(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイル又はメタクリロイルを表し、(メタ)アクリルはアクリル又はメタクリルを表す。
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、加工性、ウェットグリップ性能、グリップ持続性及び耐摩耗性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0013】
[タイヤ用ゴム組成物]
本発明のタイヤ用ゴム組成物(本発明の組成物)は、
芳香族ビニル−共役ジエン系共重合体を含むジエン系ゴムと、
シリカと、
炭素数3〜30の炭化水素基と、ピペラジン環、モルホリン環及びチオモルホリン環からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ環とを有するヘテロ環化合物(ただし、上記ヘテロ環化合物はケイ素原子を有さない。)とを含有し、
上記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が、−35℃以上であり、
上記シリカの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、150〜300質量部であり、
上記ヘテロ環化合物の含有量が、上記シリカに対して、0.5〜20質量%である、タイヤ用ゴム組成物である。
【0014】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
本発明の組成物に含有されるヘテロ環化合物は、炭素数3〜30の炭化水素基と、ピペラジン環、モルホリン環及びチオモルホリン環からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ環とを有する。
上記炭化水素基は疎水性を有するのでジエン系ゴムと相互作用しやすく、上記ヘテロ環は親水性を有するのでシリカと相互作用しやすいと考えられる。
このように、疎水部としての上記炭化水素基と親水部としての上記ヘテロ環とを有する上記ヘテロ環化合物は、ジエン系ゴム及びシリカを含有する組成物において、界面活性剤のように機能して、ジエン系ゴムにおけるシリカの分散性を高め、このことによって、未加硫ゴムにおけるムーニー粘度が低くなると本発明者らは推測する。
また、上記ヘテロ環化合物は、上記炭化水素基においてジエン系ゴムと相互作用はするものの化学結合を形成せず、かつ、上記ヘテロ環においてシリカと相互作用はするものの上記ヘテロ環化合物はケイ素原子を有さないので上記ヘテロ環化合物はシリカと化学結合を形成しないと考えられる。このため、上記ヘテロ環化合物は、加硫促進効果が高すぎないことから、スコーチ(ヤケ)が抑制できると本発明者らは推測する。
上記のように、上記ヘテロ環化合物の存在により、ムーニー粘度が低くなり、スコーチが抑制され、本発明の組成物は加工性に優れると考えられる。
また、上記のとおり、上記ヘテロ環化合物がジエン系ゴムにおけるシリカの分散性を高めることによって、本発明の組成物は加工性に優れつつ、本発明の組成物をタイヤにしたときに、ウェットグリップ性能、グリップ持続性(剛性)及び耐摩耗性を高い次元でバランスさせることができると推測される。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0015】
<<ジエン系ゴム>>
本発明の組成物は、芳香族ビニル−共役ジエン系共重合体を含むジエン系ゴムを含有し、上記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度は−35℃以上である。
なお、本発明において上記ジエン系ゴムは後述する、低分子量共役ジエン系重合体又は式(3)で表される繰り返し単位を有する樹脂を含まない。
【0016】
<芳香族ビニル−共役ジエン系共重合体>
上記ジエン系ゴムに含まれうる芳香族ビニル−共役ジエン系共重合体は、芳香族ビニルと共役ジエンとの共重合体である。
芳香族ビニル−共役ジエン系共重合体としては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴムが挙げられる。
【0017】
上記ジエン系ゴムは、上記芳香族ビニル−共役ジエン系共重合体以外のジエン系ゴムを更に含むことができる。
上記芳香族ビニル−共役ジエン系共重合体以外のジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR);イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
【0018】
(変性ジエン系ゴム)
上記ジエン系ゴムは変性ジエン系ゴムを含むことができる。変性ジエン系ゴムは、変性基を有することができる。上記変性基は、シリカと相互作用又は結合することができる基であることが好ましい。変性基として例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、イミノ基、チオール基、エポキシ基、ポリオルガノシロキサン基のようなポリシロキサン基、アルコキシシリル基のようなヒドロカルビルオキシシラン基、シラノール基、これらの組合せが挙げられる。
変性ジエン系ゴムの主鎖としては例えば、上記ジエン系ゴムと同様のものが挙げられる。
上記変性基と上記主鎖(上記ジエン系ゴム)とは、直接、又は、有機基を介して結合することができる。上記有機基は特に制限されない。
変性ジエン系ゴムは、変性SBRであることが好ましい。
【0019】
上記ジエン系ゴムが変性ジエン系ゴムを含む場合、変性ジエン系ゴムの含有量は、本発明の効果(特にウェットグリップ性能)により優れるという観点から、ジエン系ゴム全量中の50質量%を超える量であることが好ましく、80〜100質量%がより好ましい。
【0020】
ジエン系ゴムは、23℃条件下において固体であればよい。
ジエン系ゴムの重量平均分子量は、20,000を超える値とできる。ジエン系ゴムの重量平均分子量は、200万以下とすることができる。
ジエン系ゴムの重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
【0021】
<<平均ガラス転移温度>>
本発明において、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度(平均Tg)は−35℃以上である。
上記平均ガラス転移温度の上限は、0℃未満とできる。
ジエン系ゴムの平均Tgは、各ジエン系ゴムのガラス転移温度(Tg)に、ジエン系ゴム全体に対する各ジエン系ゴムの質量%をそれぞれ掛け合わせて、これらを足し合わせたものである。
なお、ジエン系ゴムとして1種のジエン系ゴムが使用された場合、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度は、上記1種のジエン系ゴムのガラス転移温度となる。
各ジエン系ゴムのガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出したものである。
【0022】
<<シリカ>>
本発明の組成物に含有されるシリカは特に限定されない。例えば、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知のシリカを用いることができる。
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。
【0023】
(シリカのCTAB吸着比表面積)
上記シリカのCTAB吸着比表面積は、本発明の効果(特にウェットグリップ性能)により優れるという観点から、150〜300m
2/gが好ましい。
本発明において、上記シリカのCTAB吸着比表面積を210m
2/g未満とできる。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカがシランカップリング剤との吸着に利用できる表面積の代用特性であり、シリカ表面へのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0024】
<<シリカの含有量>>
本発明において、上記シリカの含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、150〜300質量部である。
上記シリカの含有量は、本発明の効果(特にウェットグリップ性能)により優れるという観点から、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、180〜300質量部が好ましく、220〜300質量部がより好ましい。
【0025】
<<ヘテロ環化合物>>
本発明の組成物に含有されるヘテロ環化合物は、炭素数3〜30の炭化水素基と、ピペラジン環、モルホリン環及びチオモルホリン環からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ環とを有する化合物である。本発明において、上記ヘテロ環化合物はケイ素原子を有さない。
上記炭素数3〜30の炭化水素基は、疎水部として機能することができる。
なお、上記ヘテロ環化合物は、エナミン構造(N−C=C)を有さないものとできる。
【0026】
<炭素数3〜30の炭化水素基>
炭素数3〜30の炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状及び環状を含む。)、芳香族炭化水素基、並びに、これらの組合せが挙げられる。
なかでも、加工性により優れるという観点から、脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0027】
炭素数3〜30の炭化水素基の炭素数は、加工性により優れるという観点から、8〜22が好ましく、8〜18がより好ましい。
【0028】
炭素数3〜30の炭化水素基は、炭素原子及び水素原子のみで構成されることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
炭素数3〜30の炭化水素基は、1価であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記ヘテロ環化合物1分子は、上記炭素数3〜30の炭化水素基を、1個又は複数有することができ、1個又は2個有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0029】
<ヘテロ環>
本発明において、ヘテロ環化合物は、ピペラジン環、モルホリン環及びチオモルホリン環からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ環を有する。
上記ヘテロ環化合物1分子は、上記ヘテロ環を、1個又は複数有することができ、1個有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ヘテロ環は、加工性により優れるという観点から、ピペラジン環、モルホリン環が好ましく、ピペラジン環がより好ましい。
【0030】
(ピペラジン環)
ピペラジン環は、ピペラジンの骨格を意味する。ヘテロ環としてピペラジン環を有するヘテロ環化合物を以下「ピペラジン化合物」と称することがある。本発明において、ピペラジン環は、トリエチレンジアミン骨格(ジアザビシクロオクタン骨格)を含まない。
(モルホリン環)
モルホリン環は、モルホリンの骨格を意味する。ヘテロ環としてモルホリン環を有するヘテロ環化合物を以下「モルホリン化合物」と称することがある。
(チオモルホリン環)
チオモルホリン環は、チオモルホリンの骨格を意味する。ヘテロ環としてチオモルホリン環を有するヘテロ環化合物を以下「チオモルホリン化合物」と称することがある。
【0031】
(炭素数3〜30の炭化水素基とヘテロ環との結合)
炭素数3〜30の炭化水素基は、ヘテロ環化合物が有するヘテロ環の窒素原子又は炭素原子に、直接又は有機基を介して結合することができる。
炭素数3〜30の炭化水素基は、ヘテロ環化合物が有するヘテロ環の窒素原子に、直接又は有機基を介して結合することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
なお、ヘテロ環化合物において、上記ヘテロ環がモルホリン環である場合、モルホリン環における窒素原子又は炭素原子に、炭素数3〜30の炭化水素基は、直接又は有機基を介して結合することができる。上記ヘテロ環がチオモルホリン環である場合も同様である。
【0032】
上記有機基は特に制限されない。例えば、酸素原子を有する炭化水素基が挙げられる。炭化水素基としては例えば上記と同様のものが挙げられる。
上記酸素原子は、例えば、カルボニル基、ヒドロキシ基を形成してもよい。
有機基が末端に酸素原子を有する炭化水素基である場合、上記酸素原子が炭素数3〜30の炭化水素基と結合してエーテル結合を形成してもよい。上記酸素原子を有する炭化水素基が、さらにヒドロキシ基を有してもよい。
【0033】
上記ピペラジン化合物は、炭素数3〜30の炭化水素基及びピペラジン環以外の置換基を、さらに、有することができる。上記置換基としては、例えば、スルホン系保護基、カルバメート系保護基及び式(I−3):−(R
2−O)
n2−Hからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
ピペラジン化合物がさらに上記置換基を有する場合、上記置換基は、ピペラジン化合物が有するピペラジン環の窒素原子に結合できる。
【0034】
また、ピペラジン化合物において、1個の上記炭素数3〜30の炭化水素基が、ピペラジン環の2つの窒素原子うちの1つに結合し、ピペラジン環の残りの窒素原子に、水素原子又は上記置換基が結合できる。
【0035】
(スルホン系保護基)
スルホン系保護基としては、例えば、メタンスルホニル基、トシル基及びノシル基が挙げられる。
【0036】
(カルバメート系保護基)
カルバメート系保護基としては、例えば、tert−ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基及び9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0037】
(式(I−3))
式(I−3):−(R
2−O)
n2−Hにおいて、R
2は、それぞれ独立に、2価の炭化水素基を表す。
式(I−3)において、2価の炭化水素基の炭素数は、2〜3が好ましい。
2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状、又は、これらの組合せの何れであってもよい。
n2は、1〜10を表し、1〜5が好ましい。
【0038】
ヘテロ環化合物は、加工性により優れ、シリカの分散性に優れるという観点から、下記式(I)で表される化合物が好ましい。
【化3】
式(I)中、X
7が、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、
X
3、X
4、X
5及びX
6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。
X
7が窒素原子である場合、n3は1であり、X
1及びX
2のうちの一方又は両方が、それぞれ独立に、式(I−1):−(A
1)
n1-1−R
1-1を表し、
X
1及びX
2のうちの一方のみが式(I−1)を表す場合、残りの基が、水素原子、スルホン系保護基、カルバメート系保護基及び式(I−3):−(R
2−O)
n2−Hからなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、
式(I−3)中、R
2は、それぞれ独立に、2価の炭化水素基を表し、
n2は、1〜10を表す。
X
7が酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である場合、n3は0を表し、X
1が、式(I−1):−(A
1)
n1-1−R
1-1を表す。
式(I−1)中、A
1は、カルボニル基及び式(I−2):−R
1-2(OH)−O−からなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、
n1−1は、0又は1を表し、
R
1-1は、炭素数3〜30の炭化水素基を表し、
式(I−2)中、R
1-2は、3価の炭化水素基を表す。
【0039】
式(I)中、X
1及びX
2のうちの一方又は両方が、それぞれ独立に、式(I−1):−(A
1)
n1-1−R
1-1を表す。
【0040】
(式(I−1))
式(I−1):−(A
1)
n1-1−R
1-1において、A
1は、カルボニル基及び式(I−2):−R
1-2(OH)−O−からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。
n1−1は、0又は1を表す。
R
1-1は、炭素数3〜30の炭化水素基を表す。炭素数3〜30の炭化水素基は上記と同様である。
【0041】
(式(I−2))
式(I−2):−R
1-2(OH)−O−において、R
1-2は、3価の炭化水素基を表す。
3価の炭化水素基の炭素数は、3〜30が好ましい。
3価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状、又は、これらの組合せの何れであってもよい。
【0042】
式(I−2)において、上記ヒドロキシ基はR
1-2を構成するいずれの炭素原子に結合してもよい。
【0043】
式(I−1):−(A
1)
n1-1−R
1-1において、n1−1が1であり、A
1が式(I−2):−R
1-2(OH)−O−である場合、式(I−2)のR
1-2がヘテロ環の窒素原子と結合し、式(I−2)の上記酸素原子(−O−)がR
1-1と結合し、R
1-2(3価の炭化水素基)が炭素数3〜30であり、上記酸素原子(−O−)とヘテロ環の窒素原子との間において、R
1-2(3価の炭化水素基)が有する炭素原子のうちの3個以上の炭素原子が横並びに並ぶことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0044】
(X
3、X
4、X
5及びX
6)
式(I)において、X
3、X
4、X
5及びX
6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。
上記炭化水素基は特に制限されない。上記炭化水素基は、上記炭素数3〜30の炭化水素基であってもよいし、それ以外の炭化水素基であってもよい。
X
3、X
4、X
5及びX
6は、水素原子であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0045】
式(I)において、X
7が窒素原子であり、n3は1であり、X
1及びX
2のうちの一方のみが上記式(I−1)を表す場合、残りの基が、水素原子、スルホン系保護基、カルバメート系保護基及び式(I−3):−(R
2−O)
n2−Hからなる群から選ばれる少なくとも1種を表すことができる。
すなわち、X
1が上記式(I−1)を表す場合、X
2が、水素原子、スルホン系保護基、カルバメート系保護基及び式(I−3):−(R
2−O)
n2−Hからなる群から選ばれる少なくとも1種を表すことができる。
また、X
2が上記式(I−1)を表す場合、X
1が、水素原子、スルホン系保護基、カルバメート系保護基及び式(I−3):−(R
2−O)
n2−Hからなる群から選ばれる少なくとも1種を表すことができる。スルホン系保護基、カルバメート系保護基及び式(I−3)は、それぞれ、上記と同様である。
【0046】
(ヘテロ環化合物が式(I)で表される化合物であり、X
7が窒素原子であり、n3が1である場合)
式(I)で表され、X
7が窒素原子であり、n3が1であるヘテロ環化合物は、下記式(II)で表される。
【化4】
【0047】
式(II)中、X
1及びX
2のうちの一方又は両方が、それぞれ独立に、式(I−1):−(A
1)
n1-1−R
1-1を表す。
【0048】
(式(I−1))
式(I−1):−(A
1)
n1-1−R
1-1において、A
1は、カルボニル基及び式(I−2):−R
1-2(OH)−O−からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。
n1−1は、0又は1を表す。
R
1-1は、炭素数3〜30の炭化水素基を表す。炭素数3〜30の炭化水素基は上記と同様である。
【0049】
(式(I−2))
式(I−2):−R
1-2(OH)−O−において、R
1-2は、3価の炭化水素基を表す。
3価の炭化水素基の炭素数は、3〜30が好ましい。
3価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状、又は、これらの組合せの何れであってもよい。
【0050】
式(I−2)において、上記ヒドロキシ基はR
1-2を構成するいずれの炭素原子に結合してもよい。
【0051】
式(I−1):−(A
1)
n1-1−R
1-1において、n1−1が1であり、A
1が式(I−2):−R
1-2(OH)−O−である場合、式(I−2)のR
1-2がピペラジン環の窒素原子と結合し、式(I−2)の上記酸素原子(−O−)がR
1-1と結合し、R
1-2(3価の炭化水素基)が炭素数3〜30であり、上記酸素原子(−O−)とピペラジン環の窒素原子との間において、R
1-2(3価の炭化水素基)が有する炭素原子のうちの3個以上の炭素原子が横並びに並ぶことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0052】
(X
3、X
4、X
5及びX
6)
式(II)において、X
3、X
4、X
5及びX
6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。
上記炭化水素基は特に制限されない。上記炭化水素基は、上記炭素数3〜30の炭化水素基であってもよいし、それ以外の炭化水素基であってもよい。
X
3、X
4、X
5及びX
6は、水素原子であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0053】
式(II)において、X
1及びX
2のうちの一方のみが上記式(I−1)を表す場合、残りの基が、水素原子、スルホン系保護基、カルバメート系保護基及び式(I−3):−(R
2−O)
n2−Hからなる群から選ばれる少なくとも1種を表すことができる。
すなわち、X
1が上記式(I−1)を表す場合、X
2が、水素原子、スルホン系保護基、カルバメート系保護基及び式(I−3):−(R
2−O)
n2−Hからなる群から選ばれる少なくとも1種を表すことができる。
また、X
2が上記式(I−1)を表す場合、X
1が、水素原子、スルホン系保護基、カルバメート系保護基及び式(I−3):−(R
2−O)
n2−Hからなる群から選ばれる少なくとも1種を表すことができる。スルホン系保護基、カルバメート系保護基及び式(I−3)は、それぞれ、上記と同様である。
【0054】
ピペラジン化合物の具体的態様としては、例えば、下記態様1又は2が挙げられる。
(ピペラジン化合物の態様1)
ピペラジン化合物の態様1は、式(II)で表され、
X
1及びX
2の両方がそれぞれ独立に上記式(I−1)を表す化合物である。
上記態様1において、X
3、X
4、X
5及びX
6は、水素原子が好ましい。
【0055】
上記態様1の具体例としては例えば、下記式で表されるピペラジン化合物3、5及び8が挙げられる。
【0058】
ピペラジン化合物8(Rはそれぞれ独立に−C
12H
25、又は、−C
13H
27を表す。)
【化7】
なお、ピペラジン化合物8は、両方のRが−C
12H
25である化合物、両方のRが−C
13H
27である化合物及び一方のRが−C
12H
25であり残りのRが−C
13H
27である化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種の混合物であってもよい。
【0059】
(ピペラジン化合物の態様2)
ピペラジン化合物の態様2は、式(II)で表され、
X
1及びX
2のうちの一方のみが式(I−1)を表し、
残りの基が、水素原子、スルホン系保護基、カルバメート系保護基及び上記式(I−3):−(R
2−O)
n2−Hからなる群から選ばれる少なくとも1種を表す化合物である。
上記態様2において、X
3、X
4、X
5及びX
6は、水素原子が好ましい。
【0060】
上記態様2の具体例としては例えば、下記式で表されるピペラジン化合物1、2、4、6及び7が挙げられる。
【0062】
ピペラジン化合物2(下記構造式中、nは1〜10であり、1〜5が好ましい。)
【化9】
【0065】
ピペラジン化合物7(Rは−C
12H
25、又は、−C
13H
27を表す。ピペラジン化合物7は、Rが−C
12H
25であるピペラジン化合物とRが−C
13H
27であるピペラジン化合物との混合物であってもよい。)
【化12】
【0066】
(ヘテロ環化合物が式(I)で表される化合物であり、X
7が酸素原子又は硫黄原子であり、n3が0である場合)
式(I)で表され、X
7が酸素原子又は硫黄原子であり、n3が0であるヘテロ環化合物は、下記式(III)で表される。
【化13】
式(III)において、X
1は上記式(I)の式(I−1):−(A
1)
n1-1−R
1-1と同じであり、X
3、X
4、X
5及びX
6は上記式(I)のX
3、X
4、X
5及びX
6とそれぞれ同じであり、X
8は酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0067】
式(III)で表される化合物としては、例えば、下記式で表されるモルホリン化合物1〜4が挙げられる。
【0071】
(モルホリン化合物4)
【化17】
モルホリン化合物4においてRは−C
12H
25、又は、−C
13H
27を表す。モルホリン化合物4は、Rが−C
12H
25であるモルホリン化合物とRが−C
13H
27であるモルホリン化合物との混合物であってもよい。
【0072】
ヘテロ環化合物はその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
具体的には例えば、置換基を有してもよいピペラジン、モルホリン及びチオモルホリンからなる群から選ばれる少なくとも1種と、ハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素等)、酸ハロゲン基(酸塩化物基、酸臭化物基、酸ヨウ化物基等)及びグルシジルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する、炭素数3〜30の炭化水素化合物とを、必要に応じて溶媒中で、反応させることによって得ることができる。置換基は上記と同様である。上記炭化水素化合物が有する炭素数3〜30の炭化水素基は上記と同様である。
また、上記ピペラジン化合物2のように、さらに上記式(I−3):−(R
2−O)
n2−Hを有する場合のピペラジン化合物の製造方法としては、例えば、ピペラジン化合物1のようにヒドロキシ基を有するピペラジン化合物と、アルキレンオキサイドとを、金属アルコキシドの存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0073】
<<ヘテロ環化合物の含有量>>
本発明において、上記ヘテロ環化合物の含有量は、上記シリカの含有量に対して、0.5〜20質量%である。
上記ヘテロ環化合物の含有量は、本発明の効果により優れ、シリカの分散性に優れるという観点から、上記シリカの含有量に対して、1〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
【0074】
(式(3)で表される繰り返し単位を有する樹脂)
本発明の組成物は、更に、下記式(3)で表される繰り返し単位を有する樹脂を含有することができる。
本発明の組成物が更に上記樹脂を含有する場合、ウェットグリップ性能により優れる。
【0075】
下記式(3)で表される繰り返し単位を有する樹脂は、下記式(3)で表される繰り返し単位を有する単独重合体であっても、上記繰り返し単位の他に、他の不飽和単量体単位を有する共重合体であってもよい。
【化18】
式(3)中、R
31は、炭素数1〜8の直鎖状または分枝状のアルキル基を表し、R
32は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または、ハロゲン基を表す。
【0076】
上記繰り返し単位を有する樹脂としては、例えば、下記式(3−1)で表される単量体の単独重合体や、下記式(3−1)で表される単量体と他の不飽和単量体との共重合体等が挙げられる。なお、下記式(3−1)のR
31は、上記式(3)のR
31と同義である。下記式(3−1)のR
32は、上記式(3)のR
32と同義である。
【化19】
【0077】
上記式(3−1)で表される単量体としては、具体的には、例えば、イソプロペニルベンゼン(α−メチルスチレン)、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等のイソプロペニルベンゼン類等がある。
これらのうち、上記式(3−1)中のR
31がメチル基であるイソプロペニルベンゼン類(R
32は特に制限されない)であるのが好ましく、イソプロペニルベンゼン(α−メチルスチレン)、R
32がアルキル基であるアルキル置換イソプロペニルベンゼン類がより好ましく、イソプロペニルベンゼン(α−メチルスチレン)、イソプロペニルトルエン(メチル−α−メチル−スチレン)がさらに好ましい。
【0078】
一方、他の不飽和単量体はエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。他の不飽和単量体としては、具体的には、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、イソブチレン等の脂肪族炭化水素系単量体;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン等のスチレン系単量体;インデンのような縮合環化合物等が挙げられる。
これらのうち、インデンが好ましい。
【0079】
上記繰り返し単位を有する樹脂としては、具体的には、例えば、4−メチル−α−メチル−スチレン/インデン共重合体としてFMR0150(軟化点145℃、三井化学社製)、スチレン−(α−メチルスチレン)−脂肪族炭化水素系共重合体としてのFTR−7100(軟化点100℃、三井化学社製)、α−メチルスチレン系重合体としてのFTR−0100(軟化点100℃、三井化学社製)、スチレン−(α−メチルスチレン)系共重合体としてのFTR−2120(軟化点120℃、三井化学社製)、FTR−2140(軟化点145℃、三井化学社製)、クリスタレックス3100(軟化点100℃、イーストマンケミカル社製)、クリスタレックス3085(軟化点85℃、イーストマンケミカル社製)、クリスタレックス5140(軟化点140℃、イーストマンケミカル社製)、クリスタレックス1120(軟化点120℃、イーストマンケミカル社製)、クリスタレックスF85(軟化点85℃、イーストマンケミカル社製)、クリスタレックスF100(軟化点100℃、イーストマンケミカル社製)およびクリスタレックスF115(軟化点115℃、イーストマンケミカル社製)等の市販品を用いることができる。
【0080】
本発明においては、上記繰り返し単位を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値として、1000〜10000であることが好ましく、1500〜8000であることがより好ましい。
【0081】
上記繰り返し単位を有する樹脂の軟化点は、ウェットグリップ性能により優れるという観点から、120〜160℃が好ましい。
本発明において、上記軟化点は、示差走査熱量計(DSC)に準じて測定できる。
【0082】
本発明のゴム組成物において、上記繰り返し単位を有する樹脂の含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して10〜60質量部が好ましく、20〜55質量部がより好ましく、20〜50質量部が更に好ましい。
【0083】
(低分子量共役ジエン系重合体)
本発明の組成物は、更に、重量平均分子量が2,000〜20,000であり、変性されていてもよい低分子量共役ジエン系重合体を含有することができる。低分子量共役ジエン系重合体は共役ジエンの繰り返し単位(共役ジエン単位)を有するポリマーである。
本発明の組成物が更に上記低分子量共役ジエン系重合体を含有する場合、ウェットグリップ性能又は耐摩耗性により優れる。
なお、低分子量共役ジエン系重合体は、上述したジエン系ゴムには当たらない。
【0084】
・低分子量共役ジエン系重合体の重量平均分子量
ここで、低分子量共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
低分子量共役ジエン系重合体の重量平均分子量は、3000〜18000が好ましく、4000〜13000がより好ましい。
上記低分子量共役ジエン系重合体は、23℃条件下において液状であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0085】
上記低分子量共役ジエン系重合体としては、具体的には、例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等が挙げられる。
【0086】
上記低分子量共役ジエン系重合体は変性されていても、変性されていなくてもよい。
上記低分子量共役ジエン系重合体が変性されている場合、変性された低分子量共役ジエン系重合体(変性低分子量共役ジエン系重合体)が有する変性基は、シリカと相互作用又は結合することができる基であることが好ましい。上記変性基として例えば、ヒドロキシ基、アルコキシシリル基のようなヒドロカルビルオキシシラン基、シラノール基、カルボキシ基、アルデヒド基、アミノ基、イミノ基、チオール基、エポキシ基、ポリオルガノシロキサン基のようなポリシロキサン基、これらの組合せが挙げられる。
変性低分子量共役ジエン系重合体の主鎖としては、例えば、上記低分子量共役ジエン系重合体と同様のものが挙げられる。
【0087】
上記変性基と上記主鎖とは、直接、又は、有機基を介して結合することができる。上記有機基は特に制限されない。
上記変性基は変性低分子量共役ジエン系重合体の末端にあることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0088】
上記低分子量共役ジエン系重合体のビニル結合含有量は、40〜70%であることが好ましい。
上記低分子量共役ジエン系重合体が共役ジエン単位の他に更に芳香族ビニルの繰り返し単位(芳香族ビニル単位)を含む場合、上記低分子量共役ジエン系重合体の芳香族ビニル単位含有量は、20〜40質量%であることが好ましい。
本発明において、芳香族ビニル単位含有量およびビニル結合含有量は、
1H−NMRにより測定できる。
【0089】
本発明において、上記低分子量共役ジエン系重合体を更に含有する場合、上記低分子量共役ジエン系重合体の含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して5〜100質量部であるのが好ましく、10〜90質量部であるのがより好ましい。
【0090】
上記低分子量共役ジエン系重合体に対する上記ヘテロ環化合物の質量比(ヘテロ環化合物/低分子量共役ジエン系重合体)は、本発明の効果により優れるという観点から、0.1〜1.0が好ましく、0.1〜0.4がより好ましい。
【0091】
(シランカップリング剤)
本発明の組成物は、更に、シランカップリング剤を含有することができる。
上記シランカップリング剤は特に制限されない。シランカップリング剤は、加水分解性基を有することができる。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、1〜16であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0092】
シランカップリング剤は上記加水分解性基の他に例えば、硫黄原子を有する基を有することができる。硫黄原子は、例えば、スルフィド基(モノスルフィド基、ポリスルフィド基を含む)、メルカプト基、カルボニルチオ基を構成することができる。
シランカップリング剤としては、例えば、硫黄含有シランカップリング剤、ポリシロキサン骨格を有するシランカップリング剤が挙げられる。
上記ポリシロキサン骨格は、−(Si−O)−の繰り返し単位を複数有するポリマーを意味する。上記ポリシロキサン骨格は直鎖状、分岐状、3次元構造のいずれか又はこれらの組合わせとすることができる。
シランカップリング剤は、さらにポリシロキサン骨格を有するものであってもよく、又は、ポリシロキサン骨格を有さないものであってもよい。
【0093】
シランカップリング剤としては例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィドのようなポリスルフィドシラン;
下記式(a)で表されるシランカップリング剤;
下記式(b)で表されるシランカップリング剤;
3−[エトキシビス(3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタコサン−1−イルオキシ)シリル]−1−プロパンチオール(エボニック・デグサ社製Si363)のような下記式(2)で表されるシランカップリング剤、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤が挙げられる。
【0094】
なかでも、本発明の効果により優れるという観点から、ポリスルフィドシランが好ましい。
【0095】
・式(a)で表されるシランカップリング剤
式(a)は、(C
LH
2L+1O)
3−Si−(CH
2)
m−S−C(=O)−(C
nH
2n+1)である。
式(a)中、Lは1〜3であり、mは1〜3であり、nは1〜15である。
C
LH
2L+1は、直鎖状及び分岐状の何れであってもよい。
(C
nH
2n+1)は、直鎖状、分岐状及び環状の何れであってもよく、これらの組合せであってもよい。
【0096】
式(a)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0097】
・式(b)で表されるシランカップリング剤
式(b)は、(A)
a(B)
b(C)
c(D)
d(R
1)
eSiO
(4-2a-b-c-d-e)/2である。
なお、式(b)は平均組成式である。
【0098】
式(b)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基を表す。Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基を表す。Cは加水分解性基を表す。Dはメルカプト基を含有する有機基を表す。R
1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表す。a〜eは、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、0≦e<2であり、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす。
ただし、a、dが同時に0である場合を除く。
【0099】
上記式(b)で表されるシランカップリング剤は、ポリシロキサン骨格を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0100】
(A)
上記式(b)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基(以下、スルフィド基含有有機基ともいう)を表す。有機基は例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい炭化水素基とすることができる。
なかでも、下記式(4)で表される基であることが好ましい。
*−(CH
2)
n−S
x−(CH
2)
n−
* (4)
上記式(4)中、nは1〜10の整数を表し、なかでも、2〜4の整数であることが好ましい。
上記式(4)中、xは1〜6の整数を表し、なかでも、2〜4の整数であることが好ましい。
上記式(4)中、*は、結合位置を示す。
上記式(4)で表される基の具体例としては、例えば、
*−CH
2−S
2−CH
2−
*、
*−C
2H
4−S
2−C
2H
4−
*、
*−C
3H
6−S
2−C
3H
6−
*、
*−C
4H
8−S
2−C
4H
8−
*、
*−CH
2−S
4−CH
2−
*、
*−C
2H
4−S
4−C
2H
4−
*、
*−C
3H
6−S
4−C
3H
6−
*、
*−C
4H
8−S
4−C
4H
8−
*などが挙げられる。
【0101】
(B)
上記式(b)中、Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基を表し、その具体例としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。Bはメルカプト基を保護することができる。
Bは、本発明の効果(特に加工性)により優れ、シリカの分散性に優れるという観点から、炭素数8〜10の1価の炭化水素基であることが好ましい。
【0102】
(C)
上記式(b)中、Cは加水分解性基を表し、その具体例としては、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、下記式(5)で表される基であることが好ましい。
*−OR
2 (5)
【0103】
上記式(5)中、R
2は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基(アリールアルキル基)又は炭素数2〜10のアルケニル基を表す。R
2はなかでも、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
【0104】
上記炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられる。
上記炭素数6〜10のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基などが挙げられる。
上記炭素数7〜10のアラルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。
上記炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、プロぺニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
上記式(5)中、*は、結合位置を示す。
【0105】
(D)
上記式(b)中、Dはメルカプト基を含有する有機基を表す。なかでも、下記式(6)で表される基であることが好ましい。
*−(CH
2)
m−SH (6)
【0106】
上記式(6)中、mは1〜10の整数を表す。mは、なかでも、1〜5の整数であることが好ましい。
上記式(6)中、*は、結合位置を示す。
【0107】
上記式(6)で表される基の具体例としては、
*−CH
2SH、
*−C
2H
4SH、
*−C
3H
6SH、
*−C
4H
8SH、
*−C
5H
10SH、
*−C
6H
12SH、
*−C
7H
14SH、
*−C
8H
16SH、
*−C
9H
18SH、
*−C
10H
20SHが挙げられる。
【0108】
(R
1)
上記式(b)中、R
1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表す。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0109】
(a〜e)
上記式(b)中、a〜eは、0≦a<1、0<b<1、0<c<3であり、0≦d<1であり、0≦e<2、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす。
【0110】
式(b)で表されるシランカップリング剤は、本発明の効果(特に加工性)により優れ、シリカの分散性に優れるという観点から、aが0よりも大きい(0<a)ことが好ましく、0<a≦0.50であることがより好ましい。
【0111】
上記式(b)中、bは、本発明の効果(特に加工性)により優れ、シリカの分散性に優れるという観点から、0.10≦b≦0.89であることが好ましい。
【0112】
上記式(b)中、cは、本発明の効果(特に加工性)により優れ、シリカの分散性に優れるという観点から、1.2≦c≦2.0であることが好ましい。
【0113】
上記式(b)中、dは、本発明の効果(特に加工性)により優れ、シリカの分散性に優れるという観点から、0.1≦d≦0.8であることが好ましい。
【0114】
上記式(b)中、本発明の効果(特に加工性)により優れ、シリカの分散性に優れるという観点から、0<2a+b+c+d+e≦3が好ましい。
【0115】
式(b)で表されるシランカップリング剤は、本発明の効果(特に加工性)により優れ、シリカの分散性に優れるという観点から、上記式(b)中、Aが上記式(4)で表される基であり、Cが上記式(5)で表される基であり、Dが上記式(6)で表される基であることが好ましく、Aが上記式(4)で表される基であり、Cが上記式(5)で表される基であり、Dが上記式(6)で表される基であり、Bが炭素数8〜10の1価の炭化水素基であることがより好ましい。
【0116】
式(b)で表されるシランカップリング剤の重量平均分子量は、本発明の効果(特に加工性)により優れ、シリカの分散性に優れるという観点から、500〜2300であることが好ましく、600〜1500であることがより好ましい。式(b)で表されるシランカップリング剤の分子量は、トルエンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で求められた重量平均分子量である。
【0117】
式(b)で表されるシランカップリング剤の酢酸/ヨウ化カリウム/ヨウ素酸カリウム添加−チオ硫酸ナトリウム溶液滴定法によるメルカプト当量は、加硫反応性に優れるという観点から、550〜1900g/molであることが好ましく、600〜1800g/molであることがより好ましい。
【0118】
・式(2)で表されるシランカップリング剤
式(2)は下記のとおりである。
【化20】
式(2)中、R
21は、炭素数1〜8のアルコキシ基を表す。R
22は、末端に炭化水素基を有するポリエーテル基を表す。R
23は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。R
24は炭素数1〜30のアルキレン基を表す。lは1〜2の整数を表し、mは1〜2の整数を表し、nは0〜1の整数を表し、l、mおよびnはl+m+n=3の関係式を満たす。lが2である場合の複数あるR
21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、mが2である場合の複数あるR
22はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0119】
(R
21)
上記式(2)中、R
21は、炭素数1〜8のアルコキシ基を表し、なかでも、低転がり抵抗性に優れたタイヤが得られる理由から、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。炭素数1〜3のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
(R
22)
上記式(2)中、R
22は、末端に炭化水素基を有するポリエーテル基を表す。ポリエーテル基とは、エーテル結合を2以上有する基である。なお、mが2である場合の複数あるR
22はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
末端に炭化水素基を有するポリエーテル基の好適な態様としては、下記式(5)で表される基が挙げられる。
【0121】
(R
51)
上記式(5)中、R
51は、直鎖状のアルキル基、直鎖状のアルケニル基、または、直鎖状のアルキニル基を表し、なかでも直鎖状のアルキル基が好ましい。上記直鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数8〜15の直鎖状のアルキル基がより好ましい。炭素数8〜15の直鎖状のアルキル基の具体例としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基などが挙げられ、なかでもトリデシル基が好ましい。
(R
52)
上記式(5)中、R
52は、直鎖状のアルキレン基、直鎖状のアルケニレン基、または、直鎖状のアルキニレン基を表し、なかでも直鎖状のアルキレン基が好ましい。上記直鎖状のアルキレン基としては、炭素数1〜2の直鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
(p)
上記式(5)中、pは、1〜10の整数を表し、3〜7であることが好ましい。
上記式(5)中、*は、結合位置を示す。
【0122】
(R
23)
上記式(2)中、R
23は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。
(R
24)
上記式(2)中、R
24は炭素数1〜30のアルキレン基を表し、なかでも炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましい。炭素数1〜5のアルキレン基の具体例としては、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基などが挙げられる。
(l、m、n)
上記式(2)中、lは1〜2の整数を表し、1であることが好ましい。上記式(2)中、mは1〜2の整数を表し、2であることが好ましい。nは0〜1の整数を表し、0であることが好ましい。l、mおよびnはl+m+n=3の関係式を満たす。
【0123】
式(2)で表されるシランカップリング剤としては、具体的には例えば、3−[エトキシビス(3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタコサン−1−イルオキシ)シリル]−1−プロパンチオール(エボニック・デグサ社製Si363)が挙げられる。
【0124】
シランカップリング剤の製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0125】
上記シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果(特に加工性)により優れ、シリカの分散性に優れるという観点から、上記シリカ100質量部に対して、2〜20質量部が好ましく、5〜15質量部であることがより好ましい。
【0126】
(添加剤)
本発明の組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、ジエン系ゴム以外のゴム、シリカ以外の充填剤(例えば、カーボンブラック)、加硫促進剤、樹脂、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、オイル、硫黄のような加硫剤、過酸化物などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用されるものが挙げられる。添加剤の含有量は適宜選択することができる。
【0127】
(カーボンブラック)
本発明の組成物はカーボンブラックを更に含有することができる。
上記カーボンブラックは、特に限定されない。カーボンブラックとしては、例えば、SAF(Super Abrasion Furnace。以下同様)−HS(High Structure。以下同様)、SAF、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace。以下同様)−HS、ISAF、ISAF−LS(Low Structure。以下同様)、IISAF(Intermediate ISAF)−HS、HAF(High Abrasion Furnace。以下同様)−HS、HAF、HAF−LS、FEF(Fast Extruding Furnace)等の各種グレードのものを使用することができる。
【0128】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、加工性により優れるという観点から、50〜200m
2/gが好ましい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2に準じて測定されたものとする。
【0129】
カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。
【0130】
(ゴム組成物の製造方法)
本発明の組成物の製造方法は特に限定されない。その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、100〜200℃の条件下で混合する方法などが挙げられる。
また、本発明の組成物は、例えば、従来公知の加硫又は架橋条件で加硫又は架橋することができる。
本発明の組成物を用いて、例えば、タイヤを作製することができる。
本発明の組成物で作製できる、空気入りタイヤの構成部材は特に制限されない。上記部材としては例えば、キャップトレッドのようなタイヤトレッド;サイドウォール;ビードフィラーが挙げられる。
【0131】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに配置した空気入りタイヤである。
上記キャップトレッドに使用されるゴム組成物は、本発明のタイヤ用ゴム組成物(本発明の組成物)であれば特に制限されない。
キャップトレッドは、空気入りタイヤにおいて、路面と直接接する部分である。
本発明の空気入りタイヤは、キャップトレッドに本発明の組成物が配置される(キャップトレッドが本発明の組成物で形成される)以外は特に制限されない。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示す。なお本発明は添付の図面に限定されない。
【0132】
図1において、空気入りタイヤは、ビード部1、サイドウォール部2及びタイヤトレッド部3を有する。左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、カーカス層4の端部はビードコア5及びビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
タイヤトレッド部3は、ベルト層7の上にキャップトレッドを有する。ベルト層7とキャップトレッドとの間にアンダートレッドが配置されてもよい。
タイヤトレッド部3におけるキャップトレッドに、上述した本発明の組成物が配置されている。
【0133】
本発明の空気入りタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。
本発明の空気入りタイヤは、例えば、競技用として使用することができる。
空気入りタイヤに充填する気体としては、例えば、通常の又は酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0134】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<<ピペラジン化合物の製造>>
<ピペラジン化合物1の合成>
1−ブロモオクタデカン(東京化成工業(株)製)33.3gと、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン(日本乳化剤(株)製ヒドロキシエチルピペラジン)13.0gとを、テトラヒドロフラン及びジクロロメタン中、室温で1時間反応させた。反応溶液を炭酸カリウム水溶液で水洗、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで、下記式で表されるピペラジン化合物1を得た。
(ピペラジン化合物1)
【化22】
【0135】
<ピペラジン化合物2の合成>
上述のとおり得られたピペラジン化合物1を39.6gと、エチレンオキサイド13.2gと、ナトリウムメトキシド0.004gとを反応させた。反応液をリン酸で中和、ろ過し、下記式で表されるピペラジン化合物2を得た。下記式中のnは3である。
(ピペラジン化合物2)
【化23】
【0136】
<ピペラジン化合物3の合成>
1−ブロモオクタデカン(東京化成工業(株)製)66.6gと、ピペラジン6水和物(日本乳化剤(株)製ピペラジン6水塩)19.04gとを、テトラヒドロフラン及びジクロロメタン中、室温で1時間反応させた。反応溶液を炭酸カリウム水溶液で水洗、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで、下記式で表されるピペラジン化合物3を得た。
(ピペラジン化合物3)
【化24】
【0137】
<ピペラジン化合物4の合成>
ステアロイルクロリド(東京化成工業(株)製)30.3gと、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン(日本乳化剤(株)製ヒドロキシエチルピペラジン)13.0gと、トリエチルアミン15.2gとを、トルエン中、0℃の条件下で1時間反応させた。反応溶液を炭酸ナトリウム水溶液で水洗、トルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで、下記式で表されるピペラジン化合物4を得た。
(ピペラジン化合物4)
【化25】
【0138】
<ピペラジン化合物5の合成>
ステアロイルクロリド(東京化成工業(株)製)60.6gと、ピペラジン6水和物(日本乳化剤(株)製ピペラジン6水塩)19.04gと、トリエチルアミン30.4gとを、トルエン中、0℃の条件下で1時間反応させた。反応溶液を炭酸ナトリウム水溶液で水洗、トルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで、下記式で表されるピペラジン化合物5を得た。
(ピペラジン化合物5)
【化26】
【0139】
<ピペラジン化合物6の合成>
2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(四日市合成(株)製エポゴーセー(登録商標)2EH)18.5gと、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン(日本乳化剤(株)製ヒドロキシエチルピペラジン)13.0gとを、60℃の条件下で4時間反応させることで、下記式で表されるピペラジン化合物6を得た。
【0140】
ピペラジン化合物6の
1H−NMRの結果は以下のとおりである。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 3.85(m,1H),3.60(t,2H),3.30−3.47(m,4H),2.65(m,2H),2.54(t,4H),2.46(t,2H),2.38(dd,2H),1.52(q,1H),1.26−1.41(m,8H),0.89(t,5H),0.85(s,1H)
(ピペラジン化合物6)
【化27】
【0141】
<ピペラジン化合物7の合成>
C12〜13混合アルコールグリシジルエーテル(四日市合成(株)製エポゴーセー(登録商標)EN。C12アルコールグリシジルエーテルとC13アルコールグリシジルエーテルとの混合物。)28.4gと、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン(日本乳化剤(株)製ヒドロキシエチルピペラジン)13.0gとを、60℃の条件下で4時間反応させることで、下記式で表されるピペラジン化合物7(Rは−C
12H
25、又は、−C
13H
27を表す。ピペラジン化合物7は、Rが−C
12H
25であるピペラジン化合物とRが−C
13H
27であるピペラジン化合物との混合物である。)を得た。
(ピペラジン化合物7)
【化28】
【0142】
<ピペラジン化合物8の合成>
C12〜13混合アルコールグリシジルエーテル(四日市合成(株)製エポゴーセー(登録商標)EN)56.8gと、ピペラジン6水和物(日本乳化剤(株)製ピペラジン6水塩)19.04gとを、エタノール中、60℃の条件下で6時間反応させた。反応溶液を飽和食塩水で水洗、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで、下記式で表されるピペラジン化合物8(Rはそれぞれ独立に−C
12H
25、又は、−C
13H
27を表す。)を得た。
(ピペラジン化合物8)
【化29】
【0143】
<モルホリン化合物3の合成>
2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(四日市合成(株)製エポゴーセー登録商標2EH)18.5gと、モルホリン(東京化成工業(株)製)8.7gとを、60℃の条件下で、4時間反応させることでモルホリン化合物3(下記構造)を得た。
(モルホリン化合物3)
【化30】
【0144】
<<タイヤ用組成物の製造>>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記第1表に示す成分のうち硫黄及び加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃付近に温度を上げてから、5分間混合した後に放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄及び加硫促進剤を混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。
なお、第1表中、SBRの量について、上段の値はゴム(油展品)の量(単位:質量部)であり、下段の値は、ゴムの正味の量(単位:質量部)である。
【0145】
<評価>
上記のとおり製造された組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。下記表において、各評価項目(耐摩耗性を除く)について、各実施例の評価結果(耐摩耗性を除く。)を、標準例の評価結果(100)に対する指数で表した。耐摩耗性の評価結果の表示については後述する。
【0146】
(ムーニー粘度)
JIS K6300−1:2013の方法に則り、上記のとおり製造された組成物の100℃におけるムーニー粘度(ML
1+4)を測定した。
本発明においてムーニー粘度の指数が100未満である場合、加工性に優れる。
上記指数は小さいほど加工性に優れるが、90以上であることが好ましい。
【0147】
(ムーニースコーチ)
上記のとおり製造された組成物(未加硫)について、JIS K6300−1:2013に準じ、L形ロータを使用し、試験温度125℃の条件で、スコーチタイムを測定した。
本発明において、ムーニースコーチの指数が90〜105である場合、スコーチタイムが長く、耐スコーチ性が優れ、加工性に優れる。上記指数の範囲において、指数は大きいほど、スコーチタイムがより長く、耐スコーチ性がより優れ、加工性により優れる。
【0148】
(ウェットグリップ性能)
上記のとおり製造されたタイヤ用ゴム組成物(未加硫)を金型(15cm×15cm×0.2cm)中で、160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴムシートを作製した。
作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件で、tanδ(0℃)を測定した。
本発明において、tanδ(0℃)の指数が100を超える場合、tanδ(0℃)が大きく、タイヤにしたときにウェットグリップ性能に優れる。
【0149】
(グリップ持続性)
上記のとおり製造されたタイヤ用ゴム組成物(未加硫)を金型(15cm×15cm×0.2cm)中で、160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴムシートを作製した。
上記加硫ゴムシートからJIS K6251:2010(3号ダンベル使用)に準じて試験片を打ち抜いた。
上記試験片を用いて、20℃、引張速度500mm/分の条件下において引張り試験を実施し、300%変形モジュラスを測定した。
本発明において、300%変形モジュラスの指数が大きいほどモジュラスが高く、グリップ持続性(又は剛性)に優れることを示す。
【0150】
(耐摩耗性)
上記のとおり製造されたタイヤ用ゴム組成物(未加硫)を金型(15cm×15cm×0.2cm)中で、160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴムシートを作製した。
上記加硫ゴムシートを用いて、JIS K6264に基づき、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所(株)製)を使用して、荷重49N、スリップ率25%、時間4分、室温において、摩耗体積を測定した。
結果は標準例の摩耗体積を100として、次式により指数化した。
耐摩耗性(指数)=(標準例の摩耗体積/各試料の摩耗体積)×100
上記耐摩耗性の指数が大きいほど摩耗量が小さく、タイヤにしたときに耐摩耗性に優れる。
【0151】
【表1】
【0152】
上記表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR1(E580):シリカ用末端変性基としてヒドロキシ基を有する溶液重合スチレンブタジエンゴム。SBR1はジエン系ゴムに該当する。タフデンE580(油展品(SBR100質量部に対して油展オイル37.5質量部を含む。SBR1中のSBRの正味は72.7質量%。)、スチレン含有量:37質量%、ビニル結合量:42%、Tg:−27℃、重量平均分子量:1,260,000、旭化成社製)SBR1は、シリカ用末端変性基としてヒドロキシ基を有するスチレンブタジエンゴムなので、上記変性基においてシリカと相互作用又は反応できる。
【0153】
・SBR2(E680):シリカ用末端変性基としてヒドロキシ基を有する溶液重合スチレンブタジエンゴム。SBR1はジエン系ゴムに該当する。タフデンE680(油展品(SBR100質量部に対して油展オイル37.5質量部を含む。SBR2中のSBRの正味は72.7質量%。)、スチレン含有量:35質量%、ビニル結合量:64%、Tg:−13℃、重量平均分子量:1,470,000、旭化成社製)
【0154】
・NR:天然ゴム、TSR20、Tg:−67℃
【0155】
・シリカ1:Zeosil 1165MP(CTAB吸着比表面積=159m
2/g、ローディア社製)
【0156】
・カーボンブラック:シーストKH N339(N
2SA=93m
2/g、東海カーボン社製)
【0157】
・シランカップリング剤1(Si69):Si69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニックデグサ社製)
【0158】
・樹脂(α−メチルスチレン系):4−メチル−α−メチル−スチレン/インデン共重合体、三井化学社製FMR0150、軟化点145℃、重量平均分子量2000
【0159】
・ピペラジン化合物7:上述のとおり合成したピペラジン化合物7
【0160】
・モルホリン化合物3:上記のとおり合成したモルホリン化合物3
【0161】
・比較ピペラジン化合物1:日本乳化剤社製ヒドロキシエチルピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン
・比較ピペラジン化合物2:試薬[3−(1−ピペラジニル)プロピル]トリエトキシシラン)。比較ピペラジン化合物2はケイ素原子を有する。
【0162】
・低分子量共役ジエン系重合体:未変性の低分子量SBR。商品名RICON100、Cray Valley社製。Tg:−15℃、重量平均分子量:4,500、スチレン単位含有量:25質量%、ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量:60%
【0163】
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸YR(日油社製)
・老化防止剤:6PPD(フレキシス社製)
【0164】
・硫黄:金華印油入微粉硫黄(鶴見化学工業社製)
・加硫促進剤1:ノクセラーCZ−G(加硫促進剤CBS、大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤2:ノクセラーD(加硫促進剤DPG、大内新興化学工業社製)
【0165】
第1表において示す結果から明らかなように、所定のヘテロ環化合物の含有量が特定の範囲を超える比較例1は、ムーニースコーチが短く加工性に劣った。
ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が所定の範囲より低い比較例2は、標準例よりもウェットグリップ性能に劣った。
シリカの含有量が所定の範囲より少ない比較例3は、標準例よりもウェットグリップ性能に劣った。
所定のヘテロ環化合物を含有せず、代わりに、ヒドロキシエチル基を有するピペラジン化合物を含有する比較例4は、スコーチタイムが短く加工性に劣り、標準例よりもグリップ持続性、耐摩耗性に劣った。
所定のヘテロ環化合物を含有せず、代わりに、ケイ素原子を有するピペラジン化合物を含有する比較例5は、スコーチタイムが短く標準例よりもムーニー粘度が高いので加工性に劣り、標準例よりもグリップ持続性、耐摩耗性に劣った。
【0166】
これに対して、本発明の組成物は加工性に優れ、ウェットグリップ性能、グリップ持続性及び耐摩耗性を高い次元でバランスできた。