特許第6965691号(P6965691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6965691シールリング、十字軸継手及びステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965691
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】シールリング、十字軸継手及びステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3232 20160101AFI20211028BHJP
   F16D 3/41 20060101ALI20211028BHJP
   F16J 15/3276 20160101ALI20211028BHJP
   B62D 1/20 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   F16J15/3232 201
   F16D3/41 E
   F16J15/3276
   B62D1/20
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-208265(P2017-208265)
(22)【出願日】2017年10月27日
(65)【公開番号】特開2019-78399(P2019-78399A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】特許業務法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
(72)【発明者】
【氏名】中尾 圭佑
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−023528(JP,U)
【文献】 実開昭57−016028(JP,U)
【文献】 特開2010−265919(JP,A)
【文献】 特開2009−257406(JP,A)
【文献】 実開昭60−128061(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D1/00−1/28
F16C33/72−33/82
F16D3/41
F16J15/00−15/3296
15/46−15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部と、前記中心部からそれぞれ4方向に延びる4本の軸部とを有し、前記中心部が前記軸部の基端から前記軸部の径方向外方に広がる段差面を形成した十字軸と共に用いられ、
前記軸部に外嵌し、前記軸部の先端部に取り付けられるラジアル軸受と、前記段差面との間に配置されるシールリングであって、
円輪状の芯金と、
前記芯金に固着した弾性部とを有し、
前記弾性部は、全周にわたって前記ラジアル軸受に接触する軸受側のシールリップを有し、
前記芯金は、前記軸部の径方向内側に前記軸部を通す円筒部と、前記軸部の中心軸線方向において前記段差面側の前記円筒部の端部から、全周にわたって径方向外側に延びる傾斜部とを有し、
前記傾斜部は、前記軸部の径方向外側に向かうにつれて、前記軸部の中心軸線方向で前記ラジアル軸受側に近付くように傾斜しており、
前記傾斜部は、前記軸部の中心軸線方向に貫通した貫通部を有し、
前記弾性部は、前記軸部の中心軸線方向において前記傾斜部の前記ラジアル軸受側と前記段差面側に固着しており、
前記ラジアル軸受側と前記段差面側の前記弾性部の部分が、前記貫通部を通じて一体に形成され
前記傾斜部の外端および前記芯金の段差面側端が露出していることを特徴とするシールリング。
【請求項2】
前記貫通部は、径方向外側から径方向内側に凹んだ凹部であることを特徴とする請求項1に記載のシールリング。
【請求項3】
前記貫通部は、孔部であることを特徴とする請求項1に記載のシールリング。
【請求項4】
前記弾性部は、前記段差面側に環状に突出した段差面側のシールリップを有することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のシールリング。
【請求項5】
前記傾斜部は、円周方向に略等間隔に配置され、径方向において最も外側に配置された外端を3つ以上有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のシールリング。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のシールリングを備えたことを特徴とする十字軸継手。
【請求項7】
請求項6に記載の十字軸継手を備えたことを特徴とするステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ステアリング装置の操舵力を伝達するシャフトの連結部に用いる十字軸継手に組み込まれるシールリング、当該シールリングを備えた十字軸継手、及び、当該十字軸継手を備えたステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、十字軸継手を構成する十字軸の端部に外嵌するラジアル軸受の軸受カップと、十字軸の軸部との間に形成される隙間をシールするシールリングがある。
【0003】
このようなシールリングは、下記特許文献1のように、弾性シール部と、弾性シール部内に埋め込まれた補強環とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3041732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の弾性シール部を成型する際、型の内側で補強環の位置決めをする必要があるが、補強環全体を弾性シール部に埋め込む場合、補強環を型に接触させることができず、成型性が悪い。
【0006】
また、補強環の一部を型に接触させて位置決めする場合、型に接触した補強環の部分に弾性シール部が固着せず、補強環が露出した状態になるため、シール性が低下するおそれがある。
【0007】
以上に鑑みて、本願発明は、成型性およびシール性に優れたシールリング、十字軸継手及びステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願は、中心部と、前記中心部からそれぞれ4方向に延びる4本の軸部とを有し、前記中心部が前記軸部の基端から前記軸部の径方向外方に広がる段差面を形成した十字軸と共に用いられ、
前記軸部に外嵌し、前記軸部の先端部に取り付けられるラジアル軸受と、前記段差面との間に配置されるシールリングであって、
円輪状の芯金と、
前記芯金に固着した弾性部とを有し、
前記弾性部は、全周にわたって前記ラジアル軸受に接触する軸受側のシールリップを有し、
前記芯金は、前記軸部の径方向内側に前記軸部を通す円筒部と、前記軸部の中心軸線方向において前記段差面側の前記円筒部の端部から、全周にわたって径方向外側に延びる傾斜部とを有し、
前記傾斜部は、前記軸部の径方向外側に向かうにつれて、前記軸部の中心軸線方向で前記ラジアル軸受側に近付くように傾斜しており、
前記傾斜部は、前記軸部の中心軸線方向に貫通した貫通部を有し、
前記弾性部は、前記軸部の中心軸線方向において前記傾斜部の前記ラジアル軸受側と前記段差面側に固着しており、
前記ラジアル軸受側と前記段差面側の前記弾性部の部分が、前記貫通部を通じて一体に形成され
前記傾斜部の外端および前記芯金の段差面側端が露出していることを特徴とするシールリングを提供する。
【0009】
好ましくは、前記貫通部は、前記軸部の径方向外側から径方向内側に凹んだ凹部である。
【0010】
また好ましくは、前記貫通部は、孔部である。
【0011】
また好ましくは、前記弾性部は、前記段差面側に環状に突出した段差面側のシールリップを有する。
【0012】
また好ましくは、前記傾斜部は、円周方向に略等間隔に配置され、径方向において最も外側に配置された外端を3つ以上有する。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本願は、上記シールリングを備えたことを特徴とする十字軸継手を提供する。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本願は、上記十時軸継手を備えたことを特徴とするステアリング装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
以上に鑑みて、本願発明は、成型性およびシール性に優れたシールリング、十字軸継手及びステアリング装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本願の実施形態に係るステアリング装置を示す側面図である。
図2図2は本願の実施形態に係る中間シャフトと十字軸継手を示す斜視図である。
図3図3は本願の実施形態に係る十字軸、ラジアル軸受およびシールリングの断面図である。
図4図4は本願の第1実施形態に係るシールリング周辺の拡大断面図である。
図5図5は本願の第1実施形態に係るシールリングの断面図である。
図6図6(a)は本願の第1実施形態に係るシールリングの芯金を示す平面図である。図6(b)は本願の第1実施形態に係る芯金の図6(a)に示すX−X切断面における断面図である。
図7図7(a)は本願の第2実施形態に係るシールリングの芯金を示す平面図である。図7(b)は本願の第2実施形態に係るシールリングの図7(a)に示すY−Y切断面における断面図である。
図8図8(a)は本願の第3実施形態に係るシールリングの芯金を示す平面図である。図8(b)は本願の第3実施形態に係るシールリングの図8(a)に示すZ−Z切断面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は本願の第1実施形態から第3実施形態に共通するステアリング装置100を示す側面図である。
【0018】
図1に示すように、ステアリング装置100は、ステアリングホイール1と、ステアリングシャフト2と、ステアリングコラム3と、車体側ブラケット4と、第1の十字軸継手5と、中間シャフト6と、第2の十字軸継手7と、ピニオンギア8と、ラック軸9とを有している。ステアリングホイール1は、その回転を伝達するステアリングシャフト2に固定されている。ステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3の内側を通り、中心軸線を中心として回転可能にステアリングコラム3に支持されている。ステアリングコラム3は、車体側ブラケット4により車体200に取り付けられる。ステアリングシャフト2の回転は第1の十字軸継手5によって中間シャフト6に伝達される。中間シャフト6の回転は、第2の十字軸継手7によってピニオンギア8に伝達される。ピニオンギア8は回転してラック軸9を車幅方向に移動させる。ラック軸9は不図示のタイロッドを介して不図示のナックルアームを動かし、不図示の前輪を転舵させる。
【0019】
図2は本願の第1実施形態から第3実施形態に共通する中間シャフト6と、第1の十字軸継手5と、第2の十字軸継手7とを示す斜視図である。
【0020】
第1の十字軸継手5は、第1のヨーク11と、第2のヨーク12とを備えている。第2の十字軸継手7は、第3のヨーク13と、第4のヨーク14とを備えている。第1のヨーク11は二股状に形成された一対のアーム11aを有している。第2のヨーク12は二股状に形成された一対のアーム12aを有している。第1のヨーク11と第2のヨーク12は、一対のアーム11aと一対のアーム12aに保持された後述の十字軸16を介して連結されている。これと同様に、第3のヨーク13と第4のヨーク14も一対のアーム13aと一対のアーム14aによって保持された後述の十字軸16によって連結されている。
【0021】
図3は本願の第1実施形態から第3実施形態に共通する十字軸16、ラジアル軸受21およびシールリング26の断面図である。中間シャフト6の中心軸線に対して垂直な方向に切断した断面を示している。
【0022】
十字軸16は、中心部17と、中心部17からそれぞれ4方向に延びる4本の円柱状の軸部18とを有している。具体的には、十字軸16は、中心部17から一方向に延びる第1の軸部18と、第1の軸部18と中心軸線を共通にして中心部17から第1の軸部18とは反対側に延びる第2の軸部18と、中心部17から第1、第2の軸部18に対して垂直な方向に延びる第3の軸部18と、第3の軸部18と中心軸線を共通にして中心部17から第3の軸部18とは反対側に延びる第4の軸部18とを有している。軸部18周辺の構成は、4本の軸部18において共通であるため、1箇所についてのみ説明し、他の軸部18周辺の構成の説明は省略する。軸部18の先端部にはラジアル軸受21が外嵌している。ラジアル軸受21としては、ニードル軸受を用いることができる。ラジアル軸受21は、軸受カップ22と、ローラ23とを有する。軸受カップ22は、先述のヨーク11乃至14の一対のアーム11a乃至14aに形成された円孔に内嵌する。ローラ23は、軸受カップ22と十字軸16の軸部18との間で、軸部18と略平行な向きで円周方向に複数配置されている。
【0023】
軸部18の中心部には、先端側から基部側に向かって挿入孔18aが穿孔されている。挿入孔18aの内側には合成樹脂製のピン24が挿入されている。軸部18の基部にはシールリング26が外嵌している。シールリング26は、軸受カップ22と軸部18の間の隙間からラジアル軸受21内に異物が入るのを防ぐ。ピン24は、軸受カップ22と軸部18との間に介在して、軸受カップ22が軸部18の基部側に移動するのを防ぐ。これにより、シールリング26が軸受カップ22により圧縮されてシール性が損なわれるのを防ぐことができる。シールリング26は、図2に示す第1の十字軸継手5のように、車室内に設けられる十字軸継手には設けなくても良い。
【0024】
図4は本願の実施形態に係るシールリング26周辺の拡大断面図である。図4に示す部分は全周にわたって同様の断面形状をしている。
【0025】
シールリング26は、芯金127と弾性部28とを有している。芯金127は金属からなり、円輪状をしている。弾性部28はエラストマーからなり、芯金127に固着している。弾性部28も円輪状をしている。十字軸16の中心部17は、軸部18の径方向において、軸部18よりも大きい寸法を有しており、軸部18の基端から径方向外方に広がる段差面17aを形成している。段差面17aは軸部18の中心軸線に対して略直角に配置されている。弾性部28は、軸受カップ22と段差面17aとに接して、軸受カップ22内に泥水などの異物が入り込むのを防ぐ。
【0026】
(第1実施形態)
図5は本願の第1実施形態に係るシールリング26の断面図である。シールリング26は全周にわたって同様の断面形状をしている。
【0027】
芯金127は、金属板を曲げ加工する事により形成することができる。芯金127は、径方向内側で円筒状をした円筒部127aと、円筒部127aの外周から全周にわたって径方向外側に延びる傾斜部127bとを有する。傾斜部127bは、径方向外側に向かうにつれて、中心軸線方向でラジアル軸受21側に近付くように傾斜しており、芯金127を軸部18の中心軸線方向かつ径方向に切断した断面において、傾斜部127bと円筒部127aとで作る角は鋭角になっている。これにより、傾斜部127bと段差面17aとの間に弾性部28の一部を配置することができ、傾斜部127bと段差面17aとの間のシール性能を向上させることができる。
【0028】
弾性部28は、十字軸16に取り付けられていない状態では、図5に示す断面形状をしている。弾性部28は、本体29と、軸受側の第1のシールリップ31と、軸受側の第2のシールリップ32と、軸受側の第3のシールリップ33と、段差面17a側の第4のシールリップ34を有している。弾性部28の本体29は、傾斜部127bの径方向の外端127cと、軸部18の中心軸線方向で最も段差面17a側の段差面側端127dを除いて、芯金127の全面に固着している。本体29が固着していない外端127c及び段差面側端127dは露出していて、弾性部28を成型する際に、型に接触させて芯金127の位置決めをするのに用いることができる。特に、傾斜部127bの径方向の外端127cは、弾性部28の成型時に型に当てることで、芯金127の自動調芯に用いることができる。
【0029】
弾性部28の本体29は、芯金127から、全周にわたって、径方向外側に広がり、軸部18の中心軸線方向でラジアル軸受21側(図5の上側)に立ち上がっている。第1のシールリップ31は、軸部18の中心軸線方向において最もラジアル軸受21側に位置する本体29の部分から、全周にわたって径方向内側に突出している。第1のシールリップ31は、図4に示すように、軸受カップ22の外周面に圧接する。
【0030】
第2のシールリップ32は、芯金127と第1のシールリップ31の間で、第1のシールリップ31寄りの本体29の部分から、全周にわたって径方向内側に突出している。第2のシールリップ32は、軸部18の中心軸線方向においてラジアル軸受21側に向かうにつれて内径及び外径が小さくなるように、軸部18の中心軸線に対して傾斜した円すい面状をしている。第2のシールリップ32は、図4に示すように、ラジアル軸受21の軸受カップ22の外周面に圧接する。
【0031】
第3のシールリップ33は、軸部18の中心軸線方向において芯金127のラジアル軸受21側にある本体29の部分から、全周にわたって、ラジアル軸受21側に突出している。第3のシールリップ33は、軸部18の軸方向においてラジアル軸受21側に向かうにつれて内径及び外径が大きくなるように軸部18の中心軸線に対して傾斜した円すい面状をしている。第3のシールリップ33は、図4に示すように、軸受カップ22の内側湾曲部22aに圧接する。
【0032】
段差面17a側の第4のシールリップ34は、軸部18の中心軸線方向で段差面17a側の弾性体28の部分から、十字軸16の中心部17側(図5の下側)に環状に突出している。第4のシールリップ34は、芯金127の段差面側端127dよりも径方向外側に配置されている。第4のシールリップ34は、軸部18の中心軸線方向で芯金127の段差面側端127dよりも十字軸16の中心部17側に突出しているが、図4に示すように、十字軸16に取り付けられた状態では弾性変形し、段差面側端127dが段差面17aに接触する。
【0033】
図6(a)は本願の第1実施形態に係るシールリング26の芯金127を示す平面図である。図6(b)は本願の第1実施形態に係る芯金127の図6(a)に示すX−X切断面における断面図である。
【0034】
芯金127の傾斜部127bは、周方向に一定の間隔で、径方向内側に凹んだ複数の凹部127eを有している。凹部127eは、傾斜部127bを中心軸線方向に貫通する貫通部を形成しており、傾斜部127bのラジアル軸受21側に配置された弾性部28の部分と、傾斜部127bの段差面17a側に配置された弾性部28の部分とを一体にする役割を果たす。本実施形態においては凹部127eの数を8つとしているが、凹部127eの数はこれに限られない。また、凹部127eの大きさ、形状も本実施形態に示すものに限られない。凹部127eは上記のように貫通部としての役割を果たすものであれば、任意の数、大きさ、形状を選択することができる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本願の第2実施形態について図7(a)および図7(b)を参照して説明する。図7(a)は本第2実施形態に係るシールリングの芯金227を示す平面図である。図7(b)は本第2実施形態に係るシールリングの図7(a)に示すY−Y切断面における断面図である。本第2実施形態は、芯金227の形状の一部が上記第1実施形態と異なり、それ以外の構成は上記第1実施形態と同様である。したがって、上記第1実施形態と同様の部分については説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分について説明する。上記第1実施形態の部分と対応する部分には上記第1実施形態の参照符号に「100」を足した数の参照符号を用いる。例えば、第1実施形態の円筒部127aに対応する本第2実施形態の円筒部には「227a」を付して説明する。
【0036】
本第2実施形態の芯金227は、上記第1実施形態の凹部127eに替えて、円周方向に長い複数の長孔227fを傾斜部227bに形成している。長孔227fは、傾斜部227bを中心軸線方向に貫通する貫通部であり、傾斜部227bのラジアル軸受21側に配置された弾性部28の部分と、傾斜部227bの段差面17a側に配置された弾性部28を一体にする役割を果たす。貫通部は、このように弾性部28を一体に形成することができる孔であれば、図7に示す長孔227fに限られない。例えば、本実施形態においては長孔227fの数を6つとしているが、長孔227fの数はこれに限られず、5つ以下としても良いし、7つ以上としても良い。また、長孔227fの大きさ及び形状も図7に示すものに限られず、長孔でなくても、丸孔でも角穴でも良い。
【0037】
(第3実施形態)
次に本願の第3実施形態について図8(a)および図8(b)を参照して説明する。図8(a)は本第3実施形態に係るシールリングの芯金327を示す平面図である。図8(b)は本第3実施形態に係るシールリングの図8(a)に示すZ−Z切断面における断面図である。本第3実施形態は、芯金327の形状の一部が上記第1実施形態と異なり、それ以外の構成は上記第1実施形態と同様である。したがって、上記第1実施形態と同様の部分については説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分について説明する。上記第1実施形態の部分と対応する部分には上記第1実施形態の参照符号に「200」を足した数の参照符号を用いる。例えば、第1実施形態の円筒部127aに対応する本第3実施形態の円筒部には「327a」を付して説明する。
【0038】
本第3実施形態の芯金327は、上記第1実施形態の外端127cに替えて、円周方向に略等間隔に離隔した3つの角型突出部327gの先端を、径方向において中心軸線から最も遠い位置にある外端327cとしている。角型突出部327gは、傾斜部327bの径方向外側部分を、直線状の2辺により中央が突出するように形成している。円周方向に略等間隔に離隔した外端327cは、弾性部28を成型する際に型に当てることで、芯金327の自動調芯を更に高い精度で行うことができる。このように芯金327の自動調芯を高い精度で行うことができるように、円周方向に離隔した3つ以上の外端327cを配置することができるのであれば、図8(a)に示す角型突出部327gに限られない。例えば、円周方向に略等間隔に離隔した傾斜部327bの部分において、径方向外側の端部の曲率を他の部分よりも高くして径方向外方に突出させたものであっても良い。
【0039】
以上の本願実施形態によれば、成型性およびシール性に優れたシールリング、中間シャフト及びステアリング装置を提供することができる。
【0040】
なお、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ピン24の代わりに、軸部18の端面に対向する軸受カップ22の底部中央に軸部18側に突出した突部を設け、軸部18に挿入孔18aを設けないものとしても良い。
【0041】
また、シールリング26のシールリップの数は4つに限られず、十字軸16の中心部17に接触するシールリップと軸受カップ22に接するシールリップがあれば良く、2つ、3つでも、5つ以上であっても良い。
【0042】
また、貫通部としては、第1、第3実施形態において説明した凹部と第2実施形態において説明した孔部の両方を備えるものとしても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3 ステアリングコラム
4 車体側ブラケット
5 第1の十字軸継手
6 中間シャフト
7 第2の十字軸継手
8 ピニオンギア
9 ラック軸
11 第1のヨーク
12 第2のヨーク
13 第3のヨーク
14 第4のヨーク
11a、12a、13a、14a 一対のアーム
16 十字軸
17 中心部
17a 段差面
18 軸部
18a 挿入孔
21 ラジアル軸受
22 軸受カップ
23 ローラ
24 ピン
26 シールリング
28 弾性部
29 本体
31 第1のシールリップ
32 第2のシールリップ
33 第3のシールリップ
34 第4のシールリップ
100 ステアリング装置
127、227、327 芯金
127a 円筒部
127b、227b 傾斜部
127c、327c 外端
127d 段差面側端
127e、327e 凹部
227f 長孔
327g 角型突出部
200 車体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8