(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965497
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】レボセチリジン固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/495 20060101AFI20211028BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20211028BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20211028BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20211028BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20211028BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20211028BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
A61K31/495
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/40
A61K9/16
A61P17/04
A61P37/08
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-118124(P2017-118124)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-203705(P2018-203705A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000169880
【氏名又は名称】高田製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石黒 紘規
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智裕
(72)【発明者】
【氏名】澤井 宏和
(72)【発明者】
【氏名】本江 彩
【審査官】
新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−159393(JP,A)
【文献】
特開2016−094364(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/084676(WO,A1)
【文献】
特開2003−183162(JP,A)
【文献】
特開2003−171314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/00
A61K 47/00−47/69
A61P 17/00
A61P 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、リンゴ酸塩と、シクロデキストリンと、粉末還元麦芽糖水アメとを含むレボセチリジン固形製剤。
【請求項2】
レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩をレボセチリジンとして0.05〜5質量%含み、リンゴ酸塩をリンゴ酸として0.1〜5質量%含む、請求項1に記載のレボセチリジン固形製剤。
【請求項3】
顆粒製剤である、請求項1または2に記載のレボセチリジン固形製剤。
【請求項4】
ドライシロップ製剤である、請求項3に記載のレボセチリジン固形製剤。
【請求項5】
シクロデキストリンと、粉末還元麦芽糖水アメとを混合し、混合物(A)を得る工程(i)と、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩とリンゴ酸塩を精製水に混合、溶解し、混合液(B)を得る工程(ii)と、流動状態または転動状態にある混合物(A)に対して、混合液(B)をスプレーして造粒する造粒工程(iii)とを有する、レボセチリジン固形製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてレボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
レボセチリジン塩酸塩(Levocetirizine Hydrochloride)は、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹等に対する治療薬として知られ、錠剤とシロップ剤が販売されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ザイザル(登録商標)錠5mg、ザイザル(登録商標)シロップ0.05%の医薬品インタビューフォーム(2017年3月改訂(第9版))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に錠剤は、小児や高齢者には嚥下しにくく服用性に劣る。一方、シロップ剤は、液状であり小児や高齢者であっても服用しやすいが、冷所に保管する必要がある場合が多く、携帯もしにくい等、取扱性に劣る。これに対して顆粒製剤は、嚥下性に優れ、一般に冷所に保管する必要がなく、携帯もしやすい。また、口腔内速崩壊錠も、嚥下性に優れ、取扱性にも優れる。よって、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する製剤においても、顆粒製剤や口腔内速崩壊錠が求められる。
また、固形製剤には、保存時の安定性に優れることが当然に要求される。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する固形製剤(以下、レボセチリジン固形製剤ともいう。)の提供、特に、経時的な類縁物質の増加が抑制され安定性に優れた固形製剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する顆粒製剤や口腔内速崩壊錠等の開発を進めていく過程で、レボセチリジン固形製剤にリンゴ酸塩を配合することにより、経時的な類縁物質の増加を抑制でき、安定性に優れる固形製剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、リンゴ酸塩とを含むレボセチリジン固形製剤。
〔2〕レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩をレボセチリジンとして0.05〜5質量%含み、リンゴ酸塩をリンゴ酸として0.1〜5質量%含む、〔1〕に記載のレボセチリジン固形製剤。
〔3〕さらにシクロデキストリンと、粉末還元麦芽糖水アメを含有する、〔1〕または〔2〕に記載のレボセチリジン固形製剤。
〔4〕顆粒製剤である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のレボセチリジン固形製剤。
〔5〕ドライシロップ製剤である、〔4〕に記載のレボセチリジン固形製剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定性に優れたレボセチリジン固形製剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のレボセチリジン固形製剤(以下、単に「固形製剤」ともいう。)は、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、リンゴ酸塩とを含む。
【0010】
レボセチリジンの薬学的に許容される塩としては、塩酸塩等が挙げられ、なかでもレボセチリジン二塩酸塩が好ましい。
固形製剤100質量%中のレボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩の含有量は、特に制限はなく、固形製剤の剤形等に応じて適宜設定できるが、レボセチリジンとして、0.05〜5質量%が好ましい。固形製剤がたとえば顆粒製剤の場合には、なかでも0.05〜2質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましく、0.2〜0.7質量%がさらに好ましい。
【0011】
リンゴ酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられるが、なかでもリンゴ酸ナトリウム塩が好ましく、たとえばリンゴ酸二ナトリウム塩・1/2水和物等が好適に使用できる。固形製剤100質量%中のリンゴ酸塩の含有量は、特に制限はないが、リンゴ酸として、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましく、0.1〜1.5質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であれば、固形製剤の経時的な類縁物質の増加を抑制でき、安定性を向上させる効果が十分に得られる。一方、上記範囲の上限値以下であれば、リンゴ酸塩に起因する味が過度になることなく、味のよい固形製剤となる。
【0012】
固形製剤中における、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩に対するリンゴ酸塩の質量比は、レボセチリジンの量に対するリンゴ酸の比率として、0.1〜10が好ましく、0.5〜5がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。この範囲内であれば、リンゴ酸塩による固形製剤の安定性向上効果がより優れる。
【0013】
本発明の固形製剤は、リンゴ酸塩以外の1種以上の添加剤を含有してもよい。なかでも、糖または糖アルコールと、レボセチリジンの苦味をマスキングする矯味剤とを併用することが、味のよい固形製剤が得られる点で好ましい。
【0014】
糖または糖アルコールとしては、たとえば、粉末還元麦芽糖水アメ、白糖、トレハロース、フルクトース、キシロース、マルトース、乳糖水和物、無水乳糖、ブドウ糖、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、マルチトール等などが挙げられ、1種以上を使用できるが、味がよく、リンゴ酸塩による安定性向上効果を損なわない点で、粉末還元麦芽糖水アメを使用することが好ましい。
糖または糖アルコールの含有量は、固形製剤100質量%中、45〜97質量%が好ましく、後述するその他の添加剤の使用割合や剤形等に応じて、適宜設定できる。なかでも70〜97質量%が好ましく、85〜95質量%がより好ましい。
【0015】
矯味剤としては、β−シクロデキストリン、アスコルビン酸、アスパルテーム、エリスリトール、キシリトール、クエン酸水和物、グリチルリチン酸モノアンモニウム、スクラロース,1−メントール等が挙げられ、1種以上を使用できるが、苦味をマスキングする効果が高く、リンゴ酸塩による安定性向上効果を損なわない点で、β−シクロデキストリンが好ましい。
矯味剤の含有量は、固形製剤100質量%中、1〜15質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
【0016】
その他の添加剤としては、たとえば賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、着色剤、界面活性剤等が挙げられ、医薬品分野において使用可能な添加剤であれば、必要に応じて、1種以上を使用できる。
賦形剤としては、たとえば、結晶セルロース、バレイショデンプン、アルファー化デンプン、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。
崩壊剤としては、たとえば、セルロース系崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等。)、クロスポビドン、デンプン系崩壊剤(トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等。)等が挙げられる。
滑沢剤としては、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。
結合剤としては、たとえば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ステアリルアルコール、アンモニオメタクリレート・コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等が挙げられる。
着色剤としては、たとえば黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号,カラメル等が挙げられる。
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80等が挙げられる。
その他の添加剤としては、酸化チタン、カルナウバロウ等が挙げられる。
【0017】
本発明のレボセチリジン固形製剤としては、普通錠、口腔内速崩壊錠、顆粒製剤、散剤、チュアブル錠等が挙げられる。これらのいずれの剤形においても、リンゴ酸塩を配合することにより、安定性に優れた固形製剤とすることができる。また、顆粒製剤の場合、そのまま服用してもよいが、水へ懸濁して服用する形態、すなわち、ドライシロップ製剤とすることも好適である。本発明の顆粒製剤は、そのまま服用しても、水に懸濁して服用しても、良好な味を呈する。
【0018】
本発明の固形製剤の製造方法は、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、リンゴ酸塩とを含む固形製剤を製造できる方法であれば特に制限はなく、剤形に応じた公知の製法により製造できる。
たとえば顆粒製剤の場合には、乾式造粒法、湿式造粒法等の公知の造粒工程を用いた製法が挙げられ、使用する添加剤の種類等に応じて適宜選択できる。レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩とリンゴ酸塩に加えて、糖または糖アルコールと矯味剤とを用いる場合の顆粒製剤の製造方法の一例としては、造粒工程に湿式造粒法を採用した方法が例示できる。具体的には、糖または糖アルコールと矯味剤とを混合し、混合物(A)を得る工程(i)と、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩とリンゴ酸塩を精製水に混合、溶解し、混合液(B)を得る工程(ii)と、流動状態または転動状態にある混合物(A)に対して、混合液(B)をスプレーして造粒する造粒工程(iii)とを行う方法が挙げられる。
造粒工程の後、適宜乾燥工程を行い、必要に応じてふるいで篩過し整粒することにより、顆粒製剤を得ることができる。
【実施例1】
【0019】
次のようにして表1の処方のレボセチリジン固形製剤(顆粒製剤(ドライシロップ剤))を製造した。
まず、粉末還元麦芽糖水アメと、β−シクロデキストリンとをそれぞれ秤量して混合した混合物に対し、レボセチリジン二塩酸塩とリンゴ酸二ナトリウム塩・1/2水和物(「DL−リンゴ酸ナトリウム」(扶桑化学工業社製))を精製水に加えて溶解させた混合液を加え、造粒、乾燥、整粒を行い、実施例1の顆粒製剤(ドライシロップ剤)を得た。
得られた顆粒製剤について、後記の方法にて純度試験を行った。結果を表1に示す。
【0020】
[比較例1]
表1に示すように、リンゴ酸二ナトリウム塩・1/2水和物を使用しない処方とし、その分、粉末還元麦芽糖水アメの比率を高めた以外は、実施例1と同様にして比較例1の顆粒製剤(ドライシロップ剤)を得て、実施例1と同様の方法で純度試験を行った。結果を表1に示す。
【0021】
<純度試験>
実施例1及び比較例1の各顆粒製剤を表1に示す3条件で2週間保存した際の保存前後の総類縁物質量を測定することで、純度試験を実施した。
なお、総類縁物質量は、高速液体クロマトグラフィーを用いた自動分析法にて測定、定量した複数種の類縁物質量の総和であり、表1に記載の総類縁物質量の数値は、レボセチリジン二塩酸塩由来のピーク面積に対する、各類縁物質によるピーク面積の総和の割合を百分率で示したものである。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示すように、リンゴ酸二ナトリウム塩・1/2水和物を含まない比較例1の顆粒製剤は、表1に示す3条件での保存後に、総類縁物質量の増加が顕著であった。これに対して、リンゴ酸二ナトリウム塩・1/2水和物を含む実施例1の顆粒製剤は、いずれの条件で保存した場合にも、総類縁物質量の増加が少なく、安定性に優れていた。