(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記設備データにおいて、前記設備ごとに、少なくとも(A)前記設備の初期状態と、(B)前記設備が実行可能な作業工程を前記設備が実行している状態である実行状態と、(C)前記実行状態において実行される作業工程を前記設備が実行可能な状態である待機状態と、(D)前記初期状態、前記実行状態、および、前記待機状態の間の遷移関係と、を記述した状態遷移情報が定義され、
前記設計工程データにおける前記設備と前記作業工程との組合せについて、前記設備に前記作業工程を実行させる時点で、前記設備が、前記設備の前記状態遷移情報において定義されている前記作業工程の待機状態にあるかを判定する状態判定部と、
前記状態判定部により前記待機状態にないと判定された組合せの作業工程について、前記設備の前記状態遷移情報において、前記初期状態または前記作業工程の実行状態から、前記作業工程の待機状態へと遷移するまでに、前記設備が至る状態において実行される作業工程である準備工程を取得する準備工程取得部と、
前記準備工程取得部により取得された前記準備工程を、前記状態判定部により前記待機状態にないと判定された組合せの作業工程の前に前記設備が実行すべき作業工程として、前記設計工程データに追加する準備工程追加部と、をさらに備えることを特徴とする請求項2または3に記載の工程設計装置。
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、
図1から
図27に基づいて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。本発明の一態様に係る工程設計装置1についての理解を容易にするため、先ず、工程設計装置1を含む生産シュミレーションシステムSysの概要を、
図2を用いて説明する。
【0037】
§1.適用例
(本実施形態に係る生産シュミレーションシステムの概要)
製造要求が、従来までの同一製品の大量生産から、多品種少量生産、マスカスタマイズ生産へと、近年変化している。新興国の人件費の高騰と国内人口減少による人材確保の難しさとから、様々な作業工程PPに対応できるロボットなどを利用した設備要素(ロボット利用生産設備)に期待が寄せられている。
【0038】
このような多品種少量生産、マスカスタマイズ生産向けのロボット利用生産設備では、新しい製品の生産に対応するための、物理的な設備構成の変更、および、そのための追加投資は少ない。しかしながら、ロボット利用生産設備においては、依然として、ロボット利用生産設備を動作させる制御ソフトウェアの変更には大きな労力を必要とする。
【0039】
そこで、生産シュミレーションシステムSysにおいては、ライブラリ(つまり、データベース)に複数の設備コンポーネント(設備Rに対応する仮想設備)を予め用意しておく。そして、任意の設備コンポーネントを仮想生産空間上にレイアウトする(配置する)ことにより、容易に生産設備のレイアウト案を作成することができる。
【0040】
また、生産シュミレーションシステムSysは、「嵌め合せ」「ねじ締め」といった「製品の生産手順上一般的に必要とされる各作業工程(標準工程CP)」を実現するための制御プログラムを、ライブラリにおいて、設備コンポーネントに対応付けている。さらに、生産シュミレーションシステムSysは、そのような各作業工程についての諸元リストを標準定義している。生産シュミレーションシステムSysは、設備コンポーネント(より正確には、設備Rを定義した設備データDr)、および、製品の生産手順データ(手順データDp)を、そのような「標準定義された作業工程(標準工程CP)」と、組み合わせて利用する。
【0041】
生産シュミレーションシステムSysは、設備コンポーネント(より正確には、設備データDr)と、製品の生産手順データ(手順データDp)と、を照合する。生産シュミレーションシステムSysは、両者を照合することにより、実現したい製品の生産手順に必要とされる生産設備レイアウトと、その生産設備レイアウトにその生産手順を実行させる制御プログラムと、を容易に作成することができる。そして、生産シュミレーションシステムSysは、その生産設備レイアウト(より正確には、その生産設備レイアウト中の設備コンポーネント)をその制御プログラムに従って動作させてシミュレーションを実施し、生産設備のレイアウト案を検証することができる。
【0042】
ここで、実際の製品の組立においては、通常、標準定義された作業工程(標準工程CP)では対応できない、「その製品固有の特殊な作業工程(特殊工程SP)」が含まれている。そこで、生産シュミレーションシステムSysにおいては、そのような特殊工程SPについても、ユーザが、システムの指示に従って効率的に必要な制御プログラムを追加することができるようにしている。
【0043】
(本実施形態に係る工程設計装置が実現する動作の一例)
ロボットを含む複数の設備要素(設備R)が狭い空間内で動作する組立セル等では、設備要素間の干渉回避のため、設備要素(例えば、ロボットなどの設備R)の動作軌跡を頻繁に調整する必要がある。しかしながら、設備要素の動作軌跡を変更した場合、前記組立セルが所望の成果を実現するのに要する作業時間は、大きく変動する傾向がある。
【0044】
そのため、設備要素間の干渉の発生有無および生産能力を把握するには、具体的な制御プログラムをロボットエミュレータなどの具体的な設備シミュレータ/エミュレータ(例えば、生産シミュレーション装置7)において実行させてみることが必要となる。
【0045】
従来、ライブラリ内の設備要素について、1つ以上の標準的な作業工程(標準工程CP)の各々を実行させるための1つ以上の制御プログラムを事前定義しておき、それらを組み合わせることで迅速に正確な挙動シミュレーションを行う試みがなされている。
【0046】
しかしながら、実際の製品の組立工程には、標準工程CP以外の作業工程(具体的には、事前定義しておくことが困難な、その製品固有の特殊な作業工程(特殊工程SP))が、含まれることが一般的である。すなわち、製品を構成する部品は、製品ごとに形状および材質が千差万別であり、これらの部品を用いて実際の製品を組み立てる(生産する)ための組立作業手順には、標準工程CPだけではなく、特殊工程SPが含まれていることが多い。具体的には、実際の製品の組立作業手順には、「ねじ止め」、「重ね合せ」のような一般的な作業工程(標準工程CP)だけではなく、その製品に固有の特殊な作業工程である特殊工程SPが含まれることが多い。
【0047】
そのため、ライブラリの設備要素に事前定義された挙動(標準工程CP)だけでは、実際の製品を組み立てるための制御プログラムを生成することが困難である。そこで、生産シュミレーションシステムSysにおいて工程設計装置1は、生産システムシミュレーションに必要な情報を、ユーザとの対話等も利用しながら収集する。そして、生産シミュレーション装置7は、工程設計装置1により収集された情報等を用いて、所望の設備Rにより所望の製品を製造する生産シミュレーションを実行する。
【0048】
(各作業工程を実行する作業主体の設定)
具体的には、工程設計装置1は、製品の組立作業手順に含まれる各作業工程PPの作業主体を設定する。工程設計装置1は、各作業工程PPの作業主体の設定に際して先ず、製品の組立作業手順に含まれる各作業工程PPについて、「標準工程CPであるか、それとも、特殊工程SPであるのか」を判定する。作業手順に含まれる作業工程PPは、標準工程CPまたは特殊工程SPである。
【0049】
(標準工程を実行する作業主体の設定)
工程設計装置1は、製品の組立作業手順に含まれる作業工程PPのうち、標準工程CPであると判定した作業工程PPについては、ライブラリに格納されている(つまり、設備データDrにおいて定義されている)設備Rを対応付ける。工程設計装置1は、標準工程CPであると判定した作業工程PPについては、「設備データDrにおいて定義されている設備Rのうち、仮想生産空間上にレイアウトされた設備R」を、その作業工程PPの実行主体として、優先的に対応付けるようにしてもよい。
【0050】
ここで、前述の通り、設備データDrにおいては、「設備Rと、その設備Rが実行可能な作業工程(標準工程CP)との組合せ」に、「その設備Rにその標準工程CPを実行させる制御プログラム」が対応付けられている。
【0051】
そこで、工程設計装置1は、標準工程CPであると判定した作業工程PPについて、その作業工程PPの実行主体として「設備データDrにおいて定義されている設備R(つまり、標準工程CPである作業工程PPを実行可能な設備R)」を対応付ける。さらに、工程設計装置1は、「標準工程CPであると判定した作業工程PPと、設備Rと、の組合せ」に、「その設備Rにその作業工程PPを実行させる制御プログラム」を対応付ける。
【0052】
(特殊工程を実行する作業主体の設定)
工程設計装置1は、製品の組立作業手順に含まれる作業工程PPのうち、標準工程CPではないと判定した作業工程PPについては、つまり、特殊工程SPであると判定した作業工程PPについては、特殊工程SPである旨をユーザに通知する。そして、工程設計装置1は、その特殊工程SPを実行させる設備Rの決定と、その特殊工程SPを実現する制御プログラムの設備R(設備コンポーネント)への追加実装と、をユーザに促す。ユーザは、例えば、特殊工程SPの実行主体として選択した設備Rに対し、その特殊工程SPについてのオフライン・ティーチングを実施する。工程設計装置1は、ユーザによるオフライン・ティーチングにより生成された制御プログラムを、「その設備Rにその特殊工程SPを実行させる制御プログラム」として、読み込む。
【0053】
(各作業主体に各作業工程を実行させるのに必要な作業工程等の設定)
工程設計装置1は、手順データDp中の各作業工程PPについて、その実行主体として各設備Rを割り付けると、さらに、その各作業工程PPの前に実行すべき作業工程PPとして、以下の作業工程PPを追加したり、追加をユーザに促したりする。すなわち、工程設計装置1は、各作業工程PPの実行のために事前に実行が必要な作業工程PP(準備工程RP)、および、各作業工程PPの実行のために必要な部品を各設備Rに供給する作業工程PP(供給工程IP)を追加したり、追加をユーザに促したりする。
【0054】
(各作業主体に各作業工程を実行させるのに必要な項目への値の設定)
工程設計装置1は、手順データDp中の各作業工程PPの実行を割り付けられた各設備Rについて、その設備Rにその作業工程PPを実行させるために不足している情報(要設定項目It)を検出する。工程設計装置1は、そのような情報を追加で設定・ティーチングするように促し、また、必要な制御プログラミングの追加読込等を促す。
【0055】
なお、工程設計装置1は、パーソナルコンピュータ(PC)のような情報処理装置を用いて実現することができる。すなわち、情報処理装置を工程設計装置1として動作させるアプリケーション・ソフトウェアをインストールしたPCとして、工程設計装置1を実現することができる。
【0056】
§2.構成例
(生産シュミレーションシステムの構成例)
図2は、工程設計装置1を含む生産シュミレーションシステムSysの全体概要を示す図である。
図2に例示する生産シュミレーションシステムSysには、工程設計装置1、標準工程データベース2、設備データベース3、手順データベース4、手順生成装置5、レイアウト作成装置6、および、生産シミュレーション装置7が含まれている。
【0057】
工程設計装置1は、製品ごとに、その製品を組み立てる作業手順(組立作業手順)に含まれる複数の作業工程PPの各々に対し、その作業工程PPの実行主体等を設定する。工程設計装置1は、さらに、各作業工程PPの実行主体として設定した各設備Rに各作業工程PPを実行させる制御プログラムを管理していてもよい。工程設計装置1は、そのような制御プログラムを生産シミュレーション装置7に出力して、生産シミュレーション装置7に、各作業工程PPの実行主体として設定した各設備Rに各作業工程PPを実行させるシミュレーションを実行させることができる。
【0058】
(標準工程データ関連)
標準工程データベース2には、複数の標準工程CPの各々を定義した標準工程データDdが格納され、例えば、製品の組立に必要な各作業工程PPの種別と諸元とを定義する情報が格納されている。標準工程CPの各々は、少なくとも1つの設備Rにより実行可能な作業工程PPである。
【0059】
(設備データ関連)
設備データベース3には、設備データDrが格納され、例えば、各設備Rについて、形状、各種諸元、各設備Rが実行可能な固有動作を実現する制御プログラム、および、その固有動作によって実現可能な作業工程PP(特に、標準工程CP)が格納されている。言い換えれば、設備データDrは、設備Rごとに、その設備Rが実行可能な標準工程CP、その設備Rにその標準工程CPを実行させる制御プログラム、その設備Rにその標準工程CPを実行させるために値の設定が必要な要設定項目Itなどを定義している。
【0060】
例えば、設備データDrは、設備Rごとに、(1)その設備Rが実行可能な作業工程PP(特に、標準工程CP)を、定義している。設備データDrは、さらに、(2)各設備Rの3次元形状、(3)各設備Rが作業工程PP(特に、標準工程CP)を実行するための制御プログラム等、(4)各設備Rの状態マシン図を定義している。また、設備データDrは、(5)実行可能な作業工程PP(特に、標準工程CP)に係る、各設備Rの工程実行能力、(6)各設備Rに実行させる作業工程PP(特に、標準工程CP)の入出力要素、(7)各設備Rが各作業工程PP(特に、各標準工程CP)を実行するための要設定項目Itを定義している。なお、「3次元」は、以下の説明においては「3D」と略記することがある。設備データDrの詳細については、
図5から
図11を用いて後述する。
【0061】
(手順データ関連)
レイアウト作成装置6は、ライブラリに格納されている(つまり、設備データDrにおいて定義されている)設備データDrをユーザに提示して、ユーザが設備レイアウトを構築するのを支援する。例えば、レイアウト作成装置6は、設備データDrにおいて定義されている設備Rの一覧をユーザに提示する。ユーザは、設備データDrにおいて定義されている設備Rの一覧中から設備R(1)、R(2)、R(3)、・・・R(n)を選択し、選択した設備R(1)、R(2)、R(3)、・・・R(n)を、レイアウト作成装置6が提供する仮想生産空間上に配置する。レイアウト作成装置6は、仮想生産空間上に配置された設備R(1)、R(2)、R(3)、・・・R(n)を、仮想生産空間上の配置位置情報などと共に、工程設計装置1に通知する。
【0062】
また、レイアウト作成装置6は、設備データDrにおいて「設備Rと、その設備Rが実行可能な標準工程CPと、の組合せ」ごとに定義されている入出力要素(ワーク、例えば、製品、製品の部品、仕掛かり製品、半製品)の3次元形状をユーザに提示する。ユーザは、選択した設備R(1)、R(2)、R(3)、・・・R(n)が用いたり、出力したりするワークを、設備R(1)、R(2)、R(3)、・・・R(n)を配置した仮想生産空間上に配置する。レイアウト作成装置6は、「仮想生産空間上に配置されたワークを特定する情報」を、「仮想生産空間上のワークの配置位置情報」などと共に、工程設計装置1に通知する。
【0063】
なお、レイアウト作成装置6を用いた生産設備のレイアウト案の作成(言い換えれば、仮想生産空間への設備Rの配置)の詳細については、
図13を用いて後述する。
【0064】
手順データベース4には、製品ごとの組立作業手順または分解作業手順を示すデータである手順データDpが格納されている。手順データDpは、製品ごとに、その製品を組み立て、または、分解する複数の作業工程PPを、実行順序と共に定義している。手順データDpにおいて定義されている複数の作業工程PPは、標準工程CPおよび特殊工程SPの少なくとも一方を複数含んでいる。
【0065】
手順生成装置5は、製品ごとに、その製品の3次元形状、および、その製品を構成する1つ以上の部品の各々の3次元形状をユーザに提示する。また、手順生成装置5は、標準工程データDdにおいて定義されている複数の標準工程CPの各々をユーザに提示する。手順生成装置5は、製品および部品の3次元形状、および、標準工程データDdにおいて定義されている複数の標準工程CPをユーザに提示して、ユーザが手順データDpを生成するのを支援する。生産シュミレーションシステムSysにおいて、手順データDp(製品の組立手順)は、例えば、ユーザが自分で考えて生成する。なお、手順生成装置5を用いた手順データDpの作成の詳細については、
図14等を用いて後述する。
【0066】
生産シミュレーション装置7は、ロボットを含む各種の設備Rの挙動を動的に再現する。前述の通り、生産シミュレーション装置7は、工程設計装置1から、作業手順(組立作業手順)に含まれる複数の作業工程PPの各々を各設備Rに実行させる制御プログラムを取得して、各設備Rに各作業工程PPを実行させるシミュレーションを実行することができる。生産シミュレーション装置7は、例えば、工程設計装置1から取得した制御プログラムを実際にエミュレータ上で動作させて、所望の製品の組立作業時間を算出する。
【0067】
(各実施形態において用いる用語の定義)
生産シュミレーションシステムSysについての理解を正確にするため、生産シュミレーションシステムSysの説明において用いる各種用語を以下の通り定義しておく。
【0068】
「設備要素(=設備R)」とは、各種ロボット、周辺機器、エンドエフェクタ、架台など、生産設備を構成する物理的な構成要素の総称である。
【0069】
「設備コンポーネント」とは、単一または複数の設備要素を組み合わせて、設備構築支援ソフトウェア(=レイアウト作成装置6)によって再利用可能な形に整備されたソフトウェアモジュールの呼称である。設備コンポーネントは、3D設備シミュレータなどのために、設備要素の3次元形状・機構情報に加え、0〜n個の「工程実行サービス」を実現する設備要素の制御プログラムを含んでいる。設備コンポーネントを、レイアウト作成装置6が提供する仮想生産空間(設備レイアウト)上にインスタンス化して配置位置を確定すると、その設備コンポーネントが提供する工程実行サービスが呼び出し可能となる。例えば、レイアウト作成装置6は、仮想生産空間上に配置された設備R(配置済設備RR)を、その設備Rが実行可能な作業工程PPを実行する設備Rとして、工程設計装置1に通知する。
【0070】
同一の設備コンポーネントを複数インスタンス化することもできるし、インスタンスごとに既定の設備諸元(例えば、ベルトコンベアであれば、長さ、高さ、幅など)をユーザが実際に保有している設備Rに合わせて変更することができる。内部で他の設備コンポーネントを参照し、利用していることもある。
【0071】
「ライブラリ(=設備データベース3)」とは、設備レイアウトの作成に利用可能な設備コンポーネントを集めて、ユーザが簡単に選択・利用することができるようにしたライブラリである。
【0072】
「設備レイアウト」とは、3D設備シミュレータ(=レイアウト作成装置6)の提供する仮想生産空間において、設備コンポーネントをインスタンス化してワールド座標系に配置することにより作成した仮想生産設備をいう。単一のセルを表現している場合もあれば、複数セルから構成されたラインを表現している場合もある。
【0073】
「セル(装置)」とは、ラインを構成する、一定レベルの独立性をもった生産設備の構成単位をいう。内部で複雑な機構動作が実現され隠蔽されており、この単位で装置ベンダからエンドユーザに提供されることが多い。多くの場合、製造実行系上位システム向けのインタフェースとして、運転モード/運転状態の概念を持っており、また、オペレータ向けインタフェースとしてパトランプ、HMI(Human Machine Interface)、セーフティボタンなどを備えている。前後工程を担うセルとのインタフェースとして、材料ワークの搬入口と作業済みワーク搬出口とをもち、タクトタイムの概念がある。
【0074】
「ライン」とは、複数のセルの入出力ワークが、直接または各種の搬送系(コンベヤ、AGV(Automated Guided Vehicle)、人など)によって接続された生産システムの構成単位をいう。搬送経路は1次元的であるとは限らず、分岐、ネットワーク形状の搬送経路をもつことがある。
【0075】
「工程定義情報(=標準工程データDd)」とは、「ネジ締付」、「嵌め合い」など、生産における各標準工程CPについて、各標準工程CPを一意に特定する工程IDとともに、各標準工程CPに対する諸元リストを定義した情報をいう。標準工程CPに対する諸元は、例えば、製品の設計上、要求されることが多いと想定できる諸元であり、例えば、ネジのサイズ、および、締付トルクなどである。工程定義情報は、設備要素(設備コンポーネント)の工程実行能力を表現するためのテンプレートとして利用されたり、手順データDp中の各作業工程PPの要求諸元を記述する際の辞書として利用されたりすることができる。
【0076】
「工程実行能力」とは、各設備コンポーネントが提供することのできる工程実行サービスの対応可能な諸元の範囲を、工程定義に従って記述したものをいう。ライブラリ内の設備コンポーネントは、自分の備えている工程実行サービスの工程実行能力の宣言を、例えばヘッダ情報に、格納している。
【0077】
「工程実行サービス」とは、設備レイアウト上にインスタンス化された設備コンポーネントが提供する、「ねじの挿入・締付」などの作業工程の実現サービスをいう。製品が要求する諸元を工程実行サービスのパラメータに与えて呼び出すことで、設備レイアウトで製品に必要な工程が実行される。
【0078】
「工程実行シーケンス」とは、製品の組立手順に従い、設備レイアウトの各設備コンポーネントの各工程実行サービスを適切なパラメータ設定で順次呼び出す手順を記述した制御シーケンスプログラムをいう。なお、「手順データDp中の各作業工程PPに対し、その実行主体としての設備Rを対応付けた情報(設計工程データ61)」を、「工程実行シーケンス」と称することもある。
【0079】
(工程設計装置の概要)
これまでに生産シュミレーションシステムSysの全体概要を説明したので、次に、工程設計装置1および手順生成装置5などの詳細を説明していく。工程設計装置1および手順生成装置5などについての理解を容易にするため、工程設計装置1および手順生成装置5などの概要を整理しておけば以下の通りである。
【0080】
すなわち、工程設計装置1は、製品を組み立て、または、分解する作業手順(手順データDp)に含まれる複数の作業工程PPの各々について、作業工程PPを実行する実行主体を対応付ける工程設計装置1である。工程設計装置1は、「各々が、少なくとも1つの設備Rにより実行可能な作業工程PPである、複数の標準工程CP」を定義した標準工程データDdを取得する標準工程取得部11と、「設備Rごとに、設備Rが実行可能な作業工程PP(標準工程CP)」を定義した設備データDrを取得する設備取得部13と、「製品ごとに、製品を組み立て、または、分解するための複数の作業工程PPを、実行順序と共に定義した手順データDp」を取得する手順取得部12と、手順データDpにおいて定義されている複数の作業工程PPの各々について、標準工程データDdに含まれているかを判定する工程判定部20と、手順データDpの表示画面(工程設計画面)において、工程判定部により標準工程データDdに含まれていないと判定された作業工程PPである特殊工程SPを強調表示する表示制御部30と、を備えている。
【0081】
前記の構成によれば、工程設計装置1は、手順データDpにおいて定義されている複数の作業工程PPの各々について、標準工程データDdに含まれているかを判定し、標準工程データDdに含まれていないと判定した作業工程PPを、特殊工程SPとして強調表示する。
【0082】
ここで、実際の製品の組立および分解に際しては、予め定義しておくことが困難な、その製品固有の特殊な作業工程PPが、つまり、特殊工程SPが、含まれていることが通常である。
【0083】
工程設計装置1は、そのような「予め定義しておくことが困難な、その製品固有の特殊な作業工程PP」が、つまり、標準工程データDdにおいて定義されている標準工程CPではない作業工程PPが、手順データDpに含まれているかを判定する。そして、工程設計装置1は、手順データDpに含まれている「予め定義しておくことが困難な、その製品固有の特殊な作業工程PP」を、特殊工程SPとして強調表示してユーザに通知し、そのような作業工程PPについての検討をユーザに促す。
【0084】
したがって、工程設計装置1は、製品の組立等の手順中に、予め定義しておくことが困難な、その製品固有の特殊な作業工程PPが含まれる場合にも、ユーザにそのような作業工程PPに対する検討を促し、その製品の組立等の工程を設計できるとの効果を奏する。
【0085】
工程設計装置1は、表示制御部30により強調表示された特殊工程SPについて、特殊工程SPを実行させる設備Rを設定するユーザ操作を受け付ける受付部40と、手順データDpにおいて実行順序と共に定義されている複数の作業工程PPのうち、(1)「工程判定部20により標準工程データDdに含まれていると判定された作業工程PP」に、「設備データDrにおいて、作業工程PPを実行可能な設備Rとして定義されている設備R」を、実行主体として対応付け、(2)特殊工程SPに、「ユーザ操作により設定された設備R」を、実行主体として対応付けた、設計工程データ61を生成する設定部(第1設定部51および第2設定部52)と、をさらに備えている。
【0086】
前記の構成によれば、工程設計装置1は、手順データDpにおいて実行順序と共に定義されている複数の作業工程PPのうち、(1)標準工程CPに、「設備データDrに定義されている設備R」を対応付け、(2)特殊工程SPに、「ユーザにより設定された設備R」を対応付けた、設計工程データ61を生成する。
【0087】
工程設計装置1は、「予め定義しておくことが困難な、その製品固有の特殊な作業工程PP」を含む作業手順(手順データDp)についても、その作業手順中の各作業工程PPに対して実行主体を対応付けた設計工程データ61を生成する。
【0088】
したがって、工程設計装置1は、製品の組立等の手順中に、予め定義しておくことが困難な、その製品固有の特殊な作業工程PPが含まれる場合にも、手順中の各作業工程PPに対して実行主体を対応付けた工程を設計することができるとの効果を奏する。
【0089】
工程設計装置1は、設備データDrにおいて、設備Rと作業工程PPとの組合せごとに、「設備Rに作業工程PPを実行させるために、予め値を設定しておく必要のある要設定項目It(項目)」が定義され、設計工程データ61における設備Rと作業工程PPとの組合せについて、設備データDrにおいて前記組合せに対して定義されている要設定項目Itに値が設定されているかを判定する項目判定部77をさらに備え、表示制御部30は、項目判定部77により値が未設定だと判定された要設定項目Itに対して値の設定を促す情報を表示し、受付部40は、要設定項目Itに値を入力するユーザ操作を受け付け、設定部(第1設定部51および第2設定部52)は、ユーザ操作により入力された値を設定した要設定項目Itを、前記設計工程データ61における前記組合せに対応付ける。
【0090】
前記の構成によれば、工程設計装置1は、「設備Rに作業工程PPを実行させるために予め値を設定しておく必要のある要設定項目It」に値が設定されているかを判定し、要設定項目Itに値が設定されていないと判定すると、値の設定をユーザに促す。そして、工程設計装置1は、ユーザが入力した値を要設定項目Itに設定して、設備Rが作業工程PPを実行できるようにする。
【0091】
したがって、工程設計装置1は、「『製品の組立等の手順中に含まれる各作業工程PP』を、『各作業工程PPの実行主体として対応付けた設備R』に実行させる」ために必要な要設定項目Itに値を設定し、各作業工程PPを、各作業工程PPに対応付けた設備Rに実行させることができるとの効果を奏する。
【0092】
工程設計装置1は、設備データDrにおいて、設備Rごとに、少なくとも(A)設備Rの初期状態と、(B)「設備Rが実行可能な作業工程PP」を、設備Rが実行している状態である実行状態と、(C)前記実行状態において実行される作業工程PPを設備Rが実行可能な状態である待機状態と、(D)前記初期状態、前記実行状態、および、前記待機状態の間の遷移関係と、を記述した状態遷移情報(状態マシン図)が定義され、設計工程データ61における設備Rと作業工程PPとの組合せについて、「『設備Rに作業工程PPを実行させる時点』で、設備Rが、『設備Rの状態遷移情報において定義されている、作業工程PPの待機状態』にあるか」を判定する状態判定部71と、状態判定部71により「待機状態にない」と判定された組合せの作業工程PPについて、「設備Rの状態遷移情報において、『前記初期状態または前記作業工程PPの実行状態』から、『前記作業工程PPの待機状態』へと遷移するまでに、設備Rが至る状態」において実行される作業工程PPである準備工程RPを取得する準備工程取得部72と、「『準備工程取得部72により取得された準備工程RP』を、『状態判定部71により待機状態にないと判定された組合せの作業工程PP』の前に設備Rが実行すべき作業工程PPとして、設計工程データ61に追加する」準備工程追加部と、をさらに備えている。
【0093】
前記の構成によれば、工程設計装置1は、設備Rに作業工程PPを実行させる時点で、設備Rが、作業工程PPの待機状態にあるかを判定する。そして、工程設計装置1は、作業工程PPを実行させる時点で、設備Rが待機状態にないと判定すると、待機状態へと遷移するまでに設備Rが至る状態において実行される作業工程PPである準備工程RPを取得する。工程設計装置1は、取得した準備工程RPを、「『待機状態にない』と判定した作業工程PP」の前に設備Rが実行すべき作業工程PPとして、設計工程データ61に追加する。
【0094】
したがって、工程設計装置1は、製品の組立等の手順中に含まれる各作業工程PPについて、各設備Rが各作業工程PPを実行する前に実行しておくべき準備工程RPを各設備Rに実行させることにより、各作業工程PPを、各作業工程PPに対応付けた設備Rに実行させることができるとの効果を奏する。
【0095】
工程設計装置1は、設備データDrにおいて、設備Rおよび作業工程PPの組合せごとに、「設備Rが作業工程PPを実行する際に必要な入力要素(ワーク)」が定義され、「設計工程データ61における設備Rと作業工程PPとの組合せ」について、「『設備Rに作業工程PPを実行させる時点』で、設備Rに、『設備データDrにおいて前記組合せに対して定義されている入力要素』が供給されているか」を判定する部品判定部74と、「『部品判定部74により前記入力要素が供給されていないと判定された組合せ』の作業工程PPの前に実行されるべき作業工程PPとして、『前記入力要素を設備Rに供給する作業工程PPである供給工程IP』を、設計工程データ61に追加する」供給工程追加部76と、をさらに備えている。
【0096】
前記の構成によれば、工程設計装置1は、設備Rに作業工程PPを実行させる時点で、設備Rに、前記入力要素が供給されているかを判定する。そして、工程設計装置1は、「前記入力要素が供給されていないと判定された作業工程PP」の前に実行されるべき作業工程PPとして、「前記入力要素を設備Rに供給する作業工程PPである供給工程IP」を、設計工程データ61に追加する。
【0097】
したがって、工程設計装置1は、製品の組立等の手順中に含まれる各作業工程PPについて、各設備Rが各作業工程PPを実行する前に各設備Rに供給されておくべき入力要素を供給工程IPにおいて供給することにより、各作業工程PPを、各作業工程PPに対応付けた設備Rに実行させることができるとの効果を奏する。
【0098】
手順生成装置5は、工程設計装置1により取得される手順データDpをユーザが生成するのを支援する手順生成装置であって、製品ごとに、製品の3次元形状、および、製品を構成する1つ以上のワークの各々の3次元形状をユーザに提示する形状提示部と、標準工程データDdにおいて定義されている複数の標準工程CPの各々をユーザに提示する工程提示部と、を備えている。
【0099】
前記の構成によれば、手順生成装置5は、(1)製品ごとの、製品の3次元形状、および、製品を構成する1つ以上のワークの各々の3次元形状と、(2)標準工程CPと、をユーザに提示する。
【0100】
したがって、手順生成装置5は、ユーザが、製品等の3次元形状を参照しながら、標準工程CPに即して、手順データDpを生成するのを支援することができるとの効果を奏する。
【0101】
(工程設計装置の詳細)
図1は、工程設計装置1などの要部構成等を示すブロック図である。
図1に例示した工程設計装置1は、標準工程取得部11、手順取得部12、設備取得部13、工程判定部20、表示制御部30、受付部40、第1設定部51、第2設定部52、記憶部60、および、検証部70を備えている。
【0102】
なお、記載の簡潔性を担保するため、本実施の形態に直接関係のない構成は、説明およびブロック図から省略している。ただし、実施の実情に則して、工程設計装置1は、当該省略された構成を備えてもよい。
図1に例示した標準工程取得部11、手順取得部12、設備取得部13、工程判定部20、表示制御部30、受付部40、第1設定部51、第2設定部52、および、検証部70は、例えば、プロセッサ(CPU、central processing unit)等が、ROM(read only memory)、NVRAM(non-Volatile random access memory)等で実現された不揮発性(記憶部60)に記憶されているプログラムを、RAM等により実現されるメインメモリに読み出して実行することで実現することができる。以下、工程設計装置1における各機能ブロックについて説明する。
【0103】
(記憶部以外の機能ブロック)
標準工程取得部11は、標準工程データベース2から標準工程データDdを取得し、取得した標準工程データDdを、工程判定部20に出力する。
【0104】
手順取得部12は、手順データベース4から手順データDpを取得し、取得した手順データDpを、工程判定部20に出力する。
【0105】
設備取得部13は、設備データベース3から設備データDrを取得する。また、設備取得部13は、レイアウト作成装置6から、「設備データDrにおいて定義されている設備Rのうち、仮想生産空間に配置された設備R(以下、「配置済設備RR」と略記することがある)」を取得する。設備取得部13は、取得した設備データDrにおいて定義されている設備R、および、配置済設備RRを、第1設定部51に出力する。
【0106】
工程判定部20は、手順取得部12から取得した手順データDpにおいて定義されている各作業工程PPについて、標準工程取得部11から取得した標準工程データDdに含まれるかを判定する。そして、(1)工程判定部20は、手順取得部12から取得した手順データDp中の作業工程PPのうち、標準工程データDdに含まれると判定した作業工程PPを、つまり、標準工程CPと判定した作業工程PPを、第1設定部51に出力する。また、(2)工程判定部20は、手順取得部12から取得した手順データDp中の作業工程PPのうち、標準工程データDdに含まれないと判定した作業工程PPを、つまり、特殊工程SPと判定した作業工程PPを、第2設定部52に出力する。さらに、(3)工程判定部20は、特殊工程SPと判定した作業工程PPを、表示制御部30に出力する。
【0107】
表示制御部30は、手順データDpおよび記憶部60の設計工程データ61に格納されている情報等を表示する画面である工程設計画面を、表示装置8に表示させ、また、工程設計画面に係る表示内容を制御する。例えば、表示制御部30は、工程判定部20により「標準工程データDdに含まれない」と判定された作業工程PPを、工程設計画面において強調表示させる。また、例えば、表示制御部30は、項目判定部77により「設備Rに作業工程PPを実行させる時点で、設備Rが作業工程PPを実行するのに必要な値が設定されていない」と判定された要設定項目Itへの値を促す情報を、工程設計画面において強調表示させる。
【0108】
受付部40は、ユーザ操作を受け付け、受け付けたユーザ操作に対応する処理を、第2設定部52に通知するとともに、受け付けたユーザ操作に従って、記憶部60の設計工程データ61に格納されている情報を更新する。
【0109】
受付部40は、例えば、工程設計画面において強調表示されている特殊工程SPについて、「その特殊工程SPを実行させる設備Rを設定するユーザ操作」を受け付ける。受付部40は、ユーザ操作によって特殊工程SPの実行主体として設定された設備Rを、第2設定部52に通知する。
【0110】
また、受付部40は、例えば、「設備Rに作業工程PPを実行させるために予め値を設定しておく必要のある要設定項目It」に値を入力するユーザ操作を受け付け、受け付けたユーザ操作に対応する情報を、設計工程データ61に格納する。すなわち、受付部40は、ユーザ操作により入力された値を設定した要設定項目Itを、設計工程データ61における「設備Rと作業工程PPとの組合せ」に対応付ける。
【0111】
なお、受付部40は、ユーザ操作により入力された値を設定した要設定項目Itを、第1設定部51または第2設定部52に通知してもよい。そして、第1設定部51または第2設定部52が、値が設定された要設定項目Itを、設計工程データ61における「設備Rと作業工程PPとの組合せ」に対応付けてもよい。
【0112】
第1設定部51は、「手順データDp中の作業工程PPのうち、工程判定部20により標準工程CPと判定された作業工程PP」に、つまり、「手順データDp中の標準工程CP」に、その作業工程PPの実行主体として、設備Rを対応付ける。そして、第1設定部51は、手順データDp中の標準工程CPに設備Rを対応付けたデータを、記憶部60の設計工程データ61に格納する。
【0113】
第1設定部51は、「手順データDp中の標準工程CP」に、その標準工程CPの実行主体として、「設備データDrにおいて、その標準工程CPを実行することができると定義されている設備R」を対応付ける。第1設定部51は、「手順データDp中の標準工程CP」に、「設備データDrにおいて、その標準工程CPを実行することができると定義されている設備R」のうち、配置済設備RRを、優先的に対応付ける。言い換えると、配置済設備RR中に「手順データDp中の標準工程CP」を実行可能な設備Rがあると、第1設定部51は、その設備Rを、その「手順データDp中の標準工程CP」に、優先的に対応付ける。
【0114】
第2設定部52は、「手順データDp中の作業工程PPのうち、工程判定部20により特殊工程SPと判定された作業工程PP」に、つまり、「手順データDp中の特殊工程SP」に、その作業工程PPの実行主体として、設備Rを対応付ける。そして、第2設定部52は、手順データDp中の特殊工程SPに設備Rを対応付けたデータを、記憶部60の設計工程データ61に格納する。
【0115】
第2設定部52は、「手順データDp中の特殊工程SP」に、受付部40から通知された設備Rを、つまり、ユーザによって「その特殊工程SPの実行主体として設定された設備R」を、対応付ける。
【0116】
第1設定部51および第2設定部52により、手順データDp中の各作業工程PPは、その実行順序と共に、その各作業工程PPの実行主体としての各設備Rと対応付けられて、設計工程データ61に格納される。
【0117】
検証部70は、状態判定部71、準備工程取得部72、準備工程追加部73、部品判定部74、供給工程取得部75、供給工程追加部76、および、項目判定部77を含んでいる。
【0118】
状態判定部71は、設計工程データ61に格納されている設備Rと作業工程PPとの組合せについて、その設備Rにその作業工程PPを実行させる時点で、その設備Rが、その作業工程PPの待機状態にあるかを、設備データDrを用いて判定する。
【0119】
前述の通り、設備データDrには、設備Rごとに、その設備Rの状態マシン図が、つまり、その設備Rの状態遷移情報が、定義されている。状態判定部71は、或る設備Rに或る作業工程PPを実行させる時点で、その設備Rが、その作業工程PPの待機状態にあるかを、設備データDrにおける、その設備Rの状態遷移情報を用いて判定する。
【0120】
状態判定部71は、設計工程データ61に格納されている設備Rと作業工程PPとの組合せについて、その設備Rにその作業工程PPを実行させる時点で、その設備Rが、その作業工程PPの待機状態にないと判定した組合せを、準備工程取得部72に通知する。
【0121】
準備工程取得部72は、状態判定部71から通知された「設備Rと作業工程PPとの組合せ」の作業工程PPについて、設備データDrに定義されている「その設備Rの状態マシン図(つまり、状態遷移情報)」を用いて、準備工程RPを取得する。つまり、準備工程取得部72は、状態判定部71により、「設備Rに作業工程PPを実行させる時点で、その設備Rが、その作業工程PPの待機状態にない」と判定された作業工程PPについて、その設備Rの状態遷移情報を用いて、準備工程RPを取得する。
【0122】
例えば、準備工程取得部72は、設備Rの状態遷移情報において、初期状態またはその作業工程PPの実行状態から、その作業工程PPの待機状態へと遷移するまでに、その設備Rが至る状態において実行される作業工程PPである準備工程RPを取得する。
ここで、設備Rの状態遷移情報には、初期状態、設備Rが実行可能な作業工程PP(具体的には、標準工程CP)の実行状態、および、実行状態において実行される作業工程PP(具体的には、標準工程CP)の待機状態が記述されている。そこで、準備工程取得部72は、設備Rの状態遷移情報を参照して、先ず、初期状態またはその作業工程PPの実行状態から、その作業工程PPの待機状態へと遷移するまでに、その設備Rが至る状態である中間状態を取得する。次に、準備工程取得部72は、取得した中間状態が、何らかの作業工程PPの実行状態である場合、その中間状態において実行される作業工程PPを、準備工程RPとして取得する。
【0123】
準備工程取得部72は、設備データDrを参照して、具体的には、状態判定部71から通知された「設備Rと作業工程PPとの組合せ」の設備Rの状態遷移情報を参照して、準備工程RPを取得し、取得した準備工程RPを、準備工程追加部73に通知する。
【0124】
準備工程追加部73は、準備工程取得部72から通知された準備工程RPを、状態判定部71から通知された「設備Rと作業工程PPとの組合せ」の作業工程PPの前にその設備Rが実行すべき作業工程PPとして、設計工程データ61に追加する。つまり、準備工程追加部73は、準備工程取得部72から通知された準備工程RPを、「『状態判定部71が待機状態にないと判定した組合せ』の作業工程PPの前に、その組合せの設備Rが実行すべき」作業工程PPとして、設計工程データ61に追加する。準備工程追加部73により、設計工程データ61の「状態判定部71により待機状態にないと判定された、設備Rと作業工程PPとの組合せ」の前には、その組合せの設備Rと準備工程RPとの組合せが、追加される。
【0125】
部品判定部74は、設計工程データ61に格納されている設備Rと作業工程PPとの組合せについて、その設備Rにその作業工程PPを実行させる時点で「その設備Rがその作業工程PPを実行するのに必要な入力要素」がその設備Rに供給されているかを判定する。先ず、部品判定部74は、設計工程データ61に格納されている設備Rと作業工程PPとの組合せについて、「設備データDrにおいて、その設備Rとその作業工程PP(標準工程CP)との組合せに対して定義されている、入力要素(ワーク)」を取得する。次に、部品判定部74は、取得した入力要素が、その設備Rにその作業工程PPを実行させる時点で、その設備Rに供給されているかを判定する。
【0126】
部品判定部74は、「その設備Rにその作業工程PPを実行させる時点で、その設備Rに入力要素が供給されていない」と判定した「設備Rと作業工程PPとの組合せ」を、供給工程取得部75に通知する。
【0127】
供給工程取得部75は、先ず、部品判定部74から通知された「設備Rと作業工程PPとの組合せ」について、「『その組合せの設備Rが、その組合せの作業工程PPを実行するのに必要な入力要素』を、設備Rに供給する」作業工程である供給工程IPを取得する。供給工程取得部75は、例えば、標準工程データDdにおいて定義されている標準工程CPの中から、「『設備Rが作業工程PPを実行するのに必要な入力要素』を、設備Rに供給する」作業工程PPを、供給工程IPとして取得する。
【0128】
次に、供給工程取得部75は、取得した供給工程IPが標準工程CPであるかを、つまり、供給工程IPが標準工程データDdに含まれるかを、判定する。
【0129】
供給工程IPが標準工程CPであると判定すると、供給工程取得部75は、供給工程IPの実行主体として、「設備データDrにおいて、その供給工程IPを実行することができると定義されている設備R」を対応付ける。供給工程取得部75は、配置済設備RR中にその供給工程IPを実行可能な設備Rがあると、その設備Rを、その供給工程IPに、優先的に対応付ける。
【0130】
供給工程IPが特殊工程SPであると判定すると、供給工程取得部75は、判定結果を表示制御部30に通知して、特殊工程SPであると判定した供給工程IPを、工程設計画面において強調表示させる。受付部40が、特殊工程SPであると判定された供給工程IPを実行させる設備Rを設定するユーザ操作を受け付けると、供給工程取得部75は、ユーザ操作によって供給工程IPの実行主体として設定された設備Rを、その供給工程IPに対応付ける。
【0131】
供給工程取得部75は、実行主体として設備Rを対応付けた供給工程IPを、つまり、「供給工程IPと、その供給工程IPの実行主体である設備Rと、の組合せ」を、供給工程追加部76に通知する。
【0132】
供給工程追加部76は、供給工程追加部76から通知された「供給工程IPと、その供給工程IPの実行主体である設備Rと、の組合せ」を、設計工程データ61に追加する。すなわち、供給工程追加部76は、供給工程追加部76から通知された供給工程IPを、部品判定部74が「入力要素が供給されていない」と判定した組合せの作業工程PPの前に実行されるべき作業工程PPとして、設計工程データ61に追加する。また、供給工程追加部76は、供給工程追加部76から通知された「供給工程IPの実行主体である設備R」を、供給工程IPと対応付けて、設計工程データ61に格納する。
【0133】
項目判定部77は、設計工程データ61に格納されている設備Rと作業工程PPとの組合せについて、以下の判定を実行する。すなわち、項目判定部77は、その設備Rにその作業工程PPを実行させるために予め値を設定しておく必要のある要設定項目Itに、その設備Rにその作業工程PPを実行させる時点で、値が設定されているかを判定する。
【0134】
前述の通り、設備データDrにおいて、設備Rと作業工程PP(標準工程CP)との組合せには、その設備Rにその標準工程CPを実行させるために予め値を設定しておく必要のある要設定項目Itが定義されている。
【0135】
そこで、項目判定部77は、設計工程データ61に格納されている設備Rと作業工程PPとの組合せについて、「設備データDrにおいて、その設備Rとその作業工程PP(標準工程CP)との組合せに対して定義されている要設定項目It」を取得する。次に、項目判定部77は、その設備Rにその作業工程PPを実行させる時点で、取得した要設定項目Itに値が設定されてかを判定する。
【0136】
要設定項目Itに値が設定されていないと判定すると、項目判定部77は、判定結果を表示制御部30に通知して、値が設定されていないと判定した要設定項目Itについて、値の設定を促す情報を表示させる。
【0137】
(記憶部の詳細)
記憶部60は、工程設計装置1が使用する各種データを格納する記憶装置である。記憶部60は、工程設計装置1が実行する(1)制御プログラム、(2)OSプログラム、(3)工程設計装置1が有する各種機能を実行するためのアプリケーションプログラム、および、(4)該アプリケーションプログラムを実行するときに読み出す各種データを非一時的に記憶してもよい。記憶部60はさらに、設計工程データ61を格納している。また、記憶部60には、標準工程取得部11が取得した標準工程データDdと、手順取得部12が取得した手順データDpと、設備取得部13が取得した「設備データDr、および、仮想生産空間に配置された設備R」とが格納されてもよい。
【0138】
設計工程データ61には、手順データDp中の複数の作業工程PPが、その実行主体としての設備Rと、実行順序などと共に、格納される。例えば、手順データDpにおいて、作業工程PP(1)と、作業工程PP(2)と、作業工程PP(3)と、作業工程PP(4)と、がこの順を実行順序として定義されている場合、設計工程データ61には、以下の作業工程PPが格納される。すなわち、設計工程データ61には、作業工程PP(1)と、作業工程PP(2)と、作業工程PP(3)と、作業工程PP(4)と、がこの順を実行順序として格納される。
【0139】
また、作業工程PP(1)の実行主体として設備R(1)が、作業工程PP(2)の実行主体として設備R(2)が、作業工程PP(3)の実行主体として設備R(3)が、作業工程PP(4)の実行主体として設備R(4)が、設定されると、設計工程データ61には、以下の対応が格納される。すなわち、設計工程データ61において、作業工程PP(1)には設備R(1)が、作業工程PP(2)には設備R(2)が、作業工程PP(3)には設備R(3)が、作業工程PP(4)には設備R(4)が、対応付けられて、格納される。
【0140】
設計工程データ61には、作業工程PPと設備Rとの組合せごとに、その設備Rにその作業工程PPを実行させる制御プログラムが格納されてもよい。さらに、設計工程データ61には、作業工程PPと設備Rとの組合せごとに、その設備Rにその作業工程PPを実行させるために予め値を設定しておく必要のある要設定項目Itと、その要設定項目Itに設定されている値と、が格納されてもよい。
【0141】
§3.動作例
図3は、工程設計装置1が実行する処理の概要を説明する図である。
図3に示すように、工程設計装置1は、手順データベース4に格納されている手順データDpと、標準工程データベース2に格納されている標準工程データDdと、を用いて、判定処理を実行する。すなわち、工程設計装置1は、手順データベース4に格納されている手順データDpにおいて定義されている複数の作業工程PPの各々について、標準工程データベース2に格納されている標準工程データDdに含まれるかを判定する。言い換えれば、工程設計装置1は、手順データDp中の複数の作業工程PPの各々について、標準工程CPであるかを判定する。
【0142】
設備データベース3に格納されている設備データDrは、設備Rごとに、その設備Rが実行可能な標準工程CPと、その設備Rにその標準工程CPを実行させる制御プログラムと、を定義している。
【0143】
工程設計装置1は、手順データDpに含まれる作業工程PPのうち、標準工程CPであると判定した作業工程PPに、設備データDrに定義されている設備Rを対応付ける(対応付け処理)。さらに、工程設計装置1は、手順データDpに含まれる作業工程PPのうち、標準工程CPであると判定した作業工程PPに、「その作業工程PPに対応付けた設備Rに、その作業工程PPを実行させる」制御プログラムを対応付ける。
【0144】
工程設計装置1は、手順データDpに含まれる作業工程PPのうち、特殊工程SPであると判定した作業工程PPを、工程設計画面において強調表示させる(強調表示処理)。工程設計装置1は、強調表示させている特殊工程SPについて、その特殊工程SPを実行させる設備Rを設定するユーザ操作を受け付ける(受付処理)。また、工程設計装置1は、設備Rに特殊工程SPを実行させる制御プログラムを入力するユーザ操作を受け付ける。工程設計装置1は、特殊工程SPに、ユーザ操作によって設定された設備Rを対応付け、また、ユーザ操作によって入力された制御プログラムを対応付ける。
【0145】
したがって、工程設計装置1は、手順データDp中に特殊工程SPが含まれる場合にも、手順データDp中の各作業工程PPに対して、実行主体としての設備Rを対応付けたデータを生成することができる。また、工程設計装置1は、「手順データDp中の各作業工程PPに、『その作業工程PPに対応付けた設備Rに、その作業工程PPを実行させる』制御プログラムを、対応付けた」データを生成することができる。生産シュミレーションシステムSysにおいて、工程設計装置1は、特殊工程SPと判定した作業工程PPの制御プログラムを、ユーザから必要な情報を補完しながら、生成する。
【0146】
工程設計装置1についての理解を正確にするため、次に、生産シュミレーションシステムSysにおいて工程設計装置1が利用するデータ等について、その詳細を、
図4から
図11を用いて説明する。
【0147】
(工程設計装置が利用するデータの概要)
(標準工程データの概要)
図4は、標準工程データベース2の概要を説明する図である。標準工程データベース2(「工程定義情報データベース」とも称する)には、標準工程データDdが格納されており、つまり、製品の組立等を実現するために必要な様々な標準工程CPの定義情報が格納されている。標準工程データDd、つまり、各作業工程の工程定義情報には、作業工程PP(作業工程PPの種別)を一意に特定する工程定義IDとともに、その作業工程PPに対する諸元リストが定義されている。作業工程PPに対する諸元リストは、例えば、製品設計上、一般的に要求される諸元リストであり、製品設計情報(手順データDp)を参照して与えられてもよい。ライブラリ内の設備コンポーネント、つまり、設備データDrにおいて定義されている設備Rは、各設備Rが備える工程実行能力を、この工程定義情報(標準工程データDd)に基づいて宣言する。また、製品の組立手順を定義する手順データDpには、この工程定義情報を参照して生成された「組立工程への要求諸元」が記述される。
【0148】
(設備データの概要)
図5は、設備データベース3の概要を説明する図である。設備データベース3(=ライブラリ)には、生産設備レイアウトの作成時等に利用可能な「設備コンポーネントの定義情報(=設備データDr)」が格納されている。設備データDrには、以下の情報が含まれている。
【0149】
(各設備の3次元形状)
すなわち、設備データDrには、設備Rごとに、各設備Rの3次元機構モデル(形状、および、形状間の拘束条件、センサ・アクチュエータの配置位置など)に係る情報が含まれている。
【0150】
(各設備が作業工程を実行するための制御プログラム等)
設備データDrには、設備Rごとに、各設備Rが実行可能な標準工程CP(作業工程PP)の識別情報である工程IDが、含まれている。また、設備データDrには、設備Rごとに、各設備Rが提供する「工程実行サービス群(=各設備Rが実行可能な標準工程CP)」の呼出しインタフェースに係る情報が含まれている。さらに、設備データDrには、設備Rごとに、各設備Rが実行可能な標準工程CPを、各設備Rに実行させるための制御プログラムが、含まれている。
【0151】
(各設備の状態マシン図)
設備データDrには、設備Rごとに、状態マシン、および、「状態マシン中の各状態におけるサービス実行可否(つまり、各状態において、どの標準工程CP(作業工程PP)を実行することができるかを示す情報)」が含まれている。
【0152】
各設備Rの状態マシン図においては、「その設備Rがとり得る複数の状態」と、「各状態における標準工程CPの実行可否、および、実行可能である場合、実行可能な標準工程CPの識別情報」と、「状態の間の遷移関係」と、が記述されている。言い換えれば、各設備Rの状態マシン図には、「その設備Rがとり得る複数の状態」間の状態遷移情報が、定義されている。
【0153】
例えば、各設備Rの状態マシン図には、少なくとも、以下の3つの状態と、それら3つの状態の間の遷移関係と、が記述されている。すなわち、各設備Rの状態マシン図には、(1)その設備Rの初期状態が、つまり、その設備Rに電源を投入した直後の状態が、記述されている。また、各設備Rの状態マシン図には、(2)その設備Rが実行可能な作業工程PP(具体的には、標準工程CP)を、その設備Rが実行している状態である実行状態が記述されている。さらに、各設備Rの状態マシン図には、(3)実行状態において実行される作業工程PP(具体的には、標準工程CP)を、その設備Rが実行可能な状態である待機状態が記述されている。なお、待機状態と初期状態とは同じであってもよい。
【0154】
(実行可能な作業工程に係る、各設備の能力=工程実行能力)
設備データDrには、設備Rごとに、「どの標準工程CP(作業工程PP)を、どういった諸元レンジで実行可能であるか」を記述した工程実行能力を定義した情報が含まれている。設備Rと標準工程CP(作業工程PP)との組合せに対する工程実行能力は、標準工程データDd(=各標準工程CPの工程定義情報)を参照して、記述されていてもよい。すなわち、各標準工程CP(作業工程PP)に対し各設備コンポーネント(=設備R)が備える工程実行能力は、その設備Rがその各標準工程CPを実行するのに際して備える能力の範囲(各工程実行サービスの受け入れ可能なパラメータレンジ)を示している。そして、工程実行能力は、標準工程データDd(=各標準工程CPの工程定義情報)に定義されている諸元リストに基づいて記述されてもよい。
【0155】
(各設備が実行可能な作業工程についての入出力要素)
設備データDrには、設備Rと標準工程CP(作業工程PP)との組合せごとに、入出力要素(ワーク)を定義した情報が含まれている。すなわち、或る設備Rに或る標準工程CPを実行させるために、その標準工程CPの実行前にその設備Rに供給しておくべき入力要素(入力ワーク)、および、その設備Rがその標準工程CPの実行により出力する出力要素(出力ワーク)が、定義されている。
【0156】
(各設備が各作業工程を実行するための要設定項目)
設備データDrには、設備Rと標準工程CP(作業工程PP)との組合せごとに、「その設備Rにその標準工程CPを実行させるために予め値を設定しておく必要のある項目(=要設定項目It)」を定義した情報が含まれている。この「その設備Rにその標準工程CPを実行させるために予め値を設定しておく必要のある」要設定項目Itは、例えば、以下の2種類の項目に大別されてもよい。
【0157】
(1)設備データDrにおいて、設備Rと標準工程CPとの組合せには、その設備Rがその標準工程CPを実行する前に値の設定を必要とする「入力要素(ワーク)についての要設定項目It(=入力要素ごとに値を設定しておくべき項目)」が、対応付けられている。また、設備データDrにおいて、設備Rと標準工程CPとの組合せには、その設備Rがその標準工程CPを実行する前に値の設定を必要とする「出力要素(ワーク)についての要設定項目It(=出力要素ごとに値を設定しておくべき項目)」が、対応付けられている。
【0158】
このような要設定項目Itとしては、例えば、「ネジを拾い上げる標準工程CPについて、ピックアップすべきネジが、ピックアップ前に置かれている位置を示す項目」、および、「作業工程PPの実行により生成した出力要素の出力位置」を挙げることができる。
【0159】
ネジS1を拾い上げる場合のネジS1の位置、および、作業工程PPの出力要素の出力位置などのように、設備Rと標準工程CPとの組合せには、その設備Rがその標準工程CPを実行する際の入出力要素ごとに値を設定すべき要設定項目Itが対応付けられている。
【0160】
(2)設備データDrにおいて、設備Rと標準工程CPとの組合せには、その設備Rがその標準工程CPを実行する際に必要とする入出力要素には依存しない要設定項目Itが、対応付けられている。このような要設定項目Itとしては、例えば、「所定のトルクでネジを締め付けるのに必要な、ドライバビットのねじ頭への押し付け力を示す項目」を挙げることができる。すなわち、所定のトルクでネジを締め付けるためには、締め付けるネジがネジS1であるかネジS2であるかに依存せずに、「ドライバビットが、ネジS1またはネジS2のねじ頭の印加する押し付け力」を予め設定しておく必要がある。
【0161】
なお、「所定のトルクでネジを締め付けるのに必要な、ドライバビットのねじ頭への押し付け力を示す項目」は、入出力要素ごとに値を設定すべき要設定項目Itとしてもよい。「ドライバビットのねじ頭への押し付け力」は、必要な締付トルクに比例させて決定してもよく、例えば、強く締め付ける際には、「ドライバビットのねじ頭への押し付け力」を強く(=大きく)してもよい。また、ネジ穴素材が柔らかく、軽いトルクで締めつけないといけないネジについては、「ドライバビットのねじ頭への押し付け力」を、弱く(=小さく)してもよい。
【0162】
入出力要素には依存しない要設定項目Itとして、「ドライバビットのねじ頭への押し付け力」を挙げたのは単に例示であり、「ドライバビットのねじ頭への押し付け力」は、入出力要素ごとに値を設定すべき要設定項目Itとしてもよい。「ドライバビットのねじ頭への押し付け力」に限られず、設備データDrにおいて、設備Rと標準工程CPとの組合せには、その設備Rがその標準工程CPを実行する際に必要とする入出力要素には依存しない要設定項目Itが、対応付けられている。
【0163】
(要設定項目の一例:入出力要素から独立した要設定項目)
図6は、設備データDr中の要設定項目Itのうち、入出力要素から独立した要設定項目Itの一例を示す図である。
図5を用いて説明したように、設備データDrには、設備Rに標準工程CPを実行させるための要設定項目Itとして、入出力要素ごとの要設定項目Itと、入出力要素に依存しない(=入出力要素から独立した)要設定項目Itと、が定義される。
【0164】
例えば、設備データDrにおいて、「ネジ締付コンポーネント(「ネジの締付」という標準工程CP(x))」を実行可能な設備R(設備コンポーネント)には、
図6に例示するような、入出力要素から独立した要設定項目Itが対応付けられる。すなわち、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」に「ネジの締付」という標準工程CP(x)(サービス)を実行させる(利用する)ための要設定項目Itとして、「スラスト軸バッファ機構の諸元」という要設定項目It(x)が対応付けられる。
【0165】
工程設計装置1は、設備データDrにおいて定義されている「スラスト軸バッファ機構の諸元」という要設定項目It(x)について、以下の判定を行なう。すなわち、工程設計装置1は、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」に「ネジの締付」という標準工程CP(x)(サービス)を実行させる(利用する)前に、「スラスト軸バッファ機構の諸元(要設定項目It(x))」に対し、値が設定されているかを判定する。工程設計装置1は、「スラスト軸バッファ機構の諸元(要設定項目It(x))」に値が設定されていないと判定すると、要設定項目It(x)への値の設定をユーザに求める。工程設計装置1は、ユーザによる「要設定項目It(x)への値の入力」を受け付けると、ユーザに入力された値を設定した要設定項目It(x)を、設計工程データ61における「設備R(x)と標準工程CP(x)との組合せ」に対応付ける。
【0166】
ここで、「ネジ締め(標準工程CP(x))」において、ネジの回転と締付トルク管理とは、電動ドライバによって実現される。その際、ドライバビットがネジ頭から離れて空転しないように、ネジ込み量に対してドライバの位置を追従してするように、ロボット手先位置は制御される必要がある。
【0167】
「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」において、電動ドライバは、「スラスト軸バッファ機構」を介して、ロボット手先に固定される。「スラスト軸バッファ機構」は、ドライバの軸方向に対して自由度を持つスプリングが入った、簡易なスライド機構であり、バッファの変位検出センサを備え、バッファ変位が設定された閾値以下になると信号を発生する。そして、指定トルクでのネジ締付に必要な「ドライバビットのネジ頭への押し付け力」を生み出すためのバッファ変位が維持されるように、ドライバの位置が制御される。
【0168】
この「ドライバの位置の制御」を実現するために、「スラスト軸バッファ機構」に係る諸元(要設定項目It)への値の設定が、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」によるサービス提供前に、必要となる。言い換えれば、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」が「ネジ締付コンポーネント(標準工程CP(x))」を実行するためには、実行前に、「スラスト軸バッファ機構」に係る要設定項目Itに、値が設定される必要がある。
【0169】
(要設定項目の一例:入出力要素ごとの要設定項目)
図7は、設備データDr中の要設定項目Itのうち、入出力要素に係る項目の一例を示す図である。例えば、設備データDrにおいて、「ネジのピック」という標準工程CP(y)を実行可能な設備R(設備コンポーネント)には、
図7に例示するような、入出力要素ごとの(=入出力要素に係る)要設定項目Itが対応付けられる。すなわち、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」に「ネジのピック」という標準工程CP(y)(サービス)を実行させる(利用する)ための要設定項目Itとして、「ScrewPosition(ネジ供給位置)」という要設定項目It(y)が対応付けられる。
【0170】
例えば、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」が実行可能な「ネジのピック」という標準工程CP(y)(サービス)は、以下のような動作である。すなわち、「ネジ吸着能力をもったドライバビット先端を、指定されたネジの供給位置へと移動させ、ドライバのビット先端によりネジを1つピックアップする(拾い上げる)」という動作である。ここで、「指定されたネジの供給位置」は、「ScrewPosition(ネジ供給位置)」という要設定項目It(y)に設定されている値によって特定される。
【0171】
なお、このサービスは、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」が、
図10において説明する所定の状態(具体的には、「AwaitingWithScrewOnBiit」状態)にある場合にのみ実行することができる。このサービスの実行完了後、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」の状態は、
図10において後述する「AwaitingWithScrewOnBiit」状態へと、遷移する。なお、
図7に例示する各パラメータは、このサービス呼出し時に引数として指定することができる。
【0172】
図8は、設備データDr中の要設定項目Itのうち、入出力要素に係る項目の、
図7に示したのとは別の項目の一例を示す図である。例えば、設備データDrにおいて、「ネジの挿入後締付」という標準工程CP(z))を実行可能な設備R(設備コンポーネント)には、
図8に例示するような、入出力要素ごとの(=入出力要素に係る)要設定項目Itが対応付けられる。すなわち、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」に「ネジの挿入後締付」という標準工程CP(z)(サービス)を実行させる(利用する)ための要設定項目Itとして、「ScrewHoleCenterPosition(ワーク表面ネジ穴中心)」という要設定項目It(z)が対応付けられる。
【0173】
例えば、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」が実行可能な「ネジの挿入後締付」という標準工程CP(z)(サービス)は、以下のような動作である。すなわち、「ビット先端にネジ吸着済みのドライバを用いて、指定されたネジ穴位置にネジを挿入し、ドライバが設定されたトルク条件で締付完了信号を送るまで締付を行う」という動作である。ここで、「指定されたネジ穴位置」は、「ScrewHoleCenterPosition(ワーク表面ネジ穴中心)」という要設定項目It(z)に設定されている値によって特定される。
【0174】
なお、このサービスは、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」が、
図10において説明する所定の状態(具体的には、「AwaitingWithScrewOnBit(ドライバ先端にネジ吸着済)」状態)にある場合にのみ実行できる。このサービスの実行中は、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」の状態は、
図10の「ExecutingServiceWithAScrew」状態に遷移し、他のサービスの実行は拒否される(つまり、設備R(x)が他の作業工程を実行することはできない)。このサービスの実行完了後、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」の状態は、
図10の「AwaitingWioutScrewOnBit(ドライバ先端にネジなし)」状態に遷移する。なお、
図8に例示する各パラメータは、このサービス呼出し時に引数として指定することができる。
【0175】
図9は、設備データDr中の要設定項目Itのうち、入出力要素に係る項目の、
図7および
図8に示したのとは別の項目の一例を示す図である。例えば、設備データDrにおいて、「ネジの増し締め」という標準工程CP(w)を実行可能な設備R(設備コンポーネント)には、
図9に例示するような、入出力要素ごとの(=入出力要素に係る)要設定項目Itが対応付けられる。すなわち、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」に「ネジの増し締め」という標準工程CP(w)(サービス)を実行させる(利用する)ための要設定項目Itとして、「ScrewHoleCenterPosition(ワーク表面ネジ穴中心)」という要設定項目It(z)が対応付けられる。
【0176】
例えば、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」が実行可能な「ネジの増し締め」という標準工程CP(w)(サービス)は、以下のような動作である。すなわち、「ビット先端にネジが付いていないドライバを用いて、指定されたネジ穴位置に挿入済み(軽くネジ締め済み)のネジを増し締めする。」という動作である。ここで、「指定されたネジ穴位置」は、「ScrewHoleCenterPosition(ワーク表面ネジ穴中心)」という要設定項目It(z)に設定されている値によって特定される。
【0177】
なお、このサービスは、「ネジ締付コンポーネント(設備R(x))」が、
図10において説明する所定の状態(具体的には、「AwaitingWioutScrewOnBit(ドライバ先端にネジなし)」状態にあるときにのみ実行することができる。このサービスの実行中は、
図10の「ExecutingServiceWithoutScrew」状態となり、他のサービスの実行は拒否される。そして、このサービスの実行完了後、「AwaitingWioutScrewOnBit(ドライバ先端にネジなし)」状態に遷移する。なお、
図9に例示する各パラメータは、このサービス呼出し時に引数として指定することができる。
【0178】
(状態マシン図の一例)
図10は、設備データDr中の状態マシン図の一例を示す図である。設備データDrには、設備R(設備コンポーネント)の状態マシンを含み、状態マシン中の各状態において、「サービス(標準工程CP)の実行可否」、および、「実行可能な場合、実行可能な標準工程CP」が定義されている。
【0179】
図10には、「ネジ締付コンポーネント」という設備Rの状態マシン図が例示されている。
図10に例示する状態マシン図には、(1)「初期状態(Initializing)」、および、(2)作業工程PP(具体的には、標準工程CP)を実行している状態である「実行状態」が定義されている。また、
図10に例示する状態マシン図には、各実行状態において実行される作業工程PP(具体的には、標準工程CP)を、その設備Rが実行可能な状態である「待機状態」が定義されている。
【0180】
図11は、
図10に例示した状態マシン図における状態について、状態ごとに、内容、および、その状態において呼出可能なサービスを説明する表である。
図11において定義されているように、
図10の「PickingAScrew」は「実行状態」であり、具体的には、「ネジ締付コンポーネント」という設備Rが「ネジのピック」という標準工程CP(y)(サービス)を実行している状態である。
【0181】
図10の「ExecutingServiceWithoutScrew」は「実行状態」であり、具体的には、「ネジ締付コンポーネント」という設備Rが、ネジを用いないサービス(例えば、「ネジの増し締め」という標準工程CP(w))を実行している状態である。
【0182】
図10の「ExecutingServiceWithAScrew」は「実行状態」であり、具体的には、「ネジ締付コンポーネント」という設備Rが、ネジを消費するサービス(例えば、「ネジの挿入後締付」という標準工程CP(z))を実行している状態である。
【0183】
図10の「AwaitingWithoutScrewOnBit」は「待機状態」であり、具体的には、「ネジ締付コンポーネント」という設備Rが、「PickingAScrew」において実行される標準工程CP(y)を実行可能な状態である。また、「AwaitingWithoutScrewOnBit」は、「ネジ締付コンポーネント」という設備Rが、「ExecutingServiceWithoutScrew」において実行される標準工程CP(例えば、標準工程CP(w))を実行可能な状態である。
【0184】
図10の「AwaitingWithAScrewOnBit」は「待機状態」であり、具体的には、「ネジ締付コンポーネント」という設備Rが、「ExecutingServiceWithAScrew」において実行される標準工程CP(例えば、標準工程CP(z))を実行可能な状態である。
【0185】
(システムにおいて実行される処理フローの概要)
図12は、
図2に例示した生産シュミレーションシステムSysの全体において実行される処理の概要を説明するフロー図である。設備データベース3には設備データDrが格納されており、レイアウト作成装置6は、設備データベース3から、設備データDrを取得する。ユーザは、レイアウト作成装置6を用いて、ライブラリ内の設備コンポーネント(つまり、設備データDrにおいて定義されている設備R)を組み合わせて、生産設備レイアウトを作成する(S1)。
【0186】
レイアウト作成装置6は、ユーザにより作成された生産設備レイアウトについての情報である生産設備レイアウトデータ(例えば、仮想生産空間に配置された設備Rである、配置済設備RRを特定する情報など)を、工程設計装置1に出力する。
【0187】
ユーザは、手順生成装置5を用いて、実現したい製品(製品群)の組立手順を記述し、すなわち、手順生成装置5を用いて、実現したい製品(群)の手順データDpを生成する。手順生成装置5は、実現したい製品(生産対象製品)の3次元CAD(Computer Aided Design)データを取得し、取得した3次元CADデータをユーザに提示する。また、手順生成装置5は、標準工程データベース2から標準工程データDdを取得し、取得した標準工程データDdにおいて定義されている複数の標準工程CPの各々をユーザに提示する。
【0188】
ユーザが、手順生成装置5を用いて、実現したい製品(製品群)の組立手順(手順データDp)を記述すると(S2)、手順生成装置5は、記述された手順データDpを、工程設計装置1に出力し、または、手順データベース4に格納する。
【0189】
工程設計装置1は、手順生成装置5または手順データベース4から、「製品の組立手順データ(手順データDp)」を取得する。工程設計装置1は、取得した手順データDpの要求する作業工程PPを、与えられた生産設備レイアウト等により実現するための工程実行シーケンス(=設計工程データ61)を作成する(S3)。すなわち、工程設計装置1は、手順データDpにおいて実行順序と共に定義されている複数の作業工程PPの各々に対し、レイアウト作成装置6から取得した生産設備レイアウトデータにおいて定義されている配置済設備RR等を、実行主体として対応付ける。工程設計装置1は、手順データDp中の各作業工程PPに対して実行主体としての設備Rを対応付けた工程実行シーケンス(=設計工程データ61)を生成し、生成した工程実行シーケンスを生産シミュレーション装置7に出力する。
【0190】
生産シミュレーション装置7は、工程設計装置1から取得した「工程実行シーケンス(=設計工程データ61)」を実行し、動作結果をユーザに表示する(S4)。すなわち、生産シミュレーション装置7は、設計工程データ61において実行順序と共に定義されている各作業工程PPを、設計工程データ61において各作業工程PPに対応付けられている設備Rに実行させるシミュレーションを実行する。そして、生産シミュレーション装置7は、シミュレーションの実行結果をユーザに表示する。
【0191】
(生産設備レイアウトの作成例)
図13は、
図12のS1に対応する設備レイアウトの作成方法の一例を説明する図である。
図13に例示するように、ユーザは、レイアウト作成装置6を用いて、ライブラリ内の(つまり、設備データベース3に定義された)設備コンポーネント(=設備R)を組み合わせて、生産設備のレイアウト案を作成する。具体的には、ユーザは、ライブラリから設備コンポーネントを仮想生産空間に配置し、つまり、レイアウト作成装置6が提示する設備Rの一覧から任意の設備Rを選択して、仮想生産空間上にレイアウトする。
【0192】
ライブラリ内の設備コンポーネントが仮想生産空間に配置されることにより、その設備コンポーネントが提供する工程実行サービスは、呼び出し可能になる。つまり、レイアウト作成装置6は、仮想生産空間上に配置された設備R(配置済設備RR)を、その設備Rが実行可能な作業工程PPを実行する設備Rとして、工程設計装置1に通知する。特に、レイアウト作成装置6は、「配置済設備RRを特定する情報、および、仮想生産空間における配置済設備RRの配置位置情報などを含む」生産設備レイアウトデータを、工程設計装置1に通知する。
【0193】
レイアウト作成装置6は、配置済設備RRについて、「配置済設備RRを特定する情報、および、仮想生産空間における配置済設備RRの配置位置情報」以外の情報も、生産設備レイアウトデータとして、工程設計装置1に通知してもよい。すなわち、レイアウト作成装置6は、配置済設備RRについて、「各設備Rが実行可能な標準工程CP(作業工程PP)の識別情報である工程ID」、および、「各設備Rが実行可能な標準工程CPについての、工程実行能力」を生産設備レイアウトデータに含めてもよい。また、レイアウト作成装置6は、配置済設備RRについて、「各設備Rが実行可能な標準工程CPを、各設備Rに実行させるための制御プログラム」等を、生産設備レイアウトデータに含めてもよい。言い換えれば、レイアウト作成装置6は、設備データベース3において各配置済設備RRについて定義されている各種情報を、生産設備レイアウトデータに含めて、工程設計装置1に出力してもよい。
【0194】
(手順データの作成例)
図14は、
図12のS2に対応する「製品ごとの手順データDp」を作成する方法の一例を説明する図である。ユーザは、「製品の3次元CADデータ」および「標準工程データDdにおいて定義されている複数の標準工程CPの各々」をユーザに提示する手順生成装置5を用いて、製品ごとの手順データDpを記述する(作成する)。手順生成装置5がユーザに提示する3次元CADデータには、製品の部品構成と、各部品の形状・材質と、組立後の位置関係と、が電子的に記述されている。
【0195】
例えば、
図14において、ユーザは、第1に、手順生成装置5により提示される「部品Aの3次元CADデータ」および「部品Bの3次元CADデータ」について、「部品A上に部品Bを重ね合せる」という作業工程PP(1)の実行が必要であることを記述している。
【0196】
第2に、ユーザは、手順生成装置5により提示される「部品A上に部品Bが重ねられた仕掛り製品の3次元CADデータ」および「ネジの3次元CADデータ」について、「ネジ挿入締付という作業工程PP(2)の実行が必要である」ことを記述している。
【0197】
手順生成装置5は、作業工程PP(2)の実行結果として、すなわち、作業工程PP(2)の出力として、「部品Aに部品Bがネジ止めされた製品の3次元CADデータ」を、ユーザに提示する。
【0198】
図14に示すようにして、ユーザは、手順生成装置5を用いて、「製品ごとの手順データDp」を作成する。
図14に示す例で作成される「製品ごとの手順データDp」には、実行順序が1位である作業工程PP(1)と、実行順序が2位である作業工程PP(2)と、が定義されることになる。手順生成装置5は、ユーザにより記述された、「実行順序が1位である作業工程PP(1)、および、実行順序が2位である作業工程PP(2)」を含む手順データDpを、工程設計装置1に出力し、または、手順データベース4に格納する。
【0199】
図15は、手順データDpにおける各作業工程PPの記述例を示す図である。手順データDpの各作業工程PPには、製品の組立手順に対する要求諸元値が標準工程CP等に基づき記述される。前述の通り、手順生成装置5は、ユーザに、「製品の3次元CADデータ」に加えて、「標準工程データDdにおいて定義されている複数の標準工程CPの各々」を、提示する。
【0200】
例えば、
図4に例示した「ネジ挿入締付」という標準工程CPには、「ネジ諸元」、「ワークピース側ネジ穴諸元」、「締付トルク」、「締付トルク許容誤差」、「ネジ挿入/着座時速度の許容範囲」、「ビット押し付け力の許容範囲」、および、「タクトタイム要求値」などが定義されている。「ネジ諸元」には、「ヘッド形状/サイズ」、「単位系」、「ネジ山のピッチと条数(ピッチ×条数=リード)」、「ネジ首元からネジ頭頂点までの長さ」、「ネジ首元からネジ頭ビット先端接触点までの長さ」、「ネジ首元からネジ先端までの長さ」、および、「幾何情報の公差」などが含まれる。「ワークピース側ネジ穴諸元」には、「ネジ山諸元は製品設計としてネジに適合する前提」、「単位系」、「ネジ穴ワーク表面中心点」、「ワーク表面から着座面までの深さ」、「ネジ穴全体深さ」、および、「幾何情報の公差」などが含まれる。
【0201】
これに対応して、
図15に例示するように、ユーザは、手順データDpにおける「ネジ挿入締付」という作業工程PPについて、「ネジ諸元」、「ワークピース側ネジ穴諸元」、「締付トルク」、「締付トルク許容誤差」、「ネジ挿入/着座時速度の許容範囲」、「ビット押し付け力の許容範囲」、および、「タクトタイム要求値」を定義する。さらに、「ネジ諸元」には、「ヘッド形状/サイズ」、「ピッチと条数」、「ネジ首元からネジ頭頂点までの長さ」、「ネジ首元からネジ頭ビット先端接触点までの長さ」、「ネジ首元からネジ先端までの長さ」、および、「幾何情報の公差」などを定義する。また、「ワークピース側ネジ穴諸元」には、「ネジ穴ワーク表面中心点」、「ワーク表面から着座面までの深さ」、「ネジ穴全体深さ」、および、「幾何情報の公差」などを定義する。
【0202】
図16は、製品ごとの手順データDpに含まれる標準工程CPおよび特殊工程SPの一例を示す図である。具体的には、
図16は、「スイッチング電源背面へのDINレール取り付けプレートのネジ止め作業」中に含まれる標準工程CPおよび特殊工程SPの例を示している。
【0203】
「スイッチング電源背面へのDINレール取り付けプレートのネジ止め作業」には、以下の3つの作業工程が、この順を実行順序として、含まれている。すなわち、「右プレートをボディ上に置く」との作業工程PP(1)と、「右プレート上の指定位置を押し下げながらスライドさせ、ボディの固定爪に右プレートを嵌め込む」との作業工程PP(2)と、「右プレート上部の指定位置に、ねじを挿入し締付する」との作業工程PP(3)と、が含まれている。
【0204】
作業工程PP(1)は「Place(配置する)」との標準工程CP(1)に対応し、作業工程PP(3)は「InsertAndScrew(ねじを挿入し締付する)」との標準工程CP(2)に対応する。しかしながら、作業工程PP(2)は、標準工程データベース2に格納されている標準工程データDdにおいて定義されている標準工程CPではなく、この製品に固有な特殊工程SPであり、「Slide-in」と称されるような特殊工程SPである。
【0205】
(工程設計装置が実行する処理フロー例)
図17は、工程設計装置1が実行する処理の一部を例示するフロー図であり、
図12のS3において工程設計装置1が実行する処理(工程実行シーケンス生成処理)の詳細を説明する図である。
【0206】
工程設計装置1は、工程実行シーケンス生成処理を開始し(S3−1)、先ず、レイアウト作成装置6からの、「配置済設備RRを特定する情報、および、仮想生産空間における配置済設備RRの配置位置情報などを含む」生産設備レイアウトデータを読み込む。また、工程設計装置1は、設備データベース3から、設備データDrを取得する。
【0207】
工程設計装置1は、読み込んだ生産設備レイアウトデータに含まれる設備コンポーネント(配置済設備RR)から、配置済設備RRを実行主体とする「空の工程実行シーケンス」を作成する(S3−2)。「工程実行シーケンス」とは、「製品ごとの手順データDp」中の複数の作業工程PPを、その実行主体、および、その実行順序と対応付けたデータである。
【0208】
なお、工程設計装置1がレイアウト作成装置6から取得する生産設備レイアウトデータには、「配置済設備RRを特定する情報、および、仮想生産空間における配置済設備RRの配置位置情報」以外の情報が含まれていてもよい。例えば、工程設計装置1が取得する生産設備レイアウトデータには、各配置済設備RRについて設備データベース3において定義されている各種情報が含まれていてもよい。具体的には、生産設備レイアウトデータには、「各配置済設備RRが実行可能な標準工程CP(作業工程PP)の識別情報である工程ID」、および、「各配置済設備RRが実行可能な標準工程CPについての工程実行能力」などが含まれていてもよい。
【0209】
また、工程設計装置1は、生産設備レイアウトデータに含まれる「配置済設備RRを特定する情報」から、設備データベース3を参照して、各配置済設備RRについて設備データベース3の設備データDrにおいて定義されている各種情報を取得してもよい。
【0210】
工程設計装置1は、手順生成装置5または手順データベース4から取得した「製品の組立手順データ(手順データDp)」を読み込む。工程設計装置1は、読み込んだ手順データDpにおいて定義されている複数の作業工程PPの各々について、実行主体として対応付けるべき設備Rを、生産設備レイアウト内の配置済設備RRの中から検索する(S3−3)。具体的には、工程設計装置1は、「手順データDpの各作業工程PPの、工程ID(=各作業工程PPの識別情報)、および、要求諸元を満たす工程実行能力」を備えた設備コンポ―ネント(設備R)を、配置済設備RRの中から検索する。
【0211】
すなわち、工程設計装置1は、手順データDpの各作業工程PPのIDと、各配置済設備RRの「実行可能な作業工程PPのID」と、が一致するかを判定する。そして、例えば、「手順データDp中の作業工程PP(n)のID:PP01」と、「配置済設備RR(1)の実行可能な作業工程PP(m)のID:PP01」とが一致すると判定すると、工程設計装置1は、さらに、以下の判定を実行する。すなわち、「作業工程PP(n)の要求諸元」を、「配置済設備RR(1)の、作業工程PP(m)についての工程実行能力」が満たしているかを判定する。例えば、工程設計装置1は、「配置済設備RR(1)の、作業工程PP(m)についての『ネジ諸元』などについて定義されている工程実行能力」が、「作業工程PP(n)の『ネジ諸元』などについて定義されている要求」を満たすかを判定する。工程設計装置1は、「作業工程PP(n)の要求諸元」を、「配置済設備RR(1)の、作業工程PP(m)についての工程実行能力」が満たしていると判定すると、作業工程PP(n)に、配置済設備RR(1)を対応付ける。
【0212】
工程設計装置1は、製品の組立手順データ(手順データDp)中の全ての作業工程PPについて、「実行主体としての設備コンポーネント(設備R)を割り当てたか(=対応付けたか)」を判定する(S3−4)。工程設計装置1は、手順データDp中の全ての作業工程PPについて、「設備コンポーネントを割り当てた」と判定すると(S3−4でYes)、
図19のS3−13に遷移する。
【0213】
「設備コンポーネントを割り当てていない」と判定した作業工程PPが手順データDp中に残っていると(S3−4でNo)、工程設計装置1は以下の判定を実行する。すなわち、工程設計装置1は、手順データDp中の各作業工程PPについて、「要求諸元を満たす工程実行能力を備える設備コンポーネント(設備R)が、配置済設備RRの中に1つ以上存在するか」を判定する(S3−5)。
【0214】
工程設計装置1は、手順データDp中の作業工程PPのうち、「要求諸元を満たす工程実行能力を備える設備Rが、配置済設備RRの中に1つ以上存在する」と判定した(S3−5でYes)作業工程PPについて、
図18のS3−6の処理を実行する。また、工程設計装置1は、手順データDp中の作業工程PPのうち、「要求諸元を満たす工程実行能力を備える設備Rが、配置済設備RRの中に存在しない」と判定した(S3−5でNo)作業工程PPについて、
図18のS3−7の処理を実行する。
【0215】
図18は、
図1の工程設計装置が実行する処理の、
図17に例示したのとは異なる部分を例示するフロー図であり、具体的には、
図17に例示した処理の後に実行される処理を示すフロー図である。
【0216】
工程設計装置1は、手順データDp中の作業工程PPのうち、「要求諸元を満たす工程実行能力を備える設備Rが、配置済設備RRの中に1つ以上存在する」と判定した(S3−5でYes)作業工程PPについて、ユーザに実行主体を選択させる。すなわち、工程設計装置1は、S3−5でYesと判定した作業工程PPについて、ユーザに、「どの設備コンポーネントに割り付けるか(具体的には、どの配置済設備RRを対応付けるか)」を決定させる。そして、工程設計装置1は、その作業工程PPに、ユーザによりその作業工程PPの実行主体として決定された配置済設備RRを、対応付ける。工程設計装置1は、その作業工程PPに、さらに、その作業工程PPの実行サービス呼出し処理と、入出力要素(入力・出力ワーク)と、を対応付けて、工程実行シーケンスに追記する(S3−6)。言い換えれば、工程設計装置1は、その作業工程PPに、実行主体としての配置済設備RR、その作業工程PPの実行サービス呼出し処理、および、入出力要素を対応付けたデータを、記憶部60の設計工程データ61に格納する。工程設計装置1は、S3−6の処理を実行した後、S3−3に戻る。
【0217】
工程設計装置1は、手順データDp中の作業工程PPのうち、「要求諸元を満たす工程実行能力を備える設備Rが、配置済設備RRの中に存在しない」と判定した(S3−5でNo)作業工程PPについて、以下の情報をユーザに通知する。すなわち、工程設計装置1は、「設備レイアウトに配置された設備(つまり、配置済設備RR)の中には、必要な工程実行能力を持つ設備コンポーネント(つまり、設備R)が見つからない」旨を、ユーザに表示する(S3−7)。
【0218】
工程設計装置1の工程判定部20は、「要求諸元を満たす工程実行能力を備える設備Rが、配置済設備RRの中に存在しない」と判定した作業工程PPについて、標準工程データベース2の標準工程データDdに含まれているかを判定する(S3−8)。すなわち、工程判定部20は、その作業工程PPが標準工程CPであるかを判定する。
【0219】
工程判定部20により標準工程CPでないと判定された(S3−8でNo)作業工程PPについて、表示制御部30は、表示装置8に「特殊工程SPである」旨を表示させる。また、工程判定部20により標準工程CPでないと判定された作業工程PPについて、表示制御部30は、「製品の組立手順データ(手順データDp)中の、当該作業工程PPに関する詳細情報」を表示装置8に表示させる(S3−9)。
【0220】
ユーザは、設備レイアウト内の設備コンポーネント(=配置済設備RR)、または、設備データDrにおいて定義されている設備Rに、特殊工程SPの実行を手動で割り当てる。つまり、ユーザは、工程判定部20により「標準工程CPでない(=特殊工程SPである)」と判定され、表示制御部30により強調表示されている作業工程PPに、実行主体としての配置済設備RRまたは設備Rを対応付ける。
【0221】
工程設計装置1の受付部40は、「特殊工程SPに、実行主体としての配置済設備RRまたは設備Rを対応付ける」ユーザ操作を受け付け、表示制御部30は、対応付けられた配置済設備RRまたは設備Rの工程実行シーケンスを表示させる。
【0222】
また、工程設計装置1の受付部40は、「特殊工程SPに対応付けた配置済設備RRまたは設備Rに、特殊工程SPを実行させる」制御プログラムを入力するユーザ操作を受け付ける。表示制御部30は、受付部40が受け付けたユーザ操作により入力された制御プログラムを、置済設備RRまたは設備Rの工程実行シーケンス内に表示させる。
【0223】
すなわち、工程設計装置1は、「ユーザに選択された置済設備RRまたは設備R」を実行主体とする工程実行サービスのスケルトンに、ユーザにより入力された「特殊工程SPを実現する制御プログラム」を記述する(S3−10)。工程設計装置1は、S3−10の処理を実行した後、S3−3に戻る。
【0224】
工程判定部20により標準工程CPであると判定された(S3−8でYes)作業工程PPは、S3−5で、「要求諸元を満たす工程実行能力を備える設備Rが、配置済設備RRの中に存在しない」と判定されている。「標準工程CPである」と判定され、かつ、「その作業工程PPの要求諸元を満たす工程実行能力を持った設備コンポーネント(配置済設備RR)が無い」と判定された作業工程PPについて、工程設計装置1は、以下の処理を実行する。すなわち、工程設計装置1は、設備データベース3を参照して、その作業工程PPについて必要な工程実行能力を持つ設備コンポ―ネント(設備R)を検索し、検索した設備Rを、ユーザに提示する(S3−11)。
【0225】
ユーザは、
図12のS1に戻って、設備レイアウトに配置した設備Rを、S3−11で提示された設備Rへ入れ替える。すなわち、ユーザは、工程設計装置1により「標準工程CPである」と判定され、かつ、「その作業工程PPの要求諸元を満たす工程実行能力を持った設備コンポーネント(配置済設備RR)が無い」と判定された作業工程PPについて、実行主体の再設定を行なう。具体的には、ユーザは、その作業工程PPの要求諸元を満たす工程実行能力を備える設備Rを、設備レイアウト中の配置済設備RRと入れ替える(S3−12)。
【0226】
工程設計装置1は、S3−12の処理が実行されると、S3−12で入れ替えられた、「その作業工程PPの要求諸元を満たす工程実行能力を備える設備R」を含む生産設備レイアウトデータを、レイアウト作成装置6から取得する。そして、工程設計装置1は、その作業工程PPに対し、新たに取得した生産設備レイアウトデータ中の配置済設備RRを対応付け、S3−3に戻る。
【0227】
図19は、
図1の工程設計装置が実行する処理の、
図17および
図18に例示したのとは異なる部分を例示するフロー図であり、具体的には、
図17および
図18に例示した処理の後に実行される処理を示すフロー図である。
【0228】
工程設計装置1は、利用されている設備コンポーネント(=設備R)の工程実行サービス(=作業工程PP)のうち、詳細追加指示が必要なものについて、ユーザに追加指示を促す(S3−13)。つまり、工程設計装置1は、その設備Rにその作業工程PPを実行させるに際して必要な詳細情報等の追加を促す。なお、「利用されている設備コンポーネント(=設備R)の工程実行サービス(=作業工程PP)」とは、「手順データDp中の各作業工程PP」であって、「実行主体として各設備Rが対応付けられた作業工程PP」を指している。
【0229】
具体的には、工程設計装置1の項目判定部77は、利用されている設備Rと作業工程PPとの組合せについて、「設備データDrにおいて、その設備Rとその作業工程PP(標準工程CP)との組合せに対して定義されている要設定項目It」を取得する。次に、項目判定部77は、その設備Rにその作業工程PPを実行させる時点で、取得した要設定項目Itに値が設定されてかを判定する。項目判定部77により「値が設定されていない」と判定された要設定項目Itについて、表示制御部30は、その要設定項目Itに値の設定を促す情報を、表示装置8に表示させる。システム(つまり、工程設計装置1)からの指示に従って、ユーザが追加指示を行う(S3−14)。
【0230】
工程設計装置1は、以下の2つの工程実行サービス(=作業工程PP)を工程実行シーケンスに追加する(S3−15)。
【0231】
すなわち、工程設計装置1は、(A)利用されている設備コンポーネント(=設備R)の工程実行サービス(=作業工程PP)が、事前事後条件として必要とする工程実行サービス(例えば、準備工程RP)を工程実行シーケンスに追加する。具体的には、状態判定部71は、「利用されている設備Rに、利用されている作業工程PPを実行させる時点で、その設備Rが、その作業工程PPの待機状態にあるか」を、設備データDrにおけるその設備Rの状態遷移情報(状態マシン図)を用いて判定する。状態判定部71により「待機状態にない」と判定された組合せの設備Rについて、準備工程取得部72は、設備データDrにおけるその設備Rの状態遷移情報を用いて、準備工程RPを取得し、取得した準備工程RPを準備工程追加部73に通知する。準備工程追加部73は、通知された準備工程RPを、状態判定部71により「待機状態にない」と判定された組合せの作業工程PPの前に実行すべき作業工程PPとして、設計工程データ61に追加する。
【0232】
また、工程設計装置1は、(B)ワーク(部品)のマテリアルフローが補完するために必要な工程実行サービス(例えば、供給工程IP)を工程実行シーケンスに追加する。具体的には、部品判定部74は、「利用されている設備Rに、利用されている作業工程PPを実行させる」時点で、「その設備Rが、その作業工程PPを実行するのに必要な」入力要素が、その設備Rに供給されているかを判定する。供給工程追加部76は、「『部品判定部74により供給されていないと判定された』入力要素を、その設備Rに供給する」供給工程IPを、利用されている作業工程PPの前に実行すべき作業工程PPとして、設計工程データ61に追加する。
【0233】
工程設計装置1は、工程実行サービス呼出し間で出力/入力として受け渡されるワークについて、生産設備レイアウト内での位置をユーザに決定させる(S3−16)。具体的には、項目判定部77は、利用されている設備Rと作業工程PPとの組合せについて、「設備データDrにおいて、その組合せに対して定義されている要設定項目It」のうち、「その組合せの作業工程PPの入出力要素ごとの要設定項目It」を取得する。「設備データDrにおいて、その組合せに対して定義されている要設定項目It」のうち、「その組合せの作業工程PPの入出力要素ごとの要設定項目It」とは、例えば、その設備Rにその作業工程PPを実行させるのに必要な入力要素の位置に係る項目である。
【0234】
次に、項目判定部77は、その設備Rにその作業工程PPを実行させる時点で、取得した要設定項目Itに値が設定されてかを判定する。項目判定部77により「値が設定されていない」と判定された要設定項目Itについて、表示制御部30は、その要設定項目Itに値の設定を促す情報を、表示装置8に表示させる。
【0235】
ユーザは、例えば、生産設備レイアウト内での入出力要素(ワーク)の位置を特定し、つまり、レイアウト作成装置6がユーザに提示する仮想生産空間における入出力要素(ワーク)の位置を決定する。レイアウト作成装置6は、仮想生産空間における入出力要素(ワーク)の位置を、工程設計装置1に通知する。
【0236】
工程設計装置1は、工程実行サービス呼出し間で出力/入力として受け渡されるワークの生産設備レイアウト内での位置から、工程実行サービスの入力となる目標点の位置情報を取得して、工程実行シーケンスに記述する(S3−17)。すなわち、工程設計装置1は、「工程実行シーケンス(=設計工程データ61)中の複数の作業工程PPの間でやり取りされるワーク」の位置を、「レイアウト作成装置6がユーザに提示する仮想生産空間における」ワークの位置から、特定する。「工程実行シーケンス(=設計工程データ61)中の複数の作業工程PPの間でやり取りされるワーク」は、設備データDrにおいて各作業工程PPに対し入出力要素として定義されている。工程設計装置1は、S3−17の処理を実行した後、工程実行シーケンス生成処理を完了する(S3−18)。
【0237】
これまでに
図17、
図18、および、
図19を用いて説明してきた、工程設計装置1の実行する処理は、以下のように整理することができる。すなわち、工程設計装置1の実行する制御方法は、製品を組み立て、または、分解する作業手順(手順データDp)に含まれる複数の作業工程PPの各々について、作業工程PPを実行する実行主体を対応付ける工程設計装置1の制御方法である。工程設計装置1の実行する制御方法は、「各々が、少なくとも1つの設備Rにより実行可能な作業工程PPである、複数の標準工程CP」を定義した標準工程データDdを取得する標準工程取得ステップと、「設備Rごとに、設備Rが実行可能な作業工程PPを定義した設備データDr」を取得する設備取得ステップ(S3−2)と、「製品ごとに、製品を組み立て、または、分解するための複数の作業工程PPを、実行順序と共に定義した手順データDp」を取得する手順取得ステップ(S3−3)と、「手順データDpにおいて定義されている複数の作業工程PPの各々について、標準工程データDdに含まれているか」を判定する工程判定ステップ(S3−8)と、手順データDpの表示画面(工程設計画面)において、「工程判定ステップにて『標準工程データDdに含まれていない』と判定された」作業工程PPである特殊工程SPを強調表示する表示制御ステップ(S3−9)と、を含んでいる。
【0238】
前記の方法によれば、前記制御方法は、手順データDpにおいて定義されている複数の作業工程PPの各々について、標準工程データDdに含まれているかを判定し、標準工程データDdに含まれていないと判定した作業工程PPを特殊工程SPとして強調表示する。
【0239】
ここで、実際の製品の組立および分解に際しては、予め定義しておくことが困難な、その製品固有の特殊な作業工程PPが含まれていることが通常である。
【0240】
前記制御方法は、そのような「予め定義しておくことが困難な、その製品固有の特殊な作業工程PP」が、つまり、標準工程データDdにおいて定義されている標準工程CPではない作業工程PPが、手順データDpに含まれているかを判定する。そして、前記制御方法は、前記手順データDpに含まれている「予め定義しておくことが困難な、その製品固有の特殊な作業工程PP」を、特殊工程SPとして強調表示してユーザに通知し、そのような作業工程PPについての検討をユーザに促す。
【0241】
したがって、前記制御方法は、製品の組立等の手順中に、予め定義しておくことが困難な、その製品固有の特殊な作業工程PPが含まれる場合にも、ユーザにそのような作業工程PPに対する検討を促し、その製品の組立等の工程を設計できるとの効果を奏する。
【0242】
(工程設計画面の概要)
図20は、工程設計装置1が処理実行中に表示装置8に表示させる画面である工程設計画面の一例を示す図である。工程設計装置1は、表示装置8に、
図20に例示する工程設計画面を表示させ、特に、工程設計装置1の表示制御部30は、工程設計画面における各種表示内容を制御する。
【0243】
表示制御部30は、工程設計画面の略中央に、「製品の組立手順データ(手順データDp)」表示欄、および、「工程実行シーケンス(=設計工程データ61)」表示欄(以下、「シーケンス記述欄」とも称する)を、表示させる。
【0244】
表示制御部30は、「製品の組立手順データ」表示欄において、手順データDp中の各作業工程PPを、実行順序が早い作業工程PPが上側に配置されるように表示させる。また、表示制御部30は、「工程実行シーケンス」表示欄に、手順データDp中の各作業工程PPを、その実行主体としての各設備Rと対応付けて、工程実行シーケンスとして表示させる。表示制御部30は、「工程実行シーケンス」表示欄において、工程実行シーケンス中の各作業工程PPを、実行順序が早い作業工程PPが上側に配置されるように表示させる。
【0245】
表示制御部30は、「工程実行シーケンス」表示欄に、レイアウト作成装置6から読み込んだ生産設備レイアウトデータに含まれる設備コンポーネント(配置済設備RR)を実行主体とする「空の工程実行シーケンス」行を表示させる。そして、表示制御部30は、手順データDp中の各作業工程PPを、その作業工程PPに対応付けられた設備Rを実行主体とする「工程実行シーケンス」行に、配置して表示させる。
【0246】
図21は、
図20の工程設計画面におけるシーケンス記述欄(「工程実行シーケンス」表示欄)の表示例および表示内容を説明する図である。
図21の(A)に例示するように、「工程実行シーケンス」表示欄において、縦のレーンは、「工程実行シーケンス」行であり、つまり、生産設備レイアウトデータ中の各配置済設備RRを実行主体とする「工程実行シーケンス」を示している。
図21の(B)に例示するように、「工程実行シーケンス」表示欄の各レーン内の角丸四角は、設備コンポーネントが提供する工程実行サービスの呼出しを示しており、つまり、各配置済設備RRが実行する作業工程PPを示している。また、「工程実行シーケンス」表示欄における四角(角が丸くない四角)は、ワーク(部品、仕掛かり製品、半製品)を示している。「工程実行シーケンス」表示欄において、角丸四角と四角とをつなぐ矢印は、複数の工程実行サービスの間で、ワークが受け渡されることを示している。さらに、工程実行サービスの呼出しを表す角丸四角の上側に配置されているピンは、その工程実行サービスへのワーク(部品等)の入力を示しており、角丸四角の紙面下側に配置されているピンは、その工程実行サービスからのワークの出力を示している。
【0247】
つまり、表示制御部30は、「工程実行シーケンス」表示欄において、実行主体としての設備Rごとに、その設備Rが実行する作業工程PPを、その設備Rを実行主体とする「工程実行シーケンス」行に、角丸四角形状で表示させる。また、表示制御部30は、各設備Rが実行する作業工程PPについて、その設備Rとその作業工程PPとの組合せに対して設備データDrおいて定義されている入出力要素(ワーク)を、四角形状(角が丸くない四角の形状)で表示させる。
【0248】
そして、表示制御部30は、その設備Rを実行主体とする「工程実行シーケンス」行において、その設備Rとその作業工程PPとの組合せに対して定義されている入力要素の入力を、その作業工程PPを示す角丸四角の上側に配置されるピンとして、表示させる。また、表示制御部30は、その設備Rを実行主体とする「工程実行シーケンス」行において、その設備Rとその作業工程PPとの組合せに対して定義されている出力要素の出力を、その作業工程PPを示す角丸四角の下側に配置されるピンとして、表示させる。
【0249】
(特殊工程の強調表示)
図22は、
図20の工程設計画面における特殊工程SPの表示例を示す図であり、
図18におけるS3−9に対応する処理を実行する工程設計装置1が表示する工程設計画面の一例を示している。工程設計装置1の表示制御部30は、手順データDp中の作業工程PPのうち、工程判定部20により特殊工程SPと判定された作業工程PPを、強調表示する。例えば、表示制御部30は、
図22において、「SlideInLeftPlate」との作業工程PPが特殊工程SPである旨をユーザに通知する。具体的には、表示制御部30は、「『SlideInLeftPlate』との作業工程PPは、標準工程CPではありません。」との情報をユーザに通知している。
【0250】
表示制御部30は、工程判定部20により特殊工程SPと判定された作業工程PPについて、さらに、追加教示(例えば、実行主体の設定、設定した実行主体にその作業工程PPを実行させるための制御プログラムの入力など)をユーザに要求する。例えば、表示制御部30は、
図22において、「手順データDp内の詳細情報を参照して、この作業工程を実行させる設備コンポーネント(設備R)を指定してください。」との旨をユーザに通知している。
【0251】
なお、「SlideInLeftPlate」との作業工程PPは、
図16における「Slide-in」との特殊工程SPの一例である。「SlideInLeftPlate」との作業工程PPは、例えば、「ボディ上の所定位置に置かれた左側プレートの指定個所を押し下げながら前方にスライドさせることで、プレートをボディの爪にはめ込む」という、この製品に固有な特殊工程SPである。「SlideInLeftPlate」との作業工程PPは、「ネジ締付」や「重ね合せ」のような標準工程CPではないため、ライブラリ内には、この「SlideInLeftPlate」との特殊工程SPを実行可能な設備コンポーネント(=設備R)は存在しない。したがって、工程設計装置1は、「この特殊工程SPを、どの設備コンポーネントに実行させるか」をユーザに決めさせ、つまり、ユーザに、この特殊工程SPに対応付ける設備Rを決定させる。
【0252】
ユーザが、「手順データDpの当該工程を開く」との選択を実行すると、表示制御部30は、手順データDp中の「SlideInLeftPlate」との作業工程PPの詳細を表示させる。
【0253】
(特殊工程への実行主体の設定)
図23は、
図20の工程設計画面において、特殊工程SPへの作業主体の対応付けをユーザに求める表示例を示す図であり、
図18のS3−10において、ユーザが特殊工程SPに設備Rを対応付ける処理を行なう際の工程設計画面の一例を示している。
【0254】
表示制御部30は、例えば工程設計画面の左側(
図23の紙面左側)に、設備レイアウト内の設備コンポーネント(=配置済設備RR)と、各設備コンポーネントが提供する工程実行サービス(および、動作プログラム)を一覧表示させる。すなわち、表示制御部30は、各配置済設備RRについて、「設備データDrにおいて、その配置済設備RRに対して定義されている標準工程CP、および、その配置済設備RRにその標準工程CPを実行させるための制御プログラム」の一覧を表示させる。
【0255】
ここで、
図22を用いて説明したように、工程設計装置1の表示制御部30は、
図18におけるS3−9に対応する処理として、特殊工程SPと判定した「SlideInLeftPlate」との作業工程PPを強調表示(エラー表示)する。また、表示制御部30は、手順データDp中の「SlideInLeftPlate」との作業工程PPの詳細を表示させる。
【0256】
ユーザは
図22におけるエラー指示等に従って、手順データDpに含まれている特殊工程SP:「SlideInLeftPlate」の内容を確認し、その特殊工程SPを実現できそうな設備コンポーネント:「PlateHandlingSubsystem(設備R(x))」を、手動で、その特殊工程SPに割り付ける(対応付ける)。
【0257】
ユーザが特殊工程SPへの設備コンポーネント(設備R(x))の割付を行うと、工程設計装置1は、その割付に対応した工程実行サービスのスケルトンを自動生成する。「工程実行サービスのスケルトン」は、インタフェース定義のみを持った空のプログラムであり、工程設計装置1は、スケルトン内部の制御プログラムの実装・ティーチングが必要である旨を表示させる(エラー表示させる)。
【0258】
図24は、
図18のS3−10のユーザ操作を受け付けた後の、
図20の工程設計画面の表示例を示す図である。ユーザは、エラー表示に従って工程実行サービスのスケルトンを開き、「ボディ上の所定位置に置かれた左側プレートの指定個所を押し下げながら前方にスライドさせることで、プレートをボディの爪にはめ込む」という動作をオフラインプログラミングする。工程設計装置1は、オフラインプログラミングによって生成された制御プログラムを読込むことによって、エラー表示を解消する。
【0259】
以上に説明した通り、工程設計装置1は、製品の組立作業手順に含まれる(つまり、手順データDp中の)作業工程PPのうち、標準工程CPではないと判定した作業工程PPを、つまり、特殊工程SPであると判定した作業工程PPを、強調表示させる。そして、工程設計装置1は、その特殊工程SPを実行させる設備Rの決定と、その特殊工程SPを実現する制御プログラムの設備R(設備コンポーネント)への追加実装と、をユーザに促す。ユーザは、例えば、特殊工程SPの実行主体として選択した設備Rに対し、その特殊工程SPについてのオフライン・ティーチングを実施する。工程設計装置1は、ユーザによるオフライン・ティーチングにより生成された制御プログラムを、その設備Rにその特殊工程SPを実行させる制御プログラムとして、読み込む。
【0260】
工程設計装置1は、ライブラリ(設備データベース3)に事前定義された設備Rとその制御プログラムとを利用して、手順データDp中の標準工程CPに対して所望の設備Rを対応付け、また、その設備に標準工程CPを実行させる制御プログラムを生成する。
工程設計装置1は、手順データDp中の特殊工程SPについても、ユーザと協調して、特殊工程SPの実行主体を設定し、さらに、設定した実行主体にその特殊工程SPを実現する制御プログラムを生成する。したがって、工程設計装置1は、効率的に、製造のためのシミュレーションを、生産シミュレーション装置7に実行させることができる。
【0261】
(未入力項目の取得および追加の一例)
図25は、未設定の要設定項目Itについて、ユーザに入力を促す画面の一例を示す図であり、
図19におけるS3−13に対応する処理を実行する工程設計装置1が表示する工程設計画面の一例を示している。工程設計装置1の表示制御部30は、設備コンポーネントが提供するサービスを利用するにあたり、事前にユーザが設定しなければならない要設定項目Itの設定ダイアログ/ウィザードを、解説とともに表示させる。すなわち、表示制御部30は、設備コンポーネントの提供するサービスを利用可能な状態にするために必要な追加教示/設定を強調表示させる。
【0262】
例えば、工程実行シーケンス(=設計工程データ61)に、作業工程PP(1)と、作業工程PP(2)と、作業工程PP(3)と、作業工程PP(4)と、がこの順を実行順序として格納されているとする。そして、工程実行シーケンス中の各作業工程PPには、その作業工程PPの実行主体として、以下の設備Rが対応付けられているとする。すなわち、工程実行シーケンスにおいて、作業工程PP(1)には設備R(1)が、作業工程PP(2)には設備R(2)が、作業工程PP(3)には設備R(3)が、作業工程PP(4)には設備R(4)が、対応付けられているとする。
【0263】
この場合、先ず、項目判定部77が、設備R(1)と作業工程PP(1)との組合せについて、「設備データDrにおいて、設備R(1)と作業工程PP(1)(標準工程CP(1))との組合せに対して定義されている、要設定項目It(1−1)〜It(1−x)」を取得する。次に、部品判定部74は、設備R(1)に作業工程PP(1)を実行させる時点で、要設定項目It(1−1)〜It(1−x)の各々に値が設定されているかを判定する。
【0264】
また、項目判定部77は、設備R(2)と作業工程PP(2)との組合せについて、「設備データDrにおいて、設備R(2)と作業工程PP(2)(標準工程CP(2))との組合せに対して定義されている、要設定項目It(2−1)〜It(2−x)」を取得する。次に、部品判定部74は、設備R(2)に作業工程PP(2)を実行させる時点で、要設定項目It(2−1)〜It(2−x)の各々に値が設定されているかを判定する。同様に、項目判定部77は、設備R(3)と作業工程PP(3)との組合せについて、「設備データDrにおいて、設備R(3)と作業工程PP(3)(標準工程CP(3))との組合せに対して定義されている、要設定項目It(3−1)〜It(3−x)」を取得する。次に、部品判定部74は、設備R(3)に作業工程PP(3)を実行させる時点で、要設定項目It(3−1)〜It(3−x)の各々に値が設定されているかを判定する。また、項目判定部77は、設備R(4)と作業工程PP(4)との組合せについて、「設備データDrにおいて、設備R(4)と作業工程PP(4)(標準工程CP(4))との組合せに対して定義されている、要設定項目It(4−1)〜It(4−x)」を取得する。次に、部品判定部74は、設備R(4)に作業工程PP(4)を実行させる時点で、要設定項目It(4−1)〜It(4−x)の各々に値が設定されているかを判定する。
【0265】
例えば、項目判定部77は、設備R(3)に作業工程PP(3)を実行させる時点で、要設定項目It(3−1)に値が設定されていないと判定すると、判定結果を表示制御部30に通知して、要設定項目It(3−1)について、値の設定を促す情報を表示させる。
【0266】
受付部40は、要設定項目It(3−1)に値を入力するユーザ操作を受け付け、ユーザ操作により入力された値を設定した要設定項目It(3−1)を、設計工程データ61における「設備R(3)と作業工程PP(3)(標準工程CP(3))との組合せ」に対応付ける。
【0267】
なお、前述の通り、受付部40は、ユーザ操作により入力された値を設定した要設定項目It(3−1)を、第1設定部51または第2設定部52に通知してもよい。そして、第1設定部51または第2設定部52が、値が設定された要設定項目It(3−1)を、設計工程データ61における「設備R(3)と作業工程PP(3)との組合せ」に対応付けてもよい。
【0268】
(準備工程および供給工程の取得および追加の一例)
図26は、手順データDpにおける作業工程に、準備工程RPおよび供給工程IPの少なくとも一方を追加する前後のシーケンス記述欄の一例を示す図である。すなわち、
図26の(A)は、
図19におけるS3−15に対応する処理を工程設計装置1が実行する前の工程設計画面の一例を、
図26の(B)は、S3−15に対応する処理を工程設計装置1が実行した後の工程設計画面の一例を、示している。
【0269】
(A.準備工程の取得および追加の一例)
例えば、工程設計装置1の状態判定部71は、「ねじ締付コンポーネント(設備R(x))」の持つ状態マシンから、「ねじの挿入締付」サービス(作業工程PP(x))の実行の前に、「ねじピックアップ」サービス(準備工程RP(x))の実行が必要であると判定する。
【0270】
状態判定部71による上記判定結果を受けて、準備工程追加部73は、「ねじの挿入締付」サービス(作業工程PP(x))の実行の前に実行すべきサービスとして、「ねじピックアップ」サービス(準備工程RP(x))を、工程実行シーケンスに追加する。以下、工程設計装置1が実行する「準備工程RPの取得および追加」処理の詳細を説明する。
【0271】
例えば、工程実行シーケンス(=設計工程データ61)に、作業工程PP(1)と、作業工程PP(2)と、作業工程PP(3)と、作業工程PP(4)と、がこの順を実行順序として格納されているとする。そして、工程実行シーケンス中の各作業工程PPには、その作業工程PPの実行主体として、以下の設備Rが対応付けられているとする。すなわち、工程実行シーケンスにおいて、作業工程PP(1)には設備R(1)が、作業工程PP(2)には設備R(2)が、作業工程PP(3)には設備R(3)が、作業工程PP(4)には設備R(4)が、対応付けられているとする。
【0272】
この場合、先ず、状態判定部71が、作業工程PP(1)と設備R(1)との組合せ、作業工程PP(2)と設備R(2)との組合せ、作業工程PP(3)と設備R(3)との組合せ、および、作業工程PP(4)と設備R(4)との組合せについて、以下の判定を行なう。すなわち、状態判定部71は、「設備R(1)に作業工程PP(1)を実行させる時点で、設備R(1)が、作業工程PP(1)の待機状態にあるか」を、設備データDrにおける設備R(1)の状態遷移情報を用いて判定する。また、状態判定部71は、「設備R(2)に作業工程PP(2)を実行させる時点で、設備R(2)が、作業工程PP(2)の待機状態にあるか」を、設備データDrにおける設備R(2)の状態遷移情報を用いて判定する。同様に、状態判定部71は、「設備R(3)に作業工程PP(3)を実行させる時点で、設備R(3)が、作業工程PP(3)の待機状態にあるか」を設備R(3)の状態遷移情報を用いて判定する。また、状態判定部71は、「設備R(4)に作業工程PP(4)を実行させる時点で、設備R(4)が、作業工程PP(4)の待機状態にあるか」を設備R(4)の状態遷移情報を用いて判定する。
【0273】
例えば、状態判定部71は、設備R(3)に作業工程PP(3)を実行させる時点で、設備R(3)が、作業工程PP(3)の待機状態にないと判定すると、「設備R(3)と作業工程PP(3)との組合せ」を、準備工程取得部72に通知する。
【0274】
準備工程取得部72は、状態判定部71から通知された「設備R(3)と作業工程PP(3)との組合せ」の作業工程PP(3)について、設備データDrに定義されている「設備R(3)の状態遷移情報」を用いて、準備工程RPを取得する。例えば、準備工程取得部72は、設備R(3)の状態遷移情報を参照して、先ず、「初期状態または作業工程PP(3)の実行状態」から、「作業工程PP(3)の待機状態」へと遷移するまでに、設備R(3)が至る状態である中間状態を取得する。次に、準備工程取得部72は、取得した中間状態が、何らかの作業工程PPの実行状態である場合、その中間状態において実行される作業工程PPを、準備工程RPとして取得する。準備工程取得部72は、取得した準備工程RPを、準備工程追加部73に通知する。
【0275】
準備工程追加部73は、準備工程取得部72から通知された準備工程RPを、状態判定部71から通知された「設備R(3)と作業工程PP(3)との組合せ」の作業工程PP(3)の前に実行すべき作業工程PPとして、設計工程データ61に追加する。
【0276】
準備工程追加部73による上述のデータの追加によって、設計工程データ61には、以下のデータが格納される。すなわち、設計工程データ61には、作業工程PP(1)と、作業工程PP(2)と、準備工程RPと、作業工程PP(3)と、作業工程PP(4)と、がこの順を実行順序として格納される。また、設計工程データ61において、作業工程PP(1)には設備R(1)が、作業工程PP(2)には設備R(2)が、準備工程RPおよび作業工程PP(3)には設備R(3)が、作業工程PP(4)には設備R(4)が、各作業工程PPの実行主体として対応付けられる。
【0277】
(B.供給工程の取得および追加の一例)
部品判定部74は、「ねじピックアップ」サービス(準備工程RP(x))の実行前に、入力として、「どこかに供給されたネジを取りにいく必要がある」と判定する。部品判定部74による上記判定結果を受けて、供給工程取得部75は、「『ネジ共有』工程実行能力を持った設備コンポーネント(設備R)に、ネジを取りに行かせる必要がある」と判定する。
【0278】
供給工程取得部75は、設備レイアウト内の設備コンポーネント(=配置済設備RR)の中で唯一、「ねじフィーダ」コンポーネント(設備R(z))が供給能力を備えていることを確認すると、以下の処理を追加する。すなわち、供給工程取得部75は、「ねじピックアップ」サービス(準備工程RP(x))の関連サービス(供給工程IP(z))として、「ねじフィーダ」コンポーネント(設備R(z))による「ネジ供給」サービス(供給工程IP(z))を取得する。供給工程追加部76は、工程実行シーケンス(=設計工程データ61)における「準備工程RP(x)と準備工程RP(x)の実行主体:設備R(x)との組合せ」の前に、「供給工程IP(z)と設備R(z)との組合せ」を、追加する。
【0279】
「ねじピックアップ」サービス(準備工程RP(x))の実行のために、「ネジ位置(ネジ取得位置):要設定項目It(w)」について、予め値を設定しておく必要がある場合、供給工程取得部75は、さらに以下の情報を取得する。すなわち、供給工程取得部75は、「ねじフィーダ」コンポーネント(設備R(z))の「ネジ供給」サービス(供給工程IP(z))に対して定義されている「ネジ位置(ネジ供給位置):要設定項目It(z)」に設定されている値を取得する。そして、供給工程追加部76は、「ネジ供給位置:要設定項目It(z)」に設定されている値を、「ネジ取得位置:要設定項目It(w)」に設定する。以下、工程設計装置1が実行する「供給工程IPの取得および追加」処理の詳細を説明する。
【0280】
例えば、工程実行シーケンス(=設計工程データ61)に、作業工程PP(1)と、作業工程PP(2)と、作業工程PP(3)と、作業工程PP(4)と、がこの順を実行順序として格納されているとする。そして、工程実行シーケンス中の各作業工程PPには、その作業工程PPの実行主体として、以下の設備Rが対応付けられているとする。すなわち、工程実行シーケンスにおいて、作業工程PP(1)には設備R(1)が、作業工程PP(2)には設備R(2)が、作業工程PP(3)には設備R(3)が、作業工程PP(4)には設備R(4)が、対応付けられているとする。
【0281】
この場合、先ず、部品判定部74が、設備R(1)と作業工程PP(1)との組合せについて、「設備データDrにおいて、設備R(1)と作業工程PP(1)(標準工程CP(1))との組合せに対して定義されている、入力要素(ワーク)」を取得する。次に、部品判定部74は、取得した入力要素が、設備R(1)に作業工程PP(1)を実行させる時点で、設備R(1)に供給されているかを判定する。
【0282】
また、部品判定部74は、設備R(2)と作業工程PP(2)との組合せについて、設備データDrを参照して、設備R(2)に作業工程PP(2)を実行させる時点で、設備R(2)が作業工程PP(2)を実行するのに必要な入力要素が設備R(2)に供給されているかを判定する。同様に、部品判定部74は、設備R(3)と作業工程PP(3)との組合せについて、設備データDrを参照して、設備R(3)に作業工程PP(3)を実行させる時点で、設備R(3)が作業工程PP(3)を実行するのに必要な入力要素が設備R(3)に供給されているかを判定する。また、部品判定部74は、設備R(4)と作業工程PP(4)との組合せについて、設備データDrを参照して、設備R(4)に作業工程PP(4)を実行させる時点で、設備R(4)が作業工程PP(4)を実行するのに必要な入力要素が設備R(4)に供給されているかを判定する。
【0283】
例えば、部品判定部74は、設備R(3)に作業工程PP(3)を実行させる時点で、設備R(3)が作業工程PP(3)を実行するのに必要な入力要素が設備R(3)に供給されていないと判定すると、「設備R(3)と作業工程PP(3)との組合せ」を、供給工程取得部75に通知する。
【0284】
供給工程取得部75は、先ず、部品判定部74から通知された「設備R(3)と作業工程PP(3)との組合せ」について、「『設備R(3)が作業工程PP(3)を実行するのに必要な入力要素』を、設備R(3)に供給する」作業工程である供給工程IPを取得する。供給工程取得部75は、例えば、標準工程データDdにおいて定義されている標準工程CPの中から、「『設備R(3)が作業工程PP(3)を実行するのに必要な入力要素』を、設備R(3)に供給する」作業工程PPを、供給工程IPとして取得する。
【0285】
供給工程取得部75は、取得した供給工程IPが標準工程CPであるかを判定し、供給工程IPが標準工程CPであると判定すると、供給工程IPに、「設備データDrにおいて供給工程IPを実行することができると定義されている設備R(x)」を対応付ける。また、供給工程IPが特殊工程SPであると判定すると、供給工程取得部75は、供給工程IPに、「ユーザにより、供給工程IPの実行主体として設定された設備R(x)」を対応付ける。供給工程取得部75は、実行主体として設備R(x)を対応付けた供給工程IPを、つまり、「供給工程IPと、その供給工程IPの実行主体である設備R(x)と、の組合せ」を、供給工程追加部76に通知する。
【0286】
供給工程追加部76は、供給工程追加部76から通知された「供給工程IPと、その供給工程IPの実行主体である設備R(x)と、の組合せ」を、設計工程データ61に追加する。すなわち、供給工程追加部76は、供給工程追加部76から通知された供給工程IPを、作業工程PP(3)の前に実行されるべき作業工程PPとして、設計工程データ61に追加する。また、供給工程追加部76は、供給工程追加部76から通知された「供給工程IPの実行主体である設備R(x)」を、供給工程IPと対応付けて、設計工程データ61に格納する。
【0287】
供給工程追加部76による上述のデータの追加によって、設計工程データ61には、以下のデータが格納される。すなわち、設計工程データ61には、作業工程PP(1)と、作業工程PP(2)と、供給工程IPと、作業工程PP(3)と、作業工程PP(4)と、がこの順を実行順序として格納される。また、設計工程データ61において、作業工程PP(1)には設備R(1)が、作業工程PP(2)には設備R(2)が、供給工程IPには設備R(x)が、作業工程PP(3)には設備R(3)が、作業工程PP(4)には設備R(4)が、各作業工程PPの実行主体として対応付けられる。
【0288】
(ユーザからの教示と未設定項目への値設定の一例)
図27は、設備レイアウト上のユーザ操作から、要設定項目Itに値を設定する例を示す図であり、
図19におけるS3−16およびS3−17に対応する処理を実行する工程設計装置1が表示する工程設計画面の一例を示している。
【0289】
工程設計装置1の表示制御部30は、「工程実行シーケンス」表示欄において、設備Rと作業工程PPとの組合せに対して設備データDrおいて定義されている入出力要素(ワーク)を、四角形状(角が丸くない四角の形状)で表示させる。「工程実行シーケンス」表示欄において四角形状で表現されるワークは、そのワークの3次元形状および2次元形状についての情報に加え、レイアウト作成装置6が提供する仮想生産空間(3次元設備レイアウト)における絶対位置情報も含んでいる。工程設計装置1は、レイアウト作成装置6から「ワークの絶対位置情報」を取得し、取得した「ワークの絶対位置情報」を、工程実行サービスの入力情報として利用する。
【0290】
前述の通り、設備データDrにおいて、設備Rと作業工程PP(標準工程CP)との組合せには要設定項目Itが定義されており、要設定項目Itは、入出力要素(ワーク)に係る要設定項目Itを含んでいる。そこで、工程設計装置1は、入出力要素(ワーク)に係る要設定項目Itに、特に、入出力要素の位置についての要設定項目Itに、レイアウト作成装置6から取得する「ワークの絶対位置情報」を、設定する。
【0291】
§4.変形例
(分解作業手順への適用)
これまでに説明してきた実施形態においては、工程設計装置1が、製品ごとに、「その製品を組み立てる作業手順(組立作業手順)」に含まれる複数の作業工程PPの各々に対し、その作業工程PPの実行主体(設備R)等を設定する例を説明してきた。しかしながら、工程設計装置1は、製品ごとに、「その製品を分解する作業手順(分解作業手順)」に含まれる複数の作業工程PPの各々に対し、その作業工程PPの実行主体(設備R)等を設定してもよい。
【0292】
(ユーザにより追加された制御プログラム等の追加登録)
工程設計装置1は、特殊工程SPを、新たな「標準工程CP」として、標準工程データDdに追加できてもよい。また、工程設計装置1は、ユーザが追加した「特殊工程SPを設備R(x)に実現させるための制御プログラム」を、設備データDrに追加してもよい。すなわち、工程設計装置1は、特殊工程SPと設備R(x)との組合せに対して「特殊工程SPを設備R(x)に実現させるための制御プログラム」を対応付けたデータを、設備データDrに追加してもよい。これによって、ユーザは、特殊工程SPを標準工程CPとして利用することが可能となる。
【0293】
工程設計装置1が一度作成した「特殊工程SPを、設備R(x)に実行させる制御プログラム」を設備データベース3に登録することによって、生産シミュレーション装置7は、類似の製品組立のシミュレーションにおいて、その制御プログラムを利用できるようになる。
【0294】
〔ソフトウェアによる実現例〕
工程設計装置1、手順生成装置5、レイアウト作成装置6、および、生産シミュレーション装置7の制御ブロックは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。例えば、工程設計装置1の標準工程取得部11、手順取得部12、設備取得部13、工程判定部20、表示制御部30、受付部40、第1設定部51、第2設定部52、および、検証部70は、集積回路等に形成された論理回路によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0295】
後者の場合、工程設計装置1、手順生成装置5、レイアウト作成装置6、および、生産シミュレーション装置7は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0296】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。