(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965661
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】コード間隔調整機構およびプライ材料製造装置とプライ材料製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/38 20060101AFI20211028BHJP
B29C 48/15 20190101ALI20211028BHJP
B29C 48/285 20190101ALI20211028BHJP
B29C 48/30 20190101ALI20211028BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20211028BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20211028BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20211028BHJP
B29K 105/00 20060101ALN20211028BHJP
【FI】
B29D30/38
B29C48/15
B29C48/285
B29C48/30
B29C48/92
B29K21:00
B29L30:00
B29K105:00
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-184523(P2017-184523)
(22)【出願日】2017年9月26日
(65)【公開番号】特開2019-59073(P2019-59073A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊太
【審査官】
松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−175870(JP,A)
【文献】
特開昭64−040324(JP,A)
【文献】
特開2006−007428(JP,A)
【文献】
特開平04−341830(JP,A)
【文献】
特開2003−246205(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−0774988(KR,B1)
【文献】
米国特許第04274821(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/38
B29C 48/00−48/96
B29K 21/00
B29K 105/08
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチールコードにゴムが被覆されたプライ材料の製造において、前記スチールコードの配列におけるコード間隔を、ダイプレートの幅に対応して調整するコード間隔調整機構であって、
リールから巻き出されたスチールコードを挿通部に挿通して配列させるソーターとダイプレートとの間の前記ソーター近傍に配置されたコード間隔調整治具と、
前記コード間隔調整治具を回転させる回転手段を備えており、
前記コード間隔調整治具が前記ソーターの幅と同じ幅サイズに形成されていると共に、前記ソーターの挿通部と同じ位置に区分け部が設けられ、前記スチールコードを前記ソーターの挿通部に挿通させると同時に、前記コード間隔調整治具の前記区分け部に挿通させることができ、
前記回転手段が、前記ソーターと前記ダイプレートとの間の所定の位置まで移動した前記コード間隔調整治具を幅方向の中心を支点として回転させることにより、前記スチールコードの進行方向に対する前記コード間隔調整治具の幅を前記ダイプレートの幅に調整して、前記スチールコードの間隔を調整することを特徴とするコード間隔調整機構。
【請求項2】
スチールコードにゴムが被覆されたプライ材料の製造において、前記スチールコードの配列におけるコード間隔を、ダイプレートの幅に対応して調整するコード間隔調整機構であって、
リールから巻き出されたスチールコードを挿通部に挿通して配列させるソーターとダイプレートとの間の前記ソーター近傍に配置されたコード間隔調整治具を備えており、
前記コード間隔調整治具が前記ソーターの幅と同じ幅サイズに形成されていると共に、前記ソーターの挿通部と同じ位置に区分け部が設けられ、前記スチールコードを前記ソーターの挿通部に挿通させると同時に、前記コード間隔調整治具の前記区分け部に挿通させることができ、
さらに、幅方向に伸縮できるように構成されていることを特徴とするコード間隔調整機構。
【請求項3】
前記コード間隔調整治具がアコーディオン式に形成された区分け部を有しており、前記アコーディオン式に形成された区分け部の変形により、前記コード間隔調整治具の幅が伸縮するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のコード間隔調整機構。
【請求項4】
スチールコードにゴムが被覆されたプライ材料を製造するプライ材料製造装置であって、
リールから巻き出されたスチールコードを挿通部に挿通して配列させるソーターと、
前記スチールコードの配列体にゴムを被覆させるダイプレートとを備えており、
さらに前記ソーターと前記ダイプレートとの間に、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコード間隔調整機構が設けられていることを特徴とするプライ材料製造装置。
【請求項5】
ブレーカーまたはベルトを製造するプライ材料製造装置であることを特徴とする請求項4に記載のプライ材料製造装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のプライ材料製造装置を用いて、スチールコードにゴムを被覆してプライ材料を製造するプライ材料製造方法であって、
リールから巻き出された前記スチールコードをソーターの挿通部に挿通して配列させると共に、前記コード間隔調整治具の区分け部に、前記ソーターに挿通された前記スチールコードを挿通し、
次に前記コード間隔調整治具を前記ソーターと前記ダイプレートとの間の所定位置まで移動させた後、前記コード間隔調整治具を回転させ、または前記コード間隔調整治具の幅を縮小させて、前記スチールコードの進行方向に対する間隔をダイプレート幅に調整し、
次に、前記スチールコードの間隔が調整されたスチールコードの配列体を前記ダイプレートに送り込んでゴムを被覆することを特徴とするプライ材料製造方法。
【請求項7】
ブレーカーまたはベルトを製造することを特徴とする請求項6に記載のプライ材料製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーカーやベルトなど、スチールコードにゴムがトッピング(被覆)されたプライ材料の製造に際して、スチールコードの配列におけるコード間隔を調整するために設けられたコード間隔調整機構、および、前記コード間隔調整機構を備えたプライ材料製造装置とプライ材料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造に際しては、ブレーカーやベルトなど、スチールコード(以下、単に「コード」ともいう)にゴムがトッピングされたプライ材料が使用されている。そして、このようなプライ材料は、所定の間隔で配列されたコードの両面にゴムをトッピングすることにより製造されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このとき、コードが均一に配列された状態でゴムがトッピングされていないとタイヤの性能を安定して発揮させることができないため、従来より、ゴム押出機のダイプレートでゴムをトッピングする前に、ダイプレートの幅に合わせてコード間隔を調整することが行われている。
【0004】
具体的には、複数のリールから巻き出された各コードを、まず、ソーターの各挿通部に1本ずつ通過させる。これにより、各コードが重なり合うことを防止することができる。次に、ソーターを通過させた各コードをダイプレートの幅に対応する幅に形成された櫛状のコード間隔調整治具に設けられた各区分け部に1本ずつコードを通過させる。これにより、各コードが所定の間隔(エンズ)で略平行に配列されて、その後、ダイプレートまで送られてゴムがトッピングされる。
【0005】
そして、製造されるプライ材料の幅が変更される際には、コード間隔調整治具をダイプレートの幅に対応する幅のコード間隔調整治具に取り替えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−237263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プライ材料の幅に合わせた多くのコード間隔調整治具を準備することはコスト的に好ましいことでなく、また、プライ材料の製造時にも以下のような問題があった。
【0008】
即ち、取り替えたコード間隔調整治具の区分け部に、ソーターを通過させた後のコードを1本ずつ通過させることは容易ではなく作業に時間が掛かるため、生産性の低下を招く恐れがあった。そして、1つの区分け部に間違えて2本のコードが入った場合には、コード配列が不均一なプライ材料が製造されてしまう。
【0009】
このため、プライ材料の幅が変更されてもコード間隔調整治具を取り替える必要がなく、生産性の低下を招くことなく安定したプライ材料を経済的に製造することができるプライ材料の製造技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討を行い、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
請求項1に記載の発明は、
スチールコードにゴムが被覆されたプライ材料の製造において、前記スチールコードの配列におけるコード間隔を、ダイプレートの幅に対応して調整するコード間隔調整機構であって、
リールから巻き出されたスチールコードを挿通部に挿通して配列させるソーターとダイプレートとの間の前記ソーター近傍に配置されたコード間隔調整治具と、
前記コード間隔調整治具を回転させる回転手段を備えており、
前記コード間隔調整治具が前記ソーターの幅と同じ幅サイズに形成されていると共に、前記ソーターの挿通部と同じ位置に区分け部が設けられ
、前記スチールコードを前記ソーターの挿通部に挿通させると同時に、前記コード間隔調整治具の前記区分け部に挿通させることができ、
前記回転手段が、前記ソーターと前記ダイプレートとの間の所定の位置まで移動した前記コード間隔調整治具を幅方向の中心を支点として回転させることにより、前記スチールコードの進行方向に対する前記コード間隔調整治具の幅を前記ダイプレートの幅に調整して、前記スチールコードの間隔を調整することを特徴とするコード間隔調整機構である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、
スチールコードにゴムが被覆されたプライ材料の製造において、前記スチールコードの配列におけるコード間隔を、ダイプレートの幅に対応して調整するコード間隔調整機構であって、
リールから巻き出されたスチールコードを挿通部に挿通して配列させるソーターとダイプレートとの間の前記ソーター近傍に配置されたコード間隔調整治具を備えており、
前記コード間隔調整治具が前記ソーターの幅と同じ幅サイズに形成されていると共に、前記ソーターの挿通部と同じ位置に区分け部が設けられ
、前記スチールコードを前記ソーターの挿通部に挿通させると同時に、前記コード間隔調整治具の前記区分け部に挿通させることができ、
さらに、幅方向に伸縮できるように構成されていることを特徴とするコード間隔調整機構である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、
前記コード間隔調整治具がアコーディオン式に形成された区分け部を有しており、前記アコーディオン式に形成された区分け部の変形により、前記コード間隔調整治具の幅が伸縮するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のコード間隔調整機構である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、
スチールコードにゴムが被覆されたプライ材料を製造するプライ材料製造装置であって、
リールから巻き出されたスチールコードを挿通部に挿通して配列させるソーターと、
前記スチールコードの配列体にゴムを被覆させるダイプレートとを備えており、
さらに前記ソーターと前記ダイプレートとの間に、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコード間隔調整機構が設けられていることを特徴とするプライ材料製造装置である。
【0015】
請求項5に記載の発明は、
ブレーカーまたはベルトを製造するプライ材料製造装置であることを特徴とする請求項4に記載のプライ材料製造装置である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、
請求項4または請求項5に記載のプライ材料製造装置を用いて、スチールコードにゴムを被覆してプライ材料を製造するプライ材料製造方法であって、
リールから巻き出された前記スチールコードをソーターの挿通部に挿通して配列させると共に、前記コード間隔調整治具の区分け部に、前記ソーターに挿通された前記スチールコードを挿通し、
次に前記コード間隔調整治具を前記ソーターと前記ダイプレートとの間の所定位置まで移動させた後、前記コード間隔調整治具を回転させ、または前記コード間隔調整治具の幅を縮小させて、前記スチールコードの進行方向に対する間隔をダイプレート幅に調整し、
次に、前記スチールコードの間隔が調整されたスチールコードの配列体を前記ダイプレートに送り込んでゴムを被覆することを特徴とするプライ材料製造方法である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、
ブレーカーまたはベルトを製造することを特徴とする請求項6に記載のプライ材料製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プライ材料の幅が変更されてもコード間隔調整治具を取り替える必要がなく、生産性の低下を招くことなく安定したプライ材料を経済的に製造することができるプライ材料の製造技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るプライ材料製造装置を説明する図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係るプライ材料製造装置を説明する図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態に係るプライ材料製造装置を説明する図であって、(a)は装置全体を示す図、(b)はコード進行方向から見たコード間隔調整治具の部分拡大図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係るプライ材料製造装置を説明する図であって、(a)は装置全体を示す図、(b)はコード進行方向から見たコード間隔調整治具の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施の形態に基づき、図面を用いて本発明を具体的に説明する。
【0021】
1.第1の実施の形態
本実施の形態は、コード間隔調整治具を幅方向の中心を支点として回転させることにより、スチールコードの進行方向に対するコード間隔調整治具の幅をダイプレートの幅に調整して、スチールコードの間隔を調整するコード間隔調整機構が設けられたプライ材料製造装置である。
【0022】
図1および
図2は、本実施の形態に係るプライ材料製造装置を説明する図であり、
図1はソーターに近接した位置にコード間隔調整治具を配置してコードを挿通させている状態を、
図2はコード間隔調整治具を回転させてコードの間隔を調整している状態を示している。
【0023】
(1)プライ材料製造装置
図1に示すように、本実施の形態に係るプライ材料製造装置は、ソーター3と、ダイプレート4と、コード間隔調整治具6とを備えており、コード間隔調整治具6はソーター3とダイプレート4との間でソーター3の近傍に配置されている。
【0024】
ソーター3は、リール1から巻き出される複数本のコード(スチールコード)2の各々を、各々に対応するコード挿通部3aに挿通させることにより整列させてコード2が重なり合うことを防止するために設けられており、ダイプレート4は所定の間隔でスチールコード2が配列されたコード配列体2Aにゴムを被覆して、プライ材料Mを作製するために設けられている。
【0025】
図1に示すように、リール1の各々にはコード2が巻き取られており、所定の間隔で配列されている。
【0026】
ソーター3には、各リールに対応して、巻き出されたコード2が挿通されるコード挿通部3aが設けられている。
【0027】
ダイプレート4は、ゴム押出機本体(図示せず)の押出しヘッドに取り付けられている。なお、ゴム押出機本体は、ゴム投入口が設けられたシリンダー内にスクリュー軸を収納した周知の構造をなしており、スクリュー軸の回転駆動により、投入されたゴムを可塑化しながらダイプレート4に送り出し、コード配列体2Aの両面にゴムを被覆する。
【0028】
(2)コード間隔調整機構
次に、本実施の形態におけるコード間隔調整機構について説明する。コード間隔調整機構5は、
図1に示すように、コード挿通部3aに挿通された各コード2をダイプレート4へ送るために配列させるコード間隔調整治具6と、コード間隔調整治具6を回転させる回転手段を備えており、回転手段はソーター3とダイプレート4との間の所定の位置まで移動した後、コード間隔調整治具6を幅方向の中心を支点として回転させることにより、スチールコード2の進行方向に対するコード間隔調整治具6の幅をダイプレート4の幅に調整して、スチールコード2同士の間隔を調整する。
【0029】
(a)コード間隔調整治具
コード間隔調整治具6はソーター3と同じ幅に形成されており、区分け部6aがソーター3のコード挿通部3aと対応する位置に等間隔(d)に設けられている。ソーター3のコード挿通部3aに挿通されたコード2を、この区分け部6aに挿通させることにより、コード配列体2Aが形成される。
【0030】
このとき、コード間隔調整治具6は、ソーター3と同じ幅に形成されていると共に、ソーター3のコード挿通部3aと対応する位置に区分け部6aが設けられているため、コード2をソーター3のコード挿通部3aに挿通させると同時に、区分け部6aに容易に挿通させることができる。そして、1つの区分け部に間違えて2本のコードが入るようなことが発生しないため、コード配列が不均一なプライ材料が製造されることを防止することができる。
【0031】
(b)回転手段
回転手段は、コード間隔調整治具6によって配列されたコード配列体2Aが、ダイプレート4に対して略平行に導入されるように、ダイプレート4の幅に合わせてコード間隔を調整するものであり、本実施の形態においては、
図2に示すように、コード間隔調整治具6をソーター3とダイプレート4との間の所定の位置まで移動させた後、コード間隔調整治具6を幅方向の中心を支点としてコード2の進行方向に対して角度θで回転させることにより、スチールコード2の進行方向に対するコード間隔調整治具6の幅をダイプレート4の幅に調整して、スチールコード2同士の間隔を調整することができる。
【0032】
このように、コード間隔調整治具6のスチールコードの進行方向に対する幅を調整することにより、プライ材料Mの幅が変更されてもコード間隔調整治具6を取り替えることなく、コード配列体2Aの各コード2をダイプレート4に対して略平行に導入して、プライ材料Mを製造することができる。また、1つのコード間隔調整治具6で多種多様なプライ材料Mの製造が可能となるため、コスト的にも好ましい。
【0033】
(3)コードプライの製造
本実施の形態におけるコードプライは、上記したコードプライの製造装置を用いて製造される。具体的には、まず、複数のリール1から巻き出された長尺のコード2をソーター3の各コード挿通部3aを通過させた後、ソーター3に近接して位置するコード間隔調整治具6の各区分け部6aに挿通させる。
【0034】
このとき、上記したように、コード間隔調整治具6はソーター3と同じ幅に形成されているため、各コード2を各区分け部6aに容易、かつ確実に挿通させることができる。
【0035】
次に、各コード2が各区分け部6aに挿通されたコード間隔調整治具6を、コード2の進行方向に沿って回転可能な位置まで移動させ、その後、回転手段によってコード間隔調整治具6を回転させて角度θで傾斜させることにより、コード間隔調整治具6、コード配列体2Aの幅をダイプレート4の幅に合わせるようにコード間隔を調整する。
【0036】
次に、コード間隔が調整されたコード配列体2Aをダイプレート4に導入し、ゴムを被覆させてプライ材料Mを製造する。このとき、コード配列体2Aの幅はダイプレート4の幅に合わされているため、各コード2をダイプレート4に向けて略平行に導入させることができ、コード配列が均一なプライ材料を安定して製造することができる。
【0037】
2.第2の実施の形態
本実施の形態は、伸縮可能なコード間隔調整治具を用いて、コード間隔調整治具の幅をダイプレートの幅に調整して、スチールコードの間隔を調整するコード間隔調整機構が設けられたプライ材料製造装置である。
【0038】
図3および
図4は、本実施の形態に係るプライ材料製造装置を説明する図であり、
図3はソーターに近接した位置にコード間隔調整治具を配置してコードを挿通させている状態を、
図4はコード間隔調整治具を伸縮させてコードの間隔を調整している状態を示している。なお、各図において、(a)は装置全体を示す図、(b)はコード進行方向から見たコード間隔調整治具の部分拡大図である。
【0039】
本実施の形態において、コード間隔調整治具6は、
図3(b)に示すように、ピンで連結された複数組のリンク6b及び平行に配置される仕切り体6cによって各区分け部6a(
図3(a)参照)がアコーディオン式に形成されている。そして、本実施の形態においては、コード間隔調整治具6をソーター3とダイプレート4との間の所定の位置まで移動させた後、コード間隔調整治具6を両側から縮小させて、アコーディオン式に形成されている区分け部を変形させてコード間隔調整治具6の仕切り体6cの幅を変化させることにより、スチールコード2の進行方向に対するコード間隔調整治具6の幅をダイプレート4の幅に調整して、スチールコード2同士の間隔を調整することができる。
【0040】
具体的には、まず、ソーター3へコード2を挿通させる際には、
図3(a)に示すように、コード間隔調整治具6は、ソーター3と同じ幅まで伸長されており、
図3(b)に示すように、コード2を挿通させる間隔は十分に確保されている。このため、第1の実施の形態の場合と同様に、ソーター3のコード挿通部3aに挿通させると同時に、区分け部6aにコード2を容易に挿通させることができる。
【0041】
次に、
図4(a)に示すように、コード間隔調整治具6をソーター3とダイプレート4との間の所定の位置まで移動させた後、
図4(b)に示すように、コード間隔調整治具6の幅を縮小して区分け部6aの間隔dを調整しコード配列体2Aの幅をダイプレート4の幅に合わせるように調整する。
【0042】
このため、プライ材料Mの幅が変更されてもコード間隔調整治具を取り替えることなく、コード配列体2Aの各コード2をダイプレート4に対して略平行に導入して、プライ材料Mを製造することができる。
【0043】
なお、上記した各実施の形態において、スチールコードとしては、従来と同様に、1×n構成の単撚りスチールコード、k+m構成の層撚りスチールコード(nは1〜27の整数、kは1〜10の整数、mは1〜8の整数など)、a+b+c構成の3層撚りスチールコード(aは1〜3の整数、bは1〜9の整数、cは1〜13の整数など)や、黄銅メッキ付高張力コードなどを使用することができる。
【0044】
3.本実施の形態の効果
上記した第1の実施の形態、および第2の実施の形態を適用することにより、以下に示すような効果を得ることができる。
【0045】
(1)本実施の形態においては、コードを挿通する際には、ソーターとコード間隔調整治具のサイズを同じにして、ソーターのコード挿通部と、コード間隔調整治具の区分け部が相対するように設けているため、1回の挿通でソーターとコード間隔調整治具に挿通させることができ、効率的であると共に、確実に1本ずつ挿通させることができる。
【0046】
(2)そして、本実施の形態においては、コード配列体の幅を、コード間隔調整治具を取り替えることなく、ダイプレートの幅に容易に変更することができるため、異なるサイズのプライ材料の製造に際しても、コード間隔調整治具の取り替えの都度、コードを挿通し直すという手間が不要となる。
【0047】
(3)以上の結果、プライ材料の変更に際して、コード間隔調整治具の取り替えに要する時間、および、取り替えられたコード間隔調整治具にコードを挿通させる時間を短縮することができるため、作業ロスの改善を図って、生産性の向上に貢献することができる。
【0048】
(4)また、多種多様なコード間隔調整治具を必要としないため、コード間隔調整治具の製造コスト、保管コストの低減を図ることができる。
【実施例】
【0049】
1.プライ材料の作製
上記した第1の実施の形態と同じ構成のプライ材料製造装置(実施例1)および第2の実施の形態と同じ構成のプライ材料製造装置(実施例2)を用いて、コード間隔調整治具を取り替えることなく、プライ材料としてブレーカーを製造した。
【0050】
比較のために、従来のコード間隔調整治具の取り替え式のプライ材料製造装置を用いて、同様にブレーカーを製造した(比較例)。なお、この場合における、コード間隔調整治具の取り替え回数は9回/日であった(取り替えに要する時間:約10分/回)。
【0051】
2.評価項目
(1)作業ロスの改善
コード間隔調整治具を取り替えないことによる作業ロスの改善を評価した。
【0052】
(2)工程通過性
製造した各ブレーカーについて、裁断した際の跳ね高さを測定し、コードへの癖付きを評価した。
【0053】
3.評価結果
(1)作業ロスの改善
実施例1、2においては、いずれもコード間隔調整治具の取り替えが不要であったため、年間、500時間以上の作業ロスの改善が図れることが確認できた。
【0054】
(2)工程通過性
工程通過性については、実施例1、2のいずれも、比較例と同等の結果が得られており、コード間隔調整治具の取り替えをせずに製造を行っても、品質上、問題がないことが確認できた。
【0055】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 リール
2 コード(スチールコード)
2A コード配列体
3 ソーター
3a コード挿通部
4 ダイプレート
5 コード間隔調整機構
6 コード間隔調整治具
6a 区分け部
6b リンク
6c 仕切り体
d 区分け部の間隔
M プライ材料
θ コード間隔調整治具の傾斜角度