外の皮脂成分を可溶化する能力に優れており、また、酸性物質の皮脂成分とのケン化反応性が高く、さらに無機成分との相互作用が強いために速やかに溶解し好適である。
【0036】
また、本発明の指紋除去剤は、非イオン性の界面活性剤を添加してもよく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類などが挙げられ、1種類、または2種類以上を組合わせて使用することができる。
【0037】
非イオン性の界面活性剤を、他の成分と混合して指紋除去剤とする場合は、それらの混合比率に特に制限はないが、例えば、第四級アンモニウムヒドロキシドと非イオン性の界面活性剤を混合する場合には、重量比率で1:1の時に、油成分や酸性物質以外の皮脂成分、酸性物質の皮脂成分、及び無機成分をより速やかに溶解するため好適である。
【0038】
さらに、本発明の指紋除去剤は、アルカリ成分として、第四級アンモニウムヒドロキシド以外の水溶性のアルカリ性化合物を添加してもよく、例えば、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、アルキルアミンオキシドなどの両性アミン化合物、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチル−2−ピロリドンなどの窒素含有化合物などが挙げられ、1種類、または2種類以上を組合わせて使用することができる。
【0039】
アルカリ成分を、他の成分と混合して指紋除去剤とする場合は、それらの混合比率に特に制限はないが、例えば、第四級アンモニウムヒドロキシドと非イオン性の界面活性剤とアルカリ成分を混合する場合には、第四級アンモニウムヒドロキシドと非イオン性の界面活性剤を合算した重量に対して、アルカリ成分が重量比率で1/2倍から2倍の範囲となる比率で混合することが好ましい。アルカリ成分をこのような重量比率で混合することによって、油成分や酸性物質以外の皮脂成分、酸性物質の皮脂成分、及び無機成分をより速やかに、さらに強力に溶解するため、こびりついた油や黒く変色した頑固な指紋あるいは手垢を溶解することができるため好適である。
【0040】
溶解剤に含有される指紋除去剤の濃度とは、上述した第四級アンモニウムヒドロキシド化合物を単独で使用した場合や、他の成分である非イオン性の界面活性剤及び/あるいはアルカリ性化合物を添加した場合の総量から計算された濃度である。
例えば、指紋除去剤として、第四級アンモニウムヒドロキシド化合物を0.5g、非イオン性の界面活性剤を0.5g、アルカリ性化合物を0.5gとして、88.5gの水を溶媒とした溶解剤に含有される指紋除去剤の濃度は1.5重量%と計算される。
【0041】
指紋除去剤の濃度は、例えば、好ましくは0.05重量%以上5.0重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上5.0重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以上2.0重量%以下、もっとも好ましくは0.5重量%以上1.5重量%以下である。
【0042】
溶解剤に含有される指紋除去剤は、臨界ミセル濃度以上である0.05重量%以上の界面活性剤から構成されているため、溶解剤の表面張力が十分に小さく、汚れた部材表面に濡れ広がることができる。同時に油成分や酸性物質以外の皮脂成分をミセル中に可溶化し、さらに指紋除去剤と酸性物質の皮脂成分及び無機成分との相互作用の効果によって、油や指紋あるいは手垢を速やかに溶解することができる。
また、一般的に、水溶液中の界面活性剤量の増加は、水と界面活性剤との水素結合などによる相互作用のために溶液の粘度(または粘性という)上昇を伴うことが知られているが、当該溶解剤は、溶解剤中の指紋除去剤が5.0重量%以下であるため、溶解剤の粘性が小さいという特徴がある。
これら油や指紋あるいは手垢を溶解する溶解特性と溶解剤の粘性のバランスから、上述した好適な濃度範囲が存在する理由である。
したがって、指紋除去剤の濃度が0.05重量%未満の場合は、臨界ミセル濃度未満であるために十分なミセルが形成されず、油成分や酸性物質以外の皮脂成分を可溶化できないために油や指紋あるいは手垢を溶解できない場合がある。
また、濃度が5.0重量%を超える場合では、溶解剤の粘性が増加するために、溶解剤を繊維中に含侵させる際に、使用する繊維の微細な隙間に含侵されづらくなる、すなわち、繊維の毛管現象を十分に利用することができないために、溶解剤に溶解した油成分や酸性物質以外の皮脂成分、酸性物質の皮脂成分及び無機成分、並びに指紋除去剤の成分などが部材表面に再付着して拭きムラ等が生じ、金属表面の外観を損なう場合がある。
【0043】
本発明にかかる指紋除去剤は、水及び/又はアルコールを含む溶媒で希釈した溶解剤とすることが好ましい。
これらの溶媒は、指紋除去剤と油成分や酸性物質以外の皮脂成分をミセル中に可溶化した物質や、指紋除去剤と酸性物質の皮脂成分とのケン化反応物、及び無機成分との相互作用物などを溶解することができる。
尚、水とアルコールを含む混合溶媒の場合、一般的に、水に対するアルコール濃度が増加するに伴い、水とアルコールの水素結合等の相互作用により粘性が増加し粘性の極大値が存在することが知られている。
しかしながら、水とアルコールの混合による粘性の増加量は、上述した溶解剤中の界面活性剤量の増加による影響に比べて極めて小さい変化量であるため無視できるものである。
したがって、溶媒に溶解した成分が繊維の微細な隙間に容易に吸い込まれる、すなわち、繊維の毛管現象を十分に利用して繊維中に含侵され、かつ拭き取ることができるため、溶解した成分が部材表面に残りづらく、拭きムラができにくいという効果がある。
さらに拭き取り後の乾燥性を向上するという効果があり、具体的には、水あるいはアルコール溶媒の単独、又は水とアルコール溶媒の混合溶媒、さらには水溶性の他の溶媒を添加することができる。
【0044】
水は、精製水、蒸留水、イオン交換水、水道水、アルカリ電解イオン水などを使用することができる。
【0045】
アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコールなどの1級アルコール類、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなどの2級アルコール類、tert−ブチルアルコールなどの3級アルコール類が好適であり、これらは1種類、または2種類以上が用いられる。これらアルコール溶媒のうち、エタノールを主成分とし、ノルマルプロピルアルコールとイソプロピルアルコールからなる変性エタノール溶媒は、洗浄性、安全性の観点からより好ましい。
【0046】
さらに、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン等のケトン溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のエーテル溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−イソプロピル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル溶媒等を追加して混合することができる。
【0047】
水とアルコール溶媒及びその他の溶媒等の混合溶媒を用いる場合、水とアルコール溶媒及びその他の溶媒等の混合割合は任意での割合で使用できる。
【0048】
本発明にかかる油や指紋あるいは手垢の除去方法は、油や指紋あるいは手垢が転写して付着した製品の外観を構成する部材表面に、
(A)一般式(1)
[(C
nH
2n+1)
4N
+]OH
− (1)
(式中、nは3〜18の整数である。)
で表される第四級アンモニウムヒドロキシドを含む指紋除去剤と、
(B)水及び/又はアルコールを含む溶媒、
とからなる溶解剤であり、当該溶解剤中の指紋除去剤の濃度が0.05重量%以上5.0重量%以下である溶解剤を塗布する第1のステップと、
繊維の毛管現象を利用して、油や手垢あるいは指紋を溶解した溶解剤を繊維に含侵させる第2のステップ、からなる製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢の除去方法であることが好ましい。
【0049】
具体的には、溶解剤を部材表面にスプレー塗布、刷毛塗布などの一般的な方法で塗布する第1のステップを実施して油や指紋あるいは手垢を溶解する。次にウエス、タオル、マイクロファイバークロス、布などの繊維の毛管現象を利用して、溶解剤に溶解した油成分や酸性物質以外の皮脂成分、酸性物質の皮脂成分及び無機成分等を繊維中に含侵させる第2のステップを行い、溶解剤を拭き取る除去方法が採用できる。
繊維中に当該溶解剤を含侵させる第2のステップは、溶解剤を速やかに吸収できるために、溶解剤に溶解した物質や指紋除去剤に含まれる界面活性剤成分などの液残りによる再付着がなくムラが生じにくい。また乾燥性も早くなるために好適である。
【0050】
ここで、さらに、上述した油や指紋あるいは手垢を溶解するための第1のステップと、繊維中に当該溶解剤を含侵させる第2のステップについて詳しく説明する。
【0051】
第1のステップは、溶解剤中の指紋除去剤が、臨界ミセル濃度以上である0.05重量%以上の界面活性剤から構成されているため、溶解剤の表面張力が十分に小さく、汚れた部材表面に濡れ広がることができる。同時に油成分や酸性物質以外の皮脂成分をミセル中に可溶化し、さらに指紋除去剤と酸性物質の皮脂成分及び無機成分との相互作用の効果によって、油や指紋あるいは手垢を速やかに溶解することができる。
また、一般的に、水溶液中の界面活性剤量の増加は、水と界面活性剤の水素結合などによる相互作用のために溶液の粘度(または粘性という)上昇を伴うことが知られているが、当該溶解剤は、溶解剤中の指紋除去剤が5.0重量%以下であるため、溶解剤の粘性が小さいという特徴がある。
【0052】
第2のステップは、繊維の毛管現象を利用して、速やかに溶解剤を繊維中に含侵させるものである。
毛管現象を効果的に利用するためには、一般的に繊維に含侵する溶液の表面張力が低く、さらに溶液の粘性が低いことが必要と言われている。
つまり、当該溶解剤は、溶解剤の表面張力が低く、同時に粘性が小さいため、第2のステップで溶解剤を繊維中に速やかに含侵でき、液残りによる成分の再付着が少なくムラを生じにくいため好適である。
また、第2のステップを実施後に、部材表面に多少のムラ等が生じた場合であっても、ムラの程度は僅かであるため、空拭きや少量の水のリンス等を行うことで拭き取ることができる。
【0053】
尚、第2のステップの溶解剤を拭き取る際に使用するウエス、タオル、マイクロファイバークロス、布などの繊維は、乾いた繊維であることが好ましい。
乾いた繊維の場合、繊維中の微細な隙間に溶解剤を速やかに含侵することができ、液残りによる成分の再付着が少なくムラを生じにくいため好適である。
さらに含侵された溶解剤を含む繊維で繰り返し拭き取る場合には、人が拭き取る際に繊維を押し付ける力によって、繊維中の微細な隙間に含侵されていた溶解剤が繊維の表面側に染み出し、すなわち繊維の表面と部材表面の間に溶解剤が染み出して、再度、部材表面の汚れに接触して汚れを溶解したのちに繊維中に含侵されることを繰り返すために、油や指紋あるいは手垢をさらに速やかに溶解する効果があり、また液残りによる成分の再付着が少なくムラを生じにくいため好適である。
したがって、あらかじめ繊維中に水などの溶媒によって微細な隙間が充填されている場合には、繊維中に含まれる水などの溶媒によって、溶解剤が希釈されて濃度が低下し、油や指紋あるいは手垢を速やかに溶解する効果が低下する場合がある。また、溶解剤が繊維に含侵されづらくなるため液残りによる成分の再付着が生じる場合がある。
【0054】
さらに、本発明にかかる油や指紋あるいは手垢の除去方法は、油や指紋あるいは手垢が転写して付着した製品の外観を構成する部材表面に対して、
(A)一般式(1)
[(C
nH
2n+1)
4N
+]OH
− (1)
(式中、nは3〜18の整数である。)
で表される第四級アンモニウムヒドロキシドを含む指紋除去剤と、
(B)水及び/又はアルコールを含む溶媒、
とからなる溶解剤であり、当該溶解剤中の指紋除去剤の濃度が0.05重量%以上5.0重量%以下である溶解剤を繊維に塗布する第1のステップと、
繊維に塗布された溶解剤が部材表面に転写して付着した油や手垢あるいは指紋を溶解させる第2のステップと、
繊維の毛管現象を利用して、油や手垢あるいは指紋を溶解した溶解剤を繊維に含侵させる第3のステップ、からなることを特徴とする製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢の除去方法であることが好ましい。
【0055】
具体的には、溶解剤をウエス、タオル、マイクロファイバークロス、布などの繊維表面にスプレーや浸漬などの一般的な方法で塗布する第1のステップを実施する。次に、溶解剤を塗布した繊維を使用して、部材表面に転写して付着した油や手垢あるいは指紋に溶解剤を塗布した繊維を接触させて溶解させる第2のステップを行い、さらに、毛管現象を利用して、溶解剤に溶解した油成分や酸性物質以外の皮脂成分、酸性物質の皮脂成分及び無機成分等を繊維中に含侵させて拭き取る第3のステップを行う除去方法が採用できる。
【0056】
ここで、さらに、上述した溶解剤を繊維に塗布する第1のステップと、繊維に塗布された溶解剤を接触させて部材表面に転写して付着した油や手垢あるいは指紋を溶解させる第2のステップと、繊維の毛管現象を利用して、油や手垢あるいは指紋を溶解した溶解剤を繊維に含侵させる第3のステップについて詳しく説明する。
【0057】
第1のステップは、はじめに溶解剤を乾いたウエス、タオル、マイクロファイバークロス、布などの繊維表面にスプレーや浸漬などの一般的な方法で塗布するものである。
当該溶解剤は、溶解剤中の指紋除去剤が、臨界ミセル濃度以上である0.05重量%以上の界面活性剤から構成されているため、溶解剤の表面張力が十分に小さく、同時に油成分や酸性物質以外の皮脂成分をミセル中に可溶化し、さらに指紋除去剤と酸性物質の皮脂成分及び無機成分との相互作用の効果によって、油や指紋あるいは手垢を速やかに溶解する効果を有する。
また、当該溶解剤は、溶解剤中の指紋除去剤が5.0重量%以下であるため、溶解剤の粘性が小さいという特徴がある。
このため、油や指紋あるいは手垢を速やかに溶解する溶解能力の高い当該溶解剤を繊維中の微細な隙間に速やかに含侵することができるため好適である。
尚、あらかじめ繊維中に水などの溶媒によって微細な隙間が充填されている場合には、繊維中に含まれる水などの溶媒によって、溶解剤が希釈されて濃度が低下し、油や指紋あるいは手垢を速やかに溶解する効果が低下する場合がある。また、溶解剤が繊維に含侵されづらくなるため液残りによる成分の再付着が生じる場合がある。
【0058】
第2のステップは、溶解剤を塗布した繊維を使用して、部材表面に転写して付着した油や手垢あるいは指紋に、溶解剤を塗布した繊維を接触させて溶解させるものである。
具体的には、繊維の表面に付着した溶解剤、及び/又は人が汚れを拭き取る際に繊維を押し付ける力によって、繊維中の微細な隙間に含侵されていた溶解剤が繊維の表面側に染み出し、すなわち繊維の表面と部材表面の間に染み出した溶解剤が、部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢の汚れに接触し、これらを溶解するものである。
このことによって、油や指紋あるいは手垢を速やかに溶解する効果があるため好適である。
【0059】
第3のステップは、繊維の毛管現象を利用して、溶解剤に溶解した油成分や酸性物質以外の皮脂成分、酸性物質の皮脂成分及び無機成分等を繊維中に含侵させて拭き取るものである。
毛管現象を効果的に利用するためには、一般的に繊維に含侵する溶液の表面張力が低く、さらに溶液の粘性が低いことが必要と言われている。
当該溶解剤は、溶解剤の表面張力が十分に低く、同時に粘性が小さいため、油や指紋あるいは手垢に接触して溶解した溶解剤を速やかに繊維中に含侵できるため、液残りによる成分の再付着が少なくムラを生じにくいため好適である。
また、第3のステップを実施後に、部材表面に多少のムラ等が生じた場合であっても、ムラの程度は僅かであるため、空拭きや少量の水のリンス等を行うことで拭き取ることができる。
【0060】
このように上述した製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を除去するための溶解剤、及びそれを用いた除去方法によって、外観品質に優れた製品の外観を構成する部材表面を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0061】
以下、溶解剤の調製例、及び比較溶解剤の調製例、さらにそれらを用いた実施例および比較例に基づき、本発明を更に具体的に説明する。
ただし、本発明は以下の溶解剤の調製例及び実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
[溶解剤の調製]
(溶解剤1〜9、比較溶解剤1〜5)
実施例及び比較例に供する溶解剤の調製例、及び比較溶解剤の調製例の組成表を表1に示す。尚、表中の数値の単位は重量%を示す。
【0063】
(溶解剤1)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液2.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.25g、精製水87.25g及び変性エタノール(エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール混合溶液)10.0gを200ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤濃度が0.5重量%の溶解剤1を調製した。
なお、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの分析例として、IRデータ、MSスペクトルデータ、
1H−NMRデータを産業総合研究所の有機化合物のスペクトルデータベースSDBSから確認することができる。
https://sdbs.db.aist.go.jp/sdbs/cgi−bin/direct_frame_disp.cgi?sdbsno=17136
【0064】
(溶解剤2)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液2.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.25g、水酸化ナトリウム1.0g、精製水86.25g及び変性エタノール(エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール混合溶液)10.0gを100ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤の濃度が1.5重量%の溶解剤2を調製した。
【0065】
(溶解剤3)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液0.5g及び精製水99.5gを100ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤の濃度が0.05重量%の溶解剤3を調製した。
【0066】
(溶解剤4)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液0.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.05g及び精製水99.45gを100ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤の濃度が0.1重量%の溶解剤4を調製した。
【0067】
(溶解剤5)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液0.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.05g及び変性エタノール(エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール混合溶液)99.45gを100ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤の濃度が0.1重量%の溶解剤5を調製した。
【0068】
(溶解剤6)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液0.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.05g、精製水89.45g及び変性エタノール(エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール混合溶液)10.0gを100ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤の濃度が0.1重量%の溶解剤6を調製した。
【0069】
(溶解剤7)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液0.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.05g、精製水89.45g、変性エタノール(エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール混合溶液)5.0g及びグリセリン5.0gを100ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤の濃度が0.1重量%の溶解剤7を調製した。
【0070】
(溶解剤8)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液5.0g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.5g、水酸化ナトリウム1.0g及び精製水93.5gを100ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤の濃度が2.0重量%の溶解剤8を調製した。
【0071】
(溶解剤9)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液15.0g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル1.5g、水酸化ナトリウム2.0g及び精製水81.5gを100ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤の濃度が5.0重量%の溶解剤9を調製した。
【0072】
(比較溶解剤1)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液0.4g及び精製水99.6gを100ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤の濃度が0.04重量%の比較溶解剤1を調製した。
【0073】
(比較溶解剤2)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液60.0g及び精製水40.0gを100ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤の濃度が6.0重量%の比較溶解剤2を調製した。
【0074】
(比較溶解剤3)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液30.0g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル3.0g及び精製水67.0gを100ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤の濃度が6.0重量%の比較溶解剤3を調製した。
【0075】
(比較溶解剤4)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液30.0g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル3.0g、精製水57.0g及び変性エタノール(エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール混合溶液)10.0gを100ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤の濃度が6.0重量%の比較溶解剤4を調製した。
【0076】
(比較溶解剤5)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液20.0g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル2.0g、水酸化ナトリウム2.0g、精製水66.0g及び変性エタノール(エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール混合溶液)10.0gを100ccのナス型フラスコに入れて室温下で1時間撹拌して、指紋除去剤の濃度が6.0重量%の比較溶解剤5を調製した。
【0077】
以上の溶解剤につき、まず、特性評価(1)として実施例1〜9、及び比較例1〜5に示す以下の特性評価を行った。その結果を表2に示す。
【0078】
[特性評価(1)]
(実施例1〜9、比較例1〜5)
(指紋除去性の外観観察)
ヘアーライン加工によって粗面化された、表面の平均粗さ(Ra)が0.2μm以上1.0mm未満の凹凸構造を有するSUS304(長さ150mm、幅70mm、0.7mm厚)試験片の金属表面に指紋を付着させた。その後、実施例1〜9、及び比較例1〜5の溶解剤を金属表面にスプレーして、1分間溶解剤が表面に付着した状態で放置したのちに、マイクロファイバーによって溶解剤を含侵させて拭き取ったときの外観を目視で確認した。指紋除去剤の成分が表面に残らず、かつ指紋を完全に拭き取ることができた場合を○、指紋除去剤の成分は表面に残らないが指紋の影が残る場合を△、指紋除去剤の成分が表面に残り、指紋を拭き取ることが出来たかどうか判別できない場合を×とした。
その結果を表2に示す。
また、外観観察結果の例として、例えば、実施例1、比較例1及び比較例2の溶解剤で拭き取った前後の外観観察結果を
図1に示す。
【0079】
(水の接触角による指紋付着の判定方法)
金属表面の水の接触角測定方法は、表面に0.8μL〜1.2μLの水を滴下して、そのときの接触角を接触角計(協和界面科学社製、DMe−210)を用いて測定し、3点の測定値の平均値を接触角とした。
はじめに、上述のヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片を塩素系溶剤で洗浄した清浄面の水の接触角を測定した。
次に、この値を基準として、指紋が付着した場合の指紋上の接触角及び除去した場合の接触角を比較した。
ここで、ヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片上での水滴の接触角測定方法に関する定義を示す断面図を
図2に、部材表面に付着した指紋の有無を判定する方法のフローチャート図を
図3に、ヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片に指紋を付着した後の金属表面の構成図及び金属表面に付着した指紋の水の接触角測定に関する断面図を
図4にそれぞれ示す。
【0080】
(水の接触角)
まず、基準となる清浄な金属表面の接触角を測定した。はじめに、上述のヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片を塩素系溶剤で洗浄し、1μLの水を滴下して水滴の接触角を測定したところ、3点の測定値の平均値は85°だった。そこで、この接触角のバラツキを考慮した基準角を82°以上、88°以下として設定した。
つぎに、表面に指紋を付着させ、指紋上に1μLの水を滴下したときの接触角を測定した。次いで、実施例1〜9、及び比較例1〜5の溶解剤を指紋が付着した金属表面にスプレーし、1分間溶液が表面に付着した状態で放置したのちに、マイクロファイバーによって拭き取り水滴の接触角を測定した。基準角に対して、拭き取ったのちの水の接触角が82°以上、88°未満である時を○、82°未満の場合は×とした。
その結果を表2に示す。
ここで、水の接触角の測定例として、例えば、ヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片の清浄な面と、実施例1、さらに比較例1及び比較例2の溶解剤で拭き取った前後の水の接触角を示す断面図を
図5に示す。
さらに、溶解剤中の指紋除去剤濃度と、ヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片に指紋を付着した後に、本発明の実施例1〜9、さらに比較例1及び比較例2の溶解剤を塗布して拭き取った後の水の接触角との関係を表すグラフを
図6に示す。
【0081】
[特性評価(2)]
次に、特性評価(2)として、ヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304にかわり、その他の部材材質を用いて、実施例10〜15、及び比較例6〜11に示す以下の特性評価を行った。その結果を表3、表4及び表5にそれぞれ示す。
【0082】
(実施例10〜15、比較例6〜11)
(アクリル樹脂部材)
ヘアーライン加工によって粗面化された、表面の平均粗さ(Ra)が0.2μm以上1.0mm未満の凹凸構造を有するSUS304(長さ150mm、幅70mm、0.7mm厚)の試験片にかわり、透明のアクリル樹脂テストピース(スタンダードテストピース社製、長さ150mm、幅70mm、2.0mm厚)を使用して、ヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304の金属片で実施した評価と同様に、指紋除去性の外観観察、指紋が付着した場合の指紋上の接触角及び除去した場合の接触角を比較した。
その結果を表3に示す。
【0083】
(スライドガラス部材)
次に、スライドガラス(松波硝子工業社製、長さ76mm、幅26mm、1.2mm厚)を使用して、ヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304の金属片で実施した評価と同様に、指紋除去性の外観観察、指紋が付着した場合の指紋上の接触角及び除去した場合の接触角を比較した。
その結果を表4に示す。
【0084】
(塗装されたスチール部材)
さらに、スチール板にエポキシ塗料で塗装された部材(スタンダードテストピース社製、長さ150mm、幅70mm、4.0mm厚のスチール製板にエポキシ塗料で塗装したもの)を使用して、ヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304の金属片で実施した評価と同様に、指紋除去性の外観観察、指紋が付着した場合の指紋上の接触角及び除去した場合の接触角を比較した。
その結果を表5に示す。
【0085】
[特性評価(3)]
さらに、特性評価(3)として、特性評価(1)のヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304試験片に付着した指紋の除去方法にかわり、ヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304とアクリル樹脂部材材質を用いて、実施例16〜19、及び比較例12〜15に示す以下の特性評価を行った。その結果を表6に示す。
【0086】
(実施例16〜19、比較例12〜15)
(指紋除去性の外観観察と水の接触角)
ヘアーライン加工によって粗面化された、表面の平均粗さ(Ra)が0.2μm以上1.0mm未満の凹凸構造を有するSUS304(長さ150mm、幅70mm、0.7mm厚)試験片の金属表面と、透明のアクリル樹脂テストピース(スタンダードテストピース社製、長さ150mm、幅70mm、2.0mm厚)試験片の樹脂表面に、それぞれ指紋を付着させた。その後、実施例16〜19、及び比較例12〜15の溶解剤をそれぞれのマイクロファイバークロスに約0.2gの噴射量で2回スプレーして繊維に塗布して、それぞれの試験片上に付着した指紋をすぐに拭き取ったときの外観を目視で確認した。指紋除去剤の成分が表面に残らず、かつ指紋を完全に拭き取ることができた場合を○、指紋除去剤の成分は表面に残らないが指紋の影が残る場合を△、指紋除去剤の成分が表面に残り、指紋を拭き取ることが出来たかどうか判別できない場合を×とした。
さらに、特性評価(1)のヘアーライン加工によって粗面化されたSUS304の金属片で実施した評価と同様に、指紋が付着した場合の指紋上の接触角及び除去した場合の接触角を比較した。
その結果を表6に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
[評価結果(1)]
特性評価(1)の結果から、実施例1〜9については、いずれの評価においても、指紋除去後の外観及び接触角ともに良好な結果を示した。一方、比較例1は、指紋除去後に指紋が完全に消えることは無く、さらに接触角は指紋に起因する成分の影響のため62°の値だった。また、比較例2〜5は、いずれも指紋除去剤が表面に残り、指紋を拭き取ることが出来たかどうか判別できない状態だった。さらに、この表面の接触角は20°以下であることから、水溶性の指紋除去剤成分が表面に残っているために接触角が低下したと推定される。これらのことから、比較例1〜5は実施例1〜9と比較して劣ることが明確となった。
【0094】
[評価結果(2)]
特性評価(2)の結果から、実施例10〜15については、いずれの部材表面においても、指紋除去後の外観及び接触角ともに良好な結果を示した。一方、比較例6、比較例8及び比較例10は、指紋除去後に指紋が完全に消えることは無く、さらに接触角は指紋に起因する成分の影響のため60°付近の値だった。また、比較例7、比較例9及び比較例11は、いずれも指紋除去剤が表面に残り、指紋を拭き取ることが出来たかどうか判別できない状態だった。さらに、この表面の接触角は20°以下であることから、水溶性の指紋除去剤成分が表面に残っているために接触角が低下したと推定される。これらのことから、比較例6〜11は実施例10〜15と比較して劣ることが明確となった。
【0095】
[評価結果(3)]
特性評価(3)の結果から、実施例16〜19については、いずれの部材表面においても、指紋除去後の外観及び接触角ともに良好な結果を示した。一方、比較例12及び比較例14は、指紋除去後に指紋が完全に消えることは無く、さらに接触角は指紋に起因する成分の影響のため60°付近の値だった。また、比較例13及び比較例15は、いずれも指紋除去剤が表面に残り、指紋を拭き取ることが出来たかどうか判別できない状態だった。さらに、この表面の接触角は20°以下であることから、水溶性の指紋除去剤成分が表面に残っているために接触角が低下したと推定される。これらのことから、比較例12〜15は実施例16〜19と比較して劣ることが明確となった。
【0096】
[まとめ]
以上の結果より、本発明の溶解剤と除去方法であれば、最終形態である製品の外観を構成する金属材料、プラスティック材料、ガラス材料、塗装された金属や樹脂材料などの部材表面に存在する微細な凹部に浸み込みやすく、かつ強固に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を速やかに溶解し、かつ大量の水ですすぐ工程や、水によるリンス工程がなくとも、油や指紋あるいは手垢、洗浄剤に含まれる成分が部材表面に残らずに速やかに除去するための溶解剤とすることができ、この効果によって、部材表面の油や指紋あるいは手垢を簡便に除去することができる。
【0097】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【課題】最終形態である製品の外観を構成する金属材料、プラスティック材料、ガラス材料、塗装された金属や樹脂材料などの部材表面に存在する微細な凹部に浸み込みやすく、かつ強固に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を速やかに溶解し、かつ大量の水ですすぐ工程や、水によるリンス工程がなくとも、油や指紋あるいは手垢、洗浄剤に含まれる成分が部材表面に残らずに速やかに除去するための溶解剤と、それを用いた除去方法を提供する。
とからなる溶解剤であり、当該溶解剤中の指紋除去剤の濃度が0.05重量%以上5.0重量%以下であることを特徴とする製品の外観を構成する部材表面に転写して付着した油や指紋あるいは手垢を除去する溶解剤。