特許第6965678号(P6965678)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965678
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】作業車両の作業設定システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20211028BHJP
   A01B 71/02 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   G06Q50/02
   A01B71/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-197693(P2017-197693)
(22)【出願日】2017年10月11日
(65)【公開番号】特開2019-71007(P2019-71007A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2020年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】澤木 拓人
【審査官】 加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−138570(JP,A)
【文献】 特開2015−188429(JP,A)
【文献】 特開2015−069417(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0183459(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
A01B 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の作業車両(V1,V2,V3)と、
前記作業車両(V1,V2,V3)との間で情報の送受信が可能なサーバ(101)と、
前記作業車両(V1,V2,V3)で行う作業の設定を行う作業設定手段(TAB,Pa1)と、
を備え、
前記作業車両(V1,V2,V3)は、前記作業車両(V1,V2,V3)の位置を計測する位置計測部(TAB4,230)を有し、
前記サーバ(101)は、作業を行う複数の圃場(H1,H2)に対して、圃場(H1,H2)毎に、作業車両(V1,V2,V3)のそれぞれに対して、作業設定情報を、作業者(W1,W2,W3)の各人について紐付けて記憶し、
記作業車両(V1,V2,V3)の位置の計測結果に基づいて判別された圃場(H1,H2)と、その圃場(H1,H2)で作業を行う作業車両(V1,V2,V3)と、前記作業設定手段(TAB,Pa1)で認証された作業者(W1,W2,W3)とに紐付けられた作業設定情報が前記サーバ(101)に存在する場合には、当該作業設定情報を読み出すことで、読み出された作業設定情報に応じて前記作業車両(V1,V2,V3)に作業を行わせると共に、
作業が行われる圃場(H1,H2)と作業を行う作業車両(V1,V2,V3)と認証された作業者(W1,W2,W3)とに紐付けられた作業設定情報が前記サーバ(101)に存在しない場合であって、同一の圃場(H1,H2)且つ同一の作業車両(V1,V2,V3)且つ他の作業者(W1,W2,W3)に紐付けられた作業設定情報がサーバ(101)に存在する場合には、当該他の作業者(W1,W2,W3)の作業設定を選択するための入力部(342)を前記作業設定手段(TAB,Pa1)に表示し、
作業が行われる圃場(H1,H2)と作業を行う作業車両(V1,V2,V3)と認証された作業者(W1,W2,W3)とに紐付けられた作業設定情報が前記サーバ(101)に存在しない場合であって、予め定められた基準設定が前記サーバ(101)に記憶されている場合には、前記基準設定を選択するための入力部(342)を前記作業設定手段(TAB,Pa1)に表示する
ことを特徴とする作業車両の作業設定システム。
【請求項2】
前記サーバ(101)の管理者が登録した前記作業設定情報が前記サーバ(101)に記憶されている場合には、作業が行われる圃場(H1,H2)と作業を行う作業車両(V1,V2,V3)と認証された作業者(W1,W2,W3)とに紐付けられた作業設定情報が存在していても、前記管理者の作業設定情報を優先的に使用して作業を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の作業設定システム。
【請求項3】
作業が終了すると、作業終了時の作業設定を前記サーバ(101)に送信して、作業設定の登録情報を更新する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両の作業設定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の作業設定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の作業に関する作業車両の設定項目の状態の組み合わせを複数パターン保存し、一台の作業車両を複数の運転者が使用する場合に、運転者が交代するたびに保存したパターンの内、自分好みのパターンを読み込むことで逐一煩わしい設定を行う必要がなく、効率よく作業を開始することができる作業車両が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−184121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような従来の構成では、一台の作業車両についてのみ設定できる構成となっており、作業車両を乗り換えた場合は、その都度設定が必要であった。
【0005】
本発明の課題は、作業設定を省力化できる作業車両の作業設定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、次の解決手段により解決される。
すなわち、請求項1に記載の発明は、複数台の作業車両(V1,V2,V3)と、前記作業車両(V1,V2,V3)との間で情報の送受信が可能なサーバ(101)と、前記作業車両(V1,V2,V3)で行う作業の設定を行う作業設定手段(TAB,Pa1)と、を備え、前記作業車両(V1,V2,V3)は、前記作業車両(V1,V2,V3)の位置を計測する位置計測部(TAB4,230)を有し、前記サーバ(101)は、作業を行う複数の圃場(H1,H2)に対して、圃場(H1,H2)毎に、作業車両(V1,V2,V3)のそれぞれに対して、作業設定情報を、作業者(W1,W2,W3)の各人について紐付けて記憶し、前記作業車両(V1,V2,V3)の位置の計測結果に基づいて判別された圃場(H1,H2)と、その圃場(H1,H2)で作業を行う作業車両(V1,V2,V3)と、前記作業設定手段(TAB,Pa1)で認証された作業者(W1,W2,W3)とに紐付けられた作業設定情報が前記サーバ(101)に存在する場合には、当該作業設定情報を読み出すことで、読み出された作業設定情報に応じて前記作業車両(V1,V2,V3)に作業を行わせると共に、作業が行われる圃場(H1,H2)と作業を行う作業車両(V1,V2,V3)と認証された作業者(W1,W2,W3)とに紐付けられた作業設定情報が前記サーバ(101)に存在しない場合であって、同一の圃場(H1,H2)且つ同一の作業車両(V1,V2,V3)且つ他の作業者(W1,W2,W3)に紐付けられた作業設定情報がサーバ(101)に存在する場合には、当該他の作業者(W1,W2,W3)の作業設定を選択するための入力部(342)を前記作業設定手段(TAB,Pa1)に表示し、作業が行われる圃場(H1,H2)と作業を行う作業車両(V1,V2,V3)と認証された作業者(W1,W2,W3)とに紐付けられた作業設定情報が前記サーバ(101)に存在しない場合であって、予め定められた基準設定が前記サーバ(101)に記憶されている場合には、前記基準設定を選択するための入力部(342)を前記作業設定手段(TAB,Pa1)に表示することを特徴とする作業車両の作業設定システムである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記サーバ(101)の管理者が登録した前記作業設定情報が前記サーバ(101)に記憶されている場合には、作業が行われる圃場(H1,H2)と作業を行う作業車両(V1,V2,V3)と認証された作業者(W1,W2,W3)とに紐付けられた作業設定情報が存在していても、前記管理者の作業設定情報を優先的に使用して作業を行うことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の作業設定システムである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、作業が終了すると、作業終了時の作業設定を前記サーバ(101)に送信して、作業設定の登録情報を更新することを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両の作業設定システムである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、作業を行う複数の圃場(H1,H2)に対して、圃場(H1,H2)毎に作業設定情報が紐付けて記憶され、前記作業車両(V1,V2,V3)の位置の計測結果に基づいて判別された圃場(H1,H2)と当該圃場(H1,H2)で作業を行う作業車両(V1,V2,V3)と認証された作業者(W1,W2,W3)に紐付けられた作業設定情報が存在する場合には、該当する作業設定情報を読み出すことで、作業設定を省力化でき、作業車両(V1,V2,V3)は作業設定に応じた作業を行うことができる。また、該当する作業設定情報が存在しない場合に、同一圃場(H1,H2)且つ同一作業車両(V1,V2,V3)且つ他の作業者(W1,W2,W3)に紐付けられた作業設定情報が存在する場合には、当該他の作業者(W1,W2,W3)の作業設定情報を選択することができ、作業設定を省力化できる。さらに、該当する作業設定情報が存在しない場合に、基準設定が存在する場合には、当該基準設定を選択することができ、作業設定を省力化できる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、管理者の設定を優先することができ、管理者が作業設定を管理することができる。
請求項3に記載の発明によれば、作業終了時に作業設定を自動的に更新することができ、更新作業や次回の作業時の作業設定情報の登録作業を省力化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の作業車両の側面図である。
図2】本実施形態の作業車両の座席前方の操作部材の説明図である。
図3】本実施形態の作業車両の座席右方の操作部材の説明図である。
図4】本実施形態の作業車両の操作システムの機能ブロック図である。
図5】本実施形態の端末に表示される作業設定用の画像の一例の説明図であり、図5(A)は認証用の画像の説明図、図5(B)は操作選択用の画像の説明図、図5(C)は作業設定の登録画像の説明図、図5(D)は作業設定の選択画像の説明図、図5(E)は作業時の表示画像の説明図である。
図6】実施形態1のサーバが記憶する作業設定情報の一例の説明図である。
図7】実施形態1の作業設定処理のフローチャートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
(作業車両)
図1は本実施形態の作業車両の側面図である。
図1において、本実施形態の作業車両の作業設定システムSは、作業車両の一例としての農業機械のトラクタ1を有する。トラクタ1は、走行車体の前後部に前輪2,2と後輪3,3とを備え、走行車体前部のエンジンルーム4内に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケース5内の変速装置によって適宜減速して、これらを前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。前記エンジンルーム4はボンネット6で覆う構成である。また、機体後部にロータリ耕耘装置18などの作業機を装着し、PTO軸(図示せず)で作業機を駆動する構成としている。
【0013】
走行車体の上部には、キャビン7が支持されている。キャビン7の上部には位置計測部の一例としての外付けGPS230が配置されている。キャビン7の内部には、トランスミッションケース5の上部位置に運転座席8が配置され、この運転座席8の前方には、ステアリングハンドル10や、前後進レバー11、駐車ブレーキ(図示せず)等が配置されている。また、運転座席8の前方には、速度メータ(図示せず)や、操作用の各種スイッチ(後述)などが配置されている。運転座席8の前方下部には、クラッチペダル12や、アクセルペダル13、左右ブレーキペダル(後述)等の走行操作具が配置されている。
【0014】
図1において、ミッションケース5の後部上方には油圧シリンダケース14が設けられ、この油圧シリンダケース14の左右両側にはリフトアーム15,15が回動自在に枢着されている。リフトアーム15,15とロワーリンク16,16との間にはリフトロッド17,17が介装連結され、ロワーリンク16,16の後部には作業機の一例としてのロータリ耕耘装置18が連結されている。
【0015】
油圧シリンダケース14内に収容されている油圧シリンダ14aに作動油が供給されるとリフトアーム15,15が上昇側に回動され、リフトロッド17、ロワーリンク16等を介して作業機(ロータリ耕耘装置)18が上昇する。反対に油圧シリンダ14a内の作動油が油圧タンクを兼ねるミッションケース5内に排出されると、リフトアーム15,15は下降する。
トラクタ1の走行車体の後方にはロータリ耕耘装置18が連結されており、該ロータリ耕耘装置18は、耕耘部18aと、耕耘部18a上方を覆うメインカバー18bと、メインカバー18bの後部に枢着されたリヤカバー18c等を有する。
【0016】
(操作部材の説明)
図2は本実施形態の作業車両の座席前方の操作部材の説明図である。
図3は本実施形態の作業車両の座席右方の操作部材の説明図である。
図2において、キャビン7の室内には、運転座席8から作業者が操作可能な範囲にステアリングハンドル10や、前後進レバー11、メインキー201、耕耘の深さを調整するための耕深調整ダイヤル202、遠隔操作モードと手動操作モードとを切り換える遠隔操作モード切換スイッチ203(切換部材)が配置されている。また、ステアリングハンドル10の下方には、クラッチペダル12やアクセルペダル13、左ブレーキペダルP1、右ブレーキペダルP2等の操作部材が配置されている。
【0017】
図3において、キャビン7の右側の前部には、副変速レバー210が配置されている。副変速レバー210は、前方の低速位置と後方の中速位置との間で切り替え可能に構成されている。副変速レバー210の上部後面には、主変速を増減させるための主変速操作部材211が設けられている。本実施形態の主変速操作部材211は、主変速を増速させるための主変速増速スイッチ211aと、主変速を減速させるための主変速減速スイッチ211bとを有する。また、副変速レバー210の前面には、前後進クラッチの入切を行うためのクラッチボタン212が設置されている。副変速レバー210の後側には、予め設定された定回転Aと定回転Bとで作業を行うための定回転スイッチ(アクセルメモリスイッチ)213が配置されている。定回転スイッチ213の後側には、PTO軸への駆動伝達/切断を行うPTOクラッチ(図示せず)の入切を行うためのPTOスイッチ214が配置されている。
【0018】
PTOスイッチ214の後側には、操作パネル216が設置されている。操作パネル216には、定回転スイッチ213の入力された場合のエンジンEの回転数の設定値(定回転A,B)を増減させるための回転数増減スイッチ(アクセルメモリ増減スイッチ)216aが設置されている。
前記操作パネル216には、ブレーキの圧力を調整するためのブレーキ調整ダイヤル216bも設置されている。なお、ブレーキ圧はブレーキが作動する場合の油圧であり、ブレーキ圧が高いと急旋回し易いが圃場が荒れやすく、ブレーキ圧が低いと急旋回しにくいが圃場が荒れにくい。
前記操作パネル216には、トラクタ1の旋回時に自動的に旋回の内輪にブレーキをかけるか否かを設定するオートブレーキスイッチ216cが設置されている。
【0019】
前記操作パネル216には、トラクタ1の旋回に連動してロータリ耕耘装置18を自動的に上昇させるか否かを設定するオートリフトスイッチ216dが設置されている。
前記操作パネル216には、トラクタ1が後進する際にロータリ耕耘装置18を自動的に上昇させるか否かを設定するバックアップスイッチ216eが設置されている。
前記操作パネル216には、変速時に油圧クラッチのクラッチ圧の上昇速度を調整することで変速の感度を調整する変速感度調整スイッチ216fと、現在の変速感度の設定(敏感、標準、鈍感)を表示する表示ランプ216gとが設置されている。
【0020】
副変速レバー210の左側(キャビン7の内側)には、作業機昇降レバー220が配置されている。本実施形態の作業機昇降レバー220は、作業機18を8段階で高さ調整可能に構成されている。作業機昇降レバー220の内側には、エンジンEの回転数を調整するためのアクセルレバー221が配置されている。作業機昇降レバー220の後側には、作業機昇降スイッチ222が配置されている。作業機昇降スイッチ222は、作業機18をワンタッチで上昇または下降させることが可能なように入力可能に構成されている。作業機昇降スイッチ222の後側には、主変速を増減させるための主変速増減スイッチ223が配置されている。
【0021】
(サーバ、端末の説明)
図1において、実施形態1の作業車両の作業設定システムSは、情報処理装置の一例としてのサーバ101を有する。サーバ101は、通信回線の一例としてのインターネットワークNを介して、トラクタ1と情報の送受信が可能に構成されている。なお、実施形態1のトラクタ1は、無線通信でネットワークNを介してサーバ101と通信可能に構成されている。
また、ネットワークNには、作業車両の作業設定システムSの管理者が操作する管理者端末102も接続されている。管理者端末102も、サーバ101やトラクタ1と情報の送受信が可能に構成されている。
さらに、実施形態1の作業車両の作業設定システムSは、作業者が使用する端末の一例としてのタブレット端末TABを有する。タブレット端末TABは、トラクタ1との間で、無線通信で情報の送受信が可能に構成されている。
【0022】
(機能ブロック図の説明)
図4は本実施形態の作業車両の操作システムの機能ブロック図である。
図4において、実施形態1の作業車両の作業設定システムSは、トラクタの制御部CA〜CCと、制御部の一例であって作業設定手段の一例としてのとしてのメータパネルPa1、端末の一例であって作業設定手段の一例としてのタブレット端末の端末制御部CD、サーバ101や管理者端末102の制御部(図示せず)等を有する。各制御部CA〜CDは、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェース(I/O)、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM(リードオンリーメモリ)、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU(中央演算処理装置)、ならびに発振器等を有する小型情報処理装置、いわゆる、マイクロコンピュータにより構成されており、前記ROMやRAM、不揮発性メモリ等の記憶部材に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0023】
(タブレット端末の制御部)
図4において、タブレット端末TABの端末制御部CDは、入力部の一例としてのタッチパネルTAB1や、電源ボタンや音量変更ボタン等の入力ボタンTAB2、通信部の一例としての通信モジュールTAB3、位置計測部の一例としてのGPSモジュールTAB4等の信号出力要素からの出力信号が入力される。したがって、端末制御部CDには、通信モジュールTAB3を介してトラクタ1の制御部CA〜CCやサーバ101から情報や信号の入力が可能である。
【0024】
端末制御部CDは、表示器の一例としてのタッチパネルTAB1や、スピーカ(図示せず)、通信モジュールTAB3、その他の図示しない制御要素に接続されている。端末制御部CDは、各制御要素へ、制御信号を出力している。よって、通信モジュールTAB3を介してトラクタ1の制御部CA〜CCやサーバ101に情報や信号を出力可能である。
【0025】
端末制御部CDは、前記タッチパネルTAB1からの入力信号に応じた処理を実行して、前記各制御要素CA〜CCに制御信号を出力する機能を有している。本実施形態の端末制御部CDは、基本ソフトウェアの一例としてのオペレーティングシステムOSや、アプリケーションソフトウェアの一例であって、処理手段の一例としての処理ソフトウェアAP1、その他の、図示しないアプリケーションソフトウェア(インターネットブラウザや文書作成ソフトウェア等)を有する。
【0026】
図5は本実施形態の端末に表示される作業設定用の画像の一例の説明図であり、図5(A)は認証用の画像の説明図、図5(B)は操作選択用の画像の説明図、図5(C)は作業設定の登録画像の説明図、図5(D)は作業設定の選択画像の説明図、図5(E)は作業時の表示画像の説明図である。
図5において、本実施形態の処理ソフトウェアAP1は、タッチパネルTAB1に、トラクタ1を制御するための入力画像310,320,330,340を表示する。なお、各画像310〜340は、いずれか1つがタッチパネルTAB1に表示され、タッチパネルTAB1に対して、画像310〜340を切り換える操作(タッチ入力、スクロール入力、フリック入力等)がされると、次の画像310〜340が表示される。
【0027】
図5(A)において、認証画像310は、作業者の識別情報の一例としてのIDを入力するID入力部311と、暗証情報の一例としてのパスワードを入力するパスワード入力部312と、認証を実行するための認証実行入力部313とを有する。なお、実施形態1では、IDとパスワードを使用してシステムSを使用するための認証をする構成を例示したが、これに限定されない。例えば、指紋認証や静脈認証、虹彩認証、顔認証、音声認証等、任意の認証方法を利用することが可能である。各入力部311,312への認証情報の入力がされて、認証実行入力部313への入力がされると、サーバ101に入力された情報が送信され、サーバ101での認証結果を受信する。
【0028】
図5(B)において、サーバ101で認証がされると、操作選択用の画像320がタッチパネルTAB1に表示される。操作選択用の画像320は、トラクタ1での作業を開始するための作業開始入力部321と、作業設定を登録するための作業設定登録部322とを有する。作業開始入力部321への入力がされると、作業者の識別情報と、トラクタ1の識別情報と、GPSの情報とを、サーバ101に送信される。また、作業設定登録部322への入力がされると、図5(C)に示す作業設定登録画像330が表示される。
【0029】
図5(C)において、作業設定を登録するための画像330は、変速感度の入力部331と、耕深深さの入力部332と、自動ブレーキ強さの入力部333と、オートリフトの入切の入力部334と、オートブレーキの入切の入力部335と、バックアップの入切の入力部336と、エンジン回転数の入力部337と、登録を実行するための入力部338と、を有する。各入力部331〜337への入力に応じて、変速感度や耕深深さ等の作業設定を変更可能である。そして、登録用の入力部338への入力がされると、各入力部331〜337へ入力された情報と、作業者の識別情報、トラクタ1の識別情報、GPS情報とがサーバ101に送信され、作業設定情報として登録される。
【0030】
図5(D)において、作業開始入力部321への入力がされた場合に、サーバ101に、システムSを利用中の作業者(一例として「ユーザB」)と、使用中のトラクタ1(一例として「トラクタC」)と、GPSから特定される圃場(一例として「圃場H1」)とに紐付けられて登録された作業設定情報が存在せず、作業者の基準となる作業設定情報と、他の作業者(一例としてユーザA)が使用中のトラクタ1(トラクタC)で同一の圃場(圃場H1)で作業をする際の作業設定が登録されている場合には、図5(D)に示す作業設定の選択画像340が表示される。作業設定の選択画像340は、基準設定を選択するための入力部341と、他の作業者の作業設定を選択するための入力部342とを有する。各入力部341,342への入力がされると、入力内容をサーバ101に送信し、サーバ101から選択に応じた作業設定の情報を受信する。
【0031】
図5(E)において、作業時の表示画像350は、サーバ101から受信した変速感度等の作業設定を表示する。なお、どの作業設定が選択されているかの表示は、タブレット端末TABに表示するだけでなく、トラクタ1のメータパネルPa1等に表示する構成とすることも可能である。作業時の表示画像350には、作業が終了した場合に入力するための作業終了入力部351が設けられている。なお、トラクタ1は、サーバ101から受信した作業設定に応じて制御される。なお、作業時の表示画像350に対して、変速感度等を変更する入力がされた場合は、タブレット端末TABからトラクタ1の制御部CA〜CCに制御信号が送信されて、トラクタ1の制御に反映される。
【0032】
また、本実施形態の処理ソフトウェアAP1では、トラクタ1が作業を終了すると、作業時の表示画像350で最終的に表示されている作業設定の情報を、作業者の識別情報やトラクタ1の識別情報、圃場のGPS情報等とともにサーバ101に送信する。したがって、サーバ101では、作業設定の情報が更新される。なお、本実施形態では、サーバ101に登録されている作業設定が更新される構成を例示したが、これに限定されない。例えば、管理者が、特定の作業者、車両、圃場の作業設定は更新不可に設定した場合には、作業設定が更新されないように構成することも可能である。
なお、本実施形態の処理ソフトウェアAP1では、無線通信の圏外等で、サーバ101と通信が出来ず、認証ができない場合や作業設定情報の受信が出来ない場合、作業設定情報の更新が出来ない場合等には、その旨の表示(図示せず)がされる。
【0033】
(トラクタの制御部)
本実施形態のトラクタ1の制御部CA〜CC,Pa1は、一例として、いわゆる、ECU:Electronic Control Unitで構成されている。各制御部CA〜CCは、通信回線としてのCAN:Controller Area Networkで接続されており、互いにアクセス可能に構成されている。また、CANには、位置計測部の一例としての外付けGPS230からのGPSの測位情報を受信したりタブレット端末TABと通信する通信ユニット(通信部)U1や、サーバ101等と通信する通信ユニットU2、トラクタ1のメータパネルPa1、操作パネル216が接続されており、各制御部CA〜CCと通信情報や操作情報などが送受信される。
【0034】
(メータパネルPa1の説明)
メータパネルPa1には、遠隔操作モード切換スイッチ203、その他の図示しない信号出力要素からの出力信号が入力される。
メータパネルPa1は、遠隔操作モード切換スイッチ203の入力が、手動操作モードの場合には、メータパネルPa1の表示部に手動操作モードであることを表示すると共に、各制御部CA〜CCに対して、ステアリングハンドル10やアクセルペダル13、主変速増減スイッチ211,223等の操作部材の入力に応じて、トラクタ1を制御するように制御信号を出力する。また、メータパネルPa1は、遠隔操作モード切換スイッチ203の入力が、遠隔操作モードの場合には、メータパネルPa1の表示部に遠隔操作モードであることを表示すると共に、各制御部CA〜CCに対して、タブレット端末TABからの入力情報(作業設定)に応じて、トラクタ1を制御するように制御信号を出力する。
【0035】
なお、本実施形態では、遠隔操作モードと手動操作モードの切り換えを、遠隔操作モード切換スイッチ203で行う構成を例示したが、これに限定されない。例えば、タブレット端末TABへの入力で遠隔操作モードと手動操作モードの切り換えが可能な構成とすることも可能である。
他にも、サーバ101側の処理(例えば、特定の時間になった場合とか、圃場の特定の領域にトラクタ1が進入した場合等)で、遠隔操作モードと手動操作モードの切り換えが可能な構成とすることも可能である。また、遠隔操作モードと手動操作モードの切り換えは、遠隔操作モード切換スイッチ203への入力と、タブレット端末TABへの入力と、サーバ101の処理とを組み合わせることも可能である。
【0036】
(走行制御部CAの説明)
(走行制御部CAに接続された信号出力要素)
走行制御部CAは、副変速レバー操作位置センサSN1、前後進レバー操作位置センサSN2、主変速増減スイッチ211,223、クラッチボタン212、クラッチペダル踏込検知スイッチSN3、前後進クラッチ圧力センサSN4、1〜4速クラッチ圧力センサSN5a〜SN5d、高速・低速クラッチ圧力センサSN6、アクセルセンサSN7、耕深調整ダイヤル202、定回転スイッチ213等の信号出力要素からの出力信号が入力されている。
【0037】
副変速レバー操作位置センサSN1は、副変速レバー210の位置を検出する。前後進レバー操作位置センサSN2は、前後進レバー11の位置を検出する。クラッチペダル踏込検知スイッチSN3は、クラッチペダル12が踏み込まれた場合にスイッチが押され、クラッチペダル12が踏み込まれたか否かを検知する。前後進クラッチ圧力センサSN4は、前後進クラッチ(正逆クラッチ)を作動させる圧油の圧力(クラッチ圧力)を検知する。1〜4速クラッチ圧力センサSN5a〜SN5dは、主変速部(多段変速装置)における1速〜4速を制御するクラッチを作動させる圧油の圧力(クラッチ圧力)を検知する。高速・低速クラッチ圧力センサSN6は、高低クラッチを作動させる圧油の圧力(クラッチ圧力)を検知する。アクセルセンサSN7は、アクセルペダル13やアクセルレバー221の位置を検出する。
【0038】
(走行制御部CAに接続された被制御要素)
走行制御部CAは、前進切換ソレノイドSL1、前後進昇圧ソレノイドSL2、後進切換ソレノイドSL3、クラッチペダルソレノイドSL4、1速ソレノイドSL5、1,3速昇圧ソレノイドSL6、3速ソレノイドSL7、2速ソレノイドSL8、2,4速昇圧ソレノイドSL9、4速ソレノイドSL10、高速昇圧ソレノイドSL11、低速昇圧ソレノイドSL12、その他の図示しない制御要素に接続されている。
【0039】
前進切換ソレノイドSL1は、前後進レバー操作位置センサSN2の検出結果が前進の場合に、前後進クラッチ(正逆クラッチ)の正転クラッチギヤが繋がるように、油圧の制御弁を駆動する。前後進昇圧ソレノイドSL2は、前後進クラッチに供給される油圧の比例制御弁を制御する。本実施形態の前後進昇圧ソレノイドSL2は、前後進クラッチ圧力センサSN4の検出結果に基づいて、前後進クラッチが前進または後進に接続される場合に、クラッチ圧の上昇率を制御する。後進切換ソレノイドSL3は、前後進レバー操作位置センサSN2の検出結果が後進の場合に、前後進クラッチ(正逆クラッチ)の逆転クラッチギヤが繋がるように油圧の制御弁を駆動する。なお、各切換ソレノイドSL1,SL3は、クラッチボタン212の入力がされた場合やクラッチペダル踏込検知スイッチSN3が踏込を検知した場合には、各クラッチギヤが繋がらないように、制御弁を切り換える。クラッチペダルソレノイドSL4は、クラッチボタン212の入力に応じて、クラッチを切る場合に、クラッチペダル12に接触して、クラッチペダル12を踏み込んだ位置に移動させる。
【0040】
1速ソレノイドSL5は、主変速増減スイッチ211,223の入力により、1速にする入力がされた場合に、1速用のギヤが繋がるように、油圧の制御弁を駆動する。3速ソレノイドSL7は、主変速増減スイッチ211,223の入力により、3速にする入力がされた場合に、3速用のギヤが繋がるように、油圧の制御弁を駆動する。1,3速昇圧ソレノイドSL6は、1速クラッチ圧力センサSN5aや3速クラッチ圧力センサSN5cの検出結果に基づいて、1,3速クラッチに供給される油圧の比例制御弁を制御して、クラッチ圧の上昇率を制御する。2速ソレノイドSL8は、主変速増減スイッチ211,223の入力により、2速にする入力がされた場合に、2速用のギヤが繋がるように、油圧の制御弁を駆動する。4速ソレノイドSL10は、主変速増減スイッチ211,223の入力により、4速にする入力がされた場合に、4速用のギヤが繋がるように、油圧の制御弁を駆動する。2,4速昇圧ソレノイドSL9は、2速クラッチ圧力センサSN5bや4速クラッチ圧力センサSN5dの検出結果に基づいて、2,4速クラッチに供給される油圧の比例制御弁を制御して、クラッチ圧の上昇率を制御する。
【0041】
高速昇圧ソレノイドSL11および低速昇圧ソレノイドSL12は、副変速レバー操作位置センサSN1に応じて、高低クラッチが繋がるように、油圧の制御弁を駆動する。なお、各昇圧ソレノイドSL11,SL12は、高速・低速クラッチ圧力センサSN6の検知結果に基づいて、クラッチ圧(油圧)を上昇させる。
【0042】
(エンジン制御部CB)
エンジン制御部CBは、図示しないエンジン回転センサ等の信号出力要素からの出力信号が入力され、燃料ポンプや、その他の図示しない制御要素に接続されている。
エンジン制御部CBは、前記信号出力要素からの出力信号等に応じた処理を実行して、前記制御要素等に制御信号を出力する機能を有している。エンジン制御部CBは、アクセルレバー221やアクセルペダル13、定回転スイッチ213の入力に応じて、エンジンEの回転数を制御する。なお、このような制御は従来公知であり、例えば、特開2013−24038号公報に記載の構成を適用可能であるため、詳細な説明は省略する。エンジン制御部CBは、ステアリングハンドル10が切られて旋回中はエンジンの回転数を低下させ、減速した状態で旋回させ、ステアリングハンドル10が直進に戻ると、元の回転数に戻すように制御することも可能である。このように、作業機が上昇して負荷が軽くなる旋回時にエンジン回転数を落とすことで、燃料の無駄な消費を抑えることができる。また、旋回時に速度を下げることで、旋回性能が向上すると共に、車輪が土を抉りにくくなって圃場を傷めにくくなる。
【0043】
(作業機昇降制御部CC)
作業機昇降制御部CCは、作業機昇降センサSN31、耕深センサSN32、リフトアームセンサSN33、PTOスイッチ214、作業機用コネクタCON等の信号出力要素からの出力信号が入力されている。
【0044】
ここで、本実施形態において、作業機用コネクタCONは、一例として、通信規格AG−PORTに対応して構成されている。作業機用コネクタCONには、ロータリ耕耘装置18などの作業機のコネクタが電気的に接続され、作業機の制御部に制御信号を送信したり、作業機を識別するID情報などを作業機から読み取る。
【0045】
なお、作業機昇降センサSN31は、リフトアーム15,15を昇降操作するポジションレバー(作業機昇降レバー220)の操作位置を検出する。耕深センサSN32は、作業機18に支持されており、作業機18の耕耘の深さを検出する。リフトアームセンサSN33は、リフトアーム15の根元近傍に支持されており、リフトアーム15の高さを検出する。
【0046】
作業機昇降制御部CCは、作業機上昇ソレノイドSL21や、作業機下降ソレノイドSL22、PTOクラッチソレノイドSL23、その他の図示しない制御要素に接続されている。
作業機昇降制御部CCは、前記信号出力要素や各制御部などからの出力信号に応じた処理を実行して、前記制御要素や各制御部等に制御信号を出力する機能を有している。
【0047】
本実施形態の作業機昇降制御部CCは、各センサSN31〜SN33の検出結果や、耕深調整ダイヤル202の入力に応じて、作業機上昇ソレノイドSL21と作業機下降ソレノイドSL22の通電、非通電を制御する。これにより、油圧シリンダ14aへの圧油の供給、排出を行ない、リフトアーム15,15の昇降を制御する。
PTOクラッチソレノイドSL23は、PTOスイッチ214の入切の入力に応じて、PTOクラッチへ圧油を供給する制御弁の制御を行う。
【0048】
なお、本実施形態の各制御部CA〜CCは、メータパネルPa1からの制御信号に基づいて、手動操作モードか遠隔操作モードかを判別する。そして、各制御部CA〜CCは、手動操作モードの場合は、主変速増減スイッチ211,223や副変速レバー210、前後進レバー11、クラッチボタン212、クラッチペダル12、アクセルペダル13、PTOスイッチ214、アクセルレバー221、耕深調整ダイヤル202、定回転スイッチ213、ステアリングハンドル10、作業機昇降レバー220等の操作部材からの入力に応じて、各クラッチやステアリングシリンダ、油圧シリンダ14a、エンジンE等の制御対象機器の制御を行う。
【0049】
(サーバの制御部)
図6は実施形態1のサーバが記憶する作業設定情報の一例の説明図である。
サーバ101は、トラクタ1やタブレット端末TAB、管理者端末102からの情報を受信し、処理し、処理結果を送信する。本実施形態のサーバ101は、作業設定情報を記憶する。図6において、本実施形態の作業設定情報では、作業者毎に、作業設定が紐付けられて記憶されている。具体的には、作業者W1,W2,W3のそれぞれに対して、作業設定が登録されている。さらに、本実施形態では、作業者W1〜W3毎に、複数台のトラクタV1,V2,V3のそれぞれに対して、作業設定が紐付けられて記憶されている。
【0050】
また、本実施形態では、作業者W1〜W3およびトラクタV1〜V3毎に、圃場H1,H2のそれぞれに対して、作業設定が紐付けられて記憶されている。なお、本実施形態では、圃場H1,H2については、圃場H1,H2の領域のGPS情報がサーバ101に登録されており、タブレット端末TABから送信されたGPSの位置情報が領域に含まれている(または所定の距離(例えば50m)以内に近接している)圃場H1,H2を、作業対象の圃場として判別する。
なお、本実施形態では、タブレット端末TABのGPSの位置情報を使用する構成を例示したが、これに限定されず、トラクタ1に搭載された外付けGPS230の位置情報を使用したり、両方の位置情報を使用する構成とすることも可能である。
【0051】
よって、本実施形態では、図6に示すように、作業者W1がトラクタV1を使用して圃場H1で作業を行う場合の作業設定AA1が記憶され、作業者W1がトラクタV2を使用して圃場H1で作業を行う場合の作業設定AB1が記憶されている。なお、各作業設定AA1,AB1,…には、それぞれ、変速感度や耕深深さ等の各設定の情報が記憶されている。
また、本実施形態では、各作業者W1〜W3に、基準設定A,B,Cも記憶されている。各トラクタV1〜V3や圃場H1,H2に対して個別の作業設定の登録がない場合でも、作業者W1〜W3に応じた変速感度等の基準となる作業設定が記憶されている。図6に示す例では、全ての作業者W1〜W3に対して基準設定が登録されている場合を例示しているが、これに限定されず、一部の作業者に対してのみ基準設定が登録されている場合や、全ての作業者に対して基準設定が設定されない構成とすることも可能である。
【0052】
なお、本実施形態では、各作業設定や基準設定の登録は、タブレット端末TABの作業設定を登録するための画像330で入力された情報や作業終了時の送信情報に基づいて、登録、更新が行われる。
さらに、本実施形態では、管理者端末102で管理者が設定した作業設定S0も記憶されている。なお、管理者の作業設定S0は、図6では、一例として、作業者W3がトラクタV3を使用して圃場H2で作業を行う場合に対して設定がされているが、これに限定されない。特定の圃場に対してのみ適用するようにしたり、特定のトラクタに対して適用するようにしたり、特定の作業者に対して適用したり、全ての状況に対して管理者設定を適用したりすることも可能である。
【0053】
したがって、サーバ101に対して、タブレット端末TABの作業開始入力部321への入力がされた場合、タブレット端末TABから送信された作業者の識別情報、トラクタ1の識別情報およびGPS情報から、対応する作業者W1〜W3、トラクタV1〜V3、圃場H1,H2の作業設定の情報を検索する。そして、対応する作業設定の情報が登録されている場合は、タブレット端末TABに該当する作業設定の情報を送信する。図6において、作業設定BC1,CB1,CC1の欄に示すように、作業設定が登録されていない場合、基準設定B,Cが登録されていれば、基準設定B,Cが存在することをタブレット端末TABに送信する。
【0054】
このとき、同一トラクタ且つ同一圃場で他の作業者の作業設定が登録されている場合、対応する作業設定AC1,AB1,BB1が存在することもタブレット端末に送信する。受信したタブレット端末TABでは、前述のように図5(D)の作業設定の選択画像340が表示され、基準設定または他人の作業設定が選択されると、選択に応じた作業設定の情報をサーバ101はタブレット端末TABに送信する。
【0055】
なお、本実施形態では、タブレット端末TABにおいて、基準設定や他人の作業設定の中から作業者が選択する構成を例示したが、これに限定されない。各作業者が、自分の作業設定が登録されていない場合には、基準設定や他人の作業設定の中からどの作業設定を使用するかを予めサーバ101に登録しておくことで、タブレット端末TABで選択する入力を省略できるように構成することも可能である。このとき、サーバ101に予め登録した作業者に関しては、サーバ101で自動的に作業設定の選択を行い、サーバ101に予め登録していない作業者に関しては、タブレット端末TABで選択を行うように構成することが可能である。
【0056】
なお、基準設定も他の作業者の作業設定も登録されていない場合には、利用可能な作業設定がない旨のエラー情報をタブレット端末TABに送信する。
また、対象の作業者の作業設定が登録されておらず、且つ、基準設定が存在したり、他の作業者の作業設定が複数存在する場合に、利用者がタブレット端末TABで選択する構成としたが、これに限定されない。例えば、管理者が、基準設定や他の作業者の作業設定の中からどの作業設定を実行するかを予め登録しておき、管理者が設定した作業設定で作業を実行する構成とすることも可能である。したがって、この場合は、管理者の設定が優先され、利用者の作業設定の選択が行われないように構成することも可能である。また、管理者を予め選択、登録しておく構成は、利用者毎や車両毎、圃場毎に個別に行うことも可能であるし、特定の利用者の作業設定全てとか、特定の圃場の作業設定全てとか、全体を一括してとか、のように行うことも可能である。そして、管理者が予め選択、登録されている作業者、車両、圃場の場合は、自動的に管理者が選択した作業設定が選択され、管理者が予め選択、登録されていない作業者、車両、圃場の場合は、利用者がタブレット端末TABで選択するように構成することも可能である。
【0057】
さらに、本実施の形態では作業者自身が未登録の場合は認証自体がされない。なお、作業者自身が未登録の場合は、ゲスト扱いとして、管理者の作業設定で作業を実行する構成とすることも可能である。
また、本実施形態では、トラクタ自体が未登録の場合は、トラクタが未登録である旨のエラー情報をタブレット端末TABに送信する。なお、トラクタが未登録の場合でも、基準設定が登録されていれば、基準設定を送信して、作業を実行する構成とすることも可能である。そして、作業終了後は、作業設定を更新登録する際に、未登録のトラクタをサーバ101に新規登録するように構成することも可能である。同様に、圃場についても、未登録である場合に、作業設定の登録時に、未登録の圃場をサーバ101に新規登録するように構成することも可能である。
【0058】
なお、作業設定は作業者W1〜W3,トラクタV1〜V3、圃場H1,H2に対して設定する構成に限定されず、作業内容に応じて細分化して記憶することも可能である。例えば、作業者W1がトラクタV1を使用して圃場H1で行う作業内容として、「耕耘」、「代かき」、「プラウ」等に応じて、それぞれ作業設定を登録できるように構成することも可能である。すなわち、トラクタ1に装着する作業機の違いや、作業が行われる環境(圃場に水を張った状態で行うか否か等)に応じて、エンジン回転数や変速感度、耕深深さ等の作業設定をそれぞれ登録し、作業時に選択して作業を行うようにすることも可能である。
【0059】
(実施形態1の流れ図の説明)
次に、実施形態1の作業車両の作業設定システムSにおける制御の流れを流れ図、いわゆるフローチャートを使用して説明する。
(作業設定処理のフローチャートの説明)
図7は実施形態1の作業設定処理のフローチャートの説明図である。
図7のフローチャートの各ステップSTの処理は、タブレット端末TABの端末制御部CDに記憶されたプログラムに従って行われる。また、この処理はタブレット端末TABの他の各種処理と並行して実行される。
図7に示すフローチャートはタブレット端末TABの処理ソフトウェアAP1の起動により開始される。
【0060】
図7のST1において、タブレット端末TABにおいて、作業者(オペレータ)の認証処理(画像310の表示し、各入力部311,312への入力が行われ、認証実行入力部313の入力がされたか否かの判別)を行う。そして、ST2に進む。
ST2において、サーバ101との通信が可能か否かの判別を行う。すなわち、通信可能エリアの圏外であったりして、通信ができない状態か否かを判別する。イエス(Y)の場合はST4にすすみ、ノー(N)の場合はST3に進む。
ST3において、サーバと通信できない旨のエラー表示をタッチパネルTAB1に行って、ST2に戻って、通信が可能になるまで待機する。
【0061】
ST4において、操作選択用の画像320を表示し、ST5に進む。
ST5において、作業開始入力部321への入力がされたか否かを判別する。ノー(N)の場合はST6にすすみ、イエス(Y)の場合はST8に進む。
ST6において、作業設定登録部322への入力がされたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST7に進み、ノー(N)の場合はST5に戻る。
ST7において、作業設定処理、すなわち、作業設定を登録するための画像330をタッチパネルTAB1に表示し、各入力部331〜337への入力がされ、登録用の入力部338への入力がされた場合に、サーバ101に作業設定の情報を送信して登録する処理を実行して、ST1に戻る。
【0062】
ST8において、タブレット端末TABからサーバ101に、作業車両(トラクタ1)の識別情報と、オペレータの識別情報(作業者のID)と、GPS情報とを送信する。そして、ST9に進む。
ST9において、サーバ101からデータを受信し、ST10に進む。
ST10において、サーバ101にトラクタ1が登録されているか否かを判別する。ノー(N)の場合はST11に進み、イエス(Y)の場合はST12に進む。
ST11において、この車両は未登録である旨のエラー表示をタッチパネルTAB1に行う。そして、ST1に戻る。
【0063】
ST12において、管理者が登録した作業設定があるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST13に進み、ノー(N)の場合はST14に進む。
ST13において、サーバ101から管理者の作業設定を受信(ダウンロード)する。そして、ST16に進む。
ST14において、サーバ101に対象車両(使用中のトラクタ1)、対象オペレータ(利用中の作業者)、対象圃場の作業設定の情報が登録されているか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST15に進み、ノー(N)の場合はST19に進む。
ST15において、サーバ101から作業設定の情報を受信(ダウンロード)する。そして、ST16に進む。
【0064】
ST16において、受信した作業設定に基づいて、走行制御部CA〜作業機昇降制御部CCを制御して、作業を行う。そして、ST17に進む。
ST17において、タブレット端末TABにおいて、作業終了の入力がされたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST18に進み、ノー(N)の場合はST17を繰り返す。
ST18において、使用された作業設定をサーバ101に送信して、サーバ101に登録されている作業設定を更新する。そして、ST1に戻る。
【0065】
ST19において、対象オペレータの「基準設定」が登録されているか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST20に進み、ノー(N)の場合はST25に進む。
ST20において、対象車両且つ対象圃場で、他のオペレータの作業設定があるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST21に進み、ノー(N)の場合はST23に進む。
ST21において、作業設定の選択画像340を表示する。そして、ST22に進む。
ST22において、作業設定の選択画像340で基準設定が選択されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST23に進み、ノー(N)の場合はST24に進む。
【0066】
ST23において、サーバ101から、対象オペレータ(利用中の作業者)の基準設定を受信(ダウンロード)して、ST16に進む。
ST24において、サーバ101から、選択された他のオペレータの作業設定を受信(ダウンロード)して、ST16に進む。
ST25において、対象車両且つ対象圃場で、他のオペレータの作業設定があるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST26に進み、ノー(N)の場合はST28に進む。
【0067】
ST26において、作業設定の選択画像340(他の作業者の作業設定を選択するための入力部342のみ)を表示する。そして、ST27に進む。
ST27において、作業設定の選択画像340で他のオペレータが選択されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST24に進み、ノー(N)の場合はST27を繰り返す(他のオペレータが選択されない場合は、入力ボタンTAB2の操作で終了される)。
ST28において、利用可能な作業設定が存在しない旨のエラー表示をタッチパネルTAB1に行う。そして、ST1に戻る。
【0068】
前記構成を備えた本実施形態の作業車両の作業設定システムSでは、サーバ101には、複数の作業者W1〜W3のそれぞれに対して、複数のトラクタV1〜V3や複数の圃場に応じた作業設定の情報が記憶されている。そして、ある作業者が、特定のトラクタ1を使用して、複数ある圃場(H1,H2)のいずれかで作業を行う場合には、該当する作業設定をサーバ101から受信し、作業設定に応じてトラクタ1が制御される。したがって、作業のたびに作業設定を行う必要が無く、作業設定が省力化される。
ここで、大規模農家のように複数台のトラクタを所有し、複数の作業者で複数の農場で作業を行う状況では、同じ作業者でもトラクタが異なる場合、トラクタ1の個体差(ハンドルやアクセル、ブレーキの堅さ等)で同一の作業設定では、作業が円滑に行えない場合があった。そして、トラクタに作業設定が登録されている従来技術では、トラクタ毎に作業設定を行う必要があった。これに対して、本実施形態では、サーバ101から作業設定情報を受信することで、各トラクタにおける作業設定の入力を省力化することができる。
【0069】
また、圃場が異なる場合、圃場の土の堅さ、深さ等の差があり、同一の作業設定では、作業が円滑に行えない場合があった。そして、トラクタに作業設定が登録されている従来技術では、圃場毎に作業設定を入力する必要があった。これに対して、本実施形態では、サーバ101から作業設定情報を受信することで、過去に行った作業で実行された作業設定が自動的に反映される。したがって、その圃場に応じた適切な作業設定の入力を省力化することができる。
さらに、本実施形態では、基準設定が登録されており、作業設定が登録されていない状況では、基準設定が使用される。すなわち、作業者が、ある圃場において、今まで使用していたトラクタ1とは別のトラクタ1を初めて使用する場合や、初めての圃場で作業を行う場合でも、作業設定を一から入力する場合に比べて、作業者の好みや癖に応じて設定された基準設定を使用することで、作業設定の省力化ができる。
【0070】
また、本実施形態では、対象の作業者の作業設定情報が登録されていない場合でも、他の作業者の作業設定を使用して作業を行うことも可能である。したがって、初めての圃場や初めて搭乗するトラクタ1でも、以前に作業を行ったことのある他の作業者の作業設定を利用して、適切な設定で作業をおこなうことが可能であると共に、作業設定の省力化も可能である。
【0071】
さらに、本実施形態では、作業終了時に作業設定がサーバ101に送信され、登録情報が更新される。したがって、作業を開始後に、変速感度等が調整、変更された場合は、変更後の作業設定でサーバ101に登録される。よって、より適切な作業設定に更新されていくと共に、次回から登録された作業設定で作業を実行することも出来る。また、初めてのトラクタ1や初めての圃場で作業した場合でも、次回からは作業設定が省力化される。
また、本実施形態では、管理者の作業設定がされている場合には、管理者の作業設定が優先される。営農団体のような大規模農家では、管理者の品質管理やトラクタ1や圃場の管理上、各作業者の好みよりも、管理者の管理を優先したい場合がある。したがって、本実施形態では、管理者の設定を優先したい場合には、管理者の作業設定で優先して作業を実行することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、基準設定が作業者に紐付けられて記憶されているが、これに限定されない。例えば、作業者毎ではなく圃場毎に基準設定を設定したり、トラクタ毎に基準設定を設定する構成とすることも可能である。圃場毎に基準設定が設定されている場合は、対象の作業者、対象のトラクタ、対象の圃場の作業設定が登録されていない場合、同一圃場の基準設定を使用したり、同一圃場の他の作業者の作業設定や同一圃場の他のトラクタの作業設定の中から選択するように構成することが可能である。
【0073】
また、本発明は、トラクタ1が複数台存在する場合に好適に適用可能であるが、トラクタ1の数が1台のみの場合にも適用可能である。トラクタ1が1台のみの場合でも、作業設定をサーバ101から受信することで入力の省力化が可能である。特に、トラクタ1を買い替えたり、故障で交換したりする場合には、古いトラクタ1での作業設定を、新しいトラクタ1に引き継ぐ際に、作業設定の入力を省力化することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,V1,V2,V3…作業車両、
101…サーバ、
A,B,C…基準設定、
AB1,BB1,AC1…他の作業者の作業設定、
H1,H2…圃場、
S…作業車両の作業設定システム、
S0…管理者の作業設定、
TAB,Pa1…作業設定手段、
TAB4,230…位置計測部、
W1,W2,W3…作業者。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7