(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本開示のラジアルフォイル軸受を詳しく説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
図1は、本開示のラジアルフォイル軸受が適用されるターボ機械の一例を示す側面図である。
図1中、符号1は回転軸(シャフト)、符号2は回転軸の軸方向の一方側の先端に設けられたインペラ、符号3は本開示に係るラジアルフォイル軸受である。なお、
図1では省略してラジアルフォイル軸受を一つしか記載していないが、通常は回転軸1の軸方向にラジアルフォイル軸受が二つ設けられている。したがって、本実施形態においてもラジアルフォイル軸受3が二つ設けられている。
【0020】
回転軸1には、ラジアルフォイル軸受3が外挿(挿通)されている。回転軸1のインペラ2とラジアルフォイル軸受3との間には、スラストカラー4が設けられている。このスラストカラー4の軸方向両側には、スラスト軸受5が配置(挿通)されている。インペラ2は、静止側となるハウジング6内に配置されており、ハウジング6との間にチップクリアランス7を有している。
【0021】
(第1実施形態)
図2は、本開示の第1実施形態に係るラジアルフォイル軸受3を示す正面図である。
ラジアルフォイル軸受3は、回転軸1に外挿されて、該回転軸1を支持する軸受である。ラジアルフォイル軸受3は、トップフォイル9と、中間フォイル10と、バックフォイル11と、ベースシート30と、軸受ハウジング12と、を備える。軸受ハウジング12は、回転軸1が挿通される挿通孔12aを有する。
【0022】
なお、以下の説明においては、挿通孔12aを基準に各部材の位置関係を説明することがある。具体的に、「軸方向」とは、挿通孔12aが延びる方向(回転軸1が挿通される方向)を言う。また、「径方向」とは、挿通孔12aの径方向を言う。また、「周方向」とは、挿通孔12aの内周面に沿った周方向を言う。
【0023】
軸受ハウジング12は、径方向におけるラジアルフォイル軸受3の最外部を構成する円筒状の部材である。軸受ハウジング12には、挿通孔12aが形成されている。挿通孔12aには、ベースシート30、バックフォイル11、中間フォイル10、トップフォイル9が収容されている。具体的に、ベースシート30は挿通孔12aの内周面に支持され、バックフォイル11はベースシート30に支持され、中間フォイル10はバックフォイル11に支持され、トップフォイル9は中間フォイル10に支持されている。なお、本開示の軸受ハウジング12は、挿通孔12aを備える円筒状の部材である。しかし、挿通孔12aを有すれば、軸受ハウジング12は、円筒状以外の部材(例えば角柱状の部材)であってもよい。
【0024】
図3は、本開示の第1実施形態に係るトップフォイル9を展開した(a)平面図、(b)正面図である。
トップフォイル9は、
図3(a)に示すように、周方向を長辺とし、軸方向を短辺とする矩形状の金属箔である。このトップフォイル9は、
図2に示すように、円筒状に巻かれて、回転軸1の周面に対向して配置されている。
【0025】
トップフォイル9の長辺方向における一方の短辺(端部,第1端)には、
図3(a)に示すように、長辺方向の一方側に突出する一つの凸部21aと、凸部21aの短辺方向両側に形成された二つの凹部22aとを有してなる第1の凹凸部23aが形成されている。すなわち、トップフォイル9の長辺方向における一方の短辺は、長辺方向の一方側に突出する一つの凸部21aと、凸部21aの短辺方向両側に延接する段差とを備える。
【0026】
また、トップフォイル9の当該一方の短辺と反対の他方の短辺(長辺方向における他方側に位置する短辺(端部,第2端))には、短辺方向において離隔する二つの凸部21bと、当該二つの凸部21bの間に位置する一つの凹部22bと、を有してなる第2の凹凸部23bが形成されている。あるいは、トップフォイル9の長辺方向の他方側に位置する短辺には、長辺方向の一方側に窪む凹部22bと、凹部22bの短辺方向両側に位置する段差とを備える。
【0027】
第2の凹凸部23bの凹部22bは、第1の凹凸部23aの凸部21aに対応して形成されている。また、第1の凹凸部23aの凹部22aは、第2の凹凸部23bの凸部21bに対応して形成されている。つまり、凹部22bの短辺方向の間隔の最少が、凸部21aの短辺方向の幅の最大より大きい。本開示の凹部22bの長辺方向の間隔と、凸部21aの長辺方向の間隔は、長辺方向において一定である。
【0028】
第2の凹凸部23bの凹部22bは、第1の凹凸部23aと第2の凹凸部23bとが重なるようにトップフォイル9を円筒状に巻いた際、凹部22b内を凸部21aが通り抜けるように形成されている。同様に、第1の凹凸部23aの凹部22aは、トップフォイル9を円筒状に巻いた際、該凹部22a内を凸部21bがそれぞれ通り抜けるように形成されている。つまり、トップフォイル9は、第1端(一方の短辺)から周方向一方側に延伸する部位(凸部21a)と、第2端(他方の短辺)から周方向他方側に延伸する部位(凸部21b)が、軸方向に交差している。
【0029】
凹部22b、22aを通り抜けた凸部21a、21b(トップフォイル9の両端)は、
図2に示すように、それぞれ軸受ハウジング12側に引き出される。すなわち、挿通孔12aの内周側に配されたトップフォイル9を軸方向から見ると、凸部21aと凸部21bが交差している。また、トップフォイル9の凸部21aは、軸方向において、2つの凸部21bの間に位置する。軸受ハウジング12には、挿通孔12aの内周面に、凸部21a、21bが挿入される通し溝13が形成されている。通し溝13は、軸受ハウジング12の軸方向の一方の端面12bから他方の端面12bまで形成されている。
【0030】
トップフォイル9は、
図3(b)に示すように、第1の凹凸部23aを形成した側(一方の短辺側)と第2の凹凸部23bを形成した側(他方の短辺側)とに、これらの間の中央部に比べて薄厚(薄肉)な薄肉部24が形成されている。これら薄肉部24は、
図2に示すように、その外周面(軸受ハウジング12側の面)が中央部の外周面より凹み、薄肉となっている。
【0031】
薄肉部24の周方向の長さLは、
図2に示すように、通し溝13と、バックフォイル11の端部の山部11cの一つ分までに対応する長さとされている。本開示においては、軸受ハウジング12に配されたトップフォイル9は、外周面側に段差を備え、当該段差を介し薄肉となる。また、薄肉部24は、トップフォイル9の周方向の両端から最も近い山部11cを越える周方向位置まで延在している。
【0032】
バックフォイル11は、ベースシート30と中間フォイル10との間に配置されている。バックフォイル11は、中間フォイル10及びトップフォイル9を弾性的に支持するフォイル(薄板)である。このようなバックフォイル11としては、例えばバンプフォイルや、特開2006−57652号公報や特開2004−270904号公報などに記載されているスプリングフォイル、特開2009−299748号公報などに記載されているバックフォイルなどが用いられる。本実施形態では、バックフォイル11としてバンプフォイルを用いている。
【0033】
本開示のバックフォイル11は、挿通孔12aの内周面に沿って配置された3つ(複数)のバックフォイル片11aによって構成されている。バックフォイル片11aは、フォイル(薄板)が周方向に波板状になっている。3つのバックフォイル片11aは、軸方向から見たとき、全体として略円筒状になるよう湾曲している。つまり、バックフォイル片11aは、挿通孔12aの内周面に沿って配置される。本開示では、バックフォイル片11aの3つが全て同じ形状・寸法に形成されている。したがって、これらバックフォイル片11aは、挿通孔12aの内周面を周方向において略3分割して配置されている。
【0034】
バックフォイル片11aは、径方向内側に突出する山部11cと、山部11cから見て径方向外側に突出する谷部11bと、が周方向において交互に形成されている。つまり、バックフォイル片11a(バックフォイル11)は、挿通孔12aの径方向に凹凸を有する。谷部11bのベースシート30と対向する平坦部は、ベースシート30に当接可能である。また、山部11cは、中間フォイル10(中間フォイル片10a)に当接可能である。このように、バックフォイル片11aは、山部11cにより、中間フォイル片10aを介してトップフォイル9を弾性的に支持している。なお、バックフォイル片11aの周方向両端は、いずれも谷部11bとなっている。
【0035】
中間フォイル10は、トップフォイル9とバックフォイル11との間に配置されている。中間フォイル10は、本開示では、挿通孔12aの内周面に沿って配置された3つの中間フォイル片10aによって構成されている。3つの中間フォイル片10aは、展開形状が略矩形状であり、軸方向から見たとき、
図2に示すように、全体として略円筒状になるよう湾曲している。本開示では、中間フォイル片10aの3つが全て同じ形状・寸法に形成されている。したがって、これら中間フォイル片10aは、挿通孔12aの内周面を周方向において略3分割して配置されている。
【0036】
中間フォイル片10aの厚みは、バックフォイル片11aよりも薄い。中間フォイル10の剛性は、バックフォイル11の剛性の半分以下である。中間フォイル片10aの外形は、バックフォイル片11aの外形と略等しい大きさを有する。この中間フォイル片10aは、バックフォイル11の山部11cの頂部に接する平面部10bと、平面部10bによりも径方向外側に窪む(突出する)溝部10cと、を有する。すなわち、この溝部10cは、トップフォイル9から離隔している。溝部10cは、中間フォイル片10aの周方向両端の間の周方向位置(本開示では周方向における中間フォイル片10aの中央位置)に形成されている。中間フォイル片10aの溝部10cの両側の部位は、溝部10cが対向するバックフォイル片11aの谷部11bの両側の山部11cに当接可能となっている。
【0037】
図4は、本開示の第1実施形態に係る中間フォイル10及びバックフォイル11と係合した状態のベースシート30を展開した平面図である。すなわち、
図4では、中間フォイル10(中間フォイル片10a)の下側に、不図示であるがバックフォイル11(バックフォイル片a)が配置されている。
図5は、本開示の第1実施形態に係るバックフォイル11と係合した状態のベースシート30を展開した平面図である。すなわち、
図5では、中間フォイル10(中間フォイル片10a)をベースシート30から取り外している。
図6は、本開示の第1実施形態に係るベースシート30を展開した平面図である。
図7は、本開示の第1実施形態に係るベースシート30と中間フォイル10及びバックフォイル11との係合状態を示す正面拡大図である。
【0038】
ベースシート30は、
図4〜
図6に示すように、周方向を長辺とし、軸方向を短辺とする矩形状の金属箔である。このベースシート30は、
図2に示すように、円筒状に巻かれて、挿通孔12aの内周面に配置されている。ベースシート30の長辺方向における一方の短辺には、トップフォイル9と同様に、長辺方向の一方側に突出する一つの凸部31aと、凸部31aの短辺方向両側に形成された二つの凹部32aとを有してなる第1の凹凸部33aが形成されている。すなわち、ベースシート30の長辺方向における一方の短辺は、長辺方向の一方側に突出する一つの凸部31aと、凸部31aの短辺方向両側に延接する段差とを備える。
【0039】
また、ベースシート30の当該一方の短辺と反対の他方の短辺(長辺方向における他方側に位置する短辺)には、短辺方向において離隔する二つの凸部31bと、当該二つの凸部31bの間に位置する一つの凹部32bと、を有してなる第2の凹凸部33bが形成されている。あるいは、ベースシート30の長辺方向の他方側に位置する短辺には、長辺方向の一方側に窪む凹部32bと、凹部32bの短辺方向両側に位置する段差とを備える。
【0040】
第2の凹凸部33bの凹部32bは、第1の凹凸部33aの凸部31aに対応して形成されている。また、第1の凹凸部33aの凹部32aは、第2の凹凸部33bの凸部31bに対応して形成されている。第2の凹凸部33bの凹部32bは、第1の凹凸部33aと第2の凹凸部33bとが重なるようにベースシート30を円筒状に巻いた際、凹部32b内を凸部31aが通り抜けるように形成されている。同様に、第1の凹凸部33aの凹部32aは、ベースシート30を円筒状に巻いた際、該凹部32a内を凸部31bがそれぞれ通り抜けるように形成されている。
【0041】
凹部32b、32aを通り抜けた凸部31a、31b(ベースシート30の両端)は、
図2に示すように、それぞれ軸受ハウジング12側に引き出され、通し溝13に挿入される。すなわち、挿通孔12aの内周側に配されたベースシート30を軸方向から見ると、凸部31aと凸部31bが交差している。また、ベースシート30の凸部31aは、軸方向において、2つの凸部31bの間に位置する。さらに、ベースシート30の凸部31aは、トップフォイル9の凸部21bと交差している。また、ベースシート30の凸部31bは、トップフォイル9の凸部21aと交差している。
【0042】
すなわち、ベースシート30の凹部32bは、トップフォイル9の凸部21aが通り抜けるように形成されている。同様に、トップフォイル9の凹部22bは、ベースシート30の凸部31aが通り抜けるように形成されている。つまり、ベースシート30の凹部32bの短辺方向の間隔の最少が、ベースシート30の凸部31a及びトップフォイル9の凸部21aの短辺方向の幅の最大より大きい。また、トップフォイル9の凹部22bの短辺方向の間隔の最少が、トップフォイル9の凸部21a及びベースシート30の凸部31aの短辺方向の幅の最大より大きい。なお、ベースシート30の凹部32bの長辺方向の間隔と、凸部31aの長辺方向の間隔は、長辺方向において一定である。
【0043】
バックフォイル片11aは、
図5に示すように、軸方向(
図5において紙面上下方向)の両端縁に切欠11dを備える。切欠11dは、バックフォイル片11aの谷部11bに形成されている。切欠11dは、バックフォイル片11aの周方向両端の間の周方向位置(本開示では周方向におけるバックフォイル片11aの中央位置)に形成されている。また、切欠11dは、バックフォイル片11aに形成された2つの山部11cの間の周方向位置に形成されている。すなわち、バックフォイル片11aには、軸方向の両端縁の当該周方向位置において、軸方向に凹みが存在する。
【0044】
また、中間フォイル片10aは、
図4に示すように、軸方向(
図4において紙面上下方向)の両端縁に切欠10dを備える。切欠10dは、中間フォイル片10aの溝部10cに形成されている。切欠10dは、中間フォイル片10aの周方向両端の間の周方向位置(本開示では周方向における中間フォイル片10aの中央位置)に形成されている。すなわち、中間フォイル片10aには、軸方向の両端縁の当該周方向位置において、軸方向の凹みが存在する。
【0045】
切欠10dは、平面部10bと平面部10bとの間に形成された溝部10cの底部の一部が、軸方向における中間フォイル片10aの中央部に向かって切り欠かれて形成されたものである。切欠10dは、バックフォイル片11aの切欠11dに対応する位置、すなわち切欠11dと重なる位置に形成されている。切欠10dの幅は、切欠11dの幅と略同じに形成されている。これら切欠10d,11dには、ベースシート30の分岐Pから延伸する延伸部34が係合している。すなわち、延伸部34は、その周方向の両側を、切欠11dのエッジに挟まれる形で、バックフォイル片11aの外周側から内周側まで延伸している。同様に、延伸部34は、その周方向の両側を、切欠10dのエッジに挟まれる形で、中間フォイル片10aの外周側から内周側まで延伸している。つまり、延伸部34が、バックフォイル11及び中間フォイル10に対して、周方向両側に対向し、挿通されている。
【0046】
ベースシート30は、
図7に示すように、挿通孔12aの径方向(
図7において紙面上下方向)に離反する分岐Pを有する。そして、分岐Pを介して延伸部34が延伸している。第1実施形態に係る分岐Pは、挿通孔12aの径方向内側(
図7において紙面上側)に離反している。つまり、延伸部34は、分岐Pから径方向内側に向かい延伸している。この分岐Pは、
図6に示すように、ベースシート30の軸方向(
図7において紙面上下方向)の両端縁に形成されている。分岐Pは、ベースシート30の両端縁において周方向に等間隔で複数(両端縁のそれぞれに3つ(計6つ))形成されている。すなわち、分岐Pは、中間フォイル片10a及びバックフォイル片11aに対応して3つ形成されている。
【0047】
分岐Pから延伸する延伸部34は、
図7に示すように、ベースシート30の一部を切り起こして形成されている。この延伸部34は、ベースシート30のシート面に対して鈍角方向に延伸する「返し」である。
図6に示すように、延伸部34(分岐P)に隣接する位置には、切欠35が形成されている。すなわち、ベースシート30には、軸方向の両端縁の延伸部34の形成位置の近傍において、軸方向の凹みが存在する。延伸部34は、
図7に示すように、切欠11d及び切欠10dに挿入されている。延伸部34は、切欠11d及び切欠10dを通った中間フォイル10の内周側において、挿通孔12aの周方向一方側(
図7における紙面左側)に延伸している。
【0048】
具体的に、延伸部34は、切欠10dを通った中間フォイル10(中間フォイル片10a)の径方向内側において、周方向における切欠10dの形成範囲W外まで延伸している。切欠10dは、周方向においてバックフォイル11(バックフォイル片11a)の切欠11dよりも僅かに大きい形成範囲Wを有するため、延伸部34は、切欠11dを通ったバックフォイル11(バックフォイル片11a)の径方向内側において、周方向における切欠11dの形成範囲外まで延伸していると言える。すなわち、延伸部34の中間フォイル10より内側にある部分は、中間フォイル10と径方向に少なくとも一部が重なって配置される。延伸部34は、トップフォイル9と干渉しないように、中間フォイル10の溝部10c内に収容されている。
【0049】
次に、このような構成からなるラジアルフォイル軸受3の作用について説明する。
回転軸1が停止した状態では、トップフォイル9はバックフォイル11(3つのバックフォイル片11a)によって中間ファイル10(3つの中間フォイル片10a)を介して回転軸1側に付勢されることで回転軸1に密着している。なお、本実施形態では、トップフォイル9の両端部が薄肉部24となっているので、これら薄肉部24では回転軸1を締め付ける力(局所的なプリロード)が、薄肉部24がない場合と比べ緩和される。
【0050】
そして、回転軸1を
図2中の矢印R方向に始動させると、最初は低速で回転を始め、その後徐々に加速して高速で回転する。すると、
図2中矢印Qで示すように、トップフォイル9、中間フォイル10、バックフォイル11のそれぞれの一端側から周囲流体が引き入れられ、トップフォイル9と回転軸1との間に流入する。これにより、トップフォイル9と回転軸1との間に流体潤滑膜が形成される。
【0051】
この流体潤滑膜の膜圧は、トップフォイル9に作用し、該トップフォイル9に接する中間フォイル10を介してバックフォイル片11aの個々の山部11cを押圧する。すると、バックフォイル片11aは中間フォイル10に押圧されることにより、その山部11cが押し広げられ、これによってバックフォイル片11aは軸受ハウジング12上をその周方向に動こうとする。すなわち、バックフォイル片11a(バックフォイル11)は、中間フォイル10を介してトップフォイル9を弾性的に支持するため、トップフォイル9から荷重を受けた際にはその周方向に変形することで、トップフォイル9や中間フォイル10の撓みを許容し、これを支持する。
【0052】
ここで、
図5及び
図7に示すように、バックフォイル片11aには、軸方向の端縁に形成された切欠11dに、ベースシート30の分岐Pから延伸する延伸部34が挿入されている。ベースシート30の凸部31a,31bは、
図2に示すように、トップフォイル9と共に軸受ハウジング12の通し溝13に係合しているため、延伸部34がバックフォイル片11aの回り止めとなる。したがって、バックフォイル片11aの個々の山部11cは、延伸部34が挿入された切欠11dを挟み周方向に変形する(動く)。
【0053】
また、延伸部34は、
図5に示すように、バックフォイル片11aの軸方向の両端縁の切欠11dにそれぞれ挿入されており、軸方向におけるバックフォイル片11aの移動も抑制している。さらに、延伸部34は、
図7に示すように、切欠11dを通ったバックフォイル11の内周側において、挿通孔12aの周方向における切欠11dの形成範囲W外まで延伸している。つまり、ベースシート30には、切欠11dを通ったバックフォイル11の内周側に「返し」が形成されており、これが径方向におけるバックフォイル片11aの抜け止めとなっている。つまり、延伸部34は、切欠11dより、回転軸1の回転方向と逆の周方向側にまで延伸している。よって、バックフォイル11の分解及び脱落が抑制される。
【0054】
中間フォイル片10aにもバックフォイル片11aと同様に、切欠10dが形成され、延伸部34が挿入されている。このため、中間フォイル10も分解及び脱落が抑制される。中間フォイル片10aは、トップフォイル9からバックフォイル片11aへ荷重を伝える際、トップフォイル9およびバックフォイル片11aと共に撓むが、このとき中間フォイル片10aとトップフォイル9やバックフォイル片11aとの間で「滑り」が生じる。すなわち、回転軸1の軸振動により流体潤滑膜に圧力変動が生じると、トップフォイル9に圧力変動が伝達し、当該「滑り」が生じる。この「滑り」が摩擦によるエネルギー散逸を引き起こし、膜圧変動を減衰させるので、回転軸1の軸振動が抑制される。
【0055】
また、回転軸1の軸振動による変動荷重(負荷と除荷の繰り返し)がバックフォイル片11aに作用し、荷重が除荷側になったとき、バックフォイル片11aは、軸受ハウジング12の挿通孔12aの径方向内側に僅かに浮き上がる。このとき、延伸部34の返し部33が、バックフォイル片11a(中間フォイル片10a)に引っ掛かり、バックフォイル片11aと一緒にベースシート30が持ち上げられる。ここで、ベースシート30が持ち上げられたとき、ベースシート30と軸受ハウジング12の挿通孔12a、及び、ベースシート30とバックフォイル片11aとの間で「滑り」が生じ、これが摩擦によるエネルギー散逸を引き起こし、減衰として寄与する。一方、バックフォイル片11aに作用する荷重が負荷側になると、バックフォイル片11aは元の位置へ戻るが、その際にも同様にベースシート30による「滑り」が生じ、これが摩擦によるエネルギー散逸を引き起こし、減衰として寄与する。
【0056】
このように、上述の第1実施形態によれば、ベースシート30は、挿通孔12aの径方向に離反する分岐Pを有し、分岐Pから延伸する延伸部34が、バックフォイル11及び中間フォイル10と係合しているため、バックフォイル11及び中間フォイル10の分解及びバックフォイル11及び中間フォイル10の軸受ハウジング12からの脱落を抑制できる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0058】
図8は、本開示の第2実施形態に係る中間フォイル10及びバックフォイル11と係合した状態の第1のベースシート30A及び第2のベースシート30Bを展開した平面拡大図である。
図9は、本開示の第2実施形態に係る(a)第1のベースシート30Aを展開した平面拡大図、(b)第2のベースシート30Bを展開した平面拡大図である。
図10は、本開示の第2実施形態に係る第1のベースシート30A及び第2のベースシート30Bと中間フォイル10及びバックフォイル11との係合状態を示す正面拡大図である。
【0059】
上述した第1実施形態のラジアルフォイル軸受3は、一枚のベースシート30を備えていたが、第2実施形態のラジアルフォイル軸受3Aは、
図10に示すように、第1のベースシート30Aと、第2のベースシート30Bと、を備えている。第1のベースシート30Aは、第1実施形態のベースシート30と略同様の構成となっており、
図9(a)に示すように、ベースシート30Aの軸方向の両端縁に、分岐Pから延伸する延伸部34A及び切欠35Aを備える。延伸部34Aは、
図10に示すように、切欠11d及び切欠10dを通った中間フォイル10の内周側において、挿通孔12aの周方向一方側(
図10において紙面左側)に延伸している。
【0060】
一方、第2のベースシート30Bは、挿通孔12aの内周面に配置され、第1のベースシート30Aを径方向外側から支持している。この第2のベースシート30Bは、第1のベースシート30Aの切欠35Aに挿入される延伸部34B(第2の延伸部)を備える。延伸部34Bは、切欠35A,切欠11d及び切欠10dを通った中間フォイル10の内周側において、挿通孔12aの周方向他方側(
図10において紙面右側)に延伸している。第2のベースシート30Bも、第1実施形態のベースシート30と略同様の構成となっており、
図9(b)に示すように、ベースシート30Bの軸方向の両端縁に、分岐Pから延伸する延伸部34B及び切欠35Bを備える。延伸部34A及び延伸部34Bは、径方向内側に向かい、周方向に互いに離反するように広がる。つまり、延伸部34A及び延伸部34Bは、径方向外側に向かい楔状の形状となる。
【0061】
図10に示すように、延伸部34A,34Bは、それぞれ周方向における切欠10dの形成範囲W外まで延伸している。この構成によれば、径方向におけるバックフォイル片11a及び中間フォイル片10aの抜け止め効果が高くなり、バックフォイル11及び中間フォイル10の分解及び脱落をより確実に抑制できる。また、回転軸1の軸振動による変動荷重が生じた際には、上述した「滑り」に加えて、第1のベースシート30Aと第2のベースシート30Bとの間における「滑り」が生じ、これが摩擦によるエネルギー散逸を引き起こすため、減衰効果が高くなる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本開示の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0063】
図11は、本開示の第3実施形態に係るベースシート30Cを展開した(a)平面図、(b)正面図である。
図12は、本開示の第3実施形態に係るベースシート30Cとトップフォイル9との係合状態を説明するための(a)斜視図、(b)正面図である。
第3実施形態のラジアルフォイル軸受3Cは、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、ベースシート30Cが、通し溝13に挿入されるトップフォイル9の凸部21a,21bと径方向において係合する凸部36a,36b(係合突部)を有する点で、上記実施形態と異なる。
【0064】
図11(a)に示すように、ベースシート30Cの長辺方向における一方の短辺には、短辺方向において離隔する二つの凸部36aと、当該二つの凸部36aの間に位置する一つの凹部37aと、を有してなる第1の凹凸部38aが形成されている。すなわち、ベースシート30Cの長辺方向の一方側に位置する短辺には、長辺方向の他方側に窪む凹部37aと、凹部37aの短辺方向両側に位置する段差とを備える。
【0065】
また、ベースシート30Cの当該一方の短辺と反対の他方の短辺(長辺方向における他方側に位置する短辺)には、長辺方向の他方側に突出する一つの凸部36bと、凸部36bの短辺方向両側に形成された二つの凹部37bとを有してなる第2の凹凸部38bが形成されている。すなわち、ベースシート30Cの長辺方向における他方の短辺は、長辺方向の他方側に突出する一つの凸部36bと、凸部36bの短辺方向両側に延接する段差とを備える。
【0066】
ベースシート30Cの第1の凹凸部38aと第2の凹凸部38bの配置は、
図6に示すベースシート30の第1の凹凸部33aと第2の凹凸部33bの配置と、長辺方向において反転した関係になっている。ベースシート30Cの凹部37a,37bは、上述した第1実施形態と異なり、分岐Pによって形成されている。この分岐Pは、
図11(b)に示すように、挿通孔12aの径方向外側(
図11(b)において紙面下側)に離反している。この分岐Pから延伸する延伸部34Cは、
図12(b)に示すように、通し溝13に挿入され、ベースシート30Cのバックスプリングなどにより、通し溝13の側壁部に対し周方向において係合している。
【0067】
一方、ベースシート30Cの凸部36a,36bは、
図12(b)に示すように、通し溝13上に延伸している。すなわち、ベースシート30Cの凸部36a,36bは、通し溝13上に隙間をあけて配置されている。
図12(a)に示すように、ベースシート30Cの凸部36bの径方向外側には、トップフォイル9の凸部21aが挿入(配置)される。また、ベースシート30Cの二つの凸部36aの径方向外側には、トップフォイル9の二つの凸部21bが挿入(配置)される。この構成によれば、径方向におけるトップフォイル9の抜け止め効果が高くなり、トップフォイル9の脱落を抑制できる。また、この構成によれば、ベースシート30Cと軸受ハウジング12との接触面積が増えるため、上述した「滑り」による減衰効果が高くなる。
【0068】
なお、第3実施形態では、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、通し溝13に係止具40を配置してもよい。係止具40は、上述の特開2014−20463号公報の
図3(a)において符号16で示す固定具に相当するものである。すなわち、
図13に示す変形例では、通し溝13の両端部に連通して径方向に延びる係止溝44が形成されており、係止具40は、係止溝44に挿入される一対の脚部42を備える。また、係止具40は、一対の脚部42の間に、脚部42と反対の側に突出する二つの隔壁片41を備える。二つの隔壁片41は、軸方向にほぼ三分割された三つの係止溝43を形成する。
【0069】
三つの係止溝43には、トップフォイル9の一つの凸部21a及び二つの凸部21bがそれぞれ配置されて隔壁片41と軸方向において対向する。また、三つの係止溝43には、ベースシート30Cの二つの凸部36a及び一つの凸部36bがそれぞれ配置されて隔壁片41と軸方向において対向する。この構成によれば、軸方向におけるトップフォイル9及びベースシート30Cの移動が抑制され、トップフォイル9及びベースシート30Cの脱落をより確実に抑制できる。
【0070】
(第4実施形態)
次に、本開示の第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0071】
図14は、本開示の第4実施形態に係るラジアルフォイル軸受3Dを示す正面図である。
図15は、本開示の第4実施形態に係るラジアルフォイル軸受3Dに蓋体50を取り付けた状態を示す正面図である。
図16は、本開示の第4実施形態に係るベースシート30Dを展開した(a)平面図、(b)正面図である。
第4実施形態に係るラジアルフォイル軸受3Dは、
図14に示すように、第1実施形態と同様のベースシート30の径方向外側に、ベースシート30D(第2のベースシート)を備えると共に、ベースシート30Dが挿通孔12aの径方向外側に離反する分岐Pを有し、該分岐Pから延伸する延伸部34Dが軸受ハウジング12と軸方向において係合している点で、上記実施形態と異なる。
【0072】
図16(a)に示すように、ベースシート30Dは、第3実施形態のベースシート30Cと同様に、長辺方向における一方の短辺に第1の凹凸部38aを備え、当該一方の短辺と反対の他方の短辺に第2の凹凸部38bを備える。加えて、ベースシート30Dには、軸方向の一方の端縁に切欠39が形成されている。切欠39は、
図16(b)に示すように、ベースシート30Dの一部を切り起こして延伸部34Dを形成することにより形成される凹部である。すなわち、ベースシート30Dの軸方向の一方の端縁には、挿通孔12aの径方向外側に延伸する延伸部34Dが形成されている。なお、延伸部34Dは、ベースシート30Dの軸受ハウジング12への組み込み易さを考慮して、ベースシート30Dの軸方向の一方の端縁にのみ形成されている。
【0073】
図14に示すように、軸受ハウジング12の軸方向の一方の端面12bには、挿通孔12aの内周縁から径方向外側に向かって延伸する収容溝15が形成されている。つまり、軸受ハウジング12の軸方向における端面12bは、軸受ハウジング12の内周まで延在する凹部を備える。収容溝15は、軸受ハウジング12の端面12bを、周方向にほぼ2分割する位置に、それぞれ形成されている。そして、これら収容溝15には、延伸部34Dが径方向に挿入されている。
【0074】
図15に示すように、軸受ハウジング12の軸方向の両端面12bには、蓋体50が取り付けられる。蓋体50は、延伸部34Dを収容している収容溝15を覆っている。本開示の蓋体50は、軸受ハウジング12の周方向に沿う円環板状に形成されている。蓋体50の内周縁の径は、軸受ハウジング12の内周縁の径よりも大きく、蓋体50の外周縁の径は、軸受ハウジング12の外周縁の径よりも小さい。
【0075】
蓋体50は、軸受ハウジング12の軸方向の両端面12bに形成されたネジ孔52(
図14参照)にネジ51によってネジ止めされている。蓋体50は、軸受ハウジング12の端面12bを、その周方向にほぼ3分割する位置に、それぞれネジ止めされている。上記構成によれば、延伸部34Dが蓋体50によって覆われているため、上述した係止具40が無くても、ベースシート30Dが軸受ハウジング12から軸方向に外れるのを抑制することができる。また、蓋体50は、通し溝13の開口端の一部を閉塞し、通し溝13に挿入されたベースシート30Dの延伸部34Cも覆っているため、ベースシート30Dが軸受ハウジング12から軸方向に外れるのを抑制することができる。
【0076】
以上、図面を参照しながら本開示のいくつかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0077】
例えば、上記実施形態では、中間フォイルを備えるラジアルフォイル軸受を例示した。しかし、中間フォイルが無く、ベースシートがバックフォイルにのみ引っ掛かる構成であってもよい。
【0078】
また、例えば、上記第2実施形態では、二枚のベースシートを備えるラジアルフォイル軸受を例示した。しかしながら、一枚のベースシートから挿通孔の径方向内側に離反する二つの延伸部を形成し、それらを周方向における一方側と他方側に延伸させてもよい。
【0079】
また、例えば、上記第4実施形態では、軸受ハウジングの軸方向の両端面に蓋体を取り付けたラジアルフォイル軸受を例示した。しかしながら、軸受ハウジングの軸方向の一方の端面が、例えば取付対象物(支持フランジなど)に取り付けられているとき、軸受ハウジングの軸方向の他方の端面にのみ蓋体を取り付ける構成であってもよい。