(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記誘電体樹脂フィルムの前記第2面に第2金属層を対向させる工程では、前記第1金属層が形成された前記誘電体樹脂フィルムと、前記第2金属層が形成された他の誘電体樹脂フィルムとを巻回する請求項23〜29のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のフィルムコンデンサ、該フィルムコンデンサの製造方法、該フィルムコンデンサが備える誘電体樹脂フィルム、及び、該誘電体樹脂フィルムの製造方法について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0023】
以下、本発明の一実施形態として、第1金属層が形成された誘電体樹脂フィルムと、第2金属層が形成された他の誘電体樹脂フィルムとが巻回されてなる巻回型フィルムコンデンサを例にとって説明する。
【0024】
本発明においては、フィルムコンデンサが備える誘電体樹脂フィルムの少なくとも第2面にシリコーン樹脂が含まれているため、コンデンサに加工するときのプレス性が良好となる。これは、シリコーン樹脂によって樹脂フィルムの表面エネルギー(表面自由エネルギー)が低下するためと考えられる。表面エネルギーは、分子間力、極性力、水素結合などによるフィルム表面において相互作用するエネルギーである。誘電体樹脂フィルムの少なくとも第2面にシリコーン樹脂が含まれていると、フィルム表面において相手を引っ張るエネルギーが低下することにより、樹脂フィルムの第2面と該樹脂フィルムの面に対向する金属層との滑り性が向上すると考えられる。
【0025】
なお、本発明は、第1金属層が形成された誘電体樹脂フィルムと、第2金属層が形成された他の誘電体樹脂フィルムとが積層されてなる積層型フィルムコンデンサにも適用することができる。
【0026】
フィルムコンデンサを製造する際には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)等の熱可塑性樹脂からなる基材フィルム上に誘電体樹脂フィルムを作製した後、基材フィルム上の誘電体樹脂フィルムに金属層を蒸着する過程において、金属層が蒸着されていない側の誘電体樹脂フィルム表面と基材フィルムの裏面が接するようにロール状に巻き取られる。この際、誘電体樹脂フィルムにシリコーン樹脂が含まれていない場合には、誘電体樹脂フィルム表面と基材フィルムの裏面との滑り性が悪いため、巻き取る際にシワが入りやすくなる。その結果、巻き出したフィルムに痕が残り、電気特性が悪化するといった問題が発生する。一方、誘電体樹脂フィルムにシリコーン樹脂が含まれていると、上記の問題を防ぐことができる。このように、本発明の技術は、フィルムを製造する工程に対しても効果があるため、プレス性を必要とする巻回型フィルムコンデンサだけでなく、積層型フィルムコンデンサ等の他のフィルムコンデンサにも適用することが可能である。
【0027】
[フィルムコンデンサ]
本発明のフィルムコンデンサは、第1面、及び、上記第1面と反対側の第2面を有する、硬化性樹脂を含む誘電体樹脂フィルムと、上記誘電体樹脂フィルムの上記第1面上に形成された第1金属層と、上記誘電体樹脂フィルムの上記第2面に対向する第2金属層と、を備えている。第2金属層は、第1金属層が形成されている誘電体樹脂フィルム上には形成されておらず、他の誘電体樹脂フィルム上に形成されていることが好ましい。また、第2金属層は、誘電体樹脂フィルムの第2面に部分的に接するように対向していることが好ましい。なお、他の誘電体樹脂フィルムは、第1金属層が形成されている誘電体樹脂フィルムと異なる構成を有していてもよいが、第1金属層が形成されている誘電体樹脂フィルムと同一の構成を有していることが好ましい。
【0028】
本発明のフィルムコンデンサは、通常、第1金属層及び第2金属層にそれぞれ電気的に接続される第1外部端子電極及び第2外部端子電極をさらに備えている。
【0029】
図1は、本発明のフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すフィルムコンデンサ1は、巻回型のフィルムコンデンサであり、巻回状態の第1誘電体樹脂フィルム11及び第2誘電体樹脂フィルム12と、第1誘電体樹脂フィルム11又は第2誘電体樹脂フィルム12を挟んで互いに対向する第1金属層(第1対向電極)21及び第2金属層(第2対向電極)22とを備えるとともに、第1金属層21に電気的に接続される第1外部端子電極31及び第2金属層22に電気的に接続される第2外部端子電極32を備えている。
【0030】
第1金属層21は第1誘電体樹脂フィルム11上に形成されており、第2金属層22は第2誘電体樹脂フィルム12上に形成されている。第1金属層21が形成された第1誘電体樹脂フィルム11と、第2金属層22が形成された第2誘電体樹脂フィルム12とが積層された状態で巻回されることによって、フィルムコンデンサ1が構成されている。
【0031】
第1金属層21は、第1誘電体樹脂フィルム11の一方の面において一方側縁にまで届くが、他方側縁にまで届かないように形成される。他方、第2金属層22は、第2誘電体樹脂フィルム12の一方の面において一方側縁にまで届かないが、他方側縁にまで届くように形成される。第1金属層21及び第2金属層22は、例えばアルミニウム層などから構成される。本発明のフィルムコンデンサにおいては、第2金属層がアルミニウム層であることが好ましく、第1金属層及び第2金属層がいずれもアルミニウム層であることがより好ましい。
【0032】
図1に示すように、第1金属層21における第1誘電体樹脂フィルム11の側縁にまで届いている側の端部、及び、第2金属層22における第2誘電体樹脂フィルム12の側縁にまで届いている側の端部がともに積層されたフィルムから露出するように、第1誘電体樹脂フィルム11と第2誘電体樹脂フィルム12とが互いに幅方向(
図1では左右方向)にずらされて積層される。第1誘電体樹脂フィルム11及び第2誘電体樹脂フィルム12は、積層された状態で巻回されることによって、第1金属層21及び第2金属層22が端部で露出した状態を保持して、積み重なった状態とされる。
【0033】
図1に示すフィルムコンデンサ1では、第2誘電体樹脂フィルム12が隣接する第1誘電体樹脂フィルム11の外側になるように、かつ、第1誘電体樹脂フィルム11及び第2誘電体樹脂フィルム12の各々について、第1金属層21及び第2金属層22の各々が内方に向くように巻回されている。
【0034】
第1外部端子電極31及び第2外部端子電極32は、上述のようにして得られたコンデンサ本体の各端面上に、例えば亜鉛などを溶射することによって形成される。第1外部端子電極31は、第1金属層21の露出端部と接触し、それによって第1金属層21と電気的に接続される。他方、第2外部端子電極32は、第2金属層22の露出端部と接触し、それによって第2金属層22と電気的に接続される。
【0035】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、誘電体樹脂フィルムの巻回体は、断面形状が楕円又は長円のような扁平形状にプレスされ、よりコンパクトな形状とされることが好ましい。なお、本発明のフィルムコンデンサは、円柱状の巻回軸を備えていてもよい。巻回軸は、巻回状態の誘電体樹脂フィルムの中心軸線上に配置されるものであり、誘電体樹脂フィルムを巻回する際の巻軸となるものである。
【0036】
図2は、
図1に示すフィルムコンデンサのA部分を拡大した断面図である。
図2に示すように、第1誘電体樹脂フィルム11の一方の面である第1面11a上には、第1金属層21が形成されている。一方、第1誘電体樹脂フィルム11の他方の面である第2面11bに、第2金属層22が対向している。
図2では、第2金属層22は、第1誘電体樹脂フィルム11の第2面11bに接するように対向している。上述のとおり、第2金属層22は、第1金属層21が形成されている第1誘電体樹脂フィルム11上には形成されておらず、第2誘電体樹脂フィルム12上に形成されている。
【0037】
さらに、
図2では、第1誘電体樹脂フィルム11の第2面11b側にシリコーン樹脂含有層11Yが設けられているとともに、第1面11a側にもシリコーン樹脂含有層11Xが設けられている。
なお、
図2においては、説明の便宜のために、シリコーン樹脂含有層11X及び11Yの境界線が明瞭に示されているが、このような境界線は明瞭に現れていなくてもよい。また、第2誘電体樹脂フィルム12にはシリコーン樹脂含有層が図示されていないが、第1誘電体樹脂フィルム11と同様にシリコーン樹脂含有層が設けられていることが好ましい。
【0038】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、誘電体樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の少なくともいずれかの硬化性樹脂を主成分として含んでいる。なお、本発明のフィルムコンデンサに用いられる誘電体樹脂フィルムもまた、本発明の1つである。
本明細書において、熱硬化性樹脂とは、熱で硬化し得る樹脂を意味しており、硬化方法を限定するものではない。したがって、熱で硬化し得る樹脂である限り、熱以外の方法(例えば、光、電子ビームなど)で硬化した樹脂も熱硬化性樹脂に含まれる。また、材料によっては材料自体が持つ反応性によって反応が開始する場合があり、必ずしも外部から熱又は光等を与えずに硬化が進むものについても熱硬化性樹脂とする。光硬化性樹脂についても同様であり、硬化方法を限定するものではない。
【0039】
本明細書において、「主成分」とは、存在割合(重量%)が最も大きい成分を意味し、好ましくは、存在割合が50重量%を超える成分を意味する。したがって、誘電体樹脂フィルムは、主成分以外の成分として、例えば、後述するシリコーン樹脂等の添加剤や、第1有機材料及び第2有機材料等の出発材料の未硬化部分を含んでもよい。
【0040】
誘電体樹脂フィルムに含まれる硬化性樹脂は特に限定されないが、第1有機材料と第2有機材料との硬化物からなる熱硬化性樹脂であることが好ましい。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、第1有機材料が有する水酸基(OH基)と第2有機材料が有するイソシアネート基(NCO基)とが反応して得られる硬化物等が挙げられる。具体的には、第1有機材料がフェノキシ樹脂、第2有機材料がイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0041】
第1有機材料は、分子内に複数の水酸基(OH基)を有するポリオールであることが好ましい。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリビニルアセトアセタール等が挙げられる。第1有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。第1有機材料の中では、ポリエーテルポリオールに属するフェノキシ樹脂が好ましい。
【0042】
フェノキシ樹脂は、複数の水酸基を有している。フェノキシ樹脂の中では、末端にエポキシ基を有する高分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。なお、第1有機材料として、2種以上のフェノキシ樹脂を併用してもよい。
【0043】
第2有機材料は、分子内に複数の官能基を有する、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂であることが好ましい。第2有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。
【0044】
イソシアネート化合物は、複数のイソシアネート基を有している。イソシアネート化合物は、フェノキシ樹脂などの第1有機材料が有する水酸基と反応して架橋構造を形成することで、フィルムを硬化させる硬化剤として機能する。
【0045】
イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネートの変性体、例えば、カルボジイミド又はウレタン等を有する変性体であってもよい。中でも、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDIがより好ましい。なお、第2有機材料として、2種以上のイソシアネート化合物を併用してもよい。
【0046】
エポキシ樹脂としては、エポキシ環を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格エポキシ樹脂、シクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂、ナフタレン骨格エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0047】
メラミン樹脂としては、構造の中心にトリアジン環、その周辺にアミノ基3個を有する有機窒素化合物であれば特に限定されず、例えば、アルキル化メラミン樹脂等が挙げられる。その他、メラミンの変性体であってもよい。
【0048】
誘電体樹脂フィルムに含まれる硬化性樹脂が上述の熱硬化性樹脂である場合、第1有機材料が有する水酸基及び第2有機材料が有するイソシアネート基のすべてが反応している必要はなく、水酸基及びイソシアネート基の一部がフィルム中に残っていてもよい。すなわち、誘電体樹脂フィルムは、水酸基及びイソシアネート基の少なくとも一方を含んでいてもよい。この場合、上記誘電体樹脂フィルムは、イソシアネート基より水酸基を多く含むことが好ましい。
【0049】
(第1の態様)
本発明のフィルムコンデンサの第1の態様においては、誘電体樹脂フィルムの少なくとも第2面にシリコーン樹脂が含まれていることを特徴とする。
【0050】
シリコーン樹脂としては、例えば、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらのシリコーン樹脂は、水酸基(OH基)、イソシアネート基(NCO基)、エポキシ基、カルボキシ基(COOH基)、アミノ基(NH
2基)等の官能基を有していなくてもよいが、有していることが好ましい。なお、2種以上のシリコーン樹脂を併用してもよい。
【0051】
第1の態様において、誘電体樹脂フィルムの第2面には、シリコーン樹脂と硬化性樹脂との反応物が含まれていることが好ましい。上記のように、シリコーン樹脂が水酸基等の官能基を有していると、硬化性樹脂が有するイソシアネート基等と反応して架橋構造を形成することで、樹脂フィルムと金属層との滑り性が向上する。
なお、シリコーン樹脂が硬化性樹脂と反応していることは、シリコーン樹脂が溶解する溶剤に誘電体樹脂フィルムを浸漬したとき、フィルムからシリコーン樹脂が溶出していないことから確認することができる。シリコーン樹脂の溶出は、フーリエ変換型赤外分光分析(FT−IR)により確認することが可能である。
【0052】
第1の態様において、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量は、誘電体樹脂フィルムの厚み方向において、第2面からフィルム内部に向かうに従って減少することが好ましい。フィルム内部に向かうに従ってシリコーン樹脂の量が減少することにより、硬化性樹脂の特性が劣化することを抑制することができる。
【0053】
本明細書においては、誘電体樹脂フィルムの深さ方向にX線光電子分光分析(XPS)による表面分析を行った際、フィルム最表面(深さ0nm)におけるSi元素の存在量が深さ5nmにおけるSi元素の存在量よりも多いとき、「シリコーン樹脂の量は、第2面(又は第1面)からフィルム内部に向かうに従って減少する」という。
【0054】
第1の態様において、シリコーン樹脂は、誘電体樹脂フィルムの少なくとも第2面に含まれていればよいが、第1面にも含まれていることが好ましい。この場合、誘電体樹脂フィルムの第1面には、シリコーン樹脂と硬化性樹脂との反応物が含まれていることが好ましい。
【0055】
誘電体樹脂フィルムの第1面にシリコーン樹脂が含まれている場合、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量は、誘電体樹脂フィルムの厚み方向において、第1面からフィルム内部に向かうに従って減少することが好ましい。
【0056】
第1の態様において、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量は、硬化性樹脂の量に対して0.3wt%以上であることが好ましく、0.5wt%以上であることがより好ましい。シリコーン樹脂の量が0.3wt%以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。
なお、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量とは、フィルム全体に含まれるシリコーン樹脂の量を意味する。
【0057】
第1の態様において、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量は、硬化性樹脂の量に対して15wt%以下であることが好ましく、10wt%以下であることがより好ましい。この場合、誘電体樹脂フィルムの第1面にもシリコーン樹脂が含まれていることが好ましい。シリコーン樹脂の量が15wt%以下であると、誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との密着性に優れ、第1金属層がフィルムから剥離しにくくなる。
【0058】
第1の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第2面の表面エネルギーが45mN/m以下であることが好ましく、30mN/m以下であることがより好ましい。第2面の表面エネルギーが45mN/m以下であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、誘電体樹脂フィルムの第2面の表面エネルギーは、24mN/m以上であることが好ましい。
【0059】
第1の態様においては、第2金属層の表面エネルギーが50mN/m以上であることが好ましく、55mN/m以上であることがより好ましい。第2金属層の表面エネルギーが50mN/m以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、第2金属層の表面エネルギーは、80mN/m以下であることが好ましい。
【0060】
第1の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第1面の表面エネルギーが22mN/m以上であることが好ましい。この場合、誘電体樹脂フィルムの第1面にもシリコーン樹脂が含まれていることが好ましい。第1面の表面エネルギーが22mN/m以上であると、誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との密着性に優れ、第1金属層がフィルムから剥離しにくくなる。一方、誘電体樹脂フィルムの第1面の表面エネルギーは、30mN/m以下であることが好ましい。
なお、誘電体樹脂フィルムの第1面の表面エネルギー(表面自由エネルギー)は、第1金属層が形成されていない第1面、又は、第1金属層が形成される前の第1面の表面エネルギーを意味する。
【0061】
誘電体樹脂フィルムの第2面の表面エネルギー(表面自由エネルギー)は、液体の表面エネルギーが既知の試薬として、水、エチレングリコール及びジヨードメタンの3液を使用して接触角を測定し、Kitazaki−Hata理論により計算することができる。第2金属層の表面エネルギー及び第1面の表面エネルギーについても、第2面の表面エネルギーと同様に計算することができる。水の接触角は後述する方法によって測定し、他の2液の接触角も同様の方法によって測定する。
【0062】
第1の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第2面に対する水の接触角(以下、第2面の接触角ともいう)が87°以上であることが好ましく、97°以上であることがより好ましい。第2面に対する水の接触角が87°以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、誘電体樹脂フィルムの第2面に対する水の接触角は、100°以下であることが好ましい。
【0063】
第1の態様においては、第2金属層に対する水の接触角(以下、第2金属層の接触角ともいう)が74°以下であることが好ましく、72°以下であることがより好ましい。第2金属層に対する水の接触角が74°以下であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、第2金属層に対する水の接触角は、60°以上であることが好ましい。
なお、第2金属層に対する水の接触角とは、誘電体樹脂フィルムの第2面と対向している第2金属層の表面に対する水の接触角を意味する。例えば、第2金属層が他の誘電体樹脂フィルム上に形成されている場合、該誘電体樹脂フィルムの表面状態(接触角、表面エネルギー等)を変更することによって、第2金属層に対する水の接触角を調整することができる。
【0064】
第1の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第1面に対する水の接触角(以下、第1面の接触角ともいう)が104°以下であることが好ましく、99°以下であることがより好ましい。この場合、誘電体樹脂フィルムの第1面にもシリコーン樹脂が含まれていることが好ましい。第1面に対する水の接触角が104°以下であると、誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との密着性に優れ、第1金属層がフィルムから剥離しにくくなる。一方、誘電体樹脂フィルムの第1面に対する水の接触角は、94°以上であることが好ましい。
なお、誘電体樹脂フィルムの第1面に対する水の接触角は、第1金属層が形成されていない第1面、又は、第1金属層が形成される前の第1面に対する水の接触角を意味する。
【0065】
誘電体樹脂フィルムの第2面に対する水の接触角は、接触角計(例えば、協和界面化学株式会社製DM−701)を用いて、25℃、50%RHの環境下で、蒸留水の水滴を滴下したときの、滴下した直後の接触角を意味する。第2金属層に対する水の接触角、及び、誘電体樹脂フィルムの第1面に対する水の接触角についても同様である。
【0066】
第1の態様においては、誘電体フィルムの第2面に存在するSi量が1.8atom%以上であることが好ましく、7.0atom%以上であることがより好ましい。第2面に存在するSi量が1.8atom%以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、誘電体フィルムの第2面に存在するSi量は、9.3atom%以下であることが好ましい。
なお、誘電体フィルムの第2面に存在するSi量とは、X線光電子分光分析(XPS)による表面分析を行った際、第2面側のフィルム最表面(深さ0nm)におけるSi元素の存在量を意味する。
【0067】
第1の態様においては、第2金属層に存在するSi量が1.2atom%以上であることが好ましい。第2金属層に存在するSi量が1.2atom%以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、第2金属層に存在するSi量は、2.1atom%以下であることが好ましい。
なお、第2金属層に存在するSi量とは、誘電体樹脂フィルムの第2面と対向している第2金属層に存在するSi量を意味し、誘電体フィルムの第2面に存在するSi量と同様の方法により求められる値である。
【0068】
(第2の態様)
本発明のフィルムコンデンサの第2の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第2面の表面エネルギーが45mN/m以下であることを特徴とする。
【0069】
第2の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第2面の表面エネルギーが45mN/m以下であり、30mN/m以下であることが好ましい。第2面の表面エネルギーが45mN/m以下であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、誘電体樹脂フィルムの第2面の表面エネルギーは、24mN/m以上であることが好ましい。
【0070】
第2の態様においては、第2金属層の表面エネルギーが50mN/m以上であることが好ましく、55mN/m以上であることがより好ましい。第2金属層の表面エネルギーが50mN/m以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、第2金属層の表面エネルギーは、80mN/m以下であることが好ましい。
【0071】
第2の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第1面の表面エネルギーが22mN/m以上であることが好ましい。第1面の表面エネルギーが22mN/m以上であると、誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との密着性に優れ、第1金属層がフィルムから剥離しにくくなる。一方、誘電体樹脂フィルムの第1面の表面エネルギーは、30mN/m以下であることが好ましい。
【0072】
第2の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第2面に対する水の接触角が87°以上であることが好ましく、97°以上であることがより好ましい。第2面に対する水の接触角が87°以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、誘電体樹脂フィルムの第2面に対する水の接触角は、100°以下であることが好ましい。
【0073】
第2の態様においては、第2金属層に対する水の接触角が74°以下であることが好ましく、72°以下であることがより好ましい。第2金属層に対する水の接触角が74°以下であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、第2金属層に対する水の接触角は、60°以上であることが好ましい。
【0074】
第2の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第1面に対する水の接触角が104°以下であることが好ましく、99°以下であることがより好ましい。第1面に対する水の接触角が104°以下であると、誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との密着性に優れ、第1金属層がフィルムから剥離しにくくなる。一方、誘電体樹脂フィルムの第1面に対する水の接触角は、94°以上であることが好ましい。
【0075】
第2の態様においては、誘電体樹脂フィルムの少なくとも第2面にシリコーン樹脂が含まれていることが好ましい。誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂は、第1の態様と同じである。
【0076】
第2の態様において、誘電体樹脂フィルムの第2面には、シリコーン樹脂と硬化性樹脂との反応物が含まれていることが好ましい。
【0077】
第2の態様において、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量は、誘電体樹脂フィルムの厚み方向において、第2面からフィルム内部に向かうに従って減少することが好ましい。
【0078】
第2の態様において、シリコーン樹脂は、誘電体樹脂フィルムの少なくとも第2面に含まれていればよいが、第1面にも含まれていることが好ましい。この場合、誘電体樹脂フィルムの第1面には、シリコーン樹脂と硬化性樹脂との反応物が含まれていることが好ましい。
【0079】
誘電体樹脂フィルムの第1面にシリコーン樹脂が含まれている場合、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量は、誘電体樹脂フィルムの厚み方向において、第1面からフィルム内部に向かうに従って減少することが好ましい。
【0080】
第2の態様において、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量は、硬化性樹脂の量に対して0.3wt%以上であることが好ましく、0.5wt%以上であることがより好ましい。シリコーン樹脂の量が0.3wt%以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。
【0081】
第2の態様において、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量は、硬化性樹脂の量に対して15wt%以下であることが好ましく、10wt%以下であることがより好ましい。この場合、誘電体樹脂フィルムの第1面にもシリコーン樹脂が含まれていることが好ましい。シリコーン樹脂の量が15wt%以下であると、誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との密着性に優れ、第1金属層がフィルムから剥離しにくくなる。
【0082】
第2の態様においては、誘電体フィルムの第2面に存在するSi量が1.8atom%以上であることが好ましく、7.0atom%以上であることがより好ましい。第2面に存在するSi量が1.8atom%以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、誘電体フィルムの第2面に存在するSi量は、9.3atom%以下であることが好ましい。
【0083】
第2の態様においては、第2金属層に存在するSi量が1.2atom%以上であることが好ましい。第2金属層に存在するSi量が1.2atom%以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、第2金属層に存在するSi量は、2.1atom%以下であることが好ましい。
【0084】
(第3の態様)
本発明のフィルムコンデンサの第3の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第2面に対する水の接触角が87°以上であることを特徴とする。
【0085】
第3の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第2面に対する水の接触角が87°以上であり、97°以上であることが好ましい。第2面に対する水の接触角が87°以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、誘電体樹脂フィルムの第2面に対する水の接触角は、100°以下であることが好ましい。
【0086】
第3の態様においては、第2金属層に対する水の接触角が74°以下であることが好ましく、72°以下であることがより好ましい。第2金属層に対する水の接触角が74°以下であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、第2金属層に対する水の接触角は、60°以上であることが好ましい。
【0087】
第3の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第1面に対する水の接触角が104°以下であることが好ましく、99°以下であることがより好ましい。第1面に対する水の接触角が104°以下であると、誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との密着性に優れ、第1金属層がフィルムから剥離しにくくなる。一方、誘電体樹脂フィルムの第1面に対する水の接触角は、94°以上であることが好ましい。
【0088】
第3の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第2面の表面エネルギーが45mN/m以下であることが好ましく、30mN/m以下であることがより好ましい。第2面の表面エネルギーが45mN/m以下であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、誘電体樹脂フィルムの第2面の表面エネルギーは、24mN/m以上であることが好ましい。
【0089】
第3の態様においては、第2金属層の表面エネルギーが50mN/m以上であることが好ましく、55mN/m以上であることがより好ましい。第2金属層の表面エネルギーが50mN/m以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、第2金属層の表面エネルギーは、80mN/m以下であることが好ましい。
【0090】
第3の態様においては、誘電体樹脂フィルムの第1面の表面エネルギーが22mN/m以上であることが好ましい。第1面の表面エネルギーが22mN/m以上であると、誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との密着性に優れ、第1金属層がフィルムから剥離しにくくなる。一方、誘電体樹脂フィルムの第1面の表面エネルギーは、30mN/m以下であることが好ましい。
【0091】
第3の態様においては、誘電体樹脂フィルムの少なくとも第2面にシリコーン樹脂が含まれていることが好ましい。誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂は、第1の態様と同じである。
【0092】
第3の態様において、誘電体樹脂フィルムの第2面には、シリコーン樹脂と硬化性樹脂との反応物が含まれていることが好ましい。
【0093】
第3の態様において、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量は、誘電体樹脂フィルムの厚み方向において、第2面からフィルム内部に向かうに従って減少することが好ましい。
【0094】
第3の態様において、シリコーン樹脂は、誘電体樹脂フィルムの少なくとも第2面に含まれていればよいが、第1面にも含まれていることが好ましい。この場合、誘電体樹脂フィルムの第1面には、シリコーン樹脂と硬化性樹脂との反応物が含まれていることが好ましい。
【0095】
誘電体樹脂フィルムの第1面にシリコーン樹脂が含まれている場合、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量は、誘電体樹脂フィルムの厚み方向において、第1面からフィルム内部に向かうに従って減少することが好ましい。
【0096】
第3の態様において、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量は、硬化性樹脂の量に対して0.3wt%以上であることが好ましく、0.5wt%以上であることがより好ましい。シリコーン樹脂の量が0.3wt%以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。
【0097】
第3の態様において、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量は、硬化性樹脂の量に対して15wt%以下であることが好ましく、10wt%以下であることがより好ましい。この場合、誘電体樹脂フィルムの第1面にもシリコーン樹脂が含まれていることが好ましい。シリコーン樹脂の量が15wt%以下であると、誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との密着性に優れ、第1金属層がフィルムから剥離しにくくなる。
【0098】
第3の態様においては、誘電体フィルムの第2面に存在するSi量が1.8atom%以上であることが好ましく、7.0atom%以上であることがより好ましい。第2面に存在するSi量が1.8atom%以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、誘電体フィルムの第2面に存在するSi量は、9.3atom%以下であることが好ましい。
【0099】
第3の態様においては、第2金属層に存在するSi量が1.2atom%以上であることが好ましい。第2金属層に存在するSi量が1.2atom%以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。一方、第2金属層に存在するSi量は、2.1atom%以下であることが好ましい。
【0100】
本明細書においては、本発明のフィルムコンデンサの第1の態様、第2の態様及び第3の態様を区別しない場合には、単に本発明のフィルムコンデンサと表記する。
【0101】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、誘電体樹脂フィルムは、他の機能を付加するための添加剤を含んでもよい。例えば、レベリング剤を添加することで平滑性を付与することができる。添加剤は、水酸基及び/又はイソシアネート基と反応する官能基を有し、硬化物の架橋構造の一部を形成する材料であることがより好ましい。このような材料としては、例えば、エポキシ基、シラノール基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂等が挙げられる。
【0102】
[フィルムコンデンサの製造方法]
本発明のフィルムコンデンサの製造方法は、第1面、及び、上記第1面と反対側の第2面を有する、硬化性樹脂を含む誘電体樹脂フィルムを作製する工程と、上記誘電体樹脂フィルムの上記第1面上に第1金属層を形成する工程と、上記誘電体樹脂フィルムの上記第2面に第2金属層を対向させる工程と、を備えている。第2金属層は、第1金属層を形成する誘電体樹脂フィルム上には形成されず、他の誘電体樹脂フィルム上に形成されることが好ましい。また、第2金属層は、誘電体樹脂フィルムの第2面に部分的に接するように対向させることが好ましい。なお、他の誘電体樹脂フィルムは、第1金属層が形成されている誘電体樹脂フィルムと異なる構成を有していてもよいが、第1金属層が形成されている誘電体樹脂フィルムと同一の構成を有していることが好ましい。
【0103】
本発明のフィルムコンデンサの製造方法では、硬化性樹脂又はその前駆体とシリコーン樹脂とを含む樹脂溶液を用いて、上記誘電体樹脂フィルムを作製することを特徴とする。なお、誘電体樹脂フィルムの製造方法もまた、本発明の1つである。
【0104】
シリコーン樹脂はフィルム表面に析出しやすい特徴があるため、作製された誘電体樹脂フィルムの少なくとも第2面にはシリコーン樹脂が含まれることになる。したがって、樹脂フィルムの第2面と該樹脂フィルムの面に対向する金属層との滑り性に優れるフィルムコンデンサを製造することができる。また、フィルム内部に存在するシリコーン樹脂の量が少ないため、コンデンサとしての電気的な特性を維持することもできる。なお、誘電体樹脂フィルムの第1面にもシリコーン樹脂が含まれることが好ましい。
【0105】
図3は、作製された誘電体樹脂フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図3に示す第1誘電体樹脂フィルム11は、第1面11a、及び、第1面11aと反対側の第2面11bを有しており、第1誘電体樹脂フィルム11の第2面11b側にシリコーン樹脂含有層11Yが設けられているとともに、第1面11a側にもシリコーン樹脂含有層11Xが設けられている。
図2と同様、シリコーン樹脂含有層11X及び11Yの境界線は明瞭に現れていなくてもよい。
【0106】
本発明のフィルムコンデンサの製造方法において、樹脂溶液は、硬化性樹脂の前駆体として、熱硬化性樹脂の前駆体を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂の前駆体は、第1有機材料と第2有機材料とを含むことが好ましい。例えば、第1有機材料が有する水酸基(OH基)と第2有機材料が有するイソシアネート基(NCO基)とが反応して硬化物が得られるものが挙げられる。具体的には、第1有機材料がフェノキシ樹脂、第2有機材料がイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0107】
フェノキシ樹脂等の第1有機材料、イソシアネート化合物等の第2有機材料等については、[フィルムコンデンサ]で説明したとおりである。また、[フィルムコンデンサ]で説明したとおり、第1有機材料が有する水酸基及び第2有機材料が有するイソシアネート基のすべてが反応している必要はなく、水酸基及びイソシアネート基の一部がフィルム中に残っていてもよい。
【0108】
本発明のフィルムコンデンサの製造方法において、樹脂溶液に含まれるシリコーン樹脂としては、例えば、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらのシリコーン樹脂は、水酸基(OH基)、イソシアネート基(NCO基)、エポキシ基、カルボキシ基(COOH基)、アミノ基(NH
2基)等の官能基を有していなくてもよいが、有していることが好ましい。なお、2種以上のシリコーン樹脂を併用してもよい。
【0109】
シリコーン樹脂が水酸基等の官能基を有していると、硬化性樹脂が有するイソシアネート基等と反応して架橋構造を形成することで、樹脂フィルムと金属層との滑り性が向上する。このように、シリコーン樹脂と硬化性樹脂との反応物を誘電体樹脂フィルムの第2面に設けることが好ましい。また、シリコーン樹脂と硬化性樹脂との反応物を誘電体樹脂フィルムの第1面にも設けることが好ましい。
【0110】
本発明のフィルムコンデンサの製造方法において、樹脂溶液に含まれるシリコーン樹脂の量は、硬化性樹脂又はその前駆体の量に対して0.3wt%以上であることが好ましく、0.5wt%以上であることがより好ましい。シリコーン樹脂の量が0.3wt%以上であると、巻回体のプレス性が良好となる。
【0111】
本発明のフィルムコンデンサの製造方法において、樹脂溶液に含まれるシリコーン樹脂の量は、硬化性樹脂又はその前駆体の量に対して15wt%以下であることが好ましく、10wt%以下であることがより好ましい。シリコーン樹脂の量が15wt%以下であると、誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との密着性に優れ、第1金属層がフィルムから剥離しにくくなる。
【0112】
本発明のフィルムコンデンサの製造方法において、誘電体樹脂フィルムは、好ましくは、硬化性樹脂又はその前駆体、シリコーン樹脂、及び、必要に応じて添加剤等を含む樹脂溶液をフィルム状に成形し、次いで、熱処理して硬化させることによって得られる。例えば、上述した熱可塑性樹脂からなる基材フィルム上で樹脂溶液をフィルム状に成形することにより、誘電体樹脂フィルムを作製することができる。この場合、基材フィルムと反対側に位置する誘電体樹脂フィルムの面が第1面となり、基材フィルム側に位置する誘電体樹脂フィルムの面が第2面となる。
【0113】
図4は、誘電体樹脂フィルムの第1面上に第1金属層を形成する工程の一例を模式的に示す断面図である。
図4に示すように、第1誘電体樹脂フィルム11の第1面11a上に第1金属層21を形成する。
図4には示していないが、他の誘電体樹脂フィルム(第2誘電体樹脂フィルム12)上に第2金属層を形成することが好ましい。
【0114】
本発明のフィルムコンデンサの製造方法において、第1金属層及び第2金属層は、例えば、アルミニウム等の金属を蒸着することにより誘電体樹脂フィルム上に形成される。本発明のフィルムコンデンサの製造方法においては、第2金属層がアルミニウム層であることが好ましく、第1金属層及び第2金属層がいずれもアルミニウム層であることがより好ましい。
【0115】
誘電体樹脂フィルムを作製する場合、誘電体樹脂フィルムを基材フィルムから剥離した後に、誘電体樹脂フィルムに金属層を形成することができる。また、基材フィルム上に誘電体樹脂フィルムを作製する場合、基材フィルム上の誘電体樹脂フィルムに金属層を形成した後、誘電体樹脂フィルムを基材フィルムから剥離することが好ましい。
【0116】
本発明のフィルムコンデンサの製造方法において、誘電体樹脂フィルムの第2面に第2金属層を対向させる方法は特に限定されないが、巻回型フィルムコンデンサを製造する場合には、第1金属層が形成された誘電体樹脂フィルムと、第2金属層が形成された他の誘電体樹脂フィルムとを巻回することが好ましい。
【0117】
図5は、誘電体樹脂フィルムの第2面に第2金属層を対向させる工程の一例を模式的に示す斜視図である。
図5に示すように、第1金属層21が形成された第1誘電体樹脂フィルム11と、第2金属層22が形成された第2誘電体樹脂フィルム12とを2枚重ねにし、巻回機を用いてロール状に巻回することにより、巻回体100を作製する。
【0118】
図6は、巻回体をプレスする工程の一例を模式的に示す斜視図である。
図6に示すように、巻回型フィルムコンデンサを製造する場合、本発明のフィルムコンデンサの製造方法は、誘電体樹脂フィルム及び他の誘電体樹脂フィルムの巻回体をプレスする工程をさらに備えることが好ましい。巻回体の断面形状を楕円又は長円のような扁平形状にプレスすることにより、よりコンパクトな形状にすることができる。
【0119】
その後、巻回体の各端面に、例えば亜鉛などを溶射することによって、第1外部端子電極及び第2外部端子電極を形成する。以上により、フィルムコンデンサが得られる。
【0120】
なお、積層型フィルムコンデンサを製造する場合には、誘電体樹脂フィルムの第2面に第2金属層を対向させる方法として、第1金属層が形成された誘電体樹脂フィルムと、第2金属層が形成された他の誘電体樹脂フィルムとを積層すればよい。
【実施例】
【0121】
以下、本発明のフィルムコンデンサをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0122】
(実施例1)
[フィルムコンデンサの作製]
第1有機材料として、フェノキシ樹脂を用意し、第2有機材料として、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)を用意した。上記フェノキシ樹脂としては、末端にエポキシ基を有する高分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂を用いた。上記MDIとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとそのカルボジイミド変性体の混合物(重量比率70:30)を用いた。
【0123】
シリコーン樹脂として、水酸基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン溶液(ビックケミー・ジャパン社製 BYK370、不揮発分25%)を用意した。
【0124】
第1有機材料と第2有機材料とシリコーン樹脂とを所定の重量比率で混合し、樹脂溶液を得た。樹脂溶液を得るにあたって、フェノキシ樹脂をメチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶剤に溶解し、MDIの溶液をフェノキシ樹脂溶液に加え、さらに溶剤に溶かしたシリコーン樹脂を添加した。作製されるフィルムにおいて、フェノキシ樹脂:MDI:シリコーン樹脂の重量比率が70wt%:30wt%:0.5wt%となるように各材料を配合した。
【0125】
得られた樹脂溶液を、ドクターブレードコーターにより、基材フィルム上で成形し、厚みが3μmの未硬化フィルムを得た。次いで、この未硬化フィルムを、90℃に設定された熱風式オーブンにて1時間熱処理して熱硬化させることにより、第1金属層を形成するための第1誘電体樹脂フィルムと第2金属層を形成するための第2誘電体樹脂フィルムを得た。なお、基材フィルムとして、厚み30μmのPPフィルム(信越フィルム社製)を使用した。
【0126】
得られた第1誘電体樹脂フィルムと第2誘電体樹脂フィルムにアルミニウムを蒸着することにより、第1誘電体樹脂フィルム上に第1金属層を形成し、第2誘電体樹脂フィルム上に第2金属層を形成した。それぞれの金属層が形成された蒸着フィルムをPPフィルムから剥離した。その後、2枚の蒸着フィルムを巻回することにより、巻回体を作製した。第1誘電体樹脂フィルムの第1面上には第1金属層が形成されており、第1誘電体樹脂フィルムの第2面には、第2誘電体樹脂フィルム上に形成されている第2金属層が対向していた。その巻回体を扁平形状にプレスした後、巻回体の両端面に外部端子電極を形成することにより、フィルムコンデンサを作製した。
【0127】
[誘電体樹脂フィルムの分析]
実施例1のフィルムコンデンサについて、誘電体樹脂フィルムのFT−IRスペクトルを取得したところ、ウレタン基が含有されていることが確認された。
【0128】
誘電体樹脂フィルムのガスクロマトグラフ質量(GC−MS)分析を実施したところ、分解ガスにフェノキシ成分及びイソシアネート成分が含まれていることが確認された。
【0129】
誘電体樹脂フィルムをエタノール溶剤に浸漬した後、FT−IRスペクトルを取得したところ、シリコーン樹脂が溶出していないことが確認された。
【0130】
Si元素の存在状態を確認するために、誘電体樹脂フィルムの第2面を最表面として、電極が形成されていないフィルム部分について、フィルムの深さ方向にXPSによる表面分析を行った。その結果を
図7に示す。
図7より、Si元素がフィルム表面に析出していることが確認された。この結果から、誘電体樹脂フィルムに含まれるシリコーン樹脂の量は、フィルムの厚み方向において、第2面からフィルム内部に向かうに従って減少していることが分かる。
【0131】
(実施例2)
シリコーン樹脂として、水酸基を有しないポリエステル変性ポリジメチルシロキサン溶液(ビックケミー・ジャパン社製 BYK302、不揮発分95%)を用いたことを除いて、実施例1と同様に誘電体樹脂フィルムを作製し、フィルムコンデンサを作製した。
【0132】
(比較例1)
シリコーン樹脂を用いなかったことを除いて、実施例1と同様に誘電体樹脂フィルムに作製し、フィルムコンデンサを作製した。
【0133】
[プレス性の評価]
実施例1、実施例2及び比較例1のフィルムコンデンサについて、25N/cm
2の圧力で巻回体をプレスした際のプレス性を評価した。巻回体を充分に扁平化できた場合を◎、扁平化できた場合を○、扁平化できるが形状がいびつになった場合を△、扁平化できなかった場合を×とした。結果を表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
表1より、熱硬化性樹脂にシリコーン樹脂を添加した実施例1及び実施例2では、シリコーン樹脂を添加していない比較例1に比べてプレス性が向上することが確認された。特に、水酸基を有するシリコーン樹脂を用いた実施例1では、プレス性がさらに向上することが確認された。これは、シリコーン樹脂が有する水酸基と熱硬化性樹脂が有するイソシアネート基とが反応したためと考えられる。
【0136】
(実施例3〜実施例11)
シリコーン樹脂の添加量を表2に示す値に変更したことを除いて、実施例1と同様に誘電体樹脂フィルムを作製し、フィルムコンデンサを作製した。実施例3〜実施例11のフィルムコンデンサについても、上記と同様の方法によってプレス性を評価した。結果を表2に示す。
【0137】
また、実施例1、実施例3〜実施例11及び比較例1のフィルムコンデンサについて、誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との密着性を調べることにより、電極剥離を評価した。なお、電極剥離の評価は、フィルムコンデンサを作製する前の誘電体樹脂フィルムに対して行った。
【0138】
電極剥離の評価試験では、蒸着面に粘着性のある試験用テープを貼り付け、これを急速にかつ強く引き剥がすことによって、蒸着膜の密着性を調べた。試験用テープとして、JIS Z 1522に規定された粘着テープ(粘着力:幅25mm当たり約8N)で、幅12〜19mmのものを使用した。
【0139】
電極剥離の評価試験の方法を以下に示す。
(1)蒸着面のなるべく平らな面を選ぶ。
(2)テープ貼り付け部分に蒸着面と非蒸着面が含まれるようにテープを貼り付ける。このとき、気泡ができないように注意しながら指で約10秒間強く押し続ける。
(3)上記(2)で残した部分のテープを持ち、蒸着面に対して垂直になるように強く引っ張り、テープを瞬間的に引き剥がす。
上記試験を異なる箇所にて10回行い、蒸着膜が剥離した回数が0回の場合を◎、1〜2回の場合を○、3回以上の場合を×とした。結果を表2に示す。
【0140】
さらに、実施例1、実施例3、実施例4、実施例8〜実施例11及び比較例1のフィルムコンデンサについて、第2金属層の表面エネルギー、誘電体樹脂フィルムの第1面の表面エネルギー、及び、第2面の表面エネルギーをそれぞれ求めた。
第2金属層、誘電体樹脂フィルムの第1面及び第2面に対して、水、エチレングリコール及びジヨードメタンの3液を使用して接触角を測定し、Kitazaki−Hata理論により表面エネルギーを計算した。なお、第1面に対する接触角の測定は、フィルムコンデンサを作製する前、かつ、第1金属層を形成する前の誘電体樹脂フィルムに対して行った。水の接触角は後述する方法によって測定し、他の2液の接触角も同様の方法によって測定した。結果を表3に示す。
【0141】
【表2】
【0142】
【表3】
【0143】
表2より、シリコーン樹脂の添加量を0.1wt%以上とすることにより、プレス性が向上することが確認された。シリコーン樹脂の添加量が0.1wt%でも扁平化することは可能であるが、良好なプレス性を得る観点からは、シリコーン樹脂の添加量が0.3wt%以上であることが好ましく、0.5wt%以上であることがより好ましい。これは、表3に示すように、シリコーン樹脂がフィルム表面に析出することにより、フィルムの表面エネルギーが低減したことが影響していると言える。表面エネルギーは、フィルム表面同士の分子間力、極性力を示す指標であることから、互いの表面との相互作用する引力が減少し、巻回したフィルムの滑りが良くなることにより、プレス性が向上したと言える。
【0144】
表2及び表3の結果を考慮すると、良好なプレス性を得る観点からは、誘電体樹脂フィルムの第2面の表面エネルギーが45mN/m以下であることが好ましく、30mN/m以下であることがより好ましいと考えられる。同様に、良好なプレス性を得る観点からは、第2金属層の表面エネルギーが50mN/m以上であることが好ましく、55mN/m以上であることがより好ましいと考えられる。
【0145】
また、表2より、シリコーン樹脂の添加量を15wt%以下とすることにより、誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との密着性に優れ、第1金属層がフィルムから剥離しにくくなることが確認された。良好な密着性を得る観点からは、シリコーン樹脂の添加量が10wt%以下であることが好ましい。
【0146】
誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との密着性は、第1面の表面エネルギーと関係する。表2及び表3の結果を考慮すると、良好な密着性を得る観点からは、誘電体樹脂フィルムの第1面の表面エネルギーが22mN/m以上であることが好ましいと考えられる。
【0147】
別途、実施例1、実施例3、実施例4、実施例8〜実施例11及び比較例1のフィルムコンデンサについて、第2金属層に対する水の接触角、誘電体樹脂フィルムの第1面に対する水の接触角、及び、誘電体樹脂フィルムの第2面に対する水の接触角をそれぞれ測定した。
接触角計(協和界面化学株式会社製 DM−701)を用いて、第2金属層、第1面及び第2面に対して、25℃、50%RH℃の環境下で水滴を滴下し、滴下した直後の接触角を測定した。結果を表4に示す。
【0148】
【表4】
【0149】
表4より、良好なプレス性を得る観点からは、誘電体樹脂フィルムの第2面に対する水の接触角が87°以上であることが好ましく、97°以上であることがより好ましいと考えられる。同様に、良好なプレス性を得る観点からは、第2金属層に対する水の接触角が74°以下であることが好ましく、72°以下であることがより好ましいと考えられる。また、誘電体樹脂フィルムの第1面と第1金属層との良好な密着性を得る観点からは、誘電体樹脂フィルムの第1面に対する水の接触角が104°以下であることが好ましく、99°以下であることがより好ましいと考えられる。
【0150】
さらに、実施例1、実施例3、実施例4、実施例8〜実施例11及び比較例1のフィルムコンデンサについて、X線光電子分光分析(XPS)による表面分析を行い、第2金属層に存在するSi量、及び、誘電体フィルムの第2面に存在するSi量をそれぞれ測定した。結果を表5に示す。表5では、第2金属層に存在するSi量を「第2金属層のSi量」、誘電体フィルムの第2面に存在するSi量を「フィルム第2面のSi量」と記載している。
【0151】
【表5】
【0152】
表5より、良好なプレス性を得る観点からは、誘電体樹脂フィルムの第2面に存在するSi量が1.8atom%以上であることが好ましく、7.0atom%以上であることがより好ましいと考えられる。同様に、良好なプレス性を得る観点からは、第2金属層に存在するSi量が1.2atom%以上であることが好ましいと考えられる。
【0153】
なお、フィルムを構成する樹脂とシリコーン樹脂の化学的性質の違いからシリコーン樹脂がフィルム表面に偏析する現象が発生するため、フィルム表面に存在するSi量は、フィルムを製造するために実際に添加したシリコーン樹脂の量とは異なる。フィルム製造プロセスにおいては、(1)フィルムを成膜して溶剤を乾燥させるプロセスにおける乾燥温度、(2)フィルムを熱処理する温度、(3)蒸着プロセスにおける蒸着厚み、の影響によって、フィルム表面に存在するSi量が変化する。本実施例においては、フィルムを成膜する乾燥温度を40℃〜180℃、フィルムを熱処理する温度を40℃〜180℃、蒸着プロセスにおける蒸着厚みを5nm〜50nmの間でそれぞれ適宜選択している。
【0154】
(実施例12及び実施例13)
シリコーン樹脂として、水酸基を有しないポリエステル変性ポリジメチルシロキサン溶液(ビックケミー・ジャパン社製 BYK302、不揮発分95%)を用い、シリコーン樹脂の添加量を表6に示す値に変更したことを除いて、実施例1と同様に誘電体樹脂フィルムを作製し、フィルムコンデンサを作製した。
【0155】
実施例8、実施例9、実施例12及び実施例13のフィルムコンデンサの絶縁抵抗を測定した。表6に、コンデンサとして20μFの素子を作製した際の絶縁抵抗の値を示す。絶縁抵抗の測定では、アドバンテスト社製ハイレジスタンスメーター(R8340)を使用し、温度125℃、電圧250V、充電時間/放電時間を30s/30sとした。
【0156】
【表6】
【0157】
表6より、実施例8及び9では、高い絶縁抵抗を示すことが確認された。これは、シリコーン樹脂中の水酸基が熱硬化性樹脂と反応することができるためと考えられる。一方、シリコーン樹脂が水酸基を有しない場合、シリコーン樹脂の添加量が少ない実施例12では高い絶縁抵抗を示すが、シリコーン樹脂の添加量が多い実施例13では絶縁抵抗が低下することが確認された。これは、架橋構造に組み込まれない成分が増えたためと考えられる。
【0158】
(実施例14〜実施例16)
実施例14〜実施例16では、以下のシリコーン樹脂を用いて誘電体樹脂フィルムを作製し、フィルムコンデンサを作製した。
【0159】
実施例14〜実施例16では、フェノキシ樹脂のエポキシ基、あるいは、MDIのイソシアネート基(NCO基)と反応することができるシリコーン樹脂を使用した。
実施例14では、シリコーン樹脂として、エポキシ基を有するエポキシ基含有シリコーン樹脂を使用した。
実施例15では、シリコーン樹脂として、アミノ基を有するアミノ基含有シリコーン樹脂を使用した。
実施例16では、シリコーン樹脂として、水酸基を有する水酸基含有アクリル変性シリコーン樹脂を使用した。
【0160】
実施例14〜実施例16においては、第1有機材料としてフェノキシ樹脂、第2有機材料としてMDIを使用した。また、フェノキシ樹脂:MDI:シリコーン樹脂の重量比率が70wt%:30wt%:5wt%となるように各材料を配合した。
【0161】
実施例14〜実施例16のフィルムコンデンサについて、上記と同様の方法により、プレス性及び電極剥離を評価した。さらに、第2金属層の表面エネルギー、誘電体樹脂フィルムの第1面の表面エネルギー、及び、第2面の表面エネルギーをそれぞれ求めた。結果を表7に示す。
【0162】
【表7】
【0163】
表7より、いずれのシリコーン樹脂を用いた実施例14〜実施例16においても、プレス性及び電極剥離の評価結果が良好であることが確認された。
【0164】
なお、これまでの実施例において、第1有機材料としてフェノキシ樹脂、第2有機材料としてMDIを使用したとき、フェノキシ樹脂:MDIの重量比率を70:30としているが、上記重量比率を60:40又は50:50とした場合においても、同様の効果が得られることが確認された。
【0165】
(実施例17〜実施例19)
実施例17〜実施例19では、フェノキシ樹脂とMDIの組み合わせ以外の熱硬化性樹脂を用いて誘電体樹脂フィルムを作製し、フィルムコンデンサを作製した。
【0166】
実施例17では、第1有機材料として、ポリビニルアセトアセタール(PVAA)を使用し、第2有機材料として、トリレンジイソシアネ−ト(TDI)を使用した。TDIとしては、トリメチルプロパノール変性トリレンジイソシアネートを用いた。
実施例18では、第1有機材料として、フェノキシ樹脂を使用し、第2有機材料として、メラミン樹脂を使用した。メラミン樹脂としては、アルキル化メラミン樹脂を用いた。
実施例19では、第1有機材料として、フェノキシ樹脂を使用し、第2有機材料として、エポキシ樹脂を使用した。エポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂を用いた。硬化反応を進めるため触媒として、0.1wt%のイミダゾール触媒を添加した。
【0167】
実施例17〜実施例19において、第1有機材料と第2有機材料の重量比率は50:50とした。シリコーン樹脂として、水酸基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを使用した。また、第1有機材料:第2有機材料:シリコーン樹脂の重量比率が50wt%:50wt%:5wt%となるように各材料を配合した。
【0168】
実施例17〜実施例19のフィルムコンデンサについて、上記と同様の方法により、プレス性及び電極剥離を評価した。さらに、第2金属層の表面エネルギー、誘電体樹脂フィルムの第1面の表面エネルギー、及び、第2面の表面エネルギーをそれぞれ求めた。結果を表8に示す。
【0169】
【表8】
【0170】
表8より、いずれの熱硬化性樹脂を用いた実施例17〜実施例19においても、プレス性及び電極剥離の評価結果が良好であることが確認された。