特許第6965608号(P6965608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965608
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 50/60 20190101AFI20211028BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20211028BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20211028BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20211028BHJP
   B60W 20/15 20160101ALI20211028BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20211028BHJP
【FI】
   B60L50/60
   H02M3/00 H
   H02J7/00 P
   H02J7/00 B
   B60W10/26 900
   B60W20/15ZHV
   B60K6/485
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-136989(P2017-136989)
(22)【出願日】2017年7月13日
(65)【公開番号】特開2019-22273(P2019-22273A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 理彰
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−260905(JP,A)
【文献】 特開2012−249462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 50/60
H02M 3/00
H02J 7/00
B60W 10/26
B60W 20/15
B60K 6/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、第1バッテリと、第2バッテリと、を備え、前記モータが前記第1バッテリに接続された車両に搭載される電力変換装置であって、
前記第1バッテリと前記第2バッテリの間に接続され、前記モータによって発電された電力および前記第1バッテリから供給された電力を変圧して前記第2バッテリに供給する電圧変換器と、
前記電圧変換器の出力電圧を制御する出力電圧制御部と、を備え、
前記出力電圧制御部は、
前記モータ又は前記第1バッテリから前記電圧変換器へ電力が供給されている間は前記電圧変換器から前記第2バッテリへ常に電力が供給されるよう制御し、
前記第2バッテリに充電される充電電流が第1所定電流未満であることを実施条件として、
前記充電電流が前記第1所定電流よりも小さい第2所定電流未満に低下するよう前記出力電圧を制御する充電電流低減制御を実施することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記出力電圧制御部は、
前記実施条件が満たされてから所定時間が経過するまでの間、前記充電電流低減制御を実施することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記車両は、エンジンと、前記第2バッテリから電力が供給されることで前記エンジンを始動させるスタータとを備え、
前記出力電圧制御部は、
前記スタータにより前記エンジンが始動後最初の前記充電電流低減制御が実行される前であり、かつ前記充電電流が前記第1所定電流未満であること、または、
前記エンジンが始動後最初の前記充電電流低減制御が実行された後であり、かつ前記充電電流が前記第1所定電流より大きい第3所定電流未満であること、の何れかを前記実施条件として、
前記実施条件が満たされてから前記所定時間が経過するまでの間、前記充電電流低減制御を実施することを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車等の車両において、高電圧の第1のバッテリから供給された電力を電圧変換部により降圧して第2のバッテリに充電する技術がある。従来のこの種の技術として特許文献1に記載の充電制御装置が知られている。特許文献1に記載の充電制御装置は、電圧変換部の出力電流および電気部品への負荷電流に基づいて第2のバッテリの充電電流を算出する充電電流算出手段と、充電電流が規定値を超えないように電圧変換部の出力電圧を制御する充電制御手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−200529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の充電制御装置のように、充電電流が規定値を超えないように電圧変換部の出力電圧を制御するだけでは、充電電流が規定値以下である限り電圧変換部の出力電圧が上昇し続けてしまう。
【0005】
このため、特許文献1に記載の充電制御装置は、電圧変換部に電力を供給する第1のバッテリの充電状態が著しく低下するおそれがあった。また、特許文献1に記載の充電制御装置は、電圧変換部に電力を供給すべくモータが発電を行うことで、車両の走行性能や加速応答性が低下したり、燃費が悪化したりするおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、車両の加速応答性や燃費を向上させることができる電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、モータと、第1バッテリと、第2バッテリと、を備え、前記モータが前記第1バッテリに接続された車両に搭載される電力変換装置であって、前記第1バッテリと前記第2バッテリの間に接続され、前記モータによって発電された電力および前記第1バッテリから供給された電力を変圧して前記第2バッテリに供給する電圧変換器と、前記電圧変換器の出力電圧を制御する出力電圧制御部と、を備え、前記出力電圧制御部は、前記モータ又は前記第1バッテリから前記電圧変換器へ電力が供給されている間は前記電圧変換器から前記第2バッテリへ常に電力が供給されるよう制御し、前記第2バッテリに充電される充電電流が第1所定電流未満であることを実施条件として、前記充電電流が前記第1所定電流よりも小さい第2所定電流未満に低下するよう前記出力電圧を制御する充電電流低減制御を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明によれば、車両の加速応答性や燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係る電力変換装置を搭載する車両の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る電力変換装置の動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の一実施例に係る電力変換装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る電力変換装置は、モータと、第1バッテリと、第2バッテリと、を備え、モータが第1バッテリに接続された車両に搭載される電力変換装置であって、第1バッテリと第2バッテリの間に接続され、モータによって発電された電力および第1バッテリから供給された電力を変圧して第2バッテリに供給する電圧変換器と、電圧変換器の出力電圧を制御する出力電圧制御部と、を備え、出力電圧制御部は、第2バッテリに充電される充電電流が第1所定電流未満であることを実施条件として、充電電流が第1所定電流よりも小さい第2所定電流未満に低下するよう出力電圧を制御する充電電流低減制御を実施することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る電力変換装置は、車両の加速応答性や燃費を向上させることができる。
【実施例】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る電力変換装置について詳細に説明する。
【0012】
図1において、本発明の一実施例に係る車両1は、エンジン2と、スタータ3と、モータ4と、第1バッテリとしてのメインバッテリ5と、第2バッテリとしてのサブバッテリ6と、電圧変換器としてのDC(direct current)DCコンバータ11と、出力電圧制御部としての制御部12とを含んで構成される。DCDCコンバータ11および制御部12は電力変換装置10を構成する。
【0013】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。
【0014】
スタータ3はエンジン2の図示しないクランクシャフトに連結されており、DCDCコンバータ11またはサブバッテリ6から電力が供給されて回転することで、エンジン2を始動するようになっている。
【0015】
モータ4は、図示しないベルトなどを介してエンジン2のクランクシャフトに連結されている。モータ4は、電力が供給されることによりモータトルクを発生する電動機の機能と、エンジン2から伝達された回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。
【0016】
モータ4は、電動機として機能することで、エンジン2の動力をモータトルクによりアシストしたり、モータトルクのみで車両1を駆動させたりすることができるようになっている。このように、車両1はエンジン2とモータ4とにより走行可能なハイブリッド車両として構成されている。
【0017】
メインバッテリ5は、例えばリチウムイオン蓄電池で構成されている。このメインバッテリ5は、モータ4およびDCDCコンバータ11と電気的に接続されている。メインバッテリ5の出力電圧は、例えば、約48Vである。このメインバッテリ5には、約48Vより大きい電圧でモータ4から電力が充電されるようになっている。
【0018】
サブバッテリ6は、例えば鉛蓄電池で構成されている。このサブバッテリ6は、スタータ3と、電気負荷である車両負荷14と、DCDCコンバータ11と電気的に接続されている。サブバッテリ6の出力電圧は、例えば、約12Vである。サブバッテリ6には、電流センサ6Aが接続されている。電流センサ6Aは、サブバッテリ6の充電電流(受け入れ電流)および放電電流を検出する。電流センサ6Aは、制御部12に接続されている。
【0019】
DCDCコンバータ11はサブバッテリ6とメインバッテリ5との間に接続されている。DCDCコンバータ11は、モータ4によって発電された電力およびメインバッテリ5から供給された電力を変圧し、変圧した電力をサブバッテリ6に供給することができるようになっている。より詳しくは、DCDCコンバータ11は、モータ4によって発電、またはメインバッテリ5から供給された48Vの電力を12Vに降圧し、降圧した電力をサブバッテリ6に供給する。
【0020】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。すなわち、制御部12は、制御対象を電気的に制御するECU(Electronic Control Unit)である。
【0021】
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部12としてそれぞれ機能させるためのプログラムが格納されている。CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例における制御部12としてそれぞれ機能する。制御部12の入力ポートには、上述の電流センサ6Aが接続されている。制御部12の出力ポートには、DCDCコンバータ11を含む各種制御対象類が接続されている。
【0022】
制御部12は、DCDCコンバータ11の出力電圧を制御するようになっている。詳しくは、制御部12は、通常制御として、サブバッテリ6の充電状態(SOC:State Of Charge)や性能に応じた充電電流がサブバッテリ6に充電されるように、DCDCコンバータ11の出力電圧を制御するようになっている。
【0023】
したがって、DCDCコンバータ11に対するこのような通常制御時において、サブバッテリ6の充電状態が大きいときはサブバッテリ6への充電電流が小さくなるように制御される。
【0024】
ここで、一般的に、鉛蓄電池等のバッテリに対する充電手法として、充電状態が十分に大きく満充電に近い状態であっても充電を継続する手法が用いられる。
【0025】
しかし、サブバッテリ6に常に充電を行うようにした場合、モータ4またはメインバッテリ5の少なくとも一方から常にDCDCコンバータ11に電力を供給する必要がある。
【0026】
そのため、モータ4が発電をするためにエンジントルクの一部が用いられることで、車両1の加速応答性の悪化や燃費の悪化が引き起こされてしまう。また、メインバッテリ5からDCDCコンバータ11に電力が供給されることで、メインバッテリ5の充電状態が低下し、モータ4によりエンジン2をアシストする走行の頻度や、モータ4のみにより走行する頻度が低下し、ハイブリッド車両の優位性を発揮できなくなったり、燃費が悪化してしまう可能性がある。
【0027】
そこで、制御部12は、車両1の加速応答性や燃費が悪化することを抑制すべく、サブバッテリ6への充電電流が小さい状況では、充電電流を更に小さくするようにDCDCコンバータ11の出力電圧を制御するようになっている。
【0028】
具体的には、制御部12は、サブバッテリ6に充電される充電電流Iが所定電流I1未満であることを実施条件として、充電電流Iが所定電流I2未満に低下するようDCDCコンバータ11の出力電圧を制御する充電電流低減制御を実施するようになっている。所定電流I1は本発明における第1所定電流に対応し、所定電流I2は本発明における第2所定電流に対応する。
【0029】
また、制御部12は、充電電流低減制御の実施条件が満たされてから所定時間T2が経過するまでの間、充電電流低減制御を実施するようになっている。所定時間T2は本発明における所定時間に対応する。
【0030】
また、制御部12は、スタータ3によりエンジン2が始動後最初の充電電流低減制御が実行される前であり、かつ充電電流Iが所定電流I1未満であること、または、エンジン2が始動後最初の充電電流低減制御が実行された後であり、かつ充電電流Iが所定電流I1より大きい所定電流I3未満であること、の何れかを実施条件として、充電電流低減制御の実施条件が満たされてから所定時間T1が経過するまでの間、充電電流低減制御を実施するようになっている。所定電流I3は本発明における第3所定電流に対応する。
【0031】
以上のように構成された本実施例に係る電力変換装置の制御部12による出力電圧制御動作について、図2を参照して説明する。この出力電圧制御動作は、DCDCコンバータ11の出力電圧を制御する動作であり、制御部12が起動している間は予め設定された時間間隔で実行される。
【0032】
なお、出力電圧制御動作で用いるフラグfは0または1の何れかに設定されるようになっている。エンジン2が始動してから始動後最初の充電電流低減制御が完了するまでの間でなく、かつ、充電電流低減制御が実行されることが望ましくない場合、フラグfが1に設定され、エンジン2が始動してから始動後最初の充電電流低減制御が完了されるまでの間か、または充電電流低減制御を実行してもよい場合、フラグfが0に設定される。ここで充電電流低減制御が実行されることが望ましくない場合とは、具体的には充電電流低減制御の実行時間が所定時間(Ta)を越えた場合である。
【0033】
フラグfを管理する理由を以下に説明する。エンジン2の始動直後(始動後最初)に充電電流低減制御を実行するか否かの判定に用いられる充電電流の閾値I1は、エンジン2の始動直後以外である場合に充電電流低減制御を実行するか否かの判定に用いられる充電電流の閾値I3よりも小さい。このため、フラグfを用いない場合、エンジン2の始動後に充電電流が閾値I1未満になるよりも前に閾値I3未満となり、充電電流低減制御が開始されてしまう。本実施例では、エンジン2の始動後最初の充電電流低減制御は、充電電流が閾値I1未満になったことを条件として実行するために、最初の充電電流低減制御が完了するまでの間、フラグfを0に設定し、充電電流低減制御のうち、エンジン2の始動後最初に行うものとそうでないものとで、フラグの条件を異ならせる。これにより、エンジン2の始動後最初に充電電流低減制御が実行されるまではフラグがf=0のため、後述するステップS8がNOとなり、充電電流がI3未満になったとしてもI1未満でない限りは充電電流低減制御が実行されることがない。
【0034】
ステップS1において、制御部12は、スタータ3によるエンジン2(図中、ENGと記す)の始動から所定時間T1が経過しておりかつ充電電流IがI<I1でありかつフラグfがf=0であるか否かを判定する。ステップS1で3つの条件の全てが成立している場合はステップS1の判定がYESとなり、何れかの条件が成立していない場合はステップS1の判定がNOとなる。
【0035】
ステップS1の判定がNOの場合、制御部12は後述するステップS7に移行する。ステップS1の判定がYESの場合、制御部12は、ステップS2でタイマTaのカウント(0からのカウントアップ)を開始し、ステップS3でタイマTaが所定時間T2未満(Ta<T2)であるか否かを判定する。
【0036】
ステップS3でTa<T2が成立している場合、制御部12は、ステップS4で充電電流IがI<I2に低下するようDCDCコンバータ11を制御する充電電流低減制御を実施し、今回の動作を終了する。
【0037】
ステップS3でTa<T2が成立していない場合、制御部12は、ステップS5でフラグfを1に設定し、ステップS6でタイマTaを0にリセットする。
【0038】
次いで、制御部12は、ステップS7でタイマTbのカウント(0からのカウントアップ)を開始し、ステップS8でTbが所定時間T3以上(Tb≧T3)かつ充電電流IがI<I3かつフラグfがf=1であるか否かを判定する。これらの3つの条件の全てが成立している場合はステップS8の判定がYESとなり、何れかの条件が成立していない場合はステップS8の判定がNOとなる。
【0039】
ステップS8の判定がNOの場合、制御部12は、ステップS9でDCDCコンバータ11に対して通常制御を実施し、今回の動作を終了する。制御部12は、ステップS9の通常制御において、サブバッテリ6の充電状態や性能に応じた充電電流がサブバッテリ6に充電されるようにDCDCコンバータ11の出力電圧を制御する。
【0040】
ステップS8の判定がYESの場合、制御部12は、ステップS10でフラグfを0に設定し、ステップS11でタイマTbを0にリセットし、ステップS4に進む。
【0041】
図2の出力電圧制御動作において、スタータ3によるエンジン2の始動直後は、ステップS1、S8がNOとなり、ステップS1、ステップS7、S8、S9と推移する。
【0042】
その後、タイマTaがTa<T2の間は、ステップS1およびS3がYESとなり、ステップS1、S2、S3、S4と推移する。
【0043】
その後、タイマTaがTa≧T2となるため、ステップS1がYES、ステップS3およびS8がNOとなり、ステップS1、S2、S3、S5、S6、S7、S8、S9と推移する。
【0044】
その後、タイマTbがTb<T3の間は、ステップS1、S8がNOとなり、ステップS1、ステップS7、S8、S9と推移する。
【0045】
その後、タイマTbがTb≧T3となるため、ステップS1がNO、ステップS8がYESとなり、ステップS1、S7、S8、S10、S11、S4と推移する。
【0046】
制御部12により出力電圧制御動作が実施されることでサブバッテリ6の充電電流(以下、単に充電電流という)およびDCDCコンバータ11の出力電圧(以下、単に出力電圧という)は図3に示すように推移する。
【0047】
図3において、時刻t0で、エンジン2の始動のためにスタータ3が駆動されたことで、サブバッテリ6から電力が持ち出されて充電量が低下する。このとき、サブバッテリ6の充電量が低下するため、充電電流IがI3よりも大きな値で充電が開始される。その後、充電が進むにつれてサブバッテリ6の充電量が増加し、充電電流Iが低下し始める。その後、時刻t1で充電電流IがI<I1になる。その後、時刻t2において、エンジン2の始動時(時刻t0)から所定時間T1が経過したため、充電電流低減制御が実施される。この充電電流低減制御において、充電電流IがI<I2に低下するようDCDCコンバータ11の出力電圧が低下される。なお、図3のタイミングチャートは一例であり、エンジン2の始動時(時刻t0)から所定時間T1が経過した後に充電電流IがI<I1になった場合は、充電電流IがI<I1になったタイミングで充電電流低減制御が実施される。
【0048】
その後、時刻t2から所定時間T2が経過するまで充電電流低減制御が実施される。そして、所定時間T2の経過後の時刻t3で、充電電流低減制御から通常制御に切り替えられたことで、充電電流Iが所定閾値I3以上に上昇する。
【0049】
その後、時刻t4で充電電流IがI<I3になる。その後、時刻t5において、時刻t3から所定時間T3が経過したため、充電電流低減制御が実施され、充電電流IがI<I2に低下するようDCDCコンバータ11の出力電圧が低下される。なお、図3のタイミングチャートは一例であり、所定時間T3が経過した後に充電電流IがI<I3になった場合は、そのタイミングで充電電流低減制御が実施される。
【0050】
このように、上述の実施例では、制御部12は、サブバッテリ6に充電される充電電流Iが所定電流I1未満であることを実施条件として、充電電流Iが所定電流I2未満に低下するよう出力電圧を制御する充電電流低減制御を実施する。
【0051】
これにより、サブバッテリ6への充電電流Iが所定電流I1未満の場合は、サブバッテリ6への早急な充電が必要ではないため、充電電流Iがさらに小さくなるようにDCDCコンバータ11の出力電圧が制御されるので、モータ4またはメインバッテリ5からサブバッテリ6への電力供給が抑制される。このため、車両1の加速応答性や燃費を向上させることができる。
【0052】
また、上述の実施例では、制御部12は、充電電流低減制御の実施条件が満たされてから所定時間T2が経過するまでの間、充電電流低減制御を実施する。
【0053】
これにより、サブバッテリ6への充電電流が所定電流I1未満の場合は、所定時間T2が経過するまでの間、充電電流Iがさらに小さくなるようにDCDCコンバータ11の出力電圧が制御されるので、所定時間T2の間だけモータ4またはメインバッテリ5からサブバッテリ6への電力供給が抑制される。
【0054】
このため、サブバッテリ6の充電状態が著しく低下することを防止しながら、車両1の加速応答性や燃費を向上させることができる。
【0055】
また、上述の実施例では、車両1は、エンジン2と、サブバッテリ6から電力が供給されることでエンジン2を始動させるスタータとを備えている。そして、制御部12は、スタータ3によりエンジン2が始動後最初の充電電流低減制御が実行される前であり、かつ充電電流Iが所定電流I1未満であること、または、エンジン2が始動後最初の充電電流低減制御が実行された後であり、かつ充電電流Iが所定電流I1より大きい所定電流I3未満であること、の何れかを実施条件として、充電電流低減制御の実施条件が満たされてから所定時間T2が経過するまでの間、充電電流低減制御を実施する。
【0056】
このように、エンジン2の始動時は、スタータ3に電力を供給することによりサブバッテリ6が電圧降下して一時的に充電電流Iが増加するため、所定電流I1を閾値として充電電流低減制御が実施される。
【0057】
一方、エンジン2の非始動時は、所定電流I1よりも大きな所定電流I3を閾値として充電電流低減制御が実施される。
【0058】
すなわち、サブバッテリ6からスタータ3に大きな電力が持ち出されるエンジン2の始動時は小さな閾値(所定電流I1)を用いているのに対し、エンジン2の非始動時は大きな閾値(所定電流I3)を用いている。このため、エンジン2の始動時は、エンジン2の非始動時と比較してより充電電流が小さくなるまで充電電流を制限せずに充電できるため、エンジン2を始動させる際に大きな電力が持ち出されたサブバッテリ6を充分に充電することができる。
【0059】
このように、エンジン2の始動時と非始動時に応じて、充電電流低減制御を実施する充電電流の閾値を異ならせることで、サブバッテリ6の充電状態が著しく低下することを防止しながら、車両1の加速応答性や燃費を向上させることができる。
【0060】
なお、上述の実施例では、ステップS1において、充電電流IがI1未満であることを満たすか否かを判定条件の1つとしたが、この判定条件の代わりに充電電流IがI1未満でありかつI2以上であるか、または充電電流低減制御を実行中であるかのいずれかを満たすか否かを判定条件として用いても良い。この構成によれば、スタータによるENG始動から所定時間T1経過しており、かつ、フラグf=0である場合に、かつ充電電流Iが下降してI1未満となると充電電流低減制御を開始することができる。さらに、充電電流低減制御が既に実行されている場合は、充電電流IがI2未満であってもステップS1がYESとなるため、充電電流低減制御を継続することが可能になる。
【0061】
また、上述の実施例では、ステップS8において、充電電流IがI3未満であることを満たすか否かを判定条件の一つとしたが、この判定条件の代わりに充電電流IがI3未満でありかつI2以上であるか、または充電電流低減制御を実行中であるかのいずれかを満たすか否かを判定条件として用いても良い。この構成によれば、タイマTbがT3以上であり、かつフラグf=1である場合に、充電電流Iが下降してI3未満となると充電電流低減制御を開始することができる。さらに、充電電流低減制御が既に実行されている場合は、充電電流IがI2未満であってもステップS8がYESとなるため、充電電流低減制御を継続することが可能になる。
【0062】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0063】
1 車両
2 エンジン
3 スタータ
4 モータ
5 メインバッテリ(第1バッテリ)
6 サブバッテリ(第2バッテリ)
10 電力変換装置
11 DCDCコンバータ(電圧変換器)
12 制御部(出力電圧制御部)
図1
図2
図3