特許第6965692号(P6965692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特許6965692溶融材料供給装置、および三次元造形装置
<>
  • 特許6965692-溶融材料供給装置、および三次元造形装置 図000002
  • 特許6965692-溶融材料供給装置、および三次元造形装置 図000003
  • 特許6965692-溶融材料供給装置、および三次元造形装置 図000004
  • 特許6965692-溶融材料供給装置、および三次元造形装置 図000005
  • 特許6965692-溶融材料供給装置、および三次元造形装置 図000006
  • 特許6965692-溶融材料供給装置、および三次元造形装置 図000007
  • 特許6965692-溶融材料供給装置、および三次元造形装置 図000008
  • 特許6965692-溶融材料供給装置、および三次元造形装置 図000009
  • 特許6965692-溶融材料供給装置、および三次元造形装置 図000010
  • 特許6965692-溶融材料供給装置、および三次元造形装置 図000011
  • 特許6965692-溶融材料供給装置、および三次元造形装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965692
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】溶融材料供給装置、および三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/321 20170101AFI20211028BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20211028BHJP
   B29C 64/30 20170101ALI20211028BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20211028BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20211028BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20211028BHJP
【FI】
   B29C64/321
   B29C64/295
   B29C64/30
   B29C64/393
   B33Y50/02
   B33Y30/00
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-208816(P2017-208816)
(22)【出願日】2017年10月30日
(65)【公開番号】特開2019-81265(P2019-81265A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯脇 康平
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 功一
(72)【発明者】
【氏名】水上 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中村 和英
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/038984(WO,A1)
【文献】 特開平05−345359(JP,A)
【文献】 特表2017−523934(JP,A)
【文献】 特開2015−168135(JP,A)
【文献】 特開2017−109320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B33Y 10/00、30/00
B22F 10/00、12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元造形装置に用いられる溶融材料供給装置であって、
材料を溶融させる溶融部と、
溶融された材料を射出するノズルと、
前記溶融部によって溶融された材料を前記ノズルに供給する流路と、
少なくとも一部が前記ノズル内に配され、前記ノズルを塞ぐことができる閉塞部材と、
前記閉塞部材を変位させて前記ノズルを開閉させる駆動部と、を備え、
前記閉塞部材と前記駆動部は、前記ノズルの開口である第1開口の端面を前記閉塞部材で塞ぐことができるように構成され
前記溶融部は、
溶融された材料を前記流路に流出させる流出路と、
前記流出路の入側端部の開口である第2開口と向かい合う向きに配された面に設けられ、前記第2開口に近づけつつ前記第2開口に対する角度位置を変えるように材料を搬送して、前記流出路に供給する溝部と、
前記溝部と向かい合う位置に配され、前記溝部内を搬送される材料を加熱する第1加熱部と、
を備える、溶融材料供給装置。
【請求項2】
三次元造形装置に用いられる溶融材料供給装置であって、
材料を溶融させる溶融部と、
溶融された材料を射出するノズルと、
前記溶融部によって溶融された材料を前記ノズルに供給する流路と、
少なくとも一部が前記ノズル内に配され、前記ノズルを塞ぐことができる閉塞部材と、
前記閉塞部材を変位させて前記ノズルを開閉させる駆動部と、
前記閉塞部材を加熱する第2加熱部と、を備え、
前記閉塞部材と前記駆動部は、前記ノズルの開口である第1開口の端面を前記閉塞部材で塞ぐことができるように構成される、溶融材料供給装置。
【請求項3】
三次元造形装置に用いられる溶融材料供給装置であって、
材料を溶融させる溶融部と、
溶融された材料を射出するノズルと、
前記溶融部によって溶融された材料を前記ノズルに供給する流路と、
少なくとも一部が前記ノズル内に配され、前記ノズルを塞ぐことができる閉塞部材と、
前記閉塞部材を変位させて前記ノズルを開閉させる駆動部と、を備え、
前記閉塞部材と前記駆動部は、前記ノズルの開口である第1開口の端面を前記閉塞部材で塞ぐことができるように構成され
前記流路は、
前記ノズルから、前記第1開口のある側とは逆の側に伸びる下流部分と、
前記下流部分に対して、90度未満の角度で接続されている上流部分と、を備え、
前記駆動部と前記閉塞部材は、前記上流部分を構成する壁部であって、前記第1開口とは逆の側に位置する壁部を貫通して、接続されている、溶融材料供給装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の溶融材料供給装置であって、
前記ノズルは、材料を搬送する方向について、下流に向かうにつれて内部の空間の断面形状が小さくなる第1部分流路を備え、
前記閉塞部材と前記駆動部は、前記第1部分流路内において、材料を搬送する方向について、前記閉塞部材の先端を変位させることができるように構成される、溶融材料供給装置。
【請求項5】
請求項4記載の溶融材料供給装置であって、
前記ノズルは、前記第1部分流路に対して下流側に、材料を搬送する方向について内部の空間の断面形状が一定である、第2部分流路を備え、
前記閉塞部材は、材料を搬送する方向について断面形状が一定である第1閉塞部を備え、
前記閉塞部材と前記駆動部は、前記第2部分流路に前記第1閉塞部を挿入して塞ぐことができるように構成される、溶融材料供給装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の溶融材料供給装置であって、
前記閉塞部材は、材料を搬送する方向について、下流に向かうにつれて断面形状が小さくなる第2閉塞部を備え、
前記閉塞部材と前記駆動部は、
前記ノズルの前記第1部分流路内において、材料を搬送する方向について、前記第2閉塞部を変位させることができ、かつ、
前記ノズルの前記第1部分流路を前記第2閉塞部で塞ぐことができるように構成される、溶融材料供給装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の溶融材料供給装置であって、さらに、
前記ノズルの前記第1開口を含む先端部を、材料を搬送する方向について、前記先端部よりも上流側に位置する胴部よりも低い温度とすることができる冷却部を備える、溶融材料供給装置。
【請求項8】
三次元形状を有する部材を造形する三次元造形装置であって、
請求項1から7のいずれか1項に記載の溶融材料供給装置を備える、三次元造形装置。
【請求項9】
三次元形状を有する部材を造形する三次元造形装置であって、
請求項4および5、ならびに請求項4に直接または間接に従属する請求項6および7のいずれか1項に記載の溶融材料供給装置と、
前記溶融材料供給装置から供給された材料を受け取る造形台と、
前記溶融材料供給装置と前記造形台の少なくとも一方を搬送する移動機構と、
前記溶融材料供給装置と、前記移動機構と、を制御する制御部と、備え、
前記制御部は、
前記溶融材料供給装置から外部に前記材料を供給する供給速度と、
前記移動機構による搬送の速度とを、同期させることができる、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶融材料供給装置、および三次元造形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元形状の物体を形成する方法として、熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling、FDM)がある。熱溶解積層法においては、熱可塑性樹脂製の固体のフィラメントを供給し、フィラメントの先端部分を軟化させつつ仮想的な平面上の所定の位置にその軟化された熱可塑性樹脂を配する。所定位置に配された熱可塑性樹脂は軟化されているため、隣接する位置にすでに配置されている熱可塑性樹脂製と接合される。そのような処理を仮想的な平面に垂直な方向について順に位置をずらして繰り返すことにより、三次元形状の物体が形成される。
【0003】
熱溶解積層法においては、ノズルから送出される熱可塑性樹脂のみが軟化され、フィラメントの他の部分は軟化されない。このため、ある領域における樹脂の配置が終了した場合には、フィラメントの供給を停止し、最後に熱可塑性樹脂を配置した地点からノズルを移動させることにより、最後の地点における熱可塑性樹脂の配置が完了する。その際、ノズル内において、軟化された熱可塑性樹脂であって、ノズル外においてすでに配置されている熱可塑性樹脂と連続している熱可塑性樹脂と、まだ十分に軟化されていない部分の熱可塑性樹脂(フィラメント)と、が切り離される。
【0004】
一方、発泡成形機の分野においては、以下のようなショートフィラーが提案されている(特許文献1)。このショートフィラーは、円筒状のフィラー筒部と、フィラー筒体の先端開口近傍に位置する開閉用ロッド頭部と、開閉用ロッド頭部に接続され、フィラー筒体内に位置し、駆動シリンダーのピストンによって駆動されるピストンロッドと、ピストンロッドを収容するフィラー筒部に対して斜めに接続されるビーズ送粒用通孔と、を備える。
【0005】
成形に際しては、ピストンロッドを後退させてフィラー筒体の先端開口を開口し、ビーズ送粒用通孔を介してキャビティへの原料ビーズの充填を行う。その際、後退させた開閉用ロッド頭部から圧縮空気を噴き出させて原料ビーズを金型キャビティ内に供給する。原料ビーズの充填が終了すると、ピストンロッドを再度前進させてフィラー筒体の先端開口を閉じる。開閉用ロッド頭部の側面に設けられた圧縮エアーを噴出するための開口部は、フィラー筒体の先端開口の内壁によって閉塞され、圧縮空気の供給が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−96534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
三次元形状の物体を形成する際に、あらかじめ溶融されており、熱溶解積層法に比べてより流動性および粘度が高い材料を使用しようとすると、ある部分の樹脂の配置が終了した際に、ノズル内の溶融材料と、ノズル外においてすでに配置されている溶融材料とが、適切に分離されないおそれがある。すなわち、両者の間に細長く繋がった樹脂部分が形成された後に、当該細長い部分のいずれかの部位において両者が切り離される。そのような場合には、最後に熱可塑性樹脂を配置した地点における熱可塑性樹脂の形状が、適切に制御されない。その結果、高精度な形状で三次元形状の物体を形成することができない。このような問題は、固体の原料ビーズを供給する技術を開示する特許文献1においても、考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
(1)本開示の一形態によれば、三次元造形装置に用いられる溶融材料供給装置が提供される。この溶融材料供給装置は:材料を溶融させる溶融部と;溶融された材料を射出するノズルと;前記溶融部によって溶融された材料を前記ノズルに供給する流路と;少なくとも一部が前記ノズル内に配され、前記ノズルを塞ぐことができる閉塞部材と;前記閉塞部材を変位させて前記ノズルを開閉させる駆動部と、を備える。前記閉塞部材と前記駆動部は、前記ノズルの開口である第1開口の端面を前記閉塞部材で塞ぐことができるように構成される。
このような態様とすれば、材料の配置が終了した際には、閉塞部材によって、ノズル外の材料と繋がった材料をノズル内に残すことなく、溶融材料の供給を終了することができる。このため、ノズル内に残った材料と、ノズル外においてすでに配置されている材料とが、細長く繋がった後に、分離する可能性が低い。よって、高精度な形状で三次元形状の物体を形成することができる。
【0010】
(2)上記形態の溶融材料供給装置であって、前記溶融部が:溶融された材料を前記流路に流出させる流出路と;前記流出路の入側端部の開口である第2開口と向かい合う向きに配された面に設けられ、前記第2開口に近づけつつ前記第2開口に対する角度位置を変えるように材料を搬送して、前記流出路に供給する溝部と;前記溝部と向かい合う位置に配され、前記溝部内を搬送される材料を加熱する第1加熱部と;を備える、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、回転する軸の円柱側面に材料を搬送する溝部が設けられている溶融材料供給装置に比べて、溶融材料供給装置の構成を小型化できる。
【0011】
(3)上記形態の溶融材料供給装置であって、前記ノズルは、材料を搬送する方向について、下流に向かうにつれて内部の空間の断面形状が小さくなる第1部分流路を備え、前記閉塞部材と前記駆動部は、前記第1部分流路内において、材料を搬送する方向について、前記閉塞部材の先端を変位させることができるように構成される、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、第1部分流路内において、閉塞部材の先端を変位させることにより、第1部分流路内における材料の流れの抵抗を変えることができる。その結果、ノズルからの単位時間当たりの材料の供給量を制御することができる。
【0012】
(4)上記形態の溶融材料供給装置であって、前記ノズルは、前記第1部分流路に対して下流側に、材料を搬送する方向について内部の空間の断面形状が一定である、第2部分流路を備え、前記閉塞部材は、材料を搬送する方向について断面形状が一定である第1閉塞部を備え、前記閉塞部材と前記駆動部は、前記第2部分流路に前記第1閉塞部を挿入して塞ぐことができるように構成される、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、材料の供給を停止する前には、閉塞部材の変位の速さに応じた吐出量の材料が、ノズルの第2部分流路から供給される。このため、ノズル外に供給された材料の尾端の形状が適切に制御される。
【0013】
(5)上記形態の溶融材料供給装置であって、前記閉塞部材は、材料を搬送する方向について、下流に向かうにつれて断面形状が小さくなる第2閉塞部を備え、前記閉塞部材と前記駆動部は、前記ノズルの前記第1部分流路内において、材料を搬送する方向について、前記第2閉塞部を変位させることができ、かつ、前記ノズルの前記第1部分流路を前記第2閉塞部で塞ぐことができるように構成される、態様とすることもできる。
このような構成とすれば、第1部分流路内において、第2閉塞部を流れの方向について変位させることにより、第1部分流路内の空間の断面積を変えることができる。その結果、溶融された材料の流れの抵抗を、定量的に制御することが容易である。
【0014】
(6)上記形態の溶融材料供給装置であって、さらに、前記閉塞部材を加熱する第2加熱部を備える、態様とすることもできる。
閉塞部材のために材料が流通する空間が狭くなっている部分においては、溶融された材料を流通させる際の抵抗が大きくなっている。しかし、上記の態様においては、流路内に位置する閉塞部材の周囲の材料が、第2加熱部によって加熱され、流動性を高められる。このため、閉塞部材のために材料が流通する空間が狭くなっている部分においても、材料の目詰まりが生じにくい。
【0015】
(7)上記形態の溶融材料供給装置であって、さらに、前記ノズルの前記第1開口を含む先端部を、材料を搬送する方向について、前記先端部よりも上流側に位置する胴部よりも低い温度とすることができる冷却部を備える、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、ノズルの先端部を冷却部で冷却することにより、ノズル内から押し出される材料の粘度を、制御することができる。
【0016】
(8)上記形態の溶融材料供給装置であって、前記流路は:前記ノズルから、前記第1開口のある側とは逆の側に伸びる下流部分と;前記下流部分に対して、90度未満の角度で接続されている上流部分と、を備え、前記駆動部と前記閉塞部材は、前記上流部分を構成する壁部であって、前記第1開口とは逆の側に位置する壁部を貫通して、接続されている、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、流路外に駆動部を配しつつ、駆動部と閉塞部材とを接続することができる。そして、流路の上流部分を、駆動部を避けるように配しつつ、上流部分と下流部分との接続部分における抵抗を、上流部分と下流部分とが90度に接続される態様に比べて、小さくすることができる。
【0017】
(9)本開示の他の形態によれば、三次元形状を有する部材を造形する三次元造形装置であって、上記形態の溶融材料供給装置を備える、三次元造形装置が提供される。
【0018】
(10)本開示の他の形態によれば、三次元形状を有する部材を造形する三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は:上記形態の溶融材料供給装置と;前記溶融材料供給装置から供給された材料を受け取る造形台と;前記溶融材料供給装置と前記造形台の少なくとも一方を搬送する移動機構と;前記溶融材料供給装置と、前記移動機構と、を制御する制御部と、備える。前記制御部は、前記溶融材料供給装置から外部に前記材料を供給する供給速度と、前記移動機構による搬送の速度とを、同期させることができる。
このような態様とすれば、溶融材料供給装置の搬送速度を変化させつつ、各位置に一定の量の材料を配することができる。
【0019】
上述した本開示の各形態の有する複数の構成要素はすべてが必須のものではなく、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、適宜、前記複数の構成要素の一部の構成要素について、その変更、削除、新たな他の構成要素との差し替え、限定内容の一部削除を行うことが可能である。また、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、上述した本開示の一形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部を上述した本開示の他の形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部と組み合わせて、本開示の独立した一形態とすることも可能である。
【0020】
なお、本開示は、溶融材料供給装置および三次元造形装置の制御方法、溶融材料供給方法および三次元造形方法、および、これらの方法を実現するためのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態における三次元造形装置100の構成を示す概略図である。
図2】スクリュー対面部50を示す概略平面図である。
図3】フラットスクリュー40の下面48側の構成を示す概略斜視図である。
図4】ノズル61の構造を示す断面図である。
図5】閉塞ピン72がノズル61を塞いだ状態を示す断面図である。
図6】閉塞ピン72の先端72tを、ノズル61の第1部分流路61tp内に配した状態を示す断面図である。
図7】三次元造形装置100のノズル61から吐出された熱可塑性樹脂によって三次元造形物OBが構成される状態を示す説明図である。
図8】造形台220の搬送速度Vmと、吐出ユニット110から供給される熱可塑性樹脂の供給速度Vrとを、時間Tに沿って示すグラフである。
図9】第2実施形態の三次元造形装置における閉塞ピン72Bの形状を示す図である。
図10】閉塞ピン72Bのテーパ部分72Btpを、ノズル61の第1部分流路61tp内に配した状態を示す断面図である。
図11】第3実施形態の三次元造形装置におけるノズル61Cおよび閉塞ピン72Cの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置100の構成を示す概略図である。図1には、互いに直交するX方向、Y方向、およびZ方向を示す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向である。Z方向は、重力方向とは反対の方向である。これらX方向、Y方向、およびZ方向を示す矢印は、他の図においても、図示される場合がある。
【0023】
三次元造形装置100は、材料として熱可塑性樹脂を使用して、三次元造形物を造形する装置である。三次元造形装置100は、吐出ユニット110と、造形ステージ部200と、制御部300と、を備える。
【0024】
吐出ユニット110は、制御部300に制御されて、造形ステージ部200に熱可塑性樹脂を供給する。吐出ユニット110は、材料供給部20と、溶融部30と、ヘッド部60と、を備える。
【0025】
材料供給部20は、溶融部30に熱可塑性を有する材料を供給する。材料供給部20は、ホッパー21と、連通路22とを備える。ホッパー21は、熱可塑性樹脂のペレットを貯留している。ホッパー21は、ホッパー21の下部に設けられた排出口を介して連通路22と接続されている。連通路22は、ホッパー21内の熱可塑性樹脂のペレットを溶融部30に供給する。
【0026】
ホッパー21に投入される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)等を使用可能である。これらの材料は、ペレットや粉末等の固体材料の状態で材料供給部20に投入される。また、ホッパー21に投入される熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック等が混入されていてもよい。
【0027】
溶融部30は、材料供給部20の連通路22から供給された熱可塑性樹脂を溶融させる。溶融部30は、溶融させた熱可塑性樹脂をヘッド部60に供給する。溶融部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、スクリュー対面部50と、を有する。
【0028】
図2は、スクリュー対面部50を示す概略平面図である。スクリュー対面部50は、略円板状の形状を備える(図1も参照)。スクリュー対面部50の外形において、円板の厚みは、円の直径よりも小さい。スクリュー対面部50は、複数の案内溝54と、流出路56と、加熱部58とを備える。
【0029】
流出路56は、略円板状のスクリュー対面部50の円の中心において、円板の中心軸方向に沿った向きに、スクリュー対面部50を貫通して設けられる。流出路56は、溶融された熱可塑性樹脂をヘッド部60内の流路65に流出させる。案内溝54は、略円板状のスクリュー対面部50の一方の面52に配される。案内溝54は、面52における流出路56の開口56oからスクリュー対面部50の円の外周に向かって弧を描くように伸びる溝である。溶融された熱可塑性樹脂が、複数の案内溝54によって流出路56の開口56oに導かれる。以下、スクリュー対面部50の案内溝54および開口56oが設けられる面52を、スクリュー対面部50の「上面52」とも呼ぶ。
【0030】
加熱部58は、スクリュー対面部50の溝部42と向かい合う部分における内部に配される(図1参照)。より具体的には、加熱部58は、流出路56を囲む位置に設けられる。加熱部58は、図示しない電源から電力を供給されて、発熱する。加熱部58の機能については、後に説明する。
【0031】
フラットスクリュー40は、略円板状の形状を備える(図1参照)。フラットスクリュー40の外形において、円板の厚みは、円の直径よりも小さい。フラットスクリュー40は、スクリュー対面部50の上面52と向かい合うように配される。フラットスクリュー40は、スクリュー対面部50の開口56oと向かい合う向きに配された面48に複数の溝部42を備える。以下、フラットスクリュー40の、スクリュー対面部50の開口56oと向かい合う向きに配された面48を、フラットスクリュー40の「下面48」とも呼ぶ。
【0032】
図3は、フラットスクリュー40の下面48側の構成を示す概略斜視図である。図3において、フラットスクリュー40の円板の中心軸をRXで示す。溝部42の一端46は、フラットスクリュー40の円の中心に位置し、スクリュー対面部50の流出路56の開口56oに接続されている(図1参照)。溝部42の一端46は、複数の溝部42において共有される。溝部42の他端44は、略円板状のフラットスクリュー40の外側面に設けられた開口である。溝部42のうち、溝部42の一端46と他端44を結ぶ部分は、フラットスクリュー40の下面48において、渦巻き状に配されている。図3に示す例では、フラットスクリュー40の下面48において、3条の溝部42が設けられている。フラットスクリュー40の下面48に設けられている溝部42は、スクリュー対面部50の上面52とともに、熱可塑性樹脂を搬送する搬送路を形成する。
【0033】
スクリューケース31(図1参照)は、スクリュー対面部50とともに、フラットスクリュー40を覆っている。スクリューケース31内には、材料供給部20の連通路22が配されている。材料供給部20の連通路22は、溝部42のフラットスクリュー40の外側面に設けられた開口である溝部42の他端44と接続されうる。
【0034】
駆動モーター32は、スクリューケース31を貫通して、フラットスクリュー40に接続されている。駆動モーター32は、略円板状のフラットスクリュー40を、スクリューケース31内において、円板の円の中心RXを中心として、回転させることができる。フラットスクリュー40の回転の中心軸RXの向きは、Z軸の向きと一致する。
【0035】
制御部300に制御されて、フラットスクリュー40が回転され、加熱部58が発熱すると、以下のように、熱可塑性樹脂が処理される(図1参照)。すなわち、ホッパー21から連通路22を介して供給された固形の熱可塑性樹脂は、フラットスクリュー40の外側面に設けられた他端44から溝部42に導入される。そして、熱可塑性樹脂は、フラットスクリュー40の回転とともに、溝部42によって、スクリュー対面部50の開口56oに近づきつつ開口56oに対する角度位置を変えるように搬送される。その間、溝部42内の熱可塑性樹脂は、スクリュー対面部50内の加熱部58によって加熱され、溶融する。溶融された熱可塑性樹脂(以下、「溶融材料」とも呼ぶ)は、案内溝54に導かれて、開口56oに供給される。その後、溶融材料は、流出路56からヘッド部60に供給される。
【0036】
なお、固体および溶融状態の材料が、溝部42内をスクリュー対面部50の流出路56の開口56oに向かって搬送されるのに対して、固体の材料の間に存在した空気などのガスは、溝部42の他端44から外部に排出される。
【0037】
ヘッド部60は、溶融部30から供給された熱可塑性樹脂を、造形ステージ部200に供給する(図1参照)。熱可塑性樹脂がヘッド部60から吐出される方向は、Z軸方向の−側の向きと一致する。ヘッド部60は、ノズル61と、流路65と、吐出制御機構70と、を有する。
【0038】
流路65は、溶融部30の流出路56と、ノズル61と、を接続する流路である(図1参照)。溶融部30で溶融された熱可塑性樹脂は、流路65を介してノズル61に供給される。流路65は、下流部分651と、上流部分652と、接続部分653とを備える。
【0039】
下流部分651は、ノズル61に接続されている。下流部分651は、ノズル61から、ノズル61の下流端の開口62のある側とは逆の側(Z軸方向+側)に伸びる部分流路である。上流部分652は、下流部分651に対して、45度の角度で接続されている部分流路である。接続部分653は、上流部分652に対して、45度の角度で接続されており、下流部分651と平行に(Z軸方向+側の向きに)延びる部分流路である。接続部分653は、溶融部30の流出路56に接続されている。
【0040】
ノズル61は、先端の開口である開口62から造形ステージ部200に向かって溶融された熱可塑性樹脂を吐出する。ノズル61は、内部に、熱可塑性樹脂を搬送する流路として、第1部分流路61tpと、第2部分流路61spとを備える。
【0041】
図4は、ノズル61の構造を示す断面図である。第1部分流路61tpは、熱可塑性樹脂の搬送方向Afの下流に向かうにつれて、内部の空間の断面形状が小さくなる、テーパ状(漏斗状)の形状を有する。第2部分流路61spは、第1部分流路61tpに対して下流側に配されており、第1部分流路61tpに接続されている。第2部分流路61spは、熱可塑性樹脂を搬送する方向Afについて内部の空間の断面形状が一定である。第2部分流路61spの下流端は、ノズル61の開口62である。開口62は、孔径Dnを有する円形である。また、第1部分流路61tpおよび第2部分流路61spのZ軸方向に垂直な断面における形状は、円形である。
【0042】
溶融された熱可塑性樹脂は、ガラス転移点以上に加熱されて溶融した状態でノズル61から射出される。例えば、ABS樹脂のガラス転移点は、約120℃である。熱可塑性樹脂としてABS樹脂を採用する場合には、ノズル61からの射出時に約200℃であるように、ABS樹脂が加熱される。
【0043】
吐出制御機構70は、ノズル61からの熱可塑性樹脂の吐出の開始および停止、ならびに吐出量の制御を行うための機構である(図1参照)。吐出制御機構70は、閉塞ピン72と、駆動部73と、接続ロッド74と、を備える。
【0044】
図5は、閉塞ピン72がノズル61を塞いだ状態を示す断面図である。閉塞ピン72は、一部が流路65内およびノズル61内に配され、ノズル61を塞ぐことができる部材である(図1も参照)。閉塞ピン72は、略円柱形状を有する。閉塞ピン72の外径は、ノズル61の開口62の孔径Dn(第2部分流路61spの内径に等しい)よりもわずかに小さい。閉塞ピン72は、上流部分652を構成する壁部であって、ノズル61の開口62とは逆の側(Z軸方向+側)に位置する壁部652wを貫通している(図1も参照)。
【0045】
流路65の上流部分652と下流部分651とが、45度の角度で接続されており、流路65の接続部分653と上流部分652とが逆の方向に45度の角度で接続されているために(図1参照)、閉塞ピン72を上記のように配することができる。このような構成とすることにより、流路65外に駆動部73を配しつつ、駆動部73と流路65内の閉塞ピン72とを接続することができる。そして、流路65の上流部分652と下流部分651の接続角度、および接続部分653と上流部分652の接続角度が45度であるために、以下のような技術的効果が得られる。すなわち、流路65の上流部分652を、駆動部73を避けるように配しつつ、上流部分652と下流部分651との接続部分における抵抗を、上流部分(652)と下流部分(651)とが90度に接続される態様に比べて、小さくすることができる。
【0046】
駆動部73は、閉塞ピン72を変位させてノズル61を開閉させる。接続ロッド74は、閉塞ピン72のうち流路65外に位置する部分と、駆動部73と、を接続する部材である。図1においては、技術の理解を容易にするため、駆動部73と接続ロッド74を離して表示している。閉塞ピン72は、駆動部73によって軸方向に移動されて、ノズル61の開口62の端面を閉塞ピン72で塞ぐことができる。より具体的には、ノズル61の第2部分流路61spが、開口62に至るまで、閉塞ピン72の先端部分72spで占められ、塞がれる。
【0047】
このような構成とすることにより、造形ステージ部200上のある部分への熱可塑性樹脂の配置が終了した際には、閉塞ピン72でノズル61の第2部分流路61sp内を占有させることによって、ノズル61外の熱可塑性樹脂と繋がった熱可塑性樹脂をノズル61の第2部分流路61sp内に残すことなく、熱可塑性樹脂の供給を終了することができる。このため、ノズル61内に残った熱可塑性樹脂と、ノズル61外においてすでに配置されている熱可塑性樹脂とが、細長く繋がった後に分離する、いわゆる「糸引き」が起こる可能性が低い。よって、三次元形状の物体を形成する際に、熱可塑性樹脂の供給を一旦停止して、他の場所から再開する場合にも、高精度な形状で三次元形状の物体を形成することができる。
【0048】
また、熱可塑性樹脂の供給を停止する直前の時間区間においては、閉塞ピン72の先端部分72spの変位の速さに応じた吐出量の熱可塑性樹脂が、ノズル61の第2部分流路61spから押し出される。より具体的には、単位時間あたり、[ノズル61の第2部分流路61spの断面積]×[閉塞ピン72の先端部分72spの移動速度]に等しい体積の熱可塑性樹脂が、ノズル61の開口62から押し出される。このため、ノズル外に供給された熱可塑性樹脂の尾端の形状および大きさを適切に制御できる。
【0049】
図6は、閉塞ピン72の先端72tを、ノズル61の第1部分流路61tp内に配した状態を示す断面図である。駆動部73は、ノズル61内のテーパー状の部分である第1部分流路61tp内において、熱可塑性樹脂を搬送する方向Af(Z軸方向)に沿って、閉塞ピン72の先端72tを変位させることができる。
【0050】
テーパー状の部分である第1部分流路61tp内において、閉塞ピン72の先端72tを変位させることにより、第1部分流路61tp内における溶融材料の流れの抵抗を変えることができる。その結果、あらかじめ、第1部分流路61tp内における閉塞ピン72の先端72tの位置と、ノズル61からの単位時間当たりの溶融材料の供給量との関係を把握しておき、先端72tの位置を適切に設定することにより、ノズル61からの単位時間当たりの溶融材料の供給量を制御することができる。
【0051】
造形ステージ部200は、ヘッド部60のノズル61と向かい合う位置に配される(図1参照)。造形ステージ部200は、ノズル61から吐出された熱可塑性樹脂を受け止める。造形ステージ部200は、テーブル210と、テーブル210上に載置された造形台220と、造形台220を変位させる移動機構230と、を備える。
【0052】
造形台220は、ノズル61から吐出された熱可塑性樹脂を受け止める平板状の構造である。移動機構230は、3つのモーターによって、造形台220をX方向、Y方向、Z方向に移動させることができる3軸ポジショナーによって構成される。図1において、造形台220を移動させるモーターを符号Mで示す。造形ステージ部200は、制御部300の制御下において、ノズル61と造形台220との相対位置を変更することができる。
【0053】
制御部300は、吐出ユニット110と、造形ステージ部200と、を制御する(図1参照)。制御部300は、CPUなどのプロセッサーと、メインメモリーと、不揮発性メモリーとを含むコンピュータによって実現可能である。制御部300内の不揮発性メモリーには、三次元造形装置100を制御するためのコンピュータプログラムが格納されている。不揮発性メモリーに記憶されたコンピュータプログラムをメインメモリーにロードして実行することによって、プロセッサーは、吐出ユニット110と、造形ステージ部200と、を制御して、三次元造形物を造形する。
【0054】
図7は、三次元造形装置100のノズル61から吐出された熱可塑性樹脂によって三次元造形物OBが構成される状態を示す説明図である。制御部300は、造形データに応じて、吐出ユニット110と造形ステージ部200とを制御して、三次元造形物OBを造形する。具体的には、制御部300は、造形ステージ部200の造形台220を、X方向およびY方向に移動させつつ、ノズル61から熱可塑性樹脂を吐出することにより、造形台220上のXY座標の所定の位置に熱可塑性樹脂を配する。一つの仮想的なXY平面上に熱可塑性樹脂を配する処理を完了すると、制御部300は、造形ステージ部200の造形台220を、所定量だけZ軸方向−側の向きに移動させ、再び、仮想的なXY平面上に熱可塑性樹脂を配する処理を行う。その際、新たに配される熱可塑性樹脂は、それまでに配されている熱可塑性樹脂と接合する。そのような処理を繰り返すことにより、熱可塑性樹脂が三次元形状に配される。そのように配された熱可塑性樹脂が硬化することによって、所望の形状を有する三次元造形物OBが形成される。
【0055】
図8は、造形台220の搬送速度Vmと、吐出ユニット110から供給される熱可塑性樹脂の供給速度Vrとを時間Tに沿って示すグラフである。グラフGvmは、造形台220の搬送速度Vmの変化を示す。搬送速度Vmは、X方向の搬送の速さの2乗とY方向の搬送の速さの2乗の和の平方根によって得られる。グラフGvrは、吐出ユニット110から供給される熱可塑性樹脂の供給速度Vrを示す。熱可塑性樹脂の供給速度Vrは、単位時間当たりの熱可塑性樹脂の供給量(体積)である。
【0056】
制御部300は、吐出ユニット110から熱可塑性樹脂を供給する供給速度Vrと、移動機構230による造形台220の搬送速度Vmとを、同期させることができる。たとえば、時刻T2から時刻T3にかけて、造形台220の搬送速度Vmをそれまでよりも30%低減させるときには、制御部300は、熱可塑性樹脂の供給速度Vrも同様に30%低減させる。時刻T4から時刻T5にかけて、造形台220の搬送速度Vmをそれまでよりも増加させて、時刻T1からT2の搬送速度Vmに戻すときには、制御部300は、熱可塑性樹脂の供給速度Vrも同様に増加させる。また、制御部300は、熱可塑性樹脂の供給速度Vrの変化率と、造形台220の搬送速度Vmの変化率とを、一致させる。熱可塑性樹脂の供給速度Vrが一定のときには、造形台220の搬送速度Vmも一定である(時刻T1〜T2,T3〜T4,T5〜T6参照)。
【0057】
なお、熱可塑性樹脂の供給速度と装置の搬送速度とを、「同期させる」とは、ある時間区間についての、時間軸方向に沿って表された熱可塑性樹脂の供給速度の変化と、時間軸方向に沿って表された装置の搬送速度の変化とが、少なくとも一方の拡大または縮小によって一致させられるように、熱可塑性樹脂の供給速度と、装置の搬送速度とを、制御することをいう。
【0058】
このような構成とすることにより、造形台220の搬送速度、言い換えれば、熱可塑性樹脂の配置の速度を変化させつつ、各位置に一定の量の熱可塑性樹脂を配することができる。たとえば、直線状に熱可塑性樹脂を配する箇所においては、制御部300は、ある速度V1で造形台220を搬送しつつ、熱可塑性樹脂を配置する(時刻T1〜T2,T5〜T6参照)。これに対して、ある程度以上大きい曲率で曲がった配置で熱可塑性樹脂を配する箇所においては、制御部300は、V1よりも30%低い速度V2で造形台220を搬送しつつ、熱可塑性樹脂を配置する(時刻T3〜T4参照)。その際、制御部300は、熱可塑性樹脂の供給速度Vrも30%低減させる。このような処理を行うことにより、各位置における材料の配置の精度を向上させつつ、各位置に一定の量の熱可塑性樹脂を配することができる。
【0059】
本実施形態において溶融された熱可塑性樹脂をヘッド部60に供給する吐出ユニット110を、「溶融材料供給装置」とも呼ぶ。ノズル61の下流端の開口62を「第1開口」とも呼ぶ。流出路56の開口56oを、「第2開口」とも呼ぶ。閉塞ピン72を、「閉塞部材」とも呼ぶ。加熱部58を、「第1加熱部」とも呼ぶ。第2部分流路61spに挿入されて第2部分流路61spを塞ぐ閉塞ピン72の先端部分72spを、「第1閉塞部」とも呼ぶ。
【0060】
2.第2実施形態:
図9は、第2実施形態の三次元造形装置における閉塞ピン72Bの形状を示す図である。第2実施形態の三次元造形装置の閉塞ピン72B以外の構成は、第1実施形態の三次元造形装置100と同じである。閉塞ピン72Bは、テーパ部分72Btpと、先端部分72Bspと、を有する。
【0061】
テーパ部分72Btpは、熱可塑性樹脂の搬送方向Afの下流に向かうにつれて断面形状が小さくなる、テーパ状(円錐側面状)の外形を有する。テーパ部分72Btpのテーパの角度は、ノズル61の流路の第1部分流路61tpのテーパの角度と一致する。閉塞ピン72Bの先端部分72Bspは、テーパ部分72Btpに対して下流側に配されている。先端部分72Bspは、熱可塑性樹脂を搬送する方向Afについて断面形状が一定である。閉塞ピン72の先端部分72Bspの外径は、ノズル61の開口62の孔径Dnよりもわずかに小さい。
【0062】
ノズル61内において、閉塞ピン72Bを開口62に向かって押し出すことによって、ノズル61の第2部分流路61spが、開口62に至るまで、閉塞ピン72Bの先端部分72Bspで占められ、塞がれる。閉塞ピン72Bの先端72Btの面の位置は、開口62が規定する面と一致する。また、ノズル61の第1部分流路61tpのうち、下流側の一部は、閉塞ピン72Bのテーパ部分72Btpで占められ、塞がれる。このような構成とすることにより、ノズル61内に残った熱可塑性樹脂と、ノズル61外においてすでに配置されている熱可塑性樹脂とが、細長く繋がった後に分離する、いわゆる「糸引き」が起こる可能性を低くすることができる。
【0063】
図10は、閉塞ピン72Bのテーパ部分72Btpを、ノズル61の第1部分流路61tp内に配した状態を示す断面図である。駆動部73は、ノズル61内のテーパー状の部分である第1部分流路61tpにおいて、熱可塑性樹脂を搬送する方向Af(Z軸方向−側の向きと等しい)に沿って、閉塞ピン72を変位させることができる。
【0064】
テーパー状の部分である第1部分流路61tp内において、閉塞ピン72のテーパ部分72Btpを変位させることにより、第1部分流路61tp内におけるテーパ部分72Btpまわりの流路の環状の断面の大きさ(断面積)を、最大値(閉塞ピン72を開口62から最も遠ざけたとき)から0に至るまで変化させることができる。その結果、第1部分流路61tp内における溶融材料の流れの抵抗を、容易に定量的に制御することができる。よって、そのような処理によって、ノズル61からの単位時間当たりの溶融材料の供給量を容易に制御することができる。
【0065】
本実施形態における閉塞ピン72Bのテーパ部分72Btpを、「第2閉塞部」とも呼ぶ。
【0066】
3.第3実施形態:
図11は、第3実施形態の三次元造形装置におけるノズル61Cおよび閉塞ピン72Cの構造を示す断面図である。第3実施形態の三次元造形装置のノズル61Cおよび閉塞ピン72C以外の構成は、第2実施形態の三次元造形装置(図9および図10参照)と同じである。
【0067】
閉塞ピン72Cは、ノズル61内に配される部分の内部に、加熱部75を備える。加熱部75は、閉塞ピン72Cのうち、常にノズル61外に位置する部分(図1参照)には配されていない。加熱部75は、図示しない電源に接続されている電気回路の一部である。加熱部75は、電源から電力を供給されることにより、電気抵抗により発熱する。
【0068】
閉塞ピン72Cのために熱可塑性樹脂が流通する空間が狭くなる流路の第1部分流路61tpにおいては、溶融された熱可塑性樹脂を流通させる際の抵抗が大きくなる。また、閉塞ピンが加熱部を備えない態様においては、熱可塑性樹脂が閉塞ピンに熱を奪われるために、熱可塑性樹脂の流動性が低下する可能性もある。しかし、上記のような構成とすれば、流路内に位置する閉塞ピン72Cの周囲の熱可塑性樹脂が、加熱部75によって加熱され、流動性を高められる。このため、閉塞ピン72Cのために熱可塑性樹脂が流通する空間が狭くなっている部分においても、熱可塑性樹脂の目詰まりが生じにくい。
【0069】
ノズル61Cは、流路の第1部分流路61tpの第2部分流路61spとの接続部位を囲む位置に、冷却部67を備える。冷却部67は、図示しない放熱器との間で冷却媒体を流通させることにより、ノズル61の先端部61Ctを、先端部61Ctよりも上流側に位置する胴部61Cbよりも相対的に低い温度とすることができる。なお、ノズル61の先端部61Ctは、開口62を含むノズル61の一部である。ノズル61の胴部61Cbは、熱可塑性樹脂を搬送する方向Afについて、先端部61Ctよりも上流側に位置する部分である。
【0070】
このような構成とすることにより、ノズル61Cの先端部61Ctを冷却部67で冷却して、ノズル61の先端部61Ct内の熱可塑性樹脂の温度を、制御することができる。その結果、ノズル61内から押し出される熱可塑性樹脂の粘度やノズル61C内面への粘着性を、制御することができる。このため、造形ステージ部200上のある部分への熱可塑性樹脂の配置が終了した際に、ノズル61C内に粘着した熱可塑性樹脂と、ノズル61外においてすでに配置されている熱可塑性樹脂とが、細長く繋がった後に、分離する事態を、効果的に防止することができる。よって、熱可塑性樹脂の尾端の形状をより高精度に制御することができる。
【0071】
本実施形態における加熱部75を、「第2加熱部」とも呼ぶ。
【0072】
4.他の形態:
(1)他の形態1:
上記実施形態においては、三次元形状を有する部材を造形するための材料として、熱可塑性樹脂が使用される。しかし、三次元形状を有する部材を造形するための材料は、熱硬化性樹脂とすることもでき、金属とすることもできる。すなわち、少なくとも一部を溶融することによって、三次元形状を有する部材を造形するために好適な流動性および粘性を持たせることができる材料であれば、任意の材料を採用することができる。
【0073】
上記実施形態においては、ノズル61を構成する部材と、流路65を構成する部材とは、別の部材である(図1参照)。しかし、溶融された材料を外部に供給するノズル61を構成する部材と、流路65を構成する部材とは、一体成形されてもよい。そのような態様においては、ノズルからの溶融材料の吐出方向と同じ向きに、ノズルの開口に向かって伸びる部分流路を、流路のうちの「下流部分」として把握することができる。
【0074】
上記実施形態においては、ノズルからの材料の供給の方向Afは、重力方向(Z軸方向−側の向き)と一致している(図4図6図9図11参照)。しかし、ノズルからの材料の供給の方向は、上方や水平方向など、他の方向であってもよい。
【0075】
(2)他の形態2:
上記実施形態においては、溶融部30は、フラットスクリュー40を備える(図1図3参照)。しかし、材料を溶融させる溶融部は、フラットスクリューを備えない態様とすることもできる。たとえば、溶融部は、回転する軸の円柱側面に材料を搬送する溝部が設けられている態様とすることもできる。
【0076】
上記実施形態において、加熱部58は、電気回路の一部であって、その電気抵抗により発熱する(図1参照)。しかし、材料を加熱する第1加熱部は、熱を伝える媒体としての流体を流通させて閉塞部材を加熱する装置や、インダクションヒーターなど、他の態様とすることもできる。
【0077】
(3)他の形態3:
上記実施形態では、ノズル61内の流路は、下流に向かうにつれて内部の空間の円形の断面形状が小さくなる第1部分流路61tpを有する(図4図6図9図11)。しかし、ノズル内の流路は、第1部分流路、第2部分流路を含め、(i)四角形や六角形などの多角形、(ii)楕円または長円、(iii)星形など内部に向かって凸の部分を有する形状など、円以外の断面形状を有するように構成することもできる。また、ノズル内の流路には、流路の断面形状によらず、下流に向かうにつれて内部の空間の断面形状が小さくなる流路部分を設けてもよいし、そのような部分を設けず、内部の空間の流路形状が一定であるようにノズル内の流路を設けることもできる。また、多段状に内部の空間の流路形状が変わる流路を設けることもできる。
【0078】
また、上記実施形態においては、閉塞ピン72,72B,72Cは、材料の搬送方向Afに沿って動かされる(図4図6、ならびに図9図10参照)。しかし、ノズルを塞ぐ閉塞部材は、材料を搬送する方向について、異なる位置をとりうるように構成されればよい。すなわち、材料の搬送方向とは異なる方向に動かされる結果、材料を搬送する方向について評価した場合に、異なる位置をとりうるように、構成されてもよい。
【0079】
(4)他の形態4:
上記実施形態においては、ノズル61は、先端に材料を搬送する方向Afについて内部の空間の断面形状が一定である第2部分流路61spを備える(図4図6図9図11)。しかし、ノズルは、流路の先端部分に内部の空間の断面形状が一定である第2部分流路を備えない態様とすることもできる。すなわち、下流に向かうにつれて内部の空間の円形の断面形状が小さくなる流路部分が先端の開口に至っていてもよい。また、下流に向かうにつれて内部の空間の円形の断面形状が大きくなる流路部分が、先端の開口に至っていてもよい。
【0080】
また、上記第2および第3実施形態においては、閉塞ピン72の先端部分72spは、その変位の方向(ノズル61内の材料の搬送方向Afと同じ)について、第2部分流路61spと略同じ寸法を有する。しかし、閉塞部材の第1閉塞部は、第2部分流路以上の長さを有する態様とすることもできる。すなわち、ノズルの第2部分流路が、開口に至るまで、閉塞部材の第1閉塞部で占められるように、閉塞部材の第1閉塞部の形状および駆動部による変位量が確保されていればよい。
【0081】
(5)他の形態5:
上記第1実施形態においては、閉塞ピン72は円柱状であり、第2および第3実施形態においては径の異なる二つの部分がテーパ状の部分(テーパ部分72Btp,72Ctp)で結ばれている形状を有する(図4図6図9図11)。しかし、閉塞部材は他の形状とすることもできる。たとえば、ノズルの第2部分流路に挿入される部分以外の部分に、材料の流れを制御するための形状(たとえば、羽状の部分)を備えていてもよい。
【0082】
(6)他の形態6:
上記第3実施形態において、加熱部75は、電気回路の一部であって、その電気抵抗により発熱する(図11参照)。しかし、閉塞部材を加熱する第2加熱部は、熱を伝える媒体としての流体を流通させて閉塞部材を加熱する態様や、インダクションヒーターなど、他の態様とすることもできる。
【0083】
(7)他の形態7:
上記第3実施形態において、冷却部67は、熱を伝える媒体としての流体を流通させてノズルを冷却する(図11参照)。しかし、ノズルの先端部を冷却する冷却部は、放熱フィンを備え放熱フィンから熱を放散する態様など、他の態様とすることもできる。
【0084】
(8)他の形態8:
上記実施形態においては、流路65は、それぞれ接続部分において45度ずつ異なる向きに接続される下流部分651と、上流部分652と、接続部分653とを備える。しかし、材料をノズルに供給する流路は、接続部分653を備えない態様とすることもできる。また、それぞれ接続部分において45度ずつ異なる向きに接続される下流部分651と、上流部分652と、接続部分653以外の部分を有していてもよい。さらに、下流部分と、上流部分とは、60度、90度など、45度以外の角度で接続されていてもよい。ただし、材料を効率的に供給するためには、隣接する流路部分の接続角度は、90度未満であることが好ましく、60度以下であることがより好ましく、45度以下であることがさらに好ましい。
【0085】
また、材料をノズルに供給する流路は、曲線部分を備えていてもよい。そして、たとえば、伸縮でき、かつ、伸縮のための駆動力を生じさせることができる部材など、閉塞部材を変位させる機構を、材料をノズルに供給する流路内に設けることもできる。
【0086】
(9)他の形態9:
上記実施形態では、三次元造形装置100として、技術内容を説明した。しかし、溶融材料供給装置としての吐出ユニット110は、平面上の所望の位置に材料を供給する装置に適用することもでき、直線状に材料を供給する装置に適用することもできる。
【0087】
(10)他の形態10:
上記実施形態においては、ノズル61の位置は固定されており、造形台220が移動する(図1図7参照)。しかし、造形台を固定しておき、3次元空間内においてヘッドを動かして、三次元形状を有する部材を造形する態様とすることもできる。また、3次元空間内における3つの座標軸のうちの一部の座標軸についての変位をヘッドを動かすことによって実現し、他の一部の座標軸についての変位を造形台を動かすことによって実現してもよい。さらに、ヘッドと造形台は、同じ方向(座標軸)についてそれぞれ独立に変位できるように構成してもよい。
【0088】
(11)他の形態11:
本開示は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
20…材料供給部;21…ホッパー;22…連通路;30…溶融部;31…スクリューケース;32…駆動モーター;40…フラットスクリュー;42…溝部;44…溝部42の他端;46…溝部42の一端;48…フラットスクリュー40の下面;50…スクリュー対面部;52…スクリュー対面部50の上面;54…案内溝;56…流出路;56o…開口;58…加熱部;60…ヘッド部;61,61C…ノズル;61Cb…ノズル61Cの胴部;61Ct…ノズル61Cの先端部;61sp…第2部分流路;61tp…第1部分流路;62…開口;65…流路;67…冷却部;70…吐出制御機構;72,72B,72C…閉塞ピン;72Bsp…閉塞ピン72Bの先端部分;72Bt…閉塞ピン72Bの先端;72Btp…閉塞ピン72Bのテーパ部分;72sp…閉塞ピン72の先端部分;72t…閉塞ピン72の先端;73…駆動部;74…接続ロッド;75…加熱部;100…三次元造形装置;110…吐出ユニット;200…造形ステージ部;210…テーブル;220…造形台;230…移動機構;300…制御部;651…流路65の下流部分;652…流路65の上流部分;653…流路65の接続部分;Af…材料の搬送方向;Dn…孔径;Gvm…造形台220の搬送速度Vmを表すグラフ;Gvr…材料の供給速度Vrを表すグラフ;M…モーター;OB…三次元造形物;RX…中心軸;T1〜T6…時刻;Vm…造形台220の搬送速度;Vr…材料の供給速度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11