(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965642
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】透明複合シート及び表示素子用基板
(51)【国際特許分類】
B32B 27/38 20060101AFI20211028BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20211028BHJP
B32B 27/04 20060101ALI20211028BHJP
C08J 7/046 20200101ALI20211028BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
B32B27/38
C08J5/04CFC
B32B27/04 Z
C08J7/046 Z
G09F9/30 317
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-170288(P2017-170288)
(22)【出願日】2017年9月5日
(65)【公開番号】特開2019-44106(P2019-44106A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅間 英夫
【審査官】
芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−238778(JP,A)
【文献】
特開2009−012288(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/044397(WO,A1)
【文献】
特開2010−174116(JP,A)
【文献】
特開2011−052118(JP,A)
【文献】
特開2002−322301(JP,A)
【文献】
特開2018−136406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C08J 7/04−7/06
B29B 11/16;15/08−15/14
C08J 5/04−5/10;5/24
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式エポキシ樹脂、硬化剤、及びカップリング剤を含むエポキシ樹脂組成物とガラスフィラーとを含有してなる複合組成物を硬化させてなる透明複合シートであって、前記脂環式エポキシ樹脂が、下記化学式(1)又は(2)で示される脂環式エポキシ樹脂を含み、前記シート表面にシリカフィラーとバインダーマトリックスを含む表面中心線平均粗さ0.05〜0.6μmの凹凸層が設けられたことを特徴とする透明複合シート。
【化1】
【化2】
(式中、Xは−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、又は−C(CH
3)
2−から選択される1種を表す。)
【請求項2】
前記脂環式エポキシ樹脂と前記カップリング剤との配合の重量比が、99.99:0.01〜95:5である請求項1に記載の透明複合シート。
【請求項3】
前記カップリング剤が、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基から選ばれた少なくとも一種の官能基と、アルコキシ基とを有するものである請求項1又は2に記載の透明複合シート。
【請求項4】
前記ガラスフィラーの30℃から250℃における平均線膨張率が5ppm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の透明複合シート。
【請求項5】
波長400nmにおける光線透過率が80%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の透明複合シート。
【請求項6】
30〜250℃における平均線膨張率が10ppm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の透明複合シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の透明複合シートを用いて構成される表示素子用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐傷性に優れた透明複合シート及びこれを用いた表示素子用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示素子や有機EL表示素子用の表示素子基板(特にアクティブマトリックスタイプ)、カラーフィルター基板、太陽電池等に用いる基板としては、ガラス板が広く用いられている。しかしながらガラス板は、割れ易い、曲げられない、比重が大きく軽量化に不向きなどの理由から、近年、その代替としてプラスチック素材が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、脂環式エポキシ樹脂、硬化触媒、及びガラスフィラーを含むエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる液晶表示素子用の透明樹脂基板が記載されている。
また、ベースとなる脂環式エポキシ樹脂の組成が検討されている。プラスチック素材は、ガラス基板では得られない可撓性を有するため、長尺状の基板をロールに巻き取られた状態で使用し、巻き出し側から巻取り側に順次送り出して液晶パネルの機能を有する各種の機能薄膜が形成することが可能である。しかし、この透明樹脂基板は、各種の機能薄膜が形成する種々の工程において、特に折り曲げ等の負荷が生じた場合に、樹脂にクラックが発生しやすいという問題点がある。
【0004】
特許文献2には、クラック発生を抑制するための脂環式エポキシ樹脂の組成が記載されている。折り曲げ等の負荷には耐えられる透明複合シートを得られるようにはなったものの、巻き出しから送り出し各工程を経る間に、この透明複合シートに傷が入る問題点が残っていた。このため、耐擦傷性に優れた複合透明シートが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−51960号公報
【特許文献2】特開2007−238778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の問題を鑑みて、本発明の課題は、耐擦傷性に優れた透明複合シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、
脂環式エポキシ樹脂、硬化剤、及びカップリング剤を含むエポキシ樹脂組成物とガラスフィラーとを含有してなる複合組成物を硬化させてなる透明複合シートであって、前記脂環式エポキシ樹脂が、下記化学式(1)又は(2)で示される脂環式エポキシ樹脂を含み、前記シート表面に、シリカフィラーとバインダーマトリックスを含む表面中心線平均粗さ0.05〜0.6μmの凹凸層が設けられたことを特徴とする透明複合シートである。
【化1】
【化2】
(式中、Xは−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、又は−C(CH
3)
2−から選択される1種を表す。)
【0008】
また、本発明は、前記脂環式エポキシ樹脂と前記カップリング剤との配合の重量比が、99.99:0.01〜95:5である透明複合シートとしてもよい。
【0009】
本発明は、前記カップリング剤が、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基から選ばれた少なくとも一種の官能基と、アルコキシ基とを有する透明複合シートとしてもよい。
【0010】
本発明は、前記ガラスフィラーの30℃から250℃における平均線膨張率が5ppm以下である透明複合シートとしてもよい。
【0011】
本発明は、波長400nmにおける光線透過率が80%以上である透明複合シートとしてもよい。
【0012】
本発明は、30〜250℃における平均線膨張率が10ppm以下である透明複合シートとしてもよい。
【0013】
さらに本発明は、前記透明複合シートを用いて構成される表示素子用基板としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の透明複合シートは、透明性、耐熱性、可撓性、耐擦傷性に優れ、線膨張係数が小さいため、アクティブマトリックスタイプを含む液晶表示素子用基板、有機EL表示素子基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池基板などの光学シートに好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明者は、プラスチック材を用いた透明複合シートにおいて種々の構成を鋭意検討した結果、以下に記載の構成とすることによって特に耐擦傷性に優れるシートが得られることを見出した。
【0016】
本発明の透明複合シートは、脂環式エポキシ樹脂、硬化剤、及びカップリング剤を含むエポキシ樹脂組成物とガラスフィラーとを含有してなる複合組成物を硬化させて得られるシート表面にシリカフィラーとバインダーマトリックスを含む表面中心線平均粗さ0.05〜0.6μmの凹凸層を設けた透明複合シートである。
本発明に使用する脂環式エポキシ樹脂は、化学式(1)で示される水添ビフェニル型エポキシ樹脂、又は化学式(2)で示される脂環式エポキシ樹脂を含むものである。
【0017】
本発明で用いられる脂環式エポキシ樹脂の硬化剤は、特に限定されないが、酸無水物や脂肪族アミン、カチオン系硬化触媒、またはアニオン系硬化触媒等を用いることができる。
【0018】
また、耐熱性等の面からカチオン系硬化触媒を用いることが好ましい。カチオン系硬化触媒としては、加熱によりカチオン重合を開始させる物質を放出する開始剤や、活性エネルギー線によってカチオン重合を開始させる物質を放出させる開始剤などがあげられるが、耐熱性が高い硬化物が得られることから加熱によりカチオン重合を開始する物質を放出する開始剤、すなわち熱カチオン系硬化触媒が特に好ましい。
【0019】
好ましい熱カチオン硬化触媒としては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、アルミニウムキレートなどがある。具体的な例としては、芳香族スルホニウム塩としては三新化学工業製のSI−60L、SI−80L、SI−100L、旭電化工業製のCP−66、CP−77などがあり、アルミニウムキレートとしては、ダイセル化学工業製DAICAT EX−1などがあげられる。
【0020】
本発明に用いるカップリング剤は、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基から選ばれた少なくとも一種の官能基と、アルコキシ基とを有するものであることが好ましい。
【0021】
これらのカップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等が挙げられるが、特にシランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等が挙げられ、これらを例示すると、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらのうちエポキシシランが好ましい。
【0022】
本発明のシート表面に設ける凹凸層のバインダーマトリックスには、多官能アクリレート樹脂、多官能ウレタンアクリレート樹脂を用いることができる。バインダーマトリックスにシリカフィラーを加えて表面凹凸を形成し、表面中心線平均粗さが0.05〜0.6μmとなるよう、シリカフィラーの粒径、混合量を調整する。凹凸層の膜厚により表面中心線平均粗さを調整しても良い。表面中心線平均粗さが小さすぎると、必要な耐擦傷性を得ることができず、表面中心線平均粗さが大きすぎると、白濁し透明性を損なう可能性がある。なお、前記表面中心線平均粗さは、シート表面の算術平均粗さをJIS−B0601:2001に基づき測定した値である。
【0023】
カップリング剤の配合量は、特に限定されないが、脂環式エポキシ樹脂とカップリング剤との配合の重量比が、99.99:0.01〜95:5であることが好ましく、99.95:0.05〜98:2であることがより好ましく、特に99.9:0.1〜99:1が好ましい。カップリング剤の配合量が下限値未満では、透明複合シートの可撓性が向上せず、上限値を超えると耐熱性の低下、及び靭性の低下がおこる可能性がある。
【0024】
本発明に用いるガラスフィラーの材料としては、ガラス繊維、ガラスクロス、ガラス不織布などのガラス繊維布、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスパウダー、ミルドガラスなどがあげられ、中でも線膨張係数の低減効果が高いことから、ガラス繊維、ガラスクロス、ガラス不織布などのガラス繊維布が好ましく、ガラスクロスが最も好ましい。
【0025】
ガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、クオーツ、低誘電率ガラス、高誘電率ガラスなどが挙げられ、中でもアルカリ金属などのイオン性不純物が少なく入手の容易なEガラス、Sガラス、Tガラス、NEガラスが好ましく、特に低熱膨張率のSガラス又はTガラスがより好ましい。これらは、例えば日東紡績(株)から販売されているガラス繊維(商品名「Tガラス」)を好適に使用できる。
【0026】
本発明に用いるガラスフィラーは、30℃から250℃における平均線膨張率が5ppm以下であることが好ましい。
【0027】
また、ガラスフィラーの含有量は、透明複合シートに対し1〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。ガラスフィラーの含有量がこの範囲であれば成形が容易で、複合化による線膨張の低下の効果が認められる。
【0028】
本発明の透明複合シートには、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、熱可塑性又は熱硬化性のオリゴマーやポリマーを併用してよい。これら熱可塑性または熱硬化性のオリゴマーやポリマーを併用する場合は、全体の屈折率がガラスフィラーの屈折率に合うように組成比を調整することが好ましい。また、本発明の透明複合シート中には、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、他の無機フィラー等の充填剤等を含んでいても良い。
【0029】
本発明の透明複合シートの成形方法に制限はなく、例えば、未硬化のエポキシ樹脂組成物とガラスフィラーとを直接混合し、必要な型に注型したのち架橋させてシートとする方法、未硬化のエポキシ樹脂組成物を溶剤に溶解しガラスフィラーを分散させキャストした後、架橋させてシートなどとする方法、未硬化のエポキシ樹脂組成物をガラスクロスやガラス不織布に含浸させたのち架橋させてシートとする方法等が挙げられる。
【0030】
本発明の透明複合シートを、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、タッチパネル等の表示素子用基板として用いることができ、特にフレキシブルかつ軽量化を図る用途に最適である。光学用途として用いる場合、シート状の基板形状であることが好ましい。シートの厚みは、好ましくは30〜1000μmであり、より好ましくは40〜200μmである。シートの厚みがこの範囲にあると平坦性に優れ、ガラス基板と比較して基板の軽量化を図ることができる。
【0031】
本発明の透明複合シートを前記光学用途として用いる場合には熱による歪みを生じにくいことが求められるため、30℃〜250℃における平均線膨張係数が30ppm以下であることが好ましく、より好ましくは20ppm以下、最も好ましくは10ppm以下である。例えば、この透明複合シートをアクティブマトリックス表示素子用基板に用いた場合、この上限値を超えると、その製造工程において反りやアルミ配線の断線などの問題が生じる恐れがある。
【0032】
本発明の透明複合シートを表示素子用プラスチック基板として用いる場合、波長400nmにおける光線透過率は80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。波長400nmにおける光線透過率が下限値未満であると表示性能が十分でない可能性がある。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の内容を下記実施例により詳細に説明するが、本発明は、その技術的特徴から逸脱しない限り、以下の例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
Tガラス系ガラスクロス(厚さ95μm、屈折率1.520、日東紡績製、WTX116F)に化学式(1)の構造を有する水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂(E−BP、ダイセル化学工業製)99重量部、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM303、信越化学工業製)1重量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン触媒(SI−100L、三新化学製)1重量部を混合したエポキシ樹脂組成物を含浸させ脱泡した。このガラスクロスを離型処理したガラス板に挟み込み80℃で2時間加熱後、250℃で更に2時間加熱し厚み97μm(ガラスフィラー含有量:63重量%)の透明複合シートを得た。このシート表面に、ビームセット575CB(荒川化学社製)45重量部、シリカフィラー(平均粒径2μm、東ソー・シリカ製)5重量部、メチルエチルケトン(山一化学製)50重量部の混合物を塗布および硬化し、表面中心線平均粗さ0.05μmとなるように膜厚を調整して凹凸層を形成した。
【0035】
(実施例2)
Tガラス系ガラスクロス(厚さ95μm、屈折率1.520、日東紡績製、WTX116F)に化学式(1)の構造を有する水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂(E−BP、ダイセル化学工業製)99重量部、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM303、信越化学工業製)1重量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン触媒(SI−100L、三新化学製)1重量部を混合したエポキシ樹脂組成物を含浸させ脱泡した。このガラスクロスを離型処理したガラス板に挟み込み80℃で2時間加熱後、250℃で更に2時間加熱し厚み97μm(ガラスフィラー含有量:63重量%)の透明複合シートを得た。このシート表面に、ビームセット575CB(荒川化学社製)45重量部、シリカフィラー(平均粒径2μm、東ソー・シリカ製)5重量部、メチルエチルケトン(山一化学製)50重量部の混合物を塗布および硬化し、表面中心線平均粗さ0.2μmとなるように膜厚を調整して凹凸層を形成した。
【0036】
(実施例3)
Tガラス系ガラスクロス(厚さ95μm、屈折率1.520、日東紡績製、WTX116F)に化学式(1)の構造を有する水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂(E−BP、ダイセル化学工業製)99重量部、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM303、信越化学工業製)1重量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン触媒(SI−100L、三新化学製)1重量部を混合したエポキシ樹脂組成物を含浸させ脱泡した。このガラスクロスを離型処理したガラス板に挟み込み80℃で2時間加熱後、250℃で更に2時間加熱し厚み97μm(ガラスフィラー含有量:63重量%)の透明複合シートを得た。このシート表面に、ビームセット575CB(荒川化学社製)45重量部、シリカフィラー(平均粒径2μm、東ソー・シリカ製)5重量部、メチルエチルケトン(山一化学製)50重量部の混合物を塗布および硬化し、表面中心線平均粗さ0.6μmとなるように膜厚を調整して凹凸層を形成した。
【0037】
(比較例1)
Tガラス系ガラスクロス(厚さ95μm、屈折率1.520、日東紡績製、WTX116F)に化学式(1)の構造を有する水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂(E−BP、ダイセル化学工業製)99重量部、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM303、信越化学工業製)1重量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン触媒(SI−100L、三新化学製)1重量部を混合したエポキシ樹脂組成物を含浸させ脱泡した。このガラスクロスを離型処理したガラス板に挟み込み80℃で2時間加熱後、250℃で更に2時間加熱し厚み97μm(ガラスフィラー含有量:63重量%)の透明複合シートを得た。このシート表面に、ビームセット575CB(荒川化学社製)45重量部、シリカフィラー(平均粒径2μm、東ソー・シリカ製)5重量部、メチルエチルケトン(山一化学製)50重量部の混合物を塗布および硬化し、表面中心線平均粗さ0.04μmとなるように膜厚を調整して凹凸層を形成した。
【0038】
(比較例2)
Tガラス系ガラスクロス(厚さ95μm、屈折率1.520、日東紡績製、WTX116F)に化学式(1)の構造を有する水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂(E−BP、ダイセル化学工業製)99重量部、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM303、信越化学工業製)1重量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン触媒(SI−100L、三新化学製)1重量部を混合したエポキシ樹脂組成物を含浸させ脱泡した。このガラスクロスを離型処理したガラス板に挟み込み80℃で2時間加熱後、250℃で更に2時間加熱し厚み97μm(ガラスフィラー含有量:63重量%)の透明複合シートを得た。このシート表面に、ビームセット575CB(荒川化学社製)45重量部、シリカフィラー(平均粒径2μm、東ソー・シリカ製)5重量部、メチルエチルケトン(山一化学製)50重量部の混合物を塗布および硬化し、表面中心線平均粗さ0.03μmとなるように膜厚を調整して凹凸層を形成した。
【0039】
(比較例3)
Tガラス系ガラスクロス(厚さ95μm、屈折率1.520、日東紡績製、WTX116F)に化学式(1)の構造を有する水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂(E−BP、ダイセル化学工業製)99重量部、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM303、信越化学工業製)1重量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン触媒(SI−100L、三新化学製)1重量部を混合したエポキシ樹脂組成物を含浸させ脱泡した。このガラスクロスを離型処理したガラス板に挟み込み80℃で2時間加熱後、250℃で更に2時間加熱し厚み97μm(ガラスフィラー含有量:63重量%)の透明複合シートを得た。このシート表面に、ビームセット575CB(荒川化学社製)45重量部、シリカフィラー(平均粒径2μm、東ソー・シリカ製)5重量部、メチルエチルケトン(山一化学製)50重量部の混合物を塗布および硬化し、表面中心線平均粗さ0.7μmとなるように膜厚を調整して凹凸層を形成した。
【0040】
(比較例4)
Tガラス系ガラスクロス(厚さ95μm、屈折率1.520、日東紡績製、WTX116F)に化学式(1)の構造を有する水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂(E−BP、ダイセル化学工業製)99重量部、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM303、信越化学工業製)1重量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン触媒(SI−100L、三新化学製)1重量部を混合したエポキシ樹脂組成物を含浸させ脱泡した。このガラスクロスを離型処理したガラス板に挟み込み80℃で2時間加熱後、250℃で更に2時間加熱し厚み97μm(ガラスフィラー含有量:63重量%)の透明複合シートを得た。このシート表面に、ビームセット575CB(荒川化学社製)45重量部、シリカフィラー(平均粒径2μm、東ソー・シリカ製)5重量部、メチルエチルケトン(山一化学製)50重量部の混合物を塗布および硬化し、表面中心線平均粗さ0.8μmとなるように膜厚を調整して凹凸層を形成した。
【0041】
<評価方法>
(表面の傷)
以上のようにして作製した透明複合シートを塗工機の巻き出しにある基材に貼り、基材と共に巻き取りまで搬送させた。なお、塗工機中のガイドロール1本を回転しないよう固定し、搬送時のエラーにより基材表面に傷が入る現象を模した。巻き取りに到達した透明複合シートの表面を目視にて観察し、傷の有無を確認した。傷を認識できない場合を○、観察角度によっては傷を認識できる場合を△、観察角度によらず傷を認識できる場合を×と評価した。
【0042】
(白濁感)
透明複合シートを黒色のプラスチック板に貼り付けた状態で蛍光灯などの外光をサンプルの一部に映りこませて目視評価した。反射光以外の部分について全体的に白っぽさを感じず透明性を維持している場合を○、観察角度により白っぽさは少し確認されるものを△、観察角度によらず白っぽさを感じるものを×と評価した。
【0043】
実施例、比較例の透明複合シートにおける表面中心線平均粗さ、塗工機中搬送後の表面
の傷の有無、白濁感を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1の結果を踏まえると、表面中心線平均粗さ0.05〜0.6μmのシリカフィラー含有凹凸層をシート表面に設けると、巻き出しから送り出されたシートの表面に傷が入ることを回避しつつ白濁することなくシートの透明性を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明では、エポキシ樹脂組成物とガラスフィラーとを含有してなる複合組成物を硬化させて得られる透明複合シートを、巻き出しから巻き取りまで搬送する際に表面に入る傷を抑制できる。