(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965711
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】車体下部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20211028BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
B62D25/20 N
B60K11/04 H
B62D25/20 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-236361(P2017-236361)
(22)【出願日】2017年12月8日
(65)【公開番号】特開2019-104273(P2019-104273A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 太輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳史
【審査官】
久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−195176(JP,A)
【文献】
特開2008−265399(JP,A)
【文献】
特開2014−198507(JP,A)
【文献】
実開昭61−26988(JP,U)
【文献】
特開平9−88584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08,
B62D 25/14−29/04
B60K 11/04,
F28F 17/00,
F01P 3/18,
B60R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体下部に配置されたフレーム部材と、
前記フレーム部材の上部に配置されると共に、液体を排出可能な液体排出部が前記フレーム部材の一側面よりも突出して設けられた液体貯留体と、
前記フレーム部材の下部に設けられると共に、少なくとも前記フレーム部材の前記一側面から突出する突出部及び、該突出部の突出端から上方に斜めに屈曲する傾斜部を含み、前記突出部に複数の貫通孔が形成されたプレート部材と、
前記突出部及び前記傾斜部の上面から上方に突出すると共に、前記複数の貫通孔のうち、前記液体排出部の下方に位置する第1の貫通孔を挟んで対向配置されており、前記傾斜部の上面と前記フレーム部材の前記一側面とにより前記第1の貫通孔の周囲を囲って上方に開口する液体受容部を区画する一対のリブと、を備える
ことを特徴とする車体下部構造。
【請求項2】
前記フレーム部材が、車体幅方向に延びると共に、前記一側面としての前壁部と、該前壁部と対向する後壁部と、前記前壁部及び前記後壁部の上端縁を繋ぐ上壁部とを含んで下方に開口する断面U字状に形成されており、
前記プレート部材が、前記突出部を含んで前記上壁部よりも車体前後方向に長く延びると共に、その上面に前記前壁部及び前記後壁部の下端縁が接合されるフランジ部を有し、
前記リブが、車体前後方向に延びると共に、その後端縁を前記前壁部に接合されている
請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項3】
前記フレーム部材が車体幅方向に延びるクロスメンバであり、前記プレート部材がスキッドガードである
請求項2に記載の車体下部構造。
【請求項4】
前記液体貯留体がラジエータであり、前記液体排出部が、前記ラジエータの底部側から突出する筒状のドレン配管と、該ドレン配管を閉塞可能なドレンコックとを含む
請求項1から3の何れか一項に記載の車体下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体下部構造に関し、特に、スキッドガードを備える車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車体下部構造として、例えば特許文献1には、車体前端側の下部を車体幅方向に延びるクロスメンバの下面にスキッドガードを取り付けた構造が開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5548786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の車体下部構造では、スキッドガードの上方に位置するクロスメンバ上面にラジエータが載置されている。このため、例えば、ラジエータから冷却水が漏出したり、或は、ラジエータ下部のドレンコックから冷却水を抜いたりする場合には、スキッドガードの上面に冷却水が落下することがある。
【0005】
この結果、例えば、スキッドガードに複数の水抜き孔が穿設されている場合には、冷却水が何れの水抜き孔から排出されるか不明であり、作業者の意図しない水抜き孔から冷却水が排出されてしまう虞がある。
【0006】
本開示の技術は、冷却水(液体)を複数の水抜き孔のうち特定の水抜き孔から排出させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術は、車体下部に配置されたフレーム部材と、前記フレーム部材の上部に配置されると共に、液体を排出可能な液体排出部が前記フレーム部材の一側面よりも突出して設けられた液体貯留体と、前記フレーム部材の下部に設けられると共に、少なくとも前記フレーム部材の前記一側面から突出する突出部及び、該突出部の突出端から上方に斜めに屈曲する傾斜部を含み、前記突出部に複数の貫通孔が形成されたプレート部材と、前記突出部及び前記傾斜部の上面から上方に突出すると共に、前記複数の貫通孔のうち、前記液体排出部の下方に位置する第1の貫通孔を挟んで対向配置されており、前記傾斜部の上面と前記フレーム部材の前記一側面とにより前記第1の貫通孔の周囲を囲って上方に開口する液体受容部を区画する一対のリブと、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記フレーム部材が、車体幅方向に延びると共に、前記一側面としての前壁部と、該前壁部と対向する後壁部と、前記前壁部及び前記後壁部の上端縁を繋ぐ上壁部とを含んで下方に開口する断面U字状に形成されており、前記プレート部材が、前記突出部を含んで前記上壁部よりも車体前後方向に長く延びると共に、その上面に前記前壁部及び前記後壁部の下端縁が接合されるフランジ部を有し、前記リブが、車体前後方向に延びると共に、その後端縁を前記前壁部に接合されていることが好ましい。
【0009】
また、前記フレーム部材が車体幅方向に延びるクロスメンバであり、前記プレート部材がスキッドガードであってもよい。
【0010】
また、前記液体貯留体がラジエータであり、前記液体排出部が、前記ラジエータの底部側から突出する筒状のドレン配管と、該ドレン配管を閉塞可能なドレンコックとを含むものでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の技術によれば、冷却水(液体)を複数の水抜き孔のうち特定の水抜き孔から排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る車体下部構造を示す模式的な斜視図である。
【
図2】他の実施形態に係る車体下部構造を示す模式的な斜視図である。
【
図3】他の実施形態に係る車体下部構造を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係る車体下部構造について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0014】
図1は、本実施形態に係る車体下部構造10を示す模式的な斜視図である。同図に示すように、車体下部構造10は、車体前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ11,12と、サイドメンバ11,12の車体前端側の下方を車体幅方向に延びるクロスメンバ13(フレーム部材の一例)と、クロスメンバ13をサイドメンバ11,12に支持する左右一対のブラケット14,15と、スキッドガード20(プレート部材の一例)とを備えている。
【0015】
左右のサイドメンバ11,12は、車体幅方向内側に開口する断面略U字状に形成されている。各サイドメンバ11,12は、互いに開口側を対向させた状態で車体前後方向に延設されている。サイドメンバ11,12の下面には、車体下方向に延びるブラケット14,15の上端縁が溶接等により接合されている。
【0016】
左右のブラケット14,15は、互いに車体前後方向に対向する前板部14A,15A及び後板部14B,15Bと、これらの間に車体前後方向に架け渡された横板部14C,15Cとを備えている。横板部14C,15Cは、その前端縁を前板部14A,15Aの後面に、その後端縁を後板部14B,15Cの前面にそれぞれ溶接等で接合することにより固定されている。横板部14C,15Cの車体上下方向の長さは、前板部14A,15A及び、後板部14B,15Bの車体上下方向の長さよりも短く形成されている。
【0017】
具体的には、横板部14C,15Cの下端縁が、前板部14A,15A及び、後板部14B,15Bの下端縁よりも上方に位置するように構成されている。すなわち、ブラケット14,15の下端部には、横板部14C,15Cの下端縁と、前後板部14A,15A,14B,15Bの対向面とにより区画されて車体下方に開口する略U字状の凹部が形成されている。ブラケット14,15の各凹部は、主としてクロスメンバ13の支持部として機能する他、何れも不図示のサスペンション装置のロアアームの支持部として兼用することもできる。
【0018】
クロスメンバ13は、下方に開口する断面略U字状に形成されており、前壁部13Aと、上壁部13Bと、後壁部13Cとを有する。クロスメンバ13は、その車体幅方向の左右両端を各ブラケット14,15の下端に形成された凹部に固定されている。具体的には、クロスメンバ13は、上壁部13Bの左右両端を横板部14C,15Cの下端に、前壁部13Aの左右両端を前板部14A,15Aの後面に、後壁部13Cの左右両端を後板部14B,15Bの前面に、それぞれ溶接等で接合することにより固定されている。このように、ブラケット14,15の下端部によってクロスメンバ13の左右両端を前後から挟み込むように固定することで、車体前後方向の衝撃に対するクロスメンバ13の支持強度が効果的に確保されるようになっている。
【0019】
クロスメンバ13の上壁部13Bには、左右一対のステイ17,18等を介してラジエータ30(液体貯留体の一例)が支持されている。ラジエータ30は、複数のフィン31及びチューブ32を含むコア部33と、アッパタンク34Aと、ロアタンク34Bとを備えている。また、ロアタンク34Bの車体幅方向右側の端部には、ドレン装置35(液体排出部の一例)が設けられている。ドレン装置35は、主として、円筒状のドレン配管36と、該ドレン配管36を閉塞可能なドレンコック37とを有する。ドレンコック37を緩めると、ラジエータ30(及び、不図示のエンジン冷却水回路)内の冷却水がドレン配管36を介して排出されるようになっている。
【0020】
スキッドガード20は、例えば金属板等をプレス成形したもので、フランジ部21と、ガード部22と、複数のリブ23,24,25とを備えている。
【0021】
フランジ部21は、その平面が略水平方向となるように車体幅方向に延設されている。フランジ部21の車体幅方向の長さは、少なくともラジエータ30の車体幅方向の長さよりも長く形成されている。また、フランジ部21の車体前後方向の長さは、クロスメンバ13(上壁部13B)の車体前後方向の長さよりも長く形成されている。フランジ部21は、好ましくは、その上面をクロスメンバ13の前壁部13Aの下端縁及び、後壁部13Cの下端縁にそれぞれ溶接等で接合することにより固定されている。
【0022】
フランジ部21のクロスメンバ13(前壁部13A)よりも車体前方側には、複数の水抜き孔26〜28が車体幅方向に所定の間隔で貫通形成されている。本実施形態において、水抜き孔26〜28は、ドレンコック37の直下方に位置する右端側の第1水抜き孔26と、フランジ部21の車体幅方向の略中心に位置する第2水抜き孔27と、第2水抜き孔27を挟んで第1水抜き孔26とは反対の左端側に位置する第3水抜き孔28との計3個を備えている。
【0023】
ガード部22は、フランジ部21の前端縁から車体前方に斜め上方に向けて所定の角度で屈曲形成されている。ガード部22は、車体前方からの異物の衝突を受け流したり、或は、衝撃や外力を受け止めて吸収したりする機能を有している。
【0024】
複数のリブ23,24,25は、ガード部22の上面及び、フランジ部21の前端側上面から上方に所定の高さで突設されて車体前後方向に延びる凸条のリブである。各リブ23,24,25は、ガード部22及び、フランジ部21の屈曲形状に沿う形状で形成されている。具体的には、各リブ23,24,25は、ガード部22の上面から突出する前側リブ部23A,24A,25Aと、フランジ部21のクロスメンバ13よりも前側の上面から突出する後側リブ部23B,24B,25Bとを一体に有している。前側リブ部23A,24A,25Aは、側方視で略三角状に形成され、後側リブ部23B,24B,25Bは、側方視で略方形状に形成されている。各後側リブ部23B,24B,25Bの後端縁は、クロスメンバ13の前壁部13Aにそれぞれ溶接等で接合されている。
【0025】
本実施形態において、右側リブ23は、スキッドガード20の第1水抜き孔26よりも車体幅方向右側の端部に設けられ、左側リブ25は、スキッドガード20の第3水抜き孔28よりも車体幅方向左側の端部に設けられている。また、これら左右リブ23,25の間に位置する中間リブ24は、スキッドガード20の第1水抜き孔26と第2水抜き孔27との間に設けられている。
【0026】
すなわち、ドレン装置35の直下方に位置する第1水抜き孔26を挟んで右側リブ23及び、中間リブ24が左右に対向配置されている。これにより、右側リブ23及び、中間リブ24の対向面と、これら一対のリブ23,24間のフランジ部21及びガード部22の上面と、これら一対のリブ23,24間のクロスメンバ13(前壁部13A)とにより、上方に開口しつつ底部に第1水抜き孔26のみを有する冷却水受容部Aが区画形成されている。
【0027】
以上のように構成された本実施形態によれば、ドレンコック37を緩めた際にドレン配管36から送出される冷却水は、直下方の冷却水受容部Aに確実に受け止められて第1水抜き孔26のみから排出され、他の水抜き孔27,28からの排出が効果的に防止されるようになる。これにより、作業者は、予め冷却水が何れの水抜き孔26〜28から排出されるかを確実に把握することが可能となり、作業者の意図しない水抜き孔27,28から冷却水の排出を効果的に防止することができる。
【0028】
また、各リブ23〜25の後端縁をクロスメンバ13の前壁部13Aにそれぞれ溶接等で接合したことにより、スキッドガード20とクロスメンバ13との接合強度、さらには、これらスキッドガード20及びクロスメンバ13の剛性を効果的に向上することができる。
【0029】
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変形して実施することが可能である。
【0030】
例えば、
図2に示すように、ドレン装置35がロアタンク34の車体幅方向左側の端部に配置される場合には、中間リブ24を第2水抜き孔27と第3水抜き孔28との間に設ければよい。また、
図3に示すように、ドレン装置35がロアタンク34の車体幅方向の略中心に配置される場合には、第2水抜き孔27の両端に一対の中間リブ24を設ければよい。
【0031】
また、本実施形態の適用範囲は、ラジエータ30に限定されず、水冷式のインタークーラ等、冷却水(液体)を排出するドレン部を有する他の液体貯留体にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 車体下部構造
11,12 サイドメンバ
13 クロスメンバ
14,15 ブラケット
20 スキッドガード
21 フランジ部
22 ガード部
23,24,25 リブ
26,27,28 水抜き孔
30 ラジエータ
35 ドレン装置
36 ドレン配管
37 ドレンコック