(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予め設定された複数の高さ寸法のうち最も低い寸法に対応する開口を囲繞する矩形状の端縁を基端とするとともに連接された四つのフラップに設けられ、前記フラップの境界線をなす連接罫線と、
前記端縁に沿って設けられ、前記複数の高さ寸法のそれぞれで折り曲げを案内する案内構造と、
前記フラップにおいて、前記案内構造の延在方向に対して45°の傾斜角度で配向され、前記案内構造と前記連接罫線との交差箇所を通る仮想線上に前記フラップの先端まで延在し、前記複数の高さ寸法に対応する複数の傾斜罫線と、
を備えたことを特徴とする包装箱。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、実施形態としての包装箱を説明する。
本実施形態の包装箱は、平面状のシート材(ブランクシート)から組み立てられた立体状の包装材である。包装箱に組み立てられるシート材には、所定の形状に切り取られたシート状の包装資材が用いられる。
【0013】
本実施形態では、包装箱およびシート材が水平面に載置されたものとし、説明で用いる方向を下記のように定義する。
包装箱については、水平方向を前後方向(図中には前方を「F」で示すとともに後方を「B」で示す)および左右方向(図中には左方を「L」で示すとともに右方を「R」で示す)に細別して説明する。左右方向については、前方から後方へ向いた状態を基準に左右を定める。これらの左右を区別しないときには、側方と呼ぶ。また、鉛直方向のうち重力の作用方向を下方(図中には「D」で示す)とし、下方の反対方向を上方(図中には「U」で示す)とする。さらに、鉛直方向の寸法を高さ寸法と呼ぶ。
そのほか、包装箱の上部には、収容される包装物を出し入れする開口が設けられるものとする。
【0014】
シート材については、水平方向において互いに直交するX方向およびY方向を用いて説明する。X方向およびY方向のそれぞれは、互いに反対向きの二方向に延びる。そこで、X方向の一方をX
1方向とし、他方をX
2方向とする。同様に、Y方向の一方をY
1方向とし、他方をY
2方向とする。
そのほか、シート材の各構成については、包装箱において対応する各構成と同様の符号を付して説明する。また、シート材の罫線や構造については、包装箱についても同様の名称で呼ぶ。
【0015】
[I.一実施形態]
[1.構成]
以下、包装箱の基本的な構成を概説する。その後に、シート材の構成を詳述する。そして、このシート材から組み立てられた包装箱の構成を詳述する。
【0016】
[1.1.包装箱の基本]
図1,
図3に示すように、包装箱1には、直方体の各面に沿う壁部2,3,4が設けられている。これらの壁部2,3,4は、左右対称に設けられており、直方体の下面に対応する下壁部2と、直方体の側面に対応する立壁部3と、直方体の上面に対応する上壁部4とに大別される。包装箱1では、下端縁23を介して下壁部2と立壁部3とが隣接し、上端縁34を介して立壁部3と上壁部4とが隣接している。
下壁部2および立壁部3によって、上部に矩形の開口O(
図2参照)をもつ有底筒状の部位が形成され、上壁部4によって開口Oを開閉する蓋状の部位が形成される。
【0017】
立壁部3は、下壁部2に対して前後の下端縁23から立設された端壁部3Eと、下壁部2に対して左右の下端縁23から立設された側壁部3Sとに細別される。
さらに、端壁部3Eには、前方に配置された前端壁部3Fと後方に配置された後端壁部3Bとが互いに対向して設けられている。また、側壁部3Sには、左方に配置された左側壁部3Lと右方に配置された右側壁部3Rとが互いに対向して設けられている。
【0018】
上壁部4は、端壁部3Eおよび側壁部3Sの上端縁34から延設された二種の上壁部4O,4Iが重ね合わせられて設けられている。
ここでは、端壁部3Eから延設された上壁部4Oが外側に配置され(このことから上壁部4Oを「外上壁部4O」と呼ぶ)、側壁部3Sから延設された上壁部4Iが内側に配置される(このことから上壁部4Iを「内上壁部4I」と呼ぶ)。
【0019】
さらに、外上壁部4Oには、前方に配置された前外壁部4Fと後方に配置された後外壁部4Bとが設けられている。これらの外壁部4F,4Bは、先端どうしが突き合わせられる(
図1参照)、または、一部が互いに重ね合わせられる(
図3参照)。また、内上壁部4Iには、左方に配置された左内壁部4Lと右方に配置された右内壁部4Rとが設けられている。これらの内壁部4L,4Rは、先端どうしが間隔をあけて配置される。
【0020】
上記したようにさまざまな壁部2,3,4をもつ包装箱1は、段階的に高さ寸法Tが変更可能に構成されている。ここでは、予め設定された五段階(複数)の高さ寸法Tに変更可能な包装箱1を例に挙げる。
たとえば、予め設定された高さ寸法Tのうち、最も大きい寸法T
Hで組み立てられた状態(以下「最大状態」という)の包装箱1(
図1参照)は、最も小さい(低い)寸法T
Lで組み立てられた状態(以下「最小状態」という)の包装箱1(
図3参照)よりも高さ寸法Tが大きい。言い換えれば、最大状態の包装箱1は、最小状態の包装箱1よりも体積が大きく、その収容可能な量も大きい。
【0021】
具体的には、最小状態における立壁部3のほうが最大状態における立壁部3よりも高さ寸法Tが小さい。このような高さ寸法Tの変化分は、上壁部4で吸収される。すなわち、最小状態における上壁部4のほうが最大状態における上壁部4よりも多くの部位が重ね合わせられている。そのため、包装箱1の高さ寸法Tの大小に応じて、上壁部4は重合領域が増減し、立壁部3は延在領域(すなわち水平方向視の面積)が増減する。
【0022】
以下の説明では、最小状態の上壁部4に対応する部位を「フラップ5」とする。このフラップ5は、高さ寸法Tの大小によらず上壁部4の全てを含み、最小状態以外の包装箱1においては上述した立壁部3の上側部位を含む。また、フラップ5は、最小状態の包装箱1における上端縁34を基端とする。
図2に示すように、フラップ5は、側壁部3Sのそれぞれに対応するフラップ対5Iと、端壁部3Eのそれぞれに対応するフラップ対5Oとに細別される。
【0023】
これら二組のフラップ対5I,5Oは、一方のフラップ対5Iに対して他方のフラップ対5Oが外側に配置される(このことから、一方のフラップ対5Iを「内フラップ対5I」と呼び、他方のフラップ対5Oを「外フラップ対5O」と呼ぶ)。
内フラップ対5Iでは、左側壁部3Lに対応する左フラップ5L(第一内フラップ)と、右側壁部3Rに対応する右フラップ5R(第二内フラップ)とが互いに対向して配置される。同様に、外フラップ対5Oでは、前側壁部3Fに対応する前フラップ5F(第一外フラップ)と、後端壁部3Bに対応する後フラップ5B(第二外フラップ)とが互いに対向して配置される。
【0024】
さらに、外フラップ対5Oは、高さ寸法Tの大小によらず、開口Oの全部を覆う大きさに設定されている。たとえば、最小状態の包装箱1において、外フラップ対5Oのうち後フラップ5B(または前フラップ5F)の前後方向寸法は、開口Oの前後方向寸法α(包装箱1の前後方向寸法)と同程度の寸法に設定される。このようにして、フラップ5B,5Fのうち一方の前後方向寸法αが設定される場合には、フラップ5B,5Fのうち他方の前後方向寸法βは、高さ寸法Tのうち最も高い寸法T
Hと最も小さい寸法T
Lとの差分の寸法の二倍程度に設定される。
【0025】
さらに、上述した立壁部3のうち、フラップ5に含まれる部位を「可変立壁部」と呼び、それ以外の部位を「固定立壁部」と呼ぶ。すなわち、立壁部3のうち、包装箱1の高さ寸法Tを可変にするための部位には接頭に「可変」を付した要素名で呼ぶ。
なお、下壁部2の延在領域(すなわち平面視での面積)は、包装箱1の高さ寸法が何れの大きさに調節されたとしても変化しない。
【0026】
[1.2.シート材の詳細]
上記した包装箱1は、
図4を例示するシート材1′を折り曲げることで組み立てられる。
以下、シート材1′の各部位については、包装箱1で対応する部位の名称における末尾の「部」を「シート片」に置換した名称で呼ぶ。たとえば、固定立壁部7に対応する部位を固定立壁シート片7′と呼ぶ。ただし、フラップ5に対応する部位についてフラップシート片5′と呼ぶ。
【0027】
シート材1′には、Y方向に延在する下罫線Cが設けられている。ここでは、シート材1′に段ボールシートを用いており、この段ボールシートのフルート(「段目」とも称される)がY方向に配向されている。そのため、下罫線Cは、フルートと平行に延在する罫線(いわゆる「クリーズ」)である。
下罫線Cは、包装箱1において下端縁23をなす部位である。そのため、下罫線CのX方向位置は、変更可能な高さ寸法の基準位置B
0である。ここでは、基準位置B
0からX
2方向側に五つ(複数)の高さ位置Bが予め設定されている。
【0028】
五つの高さ位置Bについては、X
1方向からX
2方向へ向けて順に並ぶ「一から五の序数」を「第」の後に冠した名付けで呼ぶものとする。たとえば、第一高さ位置B
1や第五高さ位置B
5などと呼ぶ。
名付けの序数が大きくなるほどX
2方向側に配置される。そのため、基準位置B
0と第一高さ位置B
1との間のX方向寸法は、予め設定された高さ寸法Tのうち最も小さい寸法T
Lに対応する。基準位置B
0と第五高さ位置B
5との間のX方向寸法は、予め設定された高さ寸法Tのうち最も大きい寸法T
Hに対応する。
ここでは、隣接する高さ位置BどうしのX方向寸法が等間隔に設定されている。
【0029】
シート材1′は、下罫線Cによって、下壁シート片2′と固定立壁シート片7′およびフラップシート片5′とに大別される。下罫線Cに対してX
1方向側に下壁シート片2′が配置され、下罫線Cに対してX
2方向側に固定立壁シート片7′およびフラップシート片5′が配置される。
図4では、いわゆるワンタッチ式の下壁部2を構成する下壁シート片2′を例示する。ただし、ここで例示する下壁シート片2′に替えて、いわゆるA式箱の下壁部を構成する下壁シート片や、いわゆるアメリカンロック(「地獄底」とも称される)と同様の下壁部を構成する下壁シート片といった種々の公知形状のシート片を採用してもよい。
【0030】
また、固定立壁シート片7′およびフラップシート片5′には、X方向に延在する四本の連接罫線Sが設けられる。ここでの連接罫線Sは、フルートと直交する方向に延在する罫線(いわゆる「スコア」)である。
言い換えると、本シート材1′では、固定立壁シート片7′だけでなく、フラップシート片5′もX方向に連接されている。そのため、フラップシート片5′に対応するフラップ5(
図2参照)は、いわゆるA式箱のように互いに独立して揺動可能なフラップとは異なり、互いに連なって接続され、互いに連れ伴って揺動するように設けられる。
【0031】
シート材1′は、四本の連接罫線Sによって、包装箱1における前後左右のそれぞれに応じた四つの領域に区画される。四本の連接罫線Sは、Y
1方向からY
2方向へ向けて、第一連接罫線S
1,第二連接罫線S
2,第三連接罫線S
3,第四連接罫線S
4がこの順に並んで配置される。
第一連接罫線S
1と第二連接罫線S
2との間は、包装箱1の状態で左方に対応する左領域A
Lであり、第二連接罫線S
2と第三連接罫線S
3との間は、包装箱1の状態で前方に対応する前領域A
Fである。また、第三連接罫線S
3と第四連接罫線S
4との間は、包装箱1の状態で右方に対応する右領域A
Rであり、第四連接罫線S
4よりもY
2方向側の領域は、包装箱1の状態で後方に対応する後領域A
Bである。
【0032】
上記した領域A
L,A
F,A
R,A
Bでは、X方向において基準位置B
0と第一高さ位置B
1との間に固定立壁シート片7′が設けられ、固定立壁シート片7′よりもX
2方向側にフラップシート片5′が設けられている。
詳細に言えば、X方向において基準位置B
0と第一高さ位置B
1との間と重複する領域A
L,A
Fにおいて、左領域A
Lには固定左側壁シート片7L′(固定側壁シート片)が設けられ、前領域A
Fには固定前端壁シート片7F′(固定端壁シート片)が設けられる。固定左側壁シート片7L′よりもX
2方向側には左フラップシート片5L′が設けられ、固定前側壁シート片7F′よりもX
2方向側には前フラップシート片5F′が設けられる。
【0033】
同様に、X方向において基準位置B
0と第一高さ位置B
1との間と重複する領域A
R,A
Bにおいて、右領域A
Rには固定右側壁シート片7R′(固定側壁シート片)が設けられ、後領域A
Bには固定後端壁シート片7B′(固定端壁シート片)が設けられる。固定右側壁シート片7R′よりもX
2方向側には右フラップシート片5R′が設けられ、固定後端壁シート片7B′よりもX
2方向側には後フラップシート片5B′が設けられる。
【0034】
なお、領域A
L,A
F,A
R,A
Bにおいて、第一高さ位置B
1に対してX
2方向側かつ第五高さ位置B
5に対してX
1方向側の領域(フラップシート片5′のうちX
1方向側の一部)には、可変立壁シート片6′が設けられている。
そのほか、第一連接罫線S
1よりもY
1方向側の領域には、糊代シート片9′が設けられている。フラップシート片5′および固定立壁シート片7′のY方向端部どうしが糊代シート片9′によって糊付けされる。
【0035】
ところで、上述したようにフラップシート片5′が連接されていることから、フラップシート片5′に対応するフラップ5を、Y方向に対応する水平方向の折線だけで折り畳もうとすると、隣接するフラップ5どうしが干渉する。このようなフラップ5を折り畳むことは、困難または不能である。
そこで、本シート材1′には、隣接するフラップ5において折り畳み時に干渉する部分を折り込んでその干渉を解消させる折線となる罫線RがY方向に対して45°の角度で傾斜して設けられている(このことから「罫線R」を「傾斜罫線R」と呼ぶ)。
【0036】
ここでは、左右のフラップシート片5L′,5R′に傾斜罫線Rが形成された例を挙げる。なお、傾斜罫線Rには、スジ押しと切り込みとを交互に設けたリード罫が採用されている。
シート材1′から包装箱1を組み立てるときには、傾斜罫線Rの折線で左右のフラップシート片5L′,5R′が折り曲げられ、傾斜罫線Rに対してX
2方向側の領域が傾斜罫線Rに対してX
1方向側の領域に対して上方から重ね合わせられる。このように折り込まれる左右のフラップ5L,5Rとこれらに連れ伴って折り曲げられる前後のフラップ5F,5Bは、互いに干渉せずに折り曲げられる。
【0037】
このとき、フラップ5F,5B,5L,5Rは、高さ位置Bの何れかに対応した高さ寸法Tの折線で折り曲げられる。本シート材1′ではフルートがY方向に配向される。言い換えれば、包装箱1において開口Oを囲繞する上端縁34に沿ってフルートが配向される。このようなフルートの配向によって、包装箱1の高さ寸法Tにおけるフラップ5の基部における折り曲げが案内される。このことから、上記した配向のフルートによる折り曲げの案内構造を「フルート構造11」と呼ぶ。なお、
図4では、シート材1の一部(破線で円形に囲む領域)を透視して内部のフルートを示し、このフルートがY方向に沿う配向を示す。
【0038】
傾斜罫線Rは、設定された高さ位置Bの段階数に応じて五本(複数)が設けられている。具体的には、第一高さ位置B
1に応じて第一傾斜罫線R
1が形成され、第二高さ位置B
2に応じて第二傾斜罫線R
2が形成される。同様に、第三高さ位置B
3に応じた第三傾斜罫線R
3,第四高さ位置B
4に応じた第四傾斜罫線R
4,第五高さ位置B
5に応じた第五傾斜罫線R
5が形成される。
【0039】
左右のフラップシート片5L′,5R′のそれぞれにおいては、傾斜罫線RがY方向対称に設けられている。ここでは、右フラップシート片5R′のうちY
2方向側に主に着目して、傾斜罫線Rの構成を説明する。
傾斜罫線Rは、直線状に設けられている。傾斜罫線Rおよびこれを直線状に延長した仮想的な線(これらを「仮想線」と呼ぶ)は、傾斜罫線Rのそれぞれに対応する高さ位置B(フルート構造11で折り曲げを案内する箇所,すなわちフルート構造11)と第四連接罫線S
4との交差箇所を通るように延在している。たとえば、第一高さ位置B
1と第四連接罫線S
4との交差箇所P
1を通る仮想線上に第一傾斜罫線R
1が配置されている。
【0040】
なお、右フラップシート片5R′のうちY
1方向側では、第三連接罫線S
3に対して高さ位置Bが交差する箇所を通る仮想線上に、傾斜罫線Rが延在する。
同様に、左フラップシート片5L′のうちY
2方向側では、第二連接罫線S
2に対して高さ位置Bが交差する箇所を通る仮想線上に、傾斜罫線Rが延在する。また、左フラップシート片5L′のうちY
1方向側では、第一連接罫線S
1に対して高さ位置Bが交差する箇所を通る仮想線上に、傾斜罫線Rが延在する。
【0041】
そのほか、フルート構造11によって案内されるフラップ5の折り曲げを補助する切込部8′も設けられている。すなわち、切込部8′は、高さ位置Bに対応した高さ寸法Tの折線で折り曲げを補助的に案内する。
ここでは、連接罫線Sの近傍において、傾斜罫線Rどうしの間が切り込まれた第一切込部81′がX方向に並んで設けられている。なお、X方向のうち第五高さ位置B
5では、フラップシート片5′のY方向中央に第二切込部82′が設けられている。糊代シート片9′においても、高さ位置Bのそれぞれに対応した第三切込部83′が設けられている。これらの切込部81′,82′,83′は、Y方向に沿って配向される。
【0042】
[1.3.包装箱の詳細]
つぎに、
図1〜
図3を参照して、上述したシート材1′から組み立てる包装箱1について、高さ寸法Tを変更にする構成に関して詳述する。
包装箱1には、フラップ5を折り曲げるための主な構成として、連接罫線S,傾斜罫線Rおよびフルート構造11が設けられている。さらに、フルート構造11によって案内されるフラップ5の折り曲げを補助する構成として、切込部8が設けられている。
【0043】
――連接罫線――
連接罫線Sは、立壁部3において各壁部3F,3B,3L,3Rを区画する境界線(縦端縁)をなすほか、上壁部4において各壁部4F,4B,4L,4Rを区画する境界線をなす。言い換えれば、連接罫線Sは、連接されたフラップ5を四つに区画する境界線をなす。
【0044】
――フルート構造――
フルート構造11は、包装箱1において水平方向に延在するフルートの配向をもつ構造である。たとえば、フルート構造11においては、立壁部3と上壁部4との境界をなす上端縁34に沿ってフルートが配向されている。
なお、従来の包装箱では、上下の荷重に対する強度をもたせるため、上下方向にフルートを配向させることが一般的である。これに対して、本実施形態の包装箱1では、フラップ5の折り曲げやすくするために、あえて従来の配向に対して直交する配向をフルートに採用している。
【0045】
――傾斜罫線――
さらに、五段階の高さ寸法Tに応じて五本(複数)の傾斜罫線Rが設けられている。高さ寸法Tのうち、最も小さい寸法T
Lに対応して第一傾斜罫線R
1が設けられ、最も大きい寸法T
Hに対応して第五傾斜罫線R
5が設けられる。高さ寸法Tのうち寸法T
L,T
Hを除く三つの寸法に対応して、第二傾斜罫線R
2,第三傾斜罫線R
3,第四傾斜罫線R
4が設けられる。
上記した傾斜罫線Rのそれぞれは、案内構造11のフルートの延在方向に対して45°の傾斜角度で配向される。このような配向で延在する傾斜罫線Rやその仮想線は、上述したように、フルート構造11と連接罫線Sとの交差箇所を通る位置に配置される。たとえば、高さ寸法Tのそれぞれに対応する包装箱1において、上端縁34の角部から内フラップ対5Iの前後方向中央に向けて、傾斜罫線Rが設けられている。
【0046】
―― 切込部 ――
そのうえ、
図2に示すように、高さ位置Bに対応した高さ寸法Tの折線で折り曲げを補助的に案内する切込部8が設けられている。この切込部8は、フルートに沿って部分的に切り込まれている。
たとえば、内フラップ対5Iには、傾斜罫線Rどうしの間が切り込まれた第一切込部81が並んで設けられている。ここでは、連接罫線Sの近傍に第一切込部81が配置される。また、内フラップ対5Iの前後方向中央において、高さ寸法Tのうち最も大きい寸法T
Hに対応する箇所には、第二切込部82が配置される。さらに、五段階の高さ寸法に応じた五つの第三切込部83が糊代部9に設けられている。
【0047】
―― その他 ――
そのほか、内フラップ対5Iには、先端かつ前後方向中央(中央)が切り欠かれた切欠部20が設けられている。切欠部20の大きさや形状は、高さ寸法Tに応じて上端縁34から突出する寸法が増減する外フラップ対5Oが内フラップ対5Iに対して干渉しないように設定される。
【0048】
[2.作用および効果]
本実施形態の包装箱1は、上述のように構成されるため、以下のような作用および効果を得ることができる。
(1)開口Oを封鎖する包装箱1の封緘時には、連接された四つのフラップ5において、いわゆるキャラメル包みの折り込みのように、以下に示す三種の折り曲げが連動する。
・第一折り曲げ:フラップ5を連接罫線Sで前後左右の領域に区画する山折り
・第二折り曲げ:内フラップ対5Iを傾斜罫線Rで折り込む谷折り
・第三折り曲げ:フラップ5を上端縁34のフルート構造11で山折り
【0049】
第一折り曲げでは、連接罫線Sのそれぞれが外側に凸の山折りで折り曲げられる。すなわち、隣接するフラップ5の境界線が山折りされる。
第二折り曲げでは、傾斜罫線Rに対して先端側の領域がこれに対応する基端側の領域へ上方から重ね合わせられるように、傾斜罫線Rが内側に凸の谷折りで折り曲げられる。
第三折り曲げでは、傾斜罫線Rと連接罫線Sとの交差箇所で水平に延びるフルート構造11によって折り曲げが案内され、この折線が外側に凸の山折りで折り曲げられる。
【0050】
上述したように三種の折り曲げが連動するため、連接されたフラップ5を互いに干渉することなく円滑に折り曲げることができる。
さらに、五つの高さ寸法Tに対応して五本の傾斜罫線Rが設けられており、何れの高さ寸法Tにおいてもフラップ5の折り曲げがフルート構造11によって案内される。そのため、五つの高さ寸法Tのうち所望の寸法でフラップ5を円滑に折り曲げることができ、所望の高さをもつ包装箱1を組み立てることができる。
よって、高さ寸法の変更可能な包装箱1の封緘作業性を高めることができる。
【0051】
(2)また、フルート構造11によって、上記した第三折り曲げを案内することができる。
さらに、第三折り曲げの折線となる箇所に罫線を設けた構造(以下「罫線構造」という)と比較して、包装箱1の強度を確保することに寄与する。
このフルート構造11によれば、フルートの配向に沿う折れ目に対しては折れ曲がりやすいとともにフルートの配向に交差する折れ目に対しては折れ曲がりにくいという段ボールシートの折れ曲がりの異方性を利用している。そのため、罫線構造を追加した包装箱と比較して、包装箱1の製函コストを低減させることができる。
仮に、包装箱の外面に罫線構造を設けた場合には、その罫線が外観に影響し、包装箱の見栄えが低下するおそれがある。これに対して、フルート構造11は、包装箱1の外観に影響せず、包装箱1の見栄えを確保することができる。
【0052】
(3)そのうえ、フルート構造11によるフラップ5の折り曲げを補助的に案内する切込部8が設けられることから、フラップ5を更に円滑に折り曲げることができる。そのため、上記した封緘作業性を更に向上させることができる。
(4)なお、傾斜罫線Rは、フラップ5のうち内フラップ対5Iに設けられることから、包装箱1が封緘された状態では上壁部4に露出することがなく、包装箱1の外観を良好にすることができる。
【0053】
(5)内フラップ対5Iは、その先端かつ前後方向が切欠部20で切り欠かれることにより、高さ寸法Tによらず外フラップ対5Oと干渉することがない。この点からも包装箱1の封緘作業性を高めることができる。
(6)そのほか、外フラップ対5Oが開口Oの全部を覆う大きさに設定されることから、包装箱1の高さ寸法Tの大小によらず、開口Oの全部を閉鎖することができる。延いては、包装箱1の封緘性を高めることにも寄与する。
【0054】
[II.その他]
上述した実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0055】
たとえば、包装箱の上端縁におけるフラップの折り曲げの案内構造としては、フルート構造に替えてまたは加えて、複数の高さ寸法に応じた複数の罫線をもつ構造を用いてよい。すなわち、予め設定された高さ寸法で組み立てられた包装箱の上端縁に沿って複数の罫線を並べて設けてもよい。このような罫線構造によれば、フルート構造と比較して、上端縁での折り曲げ箇所を安定させることができ、包装箱の封緘作業性の向上に寄与する。
【0056】
傾斜罫線の配置箇所は、左右の内フラップ対に限らず、フラップにおいて種々の箇所に配置することができる。たとえば、内フラップ対に加えて外フラップ対にも傾斜罫線を設けてもよいし、内フラップ対に替えて外フラップ対に傾斜罫線を設けてもよい。
そのほか、四つのフラップのうち連接方向(周方向)の一方だけに傾斜罫線を設けてもよい。たとえば、左フラップの後部,後フラップの左部,右フラップの前部および前フラップの右部に傾斜罫線の配置箇所を設定してもよい。
【0057】
なお、包装箱の載置方向は、端壁部が前後に配置される姿勢に限定されず、端壁部が左右や上下に配置されてもよい。端壁部が左右に配置される場合には、前後を左右に読み替えるとともに左右を前後または上下に読み替え、左右を上下に読み替えたときには上下を前後に読み替えればよい。端壁部が上下に配置される場合には、前後を上下に読み替えるとともに上下を前後または左右と読み替え、上下を左右と読み替えたときには左右を前後に読み替えればよい。