特許第6965722号(P6965722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965722
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20211028BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20211028BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20211028BHJP
【FI】
   B23K26/21 N
   B23K26/21 G
   B23K26/70
   H02M7/48 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-242142(P2017-242142)
(22)【出願日】2017年12月18日
(65)【公開番号】特開2019-107669(P2019-107669A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2020年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 さや香
(72)【発明者】
【氏名】福西 篤志
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−073920(JP,A)
【文献】 特開2017−077140(JP,A)
【文献】 特開平11−333576(JP,A)
【文献】 特開2014−136254(JP,A)
【文献】 特開2003−346929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
B23K 26/70
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に延びている第1導体と第2導体の間で前記第1導体に隣接している第3導体を前記第1導体に溶接する溶接装置であり、
前記第1導体と前記第3導体を挟み込む第1ツメと第2ツメを有しているクランプと、
前記第1導体と前記第2導体と前記第3導体の並び方向に対して斜め方向から前記第3導体に向けて溶接レーザを照射するレーザ照射装置と、
を備えており、
前記レーザ照射装置は、溶接レーザの照射点が前記第3導体の所定範囲内を移動するように前記照射点を変更可能であり、
前記第1ツメは、前記第1導体と当接する当接面と、前記当接面に対向している梁を備えており、
前記クランプが前記第1導体と前記第3導体を挟み込んだ状態において、前記梁が前記第2導体と前記第3導体の間に位置するとともに、前記梁と前記第2ツメが、前記所定範囲で反射した前記溶接レーザの反射レーザを遮るように位置している、溶接装置。
【請求項2】
前記梁の前記当接面と対向する側とは反対側の面と前記当接面との間の距離が、前記第1導体と前記第2導体の間の距離に等しい、請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記梁の前記溶接レーザの光路に対向する面の前記当接面に近い側の部分が、前記溶接レーザの光路に対して平行になっている、請求項1又は2に記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、溶接装置に関する。特に、狭い間隔で平行に延びている第1導体と第2導体の間に位置する第3導体を第1導体に接合するのに好適な溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、積層された複数のパワーカードの夫々にバスバが接続されている積層ユニットが開示されている。夫々のパワーカードから同じ方向に端子が延びており、複数の端子は一列に並んでいる。端子と端子の間の間隔は狭い。その狭い間隔の間でバスバが端子に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−73920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
端子とバスバの溶接にレーザ(溶接レーザ)が用いられることがある。隣接する端子同士の間隔が狭く、その間で一方の端子にバスバを溶接する場合、端子とバスバの並び方向に対して斜め方向からバスバあるいは端子に溶接レーザを照射しなければならない。このとき、バスバあるいは端子で反射した反射レーザが端子につながっているデバイスに照射されてしまうおそれがある。なお、このことは、端子とバスバに限らず、平行に延びている第1導体と第2導体の間に位置する第3導体を第1導体に溶接する場合にもあてはまる。本明細書は、狭い間隔で平行に延びている第1導体と第2導体の間に位置する第3導体を第1導体に接合するのに好適な溶接装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する溶接装置は、クランプとレーザ照射装置を備えている。クランプは、少なくとも一方が揺動する第1ツメと第2ツメを備えており、それらのツメで第1導体と第3導体を挟み込むことができる。レーザ照射装置は、第1、第2、第3導体の並び方向に対して斜め方向から第3導体に向けて溶接レーザを照射する。レーザ照射装置は、溶接レーザの照射点が第3導体の所定範囲内を移動するようにその照射点を変更することができる。第1ツメは、第1導体と当接する当接面と、その当接面に対向している梁を備えている。梁は、クランプが第1導体と第3導体を挟み込んだ状態において、第2導体と第3導体の間に位置するように、第1ツメに備えられている。そして、第2ツメと梁は、クランプが第1導体と第3導体を挟み込んだ状態において、梁と第2ツメが第3導体の上記所定範囲で反射した溶接レーザの反射レーザの光路を遮るように位置している。即ち、本明細書が開示する溶接装置は、第2ツメと梁の2つの部材で溶接レーザの反射レーザを遮る。
【0006】
クランプの第1ツメと第2ツメは相対移動する。第1ツメと第2ツメが開いているときには第2ツメは梁に近づくので、第2ツメと梁の双方を第2導体と第3導体の間に通し易くなる。第1ツメと第2ツメが第1導体と第3導体を挟むと、第2ツメは第3導体に接する。一方、第3導体に照射される溶接レーザの照射点は、溶接範囲を移動する。反射レーザの光路も変化する。上記の溶接装置では、第2導体に近い側では第2ツメが反射レーザの光路を遮り、第2導体から遠い側では梁が反射レーザの光路を遮る。この溶接装置は、狭い間隔で平行に延びている第1導体と第2導体の間で第3導体を溶接する場合に、溶接レーザの反射レーザを遮ることができ、第1導体等につながっているデバイスに溶接レーザの反射レーザが当たることを防止することができる。しかも、相対移動するクランプの第1ツメに反射レーザを遮る梁を設けることで、第2ツメと梁を、狭い第1導体と第2導体の間に挿入し易い。
【0007】
第1導体と平行に延びている第2導体が予定の位置よりも第1導体に近づいていると、斜めに照射される溶接レーザを第2導体が遮ってしまうおそれがある。そこで、本明細書が開示する溶接装置では、梁の当接面と対向する側とは反対側の面と当接面との間の距離が、第1導体と第2導体の間の距離に等しいと良い。上記の構造のクランプは、第1ツメと第2ツメで第1導体と第3導体を挟むと、梁が第2導体に当接する。第2導体が予定よりも第1導体に近づいていた場合、第1ツメの梁が第2導体を第1導体から遠ざける。従って、斜め方向から照射される溶接レーザが第2導体に遮られることが防止される。なお、「梁の当接面と対向する側とは反対側の面と当接面との間の距離」は、概ね、第1導体と第2導体の間の距離に等しければよい。
【0008】
また、梁の溶接レーザの光路に対向する面の当接面に近い側の部分が、溶接レーザの光路に対して平行になっているとよい。そのような形状により、梁を溶接レーザの光路の近くに配置することができる。本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例の溶接装置が溶接する導体を有するデバイス(積層ユニット)を含む電力変換器の斜視図である。
図2】積層ユニットを含む電力変換器の分解図である。
図3】クランプの先端(第1ツメと第2ツメ)の斜視図である。
図4】クランプの先端(第1ツメと第2ツメ)の平面図である。
図5】積層ユニットがセットされた溶接装置の断面図である(挟持前)。
図6】積層ユニットがセットされた溶接装置の断面図である(挟持後)。
図7】積層ユニットがセットされた溶接装置の断面図である(右端子6bが湾曲している場合)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施例の溶接装置を説明する前に、溶接対象の一例を説明する。溶接対象は、複数のパワーカードと複数の冷却器が一つずつ交互に積層されている積層ユニットの端子である。図1に積層ユニット9を含む電力変換器2の斜視図を示し、図2に電力変換器2の分解斜視図を示す。
【0011】
電力変換器2は、複数のパワーカード3と複数の冷却器4が1個ずつ交互に積層された積層ユニット9と、コンデンサモジュール40と、それらを電気的に接続する正極バスバ20と負極バスバ30を備えている。電力変換器2は、電圧コンバータとインバータを含んでいるデバイスである。電力コンバータとインバータは、ともに、複数のパワートランジスタを用いる。パワートランジスタは発熱量が多い。複数のパワートランジスタを集中的に冷却するため、電力変換器2は、昇圧コンバータとインバータのパワートランジスタを積層ユニット9に集約している。また、電力変換器2は、大電流を平滑化するための大型のコンデンサを備えている。コンデンサモジュール40に大型のコンデンサ素子が収容されている。パワーカード3の内部のパワートランジスタとコンデンサ素子を接続するため、内部抵抗の小さいバスバ20、30が用いられている。
【0012】
パワーカード3には、直列に接続された2個のパワートランジスタが組み込まれている。2個のパワートランジスタの直列接続の高電位側の端子(正極端子6)と、低電位側の端子(負極端子7)と、中点の端子(中点端子8)が、パワーカード3の上面から延びている。複数の冷却器4は、夫々のパワーカード3を挟むように積層されている。なお、図1図2では、図の左端のパワーカードにのみ、符号3を付し、残りのパワーカードには符号は省略した。また、図1図2では、左端の2個の冷却器と右端の冷却器に符号4を付し、残りの冷却器には符号は省略した。パワーカード3を挟んで隣接する冷却器4は、2個の連結管5で接続されている。コンデンサモジュール40は、コンデンサ素子41を樹脂で封止したモジュールである。
【0013】
正極バスバ20は、一枚の金属板(典型的には銅)で作られている。正極バスバ20は、幅広板状の本体部21と、本体部21の縁から延びており、コンデンサ素子41の正極41aと接続される電極部25と、複数の枝部22を備えている。夫々の枝部22は、本体部21からほぼ垂直に延びている。本体部21には一列に並ぶ複数の孔24が設けられており、図中の左端の枝部22を除く他の枝部22は、夫々の孔24の縁から延びている。正極バスバ20を積層ユニット9に組み付けると、パワーカード3の正極端子6が孔24を通る。正極端子6は平板状であり、正極バスバ20の枝部22も平板状である。正極端子6のX軸負方向を向く面と枝部22のX軸正方向を向く面が溶接レーザで接合される。枝部22のX軸正方向を向く面が、正極端子6と接合される接合面22aに相当する。
【0014】
負極バスバ30も、一枚の金属板(典型的には銅)で作られている。負極バスバ30は、幅広板状の本体部31と、本体部31の縁から延びており、コンデンサ素子41の負極41bと接続される電極部35と、複数の枝部32を備えている。夫々の枝部32は、本体部31からほぼ垂直に延びている。本体部31には一列に並ぶ複数の孔34が設けられており、図中の左端の枝部32を除く他の枝部32は、夫々の孔34の縁から延びている。また、一列に並んだ複数の孔34の列の横に、複数の別の孔39が一列に並んでいる。負極バスバ30を積層ユニット9に組み付けると、パワーカード3の負極端子7が孔34を通り、正極端子6が孔39を通る。正極端子6は孔34の縁には接触せず、正極端子6と負極バスバ30は絶縁状態が保たれる。
【0015】
負極端子7は平板状であり、負極バスバ30の枝部32も平板状である。負極端子7のX軸負方向を向く面と枝部32のX軸正方向を向く面が溶接レーザで接合される。枝部32のX軸正方向を向く面が、負極端子7と接合される接合面32aに相当する。中点端子8には別のバスバが接続されるが、その図示は省略する。
【0016】
図1に示されているように、複数のパワーカード3の正極端子6は、金属平板であり、平板の幅広面が対向するように、X方向に一列に並んでいる。隣り合う正極端子6の間隔は狭い。その狭い間隔で正極バスバ20の枝部22が一方の正極端子6に接合される。枝部22も平板であり、枝部22の幅広面が正極端子6の幅広面に接合される。同様に、複数の負極端子7も、幅広面が対向するようにX方向に一列に並んでおり、隣り合う負極端子7の間隔は狭い。その狭い間隔で負極バスバ30の枝部32が一方の負極端子7に接合される。枝部32も平板であり、枝部32の幅広面が一方の負極端子7の幅広面に接合される。
【0017】
実施例の溶接装置100を説明する。ここでは、パワーカード3の正極端子6に正極バスバ20の枝部22を溶接する場合を例に、溶接装置を説明する。溶接装置100は、クランプ10とレーザ照射装置18を備えている。まず、図3に、クランプ10の先端の斜視図を示す。クランプ10は、第1ツメ17と第2ツメ14を備えている。第1ツメ17と第2ツメ14で、正極端子6と枝部22を挟み込む。図3では、正極端子6と枝部22は仮想線で描いてある。
【0018】
第1ツメ17は、その基部(第1ツメ基部11)が揺動支持部15の先端に取り付けられており、第2ツメ14は、その基部(第2ツメ基部13)が固定支持部16の先端に取り付けられている。揺動支持部15は、不図示のアクチュエータによって、揺動する。揺動支持部15、即ち、第1ツメ17は、正極端子6と枝部22の並び方向(図中のX方向)に揺動する。揺動支持部15によって、第1ツメ17は、第2ツメ14に対して接近方向/離反方向に揺動することができる。
【0019】
なお、「第1ツメ17」は、挟み込む対象物(正極端子6)と接触する部位を指すので、第1ツメ17と連続しているが対象物と接触しない部分を第1ツメ基部11と称する。同様に「第2ツメ14」は、挟み込む対象物(枝部22)と接触する部位を指すので、第2ツメ14と連続しているが対象物と接触しない部分を第2ツメ基部13と称する。
【0020】
第1ツメ17には、正極端子6の幅広面に対向する平坦な当接面17aが設けられている。また、第1ツメ17には、第1ツメ基部11を介して梁12が設けられている。梁12は、当接面17aと対向するように位置している。後述するように、梁12は、クランプ10の第1ツメ17と第2ツメ14が正極端子(左端子6a)と枝部22を挟み込んだとき、他方の正極端子(右端子6b)と枝部22の間に位置するように、第1ツメ17に設けられている。
【0021】
図4に、クランプ10の先端を図中の座標系のX方向の第2ツメ14の側から見た平面図を示す。図中の座標系のX方向は、第1ツメ17の揺動方向に相当する。理解を助けるために、第2ツメ14と第2ツメ基部13はグレーで塗りつぶしてある。第1ツメ17の揺動方向から見ると、第2ツメ14は、第1ツメ17の当接面17aとは重なるが、第2ツメ14は梁12とは重ならないように位置している。即ち、第1ツメ17が揺動するとき、梁12は第2ツメ14と干渉せず、両者はすれ違う。
【0022】
図5図6に、積層ユニット9がセットされた溶接装置100の断面図を示す。図5図6は、クランプ10の周辺の断面図である。図5図6において、積層ユニット9の一部(一対のパワーカード3a、3bの一部とそれらの間の冷却器4の一部)が示されている。図5図6は、第1ツメ17、第2ツメ14、正極端子6、正極バスバ20の枝部22を通る平面でカットした断面図である。図5図6では一対の正極端子6が描かれている。説明の便宜上、図中左側の正極端子を左端子6aと称し、右側の正極端子を右端子6bと称する。図5は、クランプ10が左端子6aと正極バスバ20の枝部22を挟持する前の側面図であり、図6は、左端子6aと枝部22を挟持した後の側面図である。
【0023】
隣接する左端子6aと右端子6bは、平行に延びており、それらの間に、正極バスバ20の枝部22が位置している。図5図6では、枝部22は左端子6aに溶接される。第1ツメ17の当接面17aに対向している梁12は、クランプ10が左端子6aと枝部22を挟持したときに枝部22と右端子6bの間に位置する。このとき、梁12と第2ツメ14は、正極端子6の延設方向(Z方向)で大部分が重なる
【0024】
ここで、説明の便宜上、梁12の当接面17aに面する側とは反対側の面を、梁背面12aと称する。また、第2ツメ14の枝部22と当接する面を当接面14aと称する。図5の状態では、梁12と第2ツメ14が正極端子6の延設方向(Z方向)で大部分が重なり、梁背面12aと当接面14aの距離はW1である。第1ツメ17と第2ツメ14で左端子6aと枝部22を挟むと、梁背面12aと当接面14aの距離はW2となる(図6)。左端子6aと枝部22を挟む前の梁背面12aと当接面14aの距離W1が短いので、梁12と第2ツメ14を一対の正極端子6(左端子6aと右端子6b)の間に挿入し易い。
【0025】
溶接装置100は、溶接レーザを照射するレーザ照射装置18を備えている。レーザ照射装置18は、支持台19に支持されている。レーザ照射装置18は、レーザ発振器、ビームエキスパンダ、X軸回転用ガルバノミラー、Y軸回転用ガルバノミラー、レンズなどを内蔵している。X軸回転用ガルバノミラーとY軸回転用ガルバノミラーは、互いに直交する軸の回りに回転可能である。レーザ発振器から照射される溶接レーザは、ビームエキスパンダを通過した後、2個のガルバノミラーで反射し、レンズで焦点が絞られてから、レーザ照射装置18から照射される。2個のガルバノミラーの角度を変更することで、溶接レーザの照射点を変更することができる。実施例では、レーザ照射装置は、図中の座標系のY軸回りに照射点を移動することができるものとして説明する。照射点を変更することができるレーザ照射装置は良く知られているので、ガルバノミラーなどの部品の詳しい説明は省略する。レーザ照射装置18は、照射方向を変更することで照射点を移動させ、所定の面積を有する接合範囲の全てに溶接レーザを照射することができる。
【0026】
図6は、第1ツメ17と第2ツメ14が左端子6aと枝部22を挟持した状態を示している。また、図6における範囲S(溶接範囲S)は、溶接レーザの照射範囲を示している。溶接範囲Sの端から端まで溶接レーザが照射できるように、レーザ照射装置18は、溶接レーザの照射方向を変更する(図6)。太矢印線A1は、溶接範囲Sの下端へ照射される溶接レーザを示している。太矢印線A2は、その反射レーザを示している。太矢印線B1は、溶接範囲Sの上端へ照射される溶接レーザを示している。太矢印線B2は、その反射レーザを示している。反射レーザの光路は、太矢印線A2から太矢印線B2の範囲で変化する。
【0027】
図6から理解されるように、溶接範囲Sの下端における反射レーザA2は、第2ツメ14で遮断される。溶接範囲Sの上端における反射レーザB2は、梁12で遮断される。反射レーザの光路の方向からみて、第2ツメ14と梁12の間に隙間がない。よって、溶接範囲Sで反射した全ての反射レーザは、第2ツメ14と梁12のいずれかで遮断される。別言すれば、梁12と第2ツメ14は、枝部22の溶接範囲Sで反射した反射レーザの光路を遮るように位置している。反射レーザを全て遮断できるので、反射レーザが他のデバイス(例えばパワーカード3または冷却器4)に照射されることが防止される。特に、反射レーザを遮断する第2ツメ14と梁12が、一対の正極端子(左端子6aと右端子6b)の並び方向に動く。前述したように、枝部22と右端子6bの間へ差し込む前は、第2ツメ14と梁12が近く、差し込み易い。クランプ10が左端子6aと枝部22を挟み込むと、梁12と第2ツメ14が相対的に移動し、全ての反射レーザを遮断できるようになる。溶接装置100は、狭い間隔で平行に延びている2個の導体(左端子6aと右端子6b)の間で別の導体(枝部22)を溶接するのに適している。
【0028】
図6に示されているように、梁12の溶接レーザの光路(太矢印線A1)に対向する面であって当接面17aに近い部位(先端上面12b)が光路(太矢印線A1)と平行になっている。梁12は、溶接レーザの光路を遮ることなく、溶接レーザの光路の近くに配置することができる。
【0029】
図7は、図6と同じ図であるが、右端子6bの初期位置(右端子6b1)が、予定された位置よりも左端子6aに近い場合を示している。図7に示すように、溶接範囲Sの下端における溶接レーザの光路(太矢印線A1)は、右端子6bの近くを通過している。右端子6bが予定された位置よりも左端子6aの側に湾曲していると(右端子6b1)、右端子6b1が光路を遮るおそれがある(図7のポイントP参照)。第1ツメ17の当接面17aから、梁背面12aまでの長さL1は、一対の正極端子(左端子6aと右端子6b)の間の距離L2と等しい。それゆえ、クランプ10が左端子6aと枝部22をクランプすると、梁12が湾曲した右端子6b1に当接し、右端子正しい位置6b2に戻す。それゆえ、右端子6bが光路を遮ることが防止される。なお、当接面17aから梁背面12aまでの距離L1は、概ね、左端子6aと右端子6bの間の距離L2に等しければよい。
【0030】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。左端子6aが第1導体の一例に相当し、右端子6bが、第2導体の一例に相当する。正極バスバ20の枝部22が第3導体の一例に相当する。
【0031】
実施例では、隣接する左端子6aと右端子6bの間に枝部22が位置しており、その枝部22に溶接レーザを照射する場合を例示した。左端子6aに溶接レーザを照射する場合も、上記の説明は成立する。図1図2に示されているように、複数の枝部22が一列に並んでおり、隣接する枝部22の間で正極端子6が一方の枝部22に溶接される。従って、枝部22に溶接レーザを照射する場合は、隣接する一対の枝部22が第1導体と第2導体に相当し、それらの間に位置する正極端子6が第3導体に相当する。負極バスバ30の枝部32と負極端子7を溶接する場合も同様である。
【0032】
本明細書が開示する技術は、図1図2に示した積層ユニット9の端子とバスバを溶接する溶接装置に限定されない。
【0033】
レーザ照射装置は、レーザ発振器を揺動/移動させるものであってもよい。あるいは、レーザ照射装置は、照射対象物(実施例の場合はバスバを含む電力変換器2)を移動させて照射点を変更するものであってもよい。例えば、レーザ発振器を固定し、照射対象物を可動ステージに固定し、ステージを移動させることで、レーザの照射点を変更するものであってもよい。
【0034】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0035】
2:電力変換器
3、3a、3b:パワーカード
4:冷却器
5:連結管
6:正極端子
6a:左端子(正極端子)
6b:右端子(正極端子)
7:負極端子
8:中点端子
9:積層ユニット
10:クランプ
11:第1ツメ基部
12:梁
12a:梁背面
12b:先端上面
13:第2ツメ基部
14:第2ツメ
14a:当接面
15:揺動支持部
16:固定支持部
17:第1ツメ
17a:当接面
18:レーザ照射装置
19:支持台
20:正極バスバ
22:枝部
30:負極バスバ
31:本体部
32:枝部
40:コンデンサモジュール
100:溶接装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7