特許第6965611号(P6965611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965611
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】身体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20211028BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20211028BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20211028BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   A61K8/86
   A61Q19/10
   A61K8/44
   C11D1/722
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-138726(P2017-138726)
(22)【出願日】2017年7月18日
(65)【公開番号】特開2019-19079(P2019-19079A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】脇田 和晃
【審査官】 田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−018568(JP,A)
【文献】 特開2006−028062(JP,A)
【文献】 Cle de Peau Beaute, USA,Cleansing Cream Oil,Mintel GNPD [online],2016年09月,https://portal.mintel.com,ID#4242227
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
C11D 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(a)を0.1〜25質量%、成分(b)を0.01〜質量%、成分(c)を0.1〜10質量%および成分(d)を含有し、前記成分(b)の前記成分(a)に対する質量比((b)/(a))が1/200〜1/6であり、pHが3〜7であることを特徴とする、身体洗浄剤組成物。

(a) 下記の式(1)で示されるポリアルキレンオキシド誘導体

Z−[O(AO)(EO)−R ・・・ (1)

(式(1)中、
Zは炭素数1〜6のアルコールからすべての水酸基を除いた残基であり、
pは前記アルコールの価数であって、1以上、6以下であり、
は炭素数1〜4のアルキル基であり、
Oは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、
EOはオキシエチレン基であり、
前記ポリアルキレンオキシド誘導体における前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数p×mが1≦p×m≦70を満足しており、
前記ポリアルキレンオキシド誘導体における前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数p×nが1≦p×n≦70を満足しており、
前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数と前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数との合計に対する前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数の割合n/(m+n)が0.15〜0.75である。)

(b) 下記の式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体

O−[(AO)(EO)]−H ・・・ (2)

(式(2)中、
は炭素数1〜4のアルキル基であり、
Oは炭素数3のオキシアルキレン基であり、
EOはオキシエチレン基であり、
xは前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数であって、
1≦x≦40を満足しており、
yは前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数であって、3≦y≦60を満足しており、
前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数と前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数との合計に対する前記オキシエチレン基EOの割合x/(x+y)が0.35〜0.85であり、
前記オキシアルキレン基AOと前記オキシエチレン基EOとがランダム状に付加している。)

(c) アミノ酸系陰イオン性界面活性剤

(d) 水
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体洗浄剤に関するものであり、詳しくは、女性のデリケートゾーン等の敏感な部位に適用してもマイルドな使用感であり、洗浄中の泡の持続性に優れるとともに、爽快な洗い上がりが得られる身体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
頭皮、眉毛、まつげ、腋窩、陰部等は、脂腺が密集しており、皮脂やタンパク等の分泌物による汚れが蓄積しやすい部位である。これらの汚れは、べたつきなどの不快感の他に、菌の増殖などによるさまざまな皮膚トラブルの原因となりやすい。特に、女性のデリケートゾーンでは、皮脂の蓄積は、悪臭の原因となり、さらには帯下や経血による不快感、ひいてはかぶれ、湿疹等のトラブルがおこる。
【0003】
一般に、身体の皮脂やその他の汚れを除去するために、石鹸、ボディイシャンプー等の身体用洗浄剤が用いられるが、一般的な身体洗浄剤では皮脂・タンパク複合汚れに対する洗浄力が不十分であり、爽快な洗い上がりが得られなかった。
【0004】
そこで、特許文献1では、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、水溶性無機塩、そしてアルコールを特定の比率で含有する皮膚清浄剤組成物が提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、清浄・清拭成分としてシリコーンオイルおよび低級アルコールを含有する清拭剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−187726号公報
【特許文献2】特開平5−58408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の清浄剤は、洗い上がりの爽快感には優れるものの、カチオン界面活性剤が含まれており、女性のデリケートゾーンの洗浄においては十分にマイルドとはいえなかった。
【0008】
また、特許文献2の清拭剤組成物では、一定の爽快感およびマイルド性は得られるものの、デリケートゾーンの洗浄中の泡の持続性において不十分であった。
【0009】
このように、デリケートゾーンへのマイルド性で、洗浄中の泡の持続性、および爽快な洗いあがりを同時に満たす身体洗浄剤は得られていないのが実情である。
【0010】
本発明の課題は、女性のデリケートゾーン等の敏感な部位に適用してもマイルドな使用感であり、洗浄中の泡の持続性に優れるとともに、爽快な洗いあがりが得られる身体洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、2種類のアルキレンオキシド誘導体と、アミノ酸系陰イオン性界面活性剤、および水を特定比率で組み合わせた身体洗浄剤組成物が上記の課題を余すところなく解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、下記の通りである。
下記の成分(a)を0.1〜25質量%、成分(b)を0.01〜質量%、成分(c)を0.1〜10質量%および成分(d)を含有し、前記成分(b)の前記成分(a)に対する質量比((b)/(a))が1/200〜1/6であり、pHが3〜7であることを特徴とする、身体洗浄剤組成物。

(a) 下記の式(1)で示されるポリアルキレンオキシド誘導体

Z−[O(AO)(EO)−R ・・・ (1)

(式(1)中、
Zは炭素数1〜6のアルコールからすべての水酸基を除いた残基であり、
pは前記アルコールの価数であって、1以上、6以下であり、
は炭素数1〜4のアルキル基であり、
Oは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、
EOはオキシエチレン基であり、
前記誘導体における前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数p×mが1≦p×m≦70を満足しており、
前記誘導体における前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数p×nが1≦p×n≦70を満足しており、
前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数と前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数との合計に対する前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数の割合n/(m+n)が0.15〜0.75である。)

(b) 下記の式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体

O−[(AO)(EO)]−H ・・・ (2)

(式(2)中、
は炭素数1〜4のアルキル基であり、
Oは炭素数3のオキシアルキレン基であり、
EOはオキシエチレン基であり、
xは前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数であって、
1≦x≦40を満足しており、
yは前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数であって、3≦y≦60を満足しており、
前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数と前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数との合計に対する前記オキシエチレン基EOの割合x/(x+y)が0.35〜0.85であり、
前記オキシアルキレン基AOと前記オキシエチレン基EOとがランダム状に付加している。)

(c) アミノ酸系陰イオン性界面活性剤
(d) 水
【発明の効果】
【0013】
本発明の身体洗浄剤組成物は、女性のデリケートゾーン等の敏感な部位に適用してもマイルドな使用感であり、洗浄中の泡の持続性に優れるとともに、爽快な洗い上がりが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の身体洗浄剤組成物は、下記の成分(a)〜(d)を含有する。
【0015】
[成分(a)]
本発明において一般式(1)で示されるポリアルキレンオキシド誘導体において、Zは炭素数1〜6のアルコール(Z(OH))から水酸基を除いた残基であり、pはアルコールの価数を示し、1〜6である。
【0016】
前記アルコール(Z(OH))の炭素数が6を超える場合、洗浄後の爽快感が不十分であるので、6以下とするが、3以下が更に好ましい。また、前記アルコール(Z(OH)p)の炭素数がゼロの場合、すなわち水素原子の場合は、洗浄時の泡の安定性が不十分となるので、1以上とする。また、前記アルコール(Z(OH)p)の価数pが6を超える場合、洗浄後の爽快感が低下するので、6以下とするが、3以下とすることが更に好ましい。
【0017】
前記アルコール(Z(OH)p)は、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等のアルコールを示す。前記アルコール(Z(OH)p)は、好ましくはメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンであり、より好ましくはメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールである。
【0018】
Oは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、具体的にはオキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基であり、より好ましくはオキシプロピレン基である。
【0019】
mはアルコールの一水酸基あたりのAOの平均付加モル数であり、成分(a)全体のAO付加モル数「p×m」は1〜70であり、好ましくは3〜50、より好ましくは5〜40である。「p×m」が70を超える場合、洗浄時の泡持続性が不十分となり、1未満の場合は洗浄後の爽快感が不十分となる。
【0020】
nはアルコールの一水酸基あたりのEOの平均付加モル数である。成分(a)全体のEO付加モル数「p×n」は1〜70であり、好ましくは5〜60、より好ましくは10〜50である。「p×n」が70を超える場合、洗浄後の爽快感が不十分であり、1未満の場合は洗浄時の泡持続性において不十分である。
【0021】
前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数と前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数との合計に対する前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数の割合「n/(m+n)」は、0.15〜0.75であり、好ましくは0.30〜0.72、より好ましくは0.45〜0.70である。この割合が0.75を超える場合は、洗浄後の爽快感が不十分であり、0.15未満では、洗浄時の泡持続性が不十分である。
【0022】
OとEOとは、ブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよいが、ランダム状に付加することがより好ましい。
【0023】
は炭素数1〜4のアルキル基である。Rの炭素数が5以上であると、界面活性が発現し、デリケートゾーンの洗浄におけるマイルド性の点で不適切である。このアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0024】
本発明の成分(a)は公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している化合物にエチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ金属の存在下にエーテル反応させることによって得られる。
【0025】
成分(a)、(b)、(c)および(d)の合計質量を100質量%としたとき、成分(a)の含有量は0.1〜25質量%であり、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%である。成分(a)の含有量が0.1未満の場合、洗浄後の爽快感が不十分であり、成分(a)の含有量が25質量%を超える場合は洗浄時の泡の持続性が不十分となる。
【0026】
[成分(b)]
一般式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体において、AOは炭素数3のオキシアルキレン基であり、具体的にはオキシプロピレン基、オキシトリメチレン基が挙げられ、好ましくは、オキシプロピレン基である。
【0027】
xはAO基の平均付加モル数で1〜40であり、好ましくは3〜30、より好ましくは5〜20である。xが40を超える場合は洗浄時の泡持続性が不十分であり、xが1未満の場合は洗浄後の爽快感が不十分である。
【0028】
yはオキシエチレン基の平均付加モル数で、3〜60であり、好ましくは5〜50、より好ましくは10〜30である。yが60を超える場合は洗浄後の爽快感が得られず、yが3未満の場合はデリケートゾーン洗浄時のマイルド性、洗浄時の泡持続性において不十分である。
【0029】
成分(b)におけるオキシアルキレン基AOの平均付加モル数と前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数との合計に対する前記オキシエチレン基EOの割合x/(x+y)が0.35〜0.85であり、好ましくは0.45〜0.80、より好ましくは0.50〜0.70である。この割合が0.35未満の場合は、洗浄時の泡持続性が不十分であり、0.85を超える場合は、洗浄後の爽快感が得られない。
【0030】
オキシエチレン基EOとオキシプロピレン基AOとは、デリケートゾーン洗浄時のマイルド性の観点から、ランダム状に付加する。
【0031】
は炭素数1〜4のアルキル基である。Rの炭素数が5以上の場合には、界面活性が発現し、デリケートゾーン洗浄時のマイルド性の点で不適切である。このアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。好ましくは、メチル基、n−ブチル基である。
【0032】
本発明の成分(b)は公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している化合物にエチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加重合することで得られる。
【0033】
成分(a)、(b)、(c)および(d)の合計質量を100質量%としたとき、成分(b)の含有量は0.01〜質量%であり、好ましくは0.05〜4質量%、より好ましくは0.1〜3質量%である。成分(b)の含有量が0.01質量%未満の場合は洗浄後の爽快感が不十分であり、質量%を超える場合は洗浄時の泡持続性において不十分となる。
【0034】
[成分(c)]
本発明の成分(c)は、アミノ酸系陰イオン性界面活性剤である。本発明におけるアミノ酸系陰イオン界面活性剤とは、1級、1級または3級のアミノ基とカルボン酸又はスルホン酸を同一分子内に含有する化合物と脂肪酸とのアシル化物であり、主にアシル化剤として脂肪酸クロライドを用いたショッテン・バウマン反応等によって製造される。
【0035】
1級、2級または3級のアミノ基とカルボン酸又はスルホン酸を同一分子内に含有する化合物としては、抽出法や発酵法で得られる天然の酸性又は中性アミノ酸や、合成法や酵素法で得られる合成の酸性又は中性アミノ酸が挙げられる。アミノ酸の具体例としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、タウリン、メチルタウリン、ザルコシン(N−メチルグリシン)、β-アラニン等が挙げられ、それぞれL体、D体、ラセミ体が存在しうるが、これらのいずれをも使用することができる。
【0036】
上記アミノ酸とアシル化物であるアミノ酸系陰イオン性界面活性剤の種類としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アシルメチルタウリン塩、アシルタウリン塩、アシルメチル−β−アラニン又はその塩、アシル−β−アラニン又はその塩、アシルグルタミン酸又はその塩、アシルグリシン又はその塩、アシルアスパラギン酸又はその塩、アシルザルコシン又はその塩などが挙げられる。それらの中で、豊かな泡量が得られ、デリケートゾーン洗浄時のマイルド性に優れるアミノ酸系陰イオン性界面活性剤として、アシルメチルタウリン塩、アシルメチル−β−アラニン又はその塩が好ましい。
【0037】
前記塩としては、特に限定されるものではなく、アルカリ金属塩、アルカノールアミン塩などが挙げられる。前記アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられ、前記アルカノールアミン塩としては、例えば、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩などが挙げられる。泡の持続性をより高めるためには、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩が最も好ましい。
【0038】
成分(c)のアシル基の炭素数は特に限定されるものではないが、豊かな泡量が得られデリケートゾーン洗浄時のマイルド性に優れる点で、好ましくは8〜18であり、より好ましくは10〜16、さらに好ましくは12〜14である。
【0039】
成分(c)の含有量は0.1〜10質量%であり、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜5質量%である。成分(c)の含有量が0.1質量%未満の場合は洗浄後の爽快感、洗浄時の泡持続性において不十分であり、10質量%を超える場合はデリケートゾーンに対するマイルド性の点で好ましくない。
【0040】
[成分(d)]
本発明の成分(d)は水であり、化粧品や医薬品等で一般に使用されている水を使用することができる。例えば、イオン交換水や精製水などを使用することができる。
成分(d)の含有量は、100質量%から、成分(a)、(b)および(c)の合計含有量を引いた残部である。
【0041】
[各成分の比率]
本発明において、身体清浄剤組成物全量に占める成分(b)の成分(a)に対する質量比((b)/(a))は、1/200〜1/6であり、好ましくは1/150〜1/10、より好ましくは1/100〜1/20である。(b)/(a)が1/200未満の場合、洗浄時の泡持続性の点で不十分であり、(b)/(a)が1/6超える場合、洗浄後の爽快感が不十分である。
【0042】
[組成物のpH]
本発明における洗浄剤のpHは3〜7であり、好ましくは3.5〜6.5、より好ましくは4〜6である。pHが発明の範囲から外れるとデリケートゾーンのマイルド性が不十分となる。
【0043】
本発明の身体洗浄剤組成物には、発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を添加することができる。その他任意成分としては、アルコール類、多価アルコール、糖類、多糖類、アミノ酸、各種界面活性剤、有機塩、無機塩、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、殺菌剤、血流促進剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、色素、香料などを適宜配合することができる。
【実施例】
【0044】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。
【0045】
【表1】
【0046】
<化合物a1、a2、a’1、a’3、a’4の合成>
表1に示されるアルコールを1モルと、触媒として水酸化カリウムをアルキレンオキシド誘導体最終重量に対して0.1質量%をオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置により、エチレンオキシドp×nモルとプロピレンオキシドp×mモルの混合物を滴下させ、滴下終了後140℃で2時間反応させた。次に、p×2モルの水酸化カリウムを仕込み、オートクレーブ内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチルp×3モルを温度80〜130℃で圧入し、5時間反応させた。その後、オートクレーブから反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した塩を除去するため、ろ過を行い、化合物a1、a2、a’1、a’3、a’4を得た。
【0047】
化合物a1、a2、a’1、a’3、a’4の水酸基価は全て0.1未満であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されていることを確認した。
【0048】
<化合物a3の合成>
プロピレングリコールを1モルと、触媒として水酸化カリウムをアルキレンオキシド誘導体最終重量に対して0.1質量%をオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置により、プロピレンオキシド41モルを滴下した。続いてエチレンオキシド36モルを滴下し、滴下終了後140℃で2時間反応させた。次に、4モルの水酸化カリウムを仕込み、オートクレーブ内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル6モルを温度80〜130℃で圧入し、5時間反応させた。その後、オートクレーブから反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した塩を除去するため、ろ過を行い、化合物a3を得た。
化合物a3の水酸基価は0.1未満であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されていることを確認した。
【0049】
<化合物a4の合成>
ペンタリット1モルと、触媒として水酸化カリウムをアルキレンオキシド誘導体最終重量に対して0.1質量%をオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置により、プロピレンオキシド15モルとエチレンオキシド50モルの混合物を滴下し、140℃で2時間反応させた。次に、8モルの水酸化カリウムを仕込み、オートクレーブ内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル10モルを温度80〜130℃で圧入し、5時間反応させた。その後、オートクレーブから反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した塩を除去するため、ろ過を行い、化合物a4を得た。
化合物a4の水酸基価は0.1未満であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されていることを確認した。
【0050】
<化合物a’2の合成>
エタノールを1モル(46g)と、触媒として水酸化カリウムを1.07g(アルキレンオキシド誘導体最終重量に対して0.1質量%)をオートクレーブに仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置より、エチレンオキシドを14モル(616g)とプロピレンオキシドを7モル(406g)の混合物を滴下させ、滴下終了後140℃で2時間反応させた。次に、水酸化カリウムを2モル(56.1g)と1−ブロモオクタデカンを5モル(1667g)を仕込み、オートクレーブ中を乾燥窒素で置換した後5時間反応させた。その後、オートクレーブから反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するために減圧−0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した塩を除去するため、ろ過を行い、化合物a’2を得た。
化合物a’2の水酸基価は0.08であり、ほぼ全ての水素原子がメチル基に変換されていることを確認した。
【0051】
<化合物b1、b2、b’1、b’2の合成>
表2に示されるアルコールを1モルと、触媒として水酸化カリウムをアルキレンオキシド誘導体最終重量に対して0.1質量%をオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置により、エチレンオキシドxモルとプロピレンオキシドyモルの混合物(化合物b’1ではエチレンオキシドのみ、化合物b’2ではプロピレンオキシドのみ)を滴下させ、滴下終了後140℃で2時間反応させた。その後、オートクレーブから反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した塩を除去するため、ろ過を行い、化合物b1、b2、b’1、b’2を得た。
【0052】
【表2】
【0053】
<身体洗浄剤の調製方法>
以下の手順で身体洗浄剤を調製した。
・ イオン交換水にヒドロキシプロピルメチルセルロースを室温で分散し、45℃に昇温する。
・ 溶解確認後、クエン酸を除く残りの原料を全て投入する。
・ クエン酸でpHを調整する。
【0054】
<評価方法>
20名の女性(20〜40才)による使用感テストを行った。調製した身体洗浄剤1gを手に取って手の平で十分に泡立てた後、(1)デリケートゾーンへのマイルド性、(2)洗浄時の泡持続性、(3)洗浄後の爽快感について、パネラー各人が下記絶対評価にて0点〜3点の4段階に評価した。そして、評点の合計からAA〜Dの5段階に分類し、AA、AおよびBを合格とした。
【0055】
<絶対評点の合計による最終評価>
AA : 評点の合計が50〜60点
A : 評点の合計が40〜49点
B : 評点の合計が30〜39点
C : 評点の合計が20〜29点
D : 評点の合計が20点未満
【0056】
(1)デリケートゾーンへのマイルド性
(絶対評価基準)
(評点):(評価)
3: 洗浄中および洗浄後にマイルドな洗浄性を十分に感じられた
2: 洗浄中および洗浄後にマイルドな洗浄性を感じられた
1: 洗浄中および洗浄後にマイルドな洗浄性をあまり感じなかった
0: 洗浄中および洗浄後にマイルドな洗浄性を全く感じなかった
【0057】
(2)洗浄時の泡持続性
(絶対評価基準)
(評点):(評価)
3: デリケートゾーンの洗浄中、泡量の低下をほとんど感じなかった
2: デリケートゾーンの洗浄中、わずかに泡量の低下を感じた
1: デリケートゾーンの洗浄中、明らかに泡量の低下を感じた
0: デリケートゾーンの洗浄中、すぐに泡が消失した
【0058】
(3)洗浄後の爽快感
(絶対評価基準)
(評点):(評価)
3: 洗浄後にさっぱりとした爽快感が十分に得られた
2: 洗浄後に爽快感が得られた
1: 洗浄後にあまり爽快感が得られなかった
0: 洗浄後の爽快感が得られなかった
【0059】
<実施例1〜6および比較例1〜13>
上記の方法により身体洗浄剤を調製し、評価した。表3、表4および表5に処方および結果を示す。尚、全ての処方において100gスケールで調製した。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
実施例1〜6については、デリケートゾーンに対するマイルド性があり、デリケートゾーン洗浄中の泡持続性に優れ、洗浄後の爽快感も良好であった。
【0064】
これに対し、比較例1〜13については、3つの効果を同時に得ることができなかった。
【0065】
すなわち、比較例1では、Zを構成するアルコールの炭素数およびアルコール価数の大きい化合物a’1を用いているが、洗浄時の泡持続性や洗浄後の爽快感が劣る。
比較例2では、Rの炭素数が大きい化合物a’2を用いているが、いずれの特性も劣っている。
比較例3では、n/(m+n)が大きい化合物a’3を用いているが、デリケートゾーンへのマイルド性および洗浄後の爽快感が劣っている。
【0066】
比較例4では、p×m、p×nの大きい化合物a’4を用いているが、洗浄時の泡持続性や洗浄後の爽快感が劣る。
比較例5では、Rの炭素数が大きく、プロピレンオキシドが付加していない化合物b’1を用いているが、デリケートゾーンへのマイルド性および洗浄後の爽快感が劣っている。
比較例6では、エチレンオキシドが付加していない化合物b’2を用いているが、いずれの特性も劣っている。
比較例7では、化合物(b)を用いていないが、いずれの特性も劣っている。
【0067】
比較例8では、成分比率(b)/(a)が高いが、いずれの特性も劣っている。
比較例9では、化合物a2、b2の添加割合が高く、成分比率(b)/(a)が高いが、いずれの特性も劣っている。
比較例10では、化合物(a)が添加されていないが、いずれの特性も劣っている。
【0068】
比較例11では、成分(c)を添加していないが、いずれの特性も劣っている。
比較例12では、成分(c)の添加量が大きいが、デリケートゾーンへのマイルド性および洗浄後の爽快感が劣っている。
比較例13では、身体洗浄剤組成物のpHを低くしているが、いずれの特性も劣っている。