(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体及び(B)カーボンブラックを含有し、前記(A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体が、エチレンオキシドに由来する構成単位を3〜30mol%有する、マウント材料に用いるゴム用組成物。
(A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体100重量部に対して、(B)カーボンブラックの含有量が5〜25重量部含有する請求項1に記載のゴム用組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記EPDM系ゴムは必ずしも耐油性が優れているとはいえず、さらなる改善が求められる。ところで耐油性に優れたゴムとして、エピクロロヒドリン重合体を用いたエピクロロヒドリンゴム材料が知られている。エピクロロヒドリンゴム材料はその耐熱性、耐油性、耐オゾン性等を活かして、自動車用途でも、燃料ホースやエアー系ホース、チューブ材料、シール材料として幅広く使用されている。
【0005】
しかし、エピクロロヒドリンゴム材料では、低動倍率化が十分ではなく、建築物、航空機、自動車、鉄道車両、コンピュータ、自動車用タイヤ等の分野において、吸音、免震、制震、制振、防振を目的とした材料には用いられていなかった。
すなわち耐熱性、耐油性、及び耐オゾン性に優れ、かつ吸音、免震、制震、制振、又は防振にも優れた材料については、その選択肢が少ないのが現状である。
【0006】
そこでエピクロロヒドリン系重合体を用いたゴム材料、及び上記ゴム材料のための組成物を提供することを課題とする。
【0007】
本発明者らは、エチレンオキシド由来の構成単位を特定の範囲で有するエピクロロヒドリン系重合体、カーボンブラックを含有する組成物から得られるエピクロロヒドリン系ゴム材料を見出した。
【0008】
即ち、上記課題を解決できた本発明のゴム用組成物、ゴム材料は、以下の通りである。
項1 (A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体及び(B)カーボンブラックを含有し、前記(A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体が、エチレンオキシドに由来する構成単位を3〜30mol%有するゴム用組成物。
項2 (A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体100重量部に対して、(B)カーボンブラックの含有量が5〜25重量部含有する項1に記載のゴム用組成物。
項3 更に、(C)架橋剤を含有する項1又は2に記載のゴム用組成物。
項4 項1〜3いずれかに記載するゴム用組成物から作製されたゴム材料。
項5 項4に記載するゴム材料から作製された自動車用ホース材料、チューブ材料、マウント材料、シール材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明により得られたゴム材料は、良好な耐熱性を有し、低動倍率と減衰性とのバランスに優れているため、両方の特性が同時に要求されるマウント材料(特にエンジンマウントに用いられる材料)として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、耐熱性ゴム用組成物及び耐熱性ゴム用組成物を架橋してなる耐熱性ゴム材料を代表にとって、本発明のゴム用組成物及びゴム材料について詳細に説明する。前記耐熱性ゴム用組成物は(A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体及び(B)カーボンブラックを含有し、前記(A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体が、エチレンオキシドに由来する構成単位を3〜30mol%有する。
【0011】
前記耐熱性ゴム用組成物に用いられる(A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体は、エピクロロヒドリン由来の構成単位とエチレンオキシド由来の構成単位を有する重合体であり、プロピレンオキシド、n−ブチレンオキシド等のエチレンオキシド以外のアルキレンオキシド類、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−グリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のグリシジル類に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0012】
(A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体としては、エピクロロヒドリンに由来する構成単位を40mol%以上含有することが好ましく、50mol%以上含有することがより好ましく、70mol%以上含有することが特に好ましく、97mol%以下含有することがより好ましく、95mol%以下含有することが特に好ましい。
【0013】
(A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体としては、エチレンオキシドに由来する構成単位を3mol%以上含有する。また、前記エチレンオキシドに由来する構成単位としては5mol%以上含有することが好ましく、7mol%以上含有することがより好ましい。またエチレンオキシドに由来する構成単位は30mol%以下含有しており、20mol%以下含有することが好ましく、15mol%以下含有することがより好ましい。これらの範囲であれば、低動倍率化及び優れた減衰性を両方満たす点で好ましい。
【0014】
尚、本発明においては、(A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体における各構成単位に由来するモル比率は、単独の重合体で構成されていればそのまま適用し、複数の重合体で構成されていれば、各重合体のモル比率と(A)エピクロロヒドリン系重合体における各重合体が占める重量における比率より算出することができる。
【0015】
(A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体が複数の重合体で構成される際には、エピクロロヒドリン単独重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド共重合体、エピクロロヒドリン−プロピレンオキシド共重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等のこれらの単独重合体又は共重合体を一種、又は二種以上併用して使用することができる。これらの単独重合体又は共重合体としては、大阪ソーダ株式会社製のエピクロマーH、エピクロマーC、エピクロマーCG、エピクロマーD、エピクロマーDG、エピオン等を例示することができる。
【0016】
エピクロロヒドリン単独重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド共重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体の共重合組成については、塩素含有量、ヨウ素価により求められる。
塩素含有量はJIS K7229に記載の方法に従い、電位差滴定法によって測定する。得られた塩素含有量からエピクロロヒドリンに由来する構成単位のモル分率を算出する。
ヨウ素価はJIS K6235に準じた方法で測定する。得られたヨウ素価からアリルグリシジルエーテルに由来する構成単位のモル分率を算出する。
エチレンオキシドに由来する構成単位のモル分率は、エピクロロヒドリンに由来する構成単位のモル分率、アリルグリシジルエーテルに由来する構成単位のモル分率より算出する。
【0017】
(A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体の分子量は特に制限されないが、通常ムーニー粘度表示でML
1+4(100℃)=30〜150程度となる分子量であればよい。
【0018】
エピクロロヒドリン系重合体の製造は、触媒としてオキシラン化合物を開環重合させ得るものを使用し、温度−20〜100℃の範囲で溶液重合法、スラリー重合法等により実施できる。このような触媒としては、例えば有機アルミニウムを主体としこれに水やリン等のオキソ酸化合物やアセチルアセトン等を反応させた触媒系、有機亜鉛を主体としこれに水を反応させた触媒系、有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系等が挙げられる。例えば米国特許第3,773,694号明細書に記載の有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系を使用して本発明のポリエーテル共重合体を製造することができる。なお、このような製法により、共重合させる場合、これらの成分を実質上ランダムに共重合することが好ましい。
【0019】
本発明の耐熱性ゴム用組成物に用いられる(B)カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどが挙げられ、具体的には、SAF、ISAF、HAF、EPC、XCF、FEF、GPF、HMF、SRF、FT、MTを例示することができる。これらのカーボンブラックは単独で使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。
【0020】
(B)カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積(N2SA)が5m
2/g以上が好ましく、7m
2/g以上がより好ましく、10m
2/g以上が特に好ましい。上限は、一般的に入手しやすい観点から180m
2/g以下が好ましい。
【0021】
(B)カーボンブラックとしては、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が15ml/100g以上が好ましく、20ml/100g以上がより好ましく、30ml/100g以上が特に好ましい。上限は一般的に入手しやすい観点から、175ml/100g以下が好ましく、170ml/100g以下がより好ましい。
【0022】
耐熱性ゴム用組成物において、(B)カーボンブラックの含有量は(A)エピクロロヒドリン系重合体100重量部に対して、5重量部以上であることが好ましく、7重量部以上であることがより好ましく、25重量部以下であることが好ましく、15重量部以下であることがより好ましい。これらの範囲を満足すると、低動倍率化及び優れた減衰性をより一層優れたレベルで両方可能になる。
【0023】
耐熱性ゴム用組成物において、更に(C)架橋剤を含有してもよい。(C)架橋剤としては、エピクロロヒドリン系重合体を架橋できるものであれば特に限定されない。塩素原子の反応性を利用する公知の架橋剤、即ちポリアミン系架橋剤、チオウレア系架橋剤、チアジアゾール系架橋剤、トリアジン系架橋剤、キノキサリン系架橋剤、ビスフェノール系架橋剤等が挙げられ、また、側鎖二重結合の反応性を利用する公知の架橋剤、例えば、有機過酸化物系架橋剤、硫黄、モルホリンポリスルフィド系架橋剤、チウラムポリスルフィド系架橋剤等を例示することができる。
【0024】
ポリアミン系架橋剤としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p−フェニレンジアミン、クメンジアミン、N,N'−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメート等が挙げられる。
チオウレア系架橋剤としては、2−メルカプトイミダゾリン(エチレンチオウレア)、1,3−ジエチルチオウレア、1,3−ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア等が挙げられる。
チアジアゾール系架橋剤としては、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−5−チオベンゾエート等が挙げられる。
トリアジン系架橋剤としては、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン等が挙げられる。
キノキサリン系架橋剤としては、2,3−ジメルカプトキノキサリン、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート等が挙げられる。
ビスフェノール系架橋剤としてはビスフェノールAF、ビスフェノールS等が挙げられる。
有機過酸化物系架橋剤としては、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
モルホリンポリスルフィド系架橋剤としては、モルホリンジスルフィドが挙げられる。
チウラムポリスルフィド系架橋剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等が挙げられる。
【0025】
この中でも、チオウレア系架橋剤、キノキサリン系架橋剤、トリアジン系架橋剤であることが好ましく、2−メルカプトイミダゾリン(エチレンチオウレアともいう)、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン(2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジンともいう)であることが特に好ましい。(C)架橋剤は一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
耐熱性ゴム用組成物において、(C)架橋剤の含有量は、(A)エチレンオキシドに由来する構成単位を有するエピクロロヒドリン系重合体100重量部に対して、0.1重量部以上、10重量部以下であることが好ましい。下限値については、0.3重量部以上であることが特に好ましく、上限値については、5重量部以下であることが特に好ましい。
【0027】
耐熱性ゴム用組成物には、本発明の効果を損なわない限り、上記以外の配合剤、例えば、受酸剤、滑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤や光安定剤等の添加剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、難燃剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、素練り促進剤等を更に任意に配合できる。さらに本発明の特性が失われない範囲で、当該技術分野で通常行われている、ゴム、樹脂等のブレンドを行うことも可能である。
【0028】
耐熱性ゴム用組成物において、架橋剤に応じて公知の(D)受酸剤を使用でき、金属化合物及び/又は無機マイクロポーラス・クリスタルが用いられる。
【0029】
金属化合物としては、周期表第II族(2族および12族) 金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表第IV族(4族および14族)の非鉛系金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩等の金属化合物が挙げられる。
【0030】
前記金属化合物の具体例としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ナトリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、ステアリン酸錫、塩基性亜リン酸錫、等を挙げることができる。特に好ましい受酸剤としては酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、消石灰、生石灰が挙げられる。
【0031】
無機マイクロポーラス・クリスタルとは、結晶性の多孔体を意味し、無定型の多孔体、例えばシリカゲル、アルミナ等とは明瞭に区別できるものである。このような無機マイクロポーラス・クリスタルの例としては、ゼオライト類、アルミナホスフェート型モレキュラーシーブ、層状ケイ酸塩、ハイドロタルサイト類、チタン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。特に好ましい受酸剤としては、ハイドロタルサイト類が挙げられる。
【0032】
ゼオライト類は、天然ゼオライトの外、A型、X型、Y型の合成ゼオライト、ソーダライト類、天然ないしは合成モルデナイト、ZSM−5などの各種ゼオライト及びこれらの金属置換体であり、これらは単独で用いても2種以上の組み合わせで用いても良い。また金属置換体の金属はナトリウムであることが多い。ゼオライト類としては酸受容能が大きいものが好ましく、A型ゼオライトが好ましい。
【0033】
前記ハイドロタルサイト類は下記一般式(1)
Mg
XZn
YAl
Z(OH)
(2(X+Y)+3Z-2)CO
3・wH
2O (1)
[式中、XとYはそれぞれX+Y=1〜10の関係を有する0〜10の実数、Zは1〜5の実数、Wは0〜10の実数をそれぞれ示す]で表わされる。
ハイドロタルサイト類の具体例として、Mg
4.5Al
2(OH)
13CO
3・3.5H
2O、Mg
4.5Al
2(OH)
13CO
3、Mg
4Al
2(OH)
12CO
3・3.5H
2O、Mg
5Al
2(OH)
14CO
3・4H
2O、Mg
3Al
2(OH)
10CO
3・1.7H
2O、Mg
3ZnAl
2(OH)
12CO
3・3.5H
2O、Mg
3ZnAl
2(OH)
12CO
3、Mg
4.3Al
2(OH)
12.6CO
3・3.5H
2O等を挙げることができる。
【0034】
耐熱性ゴム用組成物において、(D)受酸剤の含有量は、(A)エピクロロヒドリン系重合体100重量部に対して、0.2重量部以上であることが好ましく、1重量部以上であることが特に好ましく、また、50重量部以下であることが好ましく、20重量部以下であることが特に好ましい。(D)受酸剤の含有量が0.2重量部未満では架橋が不十分となり、50重量部を超えると架橋物が剛直になりすぎて、エピクロロヒドリン系ゴム組成物を架橋して得られる架橋物として通常期待される物性が得られなくなる恐れがある。
【0035】
前記滑剤としては、具体的には、例えば、パラフィン・ワックス、炭化水素系ワックスなどのパラフィンおよび炭化水素樹脂;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸;ステアロアミド、オレイル・アミドなどの脂肪酸アミド;n−ブチル・ステアレートなどの脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪アルコール;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記老化防止剤として、公知の、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ベンズイミダゾール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオ尿素系老化防止剤、有機チオ酸系老化防止剤、亜リン酸系老化防止剤が例示され、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ベンズイミダゾール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤であり、より好ましくはジチオカルバミン酸塩系老化防止剤である。
【0037】
前記可塑剤として、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸誘導体、ジブチルジグリコール−アジペートやジ(ブトキシエトキシ)エチルアジペート等のアジピン酸誘導体、セバシン酸ジオクチル等のセバシン酸誘導体、トリオクチルトリメリテート等のトリメリット酸誘導体などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記素練り促進剤として、芳香族メルカプタン系化合物、芳香族ジスルフィド系化合物、芳香族メルカプタン金属系化合物、またはこれらの混合系化合物を用いることができ、代表的にはo,o−ジベンズアミドジフェニルジスルフィドが挙げられる。
【0039】
前記耐熱性ゴム用組成物を製造するには、従来ポリマー加工の分野において用いられている任意の混合手段、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を用いることができる。
【0040】
前記耐熱性ゴム材料は、前記耐熱性ゴム用組成物より作製される。一般には架橋して得られるため、架橋物、架橋ゴム材料として記載することもできる。
【0041】
前記耐熱性ゴム材料は、通常100〜200℃に加熱することで得られる。架橋時間は温度により異なるが、通常0.5〜300分の間である。架橋成型の方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線或いはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることができる。
【0042】
本発明のゴム材料の引張強さ(TB)は、例えば、1MPa以上、好ましくは3MPa以上、より好ましくは5MPa以上である。上限は特に限定されないが、例えば、20MPa以下、または15MPa以下程度であっても実用上問題ない。
【0043】
また本発明のゴム材料の伸び(EB)は、例えば、100%以上、好ましくは200%以上、より好ましくは300%以上である。伸び(EB)の上限は特に限定されないが、例えば、800%以下、または600%以下程度であっても実用上問題ない。
【0044】
本発明のゴム材料の耐熱性は、125℃168時間の耐熱性試験前後の各物性の変化率(下記式参照)などに基づいて評価できる。
変化率(%)={(耐熱性試験後の物性−耐熱試験前の物性)/耐熱試験前の物性}×100
なお、耐熱試験前の物性を本明細書では常態物性という場合もある。
本発明のゴム材料の引張強さ(TB)の変化率は、例えば、−30%以上、好ましくは−25%以上、より好ましくは−20%以上であり、例えば、30%以下であってよく、20%以下であってよく、10%以下であってよい。
本発明のゴム材料の伸び(EB)の変化率は、例えば、−40%以上、好ましくは−30%以上、より好ましくは−20%以上であり、例えば、10%以下であってよい。
【0045】
本発明のゴム材料は、鉄道車両用ゴム、産業機械用ゴム、建築用免震ゴム、免震ゴム支承、マウント等の自動車用ゴム等の防振、免震ゴムに好適に用いることができ、特に耐熱性と、低動倍率と減衰性とのバランスに優れるマウント材料(特にエンジンマウントに用いられる材料)に好適に用いられる。
【0046】
本願は、2017年2月9日に提出された日本国特許出願第2017−022559号に基づく優先権の利益を主張するものである。2017年2月9日に出願された日本国特許出願第2017−022559号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの記載に限定されるものではない。
【0048】
実施例1〜3及び比較例1〜5
表1に示す配合で各材料をニーダーおよびオープンロールで混練し、厚さ2〜2.5mmの未架橋ゴムシートを作製した。また、未架橋ゴムシートを170℃で15分プレス架橋し、2mm厚の一次架橋物を得た。さらにこれをエア・オーブンで150℃で2時間加熱し、二次架橋物を得た。
二次架橋物(ゴム材料)の動特性を決定するため、(株)鷺ノ宮製作所製ダイナミックサーボを用いて荷重に対するゴム材料試験片の変位量の測定を行った。静的ばね定数(Ks)は試験片を0〜3mmに圧縮する際の1〜2mm区間の静的荷重と変位の比に基づいて算出し、動的ばね定数(Kd)は試験片のプリセット圧縮率が5%、ひずみ振幅が±0.1%、周波数が100Hzのときの動荷重と変位の比に基づいて算出した。
二次架橋物(ゴム材料)のtanδを決定するため、(株)鷺ノ宮製作所製ダイナミックサーボを用いて荷重に対するゴム材料試験片の変位量の測定を行った。動的測定時試験片のプリセット圧縮率が5%、ひずみ振幅が0.25mm、周波数が15Hzのときの荷重−変位量関係からtanδを決定した。
二次架橋物の常態での引張特性(引張強さ(TB)、伸び(EB))をJIS K6251に準じて引張試験を行うことによって決定した。
また二次架橋物(ゴム材料)に対してJIS K6257促進老化試験A−2法に準じて125℃168時間の耐熱試験を行い、耐熱試験後のゴム材料の引張特性(引張強さ(TB)、伸び(EB))をJIS K6251に準じて引張試験を行うことによって決定した。そして該耐熱試験前後の各物性(TB、EB)の変化率(ΔTB、ΔEB)を下記式に基づいて算出し、耐熱性を評価した。
変化率(%)={(耐熱性試験後の物性−常態物性)/常態物性}×100
ゴム材料の各評価結果について表2に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1及び表2の実施例より、本発明のゴム用組成物から得られる耐熱性ゴム材料は、耐熱性が優れており、また低動倍率と減衰性とのバランスに優れていることが示された。