(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
差動信号を伝送する一対の内導体を含むケーブル部における前記一対の内導体に接続される導電性の一対のコンタクト部材と、前記一対のコンタクト部材を収容する絶縁性の絶縁部材と、前記絶縁部材を覆い、前記ケーブル部の外導体に接続される導電性のシェル部とを含む一以上の端子と、
前記一対のコンタクト部材および前記シェル部のそれぞれに外部の導体が接触可能な状態にて、前記一以上の端子を保持する絶縁性のハウジングと、を備え、
前記コンタクト部材は、
前記内導体を互いの間で挟持する第1の接続部および第2の接続部と、
相手コネクタのシグナルコンタクト部材に接続される第3の接続部と、を備え、
前記第1の接続部、前記第2の接続部、および前記第3の接続部が一体的に形成されており、
前記内導体の延伸方向と直交する方向において前記第3の接続部が前記第2の接続部と対向する位置にある
ことを特徴とするコネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願に係るコネクタの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
<1.コネクタの概要>
図1および
図2に示すように、実施形態に係るコネクタ1は、複数の差動信号をそれぞれ伝送する複数のケーブル部3に接続されるコネクタである。かかるコネクタ1は、不図示の印刷配線基板上に実装された相手コネクタ2に対して係合可能に構成されている。かかるコネクタ1は、プラグコネクタとも呼ばれ、相手コネクタ2は、レセプタクルコネクタとも呼ばれる。
【0012】
ケーブル部3は、
図1に示すように、一対の同軸ケーブル4を備える。各同軸ケーブル4は、
図3に示すように、差動信号のうち一つの信号を伝送する内導体(中心導体)4aの外周側に、誘電体4b、外導体(シールド線)4cおよび外周被覆材4dが順に同軸状に積層されて形成される。なお、図面において、同軸ケーブル4は、便宜上、一部のみを示しており、残りの部分との境界を切断面として示している。
【0013】
コネクタ1は、複数の端子10と、複数の端子10を保持する絶縁性のハウジング20とを備える。各端子10には、ケーブル部3が接続される。ハウジング20には、複数の端子10を二列に分けて収容する複数の収容部23が設けられた本体部21と、本体部21に対して移動可能に本体部21の両側から取り付けられる一対のロック部材22(
図2参照)とを備える。
【0014】
一対のロック部材22のそれぞれを本体部21の内部へ向かう方向へ移動させることで、複数の端子10は、一対の収容部23に収納された状態で、本体部21に係止される。一対のロック部材22は、係止部の一例である。
【0015】
図3に示すように、各端子10は、ケーブル部3の一対の内導体4aにそれぞれ接続される導電性の一対のコンタクト部材11と、一対のコンタクト部材11を収容する絶縁性の絶縁部材12と、絶縁部材12を覆い、ケーブル部3の各外導体4cに接続される導電性のシェル部13とを含む。なお、
図3では、各端子10の一対のコンタクト部材11のうち一方のコンタクト部材11のみが示されている。
【0016】
このように、各端子10は、シェル部13が一対のコンタクト部材11を収容した絶縁部材12を覆っているため、一対の内導体4aから放射される電磁波がシェル部13でシールドされる。そのため、例えば、端子10間のクロストークによる影響を抑制することができ、また、端子10から端子10外のその他の導体への影響を抑制することができる。
【0017】
絶縁部材12には、
図3に示すように、コンタクト部材11に接触する相手コネクタ2のシグナルコンタクト部材51(
図1参照)が挿入される開口15が形成されている。また、シェル部13には、コンタクト部材11に接触する相手コネクタ2のシグナルコンタクト部材51が挿入される開口16が形成されている。これにより、端子10の外部から導体であるシグナルコンタクト部材51をコンタクト部材11に接触させることができる。
【0018】
また、ハウジング20の本体部21には、コンタクト部材11に接触する相手コネクタ2のシグナルコンタクト部材51が挿入される開口24が設けられている。また、ハウジング20の本体部21には、シェル部13に接触する相手コネクタ2のグランドコンタクト部材52(
図1参照)が挿入される開口25が設けられている。これにより、コネクタ1の外部からシグナルコンタクト部材51をコンタクト部材11に接触させ、且つ、コネクタ1の外部から導体であるグランドコンタクト部材52をシェル部13に接触させることができる。
【0019】
<2.コネクタ1の構成>
以下、実施形態に係るケーブル部3、コネクタ1および相手コネクタ2の構成について順に具体的に説明する。以下においては、説明の便宜上、相手コネクタ2に対してコネクタ1を差し込む方向(Z軸負方向)を「下方向」とし、その逆方向(Z軸正方向)を「上方向」とする。また、コネクタ1の長手方向(X軸方向)を「左右方向」とし、「上下方向」と「左右方向」の双方に直交する方向(Y軸方向)を「前後方向」とする。
【0020】
<2.1.ケーブル部3>
ケーブル部3は、
図1に示すように、一対の同軸ケーブル4を有する。同軸ケーブル4は、例えば、携帯電話機やサーバ等の電子装置に用いられる極細の同軸ケーブルである。これら一対の同軸ケーブル4に含まれる一対の内導体4aは、差動信号が伝送される信号線である。すなわち、一対の内導体4aのうち一方の内導体4aに伝送される信号と他方の内導体4aに伝送される信号とは位相が180度異なる。かかる差動信号は、例えば、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)方式の差動信号である。
【0021】
同軸ケーブル4は、
図5に示すように、先端側から内導体4a、誘電体4b、外導体4cが順次露出した状態で端子10の内部に配置されている。なお、
図1に示すケーブル部3は、一対の同軸ケーブル4で構成されているが、ケーブル部3は、ツインナックスケーブルなどのシールドペア線であってもよい。シールドペア線は、一対の内導体を含み、かかる一対の内導体が誘電体を介して同じ外導体に覆われる。
【0022】
<2.2.コネクタ1の端子10>
端子10は、ケーブル部3が接続される前の状態では、
図4に示す状態である。上述したように、端子10は、一対のコンタクト部材11と、絶縁部材12と、シェル部13とを備える。
【0023】
各コンタクト部材11は、
図3に示すように、同軸ケーブル4の内導体4aに接続される第1の接続部11aおよび第2の接続部11bと、相手コネクタ2のシグナルコンタクト部材51(
図1参照)に接続される第3の接続部11cとを備える。コンタクト部材11は、
図3に示すように、断面視でS字状の形状を有しており、例えば、金属板材に打抜き折曲げ加工を施すことによって一体的に形成される。
【0024】
絶縁部材12は、一対の内導体4a(
図5参照)が載置される基部12aと、一対の内導体4aを基部12aとの間で覆うためのカバー部12bとを備える。基部12aおよびカバー部12bには一対の内導体4aの一方と他方とを離隔し且つ各内導体4aとシェル部13とを離隔した状態に維持する複数の仕切壁12cを備える。
【0025】
シェル部13は、開口を有する箱状の基部30と、基部30の一端に連続するケーブル支持部31と、基部30の他端に連続して延伸し、基部30の開口および一対の同軸ケーブル4の先端部分を覆うカバー部32とを備える。また、シェル部13は、ケーブル支持部31に当接する一対の第1の屈曲係合片33a,33bと、一対の同軸ケーブル4の外導体4cを把持する一対の第2の屈曲係合片34a,34bと、一対の同軸ケーブル4の外周被覆材4dを把持する一対の第3の屈曲係合片35a,35bとを備える。
【0026】
シェル部13のカバー部32は、コネクタ1にケーブル部3を取付ける際に、
図5に示す状態から、ケーブル部3側へ屈曲させられる。かかる屈曲に伴い、絶縁部材12のカバー部12bおよびコンタクト部材11の第1の接続部11aがカバー部32と共に同軸ケーブル4側へ屈曲させられる。
【0027】
これにより、各内導体4aがコンタクト部材11の第1の接続部11aと第2の接続部11bとの間に挟持されて、一対の内導体4aが一対のコンタクト部材11に電気的に接続される。また、一対の内導体4aが互いの絶縁およびシェル部13との絶縁を確保した状態で基部12aとカバー部12bとの間に収容される。
【0028】
また、一対の第1の屈曲係合片33a,33bは、シェル部13のカバー部32が上述のようにケーブル部3側へ屈曲させられた後、互いが近づく方向に屈曲させられて、
図6に示すように、ケーブル支持部31に当接される。これにより、絶縁部材12に一対の内導体4aが収容され、かつ内導体4aが第1の接続部11aと第2の接続部11bとの間に挟持された状態を維持することができる。
【0029】
また、一対の第2の屈曲係合片34a,34bは、シェル部13のカバー部32が上述のようにケーブル部3側へ屈曲させられた後、互いが近づく方向に屈曲させられて、
図6に示すように、外導体4cに接触する。これにより、シェル部13と外導体4cとを電気的に接続することができる。また、一対の第3の屈曲係合片35a,35bは、シェル部13のカバー部32が上述のようにケーブル部3側へ屈曲させられた後、互いが近づく方向に屈曲させられて、
図6に示すように、外周被覆材4dに接触する。これにより、ケーブル部3を端子10に接続した状態をより強固に維持することができる。
【0030】
図8に示すように、端子10において、差動信号を伝送する一対の内導体4aと一対の内導体4aに接続される一対のコンタクト部材11とは絶縁部材12に収容され、絶縁部材12は導電性のシェル部13に覆われる。したがって、一対の内導体4aから放射される電磁波がシェル部13でシールドされ、一対の内導体4aおよび一対のコンタクト部材11からの電磁波の放射による端子10外への影響が抑制される。
【0031】
また、端子10の下部には、導電性のシェル部13および絶縁部材12に覆われたコンタクト部材11に通じる開口が形成されている。具体的には、
図8および
図9に示すように、シェル部13における基部30の下部に開口16が形成され、絶縁部材12の下部に開口15が形成されている。開口15と開口16とは、上下方向において互いに対向する位置に配置されている。
【0032】
また、
図8に示すように、絶縁部材12には、上下方向において開口15および開口16と対向する位置に中空部12dが形成されている。かかる中空部12dにコンタクト部材11の第3の接続部11cが配置されている。コンタクト部材11は、断面視でS字状に形成されている。第3の接続部11cは、前後方向において、第1の接続部11aおよび第2の接続部11bと対向する位置にある。そのため、第3の接続部11cを第1の接続部11aおよび第2の接続部11bの下方に位置させる場合に比べ、コンタクト部材11の上下方向の長さが長くなることを抑制でき、端子10の小型化を図ることができる。
【0033】
<2.3.コネクタ1のハウジング20>
図10に示すように、ハウジング20は、上述した本体部21と一対のロック部材22とを備える。本体部21には、複数の端子10を二列に分けて収容する複数の収容部23が設けられている。収容部23の上方は開口しており、上方から複数の端子10を複数の収容部23に挿入することができる。
【0034】
前後方向で対向する端子10同士は、左右方向に延伸する仕切壁21fによって離隔された状態で本体部21に収容され、左右方向で対向する端子10同士は、前後方向に延伸する仕切壁21gによって離隔された状態で本体部21に収容される。なお、仕切壁21fは、一方の側壁21cから他方の側壁21dまでにかけて延伸しており、各仕切壁21gは、前壁21aから後壁21bまでにかけて延伸している。
【0035】
また、二列に配列された複数の端子10のうち、一方の列に配置される端子10と他方の列に配置される端子10とは、一方の列と他方の列とを隔てる仕切壁21fに対して互いに対称になる向きで配置される。
【0036】
本体部21の前壁21aには、左右方向に沿って間隔を空けて複数の開口25が形成されている。同様に、後壁21bには、右方向に沿って間隔を空けて複数の開口25が形成されている。かかる開口25は、端子10のシェル部13と前後方向で対向する位置に形成されている。
【0037】
また、本体部21における左右の側壁21c,21dには、それぞれ係合部26が設けられている。側壁21cに設けられた係合部26は、基端部が側壁21cに連結され、右方向(X軸の正方向)に突出し屈曲部分を介して上方へ延伸しており、先端が自由端になっている。係合部26の上方へ延伸する部分の中途部には、右方向に突出する第1の突出部27が形成され、係合部26の先端部には、右方向に突出する第2の突出部28が形成されている。側壁21dに設けられた係合部26は、側壁21cに設けられた係合部26と左右対称に形成されている。
【0038】
前壁21aおよび後壁21bは、それぞれ右端部が側壁21cよりも右方向に突出する突出部分と、それぞれ左端部が側壁21dよりも左方向に突出する突出部分とを有している。そして、係合部26は、前後方向で前壁21aの突出部分と後壁21bの突出部分との間に挟まれた位置に形成されている。そのため、前壁21aおよび後壁21bが存在しない場合に比べて、係合部26の外部からの接触による破損などの可能性を低減することができる。
【0039】
また、
図13に示すように、本体部21における底壁21eには、複数の端子10に形成された複数の開口16と上下方向で対向する位置に複数の開口24が形成されている。
【0040】
図10および
図11に示すように、各ロック部材22は、左右方向に延伸するバー22aと、バー22aから前後方向のうち一方向に突出し左右方向に間隔を空けて配列された複数の突出部22bとを備える。各ロック部材22における複数の突出部22bは、前壁21aおよび後壁21bの一方に形成された複数の開口25に挿入される。
【0041】
図12に示すように、ロック部材22を本体部21へ向けて移動させることによって、
図13に示すように、ロック部材22に形成された複数の突出部22bが本体部21に形成された複数の収容部23に進入する。これにより、各端子10のハウジング20に対する上下方向への移動が規制され、コネクタ1がロック状態になる。
【0042】
<2.4.相手コネクタ2>
図14に示すように、相手コネクタ2は、上方に開口を有し、コネクタ1が挿入される収容部53を有する箱状の絶縁性のハウジング50と、コネクタ1における導電性の複数のコンタクト部材11に接続される複数のシグナルコンタクト部材51と、コネクタ1のシェル部13に接続される導電性の複数のグランドコンタクト部材52とを備える。相手コネクタ2は、複数のシグナルコンタクト部材51と複数のグランドコンタクト部材52とがハウジング50に、インサート成形や、圧入されて構成される。
【0043】
図14〜
図17に示すように、ハウジング50は、前壁50aと、後壁50bと、左右の側壁50c,50dと、底壁50eとを有する。また、ハウジング50は、各側壁50c,50dには、収容部53側へ突出し互いに前後方向で対向する一対のガイド部54と、一対のガイド部54間に設けられ、収容部53側へ突出する係合部55とが形成される。
【0044】
シグナルコンタクト部材51は、
図16に示すように、L字状に形成されており、例えば、金属板材に打抜き折曲げ加工を施すことによって一体的に形成される。かかるシグナルコンタクト部材51は、先端部51aが上下方向に延伸し、基端部51bが前後方向に延伸している。シグナルコンタクト部材51の基端部51bは、不図示の印刷配線基板に形成されたシグナルパターンに半田付けなどによって接続される。
【0045】
グランドコンタクト部材52は、例えば、金属板材に打抜き折曲げ加工を施すことによって一体的に形成される。かかるグランドコンタクト部材52は、
図17に示すように、弾性を有する先端部52aが前壁50aの収容部53側または後壁50bの収容部53側に沿って延伸し、基端部52bが底壁50eの底面に沿って前後方向に延伸している。グランドコンタクト部材52の基端部52bは、不図示の印刷配線基板に形成されたグランドパターンに半田付けなどによって接続される。
【0046】
<3.コネクタ1と相手コネクタ2との接続>
次に、コネクタ1と相手コネクタ2との接続について説明する。コネクタ1を相手コネクタ2に挿入した場合、
図18〜
図20に示すように、コネクタ1と相手コネクタ2とが係合状態になる。
【0047】
具体的には、
図19に示すように、相手コネクタ2のシグナルコンタクト部材51は、ハウジング20の開口24、端子10におけるシェル部13の開口16および絶縁部材12の開口15に挿入される。そして、シグナルコンタクト部材51の先端部51aがコンタクト部材11の第3の接続部11cに接触する。第3の接続部11cは、弾性を有している。そのため、シグナルコンタクト部材51の先端部51aは、第3の接続部11cに押圧された状態で接触する。
【0048】
また、シェル部13の開口16は、
図9に示すように、第3の接続部11c毎に形成されている。そのため、2つの第3の接続部11cに対してシェル部13に一つの開口を形成する場合に比べて、シェル部13毎の開口の大きさを小さくすることができ、これにより、一対の内導体4aからの電磁波の放射による端子10外への影響をより抑制することができる。
【0049】
また、
図20に示すように、相手コネクタ2のグランドコンタクト部材52の先端部52aは、コネクタ1におけるハウジング20の前壁21aまたは後壁21bに形成された開口25からシェル部13の基部30に接触する。グランドコンタクト部材52の先端部52aは、弾性を有しており、シェル部13の基部30を押圧した状態で基部30に接触する。
【0050】
また、
図19および
図20に示すように、一対のロック部材22は、相手コネクタ2の前壁50aおよび後壁50bによって、コネクタ1のハウジング20の外方へ移動することが規制される。そして、ロック部材22の突出部22bは、端子10におけるシェル部13の基部30の移動を規制する。したがって、コネクタ1が相手コネクタ2に挿入されている状態において、コネクタ1のロック状態が維持される。
【0051】
ここで、端子10が上方へ移動されロック部材22の突出部22bにシェル部13の基部30が接触する位置になったとする。この場合においても、シグナルコンタクト部材51の先端部51aがコンタクト部材11の第3の接続部11cに接触し、かつ、グランドコンタクト部材52の先端部52aがシェル部13の基部30に接触した状態が維持される。したがって、コネクタ1に相手コネクタ2が挿入された状態である場合において、コネクタ1と相手コネクタ2との電気的な接続状態を維持することができる。
【0052】
また、コネクタ1を相手コネクタ2に挿入する際、コネクタ1のハウジング20に形成された各係合部26は、相手コネクタ2に形成された一対のガイド部54によって前後方向の移動を規制されつつ上下方向に移動可能である。したがって、コネクタ1の相手コネクタ2への挿入を容易に行うことができる。
【0053】
そして、コネクタ1が相手コネクタ2に挿入された後、コネクタ1が相手コネクタ2から離れる方向へ移動しようとすると、コネクタ1の係合部26に形成された第1の突出部27が相手コネクタ2に形成された係合部55に係止される。そのため、コネクタ1と相手コネクタ2との係合状態を維持することができ、コネクタ1が相手コネクタ2から意図せずして抜去されることを防止することができる。
【0054】
また、ハウジング20における係合部26に形成された第2の突出部28をハウジング20の収容部23に向かう方向へ移動させることで、第1の突出部27が係合部55に係止されない状態になる。したがって、コネクタ1を相手コネクタ2から抜去することができる。このように、係合部26に形成された第2の突出部28は、コネクタ1と相手コネクタ2との係合状態を解除するための操作部として用いられる。
【0055】
<4.コネクタ1および相手コネクタ2の他の構成>
以下、コネクタ1および相手コネクタ2の他のいくつかの構成例を上述したコネクタ1および相手コネクタ2と異なる点を主として
図21〜
図29を参照して説明する。
【0056】
まず、
図21に示すコネクタ1および相手コネクタ2について説明する。
図21に示すコネクタ1は、ハウジング20に係合部26を有しておらず、また、側壁21c,21dには左右方向に突出する突出部分が形成されていない点で、
図10に示すコネクタ1と異なる。また、
図21に示す相手コネクタ2は、ガイド部54および係合部55を有していない点で、
図14に示す相手コネクタ2と異なる。このように、コネクタ1および相手コネクタ2は、互いに係合する係合部26および係合部55などを有していない構成であってもよい。
【0057】
次に、
図22に示すコネクタ1について説明する。
図22に示すコネクタ1は、ケーブル部3が二対の同軸ケーブル4を有し、かかるケーブル部3に応じた端子10およびハウジング20の形状を有する点で、
図1に示すコネクタ1と異なる。
【0058】
図22に示すコネクタ1の端子10は、
図23に示すように、導電性を有する二対のコンタクト部材11と、絶縁性を有する二つの絶縁部材12と、導電性を有するシェル部13とを備える。
図23に示すコンタクト部材11および絶縁部材12は、
図4に示すコンタクト部材11および絶縁部材12と同一である。なお、二つの絶縁部材12を一体的に形成してもよい。
【0059】
図23に示すシェル部13には、二つの絶縁部材12が配置され、二つの絶縁部材12に二対のコンタクト部材11の先端部分が載置される。すなわち、一方の絶縁部材12に一方の一対のコンタクト部材11の先端部分が載置され、他方の絶縁部材12に他方の一対のコンタクト部材11の先端部分が載置される。
【0060】
そして、折り曲げ加工によって、
図24および
図25に示す端子10が形成される。
図24に示す端子10において、シェル部13の基部30には、一方の一対のコンタクト部材11を収容する絶縁部材12を含む部分と、他方の一対のコンタクト部材11を収容する絶縁部材12を含む部分との間に、スリット36が形成されている。
【0061】
また、
図24および
図25に示すように、シェル部13の基部30には、左右方向にスリット36を介して対向する一対の係合部37が形成される。かかる一対の係合部37は、一方の係合部37と他方の係合部37との間で後述する仕切壁56(
図28参照)を挟持することができるように弾性を有している。
【0062】
また、
図26に示すように、シェル部13における基部30の下部には開口16が形成され、絶縁部材12の下部に開口15が形成されている。そして、開口15と開口16とは、上下方向において互いに対向する位置に配置されている。
【0063】
図27に示すように、コネクタ1のハウジング20の本体部21には、端子10の各スリット36と前後方向で対向する位置に、後述する仕切壁56が挿入される開口29が形成されている。
【0064】
図22に示すコネクタ1は、
図28に示す相手コネクタ2に挿入される。
図28に示す相手コネクタ2は、導電性の仕切壁56が形成されている点で、
図14に示す相手コネクタ2と異なる。
図29に示すように、仕切壁56は、平面視においてU字状に形成されている。仕切壁56は、グランドコンタクト部材52と連結され、グランドコンタクト部材52と電気的に接続されている。仕切壁56とグランドコンタクト部材52とは、金属板材に打抜き折曲げ加工を施すことによって一体的に形成される。
【0065】
図22に示すコネクタ1を
図28に示す相手コネクタ2に挿入すると、仕切壁56が端子10のスリット36に挿入される。これにより、二対の同軸ケーブル4の一方の一対と他方の一対との間に導電性の仕切壁56が配置された状態になる。そのため、一方の一対の同軸ケーブル4と他方の一対の同軸ケーブル4との間のクロストークを抑制することができる。
【0066】
また、仕切壁56は、弾性を有する一対の係合部37間に配置され、一方の係合部37と他方の係合部37との間で仕切壁56が挟持される。そのため、シェル部13は、相手コネクタ2のグランドコンタクト部材52と仕切壁56とにそれぞれ接触して不図示の印刷配線基板のグランドに電気的に接続される。そのため、シェル部13のグランドへの電気的な接続を強化することができる。
【0067】
また、左右方向に対向する一端部56aと他端部56bを有する仕切壁56は、グランドコンタクト部材52毎に設けられており、端子10間も仕切壁56を介して隣接する。したがって、仕切壁56がない場合に比べて、端子10間のクロストークをより抑制することができる。
【0068】
なお、
図29に示す相手コネクタ2の仕切壁56は、左右方向に対向する一端部56aと他端部56bを有する平面視U字状の構成であるが、仕切壁56は、平面視L字状の構成であってもよい。例えば、仕切壁56は、一端部56aと他端部56bのうち一方のみを設けた構成であってもよい。また、端子10間には、仕切壁56が介在しないように相手コネクタ2を構成することもできる。
【0069】
また、
図23に示す端子10において、スリット36を設けず、絶縁部材12間に導電性の部材を追加することで、一方の一対の同軸ケーブル4と他方の一対の同軸ケーブル4との間のクロストークを抑制する構成であってもよい。
【0070】
また、
図23に示す端子10は、二対の同軸ケーブル4を有するケーブル部3に接続される構成であるが、三対以上の同軸ケーブル4を有するケーブル部3に接続される構成であってもよい。この場合も同様に、それぞれの絶縁部材12間にスリット36を設けることで、
図28および
図29に示す相手コネクタ2に挿入することができる。
【0071】
また、上述したコネクタ1では、左右方向に延伸する仕切壁21fに対して前後方向で対称となるように形成されているが、仕切壁21fに対して前後方向で対称でない構成であってもよい。例えば、奇数個の収容部23を二列に分け、一方の列を偶数個の収容部23とし他方の列を奇数個の収容部23とすることができる。この場合、一方の列の収容部23が他方の列の2つの収容部23と前後方向で対向するように構成することができる。
【0072】
また、上述したコネクタ1では、ハウジング20に複数の端子10を収容する構成であるが、ハウジング20に一つの端子10のみを収容する構成であってもよい。
【0073】
また、上述したコネクタ1では、シェル部13の開口16は、
図9に示すように、第3の接続部11c毎に形成されているが、2つの第3の接続部11cに対してシェル部13に一つの開口を形成する構成であってもよい。
【0074】
以上のように、実施形態に係るコネクタ1は、一以上の端子10と、絶縁性のハウジング20とを備える。端子10は、差動信号を伝送する一対の内導体4aを含むケーブル部3における一対の内導体4aに接続される導電性の一対のコンタクト部材11と、一対のコンタクト部材11を収容する絶縁性の絶縁部材12と、絶縁部材12を覆い、ケーブル部3の外導体4cに接続される導電性のシェル部13とを含む。ハウジング20は、一対のコンタクト部材11およびシェル部13のそれぞれに外部の導体である相手コネクタ2のシグナルコンタクト部材51およびグランドコンタクト部材52が接触可能な状態にて、一以上の端子10を保持する。これにより、一対の内導体4aから放射される電磁波がシェル部13でシールドされて、一対の内導体4aからの電磁波の放射による端子10外への影響が抑制される。
【0075】
また、絶縁部材12およびシェル部13にはそれぞれ、コンタクト部材11に接触する相手コネクタ2のシグナルコンタクト部材51が挿入される開口15,16が設けられる。これにより、一対の内導体4aからの電磁波の放射による端子10外への影響を抑制しつつ、シグナルコンタクト部材51をコンタクト部材11に接触させることができる。また、シェル部13の開口16をコンタクト部材11毎に形成することで、一対の内導体4aからの電磁波の放射による端子10外への影響をより抑制することができる。
【0076】
また、ハウジング20には、コンタクト部材11に接触する相手コネクタ2のシグナルコンタクト部材51とシェル部13に接触する相手コネクタ2のグランドコンタクト部材52がそれぞれ挿入される複数の開口24,25が設けられる。これにより、シグナルコンタクト部材51およびグランドコンタクト部材52がまとめて挿入される開口がハウジング20に設けられる場合に比べ、ハウジング20の強度を高くすることができる。
【0077】
また、ハウジング20は、端子10を収容する収容部23と、収容部23に収容された状態で端子10を係止するロック部材22(係止部の一例)とを備える。これにより、端子10をハウジング20に収容した状態を維持することができる。
【0078】
また、コネクタ1は、端子10を複数備える。ハウジング20は、複数の端子10を二列に分けて収容する収容部23を備える。二列のうち一方の列に配置される端子10と他方の列に配置される端子10とは、一方の列と他方の列とを隔てる壁に対して互いに対称になる向きで配置される。これにより、相手コネクタ2において、シグナルコンタクト部材51およびグランドコンタクト部材52の配置を、一方の列の端子10に対する配置と他方の列の端子10に対する配置とを前後方向で対称になるように配置することができる。そのため、シグナルコンタクト部材51およびグランドコンタクト部材52の配置についての設計を容易に行うことができる。また、相手コネクタ2の前後方向の向きを気にすることなく、相手コネクタ2を不図示の印刷配線基板に実装することができる。同様に、コネクタ1の前後方向の向きを気にすることなく、コネクタ1を相手コネクタ2に実装することができる。
【0079】
また、ケーブル部3には、一対の同軸ケーブル4が複数含まれる。端子10には、複数の一対の同軸ケーブル4が接続される。端子10は、一対の同軸ケーブル4毎に一対のコンタクト部材11を備える。端子10は、複数の一対のコンタクト部材11を覆う一以上の絶縁性の絶縁部材12から構成される。このように、端子10に複数の一対の同軸ケーブル4を取り付ける構成にすることで、端子10の数を低減することができ、端子10のハウジング20への取り付け作業の負荷を軽減することができる。
【0080】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。