【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成30年度総務省「インフラモニタリングにおけるインフラ3DモデルとIoTセンサ情報モデルの異分野間連携に関する研究開発と標準化」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(A)第1の実施形態
以下では、本発明に係る信号処理装置、プログラム及び方法の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(A−1)第1の実施形態の構成
[監視システム]
図2は、第1の実施形態に係る監視システムの全体構成の一例を示す全体構成図である。
【0016】
図2において、第1の実施形態に係る監視システム5は、1又は複数のセンサ機器1(1−1〜1−n;nは整数)、親機2、監視装置3を有する。
【0017】
監視システム5は、監視対象とする構造物にセンサを取り付け、センサが構造物の振動データを検知し、センサからの振動データに基づいて、構造物の健全性を監視する。監視対象とする構造物は、例えば橋梁、建物などのように振動を伴う構造物とすることができる。また、この実施形態では、構造物の振動データを検知するセンサが、加速度センサである場合を例示するが、加速度センサに限定されず、振動データを計測することができるものを適用できる。
【0018】
センサ機器1は、構造物に取り付けられた加速度センサからセンサデータを取得し、所定時間毎に若しくは常時、センサデータを含む情報を親機2に送信する。センサ機器1は、主として、センサ部、通信部、電池部等を有する。
【0019】
親機2は、1又は複数のセンサ機器1からセンサデータを含む情報を取得して監視装置3に与える。なお、センサ機器1と親機2との間の通信回線は、有線回線であっても良いし、無線回線であってもよい。また通信方式も特に限定されるものではなく、種々の方式を広く適用することができる。
【0020】
監視装置3は、親機2を介して、1又は複数のセンサ機器1から取得したデータを用いて、監視対象とする構造物の健全性を監視し評価する。なお、監視装置3が、親機2としての機能を備えるようにしてもよく、その場合、1又は複数のセンサ機器1からのデータを直接取得できる。
【0021】
[信号処理装置]
図1は、第1の実施形態に係る信号処理装置の内部構成を示す内部構成図である。
【0022】
図1において、信号処理装置100は、入力処理部110、演算処理部120、出力処理部130を有する。
【0023】
信号処理装置100は、構造物に取り付けられた加速度センサ200から時系列の加速度データを取得することができるのであれば、
図2のセンサ機器1に搭載されるようにしても良いし、又は、
図2の親機2や監視装置3に搭載されるようにしても良い。
【0024】
また、信号処理装置100を構成する入力処理部110、演算処理部120及び出力処理部130の各機能若しくは複数の機能を組み合わせたものが、それぞれ異なる装置上で実施されるようにするため分散配置されるようにしてもよい。この実施形態では、説明を簡単にするために、例えば、
図1の信号処理装置100が1台の装置に搭載されている場合を想定して説明する。いずれにしても、信号処理装置100は、加速度センサ200から時系列の加速度データを取得し、取得した加速度データに対して周波数分析を行ない、その結果として各周波数成分の振幅値を出力する。
【0025】
なお、信号処理装置100のハードウェア構成は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPOM等を有するパーソナルコンピュータやマイコン等の装置とすることができ、CPUが、ROMに格納されているプログラム(例えば信号処理プログラム等)を実行することにより、後述する信号処理を実現することができる。また信号処理プログラムがインストールされることにより信号処理装置100の機能が実現されるようにしても良い。
【0026】
加速度センサ200は、構造物に取り付けられて、構造物の振動に応じた加速度変動を計測し、アナログ信号である加速度変動波形をデジタル変換して時系列の加速度データを出力する。なお、
図1には図示しないが、必要に応じて、A/D(アナログ/デジタル)変換部等を設けて、加速度センサ200が計測したアナログ信号をデジタル信号に変換する。加速度センサ200から出力された加速度データは、信号処理装置100に入力される。
【0027】
入力処理部110は、後述する演算処理部120に入力するデータの前処理を行なう部分である。具体的に、入力処理部110は、加速度センサ200から時系列の加速度データを入力し、入力された加速度データの整列処理やフィルタ処理等を行ない、処理後の加速度データを演算処理部120に与える。
【0028】
演算処理部120は、入力処理部110により処理された加速度データに対して周波数分析処理を行なう部分である。具体的に、演算処理部120は、入力された加速度データに対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を行ない、周波数の強度分布である周波数分析結果(演算結果)を出力処理部130に与える。
【0029】
出力処理部130は、演算処理部120の演算結果に対して後処理を行なう部分である。出力処理部130は、時系列加速度データの高速フーリエ変換された複数のスペクトルに基づいて、各周波数成分の平均値を算出する平均値算出部131、時系列加速度データの高速フーリエ変換された複数のスペクトルに基づいて、各周波数成分の最大値を算出する最大値算出部132、各周波数成分の平均値及び最大値を正規化する正規化部133、正規化部により正規化された、各周波数成分の平均値と最大値とを比較し最小値を選択したものを、各周波数成分の振幅値として出力する出力部134を有する。なお、出力処理部130の詳細な処理の説明は、動作の項で詳細に説明する。
【0030】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態に係る信号処理装置100における信号処理の動作を、図面を用いて説明する。
【0031】
図1において、構造物に取り付けられている加速度センサ200が、構造物の振動に応じた加速度変動を計測する。アナログ信号である加速度変動波形はデジタル信号に変換され、デジタル信号の加速度データが、信号処理装置100の入力処理部110に入力される。
【0032】
入力処理部110に入力された時系列の加速度データは、入力処理部110により入力データの整列やフィルタ処理等が施され、処理後の加速度データが演算処理部220に出力される。
【0033】
入力処理部110により処理された時系列の加速度データは、演算処理部120により高速フーリエ変換されて、周波数分析結果が得られる。つまり、時間軸上で時系列に変動する加速度データが周波数軸上の強度分布のデータに変換される。
【0034】
ここで、入力処理部110から演算処理部120へのデータ入力は、加速度センサ200から出力される時系列の加速度データが、演算処理部120による高速フーリエ変換のために必要なデータ数がそろった時点で逐次実施される。例えば、高速フーリエ変換に係るデータ数がN個の場合、加速度データ数がN個に達した時点で、入力処理部110から演算処理部120に入力されるようにする。そのため、演算処理部120により高速フーリエ変換された演算結果の出力も逐次行なわれる。
【0035】
ここで、すべての時系列の加速度データが一度に演算処理部120に入力されることに限定されず、時系列加速度データの一部区間を切り取って演算処理部120に入力されるようにしてもよく、その後の加速度データについては、切り取る区間の開始位置を時間軸上で後方にずらして(移行して)演算処理部120に入力されるようにしてもよい。この場合でも、演算処理部120から逐次出力される演算結果も時系列のものとなる。そして、演算処理部120による演算結果が、出力処理部130に入力される。
【0036】
図3は、第1の実施形態に係る出力処理部130の処理動作を示すフローチャートである。
【0037】
出力処理部130では、入力されたデータは、全ての周波数成分が入力された時点での周波数成分毎の絶対値の平均値が算出され、周波数成分毎の絶対値の平均値(以下、平均値(A)とも呼ぶ。)が一時保存される(F101)。
【0038】
具体的には、高速フーリエ変換されたスペクトルは、周波数成分毎に、データ値の絶対値が求められる。初期段階では、各周波数成分の絶対値が保存される。また、後述するように、F103の結果出力判定に係る判定基準までの間、F101〜F103の処理は繰り返し実施される。そのため、演算処理部120からの演算結果が入力されるたびに、出力処理部130は、今回入力された各周波数成分の値(絶対値)と、保存している各周波数成分の絶対値の平均値(A)とに基づいて、各周波数成分の絶対値の平均値(A)が算出されて保存される。換言すると、出力処理部130は、高速フーリエ変換されたスペクトルが入力されると、今回入力された各周波数成分の絶対値と、保存している各周波数成分の絶対値の平均値(平均値(A))とに基づいて、各周波数成分の絶対値の平均値(A)を更新して保存する。保存される各周波数成分の絶対値の平均値(A)はそれぞれ、データが入力されるたびに更新される。したがって、各周波数成分の絶対値の平均値(A)は、各周波数成分の時系列データに基づいて算出されるものである。
【0039】
また、出力処理部130に入力されたデータと保存しているデータに基づいて、周波数成分毎に絶対値の最大値を比較して、いずれかの大きい値を周波数成分の最大値(以下、最大値(B)とも呼ぶ。)として一時保存する(F102)。
【0040】
具体的には、初期段階では、各周波数成分の絶対値が保存されている。また、上述したように、F103の結果出力判定に係る判定基準までの間、F101〜F103の処理は繰り返し実施される。そのため、出力処理部130は、今回入力された各周波数成分の値(絶対値)と、保存している各周波数成分の絶対値(B)とを比較して、いずれかの大きい値を各周波数成分の絶対値(B)として保存する。換言すると、出力処理部130は、高速フーリエ変換されたスペクトルが入力されると、今回入力された各周波数成分の絶対値と、過去の各周波数成分の絶対値の最大値(B)との比較結果に基づいて、各周波数成分の絶対値の最大値(B)を求める。
【0041】
出力処理部130は、所定の判定基準に基づいて、結果(すなわち、各周波数成分の平均値(A)、最大値(B))を出力するか否かを判定する(F103)。
【0042】
ここで、所定の判定基準は、計測時間が終了したか否か、あるいは、計測中であっても所定時間が設定されている場合には、その所定時間が経過したか否かとする。換言すると、前記結果を出力する所定の判定基準は、計測時間又は所定の設定時間が経過したタイミングとする。
【0043】
F103において、所定の判定基準に基づいて結果を出力しないと判定された場合、処理はF101に戻り、F101〜F103の処理が繰り返される。この場合、各周波数成分の絶対値の平均値(A)及び最大値(B)は逐次更新される。一方、F103において、所定の判定基準に基づいて結果を出力すると判定された場合、処理はF104に移行する。
【0044】
出力処理部130は、各周波数成分の絶対値の平均値(A)と最大値(B)の大きさ(振幅)をそろえるために正規化を実施する(F104)。正規化後の各周波数成分の絶対値の平均値(A)を平均値(A´)と表現し、正規化後の各周波数成分の絶対値の最大値(B)を最大値(B´)と表現する。
【0045】
ここで、各周波数成分の絶対値の平均値(A)と最大値(B)の正規化処理は、次のような処理を用いることができる。まず、出力処理部130は、周波数成分毎の平均値(A)のうち最大値(A
max)を導出する。そして、各周波数成分の平均値(A)を、最大値(A
max)で除算する。同様に、最大値(B)の正規化処理も、周波数成分ごとの最大値(B)のうち最大値(B
max)を導出する。そして、各周波数成分の最大値(B)を、最大値(B
max)で除算する。この正規化処理により、平均値(A)と最大値(B)共に、最大値が一定となる。
【0046】
なお、正規化処理は、上述した方法に限定されるものではない。例えば、別の正規化方法として、出力処理部130は、周波数成分毎の平均値(A)のうち最大値(A
max)を導出し、周波数成分毎の最大値(B)のうち最大値(B
max)を導出する。そして、各周波数成分の平均値(A)のみに、最大値(A
max)と最大値(B
max)から導出した係数(例えば、最大値(B
max)/最大値(A
max))を乗じるようにして処理してもよい。ただし、ここでは、2つの正規化処理の方法を例示したが、必要に応じて一方の方法をとる。
【0047】
出力処理部130は、導出された各周波数成分の平均値(A´)と最大値(B´)とを周波数成分ごとに比較し、平均値(A´)と最大値(B´)のうち最小値を選択し、保存する(F105)。この保存されたデータを比較最小値(C)と表現する。
【0048】
その後、出力処理部130は、各周波数成分の比較最小値(C)を出力する(F106)。なお、各周波数成分の比較最小値(C)が導出された後、各周波数成分の絶対値の平均値(A)と最大値(B)は初期化される。
【0049】
[実施例]
次に、第1の実施形態に係る信号処理装置100による信号処理を適用した実施例を説明する。
【0050】
図4は、第1の実施形態に係る信号処理装置100による信号処理を適用した実施例を説明する説明図である(その1)。
【0051】
図4(A)は、正規化後の各周波数成分の絶対値の平均値(A´)を示し、
図4(B)は、正規化後の各周波数成分の絶対値の最大値(B´)を示し、
図4(C)は、各周波数成分の比較最小値(C)を示す。また、
図4(D)は、
図4(A)と
図4(C)とを重ね合わせたものである。
【0052】
図4(D)において、正規化後の各周波数成分の絶対値の平均値(A´)と、各周波数成分の比較最小値(C)とを比較する。
図4(D)に示すように、各周波数成分の比較最小値(C)では、振幅にピークを持つ周波数成分の振幅の大きさに対して、ピーク以外で雑音が多く含まれている周波数成分の振幅値が、正規化後の各周波数成分の絶対値の平均値(A´)よりも小さくなっており、相対的に雑音成分が抑制されている。
【0053】
つまり、雑音成分が大きい場合、正規化後の各周波数成分の絶対値の平均値(A´)は、雑音成分に埋もれてしまう部分が存在し得る。これに対して、各周波数成分の比較最小値(C)は、相対的に雑音成分が抑制されているので、各周波数成分の振幅の大きさを捉えることができる。その結果、雑音成分が多く含まれている場合でも、振動固有成分の振幅値を検出することができる。
【0054】
図5は、第1の実施形態に係る信号処理装置100による信号処理を適用した実施例を説明する説明図である(その2)。
【0055】
図5(A)は、正規化後の各周波数成分の絶対値の平均値(A´)を示し、
図5(B)は、正規化後の各周波数成分の絶対値の最大値(B´)を示し、
図5(C)は、各周波数成分の比較最小値(C)を示す。また、
図5(D)は、
図5(B)と
図5(C)とを重ね合わせたものである。
図5(E)は、
図5(A)と
図5(C)とを重ね合わせたものである。
【0056】
図5(D)において、矢印で示した部分で、正規化後の各周波数成分の絶対値の最大値(B´)の周波数成分にピークが見られる。これに対して、
図5(E)に示すように、正規化後の各周波数成分の絶対値の平均値(A´)の同じ周波数成分にはピークが見られないので、
図5(D)の矢印部分は、定常的な周波数成分ではない。各周波数成分の比較最小値(C)では、
図5(D)の矢印部分が除去されている。
【0057】
また、
図5(E)において、正規化後の各周波数成分の絶対値の平均値(A´)と、各周波数成分の比較最小値(C)とを比較した場合でも、
図4(D)と同様に、各周波数成分の比較最小値(C)は、正規化後の各周波数成分の絶対値の平均値(A´)よりも、相対的に雑音成分が抑制されている。
【0058】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、出力処理部が、加速度データに高速フーリエ変換を施し、所定時間において、各周波数成分の絶対値の平均値と最大値を更新し、各周波数成分の絶対値の平均値と最大値に対して正規化処理を実施し、各周波数成分の正規化平均値と正規化最大値から選択したものを、各周波数成分の振幅値として出力する。これにより、雑音成分が多く含まれている場合でも、雑音成分を抑制した各周波数成分の振幅値を得ることができる。その結果、振動固有成分を適切に検出することができる。
【0059】
(B)第2の実施形態
次に、本発明に係る信号処理装置、プログラム及び方法の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0060】
(B−1)第2の実施形態の構成
図6は、第2の実施形態に係る信号処理装置の内部構成を示す内部構成図である。
【0061】
図6において、第2の実施形態の信号処理装置100Aは、入力処理部110、演算処理部120、出力処理部130Aを有する。
【0062】
第2の実施形態では、信号処理装置100Aの出力処理部130Aの処理が第1の実施形態と異なる。したがって、以下では、第2の実施形態の出力処理部130Aを中心に詳細な説明を行なう。
【0063】
出力処理部130Aは、第1の実施形態と同様に、演算処理部120の演算結果に対して後処理を行なう部分である。出力処理部130Aは、時系列データの高速フーリエ変換された複数のスペクトルに基づいて、各スペクトルの各周波数成分の振幅値の合計値を算出する合計値算出部135、合計値算出部135により算出された合計値と閾値とを比較する合計値判定部136、合計値が閾値以上である複数のスペクトルの各周波数成分の平均値を算出する平均値算出部137、平均値算出部137により算出された各周波数成分の平均値を、各周波数成分の振幅値として出力する出力部138を有する。なお、出力処理部130Aの詳細な処理の説明は、動作の項で詳細に説明する。
【0064】
(B−2)第2の実施形態の動作
図7は、第2の実施形態に係る出力処理部130Aの処理動作を示すフローチャートである。
【0065】
なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の動作のうち、信号処理装置100Aの演算処理部120により求められた演算結果が出力処理部130Aに入力されるところまでは同じである。
【0066】
演算処理部120から演算結果の入力データが出力処理部130Aに入力されると、各スペクトルの周波数成分ごとの絶対値(振幅値)の合計値(以下、合計値(D)と呼ぶ。)が算出されて保存される(F201)。
【0067】
具体的には、高速フーリエ変換されたスペクトルについて、周波数成分毎の絶対値を求める。そして、周波数成分毎の絶対値を加算して合計値(D)を求める。
【0068】
次に、出力処理部130Aは、各周波数成分の絶対値の合計値(D)と、予め設定された閾値とを比較し、各周波数成分の絶対値の合計値(D)が閾値以上であるかどうかを判定する(F202)。ここで、F202で用いる閾値は、加速度センサ200を設置する対象や位置によって異なるため、事前に観測を行なう等して適切な値を決定したものを用いることができる。
【0069】
各周波数成分の絶対値の合計値(D)が閾値以上である場合は、処理はF203に移行し、出力処理部130Aは、周波数成分ごとの平均値の算出を行う(F203)。
【0070】
この処理は、
図3のF101と同様の処理である。すなわち、出力処理部130Aは、F101と同様にして、合計値(D)が閾値以上である高速フーリエ変換されたスペクトルについて、周波数成分毎に、各周波数成分の絶対値の平均値を求める。第2の実施形態では、F203で導出した、各周波数成分の絶対値の平均値を平均値(E)と表現する。
【0071】
各周波数成分の絶対値の合計値(D)が閾値未満である場合、処理はF204に移行する。この場合、F203の平均化処理を実施せず、F204の結果出力判定処理を実施する。したがって、そのとき入力された演算処理部120からの出力結果は、各周波数成分の絶対値の平均値(E)に反映されない。すなわち、F203の平均化処理は、合計値(D)が閾値以上である高速フーリエ変換されたスペクトルについて実施されることになる。
【0072】
その後、出力処理部130Aは、所定の判定基準に従って、結果を出力するかどうかを判定する(F204)。F204の処理は、
図2のF103と同様であり、所定の判定基準も第1の実施形態と同じ基準を用いることができる。
【0073】
F204において、所定の判定基準に基づいて結果を出力しないと判定された場合、処理はF201に戻り、F201〜F204の処理が繰り返される。この場合、F202の合計値閾値判定処理の判定結果に応じて、各周波数成分の絶対値の平均値(E)は逐次更新される。一方、F204において、所定の判定基準に基づいて結果を出力すると判定された場合、処理はF205に移行する。
【0074】
その後、出力処理部130Aは、各周波数成分の絶対値の平均値(E)を出力する(F205)。なお、各周波数成分の絶対値の平均値(E)を出力後、各周波数成分の絶対値の平均値(E)は初期化される。
【0075】
[実施例]
次に、第2の実施形態に係る信号処理装置100Aによる信号処理を適用した実施例を説明する。
【0076】
図8は、第2の実施形態に係る信号処理装置100Aによる信号処理を適用した実施例を説明する説明図である。
【0077】
図8(A)は、第1の実施形態の
図4(A)と同じであり、閾値判定を実施せずに算出した、正規化後の各周波数成分の絶対値の平均値(A´)を示す。
【0078】
図8(B)は、第2の実施形態に係る各周波数成分の絶対値の平均値(E)を示す。
【0079】
図8(C)は、
図8(A)と
図8(B)とを重ね合わせたものである。
【0080】
図8(C)において、
図8(A)の各周波数成分の振幅値と、
図8(B)の各周波数成分の振幅値とを比較する。第2の実施形態に係る各周波数成分の絶対値の平均値(E)は、振幅にピークを持つ周波数成分の振幅の大きさに対して、ピーク以外で雑音が多く含まれていると考えられる周波数成分の振幅値が、正規化後の各周波数成分の絶対値の平均値(A´)よりも小さく、相対的に雑音成分が抑制されている。その結果、第1の実施形態と同様に、雑音成分が多く含まれている場合でも、振動固有成分の振幅値を検出することができる。
【0081】
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、出力処理部が、時系列の加速度データに高速フーリエ変換を施し、各スペクトルの周波数成分毎の振幅値の合計値を算出し、その合計値が閾値以上である複数のスペクトルについて、各周波数成分の絶対値の平均値を算出したものを、各周波数成分の振幅値として出力する。これにより、雑音成分が多く含まれている場合でも、雑音成分を抑制した各周波数成分の振幅値を得ることができる。その結果、振動固有成分を適切に検出することができる。
【0082】
(C)他の実施形態
上述した実施形態においても本発明の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0083】
出力処理部は、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせた処理を行なうようにしてもよい。具体的に、出力処理部は、
図3の動作フローにおいて、F101に代えて、
図7のF201、F202、F203の処理を適用することも可能である。