(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予め設定される前記断熱部温度の閾値の1つを第1上限温度(Ti_lim1)とし、予め設定され、前記第1上限温度よりも高く設定される閾値を第2上限温度(Ti_lim2)とすると、
前記断熱部温度の少なくとも1つが前記第1上限温度以上、前記第2上限温度以下であるとき、警報(Sh)を発する異常判定部(80、280)をさらに備える請求項1に記載の断熱装置。
前記断熱部は、前記熱源側に設けられる平板状の高温側部材(10)および前記高温側部材とは別体に形成され、前記高温側部材と離間しつつ前記熱源とは反対側に設けられる平板状の低温側部材(20)を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の断熱装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、断熱装置の実施形態を図面に基づいて説明する。複数の実施形態の説明において、実質的に同一の構成には、同一の符号を付して説明する。
断熱装置は、例えば、モータの巻線を封止する樹脂を焼き固めるための焼成や部材の乾燥等を行う熱源としての加熱炉7に用いられる。加熱炉7の温度を加熱炉温度Tfとする。
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、断熱装置11は、真空ポンプ5、真空計6、複数の断熱部51−54、断熱部温度検出部60、圧力制御部70および異常判定部80を備える。
断熱装置11は、高温側と低温側との間における熱の移動を抑制する。
【0014】
真空ポンプ5は、断熱部51−54に接続されており、断熱部51−54の断熱室100から気体を排出可能である。真空ポンプ5の圧力または真空ポンプ5と断熱部51−54との間の圧力をポンプ圧力Ppとする。ここで、本明細書中において、圧力は、絶対圧力または相対圧力を含む。
真空ポンプ5は、例えば、油圧を用いる油回転真空ポンプである。
【0015】
真空計6は、真空ポンプ5と断熱部51−54との間に設けられており、ポンプ圧力Ppを検出可能である。
真空計6は、例えば、電離真空計である。加熱したフィラメントから放出する熱電子を加速する。加速した熱電子と気体分子とが衝突したとき、イオンが生成される。真空計6は、イオンの生成量が気体分子の密度に比例することを利用して、ポンプ圧力Ppを検出する。
また、真空計6は、検出したポンプ圧力Ppを圧力制御部70に出力する。
【0016】
断熱部51−54は、加熱炉7に接し、中空に形成されており、真空ポンプ5に接続されている。
断熱部51−54は、空間である断熱室100を有する。断熱室100の圧力を断熱室圧力Piとする。真空ポンプ5が断熱室100の気体を排出して、断熱室圧力Piが低下する。断熱室100を減圧し、真空にすることによって、断熱部51−54は、加熱炉7からの熱を断熱可能である。なお、真空計6は、断熱室圧力Piを検出してもよい。
【0017】
図2に示すように、断熱部51−54は、並列に配置される平板を分割して構成されている。
図2において、断熱部51を記載している。断熱部52−54は、断熱部51と同様に構成されている。
断熱部51−54は、高温側部材としての高温側パネル10、低温側部材としての低温側パネル20、シール部材30、球体35および網目状部材40を有する。
【0018】
高温側パネル10は、加熱炉7の外壁8を覆うように設けられており、加熱炉7の外壁8に接触するように設けられている。
また、高温側パネル10は、耐熱性が高い金属で形成され、正方形状の平板に形成されている。
【0019】
低温側パネル20は、高温側パネル10からみて外壁8とは反対側である低温側に高温側パネル10と離間した状態で設けられている。
また、低温側パネル20は、高温側パネル10とは別体に形成されている。
さらに、低温側パネル20は、平面部21および通路形成部22を含む。
【0020】
平面部21は、高温側パネル10に対向するように設けられる平板状の部位であり、高温側パネル10と同じ大きさの正方形状に形成されている。
また、平面部21は、連通孔210を含む。
連通孔210は、高温側パネル10側の平面部21と、高温側パネル10とは反対側の平面部21と、を連通し、後述する断熱室100と連通している。
【0021】
通路形成部22は、高温側パネル10とは反対側の平面部21の平面212に設けられる筒状の部位である。
また、通路形成部22は、平面部21の平面212から外壁8とは反対の方向に伸びるように、形成されている。
さらに、通路形成部22は、通路220を有する。
通路220は、連通孔210と連通している。
【0022】
シール部材30は、高温側パネル10と低温側パネル20との間に設けられており、正方形の環状に形成されている。
また、シール部材30は、高温側接触部31および低温側接触部32を含む。
高温側接触部31は、加熱炉7の外壁8とは反対側の高温側パネル10の平面101に接触している。
また、高温側接触部31は、2つの接触面311を含む。なお、高温側接触部31は、接触面311を含まなくてもよい。
【0023】
2つの接触面311は、高温側パネル10の平面101に接触する。2つの接触面311の間には、溝310が形成されている。
溝310は、シール部材30に対して高温側パネル10が移動するとき変形可能である。これにより、2つの接触面311と高温側パネル10の平面101の接触状態が維持される。
【0024】
低温側接触部32は、加熱炉7の外壁8側の低温側パネル20の平面201に接触している。
また、低温側接触部32は、外壁8から離れるにしたがって断面積が小さくなるように、形成されている。
【0025】
シール部材30は、高温側パネル10と低温側パネル20との相対移動に対応して変形可能な材料で形成されている。
シール部材30は、例えば、シリコーンゴムから形成されている。シール部材30により、高温側パネル10および低温側パネル20とともに、減圧可能な断熱室100が形成される。
断熱室100は、断熱部51−54に1つ設けられている。断熱装置11は、複数の独立した断熱室100を有する。
シール部材30は、断熱室100の気密を維持可能である。
【0026】
球体35は、1つの断熱室100に複数設けられる。
球体35は、高温側パネル10の平面101と、加熱炉7の外壁8側の低温側パネル20の平面201とに比較的狭い面積で接触可能に形成されている。
球体35は、高温側パネル10と低温側パネル20とが離間した状態を維持する。
【0027】
網目状部材40は、断熱室100のほぼ全域にわたって敷き詰められるように、設けられている。
また、網目状部材40は、シール部材30の断熱室100側の内壁301に接触可能である。網目状部材40がシール部材30に接触するとき、網目状部材40は、断熱室100における移動が規制される。
【0028】
図3に示すように、網目状部材40は、複数の板状部材41および複数の網目400を含む。
板状部材41は、弾性変形可能であり、網目状部材40を網目状に仕切る。複数の板状部材41が網目状部材40を網目状に仕切ることで、空間である複数の網目400が形成される。
【0029】
複数の網目400のいくつかには、それぞれ1つの球体35が収容されている。これにより、網目状部材40は、断熱室100における球体35の移動を規制する。また、網目状部材40の網目400は、大きさが球体35の大きさに比べ少し大きくなるように、形成されている。
【0030】
図1に戻って、断熱部温度検出部60は、断熱部51−54に対して加熱炉7とは反対側に設けられ、各断熱部51−54の中央に設けられている。断熱部51の温度を第1断熱部温度Ti1とする。断熱部52の温度を第2断熱部温度Ti2とする。断熱部53の温度を第3断熱部温度Ti3とする。断熱部54の温度を第4断熱部温度Ti4とする。
【0031】
断熱部温度検出部60は、例えば、2種類の金属線の先端同士が接触した回路を作り、接合点に発生する熱起電力を通じて温度差を測定する熱電対である。
また、断熱部温度検出部60は、断熱部温度Ti1−Ti4を検出可能である。
さらに、断熱部温度検出部60は、検出した断熱部温度Ti1−Ti4を圧力制御部70に出力する。
【0032】
圧力制御部70は、マイコンを主体として構成されており、CPU、読み出し可能な非一時的有形記録媒体、ROM、I/O、および、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。圧力制御部70の各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
【0033】
圧力制御部70は、真空ポンプ5および断熱部温度検出部60に接続されており、ポンプ圧力Pp、断熱部温度Ti1−Ti4または加熱炉温度Tfに基づいて、真空ポンプ5を制御する。
また、圧力制御部70は、ポンプ圧力Ppに基づいて真空ポンプ5を制御することにより、断熱室圧力Piを制御可能である。予め設定されるポンプ圧力Ppの目標値を目標圧力Pp
*とする。
【0034】
圧力制御部70は、ポンプ圧力Ppが目標圧力Pp
*未満になったとき、真空ポンプ5を停止するように制御する。
また、圧力制御部70は、ポンプ圧力Ppが目標圧力Pp
*以上であるとき、真空ポンプを作動するように制御し、断熱室圧力Piが低下するように制御する。
【0035】
予め設定される断熱部温度Ti1−Ti4の閾値の1つを第1上限温度Ti_lim1とする。予め設定され、第1上限温度Ti_lim1よりも高く設定される温度の閾値を第2上限温度Ti_lim2とする。なお、第1上限温度Ti_lim1および第2上限温度Ti_lim2は、断熱部温度Ti1−Ti4のそれぞれに対して、設定してもよい。
【0036】
圧力制御部70は、断熱部温度Ti1−Ti4の少なくとも1つが第2上限温度Ti_lim2を超えたとき、真空ポンプ5を作動するように、制御する。
また、圧力制御部70は、断熱部温度Ti1−Ti4の全てが第2上限温度Ti_lim2以下であるとき、真空ポンプ5を停止するように、制御する。
【0037】
異常判定部80は、圧力制御部70と同様に、マイコンを主体として構成されている。
異常判定部80は、断熱部温度Ti1−Ti4の少なくとも1つが第1上限温度Ti_lim1以上、第2上限温度Ti_lim2以下であるとき、圧力制御部70に警報Shを発する。異常判定部80は、警報Shとして、例えば、別に設けられるモニタの画面に警告と表示する、または、表示画面を赤色に変更する。
【0038】
図4のタイムチャートを参照して、圧力制御部70の制御を説明する。
時刻x0に、加熱炉7は、加熱を開始する。加熱炉温度Tfが上昇し始める。同時に、真空ポンプ5が作動する。ポンプ圧力Ppが低下し、断熱室圧力Piが低下する。また、断熱部温度Ti1−Ti4が徐々に上昇し、ほぼ一定となる。
【0039】
時刻x1に、ポンプ圧力Ppが目標圧力Pp
*に到達し、ポンプ圧力Ppが目標圧力Pp
*未満になる。このとき、圧力制御部70は、真空ポンプ5を停止するように、制御する。
時刻x2に、加熱炉温度Tfが目標加熱炉温度Tf
*になる。時刻x2以降は、加熱炉温度Tfは、ほぼ一定である。
【0040】
時刻x3に、断熱室100へのリーク等により、断熱部51の異常が生じ、断熱部51の断熱性能が低下したとする。このとき、第1断熱部温度Ti1が急上昇する。第2断熱部温度Ti2、第3断熱部温度Ti3および第4断熱部温度Ti4は、ほぼ一定である。
時刻x4に、第1断熱部温度Ti1が第1上限温度Ti_lim1以上となる。また、第1断熱部温度Ti1は、第2上限温度Ti_lim2以下である。このとき、異常判定部80は、警報Shを発する。
【0041】
時刻x5に、第1断熱部温度Ti1が第2上限温度Ti2_limを超える。このとき、圧力制御部70は、真空ポンプ5を作動するように、制御する。第1断熱部温度Ti1が低下する。
時刻x6に、第1断熱部温度Ti1が第1上限温度Ti_lim1未満となる。このとき、異常判定部80は、警報Shを解除する。
【0042】
時刻x5から所定の時間Hx経過後の時刻x7に、圧力制御部70は、真空ポンプ5を停止するように、制御する。このとき、第1断熱部温度Ti1は、第2断熱部温度Ti2、第3断熱部温度Ti3および第4断熱部温度Ti4の値に戻る。所定の時間Hxは、任意に設定され、実験やシミュレーションを用いて、算出される。また、所定の時間Hxは、真空ポンプ5の性能、加熱炉7の性能または断熱部51−54の構造等により、調整される。
時刻x7以降、断熱部温度Ti1−Ti4は、ほぼ一定となる。
【0043】
図5のフローチャートを参照して、圧力制御部70の制御を説明する。フローチャートにおいて、記号「S」は、ステップを意味する。
ステップ101において、圧力制御部70は、真空ポンプ5が作動するように、制御する、すなわち、真空ポンプ5がオンになる。
【0044】
ステップ102において、圧力制御部70は、ポンプ圧力Ppが目標圧力Pp
*未満であるか否かを判定する。
ポンプ圧力Ppが目標圧力Pp
*未満であったとき、処理は、ステップ103に移行する。
ポンプ圧力Ppが目標圧力Pp
*以上であったとき、処理は、ステップ101に戻る。
ステップ103において、圧力制御部70は、真空ポンプ5を停止するように、制御する、すなわち、真空ポンプ5をオフにする。
【0045】
ステップ104において、圧力制御部70は、断熱部温度Ti1−Ti4の少なくとも1つが第1上限温度Ti_lim1以上であるか否かを判定する。
断熱部温度Ti1−Ti4の全てが第1上限温度Ti_lim1未満であるとき、処理は、ステップ105に移行する。
断熱部温度Ti1−Ti4の少なくとも1つが第1上限温度Ti_lim1以上であるとき、処理は、ステップ106に移行する。
【0046】
ステップ105において、圧力制御部70は、真空ポンプ5をオフのままにし、処理は、ステップ110に移行する。
ステップ106において、異常判定部80は、警報Shを発する。
【0047】
ステップ107において、圧力制御部70は、断熱部温度Ti1−Ti4の少なくとも1つが第2上限温度Ti_lim2を超えているか否かを判定する。
断熱部温度Ti1−Ti4の全てが第2上限温度Ti_lim2以下であるとき、処理は、ステップ105に移行する。
断熱部温度Ti1−Ti4の少なくとも1つが第2上限温度Ti_lim2を超えているとき、処理は、ステップ108に移行する。
ステップ108において、圧力制御部70は、真空ポンプ5をオンにする。
ステップ109において、所定の時間Hx経過後、圧力制御部70は、真空ポンプ5をオフにする。
【0048】
ステップ110において、圧力制御部70は、真空ポンプ5の制御を行うか否か、すなわち、制御フラグFcが0または1のいずれかであるかを判定する。
圧力制御部70が真空ポンプ5の制御を行う、すなわち、制御フラグFcが1であるとき、処理は、ステップ104に移行する。
圧力制御部70が真空ポンプ5の制御を行わない、すなわち、制御フラグFcが0であるとき、処理は、ステップ111に移行する。
ステップ111において、圧力制御部70は、断熱室100に大気を導入し、処理は、終了する。
【0049】
(効果)
複数の断熱室が設けられる場合、断熱室の数に応じて、真空計が増加する。真空計は、比較的高価で、真空計が増加することにより、断熱装置のコストが増加する。
そこで、断熱装置11は、断熱部温度検出部60により、複数の断熱室100の断熱性能を確認でき、真空計6を減らすことができる。断熱部温度検出部60は、真空計6と比較して、安価であり、断熱装置11を比較的安価にできる。
【0050】
さらに、圧力制御部70がポンプ圧力Ppまたは断熱部温度Ti1−Ti4に基づいて、真空ポンプ5を制御する。これにより、どの断熱室100に不具合が生じているか特定でき、複数の断熱室100の真空度を一定に制御でき、複数の断熱室100の真空度が一定に維持される。したがって、断熱装置11は、複数の断熱室を有しても、真空計6の数を減らし、複数の断熱室100の断熱性能を維持できる。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態では、圧力制御部の制御が異なる点および温度偏差演算部をさらに備える点を除き、第1実施形態と同様である。
図6に示すように、第2実施形態の断熱装置12は、温度偏差演算部200をさらに備える。
【0052】
第1断熱部温度Ti1と第2断熱部温度Ti2との偏差を第1断熱部温度偏差ΔTi1とする。第1断熱部温度Ti1と第3断熱部温度Ti3との偏差を第2断熱部温度偏差ΔTi2とする。第1断熱部温度Ti1と第4断熱部温度Ti4との偏差を第3断熱部温度偏差ΔTi3とする。第2断熱部温度Ti2と第3断熱部温度Ti3との偏差を第4断熱部温度偏差ΔTi4とする。第2断熱部温度Ti2と第4断熱部温度Ti4との偏差を第5断熱部温度偏差ΔTi5とする。第3断熱部温度Ti3と第4断熱部温度Ti4との偏差を第6断熱部温度偏差ΔTi6とする。
【0053】
断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6は、以下関係式(1)−(6)のように、表される。
ΔTi1=|Ti1−Ti2| ・・・(1)
ΔTi2=|Ti1−Ti3| ・・・(2)
ΔTi3=|Ti1−Ti4| ・・・(3)
ΔTi4=|Ti2−Ti3| ・・・(4)
ΔTi5=|Ti2−Ti4| ・・・(5)
ΔTi6=|Ti3−Ti4| ・・・(6)
【0054】
温度偏差演算部200は、断熱部温度検出部60に接続されており、断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6を演算可能である。
圧力制御部270は、ポンプ圧力Pp、断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6または加熱炉温度Tfに基づいて、真空ポンプ5を制御する。
【0055】
予め設定される断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6の閾値を第1上限偏差ΔTi_lim1とする。予め設定され、第1上限偏差ΔTi_lim1よりも高く設定される偏差の閾値を第2上限偏差ΔTi_lim2とする。なお、第1上限偏差ΔTi_lim1および第2上限偏差ΔTi_lim2は、断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6のそれぞれに対して、設定してもよい。
【0056】
圧力制御部270は、断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6の少なくとも1つが第2上限偏差ΔTi_lim2を超えたとき、真空ポンプ5を作動するように、制御する。
また、圧力制御部270は、断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6の全てが第2上限偏差ΔTi_lim2以下であるとき、真空ポンプ5を停止するように、制御する。
異常判定部280は、断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6の少なくとも1つが第1上限偏差ΔTi_lim1以上、第2上限偏差ΔTi_lim2以下であるとき、圧力制御部270に警報Shを発する。
【0057】
図7のタイムチャートを参照して、圧力制御部270の制御を説明する。
時刻y0から時刻y2までは、時刻x0から時刻x2までと同様である。
時刻y3に、断熱室100へのリーク等による断熱部51の異常が生じ、断熱部51の断熱性能が低下したとする。このとき、第1断熱部温度Ti1が急上昇する。第1断熱部温度偏差ΔTi1、第2断熱部温度偏差ΔTi2および第3断熱部温度偏差ΔTi3が高くなる。また、第4断熱部温度偏差ΔTi4、第5断熱部温度偏差ΔTi5および第6断熱部温度偏差ΔTi6は、ほぼ一定である。
【0058】
時刻y4に、第1断熱部温度偏差ΔTi1、第2断熱部温度偏差ΔTi2および第3断熱部温度偏差ΔTi3は、第1上限偏差ΔTi_lim1以上となる。また、第1断熱部温度偏差ΔTi1、第2断熱部温度偏差ΔTi2および第3断熱部温度偏差ΔTi3は、第2上限偏差ΔTi_lim2以下である。このとき、異常判定部280は、警報Shを発する。
【0059】
時刻y5に、第1断熱部温度偏差ΔTi1、第2断熱部温度偏差ΔTi2および第3断熱部温度偏差ΔTi3が第2上限偏差ΔTi_lim2を超える。このとき、圧力制御部270は、真空ポンプ5を作動するように、制御する。第1断熱部温度偏差ΔTi1、第2断熱部温度偏差ΔTi2および第3断熱部温度偏差ΔTi3が低下する。
時刻y6に、第1断熱部温度偏差ΔTi1が第1断熱部温度偏差ΔTi1未満となる。このとき、異常判定部280は、警報Shを解除する。
【0060】
時刻y5から所定の時間Hx経過後の時刻y7に、圧力制御部270は、真空ポンプ5をオフにする。このとき、第1断熱部温度偏差ΔTi1、第2断熱部温度偏差ΔTi2および第3断熱部温度偏差ΔTi3は、第4断熱部温度偏差ΔTi4、第5断熱部温度偏差ΔTi5および第6断熱部温度偏差ΔTi6の値に戻る。
所定の時間Hyは、所定の時間Hxと同様に、設定される。
時刻y7以降、断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6は、ほぼ一定となる。
【0061】
図8のフローチャートを参照して、圧力制御部270の制御を説明する。
ステップ201からステップ203までは、第1実施形態のステップ101からステップ103までと同様である。
ステップ204において、圧力制御部270は、断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6の少なくとも1つが第1上限偏差ΔTi_lim1以上であるか否かを判定する。
断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6の全てが第1上限偏差ΔTi_lim1未満であるとき、処理は、ステップ205に移行する。
断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6の少なくとも1つが第1上限偏差ΔTi_lim1以上であるとき、処理は、ステップ206に移行する。
【0062】
ステップ205において、圧力制御部270は、真空ポンプ5をオフのままにし、処理は、ステップ210に移行する。
ステップ206において、異常判定部280は、警報Shを発する。
【0063】
ステップ207において、圧力制御部270は、断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6の少なくとも1つが第2上限偏差ΔTi_lim2を超えているか否かを判定する。
断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6の全てが第2上限偏差ΔTi_lim2以下であるとき、処理は、ステップ205に移行する。
断熱部温度偏差ΔTi1−ΔTi6の少なくとも1つが第2上限偏差ΔTi_lim2を超えているとき、処理は、ステップ208に移行する。
ステップ208からステップ211は、第1実施形態のステップ108からステップ111までと同様である。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様である。
【0064】
(他の実施形態)
[i]真空ポンプは、油や液体を真空室内に用いない機械式の真空ポンプであるドライポンプであってもよい。また、真空ポンプは、ダイアフラムの往復運動を利用して排気を行うダイアフラム真空ポンプまたは動翼および固定翼からなるターボ分子ポンプであってもよい。
[ii]真空計は、電離真空計に限らず、質量分析計であってもよい。
【0065】
[iii]高温側パネルおよび低温側パネルは、平板状に限定されず、曲面状に形成されてもよい。また、高温側パネルおよび低温側パネルは、三角形状、長方形状、円形状または円環形状であってもよい。高温側パネルおよび低温側パネルの形状は、限定されない。
高温側パネルおよび低温側パネルと同様に、シール部材も三角形状、長方形状、円形状または円環形状であってもよい。シール部材の形状は、限定されない。
【0066】
[iv]
図9に示すように、加熱炉7の外壁8に穴9を設け、高温側パネル10が加熱炉7の炉内に露出するようにしてもよい。加熱炉7の外壁8に穴9が設けられることによって、高温側パネル10および加熱炉7の炉内のメンテナンス性が向上する。
[v]
図10に示すように、断熱装置11は、網目状部材40に代替して、多層断熱部材75を備えてもよい。
多層断熱部材75は、断熱室100に収容されている部材である。多層断熱部材75は、シール部材30の内壁301に接触可能に形成されている。これにより、多層断熱部材75は、断熱室100における移動が規制される。多層断熱部材75は、平板状の複数の「金属層」としての金属膜76と、平板状の複数の「断熱材層」としての紙77とを交互に積層することによって形成されている。多層断熱部材75は、一つの球体35を収容可能な収容穴750を複数有する。
【0067】
[vii]断熱部は、球体に代替して、線部材、棒状部材、円筒部材または棒状部材と円筒部材とを組み合わせた成形材を有してもよい。断熱部の網目状部材に収容される部材の形状は、限定されない。
【0068】
[viii]断熱部温度検出部は、熱電対に限定されず、温度に応じて電気抵抗が変化するセラミック半導体であるサーミスタまたは物体から放射される赤外線や可視光線の強度を測定して物体の温度を測定する放射温度計であってもよい。
[ix]複数の断熱部温度検出部の検出した温度から熱流束を演算し、熱流束に基づいて、圧力制御部は、真空ポンプを制御してもよい。
[x]予め設定される所定の断熱部温度の設定値と断熱部温度Ti1−Ti4との偏差に基づいて、圧力制御部は、真空ポンプを制御してもよい。
以上、本開示はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。